医療AIとは|プログラム医療機器(SaMD)の制度と活用領域を厚労省資料で整理

Check!

  • 医療AIには、医療機器プログラム(SaMD)に該当するものと該当しないものがある
  • 医療情報を扱う場合、薬機法とは別に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」など複数の制度が関わる
  • 診断や治療の最終判断は医師が担う前提で、AIは支援ツールという位置づけが基本

画像診断の支援や問診の効率化など、医療現場でのAI活用が広がっています。「医療AI」と一括りにされがちですが、その中には薬機法上のプログラム医療機器(SaMD)として規制される領域と、そうでない領域が混在しています。本記事では、医療AIの全体像、SaMDの制度、活用領域を整理して解説します。

目次

開く

閉じる

  1. 医療AIとは何か
  2. SaMDの制度
  3. 医療AIの活用領域
  4. SaMD該当性の判断基準をもう少し詳しく
  5. 医療機関の規模別に見る導入の進め方
  6. 医療AI導入でよくある失敗パターン3つ
  7. 医療AI導入時のスタッフ教育と院内体制
  8. 医療事務・レセプト業務での医療AI活用
  9. 医療AIベンダー選定時に確認すべきポイント
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ|今日からできる3つのこと
  12. 患者への説明とインフォームド・コンセント
  13. 参考文献

医療AIとは何か

医療AIとは、診断・治療・医療事務等の医療関連業務にAI技術を活用する取り組み全般を指す言葉です。その中で、医療機器としての目的性を持ち、誤動作時に患者の生命・健康に影響を与えるおそれがあるソフトウェアは、SaMD(プログラム医療機器)として薬機法の規制対象になります。

SaMDの制度

SaMDに該当するソフトウェアは、医療機器と同様に薬機法上の承認・認証を得る必要があります。

厚生労働省・PMDA(医薬品医療機器総合機構)は「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」で、SaMDを「医療機器としての目的性を有しており、かつ、意図したとおりに機能しない場合に患者(又は使用者)の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるプログラム」と定義しています(厚生労働省医薬・生活衛生局「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」令和3年3月31日制定・令和5年3月31日一部改正、https://www.pmda.go.jp/files/000240233.pdf 2026年8月13日取得)。この定義に該当するソフトウェアは、承認・認証を得て初めて医療機器として提供できます。

医療AIの活用領域

画像診断支援、問診・トリアージ支援、遠隔医療支援という3つの領域で、医療AIの活用が進んでいます。

領域 内容
画像診断支援 CT・MRI等の画像から病変の可能性を検出・提示する
問診・トリアージ支援 症状に応じた問診項目の提示、緊急度の判定補助
遠隔医療支援 オンライン診療における情報整理・記録の補助
図1:医療AIの活用領域

これらの活用領域では、医療AIが生成・検出した情報を、既存の電子カルテにどう記録・反映するかという運用面の設計も重要になります。医療AIの出力結果が記録として分断されると、診療の経過を追いにくくなるため、電子カルテシステムとの連携を見据えた導入が実務上の課題です。

SaMD該当性の判断基準をもう少し詳しく

あるソフトウェアがSaMDに該当するかどうかは、「疾病の診断・治療・予防に使用する目的があるか」と「意図した通りに機能しない場合に患者の生命・健康に影響を与えるおそれがあるか」という2つの観点で判断されます。この2点のいずれかを満たさない場合は、SaMDに該当しない可能性があります。

例えば、問診内容を整理・分類するだけのソフトウェアは、診断そのものを行う目的を持たないため、SaMDに該当しないと整理されることが多くあります。一方、画像から病変の可能性を検出し、医師の診断を支援する目的を明確に持つソフトウェアは、SaMDに該当する可能性が高くなります。同じ「AIが情報を処理する」という技術であっても、そのソフトウェアが何を目的として設計されているかによって、薬機法上の扱いが変わる点を理解しておく必要があります。

医療機関がAIツールを導入する際は、提供事業者に対して「このソフトウェアは薬機法上のSaMDに該当するか、該当する場合は承認・認証を得ているか」を明確に確認することが基本です。SaMDに該当するにもかかわらず未承認のまま診断目的で使用すると、医療機関側にも法令違反のリスクが及ぶ可能性があるため、提供事業者の説明を鵜呑みにせず、根拠となる承認番号や認証情報を確認する姿勢が求められます。

