SaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説
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- SaaS・PaaS・IaaSの違いは事業者の管理範囲
- ASPとSaaSは同義とする見方もある
- SaaSでもデータや権限の管理は利用者の責任
SaaS・PaaS・IaaSの違いは、事業者がどこまでを用意して管理するかという管理範囲です。IaaSはサーバーやネットワークなどのインフラ、PaaSはアプリケーションを開発・実行するための基盤、SaaSは完成したソフトウェアまでを事業者が提供します。この記事では、NIST(米国国立標準技術研究所)の定義にもとづく3層モデルの管理範囲、代表的なサービスの例、選び方、ASPやオンプレミスとの違い、SaaSでも利用者に残る責任範囲を、表で整理して解説します。
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SaaS・PaaS・IaaSの違いを先に整理|業務部門が実際に使うのはどれか
SaaS・PaaS・IaaSの違いは、事業者が提供して管理する範囲が、インフラまでか、開発基盤までか、アプリケーションまでかという点です。
| 形態 | 事業者が提供する範囲 | 利用者が担う範囲 | 主な利用者 |
|---|---|---|---|
| IaaS | サーバー・ストレージ・ネットワークなどのインフラ | OS・ミドルウェア・アプリケーション・データ | インフラエンジニア、情報システム部門 |
| PaaS | インフラに加えて、OSやアプリケーションの実行環境 | アプリケーション・データ | 社内外の開発者 |
| SaaS | アプリケーションまで | アカウント・権限・設定・データ | 業務部門の担当者、全従業員 |
システム開発を本業としない一般企業が日常的に契約するのは、ほとんどの場合SaaSです。勤怠管理、会計、グループウェアなどの業務ツールが典型で、事業者がサーバーの保守や機能改修を担い、利用企業は就業規則に合わせた設定、アカウントの管理、データの確認を担います。SaaSは「使うだけ」で済むわけではなく、利用者の側に残る作業があります。その具体例として、クラウド型の勤怠管理システムを2つ見てみましょう。
SaaS型の勤怠管理システム、役割の違いで比べる
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:ジンジャー勤怠。カスタマーサクセス担当者が電話・チャット・メールで初期設定をサポートすると、商品ページで紹介されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:カオナビ勤怠。CSV連携またはAPI連携に対応し、勤怠・給与計算・タレントマネジメントなどのシステムとつなげられると紹介されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:カオナビ勤怠。テレワーク中の従業員をリアルタイムで管理するテレワーク機能があると紹介されています。
資料を無料ダウンロード| サービス | ジンジャー勤怠 |
カオナビ勤怠 |
|---|---|---|
| 向いている会社 | 打刻漏れや残業超過を自動通知で防ぎたい会社、外国人従業員が多い会社 | 既存システムとデータ連携したい会社、テレワークの従業員も管理したい会社 |
| 特徴 | PC・スマートフォン・タブレットのほか、交通系ICカードやChatwork・Slackで打刻。勤怠データはCSVを介さずジンジャー給与に連携。英語など5つの言語で表示 | PC・タブレット・スマートフォン・ICカードリーダーで打刻。CSV連携またはAPI連携に対応し、最新の法改正に自動対応。勤怠データは5年間自動保存 |
| 注意したい点 | セキュリティ機能やサポートプランの一部はオプション料金。口コミには、アプリの動作が遅いという指摘もある | タブレットは一部のタッチ操作に非対応で、スマートフォンアプリの動作保証はサポート対象外 |
| 資料・詳細 |
2サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
