主要SaaSサービス|AWS・Google・Microsoft・freee・サイボウズの業務領域マップ

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  • クラウドは「IaaS/PaaS/SaaS」の3階層(NIST定義)
  • 日本企業のクラウド利用率は80.6%(総務省 令和7年版 情報通信白書)
  • メガベンダーと業務特化SaaSは「並列比較ではなく組み合わせ」が原則

「AWS・Google・Microsoftと、freee・サイボウズは『同じSaaS』と呼んでよいのでしょうか」――こうした疑問を抱える担当者は少なくありません。実際、2024年の日本企業のクラウドサービス利用率は80.6%に達し(総務省 令和7年版 情報通信白書)、ベンダー選定は経営課題の一つになっています。本記事では、米国国立標準技術研究所(NIST)が定義するクラウドサービスの3階層モデル(SP 800-145)に基づき、メガベンダー3社(AWS・Google・Microsoft)と国内代表ベンダー(freee・サイボウズ)を含む主要SaaSの事業領域を客観的に整理します。個社の優劣を評価するものではなく、各社の公表情報・公式ドキュメントに基づくサービスカテゴリの整理が目的です。詳しいSaaSの基礎はSaaSとはをあわせてご覧ください。

目次

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  1. クラウドサービスの3階層と「メガベンダー」「業務特化SaaS」
  2. AWS・Google・MicrosoftのSaaSポートフォリオ
  3. 国内代表SaaSの事業整理(freee・サイボウズ・主要ベンダー)
  4. メガベンダーと業務特化SaaSの組み合わせ方
  5. 個別サービス選定の注意点:一次情報の確認ポイント
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ
  8. 関連記事
  9. 参考文献

クラウドサービスの3階層と「メガベンダー」「業務特化SaaS」

図1:クラウドサービスの3階層モデル(NIST SP 800-145準拠) 図1:クラウドサービスの3階層モデル NIST SP 800-145(IPA訳)に基づき編集部が作成 SaaS Software as a Service / 完成したアプリケーション 例:Microsoft 365 / Google Workspace / freee / kintone / Salesforce PaaS Platform as a Service / アプリ開発・実行環境 例:AWS Lambda / Google Cloud Run / Microsoft Azure App Service IaaS Infrastructure as a Service / インフラ(サーバ・ストレージ) 例:Amazon EC2 / Google Compute Engine / Microsoft Azure 仮想マシン ユーザー 責任は データ・設定 +アプリ まで +OS 以上まで
図1:クラウドサービスの3階層モデル(NIST SP 800-145準拠)

NIST(米国国立標準技術研究所)が2011年に公開した「SP 800-145 The NIST Definition of Cloud Computing」では、クラウドサービスを次の3つの提供形態(サービスモデル)に整理しています(IPA訳)。

  • IaaS(Infrastructure as a Service):サーバ・ストレージ・ネットワークなどのインフラを提供する形態
  • PaaS(Platform as a Service):アプリケーション開発・実行のプラットフォームを提供する形態
  • SaaS(Software as a Service):完成したアプリケーションをサービスとして提供する形態

公正取引委員会が令和4年6月に公表した「クラウドサービス分野の取引実態に関する報告書」もこのNIST定義を引用しており、日本のクラウドサービス(SaaS含む)市場は2020年度に約3兆円規模に拡大したと報告されています。

この3階層を踏まえると、ベンダーは大きく2つに分類できます。メガベンダーは、AWS(Amazon)・Google・Microsoftに代表される、IaaS/PaaS/SaaSのすべての層を提供する大型クラウドプラットフォーム事業者です。一方業務特化SaaSは、freee・サイボウズに代表される、会計/人事労務/グループウェア/営業支援といった特定の業務領域に絞ったSaaS提供企業を指します。

「AWS」と「freee」を直接比較するのは、本来は無理があります。前者はクラウド基盤全般、後者は会計・人事労務という業務領域のアプリケーションだからです。3階層それぞれの違いをさらに掘り下げたい場合は、SaaS/PaaS/IaaSの違いをご覧ください。

