SaaSのマルチテナントとは|MaaSとの違い

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  • マルチテナントとシングルテナントの違いがわかる
  • SaaSとASP・MaaS・SIerの違いがわかる
  • クラウド用語全体マップがわかる

「SaaS」と似た言葉に「MaaS」「SIer」があり、混同してしまうことがあります。特にMaaSはSaaSとは全く異なる分野の概念です。本記事では、SaaSのマルチテナントの仕組みを軸に、ASP・MaaS・SIerとの違いも整理します。SaaSの型そのものの分類(マルチテナント型・シングルテナント型・Horizontal・Vertical)を基礎から知りたい場合はSaaSの型と具体例の記事、ASP・クラウド・IaaS/PaaS・SIerとの用語関係を全体整理したい場合はSaaSとASP・クラウドの違いの記事もあわせてご覧ください。

目次

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  1. マルチテナントとシングルテナントの違い
  2. SaaSとASPの違い
  3. SaaSとMaaSの違い
  4. SaaSとSIerの違い
  5. クラウド用語全体マップ
  6. DaaS・FaaS・BaaSとは何か
  7. 用語の理解でよくある失敗パターン3つ
  8. 「ASP」という言葉を見かけたときの対応
  9. SaaSを契約する前に確認しておきたいポイント
  10. クラウドサービスの用語を理解しておく実務上のメリット
  11. 用語の違いを社内資料に落とし込む際のポイント
  12. よくある質問(FAQ)
  13. まとめ|今日からできる3つのこと

マルチテナントとシングルテナントの違い

マルチテナントとは、1つのソフトウェア環境を複数の利用者で共有する方式を指し、現代のSaaSにおける標準的な技術形態です。コスト効率とアップデートの即時性が特徴で、シングルテナント方式(利用者ごとに個別のシステムを用意する方式)と対比されます。

SaaSとASPの違い

ASPは1990年代に登場した先行概念で、主にシングルテナント方式が中心だったのに対し、SaaSはマルチテナント方式を基本としています。現在ではASPという用語自体が使われなくなり、SaaSに取って代わられています。

SaaSとMaaSの違い

MaaS(Mobility as a Service)は交通・モビリティ分野の統合サービスを指し、SaaSとは無関係の別概念です。国土交通省が推進する領域であり、名称が似ているためSaaSと混同されやすい点に注意が必要です。

SaaSとSIerの違い

SIerは顧客要件に合わせた受託開発を行う事業者の業態を指し、SaaSという提供形態とは異なる軸の概念です。SaaSベンダーへの依頼と、SIerへの依頼では、依頼できる内容の範囲が異なります。

用語 SaaSとの関係
ASP 先行概念(シングルテナント中心)
MaaS 無関係の別分野(交通・モビリティ)
SIer 提供形態ではなく事業者の業態
図1:SaaSと似た用語の違い

クラウド用語全体マップ

IaaS・PaaS・SaaSという基本の3層に加えて、DaaS・FaaS・BaaSといった派生形態が存在します。中小企業でも、業務内容によってはこれらの派生形態を活用できる場合があります。これらの多くも、冒頭で解説したマルチテナント方式を土台に提供されている点は共通しています。実際、多くの企業が日常的に使っているグループウェアも、1つの環境を複数の企業・利用者で共有するマルチテナント型SaaSの代表例です。スケジュール共有やファイル管理といった身近な機能を通じて、マルチテナントという仕組みが実際のサービスでどう活きているかを確認してみると理解が深まります。

DaaS・FaaS・BaaSとは何か

SaaS・PaaS・IaaSという基本の3層に加えて、DaaS(デスクトップ環境またはデータ提供)、FaaS(サーバーレス関数実行)、BaaS(バックエンド機能提供)といった派生形態が登場しており、それぞれ異なる用途で使われています。

DaaS(Desktop as a Service)は、パソコンのデスクトップ環境をクラウド上に用意し、利用者はどの端末からでも同じ作業環境にアクセスできるようにするサービスです。テレワークの拠点が複数にまたがる企業や、セキュリティ上の理由から社内データを個々の端末に残したくない企業で活用されています。同じ「DaaS」という略語でも、Data as a Service(データそのものを提供する形態)を指す場合もあるため、文脈によってどちらを指しているかを確認する必要があります。