SaaSの業務システムを実際に使う場面の一例が、jinjer株式会社のジンジャー勤怠です。打刻はパソコン・スマートフォン・タブレットのほか、交通系ICカードやChatwork・Slackでもでき、打刻漏れや残業超過はアラートで通知されます。勤怠データはCSVを介さずジンジャー給与へ連携でき、5つの言語での表示にも対応しています。確認したい点として、セキュリティ機能やサポートプランの一部はオプション料金が発生します。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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ここが少し気になる…
- スマホアプリだと申請や修正画面がわかりにくい
-
別のアプリでは、紙で申請するものもあったが、ジンジャーは申請の種類が多く、打刻関連だけでなく、休暇申請や交通費の申請まで、いろいろな申請ができ、社外でも好きなときに申請ができて、とてもよかった。
-
出勤、退勤時にボタンを押して完結することだけでなく、ボタンを押し忘れても簡単に出退勤の入力ができます。振休や有給消化の申請に関してもシンプルでわかりやすいです。通常パソコンから申請をしていますが、アプリも使いやすいです。
-
⚫︎自社ではエクセル管理からデジタルアプリへの移行だったため出退勤管理の手間や集計ミスの軽減につながり大幅な効率アップができた。 ⚫︎スマホ連携ができることで、営業の直行時や在宅勤務時もリアルタイムで打刻ができるようになった。(後修正の手間が省けた)
30年以上前に作られたオフコンは保守管理が難しく、設計者がいなくなった場合にリスクが大きかった。(課題)/手入力の作業が削減され、ヒューマンエラーが激減した。(導入後の効果)
出典:ジンジャー公式サイト導入事例「株式会社十万石ふくさや」2026年10月15日確認
もう1つの例が、株式会社カオナビのカオナビ勤怠です。PC・タブレット・スマートフォン・ICカードリーダーから打刻でき、CSV連携またはAPI連携で、既存の勤怠システムや給与計算システム、タレントマネジメントシステムなどとつなげられます。最新の法改正に自動で対応し、勤怠データはシステム上で5年間自動保存されます。確認したい点として、タブレット端末は一部のタッチ操作に対応しておらず、スマートフォンアプリの動作保証はサポート対象外です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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ここが少し気になる…
- カオナビのオプション扱いのため、詳細な費用は問い合わせで確認
クラウドの3層モデル|管理範囲の表で見るSaaS・PaaS・IaaSの違い
NISTの定義では、SaaS・PaaS・IaaSの違いは、利用者がどの層まで管理するかという3つの「サービスモデル」の違いとして整理されます。NISTが2011年に公表した文書「SP 800-145」は、クラウドコンピューティングの定義として広く参照されています。
NISTの定義を要約すると、IaaSは処理能力・ストレージ・ネットワークなどの基本的なコンピューティング資源を提供し、利用者はその上でOSやアプリケーションを自由に動かせる形態です。PaaSは、事業者が用意したプログラミング言語やライブラリ、ツールを使って、利用者が自分で作ったアプリケーションを配置・実行できる形態です。SaaSは、事業者がクラウド上で動かしているアプリケーションを、利用者がブラウザなどから使う形態です。いずれも「インターネット経由で、必要な分だけ資源を使える」というクラウドの共通の性質を持ち、違いは提供される層の高さにあります。
システムを構成する層を下から順に並べ、誰が管理するのかを整理すると、次のようになります。比較のためにオンプレミス(自社でサーバーを保有する形態)も並べています。
| システムの層 | オンプレミス | IaaS | PaaS | SaaS |
|---|---|---|---|---|
| データ・アカウント・設定 | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 利用者 |
| アプリケーション | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 事業者 |
| ミドルウェア・実行環境 | 利用者 | 利用者 | 事業者 | 事業者 |
| OS | 利用者 | 利用者 | 事業者 | 事業者 |
| 仮想化・サーバー・ストレージ・ネットワーク | 利用者 | 事業者 | 事業者 | 事業者 |
| データセンター(建物・電源・空調) | 利用者 | 事業者 | 事業者 | 事業者 |
