SaaS銘柄の見方|財務指標を解説
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- SaaS銘柄の利益率の読み方がわかる
- ARR・解約率・Rule of 40の意味がわかる
- 銘柄一覧の探し方と見る際の注意がわかる
SaaS銘柄とは、ソフトウェアをインターネット経由で月額・年額の利用料で提供するSaaS(Software as a Service)を主な事業とする上場企業の株式を指す言葉です。ただし東証の業種区分にSaaSという区分はなく、どの企業をSaaS銘柄とみなすかは情報サイトごとに異なります。売り切り型のソフトウェア企業とは収益の積み上がり方が違うため、ARR・解約率・NRR・Rule of 40といったSaaS特有の指標と、売上総利益率・営業利益率などの利益率をあわせて読む必要があります。この記事では、指標の意味と読み方、決算資料での確認先、銘柄一覧の探し方を整理します。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨する投資助言ではありません。投資判断は、企業が公表する一次資料を確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。
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目次
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- SaaS銘柄の利益率を読む土台|売上原価・販管費と損益計算書の仕組み
- SaaS銘柄とは|サブスクリプション型ビジネスモデルの特徴
- SaaS企業特有の財務指標|ARR・MRR・解約率・NRR
- Rule of 40とは|成長性と収益性のバランスを見る指標
- 決算資料のどこでSaaS指標を確認するか
- 代表的なSaaS銘柄は?「三大SaaS企業」と一覧の探し方
- 国内のSaaS関連企業を分類で整理する
- 2026年の市場環境|AIエージェントの台頭とSaaSの再評価
- 今後伸びるSaaS企業は?見極めるときの確認項目
- SaaS銘柄を見る際によくある誤解
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|SaaS銘柄は複数の指標と一次資料で読む
- 参考文献
SaaS銘柄の利益率を読む土台|売上原価・販管費と損益計算書の仕組み
SaaS銘柄の利益率は、売上総利益率と営業利益率の2段階で読みます。売上総利益は売上高から売上原価を引いたもの、営業利益はそこから販売費及び一般管理費を引いたもので、それぞれを売上高で割った割合が利益率です。
SaaS企業の利益率を読むうえで難しいのは、売上原価に何を含めるかが企業ごとに違う点です。民間企業One Capitalの調査(2022年1月14日時点、上場SaaS企業27社)によると、SaaS企業ではカスタマーサクセスの人件費やサーバー費用を売上原価に含めるのが一般的とされています。同じ調査で、26社の売上総利益率の中央値は約7割、営業利益率の中央値は6%でした。数値は調査時点のものなので、最新の水準は各社の決算資料で確認してください。
| 項目 | SaaS企業で入りやすい費用の例 | 利益率を読むときの視点 |
|---|---|---|
| 売上原価 | サーバーやクラウド基盤の利用料、カスタマーサクセス・導入支援の人件費など | 売上総利益率に直結する。どこまでを原価に含めるかは企業ごとに異なるため、注記と決算説明資料で確認する |
| 販売費及び一般管理費 | 広告宣伝費、営業・マーケティングの人件費、管理部門の人件費など | 先行投資の大きさが表れる。売上高に対する割合の推移を見る |
| 営業利益 | 売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた利益 | 成長投資の段階では赤字になることもあるため、赤字か黒字かだけで判断しない |
