SaaSモデルとは|略・サブスクとの違い・代表企業の例まで一気に整理【NIST準拠】
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- SaaSは「Software as a Service」の略(NIST SP 800-145準拠の定義)
- モデルの3要素はクラウド配信・マルチテナント・サブスクリプション
- サブスクは料金体系、SaaSは提供形態──軸が違う別概念
「SaaSという言葉は知っているが、サブスクとどう違うのか、何の略なのかと聞かれると説明に詰まる」──そう感じる担当者は多いはず。実際、公正取引委員会の調査でも、企業のクラウドサービス利用が急拡大する一方で、契約形態や提供モデルの理解にばらつきがあることが指摘されている(公正取引委員会・クラウドサービス分野の取引実態に関する調査報告書、2022年)。本記事では、NIST(米国国立標準技術研究所)のクラウド定義に沿って「SaaSは何の略か」「モデルの3要素」「サブスクとの違い」「業務カテゴリ別の代表企業の例」「成長指標(MRR/ARR/チャーンレート)」までを一気通貫で整理する。読み終える頃には、社内で「SaaSモデルとは何か」を自分の言葉で説明できる状態を目指したい。なお本記事の上位概念はSaaSとはで全体像を解説しているので、まだ読んでいない方はあわせて参照してほしい。
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SaaSは何の略か|Software as a Serviceの意味と表記
SaaSはSoftware as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の略で、「ソフトウェアをサービスとして提供する」形態を指す。従来のように使うソフトウェアを「買い切る/インストールする」のではなく、インターネット経由で「利用する権利を借りる」イメージに近い。読み方は「サース」または「サーズ」だが、近年は「エス・エー・エー・エス」と一文字ずつ読む例も増えている。
SaaSという言葉が世界的に普及した背景には、米国国立標準技術研究所(NIST)が2011年に公表した「NIST Special Publication 800-145(クラウドコンピューティングの定義)」がある。NISTはクラウドコンピューティングを「3つのサービスモデル」と「4つの展開モデル」に分類し、サービスモデルのひとつとしてSaaSを定義した。具体的には、利用者がアプリケーションをインターネット経由で利用し、基盤となるインフラ・OS・ミドルウェアの管理は提供者側に任せる形態と整理されている(NIST・SP 800-145・2011年9月公表)。
同じクラウドサービスでも、PaaS(Platform as a Service)はアプリ開発の土台を提供し、IaaS(Infrastructure as a Service)はサーバーやストレージというインフラそのものを提供する。SaaSはこの中で「完成したアプリケーション」を提供する最上位のレイヤーで、利用者の手間が最も少ない反面、提供者の作ったアプリの範囲内で使う制約がある。3層の違いをさらに踏み込んで整理した記事は、SaaS/PaaS/IaaSの違いを詳しく整理した記事を参照されたい。なお呼称や表記の揺れ(サース/サーズ/SaaS型/SaaS式など)に関する整理は、SaaSの読み方・職種・呼び方に集約している。
SaaSモデルの3要素|クラウド配信・マルチテナント・サブスク
SaaSの「モデル」を厳密に定義するなら、クラウド配信/マルチテナント/サブスクリプションの3要素を備えたソフトウェア提供形態と言える。3つのうちどれかが欠けると、厳密にはSaaSと呼びにくくなる。たとえば「インストール型ソフトのサブスク販売」はサブスクではあるがクラウド配信ではないためSaaSとは別の形態、「企業ごとに個別構築するクラウドアプリ」はクラウド配信だがマルチテナントではないためASPに近い、といった切り分けが可能になる。
クラウド配信は、利用者のPCにソフトをインストールせず、ブラウザやアプリからインターネット経由でサービスを使う形態を指す。提供者側がサーバー・OS・ミドルウェア・アプリのすべてを管理するため、利用者は端末の設定変更やバージョンアップを意識する必要がない。総務省「令和7年版 情報通信白書」では、クラウドサービス利用企業の割合が継続的に上昇しており、業務システムをオンプレからクラウド配信に切り替える動きが定着していることが示されている(総務省・令和7年版 情報通信白書、2025年)。
マルチテナントは、1つのソフトウェア基盤を複数の顧客企業(テナント)で共用する設計思想を指す。企業ごとにシステムを別々に構築するのではなく、データを論理的に分離しながら同じシステムを使うことで、運用コストを劇的に下げられる。これがSaaSの「安く・速く・常に最新」の根源であり、顧客ごとに専用環境を作る従来のASP(Application Service Provider)型との最大の違いとなる。
サブスクリプションは、月額または年額の継続課金で利用権を提供する料金体系を指す。買い切り型のソフトウェアと異なり、契約期間中はバージョンアップやセキュリティパッチが自動で適用される。ただしサブスクは料金体系の名前であって提供形態の名前ではない。次のH2でその違いを整理する。
SaaSとサブスクの違い|「料金体系」と「提供形態」の重なりとずれ
