DX事業とは|2つの意味と提供側の産業レイヤーを整理
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- DX事業に含まれる2つの意味の違いがわかる
- DXを提供する側の産業レイヤーの構成がわかる
- 外部依頼先を検討する際の考え方がわかる
「DX事業」という言葉を目にした際、「自社がDXに取り組む事業活動」と「DXを支援する側の事業(産業)」のどちらを指しているのか、文脈によって分かりにくいことがあります。本記事では、DX事業の2つの意味を整理し、DXを提供する側の産業がどのようなレイヤーで構成されているかを解説します。
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DX事業の2つの意味
DX事業には、「自社がDXに取り組む事業活動そのもの」という意味と、「他社のDXを支援する側の事業(産業)」という意味の2つがあります。
| 意味 | 具体例 |
|---|---|
| 自社が取り組む事業活動 | 「当社のDX事業の一環として業務システムを刷新した」 |
| 支援する側の事業(産業) | 「DX事業を展開するITベンダー・コンサル会社」 |
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」は前者(企業がDXに取り組む活動)を主に想定した文書ですが(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html 2026年8月13日取得)、市場・産業の文脈で「DX事業」と言う場合は、後者(支援する側の産業)を指すことが多くあります。文脈に応じてどちらの意味かを見極めることが必要です。
DXを提供する側の産業レイヤー
DXを提供する側の産業は、経営戦略の設計を担う「コンサルティング層」、システム開発・導入を担う「SI(システムインテグレーション)層」、クラウド・データ基盤を提供する「インフラ層」という3つのレイヤーで構成されています。
企業がDXを進める際は、これら3レイヤーのどの部分を外部に依頼し、どの部分を自社で担うかを整理する必要があります。例えば、経営戦略の方向性は自社で決め、システム開発・データ基盤の整備は外部の専門事業者に依頼するという分担が一般的です。社内に散在するファイルをクラウド上で一元管理し、保守・運用を外部サービスに委ねるオンラインストレージの活用は、まさにインフラ層を外部化する典型例であり、3レイヤーの切り分けを具体的にイメージする入り口になります。
産業レイヤーごとの事業者の見極め方
コンサルティング層・SI層・インフラ層のそれぞれで、事業者を選ぶ際に確認しておきたい視点が異なります。レイヤーの性質に合わせた見極め方を押さえておくと、発注先選定で失敗しにくくなります。
コンサルティング層の事業者を選ぶ際は、業界・業種に関する知見の深さと、過去の支援実績が自社と近い規模・業種にあるかを確認することが重要です。経営戦略の設計は、汎用的なフレームワークを当てはめるだけでは自社の実情に合わない提案になりがちなため、実際に自社と似た課題を扱った経験があるかどうかが、提案の質を左右します。SI層の事業者を選ぶ際は、提案されるシステムが自社の既存システムとどこまで連携できるか、開発後の保守・運用体制がどうなっているかを確認します。開発だけを請け負い、その後の運用サポートが手薄な事業者を選ぶと、システム稼働後にトラブルが起きた際の対応が遅れるリスクがあります。インフラ層の事業者を選ぶ際は、データの保存場所・セキュリティ基準・料金体系の透明性を確認することが基本です。
3つのレイヤーをすべて同じ事業者に依頼するか、レイヤーごとに異なる事業者に依頼するかは、自社の体制によって判断が分かれます。社内に発注先を横断的に管理できる担当者がいる場合は、レイヤーごとに専門性の高い事業者を個別に選ぶことで、それぞれの分野でより質の高いサービスを受けられる可能性があります。一方、発注管理の負担を抑えたい場合は、複数レイヤーを一括して提供できる総合的な事業者にまとめて依頼する選択肢も現実的です。
規模別に見るDX事業の関わり方
