DXの課題とは?「2025年の崖」と中小企業が進まない理由、メリット、失敗しない進め方
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- DXの課題(レガシーシステム・人材不足・経営方針)と「2025年の崖」の意味がわかる
- 中小企業のDXが進まない理由と、取り組んだ企業が得ているメリットが公的データでわかる
- 短期・中期・長期の進め方と、DXが進まない企業に共通する失敗パターンがわかる
DXの課題は、大きく「古い基幹システム(レガシーシステム)」「IT・DXを担う人材の不足」「経営としての方針や予算の不足」の3つに整理できます。経済産業省が2018年の『DXレポート』で「2025年の崖」と呼んだのは、このうち古いシステムを使い続けることで生じる経済損失のリスクでした。2025年を過ぎた今、中小企業の調査では「ITに関わる人材が足りない」が課題の1位となっており、崖の中身はシステムの問題から人の問題へと重心が移りつつあります。この記事では、公的な調査データをもとにDXの課題を整理し、DXで得られるメリット、失敗を避けるための進め方までを解説します。
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DXの課題の1位はIT人材不足|社内育成に使えるIT研修向けeラーニングを比較
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2026年2月に公表した「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」では、DXに取り組むうえでの課題として「ITに関わる人材が足りない」が28.3%で最も多く、「DX推進に関わる人材が足りない」も25.6%にのぼりました。いずれも前回調査より増えています(中小機構)。
人材不足への対応というと採用を思い浮かべがちですが、IT人材は大企業との獲得競争になりやすく、中小企業が即戦力を採るのは簡単ではありません。同じ調査では、DX推進に向けて期待する支援策として「研修制度」を挙げた企業が16.0%と前回より増えており、今いる社員を育てる方向に関心が高まっていることがうかがえます。社内でITの基礎を学ぶ手段として比較されることの多い、IT研修向けのeラーニングを見てみましょう。
| サービス | 強み | 検討時の留意点 |
|---|---|---|
| Schoo for Business | ITリテラシーやDXの基礎からビジネススキルまで、幅広いテーマの動画講座をそろえている | 講座が多いため、社員ごとに受講する講座を決めておかないと学習が散漫になりやすい |
| Udemy Business | プログラミングやクラウド、データ分析など技術寄りの講座が豊富 | 専門的な講座が中心のため、IT初心者には入門講座から順に案内する必要がある |
| Aidemy Business | AIやデータ活用など、DX人材の育成に焦点を当てた講座がある | 学んだ内容を業務で使う場面を、社内で用意しておくことが大切 |
| AirCourse | 用意された講座に加えて、自社独自の研修動画も配信・管理できる | 自社コンテンツを作る場合は、作成と更新の担当者を決める必要がある |
もちろん、eラーニングだけでDXの課題がすべて解決するわけではありません。古いシステムの刷新や経営としての方針づくりは、別に取り組む必要があります。ただ、課題の一つであるIT人材不足への対応として、社員全員がITの基礎をそろえておくと、ツール導入時の抵抗感が減り、社内で改善のアイデアも出やすくなります。自社の社員のレベルや学ばせたい分野に合うサービスを比べるところから始めてみましょう。
「2025年の崖」とは|DXレポートが指摘した課題
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年9月に公表した『DXレポート』で示された言葉です。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残り続けると、2025年以降、最大で年間12兆円(当時の約3倍)の経済損失が生じる可能性があると指摘されました(経済産業省)。
レポートが挙げた課題は、次のように整理できます。
| 課題 | DXレポートでの指摘 | 企業にとっての影響 |
|---|---|---|
| システムの老朽化 | 基幹システムが21年以上稼働している企業の割合が、2025年には6割に達すると予測 | 部品やソフトのサポートが終わり、障害や改修のリスクが高まる |
| ブラックボックス化 | 場当たり的な改修の繰り返しで、システムの全体像を誰も把握できなくなる | データを活用しようにも、どこに何があるかわからない |
| 維持管理費の増大 | このままではIT予算の9割以上が既存システムの維持管理に使われる「技術的負債」の状態になる | 新しい取組に回せる予算が残らない |
| 人材の不足 | 古いシステムを知る人材の退職と、新しい技術を担う人材の不足が同時に進む | システムを直すことも、新しく作ることも難しくなる |
4つの課題は互いにつながっています。古いシステムを使い続けるほど維持管理費がかさみ、仕組みを知る人が減るほどブラックボックス化が進みます。レポートはシステムの問題を入口にしながら、最終的には「それを直し、変えていける人と体制がない」ことを問題にしていたといえます。
2025年を過ぎた今、崖はどうなったのか
