規模別整理型 | SaaSのメリット・デメリット|規模別の導入判断ガイド
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- メリットの核は「初期費用の低さ・自動更新・場所を選ばない利用」
- 利用率は80.6%、効果実感は88.2%(総務省・令和7年版情報通信白書)
- 「やめとけ」の主因はカスタム制約・ベンダー依存・ランニングコスト
「SaaSを導入したほうがいいと聞くが、自社に合うか分からない」「『SaaSはやめとけ』という声もあって判断に迷う」──そんな声を実務でよく聞きます。実際、日本企業のクラウドサービス利用率は2024年時点で80.6%に達し、利用した企業の88.2%が「効果があった」と回答していますが(総務省・令和7年版情報通信白書)、すべての事業者にとってSaaSが最適とは限りません。本記事では、SaaSのメリット・デメリット・「やめとけ」と言われる理由を中立に整理し、個人事業主・中小企業・中堅大企業の3層それぞれにとっての判断軸を、Tier1の公的データに基づき体系的に解説します。
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目次
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SaaS導入の主なメリット|初期費用・自動更新・場所を選ばない利用
SaaSの主なメリットは、「初期費用の抑制」「ソフトウェアの自動更新」「インターネット環境があればどこからでも利用できること」の3点に集約されます。総務省「通信利用動向調査」をもとにした令和7年版情報通信白書によれば、2024年時点で企業のクラウドサービス利用率は80.6%に達し、利用効果があったと回答した企業は88.2%にのぼります。
初期費用を抑え、サブスクリプション型で始められる
オンプレミス型のソフトウェアでは、サーバー購入・ライセンス購入・初期開発などで、導入時にまとまった費用が発生します。SaaSは事業者がサーバー・ソフトウェアを提供し、ユーザーは月額または年額のサブスクリプション型で利用料を支払う形態が一般的です。初期投資を抑えて始められるため、個人事業主や中小企業にとって心理的・金銭的なハードルが下がります。
バージョン管理・セキュリティパッチを事業者側が担う
オンプレミス型では、利用企業がアップデートやパッチ適用を自前で行う必要があります。SaaSではバージョン管理・セキュリティパッチ・障害対応の多くを事業者側が担うため、利用企業側の運用負荷が下がります。特に情報システム部門の人員が限られる中小企業や、専任のIT担当者がいない個人事業主にとっては、運用負荷の軽減効果が大きいと言えます。
ブラウザがあれば、どこからでも利用できる
クライアントアプリのインストールや拠点ごとのサーバー構築が不要で、インターネットとブラウザがあれば利用できることも大きな特徴です。テレワーク・複数拠点・取引先との共同作業など、働き方の多様化に対応しやすくなります。場所を選ばない利点は規模を問わず効きますが、特にリモートワーク前提の事業者では他に代替がない強みとなります。
SaaSのデメリットと注意点|カスタム制約・ベンダー依存・ランニングコスト
SaaSの主なデメリットは、「機能カスタマイズの制約」「特定ベンダーへの依存(ロックイン)」「長期利用時のランニングコスト」の3点です。便利な反面、これらの注意点を理解しないまま導入すると、後から「思っていたのと違う」という事態になりかねません。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2024年7月)で、利用者と事業者の責任分担を明確にすることの重要性を示しています。
機能のカスタマイズに制約がある
SaaSは「完成したソフトウェアをサービスとして提供する」形態のため、事業者が用意した標準機能の範囲で使うのが原則です。業界固有の慣行や独自業務に合わせて細かくカスタマイズしたい場合、対応できないことや、有料オプション・API連携を活用しないと実現できないことがあります。基幹システムを完全に自社仕様にしたい場合は、SaaS単体では難しいケースもあるため、PaaS・IaaSとの組み合わせや、オンプレミス併用を検討する余地があります。
特定ベンダーへの依存(ロックイン)
SaaSの提供事業者を変更しようとすると、蓄積したデータの移行・既存運用ワークフローの作り直し・ID管理の再設計などで相応の工数とコストが発生します。これを「ベンダーロックイン」と呼びます。導入時には便利でも、5〜10年単位で見ると「乗り換えコストが負債のように積み上がる」状態になり得ます。導入前にデータエクスポート機能の有無や、業界標準フォーマットへの対応状況を確認することが、後悔を減らす近道です。
長期利用時のランニングコスト
月額数千〜数万円のサブスクリプションは、単月で見れば負担感が小さく感じられますが、3〜5年・複数SaaS併用で考えると累積額は大きくなります。「メリット」の章で示した「初期費用の低さ」と表裏一体の論点で、長期的なTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)の試算なしに「SaaSの方が安い」と判断するのは早計です。詳しくは「『SaaSはやめとけ』と言われる理由を分解する」で後述します。
