SaaS業界とは?ホリゾンタル・バーティカルの分類、収益構造、代表企業と職種を解説
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- SaaS業界の定義と、ホリゾンタルSaaS・バーティカルSaaSの違いがわかる
- サブスクリプションの収益構造と、代表的な企業・職種がわかる
- 業界研究でよくある誤解と、クラウド利用が広がる市場動向がわかる
SaaS業界とは、インターネット経由で使えるソフトウェアを「サービス」として企画・開発・販売・運用する企業の集まりを指します。SaaSは「Software as a Service」の略で、読み方は「サース」です。会計ソフトやWeb会議、チャット、グループウェアなど、多くの企業が毎日使っている業務ツールの提供元がSaaS企業にあたります。この記事では、SaaS業界の定義と分類(ホリゾンタルSaaS・バーティカルSaaS)、サブスクリプションを軸にした収益構造、代表的な企業例、主な職種、業界研究でありがちな誤解、市場動向までを整理します。転職を考えている方にも、自社でSaaSを使う立場から業界を知りたい方にも役立つよう、両方の視点で解説します。
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代表的なSaaSの実例をグループウェアで見る
SaaS業界がどんな商品を売っているのかを一番イメージしやすいのが、グループウェアです。グループウェアは、スケジュール共有、掲示板、ワークフロー(申請・承認)、ファイル共有などをまとめた社内の情報共有ツールで、業種を問わず使われる代表的なSaaSです。ブラウザからログインするだけで使え、月額・年額の料金で契約し、機能の追加や更新は提供企業が行います。SaaS業界のビジネスの形が、1つの製品にそのまま表れています。
| サービス | 強み | 留意点 | SaaS業界の特徴が表れる点 |
|---|---|---|---|
| Google Workspace | メールや文書作成などGoogleのサービスが一体で使え、AI機能も組み込まれている | 地域によって支払い方法が限られる | 世界規模で提供される汎用型(ホリゾンタル)SaaS |
| Microsoft 365 | OfficeアプリやTeamsなど多機能をサブスクリプションで利用できる | プランによって使える機能が限られる | 買い切り型ソフトからサブスク型へ移行した例 |
| サイボウズ Office | 操作がわかりやすく、スマホなど複数の端末に対応 | 最低5ユーザーからの契約が必要 | 国内の中小企業向けに育った国産SaaS |
| desknet’s NEO | ノーコードで機能を拡張できる | 高度なツールは上位プランに限られる | プランの段階で価格を分ける料金設計 |
表の「強み」と「留意点」は、グループウェアの比較記事に掲載されている内容をもとにしています。どのサービスも「利用人数やプランに応じた継続課金」「提供企業が機能を更新し続ける」という共通点があり、これがSaaS業界の基本的なビジネスモデルです。自社でのSaaS活用を考えている方は、まず身近なグループウェアを比べてみると、SaaSの選び方の観点(料金、機能、サポート、連携)が具体的につかめます。転職や業界研究が目的の方は、このまま次の章から読み進めてください。
SaaS業界とは|企画・開発・販売・運用を行う企業群
SaaS業界は、クラウド上で動くソフトウェアを自社で企画・開発し、インターネット経由で提供し、契約後も運用・改善を続ける企業で構成されます。ソフトウェアを作って売ったら終わりではなく、利用者が使い続ける限りサービスを提供し続ける点が、従来のソフトウェア業界との大きな違いです。
米国国立標準技術研究所(NIST)はクラウドの定義文書SP 800-145で、SaaSを「提供者がクラウド上で動かすアプリケーションを、利用者がブラウザなどを通じて使う形態」と位置づけています。利用者はサーバーやOSを管理せず、提供側が基盤から運用まで責任を持つため、SaaS企業には開発力に加えて運用・サポートの体制が欠かせません。
ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaS
