SaaS営業とは|The Model型の役割分担と未経験から始める実務ガイド
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- SaaS営業はThe Model型の4プロセス(マーケ/IS/FS/CS)に分業化されている
- 令和7年度の有効求人倍率は1.20倍と求人優位で、SaaS業界も継続的な採用ニーズあり
- 未経験からは教育訓練給付(一般20%/特定一般40%/専門実践最大70%)の活用が現実解
「SaaS営業の仕事はどんな内容か」「未経験から転職できるのか」「インサイドセールスとフィールドセールスは何が違うのか」──SaaSの普及とともに、こうした疑問を持つ実務者が増えています。厚生労働省「一般職業紹介状況」では令和7年度平均の有効求人倍率は1.20倍と求人優位の状態が続いており(令和8年4月公表)、SaaS業界の営業職も継続的な採用ニーズが見られます。本記事では、The Model型と呼ばれる分業構造、職種ごとの役割、業務上の特性、求人動向、未経験からの参入経路まで、規模ニュートラルな3層の視点(個人事業主/中小/中堅・大企業)から、公的データに基づいて整理します。
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SaaS営業の特徴|サブスクモデルが生んだThe Model型分業
SaaS営業の最大の特徴は、商品を「売って終わり」ではなく「使い続けてもらって初めて利益になる」という収益構造にあります。月額・年額のサブスクリプション契約では、初回の受注金額は利益のごく一部にすぎません。契約継続率と利用拡大が業績を決めるため、営業組織も「新規獲得から契約後の活用支援まで」を一貫して設計する必要があり、その代表的な型がThe Model型と呼ばれる4プロセス分業です。
The Model型では、(1)マーケティングが見込み客(リード)を獲得し、(2)インサイドセールスが電話やメールで関係性を深め商談化、(3)フィールドセールスが対面・オンラインで提案と受注、(4)カスタマーサクセスが導入後の活用と継続を支援します。厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」では営業職を「顧客のニーズを把握し、自社の商品・サービスを提案・販売する仕事」と定義していますが、SaaS営業ではこの一連の流れが複数の職種に細分化されている点が特徴です。
規模別に運用は大きく異なります。個人事業主・フリーランスのSaaS提供者は1人で4プロセスを兼務するケースが多く、ツール(SFA/CRM)と外部委託で省力化することが現実解です。中小企業では2〜3名で分業し、IS+FS兼務、CS兼任という運用が多く見られます。中堅・大企業では4プロセスが完全分業され、各職種にチームと管理職が置かれます。同じ「SaaS営業」という言葉でも、規模によって役割の幅と求められる動き方は大きく違うため、求人を見るときは「The Modelのどこを担うのか」を確認することが大切です。
SaaS営業の主な職種|IS・FS・CS・SDR/BDRの役割分担
SaaS営業は「営業」と一括りにできない職種の集まりです。図2のとおり、同じ「営業」でも追いかける数字(KPI)と求められる動きが異なるため、自分の志向と職種の特性を照らし合わせて選ぶことが、長く活躍するための第一歩となります。
インサイドセールス(IS)|SDRとBDRの違い
インサイドセールスは、電話・メール・オンライン会議で見込み客と関係を築く役割で、フィールドセールスに「商談化したリード」を渡す前段を担います。さらにSDR(Sales Development Representative・新規開拓型)とBDR(Business Development Representative・既存深耕型)に分かれることが一般的です。SDRはマーケティングが獲得したリードに対してコール・メールでアプローチし商談化率で評価されます。BDRは大手顧客や既存顧客の他部門に対し、仮説ベースで提案する深耕型の役割です。個人事業主では兼務、中小企業ではIS全体を1〜2名でカバー、中堅・大企業ではSDR/BDRが独立部門化していることが多く見られます。
フィールドセールス(FS)|商談から受注を担う中核
フィールドセールスは、ISから引き継いだ商談を進め、提案・見積・契約までを担当します。受注率と受注単価が主要KPIで、対面・オンラインを問わず顧客の意思決定者と直接対話する力が求められます。SaaSのFSは「商品を売り込む」よりも「顧客の業務課題を整理し、その解決手段としてSaaSを位置づける」コンサルティング寄りの動きが多く、業界知識・財務理解・契約交渉まで含む幅広いスキルが必要になります。提案力を伸ばしたい人に向いた職種です。
カスタマーサクセス(CS)|契約後の継続と拡大を担う「営業の続き」
