BPO市場規模は5兆円?調査ごとに数値が違う理由と将来性【2026年版】
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- 国内BPO市場は2024年度に5兆円超
- 調査ごとに数値が違う理由がわかる
- 将来性はAIの影響と領域別の動きで読む
国内のBPO市場規模は、矢野経済研究所の調査で2024年度に事業者売上高ベース5兆786億5,000万円(前年度比4.0%増)と推計されています。一方、IDC Japanは2024年の国内BPOサービス市場を支出額ベースで9,943億円と推計しており、約5倍の開きがありますが、BPOに含める業務の範囲と集計の基準が違うためで、どちらも誤りではありません。この記事では、2つの調査の数字を並べて読み方を整理し、年度ごとの推移、領域別の動き、2025年度以降の将来予測と将来性、世界市場との比較までを、公表されている一次情報にもとづいて解説します。企画書や社内資料に数字を引用するときの書き方も紹介します。
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国内BPO市場規模|2024年度は5兆786億円、IT系BPOが6割強を占める
2024年度の国内BPO市場規模は、矢野経済研究所の推計で事業者売上高ベース5兆786億5,000万円(前年度比4.0%増)です。
内訳はIT系BPOが3兆1,220億円(前年度比5.9%増)、非IT系BPOが1兆9,566億5,000万円(同1.0%増)で、市場全体の6割強をIT系BPOが占めています。BPOはBusiness Process Outsourcingの略で、業務プロセスのまとまりを外部の専門事業者に委託することを指します。矢野経済研究所の調査では、システム運用管理を扱うIT系と、それ以外の業務を扱う非IT系に分けて集計されています。BPOの定義や読み方は「BPOとは?意味と関連用語をやさしく整理」で整理しています。
| 区分 | 2024年度の市場規模 | 前年度比 | 主な業務の例 |
|---|---|---|---|
| IT系BPO | 3兆1,220億円 | 5.9%増 | システム運用管理業務 |
| 非IT系BPO | 1兆9,566億5,000万円 | 1.0%増 | コールセンター系、間接部門系(人事・福利厚生・総務・経理)、直接部門系(購買・調達、営業など)の業務 |
| 合計 | 5兆786億5,000万円 | 4.0%増 | IT系と非IT系の合算値(事業者売上高ベース) |
出典:矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年)」(2025年11月26日発表)をもとに作成。
専門性の高い業務にも広がるBPO|法務を外部に任せる一例
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市場規模の数字に含まれる業務・含まれない業務
矢野経済研究所の調査は、通常は企業の内部で行われる業務を、発注企業から委託を受けて代行するサービスを市場として数えています。含まれる業務と含まれない業務は次のとおりです。
- IT系BPOに含まれる業務:システム運用管理業務
- 非IT系BPOに含まれる業務:コールセンター系業務(コンタクトセンター、ヘルプデスク、フルフィルメント)、間接部門系業務(人事、福利厚生、総務、経理)、直接部門系業務(購買・調達、営業、コア部門単純業務、業界固有業務)
- 含まれない業務:従来から外部に委託することが一般的な税務、物流、情報システム開発、ビルメンテナンスなどの専門的な事業所向けサービス
5兆円を超える市場規模には、こうした広い範囲の業務代行が含まれています。後で紹介するIDC Japanの数字が約1兆円にとどまる理由も、この範囲の違いにあります。
国内BPO市場の推移と将来予測|2022年度から2025年度以降まで
矢野経済研究所の推計では、国内BPO市場は2022年度の4兆7,020億9,000万円から2024年度の5兆786億5,000万円へ、前年度比3-4%のプラス成長で拡大しています。
下の表は、矢野経済研究所が毎年秋に発刊する調査の発表内容から、各年度の推計値を並べたものです。IT系BPOは2023年度・2024年度とも前年度比5.9%増と伸びが大きく、非IT系BPOは1%台の伸びにとどまっています。
