SaaS・PaaS・IaaSの違いと責任分界

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  • SaaS・PaaS・IaaSの違いと責任分界がわかる
  • ASPとSaaSの技術的な違いがわかる
  • 規模・目的別の選び方がわかる

クラウドサービスの障害やセキュリティ事故が起きたとき、「どこまでがベンダーの責任で、どこからが自社の責任なのか」が分からず対応に迷うことがあります。3用語の基本的な違い・選び方はSaaSとPaaS・IaaS・ASPの違いを解説した記事で整理しています。本記事では、それを踏まえたうえで「責任分界」という観点に絞り、3層モデルとASPの位置づけを整理します。

目次

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  1. SaaS・PaaS・IaaSの違いを一言で
  2. 3層モデルの責任分界
  3. ASPとSaaSの違い
  4. どれを選ぶべきか|規模・目的別の判断ポイント
  5. 障害・セキュリティ事故が起きたときの初動対応
  6. 3層モデルの理解でよくある失敗パターン3つ
  7. 契約前に確認しておきたいSLA(サービス品質保証)の見方
  8. 業種・業務別に見る3層モデルの使い分けイメージ
  9. データのバックアップと復旧に関する責任の所在
  10. 複数のクラウドサービスを併用する場合の責任分界の注意点
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ|今日からできる3つのこと

SaaS・PaaS・IaaSの違いを一言で

SaaSはソフトウェア、PaaSは開発・実行基盤、IaaSはサーバー等のインフラを、それぞれインターネット経由で提供する形態です。NIST(米国国立標準技術研究所)の定義に基づくと、提供される層が異なるだけで、いずれもインターネット経由でリソースを利用する点は共通しています。

3層モデルの責任分界

IaaSではOSより上の層を利用者が管理する必要があり、PaaSではアプリケーションの部分を利用者が管理し、SaaSではベンダーがほぼすべての層を管理するという違いがあります。障害対応やセキュリティ事故が起きた際、どの層に責任があるかを把握しておくことが、迅速な対応につながります。

形態 利用者が管理する範囲
IaaS OS以上のすべて
PaaS アプリケーション部分のみ
SaaS 利用者側の管理はほぼ不要
図1:3層モデルの責任分界

ASPとSaaSの違い

ASPはシングルテナント型で利用者ごとに個別のシステムを用意するのに対し、SaaSはマルチテナント型で複数の利用者が同一システムを共有するという違いがあります。この違いによって、カスタマイズ性とコスト構造が大きく異なります。

どれを選ぶべきか|規模・目的別の判断ポイント

個人事業主はSaaS中心の利用が向いており、大企業は3層を組み合わせて使うことが多くなっています。自社で開発・運用を行う体制があるかどうかによって、どの層まで自社で管理すべきかが変わります。

SaaS中心で始める場合、社内のスケジュール共有やファイル管理を担うグループウェアのような、ベンダーがほぼすべての層を管理してくれるサービスから触れると、責任分界の考え方を実感しやすくなります。

障害・セキュリティ事故が起きたときの初動対応

クラウドサービスで障害やセキュリティ事故が発生した際は、まず利用している形態(SaaS・PaaS・IaaS)がどこまでベンダーの管理範囲かを確認し、自社が対応すべき範囲を切り分けることが初動対応の第一歩になります。

SaaSを利用している場合、サーバーやアプリケーション自体の障害はベンダー側の責任範囲となるため、自社ができる初動対応は、ベンダーの障害情報ページやステータスページを確認し、復旧の見込みを把握することが中心になります。あわせて、自社側の設定ミスやアカウント管理の不備が原因になっていないかを切り分けて確認しておくと、ベンダーへの問い合わせもスムーズに進みます。

一方、IaaSやPaaSを自社で運用している場合は、OSやミドルウェア、アプリケーションといった、利用者側が管理する層でのトラブルである可能性も含めて調査する必要があります。責任分界点があいまいなまま調査を進めると、本来ベンダー側の問題であるにもかかわらず自社側で長時間の原因調査を行ってしまったり、逆に自社側の設定ミスをベンダーの問題だと誤認して対応が遅れたりすることがあります。契約時点で責任分界点を明確にしたドキュメント(SLAや利用規約)を確認しておき、緊急時にすぐ参照できる場所に保管しておくことが、初動対応のスピードを左右します。

