SaaSの型と具体例をやさしく整理

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  • SaaSの意味と2つの分類軸がわかる
  • 業務カテゴリ別の具体例がわかる
  • 用語の使い分けとよくある失敗がわかる

「SaaS」と「SaaS型ソフトウェア」という似た表現を見かけて、意味が違うのか気になったことがあるかもしれません。型の分類軸を整理しておくと、こうした表現の違いも理解しやすくなります。本記事では、SaaSの型・意味をNIST定義から具体例までやさしく整理します。マルチテナント方式をさらに詳しく、ASP・MaaS・SIerとの違いも含めて知りたい場合はSaaSのマルチテナントとはを解説した記事も参考にしてください。

目次

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  1. SaaSとは
  2. SaaSの主な「型」
  3. 業務カテゴリ別の具体例
  4. 「SaaS」と「SaaS型ソフトウェア」の使い分け
  5. 自社に合う型を見極めるための判断フロー
  6. SaaSの型の理解でよくある失敗パターン3つ
  7. 複数の型を組み合わせて使う考え方
  8. マルチテナント型とシングルテナント型の運用・セキュリティ面の違い
  9. SaaS選定でチェックしておきたい実務ポイント
  10. SaaSの型を巡る用語の変遷
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ|今日からできる3つのこと

SaaSとは

SaaSとは、クラウドサービスを通じて提供されるソフトウェアを指し、NIST SP 800-145に準拠した定義が基準になっています。ソフトウェアを「所有する」時代から「利用する」時代への移行を象徴する仕組みとして位置づけられています。

SaaSの主な「型」

基盤の軸ではマルチテナント型とシングルテナント型、事業範囲の軸ではHorizontal型とVertical型という2軸で、SaaSの型を分類できます。マルチテナント型は複数の利用者が同一システムを共有し、シングルテナント型は利用者ごとに個別のシステムを用意します。

分類軸
基盤の軸 マルチテナント型/シングルテナント型
事業範囲の軸 Horizontal型/Vertical型
図1:SaaSの2つの分類軸

業務カテゴリ別の具体例

CRM、ERP、会計、グループウェア、プロジェクト管理、コミュニケーションツールという6つのカテゴリが、代表的なSaaSの具体例です。いずれも業種を問わず活用でき、特にグループウェアは社内のスケジュール共有やファイル管理を担う、日常業務に密着した領域です。

「SaaS」と「SaaS型ソフトウェア」の使い分け

「SaaS」は提供形態・サービスモデルそのものを指し、「SaaS型ソフトウェア」は個別の製品を指す場合に使われる傾向があります。ASPやサブスクリプションモデルといった関連用語も、この提供形態の議論に含まれます。

自社に合う型を見極めるための判断フロー

自社に合うSaaSの型を判断するには、まず「業種を問わない業務か、業界特有の業務か」で事業範囲の軸を決め、次に「複数拠点・複数部署で共有したいか、独立した環境が必要か」で基盤の軸を決めるという2段階のフローで整理すると迷いにくくなります。

1段階目の判断では、経理・人事・スケジュール管理のように、どの業種の企業でも共通して発生する業務であればHorizontal型のSaaSが候補になります。一方、建設業の施工管理や医療機関のカルテ管理のように、特定業界の商習慣や法規制に対応した機能が必要な業務であれば、Vertical型のSaaSを優先的に検討したほうが、汎用的なツールを無理に業務へ当てはめるより導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。

2段階目の判断では、複数の拠点や部署で同じデータをリアルタイムに共有したい場合、多くの企業がマルチテナント型を選んでいます。マルチテナント型は複数の利用者が同一システムの基盤を共有するため、拠点間でのデータ連携や情報共有がしやすく、コストも比較的抑えやすい傾向があります。一方、機密性の高いデータを扱う金融機関や、独自のカスタマイズを大きく加えたい企業では、他社の利用環境と切り離されたシングルテナント型が選ばれることがあります。ただし、シングルテナント型は個別にシステムを用意する分、コストや導入までの期間がマルチテナント型より大きくなりやすい点は、判断の際にあわせて考慮しておく必要があります。

