SaaSランキングの見方|国内8社の最新売上高と、記事ごとに順位が違う理由

Check!

  • 国内SaaS8社の最新の売上高がわかる
  • 記事ごとに順位が違う5つの理由がわかる
  • 目的に合うランキングの見方がわかる

SaaSランキングとは、SaaS企業を売上高・ARR・時価総額・平均年収などの指標で並べた一覧のことです。国内の主なSaaS関連の上場企業8社を最新の決算で確かめると、直近通期の売上高が最も大きいのはビジョナル(2026年7月期、約993億円)で、エス・エム・エス(2026年3月期、約647億円)、ラクス(同、約603億円)が続きます。ただし決算期も事業の範囲も会社ごとに違うため、同じ「ランキング」でも記事によって順位が変わります。本記事では、決算短信と決算説明資料で確認した数字をもとに、売上高の順位、指標の意味、順位が食い違う理由、目的別の見方を解説します。掲載する企業名は情報提供を目的としたもので、特定企業への投資や転職を勧めるものではありません。

あなたに合う読み進め方を診断

Q1. SaaSランキングを見る目的は?

目次

開く

閉じる

  1. 国内SaaS企業の売上高ランキング|最新の決算で確かめた主な8社
  2. SaaS企業ランキングの主な指標|売上高・ARR・時価総額・年収
  3. SaaSランキングを鵜呑みにできない5つの理由
  4. ランキングの種類と、ランキングサイトの見分け方
  5. 国内SaaS企業ランキングの数字を一次情報で確かめる方法
  6. 世界のSaaS企業ランキングの見方
  7. 目的別|どのSaaSランキングを見ればよいか
  8. ランキングのよくある読み違いと正しい読み方
  9. ランキングの数字を自社に当てはめる|月次で確認したい数字とセルフチェック
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ
  12. 参考文献

国内SaaS企業の売上高ランキング|最新の決算で確かめた主な8社

国内の主なSaaS関連の上場8社を直近通期の売上高で並べると、1位はビジョナル(約993億円)、2位はエス・エム・エス(約647億円)、3位はラクス(約603億円)です。

売上高の順 企業(証券コード) 決算期 売上高 前期比 営業利益率
1 ビジョナル株式会社(4194) 2026年7月期(連結) 約993億円 +23.9% 24.7%
2 株式会社エス・エム・エス(2175) 2026年3月期(連結) 約647億円 +6.2% 10.5%
3 株式会社ラクス(3923) 2026年3月期(連結) 約603億円 +23.3% 28.8%
4 Sansan株式会社(4443) 2026年5月期(連結) 約538億円 +24.4% 15.2%
5 株式会社オービックビジネスコンサルタント(4733) 2026年3月期(非連結) 約514億円 +9.4% 45.9%
6 株式会社マネーフォワード(3994) 2025年11月期(連結) 約503億円 +24.7% -5.3%(営業損失)
7 フリー株式会社(4478) 2026年6月期(連結) 約424億円 +27.6% 2.6%
8 サイボウズ株式会社(4776) 2025年12月期(連結) 約374億円 +26.1% 27.0%

この表は、各社の決算短信と決算説明資料(参考文献に記載)で2026年10月15日に確認した数字です。営業利益率は営業利益を売上高で割って計算しました。SaaS関連の上場企業を網羅した順位ではなく、検索結果の売上高ランキングに挙がりやすい企業のうち、直近通期の決算を確認できた8社を並べています。Appier Groupなど、このほかにも候補になる企業はあります。

表を読むときの注意は3つあります。1つ目は決算期で、8社の決算期末は2025年11月から2026年7月まで最大8か月ずれています。2つ目は連結と非連結で、オービックビジネスコンサルタントは非連結(単体)の決算です。3つ目は売上高と利益が別物だという点で、マネーフォワードは売上高が約503億円に達する一方、営業損失を計上しています。売上高の順位だけでは、会社の稼ぐ力は読み取れません。

売上成長率や営業利益率は、上場企業の決算だけでなく自社の月次の試算表からも同じ式で計算できます。ランキングで使われる物差しを自社に当てはめたい場合の一例が、マネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、仕訳データを入力すると決算書やキャッシュフローレポート、収益レポートなどが自動で作成され、経営状況をリアルタイムで確認できます。インターネットバンキングやクレジットカードなど2,400社以上の金融機関との連携機能もあり、取引明細の入力の手間を減らせます。注意点として、AIが登録済みの仕訳を学習する仕組みのため、誤った仕訳を登録すると学習されることがあり、入力の正確さが求められます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワード クラウド会計
出典:biz.moneyforward.com

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

他システムの移行や機能性重視の方におすすめ!