3層モデルの理解でよくある失敗パターン3つ

責任分界を確認せず契約する、ASPとSaaSを同じものと考える、自社の運用体制に合わない層を選ぶという3つが、3層モデルの理解でよく見られる失敗の典型です。

失敗パターン1:責任分界を確認せず契約する。障害発生時に対応すべき範囲が分からず、初動が遅れるケースです。契約前に責任分界を確認することが回避策になります。

失敗パターン2:ASPとSaaSを同じものと考える。シングルテナントとマルチテナントの違いを見落とし、想定と異なるコスト構造になるケースです。両者の技術的な違いを理解することが回避策になります。

失敗パターン3:自社の運用体制に合わない層を選ぶ。開発体制がないのにPaaSを選び、運用が回らなくなるケースです。自社の体制に応じた層を選ぶことが回避策になります。

契約前に確認しておきたいSLA(サービス品質保証)の見方

SLA(サービスレベルアグリーメント)は、ベンダーが保証するサービスの稼働率や、障害時の対応方針を定めた契約文書で、責任分界と合わせて契約前に確認しておくべき重要な資料です。

SLAには、月間の稼働率保証(例えば99.9%といった数値)や、稼働率を下回った場合の補償内容(利用料金の一部返金等)が記載されています。稼働率の数値だけを見て「高いから安心」と判断するのではなく、実際に障害が起きた際にどのような補償が受けられるのか、補償の範囲や上限額まで確認しておくことが重要です。特にSaaSを業務の基幹システムとして使う場合は、障害による業務停止の影響が大きいため、SLAの補償内容が自社の許容できるリスクの範囲に収まっているかを事前に検討しておく必要があります。

また、SLAには障害発生時の通知方法や、復旧までの目標時間(RTO)、データ消失を許容できる範囲(RPO)といった項目が定められている場合もあります。IaaS・PaaSを自社で運用する場合は、こうした項目を自社の事業継続計画(BCP)と照らし合わせて確認しておくことで、万が一の際にどこまでの影響を許容できるかを事前に把握しやすくなります。契約前にSLAの内容を営業担当者に直接確認し、不明点を解消しておくことが、安心してサービスを利用するための前提になります。

業種・業務別に見る3層モデルの使い分けイメージ

どの層をどこまで自社で管理するかは、業種や業務の性質によっても変わります。同じ「SaaS中心」という方針でも、扱うデータの機密性や、既存の基幹システムとの連携の有無によって、実際に必要な検討事項は異なります。

小売業や飲食業のように店舗運営が中心の業種では、勤怠管理や在庫管理、POSレジ連携といった業務をSaaSで賄うケースが多く見られます。店舗数が増えても自社でサーバーを追加する必要がなく、ベンダー側が可用性やセキュリティパッチの適用を担うため、情報システム部門を持たない企業でも導入しやすいという特徴があります。一方で、複数のSaaSを組み合わせて使う場合は、どのサービスがどのデータを保持しているかが分散しやすく、障害時にどのベンダーに問い合わせるべきかを事前に整理しておく必要があります。

製造業や物流業では、生産管理システムや在庫管理システムを自社の既存設備と連携させる必要があるため、PaaSやIaaSを使って自社独自の仕組みを構築するケースも少なくありません。この場合、OSやミドルウェアの保守、セキュリティパッチの適用といった作業を自社側で担う必要があるため、事前にどの部署がどの層の運用を担当するかを明確にしておくことが重要です。特に工場の生産ラインと連携するシステムでは、障害が発生した際の影響が生産停止に直結しやすいため、責任分界点をあいまいにしたまま運用を始めることは避けるべきです。

医療・金融など個人情報や機微情報を扱う業種では、SaaSを利用する場合であっても、ベンダーがどこまでデータを暗号化しているか、どの国のデータセンターで処理されているかといった点を、責任分界とは別に確認しておく必要があります。これらの業種は業界固有のガイドラインや監督官庁の指針が定められている場合があるため、契約前に自社の業界に適用される規制の有無を確認し、必要であれば専門家に相談したうえで導入を判断することが望ましいといえます。