この構造は、数字を読むだけでなく、自分の事業の取引を入力して仕訳が損益計算書に集計される様子を一度見ておくと、実感を伴って理解しやすくなります。個人事業で青色申告をしている方や、経理・経営企画の業務で決算書に触れる方にとっては、上場企業の決算資料を読む感覚をつかむ練習にもなります。決算書の作られ方を手元の数字で確かめたい場合の一例が、マネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、日々の仕訳データから決算書やキャッシュフローレポート、収益レポートなどを自動で作成でき、銀行やクレジットカードなど2,400社以上のサービスと連携して明細を取得できるとされています。注意点として、AIが過去の仕訳を学習して勘定科目を提案する仕組みのため、誤った仕訳を学習する可能性があり、入力内容の確認が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。なお、会計ソフトは上場企業の決算を読むために必須のものではなく、運営会社である株式会社マネーフォワードの株式の売買を推奨するものでもありません。
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【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】
数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。
「経理の作業部分はどんどん省略化。1ヶ月経っても終わらなかった月次決算が6営業日になりました。」
出典: 株式会社HITOMIOテクノロジーズ「マネーフォワード クラウド会計」導入事例(マネーフォワード公式サイト)
SaaS銘柄とは|サブスクリプション型ビジネスモデルの特徴
SaaS銘柄とは、クラウド上で提供するソフトウェアの利用料を継続的に受け取るビジネスモデルの上場企業を指します。最大の特徴は、一度契約した顧客が解約しない限り、翌月以降も売上が積み上がっていく点です。SaaSという言葉の意味や、サブスクリプション・ASP・PaaSとの違いは、SaaSは何の略?読み方・意味とサブスク・ASP・PaaSとの違い、代表例まで解説で整理しています。
売り切り型との違い
従来のパッケージソフトは、製品を販売した時点で売上の大部分が計上される売り切り型でした。新製品の発売年には売上が大きく伸びても、翌年は買い替え需要が落ち着いて売上が減る、という波が生じやすい構造です。これに対してSaaSは、月額・年額の利用料として売上が分割して計上されます。契約獲得の初年度は売上が小さく見えますが、顧客が使い続ける限り売上が毎期積み上がり、将来の売上の見通しを立てやすい点が評価されます。
赤字でも評価されることがある理由
SaaS企業は、顧客を獲得するための広告宣伝費や営業人件費を先に支出し、その回収を数年かけて行う構造になりやすいといわれます。そのため成長期には、売上が伸びていても営業利益が赤字になるケースがあります。市場がこうした企業を評価するのは、獲得した顧客が長く使い続け、将来にわたって利益を生む前提があるからです。逆にいえば、その前提となる「顧客の定着」が崩れていないかを確認することが、SaaS銘柄を見るうえでの中心的な論点になります。
日本でSaaSが広がっている背景
総務省の令和7年版情報通信白書によると、国内企業のクラウドサービス利用は広がっており、2024年時点で、全社または一部の事業所・部門で利用している企業の割合は80.6%です。会計、人事労務、営業支援、名刺管理、電子契約といった業務領域でSaaSの利用が定着し、上場企業の中にも、これらの領域を主力事業とする企業が増えてきました。
SaaS企業特有の財務指標|ARR・MRR・解約率・NRR
SaaS銘柄で見るべき主な指標は、収益の規模を示すARR・MRR、顧客の定着度を示す解約率(チャーンレート)とNRR、収益構造を示す売上総利益率です。1つの指標だけでは判断せず、組み合わせて読むのが基本です。
| 指標 | 意味 | 読むときのポイント |
|---|---|---|
| MRR(月次経常収益) | 毎月継続的に発生する利用料収入の合計 | 初期費用やコンサルティング収入など一時的な売上は含めないのが一般的 |
| ARR(年間経常収益) | 継続収益を年額に換算した値。MRRの12倍で算出されることが多い | 規模だけでなく前年比の成長率を見る。算出方法は企業ごとに異なる |
| 解約率(チャーンレート) | 一定期間に解約された契約や収益の割合 | 顧客数ベースか金額ベースか、月次か年次かを確認する |
| NRR(売上継続率) | 既存顧客からの収益が1年後にどれだけ維持・拡大したか | 100%を超えると既存顧客だけで収益が増えている状態 |
| 売上総利益率 | 売上高に対する売上総利益の割合 | サーバー費用や導入支援の人件費などが売上原価に含まれる |
| 営業利益率 | 売上高に対する営業利益の割合 | 成長投資の段階では低く、赤字になることもある。販管費の内訳と推移をあわせて見る |