全体評価
4.2 (14件)

GOOD

ここがおすすめ!

  • 面倒な帳簿・レポート・決算書を自動作成
  • 金融機関の入出金データを自動取得してリアルタイムで数字を共有
  • 他サービスとの連携で勤怠管理やマイナンバー管理が可能
MORE

ここが少し気になる…

  • ある程度の簿記知識が必要な場合も
評価・口コミ(一部抜粋)
4.2
  • リアルタイムで金融機関の残高推移が確認できるため、インターネットバンキングをあける必要がない。また、必要以上の機能がなく最低限になるのでシンプルでわかりやすい、初心者向けの会計システムかと思います。

  • 銀行やクレジットカードから仕訳入力や取引データの取得が自動化され、会計業務にかかる時間を大幅に短縮できました。AIによる自動仕訳やレポート自動生成機能により、経営状況の可視化やミスの防止も実現。帳票を出力して提出書類として扱いやすいのがメリットです。

  • 自動入力がとても便利だと感じています。マネーフォワード給与やマネーフォワード請求書からのデータと連携できるので手入力の作業が減り時短になっています。

実際に使ってみたレビュー記事はこちら

【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】

数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。

導入企業の声も参考になります。オンライン動画学習サービス「Schoo」を運営する株式会社スクーは、管理会計へ移るタイミングで導入し、経営陣や株主向けに細かいレポートを出せるようになったと紹介されています(2017年公開の個別事例であり、同様の結果を保証するものではありません)。

経営陣や株主に対しても、より細かいレポートが出せるようになりました。また、代表とアカウント共有し、外出先でもリアルタイムに会社の数字をチェックしてもらえるようにしています。

出典: 株式会社スクー「マネーフォワード クラウド会計」導入事例(マネーフォワード公式サイト、2017年7月12日公開。公開当時の情報)
マネーフォワード クラウド会計

売上・利益の推移を月次で確認したい会社に

マネーフォワード クラウド会計の資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

SaaS企業ランキングの主な指標|売上高・ARR・時価総額・年収

SaaS企業ランキングは、主に売上高、ARR(年間経常収益)、時価総額、平均年収の4つの指標で作られています。指標ごとに「何がわかるか」が違うため、同じ企業でも順位は大きく入れ替わります。

指標 わかること 主な確認先 注意点
売上高 事業の規模 決算短信、有価証券報告書 SaaS以外の事業の売上を含む場合がある
ARR(年間経常収益) 継続課金による収益の規模 決算説明資料 算出方法が企業ごとに異なり、会計上の売上高とは一致しない
時価総額 株式市場による将来性の評価 証券取引所・証券会社の株価情報 株価で日々変動し、集計日によって順位が変わる
平均年収 従業員に支払われる給与の平均 有価証券報告書「従業員の状況」 提出会社単体が対象で、職種構成や平均年齢に左右される

このほか、SaaS企業の分析では、解約率(チャーンレート)、既存顧客からの売上がどれだけ維持・拡大したかを示す売上継続率(NRR)、顧客1社あたりの月額単価(ARPU)などもよく使われます。これらは法定の開示項目ではないため、公表している企業としていない企業があり、全社を同じ条件で並べたランキングはつくりにくい指標です。

ARRは売上高と一致しない|決算資料で見る4社の例

ARRは「期末時点の継続収益を年額に換算した値」、売上高は「その期間に実際に計上された金額」です。決算資料に載っているARRと売上高を並べると、両者が同じ数字ではないことがわかります。

企業 売上高 公表しているARR 備考
株式会社オービックビジネスコンサルタント 約514億円(2026年3月期) 457億円(2026年3月末) 決算説明資料では、各四半期末月の月額継続収益の12倍で計算
株式会社マネーフォワード 約503億円(2025年11月期) SaaS ARRとして約393億円(2025年11月末) 決算短信に記載のSaaS事業のARR
Sansan株式会社 約538億円(2026年5月期) 約500億円(2026年5月末) 決算説明資料に記載。定義は同資料の注記による
ビジョナル株式会社(HRMOS事業のみ) 約93億円(HRMOS事業、2026年7月期) 約103億円(HRMOS、2026年7月末) 急成長中の事業では、期末のARRが通期の売上高を上回ることもある

