SaaS導入と定着|運用5フェーズ
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- SaaS導入から運用までの5フェーズがわかる
- 導入前に決めるべき3点がわかる
- 「使われないSaaS」を防ぐ方法がわかる
SaaSを導入したものの、社内で使われないまま契約だけが続いてしまうことがあります。導入から運用までを5つのフェーズで管理すると、こうした事態を防ぎやすくなります。本記事では、SaaS導入と定着の進め方を、オンボーディングと運用5フェーズとして解説します。
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SaaS導入の全体像|検討から運用までの5フェーズ
検討、選定、契約、オンボーディング、運用という5フェーズで、SaaS導入から定着までの流れを管理します。各フェーズには担当部門があり、業務部門・情報システム部門・法務・経理といった複数の関係者が連携して進めます。
| フェーズ | 内容 |
|---|---|
| 1.検討 | 業務課題の言語化・要件整理 |
| 2.選定 | 適合性・セキュリティ・契約条件の比較 |
| 3.契約 | 利用範囲・解約条件・データ条項の確認 |
| 4.オンボーディング | 初期設定・利用者登録・教育 |
| 5.運用 | 利用率モニタリングと改善 |
導入前に決めるべき3点
セキュリティ、契約条件、利用範囲という3点を導入前に決めておくことが、後半フェーズでのトラブルを防ぐ鍵になります。これらを曖昧にしたまま導入を進めると、契約後に条件の見直しが必要になる場合があります。
オンボーディングと社内定着の進め方
初期設定、利用者登録、教育という3つの活動が、オンボーディングフェーズの中心です。後半フェーズ(オンボーディング以降)が導入の成否を分ける分水嶺であるとされており、この段階を丁寧に進めることが定着の鍵になります。
社内のスケジュール共有やファイル管理を担うグループウェアは、全社員が日常的に触れるため、オンボーディングの丁寧さが定着に直結しやすい領域です。
運用フェーズで起きる「使われないSaaS」を防ぐには
利用率モニタリングと改善を運用フェーズで継続することが、「使われないSaaS」を防ぐ方法です。導入して終わりではなく、定期的に利用状況を確認し、必要に応じて運用方法を見直す姿勢が求められます。
現場定着を後押しする「推進担当者」の役割
SaaS導入の成否は、情報システム部門だけでなく、実際に利用する現場側に「推進担当者」を置けるかどうかによっても大きく左右されます。
情報システム部門が初期設定やアカウント発行を担っても、日々の細かい使い方の質問や、部署固有の運用ルールの調整までは目が届きにくいのが実情です。各部署に1名から2名、SaaSの使い方に詳しい推進担当者を置いておくと、部署内での簡単な質問はその場で解決でき、情報システム部門への問い合わせ件数も減らせます。推進担当者は必ずしもIT専門知識を持つ人材である必要はなく、新しいツールへの抵抗感が少なく、周囲に教えることを厭わない人材を選ぶことが実務上は有効とされています。
推進担当者を置く際は、導入初期の数週間だけでなく、運用フェーズに入ってからも定期的に情報システム部門と連携する機会を設けておくことが重要です。現場で実際にどのような使われ方をしているか、どこでつまずいているかといった情報は、推進担当者を通じて初めて情報システム部門に伝わることが多く、この情報連携の仕組みがあるかどうかが、5フェーズ全体を通じた定着の成否を左右します。
SaaS導入・定着でよくある失敗パターン3つ
契約後のオンボーディングを軽視する、利用範囲を曖昧にしたまま契約する、運用フェーズでの利用率確認を行わないという3つが、SaaS導入・定着でよく見られる失敗の典型です。
失敗パターン1:契約後のオンボーディングを軽視する。初期設定や教育が不十分で、現場に定着しないケースです。オンボーディングを丁寧に進めることが回避策になります。