カスタマーサクセスは、受注後の顧客に対して導入支援・活用支援・更新・アップセルを担う職種で、SaaSの収益構造そのものを支える役割です。受注後の継続率(リテンション)と利用拡大(アップセル)を数字で管理し、顧客が成果を出せるよう伴走します。営業色とサポート色を併せ持つため、業務に対するサポート経験や業界実務経験を持つ人材が活躍しやすい職種です。「顧客の成功体験を一緒に作りたい」と感じる人に向いています。
SaaS営業の業務特性と向いている人の傾向
SaaS営業は、従来の売り切り型営業とは異なる業務特性を持ちます。代表的な特性は4つに整理できます。(1)KPI管理が他業種より細かい、(2)サブスクモデル特有の継続率(リテンション)が重視される、(3)プロダクトとマーケットが速いペースで変化する、(4)分業のため成果は個人だけでなくチーム連携で生まれる──の4点です。これらは「数字で自分の貢献を可視化したい人」「分業の中で専門性を高めたい人」「変化のある環境で学び続けたい人」にとっては、むしろやりがいにつながる要素になります。
客観的な労働市場の指標として、厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の有効求人倍率(季節調整値)の年度平均は1.20倍、令和7年10月時点では1.18倍、正社員有効求人倍率は0.99倍となっています。求人と求職のバランスは引き続き求人優位で、SaaS業界も含めた情報通信分野では継続的な採用ニーズが見られます。検索キーワードとして「saas 営業 きつい」と入力する方も一定数いますが、その背景にあるのは多くの場合「業務範囲や数値管理の幅広さ」への戸惑いで、職種の特性を理解したうえで自分に合うフェーズを選べばミスマッチを抑えられます。
規模別の視点では、個人事業主として独立してSaaSを提供する場合は数字管理を自ら設計でき自由度が高く、自分のペースで業務を組み立てられます。中小企業では1人が複数フェーズを兼務するため業務範囲が広く、意思決定が速い利点があり、幅広い経験を積みたい人に向いています。中堅・大企業では分業によって専門化でき、特定領域の専門性を深めたい人に適しています。自分のキャリア志向と組織規模を照らし合わせて選ぶことが大切です。
SaaS営業の求人動向|公的統計で読む需給バランス
SaaS営業の求人を、SaaS単体の公式統計で捉えるのは現状難しい状況です。日本標準産業分類上、SaaSは「情報サービス業」「ソフトウェア業」に分類され、求人統計上もこれらの大分類で集計されています。そのため、厚生労働省「一般職業紹介状況」の産業別・職業別データから情報通信業・営業職の動向を読む形で需給を把握するのが現実的なアプローチです。
令和7年10月分の一般職業紹介状況によれば、新規求人を前年同月と比較すると、産業計では緩やかな減速傾向にある一方で、情報通信業は短期的に変動はあるものの、SaaS業界特有のインサイドセールス・カスタマーサクセス職種は、求人広告・転職サイト上でも継続的に募集が出ている職種群です。これは、SaaS企業が顧客接点強化のために営業職を継続的に確保している構造を反映しています。
規模別では、個人事業主・フリーランスとして参画するパターン(業務委託・副業)が広がりつつあり、中小企業では成長フェーズに応じた中途採用(即戦力IS/FS)が中心、中堅・大企業ではThe Modelの各職種ごとに採用枠が分かれます。求人タイトルが「営業」だけでは判断できないため、職務記述書(JD)で担当フェーズ・KPI・分業体制を確認することが必須です。
未経験からSaaS営業に就くには|公的なリスキリング制度の活用
SaaS営業は「文系・未経験でも目指せる職種」とよく言われます。実際、顧客課題のヒアリングや仮説提案を軸とするため文理は問われませんが、何の準備もなく転職活動を始めて成果が出ないケースもあります。図3のように、4ステップで段階的に準備するのが現実的な進め方です。
特に注目したいのが、ステップ4の教育訓練給付制度です。これは厚生労働省が運営する公的なリスキリング支援制度で、厚生労働大臣が指定した講座を受講・修了すると、受講費用の一部がハローワークから給付されます。制度は3階層あり、(1)一般教育訓練給付(給付率20%/上限10万円)、(2)特定一般教育訓練給付(給付率40%/上限20万円)、(3)専門実践教育訓練給付(最大給付率70%/年間上限56万円)に分かれます(修了後の就職などで追加給付の上限が拡充される場合あり)。営業・マーケティング・データ分析などSaaS営業に転用可能な講座も指定対象に含まれており、自己負担を抑えながら学べる制度として広く活用されています。
規模別の最初の一歩としては、個人事業主・フリーランスは副業からのIS業務委託で実務経験を積む、中小企業は社内の既存営業や事務職からの異動・兼任で関わり始める、中堅・大企業は中途採用市場でCS未経験枠/IS未経験枠を狙う、というルートが現実的です。隣接職種からの移行(カスタマーサポート→CS、法人営業→FS、コールセンター→IS)は成功しやすく、教育訓練給付と組み合わせることでさらに進めやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaS営業に向いている人の特徴は何ですか?