| 年度 | 市場規模(合計) | 前年度比 | IT系BPO | 非IT系BPO | 発表 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年度 | 4兆7,020億9,000万円 | 3.0%増 | 2兆7,829億円 | 1兆9,191億9,000万円 | 2023年11月14日 |
| 2023年度 | 4兆8,849億2,000万円 | 3.9%増 | 2兆9,470億円 | 1兆9,379億2,000万円 | 2024年11月19日 |
| 2024年度 | 5兆786億5,000万円 | 4.0%増 | 3兆1,220億円 | 1兆9,566億5,000万円 | 2025年11月26日 |
出典:矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施」(2023年・2024年・2025年)をもとに作成。各年度の数字は、表の右端の発表時点の推計です。
同じ調査機関でも、数字は年ごとに改訂される
矢野経済研究所は、毎年の調査で、前年度の推計と当年度の予測を示しています。2024年11月19日発表の調査では、2024年度を前年度比4.2%増の5兆914億4,000万円と予測していました。1年後の2025年の調査では、2024年度の推計は前年度比4.0%増の5兆786億5,000万円で、予測より約128億円低い水準になっています。
逆の例もあります。日経クロステック Activeが紹介した2022年の調査では、2022年度を前年度比2.4%増の4兆6,727億円と予測していましたが、2023年の調査では前年度比3.0%増の4兆7,020億9,000万円と推計されました。同じ調査機関の数字でも、予測か推計か、いつの発表かによって値が変わります。資料に載せるときは、最新の発表を使い、発表年を併記するのが安全です。
将来予測|2025年度以降も堅調な拡大の見通し
矢野経済研究所は、2025年度以降も、BPOサービス全体(IT系BPOと非IT系BPOの合算値)の市場規模は堅調に推移していく見込みとしています。その根拠として、次の3点を挙げています。
- 安価なクラウド基盤システムの導入に合わせてBPOサービスを利用する企業が、大手企業から中堅・中小企業へ広がる動きが続いていること
- コロナ禍を経てBPOサービスの利用が拡大している官公庁・自治体の取り込みが、引き続き堅調に推移していること
- 生成AIを活用したBPOサービスの実用化に向けた動きが活発化していること
IDC Japanの予測(2025年4月30日発表)では、国内BPOサービス市場は2024年の9,943億円から、2029年に1兆2,169億円へ拡大し、2024年から2029年の年間平均成長率は4.1%とされています。市場の定義が矢野経済研究所と異なるため、金額は直接比べられませんが、「数%台の安定したプラス成長」という方向感は共通しています。
IT系BPOが伸び、非IT系BPOは1%台の伸び
内訳を見ると、2023年度・2024年度とも、IT系BPOは前年度比5.9%増、非IT系BPOは同1.0%増でした。矢野経済研究所は、リモートワークの普及を契機にしたネットワーク環境の整備、業務を人力で行う部分を最小化するためのシステム運用の見直し、ファイルサーバーのクラウド移行などに紐づいた周辺業務の需要が、高水準で推移していると述べています(2025年の調査)。
非IT系BPOについては、DX(業務自動化を中心としたデジタル技術による業務変革)に取り組む企業が増え、コア業務や新たな業態開発業務へ経営資源を集中して人的リソースを再配置するなかで、自社のリソースで不足するノンコア業務を中心に外部のリソースを活用する動きが強まっていると説明されています。伸び率は1%台ですが、領域別に見ると動きは分かれています。
領域別の動き|人事・カスタマーケア・財務経理・調達購買(IDC Japan)
IDC Japanの2024年の分析では、人事は業務拠点の国内回帰と人手不足で需要が拡大した一方、カスタマーケアはAI/生成AIによる代替の影響もあり、4領域で最も低い伸びでした。
IDC Japanが定義する国内BPOサービス市場は、人事、カスタマーケア、財務/経理、調達/購買の4つのサービスセグメントで構成されています。2024年の動きは、領域によって差が出ています。
| 領域 | 2024年の動き(IDC Japanの分析) | 追い風 | 向かい風 |
|---|---|---|---|