ARRの算出方法は企業ごとに決められているため、他社のARRと並べて優劣を判断するのは避けましょう。

成長と利益のバランスを見る「Rule of 40」|8社で計算

売上の伸びと利益のどちらを重視するかは、SaaS企業の評価でよく議論になります。そこで使われる目安の1つが「Rule of 40」です。売上成長率(%)と営業利益率(%)などの利益率を足して40%を超えているかを見る考え方で、たとえば成長率30%・利益率10%の企業も、成長率10%・利益率30%の企業も、同じく40%として扱います。赤字でも急成長している企業と、成長は緩やかでも利益を出している企業を1つの物差しで比べられるのが特徴です。

冒頭の表の数字を使って、前期比と営業利益率を足した値を計算すると次のようになります。売上高の順位とは、まったく違う並びになります。

企業 前期比 営業利益率 合計
株式会社オービックビジネスコンサルタント(非連結) +9.4% 45.9% 55.3
サイボウズ株式会社 +26.1% 27.0% 53.1
株式会社ラクス +23.3% 28.8% 52.1
ビジョナル株式会社 +23.9% 24.7% 48.6
Sansan株式会社 +24.4% 15.2% 39.6
フリー株式会社 +27.6% 2.6% 30.2
株式会社マネーフォワード +24.7% -5.3% 19.4
株式会社エス・エム・エス +6.2% 10.5% 16.7

この計算は、決算短信の営業利益を使った簡易的なものです。Rule of 40は投資家のあいだで使われる経験則で、会計基準や法令で定められたものではありません。どの利益率を使うかも統一されておらず(Sansanのように調整後営業利益を開示する企業もあります)、決算期も8社でそろっていません。合計の大小は企業の優劣を示すものではなく、売上高の順位とは別の見え方があることを確認するための計算例です。

SaaSランキングを鵜呑みにできない5つの理由

SaaSランキングの数字の多くは、企業の開示資料をもとにした正しい数値です。それでも鵜呑みにできないのは、集計の条件が記事ごとにそろっていないからです。主な理由は次の5つです。

理由1|決算期と集計時点がそろっていない

3月決算の企業と12月決算の企業では、同じ「2025年度」でも対象となる期間が最大で9か月ずれます。冒頭の表のように、同じ「最新の通期決算」でも8社の決算期末は2025年11月から2026年7月までずれています。半期の数値と通期の数値が同じ表に並んでいるランキングもあります。時価総額にいたっては、集計した日の株価しだいで順位が入れ替わります。

更新時期の違いも順位に影響します。2026年10月15日時点で確認した検索上位の複数のランキング記事には、エス・エム・エスの売上高を約609億円と載せているものがありました。これは2025年3月期の連結売上高(609億5,200万円)にあたる数字で、2026年3月期の連結売上高は約647億円です。数値の横に記載された決算期や集計日を必ず確認しましょう。

理由2|「SaaS企業」の範囲が記事ごとに違う

SaaSを主力とする企業だけを対象にする記事もあれば、人材紹介や広告など他の事業が大きい企業を含める記事もあります。同じ日の検索結果でも、売上高の1位をエス・エム・エスとする一覧と、ビジョナルとする一覧が並んでいます。世界ランキングでは、クラウド事業を持つ巨大IT企業を含めるかどうかで上位の顔ぶれがまったく変わります。対象とする企業の範囲が違えば、順位が違うのは当然です。

理由3|SaaS以外の売上が混ざっている

売上高ランキングに並ぶ企業の多くは、複数の事業を手がけています。会社全体の売上高で並べると、SaaS事業の規模が小さくても上位に入ることがあります。冒頭の表の上位3社の内訳を、決算短信と決算説明資料で確認すると次のとおりです。

企業 売上高 内訳(決算資料で確認できる区分)
ビジョナル株式会社(2026年7月期) 約993億円 BizReach事業 約801億円(約81%)、HRMOS事業 約93億円(約9%)、その他 約99億円
株式会社エス・エム・エス(2026年3月期) 約647億円 キャリア分野(介護キャリア・医療キャリア。人材紹介など) 約383億円(約59%)、介護・障害福祉事業者分野(「カイポケ」など) 約137億円(約21%)、海外分野 約89億円(約14%)、事業開発分野 約39億円(約6%)
株式会社ラクス(2026年3月期) 約603億円 クラウド事業 約518億円(約86%)、IT人材事業 約85億円(約14%)。IT人材事業は2026年4月に全株式の譲渡が完了し、2027年3月期は連結対象外