医療機関の規模別に見る導入の進め方

診療所・クリニックと、複数の診療科を持つ病院とでは、医療AIを導入する際に検討すべき範囲が異なります。

診療所・クリニックでは、特定の診療科に特化した画像診断支援や、問診の効率化など、限られた業務範囲でAIを導入するケースが中心になります。導入する機能を絞ることで、SaMD該当性の確認や電子カルテとの連携範囲も限定的になり、比較的小さな負担で導入を進めやすくなります。

複数の診療科を持つ病院では、診療科ごとに異なるAIツールを個別に導入すると、電子カルテとの連携方式や、SaMD該当性の確認状況が診療科ごとにばらつき、院内全体でのリスク管理が難しくなります。情報システム部門や医療安全管理部門が中心となって、導入するAIツールの一覧、SaMD該当性の確認状況、電子カルテとの連携範囲を一元的に管理する体制を整えることが、複数診療科を持つ病院では特に重要になります。

医療AI導入でよくある失敗パターン3つ

SaMD該当性を確認せず導入する、電子カルテとの連携を検討しない、AIの提示情報を確定診断のように扱うという3つが、医療AI導入でよく見られる失敗の典型です。

失敗パターン1:SaMD該当性を確認せず導入する。薬機法上の承認・認証を得ていないソフトウェアを診断目的で使用し、規制上のリスクを負うケースです。導入前の確認が回避策になります。

失敗パターン2:電子カルテとの連携を検討しない。医療AIの出力結果が既存の記録と分断され、経過管理が困難になるケースです。導入前に記録の一元管理方法を検討することが回避策になります。

失敗パターン3:AIの提示情報を確定診断のように扱う。画像診断支援等の結果を確定診断と同等に扱い、専門家の最終確認を省略するケースです。参考情報として位置づけることが回避策になります。

医療AI導入時のスタッフ教育と院内体制

医療AIを現場で機能させるためには、システムを導入するだけでなく、実際に操作する医師・看護師・医療事務スタッフへの教育と、院内での運用ルールの整備が欠かせません。ツールの機能を理解しないまま現場に配布すると、出力結果の解釈にばらつきが生じたり、本来参考情報にとどまるはずの提示内容を過信してしまったりするリスクが高まります。

教育の内容としては、まず医療AIが「何を目的として設計されたツールか」「どのような場面で参考情報を提示するのか」「最終判断は必ず医師が行うこと」を、操作研修とあわせて周知することが基本になります。加えて、SaMDに該当するツールとそうでないツールが院内に混在している場合、スタッフが両者の違いを意識できるよう、一覧表や院内マニュアルの形で整理しておくと、誤用の防止につながります。特に異動やローテーションで担当者が入れ替わりやすい部署では、口頭での引き継ぎだけに頼らず、文書化された手順を残しておくことが実務上重要です。

運用体制の面では、医療AIの出力結果に疑問や違和感があった場合に、現場のスタッフがどこに相談すればよいかをあらかじめ決めておくことも大切です。情報システム部門や医療安全管理部門、あるいは提供事業者のサポート窓口など、相談先を明確にしておくことで、現場が判断に迷った際に自己判断で処理してしまう事態を避けやすくなります。また、AIツールの動作や出力精度に変化が見られた場合の報告ルートを整えておくと、不具合の早期発見にもつながります。こうした教育と体制整備は、一度実施して終わりではなく、ツールのバージョンアップや新規導入のたびに見直しを重ねていくことが望まれます。

医療事務・レセプト業務での医療AI活用

医療AIの活用は診断支援だけにとどまらず、医療事務やレセプト(診療報酬明細書)関連業務の効率化にも広がっています。診断・治療に直接関わらない領域は、SaMDの該当性を検討する前提そのものが異なるため、導入のハードルが比較的低いことが特徴です。

具体的には、診療内容の記載から算定漏れの可能性がある項目を洗い出す仕組みや、過去のレセプトデータと照らし合わせて記載内容の整合性を確認する仕組みなどが挙げられます。こうしたツールは診断や治療方針を左右するものではなく、あくまで事務処理の正確性・効率性を支援する位置づけであるため、SaMDに該当しないと整理されるケースが多く見られます。ただし、提示された内容をそのまま算定に反映するのではなく、最終的な確認・判断は必ず担当者や医師が行うという運用ルールを設けておくことが望まれます。

