AIモデルとは?仕組みと学習の種類、RAGとファインチューニングの違いをガイドライン第1.2版で解説

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  • AIモデルの基本構造と、学習と推論の違い、学習方法による種類がわかる
  • RAGとファインチューニングの違いと、業務での使い分けがわかる
  • AI事業者ガイドライン第1.2版の要点と、利用者が押さえるべきリスクがわかる

「AIモデルという言葉はよく聞くが、アルゴリズムや生成AIと何が違うのか説明できない」「社内でRAGやファインチューニングの話が出たが、どちらを選べばよいのか判断できない」。AIを業務に取り入れる担当者の多くが、このような悩みを抱えています。AIモデルの解説記事は開発者向けの内容が多く、業務で使う立場の人が「どこまで理解しておけば十分か」は分かりにくいのが実情です。本記事では、AIモデルの基本構造と学習の仕組み、学習方法による種類、RAGとファインチューニングの違いを整理したうえで、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」の要点、開発者・提供者・利用者の役割分担、業務担当者が押さえるべきリスクまでを解説します。

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目次

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  1. AIモデルの理解を社内に広げる|情報セキュリティ研修eラーニングの比較
  2. AIモデルとは|基本構造と学習の仕組み
  3. 学習方法によるAIモデルの種類
  4. AIモデルの作り方|作成の流れと業務担当者が関わる場面
  5. RAGとファインチューニングの違い|業務でのカスタマイズ手法
  6. AI事業者ガイドライン(第1.2版)の要点|AIエージェント・フィジカルAIの定義
  7. AI開発者・提供者・利用者の役割分担
  8. 業務担当者が知っておくべきリスク|情報漏洩・著作権・バイアス
  9. AIモデルの理解不足で起きやすい失敗パターン
  10. AIモデルの技術理解を深めるためのステップ
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ
  13. 参考文献

AIモデルの理解を社内に広げる|情報セキュリティ研修eラーニングの比較

AIモデルの仕組みやリスクを一部の担当者だけが理解していても、実際にAIを使う社員全員に伝わらなければ、情報漏洩などの事故は防げません。社内全体の理解をそろえるには、情報セキュリティ研修にAI利用のルールを組み込み、eラーニングで全員に受講してもらう方法が現実的です。

生成AIの普及で、機密情報を入力してしまう、AIの出力をそのまま社外に出してしまうといった、利用者側の行動が原因となるリスクが増えています。AIモデルの技術理解は本記事で深めつつ、それを社内のルールとして定着させる手段として、情報セキュリティ研修に対応したeラーニングの代表例を整理しました。

サービス名(提供会社) 強み 留意点
Mina Secure(グローバルセキュリティエキスパート株式会社) 専門用語ではなく、分かりやすい言葉とアニメーションで解説している 日本語と英語以外の言語には対応していない
NetLearning(株式会社ネットラーニング) 導入実績が豊富で、必要な講座だけを選んで無駄なコストを抑えられる サービスが多岐にわたるため、契約内容の吟味が必要
manebi eラーニング(株式会社manebi) AI搭載のLMSが研修プログラムの構築を支援し、伴走サポートも受けられる 自社教材を使う場合はストレージの上限がある

選ぶ際は、既存のセキュリティ研修の教材にAI利用のルールを追加できるか、受講状況を部署ごとに確認できるか、ガイドラインの改訂などに合わせて内容を更新しやすいかを確認しましょう。ほかのサービスや詳しい選び方は、比較記事でまとめて確認できます。

AIモデルとは|基本構造と学習の仕組み

AIモデルとは、大量のデータから規則性(パターン)を学習し、新しい入力に対して予測・分類・生成などの結果を出力する仕組みのことです。ChatGPTなどの生成AIサービスも、学習を終えたAIモデル(学習済みモデル)を使いやすい形で提供しているものです。

AIモデル・アルゴリズム・AIサービスの違い

AIモデルは、似た言葉と混同されやすい用語です。業務で話が食い違わないよう、次の3つを区別しておきましょう。

用語 意味 たとえ
アルゴリズム データから規則性を見つけるための計算の手順 料理のレシピ
AIモデル アルゴリズムでデータを学習させた結果、できあがった判断の仕組み レシピどおりに作った料理
AIサービス(AIシステム) AIモデルに画面や外部連携などを組み合わせ、利用者が使える形にしたもの 店で提供される定食