どの事業を「SaaSの売上」とみなすかは、決算資料の区分だけでは決められません。SaaSに近い事業だけで並べ直すと順位は大きく入れ替わる可能性がありますが、本記事ではその並べ直しは行っていません。有価証券報告書のセグメント情報を見ると、事業ごとの売上の内訳を確認できます。

理由4|ARRやKPIの定義が企業ごとに違う

ARRは「月次の継続収益を12倍したもの」とする企業が多いものの、初期費用やオプション料金を含めるかどうかなど、細かな定義は企業ごとに異なります。前の章の表のとおり、同じ企業でもARRと売上高は一致しません。解約率も件数ベースか金額ベースかで数値が変わります。定義が違う数字を並べたランキングは、あくまで目安として見るのが無難です。

理由5|ランキング記事の作り手に目的がある

SaaSランキングの記事の多くは、転職支援会社や製品比較サイトが作成しています。記事そのものが誤っているわけではありませんが、転職支援会社なら年収や働きやすさ、比較サイトなら製品の評価というように、作り手の目的に沿った切り口が選ばれやすくなります。誰が何のために作ったランキングかを意識すると、数字を冷静に読めます。

ランキングの種類と、ランキングサイトの見分け方

「SaaS ランキング」という言葉は、企業を並べたものと、サービス(製品)を並べたものの両方を指します。並べている基準によって、見るべきポイントが変わります。

ランキングの種類 何で並べているか 見るときの注意
企業の売上高ランキング 決算短信・有価証券報告書の売上高 決算期、連結か単体か、SaaS以外の事業の混在
企業の年収ランキング 有価証券報告書の平均年間給与 提出会社単体が対象で、職種構成や平均年齢に左右される
時価総額ランキング 株価と発行済株式数 集計日によって日々入れ替わる
サービスの口コミ・評価ランキング 利用者のレビューの点数や件数 投稿数の偏り、投稿者の属性、運営会社の掲載条件
資料請求数ランキング 掲載サービスへの資料請求の件数 人気や知名度の目安であり、機能や自社との相性の優劣ではない
転職先ランキング 年収・口コミ・求人数など 運営会社が人材紹介を行っているかどうか

サービスを選ぶ目的でランキングを見るなら、SaaS企業の売上高ランキングはあまり参考になりません。売上高が大きい企業の製品が自社に合うとは限らないためです。企業ランキングとサービスランキングの違いは、SaaS業界ランキングの正しい見方で詳しく整理しています。

ランキングサイトの公平性を見分ける5つの点

ランキングサイトや比較サイトの公正性が気になるときは、次の5点を確認しましょう。

  • 運営会社がどこか、掲載されているサービスや会社との関係(自社サービスの掲載、広告掲載など)が書かれているか
  • 順位の基準(指標、集計期間、対象範囲)が書かれているか
  • 数字の出典と、数字の時点が書かれているか
  • 広告・PRであることが読者に分かる形で表示されているか
  • 良い点だけでなく、注意点や向かない会社も書かれているか

広告であることを隠した表示は、2023年10月1日から景品表示法の規制の対象です(消費者庁「ステルスマーケティング」の案内に基づく。詳細は消費者庁のページを参照)。個別の表示が法律に当たるかどうかは事情によって異なるため、本記事は法的助言ではありません。比較サイトの見極め方は、SaaS比較の正しい方法でも解説しています。

国内SaaS企業ランキングの数字を一次情報で確かめる方法

ランキング記事の数字は、企業が開示している一次情報と突き合わせるのが確実です。上場企業であれば、次の資料で主な数値を確認できます。

資料 確認できる主な数値 入手先
有価証券報告書 売上高、営業利益、セグメント別の売上、従業員数、平均年間給与 金融庁の電子開示システム「EDINET」、各社IRページ
決算短信 直近の売上高・利益、業績予想 各社IRページ、証券取引所の適時開示
決算説明資料 ARR、解約率、顧客数、顧客単価などのKPI 各社IRページ
  1. 企業名や証券コードから、IRページの「決算短信」を開き、最新の通期の売上高と営業利益を確認する
  2. 決算期の末日と、連結か非連結かを確認する
  3. セグメント情報で、SaaS以外の事業の売上がどれだけ含まれているかを確認する
  4. KPIは決算説明資料で、定義の注記とあわせて確認する