2025年を迎えても、ある日突然すべての企業のシステムが止まったわけではありません。「2025年の崖」は、特定の日に起きる事件ではなく、古いシステムと人材不足を放置した企業ほど、じわじわと競争力を失っていくという構造を示した言葉です。
実際、中小機構の2025年の調査で「既存システムがブラックボックス化している」を課題に挙げた中小企業は8.2%にとどまり、上位は人材と予算の問題が占めています。大規模な基幹システムを持たない中小企業にとって、崖の中心はシステムの老朽化よりも、「デジタル化を進められる人がいない」ことに移っていると考えられます。
中小企業がDXに取り組めない理由|理解度と必要性のギャップ
中小機構の同じ調査から、中小企業のDXの現状を見てみましょう。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| DXを必要だと思う(「必要」「ある程度必要」の合計) | 73.3% |
| DXを理解している(「理解している」「ある程度理解している」の合計) | 49.2% |
| DXに取り組んでいる(「既に取り組んでいる」「検討している」の合計) | 39.1% |
| DXのビジョンやロードマップを策定済み | 9.3% |
7割以上の企業がDXを必要だと感じている一方で、理解しているのは約半数、実際に取り組んでいるのは4割弱です。「必要なのはわかるが、何をすればよいかわからない」という企業が多いことが、この数字の差から読み取れます。
取組を阻む課題の上位は次のとおりです(複数回答)。
| DXに取り組むうえでの課題 | 割合 |
|---|---|
| ITに関わる人材が足りない | 28.3% |
| 予算の確保が難しい | 26.0% |
| DX推進に関わる人材が足りない | 25.6% |
| 具体的な効果や成果が見えない | 21.4% |
| 何から始めてよいかわからない | 13.9% |
規模によって課題の順位は変わります。従業員20人以下の企業では「予算の確保が難しい」(28.1%)が最も多く、「具体的な効果や成果が見えない」(22.5%)が続きます。従業員21人以上の企業では「ITに関わる人材が足りない」(36.4%)と「DX推進に関わる人材の不足」(34.7%)が突出しています。小規模な企業ほどお金と効果の見えにくさ、ある程度の規模の企業ほど人の問題がネックになっているといえます。
数字に表れにくい組織の課題|社内の温度差と部門間の連携不足
アンケートの選択肢には出てきにくいものの、DXを止める原因としてよく挙げられるのが組織の課題です。1つは社内の温度差です。経営層がDXの必要性を感じていても、その理由や目指す姿が現場や中間管理職に伝わっていなければ、新しいツールや業務の進め方は「手間が増えるだけ」と受け止められ、使われないまま終わってしまいます。もう1つは部門間の連携不足です。『DXレポート』でも、事業部門ごとにシステムが個別に作られ、全社でデータを横断的に活用できないことが課題として指摘されています。部門ごとにバラバラにツールを入れると、同じデータを何度も入力したり、部門をまたぐ業務だけが紙のまま残ったりしがちです。こうした課題は、経営層が目的を言葉にして全社に共有すること、そして部門をまたいで改善を進める担当者や場を決めておくことで和らげられます。
DXの主なメリット|課題を乗り越えた先に得られるもの
課題が多い一方で、取り組んだ企業の多くは成果を実感しています。中小機構の調査では、DXに既に取り組んでいる企業のうち78.3%が「成果が出ている」「ある程度成果が出ている」と回答しました。具体的な成果として多く挙がったものは次のとおりです。
| メリット | 成果として挙げた割合 | 具体的なイメージ |
|---|---|---|
| 業務の自動化、効率化 | 52.0% | 手作業の転記や集計が減り、残業が減る |
| コストの削減、生産性の向上 | 43.9% | 紙や郵送の費用、作業時間が減る |
| データの一元化、データに基づく意思決定 | 41.9% | 売上や顧客の情報をすぐに確認して判断できる |
| 働き方改革、多様な働き方の実現 | 31.8% | 外出先や自宅からも社内の書類を確認できる |
成果の多くは、業務の効率化やコスト削減といった身近なものです。DXというと新しいビジネスモデルづくりのような大きな変革を想像しがちですが、中小企業ではまず日々の業務を楽にすることが成果の中心になっています。こうした小さな成果の積み重ねが、データを活用した経営判断や新しいサービスづくりにつながっていきます。
失敗を避けるための3つの戦略|短期・中期・長期
DXの課題は、一度にすべて解決しようとすると失敗しやすくなります。時間軸で分けて、取り組む順番を決めておきましょう。
| 期間 | やること | 対応する課題 |
|---|---|---|
| 短期(数か月) | 困っている業務を1つ選び、クラウドサービスなどで小さく改善する。改善前後の作業時間を測る | 効果が見えない、何から始めればよいかわからない |
| 中期(1年程度) | 社員全員のITの基礎をそろえる研修を仕組み化し、改善を担う社内の推進役を育てる | IT人材・DX推進人材の不足 |
| 長期(数年) | 経営としてDXの方針とロードマップを定め、古いシステムを段階的に置き換える | レガシーシステム、経営方針の不在 |
