BPOとBPRの違いとは?ITO・SaaS・DXまで5用語を1枚の表で整理

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  • BPOは外部委託、BPRは自社で作り直す取り組み
  • 5用語を2軸で整理し、選び方もわかる
  • 進める順番と委託時の法律上の注意点がわかる

BPOとBPRの違いは、業務に手を入れる「主体」と「目的」にあります。BPOは業務プロセスを外部の事業者に任せる手段、BPRは業務プロセスを自社で根本から作り直す取り組みで、前者は業務の担い手を変え、後者は業務の流れそのものを変えます。「ITOはBPOの一部なのか」「SaaSやDXとはどう関係するのか」と迷う方も多いため、この記事では、BPO・BPR・ITO・SaaS・DXの5用語を「自社で実行するか、外部に委託するか」という軸で1枚の表に整理し、どちらを選ぶかの判断基準、進める順番、委託するときの法律上の注意点まで解説します。

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目次

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  1. BPOとBPRの違いを1枚で整理|自社で実行するか、外部に任せるか
  2. BPOとBPRの違いを比較|目的・対象・期間・コスト・成果
  3. BPOとITOの違い|対象範囲がIT業務かどうか
  4. SaaSとBPOの違い|ツールか外部委託か
  5. DXは最上位概念|BPR・BPO・ITO・SaaSはその実行手段
  6. 用語の使い分けでよくある誤解
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ
  9. 参考文献

BPOとBPRの違いを1枚で整理|自社で実行するか、外部に任せるか

BPO・BPR・ITO・SaaS・DXは、「自社で実行するか、外部に委託するか」と「手段か、経営の取り組みか」の2軸で並べると、位置づけの違いが一目で分かります。BPOとBPRの違いは、1つ目の軸、つまり実行する主体が外部か自社かで説明できます。

位置づけ 自社で実行する 外部に委託する
経営の取り組み(目的) DX(デジタル技術で事業・組織・業務を変革する取り組み全体)
業務のやり方を変える BPR(業務プロセスを作り直す) (コンサルティング会社の支援を受けることはあるが、実行と決定は自社)
業務を回す手段 SaaS(クラウドのツールを使って社員が処理する) BPO(業務プロセスごと委託)/ITO(IT業務を委託)

同じ業務でも、どの手段を選ぶかで「誰が、どこで実行するか」が変わります。たとえば「稟議の申請と承認」という業務では、承認の段階を減らすなど手順そのものを見直すのがBPR、申請書の点検や取りまとめを外部の事業者に任せるのがBPO、ワークフロー機能を持つツールを導入して社員が自分で処理するのがSaaSの活用です。

5用語のうち、最も具体的にイメージしやすいのがSaaSです。SaaSは、クラウドで提供されるツールを自社の社員が使って業務を回す手段で、BPRで業務を作り直すときも、BPOで業務を切り出すときも、前提になるのは「いまの業務が誰の手元で、どこまで進んでいるか」を見える状態にすることです。連絡がメールや電話に分散し、依頼や進捗が担当者の記憶に頼っていると、見直す業務も任せる業務も決められません。

この見える化に使うSaaSの一例が、株式会社kubellが提供するChatworkです。チャットのほかにビデオ通話と音声通話を標準で使え、タスク管理に対応していて、タスクが完了するとチャットに自動で通知されます。ファイルをアップロードして共有でき、共有範囲はチャットの参加メンバーに限られます。一方、フリープランは過去40日分・5,000件までしか閲覧できないため、やり取りを長く残したい場合は有料プランの内容を確認する必要があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください(商品ページの記載を2026年10月14日に確認)。

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BPOの周辺で使われる用語|BPM・ITO・RPO

検索結果や提案資料では、BPR・BPM・BPO・ITO・RPOが並んで出てくることがよくあります。BPOの周辺で使われる用語を、一言で整理しておきます。

用語 正式名称 一言でいうと 実行主体
BPR Business Process Re-engineering 業務プロセスを根本から作り直す 自社
BPM Business Process Management 業務プロセスを継続的に見える化し、改善し続ける 自社
BPO Business Process Outsourcing 業務プロセスを設計・運用ごと外部に任せる 外部事業者
ITO Information Technology Outsourcing システム運用や開発などIT業務を外部に任せる 外部事業者
RPO Recruitment Process Outsourcing 採用業務を外部に任せる(BPOの採用版) 外部事業者