| 人事BPO | 大企業の業務拠点の国内回帰に伴う需要拡大に加え、中堅・中小企業でも支出が拡大。福利厚生BPOの利用による福利厚生の充実を図る動きも見られた | 国内回帰、人手不足、人的資本経営、従業員の定着化 | – |
| カスタマーケアBPO | 4領域で最も低い前年比成長率 | 人手不足、EC取引の緩やかな拡大 | 国策関連業務の縮小、AI/生成AIを活用した代替製品・サービスの台頭 |
| 財務/経理BPO | 単純な記帳代行を主体とするサービスは需要低下が続く一方、包括的なバックオフィス業務の変革への取り組みが成長をもたらした | 国内回帰、包括的なバックオフィス業務の変革 | 記帳代行を主体とするサービスの継続的な需要低下 |
| 調達/購買BPO | 国内経済の回復基調を背景に、大企業を中心に間接材のトランザクション型サービス需要が拡大。準大手・中堅企業でも需要が回復 | 国内経済の回復基調 | – |
出典:IDC Japan「国内ビジネスプロセスアウトソーシングサービス市場予測、2025年から2029年」(2025年4月)、クラウド Watch「2024年の国内BPOサービス市場は前年比3.0%増の9943億円」(2025年5月7日)をもとに作成。
領域別に見ると、BPO市場の拡大は、どの業務でも一様に伸びていることを意味しません。IDC Japanの分析では、単純な記帳代行のように置き換えやすい業務の需要は下がり、包括的な業務変革に取り組む領域では需要が伸びています。各領域でどの業務を任せられるかは「BPOで委託できる業務一覧」、コールセンター業務の委託範囲は「コールセンターBPOとは」で解説しています。
成長の背景|人手不足・DX推進・サービスの高度化と、利用企業の広がり
BPO市場の成長を支えているのは、働き手の減少による人手不足、DX推進にともなう業務の変化、AIを組み込んだサービスの高度化の3つで、利用企業も中堅・中小企業や官公庁・自治体へ広がっています。
背景1. 労働力の減少と時間外労働の上限による人手不足
労働政策研究・研修機構(JILPT)の「2023年度版 労働力需給の推計(速報)」によると、一人当たりゼロ成長に近い経済状況で労働参加が2022年と同水準にとどまるシナリオでは、就業者数は2022年の6,724万人から、2030年に6,430万人、2040年に5,768万人へ減ると見込まれています。経済・雇用政策で成長が進み、女性や高齢者の労働参加が進むシナリオでも、2030年の6,858万人から2040年は6,734万人へ減少に転じ、2022年と概ね同水準にとどまります。推計は3つのシナリオで幅を持って示されており、結果も幅を持って見る必要があるとされています。
人を採用して業務を回すことが難しくなるほど、「自社で人を雇う」以外の選択肢としてBPOの合理性が高まります。とくに総務・経理・人事のような管理部門を少人数で回している会社では、担当者の退職や休職で業務が止まるリスクを抱えがちです。専任の人を1人採用するよりも、必要な範囲だけ外部の手を借りるほうが現実的な場面もあります。
人の数だけでなく、1人あたりが働ける時間にも上限があります。時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用され、残業時間は原則として月45時間・年360時間が上限です(厚生労働省「働き方改革特設サイト」)。決算期の経理処理や採用シーズンの事務作業のように一時的に膨らむ業務を、社員の残業だけで吸収することは難しくなっています。
背景2. DX推進にともなう業務の変化
クラウドサービスやSaaSの導入が進むと、紙の処理は減る一方で、システムの設定変更、アカウント管理、データの整備、ツール間の連携といった新しい業務が生まれます。こうした業務は専門知識が必要なわりに、社内で常に発生するわけではないため、専任者を置きにくいことが少なくありません。矢野経済研究所の調査でも、DXに取り組む企業が人的リソースを再配置するなかで、不足する業務を外部に任せる動きが市場拡大の背景として挙げられています。
背景3. AI活用によるサービスの高度化
IDC Japanは、AI/生成AIの活用の進展が、国内BPOサービス市場で「人(オペレーター)中心」から「デジタルアセット中心」のサービス提供モデルへの変化を促していると指摘しています。矢野経済研究所の調査でも、人を介した業務とデジタル技術を活用した業務を融合させた「デジタルBPO」が、人材不足を補いながら事業者が請け負う業務領域を広げ、市場の需要拡大を牽引するとされています。AIがBPOにもたらす影響は、次の将来性の節で整理します。