同じAIモデルでも、どのサービスから使うかによって、入力データの扱いや利用できる機能が変わります。社内で「どのAIを使うか」を議論するときは、モデルの名前だけでなく、どのサービス経由で使うのかまで確認することが大切です。

入力・モデル・出力の基本構造

AIモデルの動きは「入力、モデル、出力」の3段階で考えると理解しやすくなります。文章や画像、音声、数値データなどを入力すると、モデルが学習した規則性に当てはめて処理し、分類結果や予測値、生成した文章などを出力します。たとえば問い合わせメールを分類するモデルなら、入力はメール本文、出力は「請求」「解約」「不具合」などの分類ラベルです。

ここで押さえておきたいのは、AIモデルは入力の意味を人と同じように理解しているわけではなく、学習データに含まれていた傾向から、もっともらしい答えを計算しているという点です。学習データに偏りや誤りがあれば出力にも反映され、学習していない分野の質問には、それらしいが誤った答えを返すこともあります。

学習と推論の違い

AIモデルの一生は、大きく「学習」と「推論」の2つに分かれます。AI事業者ガイドライン第1.2版では、この2つの定義が明確にされました。業務担当者にとっても、社内のデータがどちらの段階で使われるのかを区別することは、情報管理のうえで重要です。

段階 何をするか 業務での例 データ面の注意点
学習 データを使ってモデルの内部の設定(パラメータ)を調整し、規則性を身につけさせる 過去の問い合わせ履歴でモデルを追加学習させる 学習に使ったデータの内容がモデルに残り、後から取り除くのが難しい
推論 学習済みのモデルに新しいデータを入力し、結果を出力させる 生成AIに議事録を要約させる、社内文書を検索して回答させる モデル自体は変わらないが、入力内容がサービス側に保存・利用されるかは規約次第

日常的に生成AIへ指示を出して回答を得る使い方は、推論に当たります。一方で、サービスによっては入力した内容をモデルの改善(学習)に使う設定になっている場合があります。「推論として使っているつもりが、実は学習データとして提供していた」という事態を避けるため、利用規約や設定画面で、入力データが学習に使われるかどうかを必ず確認しましょう。

学習方法によるAIモデルの種類

AIモデルは、どのようにデータを学習するかによって、教師あり学習、教師なし学習、強化学習などに分けられます。現在の生成AIの土台になっている大規模言語モデル(LLM)は、大量の文章から自ら規則性を学ぶ方法で作られた「基盤モデル」の一種です。

学習方法 仕組み 業務での活用例
教師あり学習 正解(ラベル)付きのデータを学習し、新しいデータの正解を当てる。数値を予測する回帰と、種類を判別する分類がある 売上や需要の予測、不良品の画像判定、問い合わせの自動分類
教師なし学習 正解のないデータから、似たもの同士のまとまりや特徴を見つける 顧客のグループ分け、通常と異なる取引の検知
強化学習 試行錯誤を繰り返し、よい結果に報酬を与えることで最適な行動を学ぶ 倉庫ロボットの動作制御、配送ルートの最適化
自己教師あり学習(基盤モデル) 大量の文章や画像の一部を隠し、前後から予測する作業を通じて汎用的な知識を身につける 文章作成、要約、翻訳、質問応答など、幅広い業務に使える生成AI

従来のAIモデルは「需要予測専用」「画像判定専用」のように、特定の目的ごとに自社のデータで作るのが一般的でした。これに対し、生成AIの基盤モデルは、開発元が膨大なデータで学習した汎用のモデルを多くの企業が共通で使い、用途に応じて指示の出し方や追加の仕組みで調整するという使い方が主流です。そのため、業務担当者が向き合う課題も「モデルをどう作るか」から「既存のモデルをどう安全に使いこなすか」へと移っています。

なお、生成AIの中には文章だけでなく、画像や音声、動画をまとめて扱えるマルチモーダルなモデルもあります。扱えるデータの種類が増えるほど、便利になる一方で、写真に写り込んだ個人情報や、音声に含まれる機密情報など、気を配るべき情報の範囲も広がる点に注意が必要です。