| ストック売上高比率 | 売上高のうち、継続課金など毎期積み上がる売上の割合 | ハードウェアや導入支援の売上が多い企業では低めに出ることがある。定義は企業ごとに異なる |
ARRとMRR|収益の規模と伸び
ARRとMRRは、SaaS企業の継続収益の規模を示す代表的な指標です。会計上の売上高には、初期導入費用や一度きりのコンサルティング収入など継続しない売上も含まれますが、ARRはあくまで繰り返し発生する収益だけを対象にします。そのため、ARRの推移を見ると、事業の土台となる継続収益がどれだけ積み上がっているかが分かります。注意したいのは、ARRは会計基準で定められた指標ではないという点です。月末時点のMRRを12倍する企業もあれば、年間契約の金額を合計する企業もあり、同じ「ARR」という名前でも中身が違う場合があります。
解約率|定着度を示す指標
解約率は、契約している顧客や収益がどれだけ失われたかを示します。新規契約が順調に増えていても、同時に解約が多ければ、穴の空いたバケツに水を注いでいるような状態になり、顧客獲得費用ばかりがかさみます。解約率には、解約した顧客の数で見る方法と、失われた収益の金額で見る方法があります。小規模な顧客が多く解約し、大口顧客は残っている場合、顧客数ベースでは解約率が高く見えても、金額ベースでは低くなることがあります。どちらの定義で開示されているかを確認することが大切です。
NRR|既存顧客からの収益の伸び
NRR(Net Revenue Retention)は、1年前にいた顧客からの収益が、解約・縮小・アップグレード・利用人数の増加などを差し引きしたうえで、現在どれだけになっているかを示す指標です。解約率が「減った分」だけを見るのに対して、NRRは「既存顧客の中で増えた分」も反映します。一般的に、NRRが100%を超えていれば、新規顧客を獲得しなくても既存顧客だけで収益が増えている状態と説明されます。NRRが高い企業は、製品が顧客の業務に深く根づき、利用範囲が広がっている可能性があります。
売上総利益率|収益構造の健全さ
ソフトウェアは、一度開発すれば追加の顧客に提供するためのコストが比較的小さいため、SaaS企業は売上総利益率が高くなりやすいといわれます。ただし、導入支援やカスタマーサクセスに多くの人手をかけている企業、外部のクラウド基盤の費用が大きい企業では、売上総利益率が抑えられることもあります。同じSaaS企業でも、何を売上原価に含めているかは企業によって異なるため、有価証券報告書の注記や決算説明資料の説明もあわせて確認しましょう。売上原価に入りやすい費用の例は、冒頭の表にまとめています。
Rule of 40とは|成長性と収益性のバランスを見る指標
Rule of 40とは、売上(またはARR)の成長率と利益率を足した値が40%以上であれば、成長と収益性のバランスがとれているとみなす経験則です。米国のSaaS業界で広く使われるようになった考え方で、成長のために赤字を許容している企業と、成長が落ち着いて利益を出している企業を、同じ物差しで比べるために用いられます。
計算方法
計算式は「成長率(%)と利益率(%)の合計」です。たとえば、売上成長率が50%で営業利益率がマイナス10%の企業は、50にマイナス10を足して40となり、基準を満たします。売上成長率が15%で営業利益率が20%の企業は35となり、基準を下回ります。利益率には営業利益率のほか、EBITDAマージンやフリーキャッシュフローマージンが使われることもあり、どの利益率を使うかで結果が変わります。下の簡易計算で、数字を動かしながら確認してみてください。
Rule of 40 簡易計算
合計:30
入力した数値を足し合わせるだけの簡易計算です。銘柄の評価や投資判断を示すものではありません。
Rule of 40を使うときの注意点
Rule of 40はあくまで目安であり、40を超えていれば優良、下回っていれば問題と機械的に判断するものではありません。成長率が一時的な大型契約や企業買収によって押し上げられている場合、実力以上に高い値が出ることがあります。また、日本の上場SaaS企業は米国の大手と比べて事業規模が小さい企業も多く、米国企業の基準をそのまま当てはめてよいかには議論があります。Rule of 40の値は、どの成長率とどの利益率を使ったのかを明らかにしたうえで、その推移を見るのが実務的な使い方です。
Rule of 40を自分で計算する手順|統一の一覧表がない理由