背景4. 利用企業の広がり|中堅・中小企業と官公庁・自治体
矢野経済研究所の2025年の調査は、安価なクラウド基盤システムの導入に合わせてBPOを利用する企業が、大手企業から中堅・中小企業へ広がる動きが続いていることを挙げています。また、新型コロナウイルス関連業務の受託を通じて接点が生まれた官公庁・自治体で、アウトソーシングの機運が高まっていることも、市場にプラスに働いているとしています。
市場全体の拡大要因は、自社の悩みと重なる部分があるかもしれません。次のセルフチェックで、外部に任せる業務の候補があるかを確かめてみましょう。
自社に、外部へ任せる候補の業務はある?セルフチェック
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BPOの将来性|AI時代に伸びる領域と、変わる領域
BPO市場の将来性は、全体としては数%台の成長が続く見通しですが、AIに置き換わりやすい業務と、人が担い続ける業務に分かれていく点を見ておく必要があります。
「BPO事業の将来性」「BPO業界の将来性」で調べる人は、投資や就職、自社事業の判断のために、成長が続くのか、AIに代替されないのかを知りたいはずです。公表されている調査は、市場全体の見通しと、領域ごとの注意点を分けて示しています。
追い風になる要因
- 市場全体の見通し:矢野経済研究所は2025年度以降も堅調に推移する見込みとしており、IDC Japanは2024年から2029年の年間平均成長率を4.1%と予測しています。
- 利用企業の裾野の広がり:大手企業から中堅・中小企業へ、さらに官公庁・自治体へとBPOの利用が広がっています(矢野経済研究所)。
- 労働力の制約:JILPTの推計では、成長が進むシナリオでも2030年以降は就業者数が減少に向かい、人手を前提にした業務運営は難しくなる見通しです。
- 提供できる業務の拡大:デジタルBPOの広がりが事業者の請け負う業務領域を広げ、戦略立案などのコア業務やコンサルティング業務まで一気通貫で外部に任せる機運も高まっています(矢野経済研究所)。
- AI/生成AIの活用:IDC Japanは、サービスの供給力と付加価値の向上をもたらし、国内BPOサービス市場全体の促進要因になると見込んでいます。
注意したい要因
- カスタマーケア領域のAI代替:IDC Japanは、自然言語処理を特徴とする生成AIとの親和性が高いカスタマーケア領域で、AI/生成AIを組み込んだ製品・サービスとの競合が強まる可能性を指摘しています。2024年のカスタマーケアは4領域で最も低い前年比成長率でした。
- 記帳代行などの置き換えやすい業務:単純な記帳代行を主体とするサービスでは、継続的な需要低下が見られるとされています(IDC Japan)。
- 予測の幅:矢野経済研究所の数字が後年の発表で改訂されているように、予測は前提によって上下します。JILPTの推計も、今後の技術進歩などによる労働力需要のさらなる減少は加味されていないと注記しています。
BPO事業者の動き|人中心からデジタルアセット中心へ
IDC Japanのシニアリサーチアナリストは、AI/生成AIの活用の進展が、人(オペレーター)中心からデジタルアセット中心へのサービス提供モデルの変化を促しており、BPOサービスベンダーには、ITサプライヤーなどとの共創による顧客のビジネスプロセス変革の支援と、サービス提供価値の拡張が重要になると述べています。矢野経済研究所の調査も、人を介した業務とデジタル技術を活用した業務を融合させたデジタルBPOが、市場の需要拡大を牽引するドライバーになるとしています。
BPO事業の将来性を判断する資料を作るときは、次の3点を確認すると、数字の背景を読み取りやすくなります。
- 自社(または分析対象の事業者)が属する領域は、人事、カスタマーケア、財務/経理、調達/購買のどれか、IT系か非IT系か
- 受託している業務が、AI/生成AIで置き換わりやすい定型業務か、判断や調整が必要な業務か
- 提供価値が、人手の代行にとどまらず、業務の設計や改善、デジタル技術の活用まで広がっているか
AIで自動化する業務と、BPOで任せる業務の分け方
AIで自動化するか、BPOで任せるかは、二者択一ではありません。調査で触れられている動きをもとにした、考え方の目安を整理します。