SaaSとサブスクは混同されがちだが、整理の軸が異なる。サブスクは「料金体系」の名前で、月額・年額の継続課金であれば対象がソフトウェアであれ動画配信であれサービスであれサブスクと呼べる。一方、SaaSは「提供形態」の名前で、クラウド配信+マルチテナントの構造を持つソフトウェア提供を指す。料金体系がたまたまサブスクであることが多いだけで、SaaS=サブスクではない。
具体例で見ると、動画配信や音楽配信は典型的なサブスクだが、ソフトウェアではないのでSaaSとは呼ばない。逆に、クラウド配信のソフトウェアでも、永続ライセンス+クラウド保守料の組み合わせや、API利用量に応じた従量課金で提供される場合は、サブスク要素が薄いSaaSと整理される。重なり部分(クラウド配信+月額/年額課金)にあたる業務SaaSが圧倒的に多いため、SaaSとサブスクが同義語のように扱われがちだが、厳密には別の概念だ。
公正取引委員会の調査でも、クラウドサービスの取引実態には契約期間・解約条件・データ移転の自由度などに大きなばらつきがあり、利用者が「サブスクだから簡単に解約できる」と誤解するケースが指摘されている(公正取引委員会・クラウドサービス分野の取引実態に関する調査報告書、2022年6月)。SaaSを契約する際は、料金体系(サブスクか従量課金か)と提供形態(マルチテナント/シングルテナント/オンプレ連携の有無)を別軸で確認するのが安全だ。なお「SaaS=クラウドそのもの」と誤解されることも多いが、両者の関係はSaaSとクラウドの違いを参照されたい。
代表的なSaaS企業の例|業務カテゴリ別の整理
「SaaS 企業 例」というキーワードで調べる人が多いが、SaaSはほぼあらゆる業務領域に広がっているため、企業名を羅列するよりも業務カテゴリで整理するのが理解しやすい。経済産業省「特定サービス産業実態調査」でも、情報サービス業のなかでクラウド型ソフトウェア提供事業の事業所数・売上が継続的に拡大していることが示されている(経済産業省・特定サービス産業実態調査、最新公表値)。以下は本記事執筆時点で各社の公式情報や公開IR資料で確認できる代表的なSaaSを、業務カテゴリ別に中立的に整理したものだ。順位や優劣を示すものではない。
カテゴリで整理すると、業務の上流から下流まで「ほぼあらゆる領域に対応するSaaSが存在する」ことがわかる。特に近年は、業界に特化したVertical SaaS(医療/製造/不動産/建設など)と、業務に特化したHorizontal SaaS(会計/人事/CRMなど)の2軸で語られることが多い。本記事の業務カテゴリ整理は後者にあたる。各社のビジネスモデルや業界での位置づけをさらに深掘りしたい場合は、SaaSのビジネスモデルと業界全体像と、具体的な企業の解説をまとめたSaaSの代表例・具体例を参照されたい。
個人事業主や中小規模で導入を検討する場合、最低利用ID数や年契約条件、解約時のデータエクスポート可否を必ず公式の利用規約で確認してほしい。中堅・大企業の場合は、シングルサインオン(SSO)対応、SCIMによるID自動連携、監査ログの保持期間、ISMAP登録の有無といったエンタープライズ要件も合わせて確認することになる。なお「比較ランキング」「おすすめ」型の情報は景品表示法・ステマ規制の観点から取り扱いに注意が必要なため、本記事では順位付けは行わず、選び方の判断軸そのものを別記事に分けて整理している。
SaaSモデルの成長指標|MRR・ARR・チャーンレートの読み方
SaaSのビジネスモデルを語るうえで欠かせないのが、MRR(Monthly Recurring Revenue:月次経常収益)、ARR(Annual Recurring Revenue:年次経常収益)、Churn Rate(チャーンレート:解約率)の3つの指標だ。これらはSaaS企業の経営状態を測るための「経営指標」であり、投資判断のための指標ではない点に注意したい。中小企業庁「中小企業白書」でも、SaaSをはじめとするクラウドサービスの利用拡大とともに、サービス事業者側の経営管理がストック型収益モデルへ移行している実態が触れられている(中小企業庁・中小企業白書、最新版)。
| 指標 | 意味 | 計算式(簡略) | 何を見るか |
|---|---|---|---|
| MRR | 月次の継続課金収益 | 顧客数 × 顧客あたり月額 | 当月の収益基盤の大きさ |
| ARR | 年次の継続課金収益 | MRR × 12 | 1年分のストック収益規模 |
| Churn Rate | 解約率 | 解約顧客数 ÷ 期初顧客数 | サービス継続性の健全性 |
| LTV | 顧客生涯価値 | 平均月額 × 平均継続月数 | 1顧客から得られる累積収益 |
| CAC | 顧客獲得コスト | 営業・マーケ費用 ÷ 新規顧客数 | 1顧客の獲得にかかるコスト |
これらの指標は、SaaS企業同士の業績比較やM&A評価で用いられる共通言語になっている。たとえばARRに対する解約率(年率)が低いほどストック収益が積み上がりやすく、LTVがCACの3倍を超えると一般的に健全と整理されることが多い。ただし業種・契約期間・顧客規模によって基準は大きく変わるため、絶対的な「正解」はない。なおSaaS関連の上場企業を「投資対象」として扱う場合は、金融商品取引法の観点から個別銘柄の推奨は行わず、業種分類による解説にとどめる必要がある。市場全体の俯瞰はSaaS市場の俯瞰と関連銘柄を参照されたい。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaSは何の略ですか?