「Rule of 40 ランキング」を探しても、公的機関などが定めた統一のランキングは見当たりません。成長率に売上とARRのどちらを使うか、利益率に営業利益率・EBITDAマージン・フリーキャッシュフローマージンのどれを使うか、どの期間で測るかが媒体ごとに異なり、前提が違えば同じ企業でも結果が変わるためです。参考として、前述のOne Capitalの調査(2022年1月14日時点)は、四半期ごとにフリーキャッシュフローを開示する日本企業がほとんどないため営業利益率で計算しており、25社のうち11社(44%)が40を超え、中央値は34.1%でした。時点が古いため現在の水準を示すものではなく、計算の前提を明示した例として参考になります。自分で確認するときは、次の手順で計算します。
- 決算説明資料などで、売上高またはARRの前年同期比の成長率を調べる
- 使う利益率(営業利益率など)を1つ決める
- 成長率と利益率を、同じ期間・同じ定義でそろえて足す
- 複数期の推移を並べ、40に近づいているか離れているかを見る
株価水準の目安として使われるPSRとEV/ARRマルチプル
SaaS銘柄は先行投資で赤字になりやすく、利益を基準にするPER(株価収益率)では株価水準を測りにくい場合があります。そこでよく使われるのが、時価総額を年間売上高で割ったPSR(株価売上高倍率)や、企業価値(EV)をARRで割ったEV/ARRマルチプルです。いずれも「売上や継続収益の何倍の値段がついているか」を示す指標で、同じ倍率でも成長率やNRRが高い企業ほど高い倍率が許容されやすいと説明されます。ただし、倍率は市場全体の金利環境や投資家心理によって大きく変動し、事業規模が小さい企業ではSaaS指標よりも一般的な利益指標で評価されやすいという指摘もあります。倍率の高低だけで割安・割高を判断せず、ARR成長率や解約率などの指標の推移とあわせて、あくまで比較の目安として扱うことが大切です。
決算資料のどこでSaaS指標を確認するか
SaaS銘柄の指標は、企業が公表する一次資料で確認するのが基本です。SNSやまとめ記事の数字は、時点や定義が省略されていることが多いため、気になる企業があれば元の資料にあたる習慣をつけましょう。
| 資料 | 入手先 | 確認できること |
|---|---|---|
| 決算短信 | 日本取引所グループの適時開示情報閲覧サービス(TDnet)、企業のIRページ | 売上高・営業利益などの業績と業績予想。四半期ごとに公表される |
| 決算説明資料 | 企業のIRページ | ARR、解約率、NRR、顧客数など、企業が任意に開示するSaaS指標とその定義 |
| 有価証券報告書 | 金融庁のEDINET | 事業の内容、事業等のリスク、セグメント情報、財務諸表の詳細な注記 |
ARRや解約率といったSaaS特有の指標は、法令で開示が義務づけられたものではなく、企業が任意に公表しているものです。そのため、開示している指標の種類や定義、頻度は企業ごとに大きく異なります。ある企業はARRと月次解約率を毎四半期開示している一方で、別の企業は売上高の内訳しか示していない、ということも珍しくありません。指標が開示されていない場合は、売上高のうちストック型の収益(継続課金の売上)がどれだけを占めているか、その比率がどう変化しているかを、セグメント情報や売上の内訳から読み取ることになります。
指標の開示状況は企業ごとに違う
前述のOne Capitalの調査(2022年1月14日時点)では、上場SaaS企業27社のうち、ARRを開示していたのは18社(67%)、収益ベースの解約率(Gross Revenue Churn Rate)を開示していたのは10社(37%)、NRRを開示していたのは2社(7.4%)でした。調査から時間がたっているため現在の開示状況は変わっている可能性がありますが、「指標を開示していない企業もある」ことを前提に、ほかの企業と並べるときは同じ指標が開示されているかを先に確認する必要があります。
損益計算書で先行投資の大きさを読む
SaaS企業の損益計算書を見るときは、売上総利益の次に、販売費及び一般管理費の中身に注目します。広告宣伝費や人件費が売上に対してどれくらいの割合を占め、その割合が年々どう変化しているかを見ると、企業が成長投資の段階にあるのか、投資を抑えて利益を出す段階に移りつつあるのかを推し量ることができます。こうした読み方の土台は、冒頭で整理した、売上原価・販売費及び一般管理費・営業利益という損益計算書の構造です。ここまでの読み方を、自分の手元の数字に当てはめて確認してみましょう。
