SaaSの選び方|5つの判断基準

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  • 選定の5つの判断基準がわかる
  • 契約前に確認すべきセキュリティ・法務チェックポイントがわかる
  • 業種別に選定基準の重み付けがどう変わるかがわかる

SaaSを選ぶ際、ランキング記事を参考にしても、自社に本当に合うサービスかどうかは判断しづらいことがあります。本記事は「何を基準にSaaSを選ぶか」という判断基準そのものに焦点を当て、選定の5つの観点と、契約前に確認すべきセキュリティ・法務論点を実務的に解説します。ランキングサイトの比較軸の見抜き方や業務カテゴリ別の詳しい整理については、SaaS業界ランキングを鵜呑みにしない見方で詳しく取り上げているので、あわせてご覧ください。

目次

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  1. SaaSサービスの分野別カテゴリマップ
  2. 選定の5つの観点
  3. セキュリティ・契約の確認点
  4. 業種別に見る選定基準の重み付け
  5. 契約・法務面で確認すべき論点
  6. 選定にかかる期間の目安
  7. SaaS選定でよくある失敗パターン3つ
  8. 導入後の運用フェーズで見落としやすいポイント
  9. 複数SaaSを併用する場合のID・権限管理の考え方
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ|今日からできる3つのこと
  12. 参考文献

SaaSサービスの分野別カテゴリマップ

営業・顧客管理、会計・経理、人事・労務、コミュニケーション、プロジェクト管理、ファイル・ストレージ、マーケティング、業種特化型という8つが、SaaSサービスの主な分野別カテゴリです。横断型は業種を問わず使える機能を提供し、業種特化型は特定業界の業務慣行に合わせて設計されています。コミュニケーション領域に含まれるグループウェアは、横断型の代表例として、業種を問わず多くの企業が導入しています。各カテゴリの詳しい特徴や、業務カテゴリごとにランキング情報をどう読み解くかは、SaaS業界ランキングを鵜呑みにしない見方で整理しているため、ここでは選定基準の理解に必要な最小限の分類にとどめます。

選定の5つの観点

機能適合、セキュリティ・情報開示、コスト構造、拡張性・連携性、運用体制・サポートという5つが、SaaS選定における判断基準です。企業規模によって重視すべき順位は異なり、大企業ほどセキュリティと拡張性を優先し、中小企業はコスト構造と運用のしやすさを優先する傾向があります。それぞれの観点で「何を」「どこまで」確認するかを具体的に見ていきます。

観点 確認内容
機能適合 自社業務に必要な機能があるか。カスタマイズの可否と範囲
セキュリティ・情報開示 認証・データ保護の状況。情報開示の透明性
コスト構造 料金体系・追加費用の有無。ユーザー数に応じた課金の変動
拡張性・連携性 既存システムとの連携可否。API・外部サービス連携の対応範囲
運用体制・サポート 導入後のサポート体制。障害発生時の対応スピード
図1:SaaS選定の5つの観点

機能適合の確認では、必要機能の有無だけでなく、自社の業務フローに合わせたカスタマイズがどこまで可能かを見ます。標準機能だけで運用できるか、追加開発や外部ツールとの組み合わせが必要になるかによって、導入後の運用負荷が大きく変わります。無料トライアルがある場合は、実際の業務データに近い形で試用し、現場の担当者が違和感なく使えるかを確認しておくと、導入後のミスマッチを避けやすくなります。

セキュリティ・契約の確認点

認証取得の有無、データ保存地域、契約解除時のデータ返還条件、委託先の再委託状況という4点を、契約前に確認しておくことが重要です。無料プランであっても、データの取り扱いに関する確認は有料プランと同様に必要です。個人情報を取り扱う業務でSaaSを利用する場合は、個人情報保護委員会が示す委託先の監督責任の考え方に沿って、委託先(SaaS事業者)の安全管理措置を確認する必要があります。情報セキュリティ全般の基礎的なチェック観点は、IPA(情報処理推進機構)の情報セキュリティ関連情報も参考になります。

確認項目 確認のポイント
認証取得の有無 第三者認証の取得状況と、その認証範囲(全社か一部サービスか)
データ保存地域 国内・海外どちらのデータセンターで保存されるか
契約解除時のデータ返還 解約後のデータ返還方法・期限・削除証明の有無
再委託の状況 SaaS事業者がさらに別の事業者にインフラ運用等を委託していないか
図2:契約前チェックリスト