失敗パターン2:利用範囲を曖昧にしたまま契約する。契約後に想定と異なる利用範囲であることが分かるケースです。契約前に利用範囲を明確にすることが回避策になります。
失敗パターン3:運用フェーズでの利用率確認を行わない。使われないまま契約だけが続き、コストが無駄になるケースです。利用率モニタリングを継続することが回避策になります。
企業規模別に見る導入プロセスの進め方の違い
5フェーズの基本的な流れは企業規模を問わず共通していますが、各フェーズにかける時間や関わる人数は、企業規模によって現実的な進め方が変わります。
個人事業主や少人数のチームでは、検討から契約までを1人の担当者が短期間で判断できる分、意思決定のスピードは速い一方、複数の視点でリスクを確認する機会が少なくなりがちです。無料トライアルを積極的に活用し、契約前に実際の操作感を確かめる工程を省略しないことが、少人数チームでの失敗を防ぐポイントになります。オンボーディングについても、大掛かりな研修を組む必要はなく、初期設定を終えたらすぐに実務で使いながら覚えていくという進め方が現実的です。
中堅・大企業では、検討・選定フェーズに複数の部門(業務部門・情報システム部門・法務・経理)が関わるため、各フェーズの意思決定に時間がかかりやすくなります。特に契約フェーズでは、法務によるリーガルチェックや、経理による予算承認といった社内プロセスを経る必要があり、個人事業主に比べて全体の導入期間が長くなる傾向があります。その分、オンボーディングフェーズでは複数部署にまたがる展開計画(どの部署から先に導入するか、研修をどう実施するか)を事前に設計しておくことで、大規模な展開でもスムーズに定着を進めやすくなります。
部門間の役割分担を明確にする方法
業務部門、情報システム部門、法務、経理という4つの部門が、それぞれどこまでの範囲を担うのかを事前に文書化しておくことが、5フェーズを通じた混乱を防ぐ実務上のポイントです。役割分担が曖昧なまま導入を進めると、トラブル発生時に「誰が対応するのか」が決まっておらず、対応が後手に回ることがあります。
業務部門は、実際にツールを使う立場として、要件定義と現場での運用ルール作りを担当します。どの業務プロセスにSaaSを組み込むか、日々の入力ルールをどう統一するかといった判断は、現場の実情を最もよく知る業務部門が主導するのが自然です。一方、情報システム部門は、セキュリティ要件の確認、アカウント管理、既存システムとの連携設定など、技術的な側面を担います。選定フェーズでは、業務部門が挙げた候補について、情報システム部門がセキュリティ観点でのチェックを行うという分業が一般的です。
法務は、契約フェーズにおいて利用規約やデータ取り扱い条項を確認し、自社にとって不利な条件が含まれていないかを精査する役割を担います。特に、解約時のデータ返還・削除に関する条項や、損害賠償の上限に関する条項は、契約後にトラブルが起きやすい箇所であるため、法務によるリーガルチェックを省略しないことが望ましいとされています。経理は、予算承認とコスト管理を担当し、契約後も継続的に利用料金の妥当性を確認する立場にあります。運用フェーズに入ってから、利用率が低いまま契約が自動更新されるといった事態を防ぐには、経理が定期的にコストと利用実績を突き合わせる仕組みを持つことが有効です。
これら4部門の役割分担は、企業規模が大きくなるほど文書化の重要性が増します。個人事業主や少人数のチームでは、1人が複数の役割を兼任することも多く、その場合でも「今どのフェーズの、どの判断をしているか」を意識的に切り分けることで、抜け漏れを防ぎやすくなります。
契約更新・見直し時に確認すべきポイント
契約更新のタイミングは、運用フェーズで蓄積した利用実績をもとに、継続・見直し・解約を判断する重要な節目です。多くのSaaSは年間契約や自動更新の仕組みを採用しているため、更新期限の直前になって慌てて判断するのではなく、更新の数か月前から準備を始めることが望ましいとされています。