事業者の障害・停止リスクとSLAの確認
SaaSの稼働率は事業者のインフラに依存します。サービス障害が発生すると、業務が広範囲で停止する可能性があるため、SLA(Service Level Agreement:稼働率の保証水準)と、障害発生時の責任分担をIPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」のチェックシートを使って事前に確認しておくことが推奨されます。
「SaaSはやめとけ」と言われる理由を分解する
「SaaSはやめとけ」という意見の主因は、「自社業務との不一致」「ランニングコストの想定甘さ」「ベンダーロックイン」「セキュリティ責任分担の誤解」「複数SaaSの統合運用の難しさ」の5点に整理できます。クラウドサービス全般の利用率は80.6%と主流の選択肢になっていますが(総務省・令和7年版情報通信白書)、すべての事業者にとって最適とは限らず、向き不向きを正しく見極めることが重要です。
自社の業務との不一致
業界固有の慣行や独自業務の比率が高い事業者では、SaaSの標準機能との乖離が「結局使えない」体験につながります。導入前にトライアル期間や無料プランで実務フローと機能の一致度を確認することが、最初の関門です。
月額の積み上がりとTCOの想定甘さ
「単月で見れば安い」と感じても、複数SaaS × アカウント数 × 利用年数で累積額は想定を超えがちです。3〜5年のTCO(総所有コスト)でオンプレミスや内製と比較する習慣を持つと、判断の精度が上がります。
ベンダーロックインによる乗り換えの難しさ
データ移行の難しさが「やめとけ」と言われる主因の一つです。導入時にデータエクスポート機能の有無・業界標準フォーマット対応を確認することで、将来の乗り換えコストを下げられます。
セキュリティ責任分担の誤解
「クラウドだから安全」「事業者が全部守ってくれる」という誤解は、情報漏えいの遠因になり得ます。IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2024年7月)は、事業者と利用者の責任分担を整理するチェックシートを公開しており、導入前後の双方で参照する価値があります。
複数SaaSの統合運用と退職時の権限管理
中小企業以上の規模では、複数のSaaSを並行利用するうちに「従業員が退職した際にどのSaaSのアカウントを停止すべきか分からない」という統合運用の課題が現れます。SSO(シングルサインオン)やiPaaS(連携基盤)の導入で軽減できますが、初期段階から設計に組み込むのが理想です。SaaSとDXの関係についてもう一段踏み込んで考えたい方はDXとは何か|定義から推進の進め方までも参照してください。
規模別の導入判断|個人事業主・中小企業・中堅大企業
SaaSが「向くか向かないか」は、事業規模と業務特性によって判断軸が異なります。個人事業主は「1ツールで完結するか・月額が許容範囲か」、中小企業は「複数SaaSのID統合と退職時の権限管理ができるか」、中堅大企業は「全社ガバナンスと長期TCOを設計できるか」が中心の論点になります。
個人事業主・フリーランス:1ツール完結とコストの可視化
個人事業主にとってSaaSは、会計・請求・顧客管理・スケジュールなどを低コストで揃えられる点で相性が良い選択肢です。判断軸は「無料/低額プランの有無」「1ツールで完結するか」「解約・乗り換えしやすいか」の3点。注意したいのは月額の積み上がりで、複数SaaSを契約すると気づかないうちに固定費が膨らみます。月額より年契約のほうが割安なケースが多いので、長く使うと決めたら年契約に切り替えるのが定石です。
中小企業:複数SaaSのID統合と退職時の権限管理
中小企業の現場では、複数のSaaSを並行利用するうちに「誰がどのSaaSに何の権限でアクセスしているか分からない」「退職者のアカウントが停止されていない」という運用課題が顕在化します。判断軸は「SSO(シングルサインオン)の対応」「退職時の権限停止フロー」「データ連携(iPaaS)の設計」。SaaSの導入そのものよりも、情報システム部門の責任分担とサブスク統制ルールを最初に決めることが、後悔を減らす鍵です。
中堅・大企業:全社ガバナンスとTCO最適化
中堅大企業では、SaaS単体の比較ではなく全社ガバナンスの視点が必要です。判断軸は「5〜10年TCOの試算」「SLA・データ主権・委託先管理」「基幹システムとの連携性」の3点。部門ごとに独立して導入が進む(シャドーIT化)と、ライセンスの重複契約や情報漏えいリスクが膨らみます。SaaS(標準業務)/PaaS(カスタム開発)/IaaS(基幹インフラ)を組み合わせる設計が現実的で、SaaSとは何か・PaaS/IaaSとの違いをまず理解したい場合はSaaSとは何か|基礎から導入判断までを完全解説で全体像を確認しておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaSのメリットを一言でまとめると何ですか?
