SaaSとクラウドの違い|包含関係とオンプレ・ASPとの違いを整理
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- クラウドはSaaSを内包する上位概念(NIST SP 800-145)
- SaaSは「ビジネス用途・サブスク・マルチテナント」の3要素
- オンプレ・ASPとの境界は「責任分担」と「テナント方式」
「SaaSとクラウドって何が違うの?」と社内で聞かれて、答えに詰まったことはないだろうか。総務省の通信利用動向調査では企業のクラウドサービス利用が一貫して拡大しているが、現場では「クラウド」「SaaS」「Webサービス」「ASP」が同じ意味で使われがちで、調達や情シスの議論が噛み合わなくなる。本記事ではNIST SP 800-145の定義に立脚し、まず「クラウドはSaaSを内包する関係である」という土台を整理したうえで、SaaSとWebサービス・オンプレミス・ASPとの境界線を、個人事業主から大企業まで使える共通フレームとして図解する。
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- SaaSとクラウドは「同じ」?──まず押さえたい包含関係
- SaaSとWebサービス・Webアプリの違い
- SaaSとオンプレミスの違い──導入・運用・コストの構造
- SaaSとASPの違い──「テナント方式」と「クラウド前提」が分岐点
- よくある質問(FAQ)
SaaSとクラウドは「同じ」?──まず押さえたい包含関係
結論から書くと、クラウドはSaaSを内包する上位概念であり、「クラウド=SaaS」ではない。米国国立標準技術研究所が2011年に公表したNIST SP 800-145「The NIST Definition of Cloud Computing」では、クラウドコンピューティングを「オンデマンドのセルフサービス」「広範なネットワークアクセス」「リソースの共有」「迅速な伸縮性」「計測可能なサービス」の5つの特性で定義し、そのうえでサービスモデルをSaaS(Software as a Service)/PaaS(Platform as a Service)/IaaS(Infrastructure as a Service)の3つに分類している。SaaSはこの3層のうち、最も上位の「ソフトウェアそのものをサービスとして利用する形態」を指す。
つまり「クラウドを使っている」という表現は、SaaS/PaaS/IaaSのいずれか、または複数を使っている状態を指す。「SaaSを使っている」と言えば、そのなかでも最上位レイヤー(完成したアプリケーションを利用する形)に限定された話になる。SaaSはクラウドの一形態と覚えておくと、社内の議論で「クラウド導入=SaaS導入」と短絡される誤解を回避できる。3層内の細かい違い(SaaS/PaaS/IaaSの境界線)は、別記事「SaaS/PaaS/IaaSの違い」で詳しく解説する。
SaaSとWebサービス・Webアプリの違い
結論として、Webサービス・Webアプリは「ブラウザ越しに使えるソフトウェア」全般を指す広い概念であり、SaaSはそのなかでも「ビジネス用途・サブスクリプション課金・マルチテナント運用」という3要素を備えたものを指す、より狭い概念だ。総務省の令和7年版 情報通信白書でも、企業のクラウドサービス利用は業務システムの中心に位置づけられているが、無料のWebメールや個人向けの動画配信サイトまで「SaaS」と呼ぶことは通常ない。
3つの用語の関係を整理すると次のようになる。
| 用語 | 範囲 | 典型例 | SaaSとの関係 |
|---|---|---|---|
| Webサービス(広義) | ブラウザやAPIで利用できるネット越しの機能全般 | 検索エンジン/無料Webメール/天気APIなど | SaaSを含む最も広い概念 |
| Webアプリケーション | ブラウザ上で動くアプリ全般 | 個人開発の業務ツール/無料のオンラインエディタ | SaaSを含むが、無料・個人開発のものも含む |
| SaaS | ビジネス用途・サブスクリプション・マルチテナント運用 | 会計/CRM/HR/グループウェアなど | 3要素を満たす業務アプリのみが該当 |
個人事業主であれば、無料のWebサービスとSaaSを「業務継続性」の観点で分けて考えるとよい。たとえばサービス終了時のデータ移行・SLA(サービス品質保証)・問い合わせ窓口の有無は、有償のSaaSとして提供されるものでないと整わないことが多い。中堅・大企業では、調達ガバナンスの観点で「全社利用ツールはSaaSに限定、無料Webサービスは個人利用にとどめる」というルールを敷くことが一般的だ。
SaaSとオンプレミスの違い──導入・運用・コストの構造
結論として、SaaSとオンプレミスの最大の違いは「インフラ・OS・アプリの責任を誰が持つか」に集約される。オンプレミスは自社のサーバー室やデータセンターに設備を所有し、ハードウェアからアプリまで自社の責任で運用する形態。一方SaaSは、ベンダーがインフラから最上位のアプリ運用まで責任を持ち、利用者は「ユーザー設定」と「自社データの管理」だけを担う。総務省の通信利用動向調査では企業のクラウドサービス利用率は一貫して上昇傾向にあり、業務システムの主流が「自社所有」から「サービス利用」に移行しつつあることが読み取れる。
この違いは、3層のペルソナでそれぞれ意味合いが変わる。個人事業主・フリーランスは初期費用とID単価の合計だけを見ればよく、SaaSのほうが圧倒的に身軽だ。中小企業は既存のオンプレ業務システムと併存する期間が長くなりがちで、両者のID管理・データ連携が論点になる。中堅・大企業はCFOや経理部長の視点で「資産計上の縮小と費用処理化」「監査対応のためのSLAと第三者監査報告書(SOC2等)」の双方を整える必要がある。SaaSのメリット・デメリットを体系的に整理した内容は、「SaaS導入のメリット・デメリット」を参照してほしい。
SaaSとASPの違い──「テナント方式」と「クラウド前提」が分岐点
結論として、SaaSとASP(Application Service Provider)の違いは大きく2点に絞れる。1つはテナント方式──ASPは顧客ごとに別インスタンスを用意する「シングルテナント」が主流だったのに対し、SaaSは複数顧客が同じインスタンスを共有する「マルチテナント」が主流である点。もう1つはクラウド基盤を前提にするか──ASPは1990年代後半に登場し、当時は専用ホスティングで提供されていたが、SaaSは2000年代以降にNIST SP 800-145が定義する「クラウドの5特性」を前提に発展してきた。総務省は両者を実務上ほぼ同義として扱い、「ASP・SaaSの安全・信頼性に係る情報開示指針」のように並列で参照する文書もある。
実務面では、ASPは個別カスタマイズに強く、SaaSは標準化と継続的アップデートに強いと整理できる。長期間ASP型のサービスを使ってきた中小企業がSaaSに乗り換える際は、「個別カスタマイズを諦めてSaaSの標準機能に業務を寄せる」発想の転換が必要になる場面が多い。一方、個人事業主はそもそもカスタマイズの必要が薄いため、SaaSの標準機能でほぼ完結する。中堅・大企業はAPI連携・SSO・監査ログなどを軸に、複数SaaSを組み合わせる方向で全社設計を進めるのが一般的だ。
よくある質問(FAQ)