AI・機械学習・ディープラーニングとAIモデルの関係

AIモデルの種類を調べると、学習方法とは別に「ディープラーニング(深層学習)」という言葉もよく登場します。AIは人の知的な作業をコンピューターで実現する技術全体を指し、その中でデータから規則性を学ばせる手法が機械学習、機械学習のうち人の脳の神経回路をまねた多層のニューラルネットワークを使う手法がディープラーニングです。つまりディープラーニングは、教師あり学習や教師なし学習と並ぶ分類ではなく、それらを実現するための手法の1つで、画像・音声・文章のように特徴を人が定義しにくいデータを得意とします。生成AIの基盤モデルも、ディープラーニングで作られたAIモデルです。

また、AIモデルは出力の内容によって、識別・予測系と生成系に分けて説明されることもあります。識別・予測系は「不良品かどうか」「来月の需要はいくつか」のように決まった形式の答えを返すモデルで、生成系は文章や画像など新しいコンテンツを作り出すモデルです。業務で検討する際は、求める結果が判定や数値なのか、文章などの成果物なのかを先に整理すると、選ぶべきモデルの方向性が定まります。

AIモデルの作り方|作成の流れと業務担当者が関わる場面

AIモデルは、目的の設定、データの収集と前処理、モデルの選択と学習、評価、運用と再学習という流れで作られます。開発そのものは専門家やツールが担いますが、目的の設定、データの準備、評価結果の判断は、業務を知る担当者が関わらなければ進まない工程です。

工程 行うこと 業務担当者が関わる点
1. 目的の設定 AIで解決したい課題と、求める出力(判定、予測値、文章など)を決める どの業務の何を改善したいのか、どの程度の精度があれば業務で使えるのかを示す
2. データの収集と前処理 学習に使うデータを集め、欠損や表記のゆれを整え、必要に応じて正解ラベルを付ける 社内のどこにどのようなデータがあるかを伝え、個人情報や機密情報が含まれないかを確認する
3. モデルの選択と学習 課題とデータに合ったアルゴリズムを選び、データを学習させる 一から作るのか、既存の学習済みモデルを利用するのかを、費用と期間の面から判断する
4. 評価 学習に使っていないデータで試し、正解率などの指標で性能を確かめる 見逃しと誤検知のどちらが業務上の影響が大きいかを伝え、合格の基準を決める
5. 運用と再学習 業務に組み込み、精度を継続して確認し、必要に応じて新しいデータで学習し直す 現場で気づいた誤りや違和感を記録し、開発側に伝える

評価の工程では、全体のうちどれだけ正しく当てたかを示す正解率だけでなく、AIが「該当する」と判定したもののうち実際に該当した割合(適合率)と、本当に該当するもののうちAIが拾えた割合(再現率)を分けて確認するのが一般的です。たとえば不良品の検査では、多少の誤検知があっても見逃しを減らすことが重視されます。どちらを優先するかは技術ではなく業務の判断なので、担当者が基準を示す必要があります。あわせて、AIがなぜその結果を出したのかを人が確認できるかどうか(説明可能性)も、採用や与信のように理由の説明が求められる業務では確認しておきたい点です。

AIモデルは作って終わりではありません。取引先や商品、顧客の行動が変われば、過去のデータで学習したモデルの精度は時間とともに下がっていきます。運用開始後も定期的に精度を確かめ、再学習の要否を判断する体制をあらかじめ決めておきましょう。なお、現在はプログラミングをせずに画面操作でモデルを作成できるノーコード型のツールや、クラウド上の開発サービスも提供されており、開発の技術的なハードルは下がっています。ただし、ツールが代わりに行うのは主にモデルの選択と学習の部分です。目的の設定やデータの質の確保、評価基準の判断は人が担う工程として残ります。生成AIのように既存の学習済みモデルを利用する場合は、この流れのうち学習までを開発元が済ませているため、自社で行うのは目的の設定と、次に紹介するカスタマイズ、そして出力の評価が中心になります。

RAGとファインチューニングの違い|業務でのカスタマイズ手法

汎用のAIモデルを自社の業務に合わせる代表的な方法が、RAG(検索拡張生成)とファインチューニングです。RAGは回答のたびに社内文書などを検索して参照させる方法で、ファインチューニングは自社のデータでモデル自体を追加学習させる方法です。