業種別に見る選定基準の重み付け

同じ5つの観点でも、業種によって重視すべき優先順位は異なります。製造業、小売・EC業、専門サービス業(士業・コンサルティング等)を例に、選定基準の重み付けの違いを見ていきます。

製造業では、既存の基幹システム(生産管理・在庫管理)との連携可否が最優先事項になりやすい業種です。拡張性・連携性の確認を怠ると、SaaS単体では便利でも、既存システムとの二重入力が発生し、かえって業務負荷が増えるケースがあります。

小売・EC業では、繁忙期のアクセス集中に耐えられるかという運用体制の確認が重要になります。セール期間中にシステムが不安定になると機会損失に直結するため、サポート体制と障害対応の実績を重点的に確認する価値があります。

専門サービス業(士業・コンサルティング等)では、顧客情報を扱う機会が多いため、セキュリティ・情報開示の確認が最優先になります。守秘義務のある情報を扱う以上、コスト構造よりもデータ保護の実効性を優先して比較検討することが望ましいといえます。

契約・法務面で確認すべき論点

個人情報保護法に基づく委託先管理の責任と、会計・経理系SaaSを利用する場合の電子帳簿保存法対応の2点は、契約前に確認しておくべき法務論点です。個人情報を含むデータをSaaS事業者に委託する場合、委託元(自社)にも委託先に対する必要かつ適切な監督義務があるとされています。また、会計・経理領域のSaaSでは、電子帳簿保存法が求める要件(訂正削除履歴の保存、検索機能の確保等)を満たしているかを確認する必要があります。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を目的としたものではありません。個別の契約内容の法的な妥当性については、弁護士等の専門家に確認することをおすすめします。

選定にかかる期間の目安

SaaS選定は、要件整理から契約締結まで、中小企業で1-2か月程度、複数部門が関わる中堅・大企業では2-4か月程度が目安とされます。期間の中央値は、比較検討するサービス数や、社内の意思決定プロセスの複雑さによって変わります。急いで1社に絞り込むよりも、無料トライアルの期間(多くは2週間から1か月程度)を活用し、実際の業務データに近い形で試用してから最終判断する進め方のほうが、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。

複数部門が関わる導入では、選定基準そのものよりも、部門間の優先順位のすり合わせに時間がかかることが多い傾向があります。情報システム部門はセキュリティ・拡張性を、利用部門は機能適合・使いやすさを重視しがちなため、選定初期の段階で本記事の5つの観点を共通言語として使い、部門間の評価軸をそろえておくと、意思決定にかかる期間を短縮しやすくなります。

SaaS選定でよくある失敗パターン3つ

ランキングだけで選ぶ、5つの観点の一部しか確認しない、企業規模に合わない優先順位で判断するという3つが、SaaS選定でよく見られる失敗の典型です。

失敗パターン1:ランキングだけで選ぶ。自社の業務に合わないサービスを、人気だけで選んでしまうケースです。ランキングの比較軸を確認せずに順位だけを信頼すると、業務カテゴリのミスマッチに気づかないまま導入してしまうことがあります。ランキング情報の読み解き方はSaaS業界ランキングを鵜呑みにしない見方で解説しています。

失敗パターン2:5つの観点の一部しか確認しない。機能面だけを見てセキュリティや拡張性を見落とすケースです。5観点を一通り確認することが回避策になります。

失敗パターン3:企業規模に合わない優先順位で判断する。中小企業が大企業向けの評価基準をそのまま使い、過剰な要件を求めてしまうケースです。自社の規模に応じた優先順位をつけることが回避策になります。

導入後の運用フェーズで見落としやすいポイント

選定段階で5つの観点を確認しても、導入後の運用フェーズで新たな課題が表面化することがあります。代表的なのは、利用部門の増加に伴うアカウント数の想定超過、他システムとの連携設定の維持コスト、そしてアップデートによる仕様変更への対応です。契約前の比較検討だけで満足せず、導入後も一定のサイクルで運用状況を見直す前提を持っておくと、後になって「選定基準は正しかったが運用が回っていない」という事態を避けやすくなります。