表を見ると、IaaSからPaaS、SaaSへと進むにつれて事業者の管理範囲が上に広がり、利用者の手間が減っていくことが分かります。その代わり、自由にできる範囲も狭くなります。IaaSはOSの種類やミドルウェアの構成まで自社で選べますが、PaaSでは事業者が用意した実行環境の範囲内で開発することになり、SaaSでは用意された機能を設定で調整して使うのが基本です。つまり3層の違いは、「管理の手間」と「自由度」のどちらを優先するかというトレードオフとして捉えると理解しやすくなります。
もう1つ注目したいのが、表の一番上の行です。データ、アカウント、設定の管理は、どのサービスモデルでも利用者側に残ります。この点は後半の「利用者に残る責任範囲」で詳しく扱いますが、3層モデルを「SaaSなら全部任せられる」と読むのは誤りだという点は、最初に押さえておきましょう。
読み方と覚え方
読み方は、SaaSが「サース」または「サーズ」、PaaSが「パース」、IaaSが「イアース」または「アイアース」と読まれます。覚え方は、頭文字で考えると簡単です。IaaSのIはInfrastructure(基盤)、PaaSのPはPlatform(土台)、SaaSのSはSoftware(ソフトウェア)で、下の層から順に、基盤、土台、ソフトと積み上がると覚えると、層の上下関係と結びつけて記憶しやすくなります。
SaaSとは|完成したソフトをそのまま使う
SaaS(Software as a Service)は、事業者がクラウド上で運用している完成したソフトウェアを、利用者がインターネット経由で使う形態です。ソフトウェアのインストールやサーバーの保守が不要で、契約してアカウントを発行すればすぐに使い始められるのが最大の特徴です。SaaSそのものの意味や身近な例は、「SaaSとは|PaaS・IaaS・ASPとの違いと選び方」でも解説しています。
SaaSの多くは月額や年額のサブスクリプション(定額課金)で提供され、利用するユーザー数や機能のプランに応じて料金が決まります。自社でサーバーを購入する場合のような大きな初期投資が不要なため、中小企業でも導入しやすく、使わなくなった場合は解約して別のサービスに乗り換えることも比較的容易です。ソフトウェアの更新は事業者が一括で行うため、利用者は常に最新の機能を使えます。
一方で、SaaSには特有の制約もあります。主なメリットと留意点を整理すると次のとおりです。
| 観点 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|
| 導入 | 契約後すぐに使え、サーバー購入などの初期投資が不要 | 業務フローを製品の仕様に合わせる必要が出ることがある |
| 運用 | 保守やアップデートは事業者が担う | 仕様変更や機能の廃止を利用者側でコントロールできない |
| カスタマイズ | 設定で調整できる範囲なら手軽に変更できる | 独自機能の追加や大幅な改修は原則として難しい |
| コスト | 利用人数に応じた料金で、小さく始められる | 長期間・大人数で使うと累計の費用が膨らむことがある |
| 障害時 | 復旧作業は事業者が行う | 復旧を待つしかなく、業務を止めない代替手段を考えておく必要がある |
SaaSはメール、グループウェア、Web会議、会計、勤怠管理、顧客管理(CRM)など、業種を問わず共通する業務から広がってきました。近年は特定の業界の業務に特化したSaaS(バーティカルSaaS)も増えており、飲食店の予約管理や医療機関の電子カルテなど、業界固有の業務をクラウドで完結させる選択肢も広がっています。
SaaS型の業務システムを選ぶときの確認観点|勤怠管理を例に
SaaSは契約後に独自改修できないため、選ぶ段階で確認しておきたい観点があります。クラウド型の勤怠管理システムを例に整理すると、次のとおりです。
| 確認したい観点 | SaaSならではの理由 |
|---|---|
| 法改正への追従 | 機能改修は事業者が行うため、改修の方針や反映時期の案内方法を確認しておく |
| 設定の柔軟性 | マルチテナント型のため独自改修は難しく、シフトや変形労働時間制に設定で対応できるかが重要になる |
| 他システムとの連携 | 給与計算や人事管理など、別のSaaSとのデータ連携方法(API、CSV出力等)を確認する |
| データの持ち出し | 解約や乗り換え時に、打刻データや勤怠記録を出力できるかを契約前に確認する |
| アカウント管理 | 入退社に伴う登録と削除は利用者の責任範囲のため、管理者機能の使いやすさを見る |