BPRとは|業務プロセスを作り直す取り組み

BPRは、既存の業務の流れを前提に少しずつ改善するのではなく、「そもそもこの業務は必要か」「この順番である理由は何か」という問いから業務プロセスを作り直す取り組みです。部署ごとに分かれていた手続きを1つにまとめる、承認の段階を減らす、紙を前提にした手順をデジタル前提に組み替える、といった変更が典型例です。対象はノンコア業務に限らず、営業や製造などのコア業務も含めた組織全体に及ぶことがあります。

BPRの特徴は、実行と決定が必ず自社に残る点です。コンサルティング会社の支援を受けて進めることはありますが、どの業務をやめ、どう組み替えるかを最終的に決めるのは経営層と業務の責任者です。そのため、BPRは「外部に任せる手段」であるBPOとは性質が根本的に異なります。一般に、BPRは部門をまたぐ調整が必要になるため、期間が長く、社内の合意形成にも時間がかかる取り組みになりやすいとされています。

BPOとBPRの違いを比較|目的・対象・期間・コスト・成果

BPOとBPRの違いは、目的、対象範囲、実行主体、期間、コストの構造、成果の出方の6つの観点で整理できます。BPOは業務の担い手を外部に変え、BPRは業務の流れそのものを変える、という違いが、どの観点にも表れます。

BPOとBPRの違いを6つの観点で比較

観点 BPR BPO
目的 業務のやり方そのものを変え、組織の課題を根本から解決する ノンコア業務を任せ、社内の人手をコア業務に振り向ける
対象範囲 コア業務を含む組織全体に及ぶことがある 経理・人事・コールセンターなど、切り出しやすい業務が中心
実行主体 自社(経営層・業務の責任者) 受託する外部事業者
期間の目安 長期になりやすい(部門間の調整が必要) 業務の引き継ぎが済めば比較的早く運用に入れる
コストの構造 設計や移行にかかる社内の工数や、外部の支援を受ける場合はその費用が先に必要になる。定着すれば運用の負担が下がることがある 委託費用が継続して発生する。業務量に応じた契約の形は事業者によって異なる
成果の出方 業務の流れそのものが変わる 社内の負担が軽くなる。業務の流れは委託前のまま残ることもある

似た言葉との区別|業務改善・アウトソーシング・RPA

BPRと並べて語られるのが「業務改善」です。業務改善は、いまの仕組みを前提に部門ごとの無駄を減らす取り組み、BPRは仕組みそのものを問い直して全体の流れを作り直す取り組みと整理されるのが一般的です。BPRのほうが範囲が広く、社内の抵抗も大きくなりやすいといえます。

BPOは「アウトソーシング」と混同されることもあります。一般に、アウトソーシングは作業や業務の一部を外部に任せる広い言葉で、手順や計画は発注する側が決めます。BPOは、業務プロセスの設計や運用、改善の提案まで含めて任せる点が特徴とされます。ただし、両者を同じ意味で使う資料もあるため、提案を受けるときは「どこまでを任せるのか」を確認してください。

もう1つ、BPOやBPRと一緒によく比較されるのがRPA(Robotic Process Automation)です。RPAはパソコン上の定型操作をソフトウェアのロボットに代行させる技術で、実行するのは自社が管理するロボットです。位置づけとしてはSaaSと同じ「自社で実行する手段」の側に入ります。BPRで業務の流れを整理した後、定型的な部分をRPAで自動化し、判断を伴う部分や量が変動する部分をBPOに任せる、という組み合わせ方がよく紹介されています。

BPOとBPRはどちらを選ぶ?判断基準の早見表

どちらを選ぶかは、業務の性質と、社内で使える余力で決めます。次の表は、一般的に説明されている考え方を判断の軸ごとに整理したものです。自社の状況に当てはまる行を探してみてください。判断は業務単位で行い、1つの会社がBPRとBPOを併用することも珍しくありません。

判断の軸 BPRが向く状況 BPOが向く状況
業務の性質 営業や製造などのコア業務や、部門をまたぐ業務の流れに課題がある 経理・人事・総務・問い合わせ対応など、切り出しやすい定型の業務
課題の中身 手順がばらばら、承認が多い、部門間の受け渡しで止まるなど、流れそのものに無駄がある 業務量が多い、繁閑の差が大きい、専門知識や担当者が足りない
社内の余力 経営層が関与でき、部門間の調整に時間を割ける 社内に見直しの余力が少なく、先に負担を下げたい
成果を求める時期 時間がかかっても、業務の流れを変えて効果を長く続けたい 引き継ぎが済めば、比較的早く負担を減らしたい
会社の規模 規模が大きいほど、全社の業務を横断して見直す必要が出やすい 小規模な会社は、給与計算や記帳など一部の業務から委託する形が取りやすい
注意して見たい点 現場の抵抗、定着までの期間 委託先への依存、情報管理、ノウハウが社内に残りにくい点