SaaSは、誰に向けたサービスかによって大きく2つに分類されます。業界研究や求人選びでは、この分類を知っておくと企業の違いが整理しやすくなります。
| 分類 | 特徴 | サービス例 | 働く側から見たポイント |
|---|---|---|---|
| ホリゾンタルSaaS(水平型) | 業種を問わず、どの会社にもある業務(会計、人事、コミュニケーションなど)を支える | Slack、Zoom、freee、SmartHR、グループウェア | 顧客の数が多く、マーケティングや仕組み化された営業の比重が大きい |
| バーティカルSaaS(垂直型) | 医療、建設、不動産、飲食など特定の業界の業務に特化する | 電子カルテ、施工管理、不動産管理、飲食店の予約・注文システムなど | 業界知識が強みになり、その業界の出身者が活躍しやすい |
IaaS・PaaSとの違い
クラウド業界にはSaaSのほかに、サーバーなどの基盤を提供するIaaS(イアース)、アプリの開発・実行環境を提供するPaaS(パース)があります。SaaSは完成したアプリケーションを一般の従業員が使う形のため、顧客は企業の各部門や経営者です。一方、IaaS・PaaSの顧客は主にエンジニアやシステム部門です。同じクラウド業界でも、誰に売るかによって求められる営業スタイルや職種が変わります。
SaaS業界の特徴|サブスクリプションモデルの収益構造
SaaS業界の最大の特徴は、月額・年額で継続して料金を受け取るサブスクリプション型の収益構造です。売り切り型のソフトウェアとの違いを整理します。
| 比較の観点 | 売り切り型ソフトウェア | SaaS |
|---|---|---|
| 売上の入り方 | 販売時にまとめて計上される | 契約が続く限り毎月・毎年積み上がる |
| 重視する指標 | 販売本数、販売単価 | MRR・ARR(月次・年次の継続収益)、解約率(チャーンレート)、顧客生涯価値(LTV) |
| 事業の立ち上がり | 発売直後から売上が立ちやすい | 初期は開発・獲得費用が先行し、黒字化まで時間がかかりやすい |
| 契約後の関係 | 保守契約が中心 | 使い続けてもらうための支援(カスタマーサクセス)が売上に直結する |
SaaS企業にとって、1社の顧客から得られる月額料金は小さくても、解約されずに長く使われれば累計の売上は大きくなります。反対に、どれだけ新規契約を獲得しても解約が多ければ売上は伸びません。そのため、SaaS業界では「新しく売る」ことと同じくらい「使い続けてもらう」ことが重視され、これが後述する職種の分業にもつながっています。
代表的な企業例|Zoom・Slack・freee・SmartHR
SaaS業界には海外発のグローバル企業と、国内で成長した企業の両方があります。名前を知っているサービスの多くがSaaSです。
| サービス(企業) | 発祥 | 領域 | 業界研究の視点 |
|---|---|---|---|
| Zoom | 米国 | Web会議 | 無料プランで広く使ってもらい、有料プランへ移行させる代表例 |
| Slack | 米国(現在はSalesforce傘下) | ビジネスチャット | 他のSaaSとの連携で価値を高める、エコシステム型の例 |
| freee | 日本 | 会計・人事労務などバックオフィス | スモールビジネス向けに、法改正への対応を強みにした国産SaaS |
| SmartHR | 日本 | 人事・労務管理 | 行政手続きの電子化を追い風に成長した国産SaaS |
このほか、顧客管理のSalesforce、グループウェアのサイボウズ、会計のマネーフォワードなども業界研究でよく名前が挙がる企業です。企業を比べるときは、ホリゾンタルかバーティカルか、主な顧客が大企業か中小企業か、という2つの軸で整理すると違いが見えやすくなります。
SaaS業界の主な職種|カスタマーサクセス・PM・セールス
SaaS企業では、顧客を獲得してから使い続けてもらうまでの流れを、複数の職種で分業するのが一般的です。代表的な職種を整理します。
| 職種 | 主な役割 | 向いている人・活きる経験 |
|---|---|---|
| マーケティング | Web広告やセミナー、資料請求などで見込み客を集める | データをもとに施策を改善するのが好きな人 |