決算書の読み方を自分の数字で確かめる、セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
代表的なSaaS銘柄は?「三大SaaS企業」と一覧の探し方
SaaS銘柄の代表例や「日本の三大SaaS企業」に、公的機関が定めた定義はありません。情報サイトのテーマ株一覧や、各社が公表する決算資料から、自分で基準を決めて探すのが確実です。
「三大SaaS企業」に公的な定義がない理由
東証の業種区分(33業種)に「SaaS」という区分はなく、SaaSを主力とする企業も、情報・通信業などの通常の区分に所属します(日本取引所グループ「用語集」)。そのため「三大SaaS企業」や「代表銘柄」は、売上規模・知名度・時価総額など、記事ごとに異なる基準で挙げられています。基準が変われば顔ぶれも順番も入れ替わるため、本記事では特定の企業を順位づけして挙げることはしません。SaaS業界の分類や職種との関わりは、SaaS業界とは?ホリゾンタル・バーティカルの分類、収益構造、代表企業と職種を解説もあわせてご覧ください。
SaaS銘柄の一覧を探す方法
| 探し方 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 情報サイトのテーマ株一覧(株探・みんかぶなど) | SaaS関連とされる銘柄の名前、株価、時価総額など | 収録の基準はサイトごとに異なる。みんかぶのSaaSテーマは、2026年10月14日の確認時点で197件が掲載されており、先頭付近には株式会社マネーフォワード(3994)や株式会社ラクス(3923)などが表示されている(掲載順は日々変わる) |
| 証券会社の投資情報メディア | その時点の市場の話題に沿って選ばれた銘柄と、選定の条件 | 記事ごとに選定条件が違い、掲載時点の株価や決算に基づく。推奨と受け取らず、条件と時点を確認する |
| EDINET・TDnet・企業のIRページ | 事業の内容、売上の内訳、決算の詳細 | 一覧で見つけた企業が本当にSaaSを主力としているかを、1社ずつ一次資料で確認するために使う |
一覧を見るときの注意点
- 一覧に載っていることと、SaaSが主力であることは同じではありません。売上に占めるSaaSの割合は企業ごとに違うため、決算説明資料のセグメント情報や売上の内訳で確認します。
- 掲載されている銘柄や株価は、サイトごと・日ごとに変わります。見た日付を控えておきましょう。
- 一覧の並び順や掲載の有無は、推奨や評価を意味するものではありません。
国内のSaaS関連企業を分類で整理する
国内の上場SaaS関連企業は、事業の対象範囲によって大きく3つに分けて整理できます。ここで示すのは事業の性質による分類であり、特定の企業や分類の優劣を示すものではありません。
| 分類 | 主な業務領域の例 | 指標を見るときの視点 |
|---|---|---|
| ホリゾンタルSaaS(業種横断型) | 会計、人事労務、営業支援、名刺管理、電子契約など | 対象市場が広い一方、競合も多い。価格競争と解約率の推移に注目 |
| バーティカルSaaS(業界特化型) | 医療、建設、不動産、飲食、物流など特定業界の業務 | 対象市場は限られるが、業務に深く組み込まれると解約されにくい傾向。市場の大きさと浸透率に注目 |
| 基盤系SaaS | セキュリティ、データ基盤、認証、開発支援など | 他システムと連携して使われるため定着しやすいが、導入までの期間が長くなりやすい |
分類ごとに、顧客獲得の仕組みや解約率の水準の前提が異なります。ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSのARR成長率を単純に並べて比べると、事業モデルの違いを見落とした比較になりやすい点に注意が必要です。具体的な企業名や最新の開示状況は、各社のIRページや日本取引所グループの公表資料で確認してください。SaaS業界の全体像についてはSaaS企業とは|ビジネスモデル・業界マップ・重要指標を解説でも整理しています。
2026年の市場環境|AIエージェントの台頭とSaaSの再評価
2026年のSaaS銘柄を取り巻く論点として欠かせないのが、生成AIとAIエージェントの進化です。人が画面を操作して使うことを前提にしたSaaSの価値が、AIが業務を代行する時代にどう変わるのかをめぐって、「SaaSの死」と呼ばれる議論が広がりました。この議論を受けて、米国ではSaaS関連企業の株価が大きく変動したと報じられています。