このうち、他システムとの連携とデータの持ち出しは、契約してから変えにくい観点です。たとえばカオナビ勤怠は、CSV連携またはAPI連携に対応し、勤怠データはシステム上で5年間自動保存されると商品ページで紹介されています。連携先や出力形式が自社の運用に合うかは、資料で確認しておくと安心です。
PaaS・IaaSとは|開発企業が使うサービス
PaaSとIaaSは、完成したソフトではなく、システムを作るための「土台」を借りるサービスで、主な利用者は開発者やインフラエンジニアです。SaaSが「完成品を使う」形態だとすると、PaaSは「調理器具の揃ったキッチンを借りて料理を作る」、IaaSは「空き店舗を借りて設備から整える」形態にたとえられます。
PaaS(Platform as a Service)
PaaSは、アプリケーションを開発・実行するための環境(OS、プログラミング言語の実行環境、データベース、開発ツールなど)をまとめて提供するサービスです。開発者はサーバーやOSの保守を気にせず、アプリケーションのコードを書くことに集中できます。自社独自の業務アプリを作りたい企業や、顧客向けのWebサービスを短期間で公開したい企業に向いています。
PaaSの留意点は、事業者が用意した言語やデータベースの種類に制約される点です。また、特定のPaaSの独自機能に依存したアプリケーションを作ると、別のサービスへの移行が難しくなる「ベンダーロックイン」が起きやすくなります。近年は、プログラミングの知識が少なくても画面操作で業務アプリを作れるノーコード・ローコード開発ツールも広がっており、これらはPaaSとSaaSの中間的な性格を持つサービスといえます。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaSは、仮想サーバー、ストレージ、ネットワークといったインフラをインターネット経由で借りるサービスです。OSの選択から、ミドルウェアの導入、アプリケーションの構築まで利用者が自由に行えるため、3層の中で最も自由度が高い形態です。既存のオンプレミス環境をクラウドへ移行する場合や、アクセスの増減に合わせてサーバーの台数や性能を柔軟に変えたい場合に使われます。
その反面、OSのセキュリティ更新、ミドルウェアの設定、バックアップの設計と運用はすべて利用者の責任です。物理的な機器の管理からは解放されますが、運用の手間はオンプレミスに近く、専門知識を持つ担当者がいることが前提になります。「クラウドにすれば運用が楽になる」という期待だけでIaaSを選ぶと、想定以上に運用負荷がかかることがあるため注意が必要です。
IaaSと混同されやすい形態|オンプレミス・コロケーション・ホスティング
IaaSとよく比べられるのが、サーバーの置き場所と機器の持ち主が異なる形態です。判断の軸は「機器を誰が持ち、どこに置き、どこから先を誰が運用するか」の3点です。
| 形態 | 設置場所 | 機器の所有 | 運用の主な担い手 |
|---|---|---|---|
| オンプレミス | 自社内 | 自社 | 自社(設備から機器、OS、アプリまで) |
| コロケーション・ハウジング | データセンター(スペースを借りる) | 自社 | 機器の運用は自社、建物や電源などの設備は事業者 |
| ホスティング(レンタルサーバーなど) | 事業者の施設 | 事業者 | 事業者(サーバー環境の一部を共有して使う形が一般的) |
| IaaS | 事業者のデータセンター(仮想化された基盤) | 事業者 | OSから上は利用者 |
3層に加えて、デスクトップ環境をクラウドから提供するDaaS(Desktop as a Service)や、プログラムの実行単位でサーバー管理を不要にするFaaS(Function as a Service)、コンテナの実行環境を提供するCaaS(Container as a Service)など、「〇〇 as a Service」という呼び方の派生形も増えています。これらは総称してXaaSと呼ばれることがありますが、どれも「どの層までを事業者が提供するか」という同じ考え方で整理できます。
SaaS・PaaS・IaaSの具体例|代表的なサービスで見分ける
IaaSはAmazon EC2、PaaSはAWS Elastic BeanstalkやGoogle App Engine、SaaSはGmailやSalesforceなど、提供される層ごとに代表的なサービスが分かれます。
| 形態 | 代表的なサービスの例 | 利用者ができること |
|---|---|---|
| IaaS | Amazon EC2、Azure Virtual Machines、Google Compute Engine | 仮想サーバーを借り、OSの選択からアプリケーションの構築まで自社で行う |