SaaSの型の理解でよくある失敗パターン3つ

基盤の軸と事業範囲の軸を混同する、シングルテナント型をマルチテナント型と同じ費用感で考える、用語の使い分けを気にせず混在させるという3つが、SaaSの型の理解でよく見られる失敗の典型です。

失敗パターン1:基盤の軸と事業範囲の軸を混同する。マルチテナント型かHorizontal型かを取り違えて説明するケースです。2つの軸を分けて整理することが回避策になります。

失敗パターン2:シングルテナント型をマルチテナント型と同じ費用感で考える。個別システムの分だけコストが高くなる点を見落とすケースです。型による費用構造の違いを理解することが回避策になります。

失敗パターン3:用語の使い分けを気にせず混在させる。社内資料で「SaaS」と「SaaS型ソフトウェア」を無自覚に混在させ、読み手が混乱するケースです。文脈に応じて用語を統一することが回避策になります。

複数の型を組み合わせて使う考え方

1社が1つの型のSaaSだけを使うとは限らず、業務内容ごとにHorizontal型とVertical型を組み合わせて使う企業が一般的です。

たとえば製造業の企業であれば、経理・人事・グループウェアといった業種を問わない業務にはHorizontal型のSaaSを使い、生産管理や品質管理といった製造業特有の業務にはVertical型のSaaSを使う、という組み合わせが一般的です。すべての業務を1つのサービスでまかなおうとすると、業界特有の要件に対応しきれず、結局Excelや紙の運用に戻ってしまうことがあるため、業務ごとに適した型を選び分ける発想が実務では重視されています。

複数のSaaSを組み合わせる場合に注意したいのが、システム間でのデータ連携です。それぞれのSaaSが独立してデータを管理していると、同じ顧客情報や取引先情報を複数のシステムに二重で入力する手間が発生しやすくなります。近年は、API連携やiPaaS(SaaS同士を連携させる仕組み)を通じて、複数のSaaS間でデータを自動的に同期させる方法も広がっています。導入するSaaSを選ぶ際は、単体の機能だけでなく、既に使っている他のSaaSとどこまで連携できるかも、あわせて確認しておくと運用の手間を減らしやすくなります。

マルチテナント型とシングルテナント型の運用・セキュリティ面の違い

マルチテナント型とシングルテナント型は、費用面だけでなく、運用の手間やセキュリティ管理の考え方にも違いがあります。導入後に「思っていた運用と違った」という状況を避けるためにも、この2点はあらかじめ整理しておくとよいでしょう。

運用面では、マルチテナント型はサービス提供事業者側が基盤を一元的に管理するため、システムのアップデートやセキュリティパッチの適用が自動的に行われることが一般的です。利用企業側でサーバーやミドルウェアの管理作業を行う必要がなく、情報システム部門の人員が限られている中小企業でも運用の負担を抑えやすい形態といえます。一方、シングルテナント型は利用企業ごとに独立した環境を用意する分、カスタマイズの自由度が高い反面、アップデートのタイミングや設定変更について、提供事業者との調整が必要になる場面が出てくることがあります。

セキュリティの考え方についても違いがあります。マルチテナント型では、複数の利用者が同一の基盤を共有する構造上、テナント間でのデータ分離がどのように設計されているかが重要な確認ポイントになります。提供事業者がどのような認証・アクセス制御の仕組みを採用しているか、第三者機関によるセキュリティ認証を取得しているかなどを、契約前に確認しておくと安心です。シングルテナント型は他社の利用環境と物理的・論理的に分離されているため、データ分離の観点では説明がしやすい一方、自社専用の環境である分、セキュリティ対策そのものを自社側でも把握し、提供事業者と役割分担を明確にしておく必要があります。業界によっては、監督官庁のガイドラインで求められるセキュリティ水準が、選ぶべき型に影響することもあるため、自社が扱うデータの性質にあわせて確認しておくことが望ましいといえます。

SaaS選定でチェックしておきたい実務ポイント

型の分類を理解したうえで実際にSaaSを選定する際は、機能面だけでなく、契約形態・サポート体制・データの持ち出しやすさといった実務的な観点も確認しておくと、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。