短期の改善で効果を数字で示せると、予算を確保しやすくなり、社内の協力も得やすくなります。その成果を一部の詳しい社員だけのものにせず、組織全体に広げるのが中期の人材育成です。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」でも、DXを進めるための人材の育成・確保は、経営者が取り組むべき項目の一つとされています。
中期の人材育成で大切なのは、研修を思いつきで単発に行うのではなく、受講する講座、学習の期限、学んだことを試す業務までを決めて仕組みにすることです。eラーニングを使えば、社員ごとの受講状況を管理者が確認でき、業務の合間に少しずつ学ぶ形を作りやすくなります。
DXが進まない企業に共通する失敗パターン
DXの課題に取り組んでも成果が出ない企業には、次のような共通点があります。
| 陥りやすい進め方(Before) | 改善した進め方(After) |
|---|---|
| ツールを導入すること自体が目的になっている | 解決したい課題と、改善を測る数字を先に決める |
| DXを情報システム担当者や詳しい社員1人に任せきりにする | 経営層が方針を示し、現場の社員も巻き込んで進める |
| 基幹システムを一度にすべて入れ替えようとする | 影響の小さい業務から段階的に置き換える |
| ツールを入れたが、使い方を教えずに現場へ任せる | 導入と同時に研修を行い、社員のITの基礎をそろえる |
| 効果を測らずに取組を広げる | 小さく試して効果を確認してから、他の業務へ広げる |
とくに多いのが、特定の社員に任せきりにするパターンです。その社員が異動や退職をすると取組が止まり、新たなブラックボックスが生まれてしまいます。「2025年の崖」で指摘された、仕組みを知る人がいなくなる問題を、自社の中で小さく繰り返さないよう注意しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. DXの課題にはどのようなものがありますか?
A. 大きく分けて、古い基幹システム(レガシーシステム)の老朽化・ブラックボックス化、ITやDXを担う人材の不足、経営としての方針や予算の不足の3つです。中小機構の2025年の調査では、中小企業の課題の1位は「ITに関わる人材が足りない」(28.3%)でした。
Q2. 「2025年の崖」とは何ですか?
A. 経済産業省が2018年の『DXレポート』で示した言葉です。複雑化・老朽化した既存システムが残り続けると、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘されました。
Q3. 2025年を過ぎた今、「2025年の崖」はもう関係ありませんか?
A. 関係あります。「2025年の崖」は特定の日に起きる出来事ではなく、古いシステムと人材不足を放置した企業ほど競争力を失っていくという構造を示したものです。2025年を過ぎても、IT人材不足などの課題はむしろ深刻になっています。
Q4. 中小企業がDXに取り組めない理由は何ですか?
A. 中小機構の調査では、「ITに関わる人材が足りない」「予算の確保が難しい」「DX推進に関わる人材が足りない」が上位でした。DXを必要だと思う企業が73.3%いる一方で、理解している企業は49.2%にとどまり、必要性と理解の間に差があることも一因です。
Q5. DXに取り組むメリットは何ですか?
A. 業務の自動化・効率化、コスト削減と生産性の向上、データに基づく意思決定、多様な働き方の実現などです。中小機構の調査では、DXに既に取り組んでいる企業の78.3%が成果を実感しています。
Q6. IT人材が社内にいない場合、何から始めればよいですか?
A. 外部からの採用だけに頼らず、今いる社員のITの基礎をそろえる社内教育から始めるのが現実的です。eラーニングなどで学習を仕組み化しつつ、困っている業務を1つ選んで小さく改善し、効果を数字で確かめながら進めましょう。
まとめ
DXの課題は、レガシーシステム、人材不足、経営方針や予算の不足の3つに整理できます。押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 「2025年の崖」は古いシステムの問題として示されたが、中小企業にとっての中心的な課題は、今やIT人材・DX推進人材の不足に移っている。
- DXを必要だと思う企業は7割を超える一方、理解し取り組んでいる企業は半数に満たない。取り組んだ企業の約8割は成果を実感している。
- 短期は小さな業務改善で効果を示し、中期は社内の人材育成を仕組み化し、長期で方針づくりとシステムの段階的な刷新に取り組む。
参考文献
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)アンケート調査報告書」(令和8年2月) https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202602_DX_report.pdf
- 経済産業省「DXレポート ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」(平成30年9月7日) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
- 経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
- 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
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