非上場のSaaS企業は開示義務がないため、ランキングに載る数値は資金調達時の発表や報道をもとにした推計であることが多くなります。上場企業の数値と同じ精度ではない点に注意しましょう。時価総額・年収・ユーザー評価の切り口で国内の上場企業を整理した一覧は、日本のSaaS企業ランキングを4つの切り口で整理した記事で解説しています。

世界のSaaS企業ランキングの見方

世界のSaaS企業ランキングを扱う記事では、MicrosoftやSalesforceなどの名前が挙がることが多くあります。ただし、こうした企業はソフトウェアの販売、クラウド基盤の提供、コンサルティングなど幅広い事業を持つ場合があり、どこまでを「SaaSの売上」とみなすかで順位が変わります。

見るポイント 国内ランキング 世界ランキング
対象企業 SaaSを主力とする上場企業が中心 クラウド事業を持つ巨大IT企業を含むかどうかで大きく変わる
通貨 円建て ドル建てが多く、円換算すると為替レートで数値が変わる
会計基準 日本基準・IFRSが混在 米国基準・IFRSなどが混在
確認先 EDINET、各社IRページ 各社の年次報告書(米国企業は米国証券取引委員会への提出書類)

世界のランキングを円に換算した記事を見るときは、どの時点の為替レートを使っているかも確認しましょう。円安の時期に換算すると、同じドル建ての売上でも円での金額は大きく見えます。

「SaaSの死」論とランキングの変化

近年は、生成AIやAIエージェントの普及によって従来型のSaaSの価値が下がるのではないか、という「SaaSの死」論が話題になっています。一方で、既存のSaaS企業が自社製品にAI機能を組み込む動きも広がっており、時価総額ランキングは、こうした市場の見方の変化をそのまま映します。過去の順位がそのまま続くとは限らないため、複数の時点のランキングを見比べ、変化の理由を決算説明資料で確かめる姿勢が大切です。議論の経緯は、「SaaSの死」とはで整理しています。

目的別|どのSaaSランキングを見ればよいか

SaaSランキングを役立てるには、まず自分の目的をはっきりさせ、その目的に合う指標のランキングを選ぶことが近道です。目的別の見方は次のとおりです。

目的 重視したい指標 あわせて確認したいこと
転職・就職 平均年収、売上成長率 希望職種の募集条件、評価制度、平均年齢と平均勤続年数
投資・業界研究 ARR、成長率と営業利益率(Rule of 40)、売上継続率 KPIの定義、複数期の推移、セグメント別の売上
自社で使うSaaSの選定 利用者の評価、導入実績 無料トライアルでの使い勝手、セキュリティ、サポート体制
自社の経営の参考 成長率、営業利益率、継続率 自社の同じ数字を月次で把握できているか

転職を考えている場合、平均年収は従業員が少ない企業ほど一部の高年収者に引っ張られやすく、若手中心の成長企業では低めに出やすいことに注意が必要です。SaaS業界の職種や未経験からの入り方は、SaaS業界への転職ガイドでも解説しています。

「ホワイト企業」を探したい場合も、公的に定められたランキングや認定の呼び名はありません。有価証券報告書の平均勤続年数や平均年齢を確認し、厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で、勤務実態や採用状況などの職場情報を比較する方法があります。

自社で使うSaaSを選ぶ目的であれば、企業の業績ランキングはあまり参考になりません。利用者の評価や無料トライアルでの使い勝手、セキュリティやサポート体制といった、自社の業務に合うかどうかを直接確かめられる情報を優先しましょう。

ランキングのよくある読み違いと正しい読み方

SaaSランキングでよく見られる読み違いを、正しい読み方と並べて整理しました。

よくある読み違い(Before) 正しい読み方(After)
売上高1位の企業が最も優れたSaaS企業だ 売上高は規模を示すだけで、成長性や収益性、製品の使いやすさは別の指標で見る
赤字の企業は評価が低い 先行投資で赤字でも成長率が高い企業はある。成長率と営業利益率を合わせて見る
ARRが大きい企業ほど売上高も大きい ARRは継続課金部分だけの指標で、定義も企業ごとに違う
平均年収が高い企業なら誰でも高年収になる 平均値は職種構成や平均年齢に左右される。職種別の条件を確認する
記事ごとに順位が違うのはどれかが間違っている 集計日、決算期、対象企業の範囲が違えば順位も変わる