確認すべき第一のポイントは、利用率です。契約時に想定していたライセンス数と、実際にログインして機能を使っている人数に大きな差がある場合、ライセンス数の見直しによってコストを適正化できる可能性があります。第二のポイントは、当初の導入目的が達成されているかどうかです。業務効率化や情報共有の円滑化といった目的を掲げて導入した場合、その目的に照らして実際に効果が出ているかを、定性的・定量的の両面から振り返ることが有効です。効果が実感できない場合は、運用方法に問題があるのか、そもそもツールの選定が適切でなかったのかを切り分けて検討する必要があります。
第三のポイントは、契約条件の変更有無です。料金プランやサポート体制、セキュリティ機能などは、SaaSベンダー側の都合で更新のタイミングに変更されることがあります。更新前に最新の契約条件を確認し、自社の利用実態と乖離がないかをチェックすることが重要です。なお、契約条件や料金は変動する場合があるため、更新前には必ず提供事業者の公式情報で最新の内容を確認することが望ましいです。第四のポイントは、代替手段の有無です。市場には類似機能を持つ複数のSaaSが存在することが多く、更新のタイミングは、他の選択肢と比較検討する自然な機会でもあります。ただし、乗り換えにはデータ移行や再教育のコストが伴うため、単純な価格比較だけでなく、移行コストも含めた総合的な判断が求められます。
複数SaaSを併用する際の管理上の注意点
1つの企業が複数のSaaSを併用するのが一般的になった結果、個々のツールの導入プロセスだけでなく、ツール全体をどう管理するかという視点も必要になっています。部署ごとに個別にSaaSを契約していくと、似た機能を持つツールが重複して導入されたり、退職者のアカウントが複数のサービスに残ったままになったりする問題が起こりやすくなります。
これを防ぐには、社内で契約中のSaaSを一覧管理する台帳を作り、契約部署、契約金額、更新時期、利用人数といった情報を情報システム部門または管理部門で一元的に把握しておくことが有効です。新しいSaaSを検討する際にも、まず台帳を確認し、既存契約の中に類似機能を持つツールがないかを確かめる工程を、検討フェーズの初期に組み込むことが望ましいとされています。台帳の整備は手間がかかる作業ですが、契約更新のタイミングで利用率の低いSaaSを洗い出す際にも役立つため、運用フェーズでの利用率モニタリングと合わせて継続的に更新していく体制を作ることが重要です。
導入担当者が変わる際の引き継ぎで押さえるべきこと
SaaS導入を主導した担当者が異動や退職で交代する場合、契約内容や運用ルールの引き継ぎが不十分だと、後任者が経緯を把握できないまま運用を続けることになりがちです。特に、なぜそのSaaSを選定したのか、契約時にどのような条件交渉を行ったのかといった背景情報は、文書化されていないと担当者の退職とともに失われてしまいます。
引き継ぎ資料には、契約先の連絡窓口、更新時期、過去に発生したトラブルとその対応内容、社内での利用ルールを最低限まとめておくことが望ましいです。こうした情報を担当者個人の記憶やメールの中だけに留めず、部門内で共有できる形にしておくことが、5フェーズを通じた継続的な運用を支える土台になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
A. 数日から6か月程度と、業務範囲や規模によって幅があります。
Q2. 導入を中途で撤退する判断基準は何ですか?
A. 利用率が上がらない、当初の要件を満たさないといった状況が続く場合に検討します。
Q3. 既存SaaSとの統合はどう確認しますか?
A. 選定フェーズで、既存システムとの連携可否を事前に確認します。
Q4. 退職者アカウントの削除はいつ行うべきですか?
A. 退職手続きと合わせて速やかに削除することが、セキュリティ上望ましいです。
Q5. 定着の成否を分けるフェーズはどこですか?
A. オンボーディング以降の後半フェーズが分水嶺とされています。
Q6. 導入前に決めるべきことは何ですか?
A. セキュリティ、契約条件、利用範囲の3点です。
まとめ|今日からできる3つのこと
- オンボーディングを丁寧に進める:軽視しません。
- 利用範囲を契約前に明確にする:曖昧にしません。
- 利用率を継続的に確認する:導入して終わりにしません。