どちらの列にも当てはまる場合は、次の見出しで説明する順番で考えると整理しやすくなります。

BPOとBPRはどちらを先に進めるべきか

一般的には、BPRで業務を整理してからBPOで委託する順番が合理的だと考えられています。BPRをせずにBPOを始めると、今の非効率な手順をそのまま外部に引き渡すことになり、社内の手間は減っても業務全体の無駄は残ったままになりやすいからです。委託先に業務を説明する段階で、手順書がない、担当者ごとにやり方が違う、といった問題が表に出ることもよくあります。

ただし、人手不足で今すぐ手を打つ必要がある場合は、先に一部の業務をBPOに任せ、生まれた時間でBPRを進めるという逆の順番も現実的な選択肢です。BPOを受託する事業者の中には、引き継ぎの過程で業務の見える化や手順の整理を支援するところもあります。どちらを先にするかは、社内に業務を見直す余力があるかどうかで判断するとよいでしょう。

BPRとBPOそれぞれの進め方

BPRとBPOは、実行主体が違うため進め方の流れも異なります。BPRは自社で業務を分析して作り直す流れ、BPOは切り出す業務を決めて外部に引き継ぐ流れになります。どちらも一度で終わるものではなく、実施後に効果を確かめて見直すところまでを1つのサイクルとして考えておくと、途中で止まりにくくなります。

段階 BPRの進め方 BPOの進め方
1. 目的を決める 業務の流れをどう変えたいか、何を改善の指標にするかを経営層と決める どの課題を解決するために委託するのか(人手不足、繁閑の差、専門知識の不足など)を整理する
2. 現状を見える化する 業務の手順、担当者、所要時間、部署間の受け渡しを書き出し、無駄や重複を洗い出す 委託候補の業務の手順と量を書き出し、手順書がない部分や担当者ごとに違う部分を把握する
3. 設計・選定する やめる業務、まとめる業務、デジタルに置き換える手順を決め、新しい業務の流れを設計する 社内に残す業務と委託する業務の範囲を決め、複数の事業者の提案を比べて委託先を選ぶ
4. 実行・移行する 一部の部署や業務で試してから全社に広げるなど、段階的に切り替える 手順書や引き継ぎ資料を用意し、並行運用の期間を設けて委託先に業務を移す
5. 効果を確かめる 設定した指標で効果を測り、定着していない手順を見直す 処理件数、品質、納期などを定期的に確認し、委託範囲や手順を必要に応じて見直す

BPRとBPOのメリットと注意点

BPRとBPOは、得られる効果と気をつけたい点も対照的です。どちらかが優れているというより、自社の課題と使える人手・期間に合うかどうかで選ぶものです。

BPR BPO
主なメリット 業務の流れそのものが変わり、効果が長く続きやすい。業務の見える化が進み、意思決定や部署間の連携も速くなりやすい 比較的短期間で社内の負担を減らせる。専門知識を持つ事業者の体制を使え、社内の人手をコア業務に振り向けられる
主な注意点 期間と手間がかかり、成果が出るまで時間がかかる。やり方が変わることへの社内の抵抗も起きやすく、経営層の関与が欠かせない 業務のノウハウが社内に残りにくい。委託先の品質管理や情報管理を委託元が確認し続ける必要があり、委託費用も継続して発生する
向いている状況 業務の流れ自体に無駄が多い、部署ごとに手順がばらばらで全体最適ができていない 定型的で量が多い業務、繁閑の差が大きい業務、社内で担当者を確保しにくい業務

BPOの実績・事例を見るときに確認したい点

BPOを検討すると、委託先の「実績」を比べる場面が必ず出てきます。実績の件数や社数が多いことだけで判断せず、自社と近い条件の実績があるかを確かめるのが基本です。実績の数字は委託先自身が公開している情報であることが多く、数え方も会社ごとに違うため、同じ基準で並べて比べられるとは限りません。