ただし、この議論はSaaSという提供形態がなくなることを意味するものではなく、価値の出し方や料金の決め方が変わりつつあるという問題提起と捉えられています。みんかぶのSaaSテーマの解説でも、AIエージェントの台頭で「SaaSの死」が現実味を帯びたとの見方と、AIの普及でクラウドサービスの活用が活発になるとの見方の両方が紹介されています。また、2026年8月26日の米セールスフォースの決算発表をきっかけに、国内のSaaS関連株の見直しを論じるレポートも出ています(SBI証券 投資情報メディア)。レポートが示す銘柄は、その時点の選定条件に基づく例であり、本記事として推奨するものではありません。
利用人数に応じたID課金から、処理量や成果に応じた課金へと移る動きが出てくれば、ARRの伸び方や解約率の意味合いも変わる可能性があります。SaaS銘柄を見るときは、従来の指標に加えて、AI機能をどう収益化しているか、料金体系をどう変えようとしているかといった経営方針も、決算説明資料で確認しておくとよいでしょう。議論の詳細は「SaaSの死」とは|本当に死ぬのか・議論の発端とAI時代の進化を解説やSaaS終焉論とは?発端・論点・反論と中小企業が確認したい判断軸を解説で解説しています。
今後伸びるSaaS企業は?見極めるときの確認項目
今後伸びるSaaS企業を言い当てることはできませんが、開示された数字から「伸びる条件がそろっているか」を確認することはできます。見るのは、成長・定着・収益構造・バランス・開示の姿勢の5点です。
| 確認項目 | 確認する資料 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 成長 | 決算説明資料のARR・ストック売上の推移 | 前年同期比の成長が複数期続いているか。一時的な大型契約や買収で押し上げられていないか |
| 定着 | 決算説明資料の解約率・NRR | 顧客数ベースか金額ベースか、月次か年次かをそろえて推移を見る |
| 収益構造 | 決算短信・有価証券報告書の売上総利益率と販管費 | 売上総利益率が維持・改善しているか。販管費の増加が売上の成長につながっているか |
| バランス | Rule of 40の推移 | 前提をそろえたうえで、40に近づいているか |
| 開示の姿勢 | IRページ・決算説明資料 | 指標を継続して開示しているか。定義を変えた場合に説明があるか |
これらは過去の実績を確認する項目であり、将来の株価や業績を保証するものではありません。AIによる代替をめぐる議論のように市場環境も変わるため、複数の指標と一次資料を継続して確認することが前提です。
SaaS銘柄を見る際によくある誤解
SaaS指標は便利な一方で、読み方を誤ると実態と違う印象を持ってしまいます。よく見られる誤解を整理しました。
| よくある誤解 | 実際に確認したいこと |
|---|---|
| ARRが大きく伸びているから事業は順調だ | 解約率やNRRがあわせて改善しているか。新規獲得の勢いだけで伸びていないか |
| A社とB社の解約率を並べれば優劣が分かる | 顧客数ベースか金額ベースか、月次か年次か。定義がそろっているか |
| 赤字のSaaS企業は危ない | 赤字の理由が顧客獲得への先行投資なのか。投資の回収見通しを会社がどう説明しているか |
| Rule of 40を超えていれば安心だ | どの利益率を使った計算か。一時的な要因で押し上げられていないか |
| 売上総利益率が高ければ収益構造は同じだ | 売上原価に何を含めているか。企業ごとに範囲が違っていないか |
| ランキングやまとめ記事の上位企業を選べばよい | 順位の根拠と時点。一次資料の数字と一致しているか |
どの誤解にも共通するのは、1つの数字だけで判断してしまうことです。SaaS指標は、規模(ARR)、定着(解約率・NRR)、収益構造(売上総利益率)、バランス(Rule of 40)の複数の角度から組み合わせて読み、さらに複数期の推移を並べて見ることで、はじめて実態に近づけます。また、株価は金利などの市場全体の環境にも左右されるため、企業の指標の変化と株価の変動を切り分けて考える姿勢も大切です。
指標の定義や利益率の中身を読み解く力は、決算書が取引からどう作られるのかを、一度手元の数字で確かめておくと身につきやすくなります。マネーフォワード クラウド会計には、商品ページによると、メールやチャットによるサポートや使い方を学べるページが用意されており、会計ソフトに慣れていない方でも試しやすい面があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS銘柄とは何ですか?