比較項目 RAG(検索拡張生成) ファインチューニング
仕組み 質問に関係する社内文書を検索し、その内容をAIに渡して回答させる 自社のデータでモデルのパラメータを追加で調整する
ガイドライン上の位置づけ 推論に含まれる 学習に含まれる
得意なこと 最新の規程やマニュアルに基づく回答、回答の根拠となる文書の提示 独自の文体や回答形式、専門用語の使い方をそろえること
情報の更新 文書を差し替えればすぐ反映できる 反映には再学習が必要
留意点 検索対象の文書の質と閲覧権限の設定が回答の質と安全性を左右する 学習用データの準備と費用がかかり、学習させた情報を後から消しにくい

社内規程や製品マニュアルをもとに回答させたい、情報が頻繁に更新されるといった用途では、RAGから検討するのが一般的です。一方、コールセンターの応対文を自社の言い回しにそろえたいなど、知識よりも「振る舞い」を変えたい場合はファインチューニングが向いています。両方を組み合わせることもできますが、中小企業がまず取り組むなら、準備の負担が小さいRAG、あるいはその前段階として指示文(プロンプト)の工夫から始めるのが現実的です。

AI事業者ガイドライン第1.2版では、プロンプトの中で例を示して回答させる「In-Context Learning」は学習に含めず、RAGによる参照は推論に含めると整理されました。つまり、RAGやプロンプトの工夫はモデル自体を変えるものではありません。ただし、RAGで検索対象にした文書は回答に直接使われるため、閲覧権限のない社員に人事情報が回答されてしまうといった事故が起きないよう、文書ごとのアクセス権限を設計することが欠かせません。

AI事業者ガイドライン(第1.2版)の要点|AIエージェント・フィジカルAIの定義

AI事業者ガイドラインは、総務省と経済産業省がAIの安全・安心な活用のために示している指針で、2026年3月31日に第1.2版が公表されました。法律ではなく事業者の自主的な取り組みを支援する文書ですが、AIを業務で使う企業にとって、社内ルールを作る際の共通のよりどころになります。

第1.2版は、2024年4月の第1.0版、2025年3月の第1.1版に続く改訂です。人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ、教育・リテラシー、公正競争確保、イノベーションという10の共通の指針や、AI開発者・AI提供者・AI利用者の3つの主体の区分といった骨格は維持されています。主な改訂点は次のとおりです。

  • AIエージェントとフィジカルAIについて、定義、便益、リスク、留意事項、サービス例を追記
  • AIによるリスクの記載を見直し
  • 各主体の役割についての補足や図表を更新
  • 学習やデータの種類など、多義的に捉えられる用語の定義を明記

AIエージェントとは

AIエージェントは、与えられた目標に向けて、AIモデルが自ら手順を考え、外部のツールやシステムと連携しながら作業を進める仕組みです。質問に答えるだけの生成AIと違い、メールの送信や予約の登録、データの更新など、実際の操作まで自律的に行える点が特徴です。複数のAIエージェントが協調して目標に向かう仕組みはエージェンティックAIとも呼ばれます。

便利な反面、AIに与える権限が大きくなるほど、誤った操作による影響も大きくなります。ガイドラインでは、権限を適切に設定すること、人間の判断を適切に介在させること、操作履歴を定期的に確認・報告することなどが留意点として整理されています。外部との連携が増えることで攻撃を受ける入り口が広がり、データの汚染や悪意のある指示文による攻撃のリスクが高まる点にも触れられています。

フィジカルAIとは

フィジカルAIは、センサーなどで周囲の物理的な環境の情報を取り込み、AIモデルで処理したうえで、目的を達成するための方策を自律的に判断し、モーターなどの駆動部を通じて実際の動作につなげるシステムです。自律走行する搬送ロボットや、作業を自動で行う産業用ロボットなどが該当します。画面の中で完結するAIと違い、判断の誤りが人やモノへの物理的な被害につながり得るため、より慎重な安全対策が求められます。

AIエージェントやフィジカルAIは、社員が意識しないうちに業務に組み込まれていく可能性がある技術です。どの業務でAIに何を任せ、どこで人が確認するのかというルールは、担当者だけが知っていても機能しません。ガイドラインの考え方を社内の共通認識にするには、全員が受講する研修の中で繰り返し伝えることが効果的です。

ガイドラインの考え方を社内の共通認識にするなら

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AI開発者・提供者・利用者の役割分担

AI事業者ガイドラインでは、AIに関わる事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分け、それぞれが担うべき役割を示しています。生成AIサービスを業務で使っているだけの企業も「AI利用者」に当たるため、自社がどの立場にあるかを把握しておくことが第一歩です。