A. 「初期費用を抑えつつ、運用負荷を事業者に委ね、場所を選ばず使える」点が中核です。総務省・令和7年版情報通信白書によれば、2024年時点で企業のクラウドサービス利用率は80.6%、利用効果があったと回答した企業は88.2%に達しており、効果実感を持つ事業者は多いと言えます。
Q. 「SaaSはやめとけ」は本当に正しいのですか?
A. すべての事業者にとってそうとは限りません。独自業務の比率が高い・長期TCOで内製が有利・規制業種で外部委託に制約があるなどの条件下では、SaaS以外の選択肢のほうが合うことはあります。一方で、汎用業務(会計・人事・営業支援など)では、規模を問わずSaaSが現実的な選択肢になっているのが現状です。
Q. デメリットを最小化するには何から始めればよいですか?
A. ①トライアル期間で実務フローとの一致度を確認、②データエクスポート機能を契約前にチェック、③IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2024年7月)のチェックシートで責任分担を確認、の3点が起点です。
Q. 月額の積み上がりが心配です。コスト管理のコツは?
A. 3〜5年のTCOで比較する習慣を持つことが基本です。複数SaaSを契約している場合は、利用していないアカウントの棚卸し、年契約への切り替え、機能が重複するSaaSの統廃合を定期的に行いましょう。中小企業以上の規模では、サブスク統制ルール(誰が新規契約を決裁するか・誰が解約を判断するか)を文書化することも有効です。
Q. セキュリティが不安ですが、何を確認すべきですか?
A. クラウドのセキュリティは「事業者と利用者の責任分担モデル」が基本で、利用者側にも担うべき責任があります。IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2024年7月)が公開しているチェックシートを使い、データの保護・アクセス管理・障害時の対応・ログ監視などを事業者の標準仕様と照らし合わせることをおすすめします。
まとめ
SaaSは「初期費用を抑え、運用負荷を事業者に委ね、場所を選ばず使える」点で多くの事業者に効きますが、「カスタム制約・ベンダー依存・ランニングコスト」というデメリットも併存します。「やめとけ」と言われる理由は、これらのデメリットが事前確認の甘さや規模ごとの判断軸の不一致から表面化することにあり、SaaSそのものを否定する論拠とは限りません。総務省・令和7年版情報通信白書によれば、企業のクラウドサービス利用率は80.6%、利用効果があったと回答した企業は88.2%にのぼり、汎用業務における選択肢としてはすでに主流です。重要なのは、自社の規模・業務特性・長期コストを踏まえて、メリットとデメリットを公平に並べて判断することです。
今日からできる3つのこと
- 自社で使っているSaaS/使いたいSaaSを棚卸しし、3〜5年のTCOを試算する
- IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2024年7月)のチェックシートで責任分担を確認する
- データエクスポート機能と業界標準フォーマット対応の有無を、契約前に必ずチェックする
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参考文献
| 発行元 | 資料名 | 発行年 | URL | 取得日 |
|---|---|---|---|---|
| 総務省 | 令和7年版 情報通信白書(クラウドサービスの利用状況) | 2025年 | https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html | 2026年5月30日 |
| 総務省 | 令和6年通信利用動向調査 報道資料 | 2025年5月 | https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000178.html | 2026年5月30日 |
| 独立行政法人IPA | 中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き | 2024年7月 | https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html | 2026年5月30日 |
著者・編集方針
お名前.comビジネスコンシェルジュ編集部
ビジネスコンシェルジュは、中小企業から個人事業主、中堅大企業の実務担当者まで、規模を問わず「実務で迷わない判断軸」を届けるオウンドメディアです。政府・独立行政法人の一次情報を起点に、特定ベンダーに偏らない中立的な視点で、SaaS/DX/BPO/AIに関する情報を発信しています。
- すべての数値・固有名詞はTier1の公的機関一次情報で検証
- 比較ランキング系・誇張表現(絶対・必ず・No.1等)は使わない
- 個別ベンダー推奨は行わず、業務領域・規模別の判断軸として整理
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