確認する点 見るポイント
業務の種類 自社が任せたい業務(給与計算、経理、問い合わせ対応など)と同じ種類の実績があるか
規模と業種 自社と近い規模・業種での実績か。業務量や繁閑の波が似ているか
任された範囲 作業の代行だけか、業務の設計・運用・改善の提案まで任されているか
品質と情報管理 品質の確認方法、報告の頻度、情報セキュリティの体制(認証の取得状況など)を説明してもらえるか
引き継ぎと終了時の取り決め 業務を移す手順と、契約を終えるときに手順書やデータをどう返してもらえるか

実績の確認は、提案を受ける段階で質問として用意しておくと、比較がしやすくなります。実績を聞いても具体的な説明が返ってこない場合は、その点を判断材料にしてください。

ここまでの進め方に共通しているのが、最初の「現状を見える化する」段階です。BPRで作り直す業務も、BPOで切り出す業務も、手順と担当者を書き出せていなければ決められません。次のチェックで、自社の見える化がどこまで進んでいるかを確認してみてください。

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BPOとITOの違い|対象範囲がIT業務かどうか

BPOとITOは、どちらも業務を外部に委託する手段で、実行主体は外部事業者です。違いは対象範囲で、ITOはIT業務に限った外部委託、BPOは経理・人事・総務・コールセンターなど業務プロセス全般を対象にします。

ITOの代表例は、サーバーやネットワークの監視・保守、社内システムの運用、ヘルプデスク、システム開発の委託などです。情報システム部門の業務を切り出すイメージで、受託するのはシステム開発会社やITサービス事業者が中心です。一方、BPOは業務の流れそのものを任せるため、受託する側は業務の知識と運用の体制を持つことが求められます。たとえば給与計算のBPOでは、計算作業だけでなく、勤怠データの受け取り、明細の作成、振込データの作成といった一連の流れがまとめて委託の対象になります。

観点 ITO BPO
対象 システム運用・保守、ヘルプデスク、開発などのIT業務 経理・人事・総務・顧客対応など業務プロセス全般
主な受託者 システム開発会社、ITサービス事業者 BPO事業者、人材系・コンタクトセンター系の事業者など
社内の窓口になりやすい部署 情報システム部門 委託する業務を担当していた部署(経理、人事など)

ITOをBPOの一部として扱う説明もあれば、別の分類として並べる説明もあり、業界や資料によって扱いが揺れています。実務では「委託したい業務がIT業務かどうか」で見分け、IT業務ならITO、それ以外の業務プロセスならBPOと考えておけば、提案資料を読むときに困ることはほとんどありません。近年はシステムの運用と業務処理をまとめて請け負うサービスもあり、両者の境界は以前より曖昧になっています。

BPOとITOに共通する注意点が、請負と派遣の区別です。業務委託(請負)では受託した事業者が自社の労働者に指示を出し、派遣では派遣先(発注者)が指示を出します。この区分については、厚生労働省が「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(通称37号告示)の疑義応答集を公開しています(出典:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」)。契約上は業務委託でも、発注者が受託者の労働者に直接指示を出している実態があると、いわゆる偽装請負と判断されるおそれがあるとされています。BPRは自社内の取り組みなので、この論点は生じません。なお、本記事の説明は一般的な内容であり、個別の契約の適法性を判断する法的助言ではありません。実際の契約設計では、必要に応じて社会保険労務士や弁護士に相談してください。

SaaSとBPOの違い|ツールか外部委託か

SaaSとBPOは、どちらも「業務を楽にする手段」として比べられますが、提供されるものが違います。SaaSはクラウドで提供されるソフトウェアで、業務を実行するのは自社の社員です。BPOは業務プロセスそのものを外部に任せるため、実行するのは受託した事業者です。

観点 SaaS BPO
提供されるもの クラウドのソフトウェア(ツール) 業務の実行(人と運用の体制)
業務を実行する人 自社の社員 受託事業者のスタッフ
向いている業務 手順が標準化されていて、社内の人手で回せる業務 量が多い、専門知識が必要、担当者を確保しにくい業務
社内に残るもの 業務のノウハウと実行責任 委託先の管理と成果の確認
始めやすさ 無料トライアルなどで小さく試せるものが多い 業務の切り出しと引き継ぎの準備が必要