主体 主な立場 主に求められること
AI開発者 AIモデルを開発・学習させる事業者 学習データの適切な収集、偏りへの配慮、安全性の検証、モデルの性能や限界についての情報提供
AI提供者 AIモデルを組み込んだシステムやサービスを提供する事業者 用途に応じたリスク対策、利用者への注意事項や使い方の説明、問題発生時の対応体制
AI利用者 事業活動の中でAIシステムやサービスを使う事業者 提供者が示す範囲での適切な利用、入力する情報の管理、出力の確認、社員への教育

1つの企業が複数の立場を兼ねることもあります。たとえば、外部の生成AIを使って自社の顧客向けチャットサービスを作る場合、生成AIの利用者であると同時に、顧客に対してはAI提供者の立場になります。さらに自社データでファインチューニングを行えば、開発者に近い役割も担うことになります。

RAGとファインチューニングの違いは、この役割分担にも関わります。RAGは推論の工夫であるため、基本的には利用者や提供者としての責任の範囲で考えますが、ファインチューニングはモデルの学習に踏み込むため、学習データの権利関係や偏りへの配慮など、開発者に近い責任が生じます。カスタマイズの方法を選ぶ際は、技術面だけでなく、自社が負う責任の範囲がどう変わるかも合わせて検討しましょう。

業務担当者が知っておくべきリスク|情報漏洩・著作権・バイアス

AIモデルを業務で使う際の主なリスクは、情報漏洩、著作権侵害、バイアス(偏り)、事実と異なる出力(ハルシネーション)、悪意のある指示文による攻撃の5つです。いずれもAIモデルの仕組みから生じるものなので、仕組みとセットで理解しておくと対策を立てやすくなります。

リスク 起きる仕組み 業務担当者の対策
情報漏洩 入力した内容がサービス側に保存されたり、学習に使われたりする場合がある 入力してよい情報の範囲を決める、学習に使われない設定や法人向けプランを選ぶ
著作権侵害 出力が既存の著作物と似てしまう、他人の著作物を入力して加工する 公開する前に類似性を確認する、他人の著作物を入力する際は利用目的を確認する
バイアス(偏り) 学習データに含まれる偏りが、出力にもそのまま反映される 採用や評価など人に関わる判断にAIの出力をそのまま使わず、人が最終判断する
ハルシネーション もっともらしい答えを計算する仕組みのため、事実と異なる内容を出力することがある 数値や固有名詞、法令は一次情報で確認する、RAGで根拠文書を示させる
悪意のある指示文による攻撃 外部の文書やWebページに隠された指示をAIが読み込み、想定外の動作をする AIエージェントに与える権限を必要最小限にする、重要な操作の前に人が確認する

情報漏洩については、個人情報保護委員会が生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、個人情報を入力する場合は利用目的の範囲内かどうかを確認する必要があるとしています。著作権については、文化庁が「AIと著作権について」で、AIの開発・学習段階と生成・利用段階を分けて考え方を示しています。いずれも一般的な考え方を示したものであり、個別の事案の判断は専門家に相談してください。

これらのリスクの多くは、AIモデルの性能ではなく、使う人の行動で防げるものです。たとえば、ある部署では禁止されている顧客情報の入力が、別の部署では当たり前に行われているといった状態では、どれだけ優れたAIサービスを選んでも事故は防げません。全社員に同じルールを伝え、理解度を確認できる仕組みを整えることが、利用者としての基本的な対策になります。

AIモデルの理解不足で起きやすい失敗パターン

AIモデルの仕組みを知らないまま導入を進めると、次のような失敗が起きやすくなります。どれも技術的に難しい話ではなく、仕組みを正しく理解していれば避けられるものです。

失敗パターン 原因となる誤解 改善策
社内規程を覚えさせるためにファインチューニングを選び、規程改定のたびに作り直しが必要になった 知識を与える方法と振る舞いを変える方法を区別していない 更新が多い情報はRAGで参照させ、ファインチューニングは文体や形式の統一に限る
無料版の生成AIに顧客情報を入力していた 推論として使うだけなら情報は残らないと思い込んでいた 入力データの保存と学習利用の有無を規約で確認し、利用するサービスを会社で指定する
RAGで作った社内検索AIが、閲覧権限のない社員に人事資料の内容を回答した 検索対象の文書をまとめて登録すればよいと考えていた 文書ごとの閲覧権限をAI側にも引き継ぎ、機密文書は検索対象から外す
AIが出した市場規模の数値を、確認せずに提案資料へ載せた AIは事実を調べて答えていると思い込んでいた 数値や出典は必ず一次情報で確認し、確認した人と日付を記録する