| 業務の特徴 | 向きやすい手段 | 調査で触れられた例 |
|---|---|---|
| 件数が多く、手順が固定されている定型業務 | 自動化ツールやAIの活用が先に進みやすい | 単純な記帳代行(需要低下)、AI/生成AIとの競合が強まるカスタマーケア(IDC Japan) |
| 判断・調整・例外処理が多く、業務の設計から任せたい業務 | 人が担うBPOや、デジタル技術を組み合わせたデジタルBPO | 包括的なバックオフィス業務の変革(IDC Japan)、戦略立案などを含む一気通貫の委託(矢野経済研究所) |
| 専門知識が必要で、社内に専任者を置きにくい業務 | 専門家を含む外部サービス | 契約書の確認や法務相談など(企業法務アウトソーシングの例は上で紹介) |
BPO事業者がAIを組み込んで提供する形もあるため、自社で使うAIと、委託先が使うAIをどう組み合わせるかも、今後の論点になります。
世界市場との比較|Grand View Researchのデータ
米国の調査会社Grand View Researchは、世界のBPO市場規模を2025年に3,283億7,000万米ドルと推計し、2033年には6,957億7,000万米ドルに達すると予測しています(2026年から2033年の年間平均成長率は9.9%)。
国内市場の予測成長率が数%台であるのに比べると、世界市場はより高い成長が見込まれています。ただし、通貨・集計年・BPOの定義が異なるため、国内の金額を為替換算して単純に比べることはできません。
| 項目 | 国内市場 | 世界市場 |
|---|---|---|
| 主な調査 | 矢野経済研究所、IDC Japan | Grand View Research |
| 成長率の目安 | 年4%前後(矢野経済研究所の2024年度実績4.0%増、IDC Japanの予測CAGR4.1%) | 予測CAGR9.9%(2026年から2033年) |
| 成長の特徴 | 人手不足とDX対応が中心。業務拠点の国内回帰の動きもある(IDC Japan) | デジタルトランスフォーメーション施策の導入が進むなか、クラウドやAI、自動化ツールの活用を背景にBPO需要が高まる(Grand View Research) |
世界市場の成長率が高いからといって、日本の市場が遅れていると単純に判断するのは早計です。国内では、IDC Japanが、地政学リスクの高まりを背景にした企業の業務拠点の国内回帰を、2024年の市場を押し上げた要因の一つとして挙げています。世界市場のデータは、BPOが世界的に成長している産業であるという大きな方向感をつかむ材料として使うのが適切です。
調査機関ごとに数値が異なる理由|矢野経済研究所とIDC Japanを比べる
BPO市場規模の数字が調査機関ごとに大きく違うのは、BPOに含める業務の範囲と、集計の基準(何を足し合わせるか)が統一されていないためです。
たとえば2024年の国内市場について、矢野経済研究所は事業者売上高ベースで5兆786億5,000万円(2024年度)、IDC Japanは支出額ベースで9,943億円(2024年)としており、5倍ほどの開きがあります。
| 比較項目 | 矢野経済研究所 | IDC Japan |
|---|---|---|
| 2024年の市場規模 | 5兆786億5,000万円(2024年度) | 9,943億円(2024年) |
| 成長率 | 前年度比4.0%増 | 前年比3.0%増。2029年に1兆2,169億円(2024年から2029年のCAGR4.1%)と予測 |
| 集計の基準 | BPO事業者の売上高ベース | 支出額ベース |
| 含まれる業務 | IT系BPO(システム運用管理)と、非IT系BPO(コールセンター系、間接部門系、直接部門系) | 4つのサービスセグメント(人事、カスタマーケア、財務/経理、調達/購買) |
| 期間の表記 | 年度(2024年度) | 年(2024年) |
| 数字が大きく出る・小さく出る理由 | IT系BPOが含まれ、全体の6割強を占めるため大きくなる | システム運用管理が構成セグメントに入らず、業務領域を絞っているため小さくなる |
出典:矢野経済研究所の発表(2025年11月26日)、IDC Japanの市場予測(2025年4月)、クラウド Watchの報道(2025年5月7日)をもとに作成。
理由1. 公的統計に「BPO」という産業区分はない