SaaSを導入すればBPOは不要になる、ということはありません。SaaSはツールを提供するだけで、業務の実行責任は自社に残ります。「ツールは入れたが運用する人がいない」という状態なら、SaaSの上で外部事業者に運用を任せる組み合わせが現実的な解決策になります。近年は、SaaSとBPOを一体で提供するBPaaS(Business Process as a Service)と呼ばれる形態も見られるようになりました。BPaaSについては、BPOとBPaaSの違いとは?SaaSとの関係と導入前の見方を解説で詳しく解説しています。

一方で、業務を外部に任せる前に、社内でできることをSaaSで効率化しておく方が先、というケースも多くあります。社内の連絡がメールと電話に分散している、申請書が紙で回っている、誰がいつ何をしているか分からない、といった状態のまま業務を外部に任せても、委託先とのやり取りが増えるだけになりがちです。こうした社内の情報共有の土台を整えるには、チャットやタスク管理のSaaSで連絡と依頼を1か所に集める方法が取り組みやすく、どの業務が誰の手元で止まっているかが見えるようになります。将来BPOで切り出す業務の候補も見つけやすくなります。SaaSとIaaS・PaaSなど、クラウドの提供形態の違いを整理したい場合は、IaaS/PaaS/SaaS/DaaSの違いを図解|クラウド3層モデルと責任分担も参考になります。

DXは最上位概念|BPR・BPO・ITO・SaaSはその実行手段

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、BPRやBPO、ITO、SaaSと同じ並びで語られがちですが、位置づけが1段上の経営の取り組みです。BPR・BPO・ITO・SaaSは、DXを進めるために選ぶ具体的な手段と考えると整理しやすくなります。

経済産業省は、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を「デジタルガバナンス・コード」として取りまとめています。2024年に取りまとめられた「デジタルガバナンス・コード3.0」では、DX経営に求められる3つの視点・5つの柱として全体像が示されています(出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」)。つまりDXは、ツールを入れることや業務を委託することそのものではなく、事業や組織のあり方を変える経営の取り組み全体を指します。

この考え方で4つの手段を並べると、次のような関係になります。

手段 DXの中での役割 具体例
BPR デジタル前提で業務の流れを作り直す 紙の申請と押印を前提にした承認手順を、オンラインの承認フローに組み替える
SaaS 作り直した業務を社内で回す道具になる ワークフロー機能を持つツールで申請・承認を処理する
BPO ノンコア業務を任せ、社内の人手を変革に振り向ける 給与計算や経費精算の点検を外部に任せる
ITO IT運用の負担を減らし、情報システム部門を企画に振り向ける サーバー監視やヘルプデスクを外部に任せる

ここで大切なのは、どれか1つを選べばDXが完了するわけではない点です。SaaSを導入しただけで業務の流れが紙のときと同じなら、それはデジタル化であっても変革とはいえません。逆に、BPRで業務の流れを見直しても、それを回す道具や人手がなければ定着しません。自社の課題が「業務の流れ」「道具」「人手」のどこにあるかを見極め、手段を組み合わせるのがDXの実務です。

企業の規模によっても、手段の組み合わせ方は変わります。少人数の企業では、まずチャットや会計ソフトなどのSaaSで社内業務をクラウドにまとめ、専門性の高い申告や給与計算を外部の専門家に任せる形がよく見られます。中堅規模になると、勤怠や経費のSaaSとコールセンターや給与計算のBPOを組み合わせ、部分的なBPRで手順を整える段階に進むことが多くなります。さらに規模が大きい企業では、DX推進の担当部署がBPRを主導し、SaaS・BPO・ITOを全社の戦略の中に配置していく形が一般的です。

用語の使い分けでよくある誤解

用語の誤解で多いのは、BPOとBPRを同じ意味だと考えること、SaaSを入れればDXが完了すると考えること、外部に任せれば情報管理の責任も移ると考えることです。5用語の違いが曖昧なまま社内で話を進めると、議論がかみ合わなかったり、期待した効果が出なかったりします。よくある誤解と、正しい考え方を表にまとめました。

よくある誤解 実際の考え方
BPOとBPRは似たような意味の言葉 BPOは外部に任せる手段、BPRは自社で業務を作り直す取り組みで、実行主体が違う
BPOを使えば業務改革も同時に済む 委託しただけでは業務の流れは変わらないことが多い。改革にはBPRの視点が別に必要
SaaSを入れればDXが完了する SaaSは手段の1つ。業務の流れや組織の見直しが伴わなければ、変革にはつながりにくい
ITOとBPOはまったく別の世界の話 どちらも外部委託で、違いは対象がIT業務かどうか。請負と派遣の区別など注意点も共通
BPOは大企業だけが使うもの 給与計算や記帳など一部の業務だけを任せる小規模な委託も広く行われている
外部に任せれば情報管理の責任も移る 個人データを扱う業務を委託しても、委託元には委託先を監督する義務がある