ランキングの数字を自社に当てはめる|月次で確認したい数字とセルフチェック

ランキングで使われる指標のうち、自社でも毎月計算できるのは売上成長率と営業利益率です。他社のランキングを参考にするときほど、自社の数字を同じ基準で把握できているかが問われます。

確認したい数字 自社での出し方 注意点
売上成長率 当月(または当期)の売上高を前年同月(前年同期)と比べる。月次の推移表で確認できる 売上規模が小さいほど高い成長率が出やすい
営業利益率 営業利益を売上高で割る。月次の試算表の損益計算書から計算できる 月次で計上していない費用がある場合、決算後の数字と食い違うことがあるする
解約率・売上継続率 契約データから計算する(自社がサブスクリプション型の事業をしている場合) 会計データだけでは出せないため、契約管理の仕組みが別に必要

これらを毎月・早く確認するには、日々の取引が会計データに正確に反映されていることが前提です。次のセルフチェックで、自社の月次の数字の確認の仕方を点検してみましょう。

自社の数字、ランキングと同じ物差しで見られていますか?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

よくある質問(FAQ)

Q1. 日本のSaaS企業で売上高が最も大きいのはどこですか?

A. 本記事で確認した主な8社では、直近通期の売上高が最も大きいのはビジョナル(2026年7月期、約993億円)で、次いでエス・エム・エス(2026年3月期、約647億円)です。ただし、どちらも人材関連の事業が大きく、SaaSに近い事業の売上だけで並べると順位は変わります。

Q2. 日本の三大SaaS企業・5大SaaS企業はどこですか?

A. 公的に定められた「三大」「5大」はなく、記事ごとに基準が違います。売上高で見た本記事の8社では、上位5社はビジョナル、エス・エム・エス、ラクス、Sansan、オービックビジネスコンサルタントです。年収や時価総額で並べると顔ぶれは変わります。

Q3. SaaSランキングは記事によって順位が違うのはなぜですか?

A. 集計した時点、対象とした決算期、SaaS企業とみなす範囲、使った指標が記事ごとに異なるためです。たとえばエス・エム・エスの売上高は、2025年3月期の約609億円から2026年3月期は約647億円に変わっており、どちらの期の数字を載せるかで順位の見え方が変わります。

Q4. SaaS業界でホワイト企業を探すには、何を見ればよいですか?

A. 公的に定められたホワイト企業のランキングはありません。有価証券報告書の平均勤続年数や平均年齢、厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」の職場情報を組み合わせて確認します。平均値は職種構成に左右されるため、希望職種の条件も確かめましょう。

Q5. SaaS企業の売上高や平均年収はどこで確認できますか?

A. 上場企業であれば、金融庁の電子開示システムEDINETで有価証券報告書を確認できます。最新の売上高は各社IRページの決算短信、ARRなどのKPIは決算説明資料に記載されていることが多いです。

Q6. ランキングの指標を自社の経営に生かすには?

A. まず自社の売上成長率や営業利益率を月次で把握できる状態をつくることが先決です。仕訳データからレポートを作成できる会計ソフトを使うと、数字の推移を確認しやすくなります。一例として、マネーフォワード クラウド会計は決算書やキャッシュフローレポート、収益レポートを自動で作成できます。

まとめ

SaaSランキングは、どの指標で、いつ、どの範囲の企業を集計したかによって顔ぶれが大きく変わります。押さえておきたい行動は次の5つです。

  1. ランキングは、決算期・集計時点・対象企業の範囲を確認してから読む
  2. 売上高だけでなく、前期比と営業利益率、ARRなど複数の指標を並べて見る
  3. 数字は決算短信・決算説明資料・有価証券報告書の一次情報で確かめる
  4. 転職・投資・自社で使うSaaSの選定・自社の経営など、目的に合う指標のランキングを選ぶ
  5. 自社の経営に生かすなら、売上成長率と営業利益率を月次で確認できる状態をつくり、必要に応じて会計ソフトの導入を検討する

ランキングは業界を知る入り口として便利な一覧です。順位そのものより、その裏にある数字の意味を読み解くことで、転職、投資研究、自社の経営のいずれにも役立つ情報になります。

参考文献

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top