FaaS(Function as a Service)は、あらかじめ用意したサーバーを起動し続ける必要がなく、特定の処理が必要なタイミングだけプログラムの一部(関数)を実行できるサービスです。開発者はサーバーの管理から解放され、必要な処理だけを効率的に実行できます。BaaS(Backend as a Service)は、アプリケーション開発において、ログイン認証やデータベースといった裏側(バックエンド)の機能をあらかじめ用意してくれるサービスで、開発者はアプリの画面(フロントエンド)の開発に集中できるようになります。中小企業が直接これらを契約する機会は多くありませんが、利用しているSaaSの裏側でこうした技術が使われていることを知っておくと、システム構成の全体像を理解しやすくなります。

用語の理解でよくある失敗パターン3つ

MaaSをSaaSの一種と誤解する、SIerとSaaSベンダーへの依頼範囲を混同する、旧ASP契約書をそのまま新しいSaaS契約と同じ扱いにするという3つが、用語の理解でよく見られる失敗の典型です。

失敗パターン1:MaaSをSaaSの一種と誤解する。名称の類似から同じ分野の概念だと思い込むケースです。MaaSが交通・モビリティ分野の別概念であることを理解することが回避策になります。

失敗パターン2:SIerとSaaSベンダーへの依頼範囲を混同する。受託開発と既製品利用の違いを理解せず、依頼内容がずれるケースです。両者の業態の違いを理解することが回避策になります。

失敗パターン3:旧ASP契約書をそのまま新しいSaaS契約と同じ扱いにする。シングルテナント前提の契約内容が、マルチテナント方式のSaaSに合わないケースです。契約内容を個別に見直すことが回避策になります。

「ASP」という言葉を見かけたときの対応

古い契約書や社内資料に「ASPサービス」という表記が残っている場合、現在提供されているSaaSと同じ感覚で扱わず、内容を個別に確認することが望ましいとされています。

ASPという言葉が主流だった時代のサービスは、シングルテナント方式(利用者ごとに個別のシステムを用意する方式)が中心でした。そのため、当時の契約書には、個別カスタマイズの範囲や、システムの保守・更新の責任分担について、現在のマルチテナント方式のSaaSとは異なる前提で条項が定められている場合があります。古い契約が現在も継続している場合は、実際に提供されているサービスがシングルテナントのままなのか、それとも提供事業者側でマルチテナント方式のSaaSへ切り替わっているのかを、契約更新のタイミングで確認しておくとよいでしょう。

また、現在でも一部のベンダーがマーケティング上の理由から「ASP」という呼称をあえて使い続けている場合もあります。この場合、技術的な仕組みは現代のSaaSと同様にマルチテナント方式であることも多く、呼称だけで判断せず、実際の提供形態(マルチテナントかシングルテナントか)を個別に確認することが、誤解を避けるうえで重要です。

SaaSを契約する前に確認しておきたいポイント

SaaSを新たに契約する際は、料金プランだけでなく、データの保管場所、解約時のデータ持ち出し方法、サポート体制の3点を事前に確認しておくことが望ましいとされています。用語の違いを理解したうえで、実際の契約段階で見落としやすいポイントを整理します。

まず、データの保管場所です。マルチテナント方式のSaaSでは、複数の利用者のデータが同一の基盤上で論理的に分離された状態で保管されています。国内向けにサービスを提供している事業者であっても、実際のデータセンターが海外に置かれている場合があり、業種によっては社内規定や取引先との契約上、データの保管場所を確認する必要が生じることがあります。契約前にサービス提供事業者へ、データセンターの所在地や、データの取り扱いに関する方針を問い合わせておくと安心です。

次に、解約時のデータ持ち出し方法です。SaaSは月額または年額での契約が一般的で、シングルテナント方式の個別開発システムと比べて解約自体は容易な場合が多いものの、蓄積したデータをどの形式で、どの範囲まで持ち出せるかはサービスごとに異なります。CSV形式でのエクスポートに対応しているか、過去の履歴データもあわせて取得できるかなど、利用を始める前の段階で確認しておくことで、将来的に他のサービスへ乗り換える際の手間を減らせます。