AIモデルの技術理解を深めるためのステップ

業務担当者がAIモデルを理解するうえで、数式やプログラミングまで学ぶ必要はありません。仕組みの全体像、自社の使い方、リスクと責任の3つを順に押さえ、最後に社内全体へ広げることが目標です。

  1. 用語を整理する:AIモデル、アルゴリズム、AIサービス、学習と推論の違いを、自分の言葉で説明できるようにする
  2. 自社の使い方を棚卸しする:社内で使っているAIサービスと、入力しているデータ、RAGやファインチューニングの有無を一覧にする
  3. 自社の立場を確認する:ガイドラインの3つの主体のうち、自社がどれに当たるかを業務ごとに整理する
  4. リスクと対策を決める:情報漏洩、著作権、バイアスなどについて、入力のルールと出力の確認方法を決める
  5. 社内に広げて定着させる:決めたルールを研修で全社員に伝え、受講状況と理解度を確認し、ガイドラインの改訂に合わせて内容を見直す

特に見落とされやすいのが最後のステップです。AI事業者ガイドラインの10の共通の指針にも「教育・リテラシー」が含まれており、AIを使う側の社員が必要な知識を身につけることは、利用者に求められる取り組みの1つです。すでに情報セキュリティ研修を実施している企業なら、その中にAI利用のルールを加えるのが、新しい研修を一から作るよりも負担の小さい方法です。

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よくある質問(FAQ)

Q. AIモデルとは何ですか?

A. 大量のデータから規則性を学習し、新しい入力に対して予測・分類・生成などの結果を出力する仕組みです。ChatGPTなどの生成AIサービスも、学習済みのAIモデルを使いやすい形で提供しているものです。

Q. AIモデルとアルゴリズムは何が違いますか?

A. アルゴリズムはデータから規則性を見つけるための計算の手順で、AIモデルはその手順でデータを学習させた結果できあがった判断の仕組みです。レシピと、レシピどおりに作った料理の関係にたとえられます。

Q. RAGとファインチューニングはどちらを選べばよいですか?

A. 社内規程やマニュアルなど、更新が多い情報をもとに回答させたいならRAG、回答の文体や形式を自社に合わせたいならファインチューニングが向いています。準備の負担が小さいRAGから検討するのが一般的です。

Q. AI事業者ガイドライン第1.2版では何が変わりましたか?

A. 2026年3月31日に公表され、AIエージェントとフィジカルAIの定義やリスク、留意事項が追記されました。学習と推論の定義も明確にされ、RAGによる参照は推論に含まれると整理されています。10の共通の指針や3つの主体の区分は維持されています。

Q. 生成AIを業務で使うだけでもガイドラインの対象になりますか?

A. 事業活動の中でAIサービスを使う企業は「AI利用者」に当たります。ガイドラインは法律ではありませんが、入力する情報の管理や出力の確認、社員への教育など、利用者として求められる取り組みを社内ルールに反映しておくと安心です。

Q. AIの正しい使い方を社員全員に広めるにはどうすればよいですか?

A. 入力してよい情報や出力の確認方法などのルールを決めたうえで、全社員が受講する研修で伝えるのが効果的です。既存の情報セキュリティ研修にAI利用のルールを加え、eラーニングで受講状況と理解度を確認する方法が負担の小さいやり方です。

まとめ

AIモデルは、データから規則性を学習し、新しい入力に対して結果を出力する仕組みです。業務担当者は、学習と推論の違い、学習方法による種類、RAGとファインチューニングの使い分けを押さえておくと、AI導入の議論で判断を誤りにくくなります。AI事業者ガイドライン第1.2版の考え方も踏まえ、次の3つから始めてみてください。

  1. 社内で使っているAIサービスと、入力データが学習に使われるかどうかを確認する
  2. ガイドラインの3つの主体のうち自社がどの立場に当たるかを整理し、情報漏洩・著作権・バイアスへの対策を決める
  3. 決めたルールを情報セキュリティ研修に組み込み、全社員に定着させる

参考文献

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