Q. クラウドとSaaSは同じ意味で使ってもよいですか?
A. 厳密には異なるため、ビジネスの議論では分けて使うことを推奨する。NIST SP 800-145の定義では、クラウドは「SaaS・PaaS・IaaSを内包する上位概念」であり、SaaSはそのうち最上位レイヤーの「完成したアプリケーションをサービスとして利用する形態」を指す。社内会議で「クラウド化を進めよう」と言うと、人によってSaaS導入・PaaS活用・IaaS基盤移行のどれを想起するか分かれてしまうため、議論の初期で「どのレイヤーの話か」を揃えるとよい。
Q. SaaSはWebサービスの一種ですか?
A. はい。Webサービスやブラウザで動くWebアプリ全般のうち、「ビジネス用途/サブスクリプション課金/マルチテナント運用」という3要素を備えたものをSaaSと呼ぶのが一般的だ。無料のWebメールや個人向けの動画配信サイトは、Webサービスではあるが通常はSaaSには分類されない。
Q. SaaSとオンプレを併用しても問題ありませんか?
A. 問題ない。むしろ多くの企業は両者を併用している。基幹システムはオンプレに残し、グループウェア・会計・CRMなど周辺領域からSaaSに切り替えるパターンが中堅・大企業では一般的だ。併用時の論点はID管理(SSO)、データ連携(API)、退職者の権限剥離の3点に絞られる。詳細はDX文脈で扱うことも多いため、「DXとは」も合わせて参考にしてほしい。
Q. ASPとSaaSはどう使い分けたらよいですか?
A. 現在の新規導入の議論で「ASPかSaaSか」を真剣に比較する場面は減っており、実質的にSaaSが標準と考えてよい。ただし、長年ASP型のサービスを使ってきた既存システムを乗り換える際は、シングルテナントで認められていた個別カスタマイズを諦めて、SaaSの標準機能に業務を寄せる前提で移行計画を組む必要がある。
Q. SaaSは「クラウドの一種」と説明して間違いではありませんか?
A. その表現で問題ない。NIST SP 800-145においてSaaSは「クラウドのサービスモデルの1つ」と位置づけられているため、「SaaSはクラウドの一形態」「クラウドはSaaSを内包する」のいずれの言い方も整合する。誤解を招くのは逆向き、つまり「クラウド=SaaS」という同一視のほうだ。
まとめ
SaaSとクラウドの関係を整理すると、クラウドはSaaSを内包する上位概念であり、SaaSはそのうち「完成したアプリケーションをサービスとして使う形態」を指す。境界線は次の4つで覚えるとよい。①クラウドの3層のうち最上位がSaaS。②Webサービス・Webアプリのうち「ビジネス用途・サブスクリプション・マルチテナント」の3要素を満たすものがSaaS。③オンプレミスとは、インフラからアプリまでの責任が誰にあるかが異なる。④ASPとはテナント方式とクラウド前提の有無が異なる。本記事の図1〜図3を社内の議論資料として使えば、用語の混在は大幅に減らせるはずだ。
今日からできる3つのこと
- 自社で利用中のサービスを「SaaS/PaaS/IaaS/オンプレミス」に分類してみる
- 「クラウド化」という言葉が出たら、どのレイヤーの話か確認する習慣をつける
- SaaSとオンプレの責任分担表(図2)を、調達・情シスの社内資料に転用する
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- SaaSとは|個人事業主から大企業まで使える基礎ガイド
- SaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの中身を整理
- SaaSとIaaSの違い|技術構造から読み解く
- SaaS導入のメリット・デメリット
- DXとは|DX推進におけるSaaS活用の位置づけ
参考文献
- 米国国立標準技術研究所「The NIST Definition of Cloud Computing(NIST SP 800-145)」2011年9月、https://csrc.nist.gov/publications/detail/sp/800-145/final (2026年5月30日取得)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」、https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/ (2026年5月30日取得)
- 総務省「通信利用動向調査」、https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html (2026年5月30日取得)
- 総務省「ASP・SaaSの安全・信頼性に係る情報開示指針」、https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/asp-saas/index.html (2026年5月30日取得)
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