A. ソフトウェアをインターネット経由で月額・年額の利用料で提供するSaaSを主な事業とする上場企業の株式を指します。顧客が使い続ける限り売上が積み上がる、サブスクリプション型の収益構造が特徴です。
Q2. SaaSの代表銘柄や日本の三大SaaS企業はどこですか?
A. 公的な定義はなく、「三大SaaS企業」や代表銘柄は、売上規模や知名度などの基準によって媒体ごとに異なります。東証の業種区分にもSaaSという区分はないため、情報サイトのテーマ株一覧と各社の決算資料を組み合わせて、自分で基準を決めて探すのが確実です。
Q3. 日本のSaaS企業の一覧はどこで確認できますか?
A. 株探やみんかぶなどの情報サイトに、SaaSをテーマにした銘柄一覧があります。ただし収録の基準はサイトごとに異なり、一覧に載っていることとSaaSが主力であることは同じではありません。事業の内容は、EDINETの有価証券報告書や企業のIRページで確認してください。
Q4. 今後伸びるSaaS企業はどう見極めればよいですか?
A. 将来の業績を断定することはできません。ARRやストック売上の成長率、解約率・NRR、売上総利益率、Rule of 40の推移を、同じ定義で複数期にわたって確認し、指標を継続して開示しているかも見ます。判断は一次資料を確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。
Q5. SaaS企業の利益率はどのくらいが目安ですか?
A. 企業によって大きく異なります。民間企業One Capitalの調査(2022年1月時点、上場SaaS企業26社)では、売上総利益率の中央値は約7割、営業利益率の中央値は6%でした。成長のための先行投資で営業利益が低い、または赤字の企業もあるため、売上原価の範囲や販管費の内訳とあわせて、最新の決算資料で確認してください。
Q6. この記事の情報だけで投資判断をしてよいですか?
A. 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。投資判断は、企業が公表する一次資料を確認し、必要に応じて専門家に相談したうえで、ご自身の責任で行ってください。
まとめ|SaaS銘柄は複数の指標と一次資料で読む
SaaS銘柄を見るときに押さえておきたいのは、次の5つです。
- サブスクリプション型の収益構造を理解し、先行投資による赤字の意味を読み取る
- 売上総利益率・営業利益率は、売上原価に含まれる費用の範囲とあわせて読む
- ARR・解約率・NRR・Rule of 40は、計算の前提と企業ごとの定義を確認してから、複数期の推移で比べる
- 銘柄一覧はサイトごとに基準が違うため入口にとどめ、事業内容と指標は一次資料で確認する
- 決算書の作られ方を手元の数字で確かめたい場合は、会計ソフトの資料を取り寄せて機能と対象を確認する
SaaS特有の指標は、損益計算書や貸借対照表の理解があってこそ正しく読めます。決算書がどのように作られるのかを会計ソフトで体験しておくと、決算説明資料の数字もぐっと身近になるはずです。なお、本記事は投資助言ではなく、投資は自己責任で行うものである点にご注意ください。
参考文献
- 総務省「令和7年版 情報通信白書 クラウドサービス」:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html
- 金融庁「EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)」:https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/
- 日本取引所グループ「適時開示情報閲覧サービス(TDnet)」:https://www.release.tdnet.info/inbs/I_main_00.html
- 日本取引所グループ「用語集(業種)」:https://www.jpx.co.jp/glossary/ka/112.html
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト「資産形成の基本」:https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/invest/index.html
- One Capital「SaaS上場企業27社のメトリクス開示状況と業界水準」(2022年1月18日掲載、数値は2022年1月14日時点):https://onecapital.jp/perspectives/saas-metrics
- みんかぶ「【SaaS】が株式テーマの銘柄一覧」(2026年10月14日確認):https://minkabu.jp/theme/SaaS
- SBI証券 投資情報メディア「SaaS復活か!? セールスフォース好決算で見直し期待株6選」:https://go.sbisec.co.jp/media/report/dom_em_weekly/dom_em_weekly_260902.html
- マネーフォワード「マネーフォワード クラウド会計」導入事例(株式会社HITOMIOテクノロジーズ):https://biz.moneyforward.com/case/6636/