AWS・Google・MicrosoftのSaaSポートフォリオ

総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、2024年に日本企業の80.6%が何らかのクラウドサービスを利用しており、利用率の高い領域は「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」「電子メール」「給与・財務会計・人事」「スケジュール共有」です。これら多くの領域で、メガベンダー3社のサービスが選択肢に含まれます。各社が公表している主要サービスを、3階層モデルで整理します。

AWS(Amazon Web Services)

AWSは公式サイトで、200以上のサービスを提供すると説明しています。主軸はIaaS/PaaS領域です。SaaS領域も提供しているものの、相対的に限定的です。

  • IaaS/PaaS中心:Amazon EC2(仮想サーバ)、Amazon S3(ストレージ)、AWS Lambda(サーバーレス実行環境)、Amazon RDS(マネージドデータベース)など
  • SaaS領域:Amazon WorkSpaces(仮想デスクトップ)、Amazon Connect(コンタクトセンター)、Amazon Chime(会議)など

Google

Googleはクラウド事業を「Google Cloud(GCP・IaaS/PaaS中心)」と「Google Workspace(SaaS)」の2つに大きく分けて提供しています。

  • IaaS/PaaS:Compute Engine(仮想サーバ)、Cloud Run、Cloud Functions、BigQuery など
  • SaaS:Google Workspace(Gmail/Google ドキュメント/Googleドライブ/Googleカレンダー/Google Meet 等)

Google CloudにはAI関連サービス(Vertex AI、Geminiモデル等)も含まれますが、これは別途整理が必要です。詳しくはGoogle AIプロダクトの整理をご覧ください。

Microsoft

Microsoftもメガベンダーで、IaaS/PaaSのAzureと、SaaS群(Microsoft 365/Dynamics 365)に大別されます。

  • IaaS/PaaS:Microsoft Azure(仮想マシン/App Service/Azure SQL Database/Azure Functions 等)
  • SaaS:Microsoft 365(Word/Excel/PowerPoint/Outlook/Teams/OneDrive/SharePoint)、Dynamics 365(CRM/ERP)

Microsoft関連のAIサービスについてはMicrosoft AIの全体像で整理しています。業務AIをSaaSとどう組み合わせるかは業務AIとの組み合わせ方を別記事で解説もあわせてご覧ください。

図2:メガベンダー3社のクラウドサービスポートフォリオ 図2:メガベンダー3社のサービスポートフォリオ 2026年5月時点の各社公開情報に基づき編集部が整理 AWS Google Microsoft SaaS Amazon WorkSpaces Amazon Connect Amazon Chime ※SaaSは限定的領域 Google Workspace (Gmail / Docs / Drive / Meet 等) Microsoft 365 (Word / Excel / Teams 等) Dynamics 365 PaaS AWS Lambda Amazon RDS Elastic Beanstalk Cloud Run Cloud Functions BigQuery Azure App Service Azure Functions Azure SQL Database IaaS Amazon EC2(仮想サーバ) Amazon S3(ストレージ) Amazon VPC(ネットワーク) Compute Engine Cloud Storage Cloud CDN Azure 仮想マシン Azure Blob Storage Azure 仮想ネットワーク サービス分類は各社の公開資料を基にした概略整理。最新の正確な分類は各社公式情報をご確認ください。
図2:メガベンダー3社のクラウドサービスポートフォリオ

国内代表SaaSの事業整理(freee・サイボウズ・主要ベンダー)

国内のSaaSベンダーは、それぞれが特定の業務領域で事業を展開しています。個人情報保護委員会の各種ガイドラインも、こうした業務領域別のSaaS利用を想定したデータ取扱いを整理しています。代表的なベンダーの公表事業内容を整理します。

freee

freee株式会社は公式サイトで、個人事業主と中小企業のバックオフィス自動化を中心に事業を展開していると説明しています。主なサービスは次のとおりです。

  • freee会計:個人事業主の確定申告・法人の経理を中心とするクラウド会計
  • freee人事労務:給与計算・労務管理・労働者名簿・賃金台帳
  • freee経理/freee支出管理:経費精算・支出管理