| インサイドセールス | 電話やメール、オンラインで見込み客と接点を持ち、商談につなげる | 営業未経験からSaaS業界に入る入口になりやすい |
| フィールドセールス | 商談を担当し、課題を聞き取って契約を獲得する | 法人営業やコンサルティングの経験がある人 |
| カスタマーサクセス | 導入後の活用を支援し、解約を防ぎ、上位プランへの移行を促す | 顧客の成果に伴走したい人、業務改善の経験がある人 |
| プロダクトマネージャー(PM) | 顧客の声やデータをもとに、何を作るか・どの順で改善するかを決める | 事業と技術の両方に関心がある人 |
| エンジニア | サービスの開発と、止まらずに動かし続ける運用を担う | Web開発やクラウド運用の経験がある人 |
なかでもカスタマーサクセスは、サブスクリプションの収益構造から生まれたSaaS業界らしい職種です。職種の役割をより深く理解するには、実際にSaaSを「使う側」として触れてみるのが近道です。たとえばグループウェアのように社内全体で使うSaaSでは、導入時の初期設定、社員への定着、使われない機能の見直しなど、カスタマーサクセスが支援する場面を利用者の立場で体験できます。自社で業務ツールの見直しを担当している方にとっても、提供側の職種を知っておくと、ベンダーのサポートを上手に使えるようになります。
キャリアパスと求められる力
SaaS企業では、顧客獲得から定着までを職種で分業しているため、隣の職種へ移りながら経験を広げるキャリアが描きやすいのが特徴です。たとえば、インサイドセールスで顧客の課題を聞く経験を積んでからフィールドセールスやカスタマーサクセスに移る、カスタマーサクセスで得た顧客の声をもとにプロダクトマネージャーを目指す、エンジニアが開発の経験を活かしてPMや技術寄りの顧客支援に進む、といった道があります。営業や顧客支援の経験を積んだ後、ITコンサルタントやマネージャーとして活躍する人もいます。
職種を問わず求められやすいのは、次のような力です。1つ目は、MRRや解約率などの数字をもとに状況を分析し、改善策を考える力です。SaaS企業では成果が指標で見えやすく、数字で評価されることを前向きに受け止められるかが向き不向きの分かれ目になります。2つ目は、顧客の業務課題を理解し、サービスでどう解決できるかを説明する力です。3つ目は、機能追加や市場の変化に合わせて学び続ける柔軟さです。サービスは契約後も更新され続けるため、昨日の知識がそのまま通用し続けるとは限りません。
SaaS企業を選ぶときの見方
転職や就職でSaaS企業を比べるときは、知名度だけでなく、次の観点で確認すると違いが見えやすくなります。
| 確認する観点 | 見るポイント |
|---|---|
| サービスと市場 | ホリゾンタルかバーティカルか、どの業務・業界の課題を解決しているか、競合との違いは何か |
| 主な顧客層 | 大企業向けか中小企業向けかで、営業の進め方や商談の期間が変わる |
| 事業のステージ | 立ち上げ期か拡大期かで、任される仕事の幅や組織の整い方が異なる |
| 職種の分け方 | インサイドセールスやカスタマーサクセスが独立した部署か、1人が複数の役割を兼ねるか |
| 評価の仕組み | どの指標で評価されるか、未経験者への研修や育成の体制があるか |
SaaS業界研究でよくある誤解
SaaS業界について調べ始めた段階で、よく見かける誤解を整理しました。
| よくある誤解(Before) | 実際(After) |
|---|---|
| SaaS業界はエンジニアしか活躍できない | マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどビジネス職の比重が大きく、文系出身者も多い |
| SaaSとサブスクは同じ意味 | サブスクは課金方式、SaaSは提供形態。サブスクでもSaaSではないソフトや、無料のSaaSもある |
| 契約を取れば売上は安定する | 解約されれば売上は減るため、契約後の活用支援が事業の成否を左右する |
| SaaSは大企業やIT企業向けの商品 | 少人数・少額から始められるため、中小企業や個人事業主こそ主要な顧客になっている |
| SaaS企業はどこも同じような仕事 | ホリゾンタルかバーティカルか、顧客が大企業か中小企業かで、営業手法も求められる知識も大きく異なる |