| PaaS | AWS Elastic Beanstalk、Azure App Service、Google App Engine、Heroku | アプリケーションのコードを用意し、実行環境の管理は事業者に任せる |
| SaaS | Gmail(Google Workspace)、Salesforce、ジンジャー勤怠、カオナビ勤怠 | 完成したソフトウェアを、設定とデータの管理だけで使う |
AWS、Microsoft Azure、Google Cloudのような大手のクラウド事業者は、IaaSとPaaSの両方のサービスを提供しています。そのため、事業者名だけで形態は決まりません。見分けるときは、「OSの管理を誰が行うか」を確認するのが確実です。たとえばAmazon EC2は仮想サーバーを借りるIaaSで、OSの設定やセキュリティ更新は利用者が行います。OSの管理を任せたい場合は、PaaSにあたるAWS Elastic Beanstalkなどが比較の対象になります。なお、サービスの分類は文書や事業者によって異なる場合があるため、最終的には各サービスの公式の説明で確認してください。
SaaSの具体例は、分野別にも整理しています。メール・チャット・会計・勤怠管理などの例は、「SaaSの代表例|分野別の一覧とPaaS・IaaSの実例を解説」を参照してください。
SaaS・PaaS・IaaSの選び方|利用目的・自由度・運用体制で判断する
3つのサービスモデルのどれを選ぶかは、「既成のソフトを使いたいのか、自分で作りたいのか」という利用目的、必要な自由度、社内の運用体制の3点で判断するのが基本です。どれかが優れているわけではなく、目的と体制に合っているかどうかが選択の決め手になります。
最初に確認したいのは利用目的です。勤怠管理や会計のように、多くの企業で共通する業務をすぐに始めたいのであれば、完成品を使うSaaSが第一の候補になります。自社独自の業務アプリや顧客向けサービスを新しく開発したい場合はPaaS、既存のシステムをそのままクラウドへ移したい場合や、OSやミドルウェアの構成まで細かく設計したい場合はIaaSが向いています。次に、必要な自由度を考えます。業務の進め方を製品の仕様に合わせられるならSaaSで十分ですが、独自の処理や画面が欠かせない場合は、開発の余地があるPaaSやIaaSを検討することになります。最後に、運用体制を確認します。IaaSはOSのセキュリティ更新やバックアップの設計まで自社で担うため、インフラの専門知識を持つ担当者を確保できるかどうかが前提になります。専任の情報システム担当者がいない企業では、運用の大半を事業者に任せられるSaaSを中心に組み立てるのが現実的です。
| 判断の軸 | SaaSが向くケース | PaaSが向くケース | IaaSが向くケース |
|---|---|---|---|
| 利用目的 | 共通業務をすぐに始めたい | 独自のアプリを新しく開発したい | 既存システムを移行したい |
| 必要な自由度 | 設定の範囲内の調整で足りる | アプリの機能は自由に作りたいが、基盤の管理は任せたい | OSやミドルウェアの構成まで自社で決めたい |
| 運用体制 | 専任の技術者がいない | アプリ開発者はいるが、インフラ担当者は少ない | インフラの専門知識を持つ担当者がいる |
実際には、1つの企業が業務ごとに複数のサービスモデルを使い分けるのが一般的です。たとえば、社内の勤怠管理や会計はSaaSで済ませ、顧客向けのWebサービスはPaaS上で開発し、長年使ってきた基幹システムはIaaSへ移す、といった組み合わせです。業務単位で「使う」か「作る」かを切り分けて考えると、選択に迷いにくくなります。
勤怠管理システム2サービスの役割を比較表で見るASPとSaaSの違い|シングルテナントとマルチテナント、クラウドとの関係
ASPとSaaSの違いは、一般にはシングルテナントかマルチテナントかという構成で区別されますが、業界団体のASPICはASPとSaaSを同義語とみなしています。
ASP(Application Service Provider)は、ソフトウェアをネットワーク経由で提供する形態として、SaaSより先に普及した呼び方です。一般社団法人日本クラウド産業協会(ASPIC)は、ネットワークを通じてシステムの機能を提供するサービスや、そうしたビジネスモデルを広くASPと定義し、ASPとSaaSを同義語とみなしています。ASPICの解説ページは2009年12月時点の整理にもとづくため、現在の使い分けとは異なる点があることに注意してください。