最後に、サポート体制です。SaaSは既製品としてあらかじめ用意されたサービスを利用する形態のため、SIerに個別開発を依頼する場合と比べて、自社の業務フローに完全に合わせたカスタマイズが難しい場合があります。導入前の設定支援や、トラブル発生時の問い合わせ窓口の対応時間、日本語でのサポートの有無なども、業務への影響を左右する要素として確認しておくとよいでしょう。

クラウドサービスの用語を理解しておく実務上のメリット

SaaS・ASP・MaaS・SIerといった用語の違いを正しく理解しておくことは、社内での意思疎通や、外部のベンダーとの商談を円滑に進めるうえで実務的なメリットがあります。

社内での意思疎通という観点では、経営層や他部署の担当者が「ASP」「クラウドサービス」「SaaS」といった言葉を厳密に区別せずに使っているケースが少なくありません。情報システム部門の担当者がこれらの違いを理解していれば、社内での説明や資料作成の際に、混同を招かない言葉遣いで整理して伝えることができます。特に、旧来のシステムから新しいSaaSへ移行する際の社内提案では、シングルテナント方式とマルチテナント方式の違いを正確に説明できるかどうかが、稟議や承認をスムーズに進められるかに関わってきます。

外部のベンダーとの商談という観点では、営業担当者が自社のサービスを「SaaS」と説明しているにもかかわらず、実際にはシングルテナント方式に近い個別カスタマイズを前提としたサービスであるケースも見られます。マルチテナントとシングルテナントの違いを理解していれば、商談の場で提供形態について具体的な質問を投げかけることができ、自社の要件に本当に合ったサービスかどうかを見極めやすくなります。また、SIerへの個別開発の依頼を検討する際にも、SaaSとの違いを踏まえたうえで、どちらの選択肢が自社の予算や納期に適しているかを比較検討しやすくなります。

用語の違いを社内資料に落とし込む際のポイント

用語の違いを社内向けの資料にまとめる際は、抽象的な定義をそのまま転記するのではなく、自社が実際に利用しているサービスを具体例として当てはめて説明すると理解が進みやすくなります。例えば「現在利用しているグループウェアはマルチテナント方式のSaaSであり、以前使っていた個別発注のシステムはシングルテナント方式に近い形態だった」といった形で、社内の実例と結び付けて整理すると、経営層や他部署にも伝わりやすい資料になります。

また、用語集として整理する場合は、単に定義を並べるだけでなく、「なぜこの区別が自社にとって重要なのか」という観点も添えておくと、資料が形骸化しにくくなります。契約更新の担当者が変わった場合でも、こうした資料が残っていれば、旧ASP契約の内容確認や、SaaSとSIerへの依頼範囲の切り分けをスムーズに引き継ぐことができます。用語集は一度作って終わりにせず、契約更新や新しいサービス導入のタイミングで、内容を見直す機会を設けておくと、実務での有用性を保ちやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. マルチテナント方式のセキュリティは問題ありませんか?

A. 顧客ごとにデータを論理的に分離する仕組みが取られており、適切に運用されていれば問題は生じにくい設計です。

Q2. 旧「ASPサービス」の契約書はどう扱えばよいですか?

A. シングルテナント前提の内容が含まれる場合があるため、現行のSaaS契約と同じ扱いにせず個別に確認することが望ましいです。

Q3. MaaSと「SaaS」表記は関係がありますか?

A. 関係はなく、MaaSは交通・モビリティ分野の統合サービスを指す別概念です。

Q4. SaaSベンダーとSIerでは依頼内容がどう違いますか?

A. SaaSベンダーには既製品の利用を、SIerには要件に応じた受託開発を依頼する点が異なります。

Q5. 中小企業でもDaaS・FaaS・BaaSを活用できますか?

A. 業務内容によっては活用できる場合があります。

Q6. マルチテナントとシングルテナントはどちらが一般的ですか?

A. 現代のSaaSではマルチテナント方式が標準的な技術形態です。

まとめ|今日からできる3つのこと

  1. MaaSは別分野の概念と理解する:SaaSの一種と誤解しません。
  2. SIerとSaaSベンダーの業態を区別する:依頼範囲を混同しません。
  3. 旧ASP契約書は個別に見直す:そのまま同じ扱いにしません。

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