BPOは、コールセンター、経理代行、給与計算、システム運用など、複数の業種にまたがる「業務の任せ方」の総称です。総務省の日本標準産業分類には、コールセンター業(9294)や情報処理・提供サービス業といった区分はありますが、「BPO」という区分は設けられていません。そのため、BPO市場の規模を示す数字は、民間の調査会社がそれぞれ独自に範囲を決めて推計したものになります。
理由2. 事業者の売上高ベースと、発注側の支出額ベースの違い
矢野経済研究所のように事業者の売上高を足し上げる方法では、BPO事業者が受け取った代金が市場規模になります。IDC Japanの数字は支出額ベースで、4つのサービスセグメントに区切って推計されています。同じ会社が同じ業務を委託していても、どの方法・どの範囲で数えるかによって、市場規模に入るかどうかや金額が変わります。矢野経済研究所は年度、IDC Japanは年で表記しているため、集計期間も完全には一致しない可能性があります。
理由3. IT系の業務を含めるかどうか
数字の差を最も大きく左右しているのが、システム運用管理などのIT系業務の扱いです。矢野経済研究所の調査では、IT系BPOだけで3兆1,220億円と、市場全体の6割強を占めます。IDC Japanの市場を構成する4つのセグメントにはシステム運用管理が入っていません。5兆786億5,000万円と9,943億円の差は約4兆円で、IT系BPOの3兆1,220億円がその約4分の3に当たります。調査の定義も基準も異なるため、あくまで差の大きさを実感するための目安です。
数字を使い分けるための目安
| 目的 | 使いやすい数字 | 併記しておくこと |
|---|---|---|
| 業界全体の大きさを示したい | 矢野経済研究所の数字(IT系を含む) | 事業者売上高ベース、年度、IT系を含むこと |
| 人事・経理・カスタマーケアなど、業務プロセスの委託に絞った市場を見たい | IDC Japanの数字(4セグメント) | 支出額ベース、4セグメントの範囲 |
| 成長率の目安を示したい | 同じ調査機関・同じ定義の数字どうし | 発表年、予測か推計か |
| 世界市場と比べたい | 金額は換算せず、成長率の方向を比べる | 調査会社名、通貨、予測期間 |
異なる調査の数字を混ぜて成長率を計算しないことが大切です。資料に引用するときは、調査機関名、発表年、何ベースの数字か、年度か年かを書き添えます。次のような書き方が一例です。
- 矢野経済研究所の調査(2025年11月26日発表)によると、2024年度の国内BPO市場規模は、事業者売上高ベースで5兆786億5,000万円と推計されている。
- IDC Japanの市場予測(2025年4月30日発表)では、国内BPOサービス市場(人事、カスタマーケア、財務/経理、調達/購買の4セグメント)は、2024年に支出額ベースで9,943億円、2029年に1兆2,169億円と予測されている。
市場全体の数字が大きいか小さいかと、自社でBPOを使うべきかどうかは、別の問題です。自社で外部に任せられる業務の候補があるかは、先ほどのセルフチェックで確かめられます。契約書の確認や法務相談のように、専任者を置きにくく、兼務で抱えやすい業務を外部に任せる方法を知りたい場合は、クラウドリーガルの商品ページで、依頼できる範囲と注意点を確認してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本のBPO市場規模はどのくらいですか?
A. 矢野経済研究所の調査では、2024年度の国内BPO市場規模は事業者売上高ベースで5兆786億5,000万円(前年度比4.0%増)と推計されています。一方、人事・カスタマーケア・財務/経理・調達/購買の4セグメントで構成されるIDC Japanの調査では、2024年は支出額ベースで9,943億円です。定義と集計の基準が違うため、数字が大きく異なります。
Q2. BPO市場や業界の将来性はどうですか?
A. 矢野経済研究所は2025年度以降も堅調に推移する見込みとしており、IDC Japanは2024年から2029年の年間平均成長率を4.1%と予測しています。人手不足やDX推進が背景にあり、AI/生成AIの活用は市場全体の促進要因とされる一方、カスタマーケアや単純な記帳代行のように、置き換えが進みやすい領域もあります。予測は前提条件によって変わるため、断定はできません。
Q3. なぜ調査機関によって市場規模の数字が違うのですか?