A. SaaSはSoftware as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の略。インターネット経由で完成されたソフトウェアをサービスとして提供する形態を指し、NIST(米国国立標準技術研究所)のクラウド定義(SP 800-145)でも明確に分類されている。読み方は「サース」または「サーズ」が一般的だ。
Q. SaaSとサブスクは同じものですか?
A. 同じではない。サブスクは料金体系(継続課金)の名前で、対象がソフトウェアでなくても成立する(動画配信や定期便もサブスク)。SaaSは提供形態(クラウド配信+マルチテナント)の名前で、料金体系は必ずしもサブスクとは限らない(従量課金型のSaaSもある)。両者が重なる「業務SaaSの月額/年額契約」が圧倒的に多いため、混同されやすい。
Q. SaaSの代表的な例を教えてください。
A. 業務カテゴリ別に整理すると、CRM/SFA(Salesforce、HubSpot、Sansan等)、会計・経理(freee、マネーフォワード、弥生等)、人事・労務(SmartHR、ジョブカン等)、コミュニケーション(Slack、Microsoft Teams、Zoom等)、プロジェクト管理(Asana、Notion、Backlog等)など、ほぼあらゆる業務領域に対応するSaaSが存在する。詳しい解説は本記事の「代表的なSaaS企業の例|業務カテゴリ別の整理」を参照。
Q. MRRとARRの違いは?
A. MRR(月次経常収益)は月単位の継続課金収益、ARR(年次経常収益)はその年換算(MRR × 12)。月次の動きを追うときはMRR、年間のストック規模を見るときはARRを使う。どちらもSaaS企業の経営指標であり、投資判断のための指標ではない。
Q. SaaSとAIの関係は?
A. 近年は多くのSaaSが生成AIなどのAI機能を組み込み、利用者の業務効率を高める方向に進化している。「SaaSの死」と呼ばれる議論も、AIエージェントが従来のSaaSのUIを代替する可能性を巡るもので、SaaSとAIは対立軸ではなく融合の関係に近い。AIの基礎を体系的に押さえたい方はAIとは|中小企業が知るべき基礎を参照されたい。
まとめ|SaaSモデルは「3要素+料金体系+指標」で押さえる
SaaSは「Software as a Service」の略で、クラウド配信・マルチテナント・サブスクリプションの3要素を備えたソフトウェア提供形態を指す。サブスクは料金体系の名前で、SaaSとは整理の軸が違う。業務カテゴリ別に見れば、CRM・会計・人事労務・コミュニケーション・プロジェクト管理など、ほぼあらゆる領域に対応するSaaSが存在する。経営指標としてはMRR・ARR・チャーンレートが共通言語として使われるが、投資推奨の指標ではない点に注意したい。SaaSモデルを正しく理解できれば、社内での導入提案も、ベンダーとの契約交渉も、自分の言葉で進められるようになる。
今日からできる3つのこと
- 自社が利用中/検討中のサービスが、本記事の3要素(クラウド配信/マルチテナント/サブスク)のうちどれを満たしているか棚卸しする
- 契約書または利用規約で「料金体系(サブスクか従量課金か)」と「提供形態(マルチテナントかシングルテナントか)」を別軸で確認する
- SaaS全体像を改めて把握するために、ピラー記事SaaSとはと業務カテゴリ別のSaaSの代表例・具体例に目を通す
なおDX推進の文脈でSaaSをどう位置づけるかを整理した記事は、DX推進におけるSaaS活用で別途解説している。
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