A. 「数字で自分の貢献を可視化したい人」「分業の中で専門性を高めたい人」「変化のある環境で学び続けたい人」が向いている傾向にあります。SaaS営業はKPIが細かく設定されているため、自分の取り組みが数字で見えやすく、改善のサイクルを回しやすい職種です。労働市場全体としては令和7年度の有効求人倍率は1.20倍と求人優位が継続しており、選択肢は確保しやすい状況です。
Q. インサイドセールスとフィールドセールスはどちらから始めるべき?
A. 未経験から目指すならインサイドセールスから始める方が一般的です。社内で完結する業務が多く、スクリプトや先輩のコールを参考にしやすく、SFA/CRMの操作を実務で覚えられます。フィールドセールスは商談クロージング能力と業界知識が求められるため、ISで顧客理解と数値管理の基礎を積んでから移行するルートが堅実です。ただし、別業界で法人営業経験がある場合は最初からFSを狙うことも十分可能です。
Q. 未経験・文系でもSaaS営業に転職できますか?
A. 可能です。SaaS営業の中核スキルは「顧客課題のヒアリング」「仮説提案」「数字管理」で、いずれも文理を問いません。むしろカスタマーサポート経験や接客・対人業務の経験は強みになります。教育訓練給付制度の活用で受講費用を抑えつつ、SaaSの基礎知識と営業フレームワーク(SPIN/BANTなど)を学んだうえで応募するのが現実的なルートです。
Q. 個人事業主や中小企業の営業担当でも、The Model型の考え方は使えますか?
A. 使えます。The Model型は「役割を分けて専門化する」考え方ですが、本質は「マーケ/IS/FS/CSの4機能を意識的に運用する」ことにあります。1人で兼務する場合でも、「今は新規獲得の時間」「今は提案の時間」と意識を切り替えるだけでも生産性は変わります。SFA/CRMで顧客の状態(フェーズ)を管理する習慣をつけると、規模を問わず効果が出やすくなります。
Q. SaaS営業の経験は他業種で活かせますか?
A. はい、活かしやすい職種です。データに基づくパイプライン管理、顧客課題のヒアリング、サブスクモデルの収益設計といったスキルは、業界を問わず必要とされる「ポータブルスキル」に該当します。厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」のポータブルスキル見える化ツールでも、営業経験は他職種への移行可能性が高い職務として位置づけられています。
まとめ|SaaS営業を選ぶ・続けるための3つの視点
SaaS営業は、サブスクリプションという収益構造から生まれた「役割分担を前提とする営業」です。職種ごとの役割を理解したうえで自分に合う領域を選べば、長く活躍できる仕事です。最後に、SaaS営業を選ぶ・続けるうえで重要な3つの視点を整理します。
- 役割の理解:The Model型のどの機能(マーケ/IS/FS/CS)を担うのか、求人票・業務委託契約書で確認する。
- 数字との付き合い方:KPIは「追われるもの」ではなく「自分の貢献を可視化する道具」と捉え直すと、日々の業務改善のサイクルを回しやすくなる。
- 学習の継続:教育訓練給付制度をはじめとする公的支援を活用し、SaaSの仕組み・顧客課題のヒアリング・SFA/CRM操作を継続的に磨く。
SaaSそのものの全体像についてはSaaSとは|定義・仕組み・選び方の全体像を、AIと組み合わせた営業のあり方についてはSaaSとAIの組み合わせを、営業機能を外部委託する選択肢については営業BPOという選択肢もあわせて参照してください。
参考文献
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」営業の仕事(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/SaleOccupations/2026年5月31日取得)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年10月分)について」2025年12月公表(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66201.html/2026年5月31日取得)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について」2026年4月公表(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72811.html/2026年5月31日取得)
- 厚生労働省「教育訓練給付制度」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku_00001.html/2026年5月31日取得)
- 経済産業省「特定サービス産業実態調査」(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/index.html/2026年5月31日取得)
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