市場動向|クラウドを利用する企業は8割超
SaaS業界の成長を支えているのが、企業のクラウド利用の広がりです。総務省の令和7年版 情報通信白書によると、2024年時点でクラウドサービスを利用している企業の割合は80.6%に達しています。さらに令和7年通信利用動向調査でも、クラウドを「全社的に利用している」企業と「一部で利用している」企業を合わせた割合は8割を超え、増加傾向が続いています。利用されているサービスの内容は「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」「電子メール」が上位で、グループウェアが担う領域がSaaS活用の中心になっていることがわかります。
今後の業界の動きとしては、AI機能を組み込んだサービスの増加、業界特化のバーティカルSaaSの広がり、複数のSaaSをデータ連携で組み合わせる使い方の定着などが注目されています。利用する側から見ると、選択肢が増えるほど「どの業務から、どのSaaSを使うか」を決める力が求められます。自社でSaaS活用を始めるなら、利用企業の多い情報共有の領域、つまりグループウェアから比べてみるのが現実的な第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS業界とはどのような業界ですか?
A. インターネット経由で使えるソフトウェアを、サービスとして企画・開発・販売・運用する企業の集まりです。売り切りではなく、月額・年額で継続して料金を受け取るビジネスモデルが中心です。
Q2. ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いは何ですか?
A. ホリゾンタルSaaSは会計やコミュニケーションなど業種を問わず使われるSaaS、バーティカルSaaSは医療や建設など特定の業界に特化したSaaSです。バーティカルSaaSでは、その業界の知識が強みになります。
Q3. SaaS業界の代表的な企業にはどこがありますか?
A. 海外ではZoom、Slack、Salesforce、国内ではfreee、SmartHR、サイボウズ、マネーフォワードなどがよく挙げられます。
Q4. SaaS業界にはどのような職種がありますか?
A. マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス、プロダクトマネージャー、エンジニアなどがあります。導入後の活用を支援するカスタマーサクセスは、SaaS業界ならではの職種です。
Q5. SaaS業界は未経験や文系でも働けますか?
A. 働けます。ビジネス職の比重が大きく、インサイドセールスやカスタマーサクセスは未経験から挑戦しやすい職種です。バーティカルSaaSでは、前職の業界知識が評価されることもあります。
Q6. 自社でSaaSを使うなら、まず何から始めればよいですか?
A. 多くの企業が利用している情報共有の領域から始めるのが現実的です。スケジュール共有や社内連絡、ファイル共有をまとめられるグループウェアは、SaaSの使い勝手を社内で体験する入口になります。
まとめ
SaaS業界とは、インターネット経由でソフトウェアをサービスとして提供し、継続課金で収益を上げる企業の集まりです。押さえておきたいポイントは次の3つです。
- SaaSは業種を問わないホリゾンタルSaaSと、特定業界向けのバーティカルSaaSに分けて整理する。
- サブスクリプションの収益構造により、契約後に使い続けてもらう支援が重視され、カスタマーサクセスなど特有の職種が生まれている。
- クラウドを利用する企業は8割を超え、利用する側も提供する側も、SaaSとの関わりはますます身近になっている。
参考文献
- 総務省「令和7年版 情報通信白書 クラウドサービス」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000183.html
- NIST「SP 800-145 The NIST Definition of Cloud Computing」 https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/145/final