A. BPOに含める業務の範囲と、集計の基準が調査ごとに違うためです。矢野経済研究所はIT系BPOを含めて事業者の売上高を集計し、IDC Japanは4つのサービスセグメントに絞って支出額を推計しています。日本標準産業分類にBPOという区分がなく、各調査会社が独自に範囲を定めている点も背景にあります。
Q4. BPOの費用(値段)はいくらですか?
A. 業務の内容、処理する量、契約期間、求める品質によって変わるため、一律の相場を示すことは難しく、委託先ごとに見積もりを取って比べるのが基本です。見積もりでは、基本料金に含まれる業務の範囲と追加対応になる範囲、例外処理や問い合わせ対応の扱いを確認してください。
Q5. BPOの大手企業はどこですか?
A. 「大手」は売上高、従業員数、対応する領域などの基準によって変わるため、この記事では特定の企業名を挙げていません。事業者を比べるときは、任せたい業務への対応実績、セキュリティ体制、契約形態、報告の仕組みを確認するのが基本です。事業者情報の見方は「BPO企業ランキングの見方と選び方」で整理しています。
Q6. AIの普及でBPO市場は縮小しますか?
A. 市場全体が縮小するというより、委託される業務の中身が入れ替わると見るのが穏当です。IDC Japanは、AI/生成AI活用の進展を国内BPOサービス市場全体の促進要因と見込む一方、カスタマーケア領域ではAI/生成AIを組み込んだ製品・サービスとの競合が強まる可能性を指摘しています。
まとめ|BPO市場規模と将来性を読むための5つのこと
国内BPO市場は、矢野経済研究所の調査で2024年度に5兆786億5,000万円(前年度比4.0%増)、IDC Japanの調査で2024年に9,943億円と、定義と集計の基準によって数字が変わります。最後に、数字を読むときと使うときのポイントを整理します。
- 市場規模は、調査機関名・発表年・何ベースの数字か・年度か年かをセットで確認し、異なる調査の数字を混ぜて成長率を計算しない。
- 将来予測は一点の金額ではなく、成長の方向と根拠で読み、予測が後の発表で改訂されることも前提にする。
- BPOの将来性は、AI/生成AIで置き換わりやすい定型業務と、判断や調整が必要で人が担い続ける業務に分けて考える。
- 自社でBPOを使うか検討するときは、セルフチェックで、属人化している業務や、繁忙期に偏る業務、兼務で抱えている業務を洗い出す。
- 契約書の確認や法務相談のように専任者を置きにくい業務は、クラウドリーガルの資料を取り寄せ、依頼できる範囲と上限、申し込みの審査や年間契約の条件を確認する。
参考文献
- 矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年)」(2025年11月26日)、2026年10月15日確認
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3973 - 矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2024年)」(2024年11月19日)、2026年10月15日確認
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3674 - 矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2023年)」(2023年11月14日)、2026年10月15日確認
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3397 - 日経クロステック Active「国内BPOサービス市場、22年度4兆6727億円に」(2023年2月8日)、2026年10月15日確認
https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00006/012600274/ - IDC Japan「国内ビジネスプロセスアウトソーシングサービス市場予測、2025年から2029年」(2025年4月)、2026年10月15日確認
https://my.idc.com/getdoc.jsp?containerId=JPJ52160725 - クラウド Watch「2024年の国内BPOサービス市場は前年比3.0%増の9943億円、AIがサービス提供モデルの変化を促す IDC Japan調査」(2025年5月7日)、2026年10月15日確認
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/2011797.html - Grand View Research「ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)市場」(グローバルインフォメーション掲載)、2026年10月15日確認
https://www.gii.co.jp/report/grvi1942044-business-process-outsourcing-market-size-share.html - 労働政策研究・研修機構(JILPT)「2023年度版 労働力需給の推計(速報)」(2024年3月11日)、2026年10月15日確認
https://www.jil.go.jp/press/documents/20240311.pdf - 厚生労働省「時間外労働の上限規制|働き方改革特設サイト」、2026年10月15日確認
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html - 総務省「日本標準産業分類 分類項目名、説明及び内容例示」、2026年10月15日確認
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000044.html - MOLTON株式会社「導入事例 株式会社スカラ様」、2026年10月15日確認
https://www.molton.inc/voice/3/