データのバックアップと復旧に関する責任の所在

3層モデルにおける責任分界は、システムの稼働そのものだけでなく、データのバックアップと復旧の責任がどちらにあるかという点でも重要な意味を持ちます。「SaaSだからベンダーがすべてのデータを守ってくれる」という思い込みは、実際のトラブル時に大きな認識の差を生むことがあります。

多くのSaaSでは、サービスとしての可用性(システムが止まらないこと)についてはベンダーが責任を持つ一方、利用者の操作ミスによるデータの削除や上書きについては、利用規約上、利用者側の責任とされていることがあります。例えば、担当者が誤って重要なデータを削除してしまった場合、ベンダー側のバックアップから復旧できる期間や範囲が限定されていたり、復旧自体が有償オプションになっていたりするケースもあります。契約前には、稼働率のSLAだけでなく、誤操作によるデータ消失時の復旧手段が用意されているか、その範囲と費用感についても確認しておくことが望ましいです。

IaaSやPaaSを自社で運用する場合は、バックアップの取得自体が利用者側の作業になっていることが一般的です。ベンダーが提供するのはあくまでインフラやプラットフォームの可用性であり、その上で稼働するデータのバックアップ設計(取得頻度、保存期間、復旧手順の整備)は自社が主体的に行う必要があります。バックアップを取得していても、実際に復旧できるかどうかを定期的に訓練していなければ、いざというときに手順が分からず時間を浪費してしまうこともあるため、平時からの備えが欠かせません。

複数のクラウドサービスを併用する場合の責任分界の注意点

SaaS・PaaS・IaaSを複数組み合わせて利用する、いわゆるマルチクラウドやハイブリッドクラウドの構成では、責任分界の考え方がより複雑になります。1つのサービスだけを使う場合と異なり、あるトラブルの原因がどのサービスの層にあるのかを切り分ける作業自体に時間がかかることがあります。

例えば、あるSaaSと自社で構築したIaaS上のシステムを連携させている場合、データ連携の遅延やエラーが発生したときに、原因がSaaS側にあるのか、連携基盤として使っているIaaS側にあるのか、あるいはその間をつなぐ自社のプログラムにあるのかを、それぞれのベンダーの管理範囲を踏まえて切り分ける必要があります。この切り分けを行う担当者や部署をあらかじめ決めておかないと、障害発生時にどこに問い合わせればよいか分からず、対応が後手に回ってしまうことがあります。

複数のクラウドサービスを利用する企業では、契約しているサービスごとの責任分界点と問い合わせ窓口を一覧にまとめ、社内で共有しておくことが実務上の対策として有効です。一覧には、サービス名、提供形態(SaaS・PaaS・IaaSのいずれか)、ベンダーの管理範囲、自社の管理範囲、緊急連絡先やステータスページのURLなどを記載しておくと、実際にトラブルが起きた際の初動対応をスムーズに進めやすくなります。運用担当者が変わっても対応品質が落ちないよう、こうした一覧は定期的に見直し、契約内容の変更があった際には都度更新しておくことが望ましいといえます。

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaS・PaaS・IaaSの読み方は何ですか?

A. それぞれ「サース」「パース」「イアース」と読みます。

Q2. 3層の覚え方はありますか?

A. IaaS→PaaS→SaaSの順に提供範囲が広がる(IPS順)と覚える方法があります。

Q3. ASPはどのように位置づけられますか?

A. SaaSに先行する形態で、シングルテナント方式という点でSaaSとは技術的に異なります。

Q4. 責任分界とは何ですか?

A. どの層までをベンダーが管理し、どこからを利用者が管理するかを示す区分です。

Q5. 個人事業主はどの層を選ぶべきですか?

A. 管理の手間が少ないSaaS中心の利用が向いています。

Q6. 大企業はどのように使い分けますか?

A. 業務内容に応じてSaaS・PaaS・IaaSの3層を組み合わせて使うことが多くなっています。

まとめ|今日からできる3つのこと

  1. 契約前に責任分界を確認する:確認せず契約しません。
  2. ASPとSaaSの違いを理解する:同じものと考えません。
  3. 自社の運用体制に合う層を選ぶ:体制に合わない層を選びません。

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