表の最後の項目は、BPOやITOを使う企業が見落としやすい点です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、個人データの取り扱いを委託する場合、委託元は委託先に対して必要かつ適切な監督を行うことが求められています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。委託先の選び方、契約書の内容、定期的な確認の方法を、委託元が整理しておく必要があります。

もう1つ多いのが、「外部に任せる前に、社内の業務がそもそも見えていない」という状態です。誰がどの業務をどれだけの時間で処理しているかが分からないと、BPRで何を変えるべきかも、BPOで何を切り出すべきかも決められません。最初の一歩としては、連絡と依頼をチャットとタスク管理にまとめ、誰がどの業務を持っているかを見える化するのが取り組みやすい方法です。Chatworkのように、チャット・タスク管理・ファイル共有を1つにまとめたSaaSなら、フリープランも用意されているため、小さく試しながら見える化を始められます。

よくある質問(FAQ)

Q1. BPOとBPRの違いを一言でいうと何ですか?

A. BPOは業務プロセスを外部の事業者に任せる手段で、BPRは業務プロセスを自社で根本から作り直す取り組みです。実行する主体が外部か自社かという点が最も大きな違いです。

Q2. BPOとBPRはどちらを先に進めるべきですか?

A. 一般的にはBPRで業務を整理してからBPOで委託する順番が合理的です。BPRなしにBPOを始めると、今の非効率な手順をそのまま外部に引き渡すことになりやすいためです。ただし人手不足で急ぐ場合は、先に一部をBPOに任せ、生まれた時間でBPRを進める方法もあります。

Q3. ITOとBPOの違いは何ですか?

A. どちらも業務の外部委託ですが、ITOはシステム運用やヘルプデスクなどIT業務に限った委託で、BPOは経理・人事・顧客対応など業務プロセス全般が対象です。

Q4. 中小企業でもBPOやBPRは取り入れられますか?SaaSだけで足りる場合はありますか?

A. 規模を問わず取り入れられます。小規模な会社では、BPRのように全社の業務を作り直すより、給与計算や記帳など一部の業務をBPOで任せる、連絡や申請をSaaSで整えるといった小さな範囲から始める形が一般的です。SaaSだけで足りるかどうかは、そのツールを使って業務を実行する人手が社内にあるかで決まります。人手が足りない業務は、BPOに切り出す方法があります。

Q5. DXとBPR・BPOはどういう関係ですか?

A. DXは事業や組織のあり方をデジタル技術で変える経営の取り組み全体で、BPR・BPO・ITO・SaaSはそれを進めるための具体的な手段です。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」でも、DXは経営ビジョンの策定・公表をはじめとする経営者に求められる対応として整理されています。

Q6. BPOやITOを使うときに注意すべき法律上のポイントはありますか?

A. 請負と派遣の区別(厚生労働省の37号告示)と、個人データを委託する場合の委託先の監督(個人情報保護委員会のガイドライン)が代表的な論点です。個別の契約が問題ないかどうかの判断は、社会保険労務士や弁護士などの専門家に確認してください。

まとめ

BPOとBPRの違いは、業務を外部に任せるか、自社で作り直すかという実行主体の違いです。ITOはIT業務に限った外部委託、SaaSは自社の社員が使うクラウドのツール、DXはこれらの手段を使って事業や組織を変える経営の取り組み全体と整理できます。今日から取り組むなら、次の4つを進めましょう。

  1. 社内で話題に出ている取り組みが、5用語の整理表のどこに当たるかを確認し、「外部に任せる話」か「自社で変える話」かを分けて議論する。
  2. BPOを検討する前に、対象業務の手順と担当者を書き出し、判断基準の表でBPRで直す業務とBPOで任せる業務を分ける。
  3. 業務の見える化の第一歩として、Chatworkのようなチャットとタスク管理のSaaSの資料を取り寄せ、連絡と依頼を1か所にまとめる方法を検討する。
  4. BPOやITOを使う場合は、37号告示と個人情報保護委員会のガイドラインに目を通し、請負と派遣の区別や委託先の監督方法を整理しておく。

参考文献

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