また、問診票の内容をカルテ入力用のテキストに整理する仕組みや、音声から診療記録の下書きを作成する仕組みも、医療事務系AIの代表的な活用例です。これらは記録作成の負担を軽減する一方で、誤変換や聞き取りの誤りがそのまま記録に残ってしまうリスクもあるため、担当者が内容を確認したうえで確定させる運用を徹底することが基本になります。事務系のAI活用は診断支援系と比べて導入のハードルが低い分、現場が「確認を省略してもよいだろう」と考えてしまいやすい領域でもあるため、教育の中で位置づけを明確にしておくことが重要です。

医療AIベンダー選定時に確認すべきポイント

医療AIを提供する事業者を選定する際は、機能面だけでなく、規制対応の状況やサポート体制も含めて確認することが、導入後のトラブルを避けるうえで重要です。

第一に、SaMDに該当するツールであれば、薬機法上の承認・認証番号を提示できるかを確認します。承認・認証の対象範囲が、実際に導入しようとしている用途と一致しているかも合わせて確認する必要があります。同じ製品であっても、承認された使用目的の範囲を超えて利用すると、未承認の用途での使用とみなされるおそれがあるためです。

第二に、電子カルテや既存の院内システムとの連携方式を確認します。データの受け渡し方法、対応している電子カルテの種類、連携時に生じうる制約について、導入前に具体的な仕様を確認しておくと、後から連携できないことが判明する事態を避けやすくなります。第三に、AIの出力精度に変化が生じた場合の報告体制や、システム障害時のサポート窓口の対応時間についても確認しておくことが望まれます。医療現場では障害発生時の影響が大きいため、平時からサポート体制を把握しておくことが実務上の備えになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 医療AIとSaMDはどういう関係にありますか?

A. 医療AIは医療関連業務でのAI活用全般を指し、そのうち医療機器としての目的性を持つものがSaMDとして薬機法の規制対象になります。

Q2. SaMDに該当するソフトウェアを導入する際、何を確認すればよいですか?

A. 薬機法上の承認・認証を得ているかを、提供事業者に確認する必要があります。

Q3. 画像診断支援AIの結果はそのまま信じてよいですか?

A. 参考情報として位置づけ、確定診断ではないことを前提に、専門家による最終確認を必ず経る必要があります。

Q4. 医療AIの活用領域にはどのようなものがありますか?

A. 画像診断支援、問診・トリアージ支援、遠隔医療支援という3つの領域で活用が進んでいます。

Q5. 医療AIの記録と電子カルテはどう連携すればよいですか?

A. 記録が分断されないよう、既存の電子カルテシステムとの連携を見据えた選定をおすすめします。

Q6. SaMD該当性の判断に迷った場合はどうすればよいですか?

A. PMDAにはSaMD該当性に関する相談窓口が設置されています。判断に迷う場合は専門家や相談窓口への確認をおすすめします。

まとめ|今日からできる3つのこと

  1. SaMD該当性を確認する:導入前に薬機法上の承認・認証の有無を確認します。
  2. 電子カルテとの連携を検討する:医療AIの記録を既存カルテと一元管理できる体制を整えます。
  3. AIの提示情報を参考情報として扱う:確定診断ではないことを前提に、専門家の最終確認を必須とします。

患者への説明とインフォームド・コンセント

診療にAIを活用する場合、患者に対してAIがどのように関わっているかを分かりやすく説明することも、医療AI導入における重要な要素です。技術的な仕組みの理解と、患者への説明のしやすさは、必ずしも一致しないため、説明の仕方を別途検討する必要があります。

画像診断支援AIを使う場合、患者にとっては「AIが診断している」という印象を持たれることがありますが、実際には医師が最終的な診断を行い、AIはその判断を支援する参考情報を提示しているに過ぎません。この違いを患者に誤解なく伝えることは、患者との信頼関係を保つうえで重要です。診察の際に、AIがどの範囲を支援しているか、最終判断は医師が行うことを、簡潔な言葉で説明できるよう、院内であらかじめ説明用の資料や言い回しを用意しておくと、患者への説明が場当たり的にならずに済みます。

また、問診AIやオンライン診療支援AIを使う場合、患者が入力する症状や個人情報がどのように扱われるかについても、事前に説明しておくことが望まれます。個人情報保護法上、患者の医療情報は要配慮個人情報に該当するため、利用目的の説明や同意の取得を、AI活用の有無にかかわらず適切に行う体制を整えておくことが基本です。

参考文献

  • 厚生労働省医薬・生活衛生局「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」令和3年3月31日制定・令和5年3月31日一部改正 https://www.pmda.go.jp/files/000240233.pdf(2026年8月13日取得)

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top