その一方で、実務や解説記事では、技術的な構成の違いで区別されることが多くあります。それを表すのが、シングルテナントとマルチテナントという考え方です。テナントとは「入居者」のことで、1つのシステムを1社だけが使うのがシングルテナント、1つのシステムを複数の企業が共有し、データを論理的に分けて使うのがマルチテナントです。従来のASPは、利用企業ごとに個別のサーバーやソフトウェアを用意するシングルテナント型が中心でした。これに対してSaaSは、1つのシステムを多くの企業で共有するマルチテナント型が主流です。
| 比較項目 | シングルテナント型(従来のASPに多い) | マルチテナント型(SaaSに多い) |
|---|---|---|
| システムの構成 | 利用企業ごとに個別の環境を用意 | 1つの環境を複数企業で共有し、データを論理的に分離 |
| カスタマイズ | 企業ごとの個別改修がしやすい | 共通仕様のため、設定の範囲内での調整が基本 |
| コスト | 環境を個別に持つため割高になりやすい | 設備を共有するため利用料を抑えやすい |
| アップデート | 企業ごとに実施し、時期を調整しやすい | 全利用企業に一斉に反映される |
| 他社の影響 | 受けにくい | 共有基盤の障害が全利用企業に及ぶことがある |
ASPとクラウドの違い
「ASPとクラウドの違い」も、よく検索される疑問です。クラウドは、ASPやSaaSを含む、インターネット経由で資源を使う仕組み全体を指す広い言葉です。SaaS・PaaS・IaaSはそのクラウドの中のサービスモデルで、ASPはSaaSとほぼ同じ意味か、シングルテナント型の提供形態を指す呼び方として使われます。ASPICは、クラウドコンピューティングをASP・SaaSの集合体と捉えています。
ただし、現在はこの区別も絶対的なものではありません。SaaSの中にも、大企業向けに専用環境を用意するシングルテナント型のプランを持つものがありますし、ASPと名乗るサービスがマルチテナント型で構成されている場合もあります。名称だけで判断せず、契約前に「自社専用の環境か、共有環境か」「独自の改修はどこまでできるか」「アップデートの時期は選べるか」を個別に確認するのが確実です。
勤怠管理システム2サービスの役割を比較表で見る利用者に残る責任範囲|データ管理の重要性
どのサービスモデルを選んでも、データ、アカウント、アクセス権限、設定の管理は利用者の責任として残ります。事業者と利用者が層ごとに責任を分け合うこの考え方は「責任共有モデル」と呼ばれ、クラウドを安全に使ううえでの前提になっています。
総務省の「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン」(2022年10月)は、設定不備によって顧客の個人情報が流出するおそれに至る事案が増えていると指摘しています。同ガイドラインは、IPAの「コンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況 2021年」で、不正アクセスの原因別比率のうち設定不備が約17.7%で第3位だったことも紹介しています。また、利用者と事業者の双方が自身の責任範囲や役割を理解し、共通認識とすることを、設定不備を防ぐ基本的な考え方の1つに挙げています。
たとえば、共有リンクを「誰でも閲覧可能」にしたまま放置する、退職者のアカウントを削除せずに残す、全員に管理者権限を与えてしまう、といった状態が、利用者側の設定と運用で起こりうる典型です。ガイドラインは、設定不備の背景に、利用者側の理解不足や管理体制の不十分さだけでなく、事業者側の情報提供や設計上の配慮の不足も考えられるとしており、どちらか一方の問題とは限りません。
サービスモデルごとに、利用者が特に意識したい責任範囲を整理すると次のようになります。
| サービスモデル | 利用者が担う主な責任 |
|---|---|
| SaaS | アカウントの発行と削除、多要素認証の有効化、閲覧権限や共有範囲の設定、入力するデータの正確性と取り扱い、誤操作で消したデータへの備え |
| PaaS | SaaSの範囲に加えて、自社で開発したアプリケーションの脆弱性対策、アプリケーションの設定、データベースの権限設計 |
| IaaS | PaaSの範囲に加えて、OSのセキュリティ更新、ミドルウェアの設定、ネットワークのアクセス制御、バックアップの取得と復旧手順の整備 |
特に見落とされやすいのが、データのバックアップと復旧の責任です。SaaSでは、システムが止まらないようにする責任は事業者にありますが、利用者が誤って削除・上書きしたデータの復元まで保証されているとは限りません。復元できる期間が限られていたり、復元が有償のオプションになっていたりする場合もあります。IaaSやPaaSでは、バックアップの設計そのものが利用者の作業であることが一般的です。