個人事業主・中小企業・中堅大企業では、DX事業(自社の取り組み)との関わり方も、DX事業(支援する側の産業)との付き合い方も大きく異なります。
個人事業主にとって、DX事業という言葉は「自社の取り組み」という意味で使う場面がほとんどで、支援する側の産業構造を意識する必要は薄いといえます。外部の事業者に依頼する場合も、コンサル・SI・インフラといったレイヤーを厳密に区別せず、必要な機能をまとめて提供してくれるクラウドサービスを直接契約する形が現実的です。中小企業では、社内の情報システム担当者が少ないケースが多いため、レイヤーを細かく分けて複数の事業者と個別に契約するよりも、ある程度まとまった範囲を任せられる事業者を選ぶ方が、管理の手間を抑えられます。
中堅・大企業では、社内に専任のDX推進部門や情報システム部門を持つケースが多く、レイヤーごとに専門性の高い事業者を使い分ける発注戦略を取りやすくなります。特に、複数の事業部門にまたがる大規模なDXプロジェクトでは、コンサルティング層で全体方針を固めたうえで、SI層・インフラ層それぞれに強みを持つ事業者を個別に選定し、社内のプロジェクト管理担当者がこれらを統括する体制が一般的です。自社の規模と社内体制に応じて、外部のDX事業(産業)とどこまで細かく付き合うかを判断することが、実務上のポイントになります。
DX事業の理解でよくある失敗パターン3つ
2つの意味を区別せずに使う、産業レイヤーを意識せずに外部依頼先を決める、すべてを1社に任せようとするという3つが、DX事業の理解でよく見られる失敗の典型です。
失敗パターン1:2つの意味を区別せずに使う。自社の取り組みと産業全体の話を混同し、社内の議論が噛み合わないケースです。文脈に応じてどちらの意味かを見極めることが回避策になります。
失敗パターン2:産業レイヤーを意識せずに外部依頼先を決める。コンサル・SI・インフラの役割を区別せずに1社に丸投げしようとするケースです。レイヤーごとの役割を理解して依頼先を検討することが回避策になります。
失敗パターン3:すべてを1社に任せようとする。経営戦略からシステム開発まで1社に依存し、判断の主体性を失うケースです。経営戦略は自社で決めるという原則を保つことが回避策になります。
業界別に見るDX事業の進み方の違い
製造業・小売業・サービス業では、DX事業(自社の取り組み)として優先されるテーマが異なり、それに伴って外部の産業レイヤーとの関わり方も変わってきます。
製造業では、生産設備の稼働データを収集・分析する基盤づくりや、サプライチェーン全体の可視化がDX事業の中心テーマになりやすい業界です。工場の生産ラインは長年の運用で個別最適化されたシステムが混在していることが多く、SI層の事業者を選ぶ際には、既存の生産管理システムとの接続実績があるかどうかが重要な判断材料になります。コンサルティング層に依頼する場合も、製造現場の業務プロセスを理解した支援ができるかどうかが、提案の実効性を左右します。
小売業では、店舗とオンラインの購買データを統合し、在庫管理や顧客対応に活かす取り組みがDX事業の中心になりやすい傾向があります。店舗数が多い企業ほど、インフラ層の事業者を選ぶ際にデータの処理速度や複数拠点からのアクセスへの対応力が重視されます。サービス業では、予約管理や顧客とのコミュニケーションを効率化するクラウドサービスの導入から着手するケースが多く、コンサルティング層への依頼よりも、まずインフラ層のサービスを直接契約して小さく始める企業も少なくありません。業界ごとに優先度の高いテーマが異なるため、他業界の成功事例をそのまま自社に当てはめるのではなく、自社の業務プロセスに即して外部依頼先のレイヤーを選ぶことが大切です。
DX事業を進める際の社内体制づくり
外部の産業レイヤーとうまく付き合うためには、社内側でも発注内容を整理し、進捗を管理できる体制を最低限整えておく必要があります。