まず契約形態については、月額課金か年間契約かによって、初期費用や解約時の条件が異なることがあります。特にVertical型のSaaSは業界特有の機能を備えている分、契約期間が長めに設定されているケースもあるため、トライアル期間を活用して自社の業務フローに合うかどうかを事前に確認しておくと安心です。次にサポート体制については、導入時の初期設定を提供事業者側が支援してくれるか、運用開始後の問い合わせ対応がどの程度迅速かによって、社内担当者の負担が大きく変わります。特にHorizontal型のSaaSを複数導入する場合は、それぞれのサポート窓口が分かれることになるため、問い合わせ先が煩雑にならないよう、あらかじめ社内で問い合わせのルールを決めておくと運用がスムーズになります。

また、将来的に別のSaaSへ乗り換える可能性も見据えて、自社のデータをCSVなどの汎用的な形式でエクスポートできるかどうかも、契約前に確認しておきたいポイントです。特定のSaaSに業務が強く依存してしまうと、後から別のサービスに切り替えたくなった際に、データ移行の手間や費用が想定以上に大きくなることがあります。型の分類を理解することは選定の出発点にすぎず、実際の契約条件やデータの取り扱いまで含めて確認する姿勢が、長期的に見て自社に合うSaaSを選ぶうえで重要になります。

SaaSの型を巡る用語の変遷

SaaSという言葉が普及する以前は、同様の提供形態を指してASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)という表現が使われていました。用語の変遷を知っておくと、古い資料と新しい資料を比較する際の混乱を避けやすくなります。

ASPは、インターネット経由でソフトウェアの機能を提供するという点でSaaSと共通する部分が多い一方、当時はネットワーク回線の速度や信頼性が現在ほど整っていなかったこともあり、機能の柔軟性やカスタマイズ性が限定的な場合が多い形態でした。その後、クラウド技術の発展や回線環境の向上にともない、より柔軟で拡張性の高い提供形態としてSaaSという呼び方が一般化していった経緯があります。現在では、ASPという表現は一部の業界や古いシステムの説明で使われることはあるものの、新しく提供されるサービスの多くはSaaSという表現で案内されるのが一般的です。

社内資料や取引先とのやり取りで古い表現に出会った場合、それがどの時期にどのような文脈で作られた資料かを確認したうえで、現在の用語に置き換えて説明し直すと、認識のずれを防ぎやすくなります。特に、長年同じ業務システムを使い続けている企業では、社内文書に古い用語がそのまま残っていることも少なくないため、SaaSへの移行や新規導入を検討するタイミングで、あわせて用語の整理を行っておくと、社内外の関係者との意思疎通がスムーズになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaSとは何ですか?

A. クラウドサービスを通じて提供されるソフトウェアで、NIST SP 800-145に準拠した定義が基準になっています。

Q2. 「SaaS」と「SaaS型ソフトウェア」に違いはありますか?

A. 厳密な区別があるわけではありませんが、「SaaS」は提供形態、「SaaS型ソフトウェア」は個別製品を指す場合に使われる傾向があります。

Q3. SaaSの分類は何種類ありますか?

A. 基盤の軸(マルチテナント型・シングルテナント型)と事業範囲の軸(Horizontal型・Vertical型)の2軸で分類できます。

Q4. 個人事業主にSaaSは適していますか?

A. 適しています。マルチテナント型のHorizontal SaaSは、小規模利用にも取り入れやすい形態です。

Q5. 業務カテゴリの具体例は何ですか?

A. CRM、ERP、会計、グループウェア、プロジェクト管理、コミュニケーションツールなどです。

Q6. シングルテナント型はどのような場合に選びますか?

A. カスタマイズ性や独立した環境を重視する場合に選ばれる傾向があります。

まとめ|今日からできる3つのこと

  1. 2つの分類軸を分けて整理する:基盤と事業範囲を混同しません。
  2. 型による費用構造の違いを理解する:同じ費用感で考えません。
  3. 用語を文脈に応じて統一する:無自覚に混在させません。

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