契約前には、利用規約やSLA(サービスレベルアグリーメント:稼働率や障害時の対応を定めた取り決め)で、次の点を確認しておくと安心です。
- 稼働率の目標値と、下回った場合の補償内容(多くは利用料の一部返金にとどまる)
- 障害発生時の通知方法と、障害情報を確認できるステータスページの有無
- 誤操作で失ったデータを復元できる期間と方法、費用
- データを保管している地域(国内か海外か)
- 解約時にデータを出力できる形式と、事業者側でデータが削除される時期
勤怠管理で見る、SaaSの利用者に残る作業
責任範囲は抽象的に聞こえるため、毎日使うSaaSの例として、クラウド型の勤怠管理システムで整理します。事業者が担う部分と利用者が担う部分は、次のように分かれます。
| 作業 | 事業者が担う部分 | 利用者が担う部分 |
|---|---|---|
| サーバーの保守・機能改修 | サーバーの運用、アップデート、法改正に合わせた機能改修(対応方法は製品ごとに異なる) | 改修内容が自社の就業規則と合っているかの確認 |
| アカウントの管理 | アカウントを管理する機能の提供 | 入退社に伴う登録と削除、権限の設定 |
| 勤怠データの管理 | データを保管する仕組みの提供 | 打刻漏れの確認と修正、締め処理、誤操作への備え |
| 給与計算への受け渡し | CSV出力やAPI連携などの機能の提供 | 連携の設定、出力されたデータの確認 |
こうして見ると、SaaSを使っても、打刻の確認、申請の承認、集計、給与計算への受け渡しといった日々の作業は利用者の側に残ります。その作業をいまどれくらい手作業で行っているかを、次のチェックで確認してみてください。
勤怠まわりの手作業、いまのやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
用語の混同でよくある誤解
SaaS・PaaS・IaaSは言葉が似ているうえ、周辺の用語も多いため、誤解したまま使われることが少なくありません。よくある誤解と、実際の考え方を表にまとめました。
| よくある誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| クラウドとSaaSは同じ意味 | クラウドは提供の仕組み全体を指し、SaaSはその中のサービスモデルの1つ。IaaSやPaaSもクラウドに含まれる |
| SaaSならセキュリティは事業者任せでよい | アカウント、権限、共有設定、データの管理は利用者の責任として残る |
| ASPとSaaSは完全に同じもの | 業界団体は同義語とみなすが、一般的にはシングルテナントかマルチテナントかで区別される。実際の構成はサービスごとに確認が必要 |
| IaaSにすれば運用が楽になる | 物理機器の管理は不要になるが、OSから上の運用はオンプレミスと同様に自社で担う |
| 3層のうち1つを選ばなければならない | 多くの企業は、業務ごとにSaaS・PaaS・IaaSを組み合わせて使っている |
| パブリッククラウドとSaaSは同じ分類 | パブリック・プライベートは「誰と共有するか」という実装モデルの分類で、SaaS・PaaS・IaaSとは別の軸 |
最後の項目にあるとおり、NISTの定義ではサービスモデル(SaaS・PaaS・IaaS)とは別に、パブリッククラウド、プライベートクラウド、コミュニティクラウド、ハイブリッドクラウドという「実装モデル」の分類が示されています。「どの層まで提供されるか」と「誰と共有する環境か」は独立した軸なので、たとえば「プライベートクラウド上のIaaS」という組み合わせもあり得ます。2つの軸を混同しないことが、用語を正しく理解する近道です。
そして、多くの一般企業にとって最も身近なのは、業務部門がそのまま使うSaaSです。利用者に残る作業は、全従業員が毎日使うシステムほど、運用の差として表れます。勤怠管理のように就業規則という自社固有のルールを設定で反映させるシステムは、打刻・申請・集計の流れが製品の機能に合っているかで、担当者の負担が変わります。たとえばジンジャー勤怠は、打刻漏れや残業超過のアラートと申請承認の機能を備え、承認者や承認ルートを10段階まで設定できると商品ページで紹介されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS・PaaS・IaaSの違いを一言でいうと何ですか?