会計と人事労務のデータが連携する設計が特徴で、給与明細確定と会計仕訳の自動連動などが公式機能として提供されています。

サイボウズ

サイボウズ株式会社は、グループウェアと業務改善プラットフォームを中心に展開しています。

  • kintone:業務アプリ作成・業務改善プラットフォーム
  • Garoon:中堅・大企業向けグループウェア(スケジュール/ポータル/ワークフロー)
  • サイボウズ Office:中小企業向けグループウェア
  • メールワイズ:メール共有・顧客対応

Garoonとkintoneは標準で連携機能を持ち、サイボウズ公式によれば、クラウド版Garoonユーザーの約51%がkintoneを併用しています(2024年 サイボウズ ユーザーアンケート)。

その他の主要な国内SaaSベンダー(業務領域別)

業務領域主な国内ベンダー(公表情報より)
会計・経理マネーフォワード、弥生
人事労務SmartHR、ジョブカン
営業・名刺管理Sansan
HR・タレントマネジメントカオナビ
コミュニケーションChatwork

各社とも特定の業務領域に強みを持ち、メガベンダーとは基盤レイヤーが異なるため、競合関係というよりは「上層/下層」の関係にあるのが実態です。業務領域別の代表サービス全体像はSaaSの代表例(業務領域別)もご覧ください。

メガベンダーと業務特化SaaSの組み合わせ方

図3:メガベンダー基盤+業務特化SaaSの組み合わせ例 図3:メガベンダー基盤+業務特化SaaSの組み合わせ例 業務特化SaaS(上層) freee 会計・人事労務 kintone 業務改善PF SmartHR 人事労務 Salesforce CRM・SFA Sansan 名刺・営業DB それぞれが、いずれかのメガベンダー基盤の上で稼働するのが一般的 メガベンダー基盤(IaaS/PaaS・下層) Amazon Web Services (AWS) Google Cloud (GCP) Microsoft Azure (Azure) ※各SaaSの実際の稼働基盤は各社公式ドキュメント等をご確認ください。配置は概念図です。
図3:メガベンダー基盤+業務特化SaaSの組み合わせ例

NIST SP 800-145の3階層モデルが示すように、SaaSはIaaS/PaaSの上層に位置しています。実務上は、メガベンダーが提供するクラウド基盤(IaaS/PaaS)の上で、業務特化SaaSが動くという構造になっていることが一般的です。IPAが公開する「情報セキュリティ10大脅威」のクラウド章でも示されているとおり、SaaS事業者の多くはAWS・Azure・GCPといったIaaS/PaaS基盤を選択して自社サービスを展開しています。利用者にとっては「業務特化SaaSを選ぶ」だけでなく、「その裏側でどのメガベンダー基盤が使われているか」も間接的にセキュリティや可用性に影響します。

規模・段階別の組み合わせ方の例

規模典型的な組み合わせ
個人事業主・フリーランスfreee会計/Google Workspace(または Microsoft 365)の最小構成
中小企業(〜300名)Microsoft 365 または Google Workspace で全社の文書・メール/freee人事労務やSmartHR等で人事労務/サイボウズ等でグループウェア
中堅・大企業(300名超)Microsoft 365 または Google Workspace で全社統合/Microsoft Azure や AWS で自社開発/Garoon/Salesforce/Dynamics 365 等で業務領域別SaaSを併用

責任共有モデル

NIST SP 800-145に基づく「責任共有モデル」では、ユーザー責任とプロバイダ責任の境界が3階層で変わります。IaaSではOS以上がユーザー責任、PaaSではミドルウェア以上、SaaSではアプリ設定とデータのみがユーザー責任となるのが一般的です。詳細は契約・サービスごとに異なるため、各社の利用規約・SLA・データ処理の説明書類で確認することが推奨されます。クラウドの土台と上層の関係性についてはクラウドの土台と上層の関係もあわせてご覧ください。

個別サービス選定の注意点:一次情報の確認ポイント

主要SaaSサービスを選定する際は、公式ドキュメントによる一次情報の確認が出発点です。本記事の整理は2026年5月時点の公表情報に基づくものですが、各社のサービス内容・料金体系・データ処理地域・対応規制は随時更新されます。