まず着手すべきは、自社のDX事業(取り組み)の目的を、経営層と現場の双方が共有できる言葉で言語化することです。目的があいまいなまま外部の事業者に相談すると、コンサルティング層の提案が総花的になり、結局どこから着手すべきか判断できないまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。次に、社内のどの部門が発注窓口になるかを明確にしておきます。情報システム部門が窓口になる場合と、事業部門が主導する場合とでは、SI層・インフラ層の事業者に求める要件の粒度が変わってくるため、窓口を一本化しておくことで、事業者とのやり取りに一貫性を持たせやすくなります。
また、複数レイヤーの事業者に同時に依頼する場合は、レイヤー間の情報連携が滞らないよう、定期的な進捗共有の場を設けることも欠かせません。コンサルティング層が描いた戦略とSI層が実際に開発するシステムの仕様がずれてしまうと、手戻りが発生し、プロジェクト全体のスケジュールに影響します。社内の発注担当者が各レイヤーの事業者から出てくる報告内容を横断的に把握し、齟齬があれば早期に調整する役割を担うことが、DX事業を計画通りに進めるうえでの実務的なポイントになります。
産業レイヤーをまたぐ契約でありがちなトラブル
コンサルティング層・SI層・インフラ層のそれぞれに別の事業者を使う場合、レイヤーの境目で責任の所在があいまいになり、トラブルにつながることがあります。
典型的な例として、コンサルティング層が描いた戦略に基づいてSI層がシステムを開発したものの、実際に運用を始めてからインフラ層側の制約(データ容量や連携仕様の上限など)が判明し、当初の想定通りに機能が使えないというケースがあります。契約時点でレイヤー間の連携条件を確認していないと、どの事業者の責任範囲かがはっきりせず、対応が後手に回りやすくなります。これを避けるには、複数の事業者に発注する前の段階で、レイヤー間のインターフェース(データの受け渡し方法や連携仕様)について、関係する事業者間で事前にすり合わせをしてもらうよう依頼しておくことが有効です。
また、契約更新のタイミングがレイヤーごとにばらばらだと、1つのレイヤーの事業者を切り替えたい場合に、他のレイヤーとの連携が崩れるリスクもあります。可能であれば、主要なレイヤーの契約期間をある程度そろえておき、見直しのタイミングを合わせておくと、事業者の切り替えに伴う影響を把握しやすくなります。社内の発注担当者は、契約書の中でレイヤー間の連携に関する責任分担が明記されているかを確認し、あいまいな場合は事業者側に説明を求める姿勢を持つことが望ましいといえます。
よくある質問(FAQ)
Q1. DX事業には何種類の意味がありますか?
A. 「自社がDXに取り組む事業活動」と「他社のDXを支援する側の事業(産業)」という2つの意味があります。
Q2. どちらの意味かはどう見分ければよいですか?
A. 企業がDXに取り組む活動の文脈か、市場・産業としてDXを提供する側の話をしているかで見分けられます。
Q3. DXを提供する側の産業はどのようなレイヤーで構成されますか?
A. 経営戦略の設計を担うコンサルティング層、システム開発・導入を担うSI層、クラウド・データ基盤を提供するインフラ層の3レイヤーで構成されます。
Q4. 経営戦略の部分も外部に任せてよいですか?
A. 経営戦略の方向性は自社で決め、システム開発・データ基盤の整備を外部に依頼するという分担が一般的です。
Q5. 文書管理システムはどのレイヤーに位置づけられますか?
A. クラウド基盤を活用する取り組みとして、インフラ層の外部活用の一例に位置づけられます。
Q6. すべてを1社に依頼するのは適切ですか?
A. 経営戦略の判断の主体性を保つため、すべてを1社に依存する体制は避けることが望ましいとされています。
まとめ|今日からできる3つのこと
- DX事業の2つの意味を区別する:自社の活動か産業全体の話かを見極めます。
- 産業レイヤーを理解する:コンサル・SI・インフラの役割を区別します。
- 経営戦略の主体性を保つ:すべてを1社に依存しません。
参考文献
- 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html(2026年8月13日取得)
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