A. 事業者が提供・管理する範囲の違いです。IaaSはサーバーなどのインフラ、PaaSはアプリケーションの開発・実行基盤、SaaSは完成したソフトウェアまでを事業者が提供します。
Q2. IaaS・PaaS・SaaSの具体例には何がありますか?
A. IaaSはAmazon EC2やGoogle Compute Engine、PaaSはAWS Elastic BeanstalkやGoogle App Engine、SaaSはGmailやSalesforceなどが代表例です。Amazon EC2は仮想サーバーを借りるIaaSで、OSの管理は利用者が行います。
Q3. SaaS・PaaS・IaaSの覚え方と読み方を教えてください。
A. 頭文字で覚えます。IaaSはInfrastructure(基盤)、PaaSはPlatform(土台)、SaaSはSoftware(ソフトウェア)で、下の層から順に積み上がります。読み方は、SaaSが「サース」または「サーズ」、PaaSが「パース」、IaaSが「イアース」または「アイアース」です。
Q4. PaaSとSaaSの違いは何ですか?
A. PaaSは開発者がアプリケーションを作って動かすための基盤で、利用者はアプリケーションとデータを管理します。SaaSは完成したアプリケーションを使うサービスで、利用者が担うのはアカウント・権限・設定・データの管理が中心です。
Q5. ASPとSaaSはどう違いますか?
A. 一般的に、従来のASPは利用企業ごとに個別の環境を用意するシングルテナント型、SaaSは1つの環境を複数企業で共有するマルチテナント型が中心という違いがあります。ただし、業界団体のASPICは両者を同義語とみなしており、実際の構成はサービスごとに異なるため、契約前に確認が必要です。
Q6. SaaSを使えばデータの管理も事業者に任せられますか?
A. 任せられません。責任共有モデルでは、アカウント、権限、共有設定、データの管理は利用者の責任です。誤操作で削除したデータの復元範囲も、利用規約やSLAで確認しておく必要があります。
まとめ
SaaS・PaaS・IaaSの違いは、事業者が提供・管理する層の高さの違いです。IaaSはインフラ、PaaSは開発基盤、SaaSは完成したソフトウェアまでを事業者が担い、上の層に進むほど利用者の手間は減る一方で、自由度は小さくなります。押さえておきたいポイントは次の5つです。
- 3層の違いは、管理範囲と自由度のトレードオフとして捉える。
- 代表的なサービスを見分けるときは、「OSの管理を誰が行うか」を確認する。
- ASPとSaaSは、一般にはシングルテナントかマルチテナントかで区別されるが、業界団体は同義語とみなしており、実際の構成は個別に確認する。
- どのサービスモデルでも、データ、アカウント、権限、設定の管理は利用者の責任として残る。
- 勤怠管理のように毎日使うSaaSを検討するときは、自社の手作業を点検したうえで、複数のサービスの資料を見比べる。
参考文献
- NIST(米国国立標準技術研究所)「SP 800-145 The NIST Definition of Cloud Computing」
- ASPIC(一般社団法人日本クラウド産業協会)「ASP・SaaSの基本」
- 総務省「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン」(2022年10月)
- Amazon Web Services「Amazon EC2」「AWS Elastic Beanstalk」
- Microsoft「Azure Virtual Machines」「Azure App Service」
- Google Cloud「Compute Engine」「App Engine」
- ジンジャー公式サイト導入事例「株式会社十万石ふくさや」