アカウント数の想定超過は、コスト構造の確認が不十分な場合に起きやすい問題です。導入時は少人数での試験運用だったものが、全社展開の段階でユーザー数課金の総額が想定を超えてしまうケースがあります。契約前の見積もりでは、初期導入人数だけでなく、半年後・1年後に想定される利用部門数を踏まえて概算を出しておくと、後からのコスト超過に気づきやすくなります。

他システムとの連携設定は、導入直後だけでなく継続的な保守が必要になる点も見落とされがちです。連携先システムの仕様変更やAPIの更新によって、当初動いていた連携が突然止まることがあります。拡張性・連携性の観点で確認すべきは、連携できるかどうかだけでなく、連携部分に不具合が起きた際にどちらの事業者がどこまで対応するのかという役割分担も含まれます。

SaaSは提供事業者側の判断で機能や画面仕様が更新されることが一般的で、オンプレミス型のシステムのように自社の都合でアップデート時期を選べないという特性があります。業務フローがSaaSの特定の画面構成に強く依存していると、仕様変更のたびに現場が混乱する可能性があります。運用体制・サポートの確認時には、仕様変更が発生した際の事前告知の有無や告知タイミングも合わせて確認しておくと安心です。

複数SaaSを併用する場合のID・権限管理の考え方

複数のSaaSを併用する企業では、サービスごとに個別にアカウントを発行・管理する運用のままでは、退職者のアカウント削除漏れや、部署異動時の権限見直し漏れといったリスクが積み重なっていきます。SaaSの数が増えるほど、情報システム部門が個別に管理できる限界を超えやすくなるため、選定段階からID・権限管理の方式についても検討しておくことが望ましいといえます。

選定時に確認しておきたいのは、シングルサインオン(SSO)への対応可否と、他システムとのユーザー情報連携(プロビジョニング)の対応範囲です。SSOに対応しているサービスであれば、既存の認証基盤と連携させることで、パスワード管理の負担軽減とセキュリティ水準の底上げを同時に図りやすくなります。SSO非対応の場合は、パスワードの使い回しや管理台帳の属人化といった運用リスクが残りやすいため、セキュリティ・情報開示の観点として重点的に確認する価値があります。

権限管理の設計では、役職や部署に応じて閲覧・編集・管理者権限を細かく分けられるかどうかも確認しておくべき点です。権限設定が大まかにしか分けられないサービスの場合、本来は閲覧のみでよい担当者にも編集権限を付与せざるを得なくなり、意図しないデータ変更や情報漏えいのリスクが高まります。特に会計・経理や人事・労務のように機微な情報を扱うカテゴリのSaaSでは、権限の粒度を導入前に確認しておくことが、契約・法務面の論点とあわせて重要になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaSと業務アプリの違いは何ですか?

A. SaaSはインターネット経由でのサービス提供形態を指し、業務アプリはその中の個別の製品を指すことが多いです。

Q2. SaaSとASPの関係はどうなっていますか?

A. ASPはSaaSに先行する形態で、マルチテナント方式や自動アップデートといった点でSaaSとは技術的に異なります。

Q3. ランキングはどこまで信頼できますか?

A. 参考程度に留め、自社の業務適合性は本記事の5つの観点で確認することが望ましいです。ランキングの比較軸の見抜き方は別記事で詳しく解説しています。

Q4. 無料プランは安全ですか?

A. 無料プランであっても、データの取り扱いに関する確認は有料プランと同様に必要です。

Q5. 業種特化型と横断型はどちらを選ぶべきですか?

A. 特定業界の業務慣行に合わせたい場合は業種特化型、幅広い業務に使いたい場合は横断型が適しています。

Q6. 中小企業が最初に導入しやすいSaaSは何ですか?

A. コミュニケーション領域のグループウェアのような、横断型で導入しやすいサービスが選択肢になります。

Q7. 契約解除時のデータ返還条件は何を確認すればよいですか?

A. データの返還方法・返還期限・削除完了の証明有無の3点を確認し、解約時に自社データを確実に取り戻せるかを事前に把握しておくことが重要です。

まとめ|今日からできる3つのこと

  1. 5つの観点を一通り確認する:機能面だけで判断しません。
  2. 契約前にセキュリティ・法務論点を確認する:導入後に慌てて確認しません。
  3. 自社の業種・規模に応じた優先順位をつける:一律の基準で判断しません。

ランキング記事や比較サイトの情報をどう読み解くかについては、SaaS業界ランキングを鵜呑みにしない見方で詳しく解説しています。

参考文献

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