確認すべき7つの一次情報

#確認項目一次情報の参照先
1サービスカテゴリ・提供範囲各社公式サイトの「サービス概要」「ご利用ガイド」
2データ処理地域(国内/海外)利用規約・データ処理に関する説明書類
3SLA(稼働率保証)公式のSLAページ
4料金プラン・契約期間・解約条件公式の料金ページ・利用規約
5ISMAP登録の有無デジタル庁ISMAPポータル(ismap.go.jp/csm)
6個人情報保護への対応個人情報保護委員会ガイドライン(ppc.go.jp)
7退職時のID・データ管理各サービスの管理者ガイド・運用マニュアル

とくにISMAPは政府情報システムが利用するクラウドサービスを評価・登録する制度で、登録の有無は公的機関や金融機関のSaaS選定における一つの目安となっています。

規模別の留意点

  • 個人事業主:ツールを増やし過ぎないこと。会計(freee/マネーフォワード/弥生等)+オフィス(Microsoft 365/Google Workspace)の2系統で完結することが多い
  • 中小企業:退職時の権限剥奪・データ持ち出し制御を運用ルールに含める。SSO(シングルサインオン)導入の検討も
  • 中堅・大企業:複数SaaSのID統合(IDaaS/Microsoft Entra ID/Google Cloud Identity 等)と、データ保護規制への全社対応設計

セキュリティ面のさらなる詳細はSaaSセキュリティの基礎をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. AWSとfreeeはどう違いますか?

A. クラウドサービスの「層」が異なります。AWS(Amazon Web Services)はIaaS/PaaSが主軸の大型クラウドプラットフォームで、サーバ・ストレージ・データベースなどのインフラを提供します。一方freeeは会計・人事労務などの業務特化SaaSで、完成したアプリケーションを直接利用する形式です。多くの場合、freeeのような業務SaaSはAWS・Azure・GCPなどのメガベンダー基盤の上で稼働しており、両者は「並列に比較するもの」ではなく「組み合わせて使うもの」と整理する方が実態に近いといえます。

Q. Microsoft 365とGoogle Workspaceはどちらを選ぶべきですか?

A. 本記事では個別ベンダーの優劣評価は行いません。判断材料として、社内で既に使用しているOfficeファイル形式、メール・カレンダーの既存運用、外部とのファイル共有頻度、料金プラン、データ処理地域、ISMAP登録の有無、AIアシスタント連携(Microsoft CopilotやGoogle Gemini for Workspace等)の必要性などを、両社の公式情報で比較することが推奨されます。AIアシスタントとして社内文書を扱う際の留意点はClaudeのようなAI連携機能も参考になります。

Q. SaaSにISMAP登録は必須ですか?

A. 法令で必須とされているわけではありません。ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)は、政府機関が原則として利用するクラウドサービスの評価・登録制度です。民間企業に対する強制力はありませんが、公共機関と取引のある事業者や、高いセキュリティ水準を求める業界では、登録されているサービスを優先する判断が増えています。

まとめ

主要SaaSサービスの整理は、「並列でランキング比較する」よりも「クラウドサービスの3階層モデルでベンダーの位置取りを理解する」ことが出発点です。AWS・Google・Microsoftのメガベンダー3社はIaaS/PaaS/SaaSのすべての層をカバーする大型プラットフォームで、freee・サイボウズに代表される国内ベンダーは業務特化SaaSとしてその上層に位置しています。両者は競合関係にあるのではなく、組み合わせて使うのが実態です。選定の際は公式情報による一次情報の確認を出発点とし、ISMAP登録・個情委ガイドライン・規模別の留意点を踏まえて、自社の業務に適した組み合わせを設計することが推奨されます。クラウドを含むデジタル化全般の進め方はDX推進の全体像もご覧ください。

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参考文献

本記事は2026年5月時点の各社公開情報および公的資料に基づいて整理したものです。最新のサービス内容・料金・契約条件は各社の公式サイト・利用規約・公式ドキュメントをあらためてご確認ください。本記事は個別ベンダーの推奨・優劣評価・投資判断を提供するものではありません。

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