SaaS業界への転職ガイド|年収・職種・未経験ルートを公的統計で解説

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  • 「SaaS業界」はJSIC独立分類なし、情報通信業統計で読む
  • 教育訓練給付は最大70%補助、未経験から学べる
  • エージェントは厚労省「人材サービス総合サイト」で許可番号確認

「SaaS業界に転職したいが、年収はどれくらいか」「未経験でも入れるのか」「どの転職エージェントを使えばいいのか」──SaaS(Software as a Service)の市場拡大に伴い、こうした疑問を持つ転職希望者が増えています。ただし、「SaaS業界」という分類は日本標準産業分類(JSIC)に存在せず、求人統計上は「情報通信業」「ソフトウェア業」などに分散しているため、民間メディアの数字を鵜呑みにすると判断を誤りかねません。本記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」「人材サービス総合サイト」「教育訓練給付制度」など公的統計・制度のみを一次情報として、SaaS業界への転職を検討する際の判断軸を整理します。特定エージェント・特定企業の推奨は一切行いません。

目次

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  1. SaaS業界の求人動向|「情報通信業」として読み解く市場規模
  2. SaaS業界の主要職種と年収目安|5職種の特徴
  3. SaaS転職エージェントの活用|厚労省「許可事業者リスト」の使い方
  4. 未経験からSaaS業界に入る方法|教育訓練給付制度の活用
  5. SaaS転職の注意点|職業安定法・個人情報保護法の観点
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 参考文献
  9. 関連記事

SaaS業界の求人動向|「情報通信業」として読み解く市場規模

「SaaS業界の求人数」をそのまま示す公的統計はありません。これは日本標準産業分類(JSIC)に「SaaS業」という独立した分類コードが存在せず、SaaS企業の多くが「情報通信業(大分類G)」のうち「ソフトウェア業」「インターネット附随サービス業」「情報処理・提供サービス業」に分散して登録されているためです。求人動向を把握する際は、これらを総体として読む必要があります。

図1:「SaaS業界」を統計上どう読むか SaaS業界=3つの統計カテゴリの重なり 情報通信業 (JSIC大分類G) ソフトウェア業 (中分類39) サブスク型ビジネス (民間調査による分類) SaaS 業界
図1:「SaaS業界」を統計上どう読むか(出典:日本標準産業分類をもとに編集部作成)

市場全体の動向については、総務省「令和7年版 情報通信白書」が情報通信産業の市場規模・雇用者数を継続的に公表しており、情報通信業は他産業と比較して人材需要が高水準で推移していることが確認できます。また、厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」では「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率を月次で公表しており、慢性的な人材不足が続いている状況が読み取れます。なお、「国内SaaS市場規模は◯兆円」といった数字は、矢野経済研究所・IDC Japan・富士キメラ総研などの民間調査会社による推計値であり、公的統計の数字ではない点に注意が必要です。

転職市場の実態として押さえておきたいのは、「SaaS企業」の求人は規模・成熟度によって大きく性格が異なる点です。具体的には、上場済みの大手SaaS企業(給与・福利厚生が安定)、シリーズB〜C前後のスタートアップ(ストックオプション中心の報酬設計)、シードフェーズの小規模スタートアップ(経験値重視・採用人数少)の3層に大別され、求められるスキルセットも異なります。求人票だけでは判別しづらいため、後述の「SaaS転職エージェントの活用」で示す公的情報の確認手順を踏むことが重要です。

SaaS業界の主要職種と年収目安|5職種の特徴

SaaS業界の職種は、いわゆる「The Model型」と呼ばれる機能分業が一般的です。これは、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセスの順に顧客接点を分業する設計で、米国SaaS企業を中心に標準化されました。日本のSaaS企業もこの分業を採用するケースが多く、未経験から入る際の入口職種としても機能しています。

図2:SaaS業界の5職種マップ SaaSの典型的な職種分業(The Model型) 顧客の購買プロセスに沿って役割を分業 マーケティング リード獲得 展示会・広告・SEO インサイドセールス 商談化(電話・メール) 未経験者の入口の1つ フィールドセールス 商談・受注 既存営業経験が活きる カスタマーサクセス 継続利用・解約防止 未経験者の入口の1つ プロダクト全体を支える横断職種 プロダクトマネージャー 機能企画・ロードマップ 中途人材不足が顕著 (厚労省「労働経済動向調査」) エンジニア/デザイナー 開発・UI/UX 情報処理技術者の求人倍率は 全産業平均より継続的に高水準
図2:SaaS業界の5職種マップ(出典:厚労省「労働経済動向調査」「一般職業紹介状況」をもとに編集部作成)

年収レンジについて、SaaS業界に限定した公的統計は存在しません。最も近い参照値は、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」が公表する「情報通信業(産業大分類G)」の所定内給与額です。同調査は毎年6月分の所定内給与額を産業別・年齢階級別・企業規模別に集計しており、情報通信業は他産業と比較しても高水準のグループに位置することが継続的に確認できます。一方、職種別の年収は産業全体の数値より幅広く、同じ「SaaS企業のフィールドセールス」でも、固定給比率・インセンティブ設計・ストックオプションの有無によって実収入が大きく変動します。求人票の年収表示だけで判断せず、固定給とインセンティブの比率を必ず確認することが重要です。

職種役割未経験からの参入必要なスキル
マーケティングリード獲得・ブランド構築△(広告・SEO経験があれば可)デジタルマーケ知識/分析力
インサイドセールス電話・メールで商談化◯(営業経験不問の求人あり)コミュニケーション/PCスキル
フィールドセールス対面・オンラインで商談・受注△(法人営業経験者が中心)提案営業/業界知識
カスタマーサクセス継続利用支援・解約防止◯(CS・サポート経験者から登用)顧客折衝/業務理解
プロダクトマネージャー機能企画・優先順位付け×(事業企画・PdMの経験必須)事業企画/開発理解
エンジニア/デザイナー開発・UI/UX設計△(学習+ポートフォリオで可)プログラミング/UI/UX
表1:SaaS業界の主要職種と未経験参入の難易度(編集部作成)

SaaS転職エージェントの活用|厚労省「許可事業者リスト」の使い方

転職エージェントを利用する際、もっとも重要なのは「有料職業紹介事業の許可を受けた事業者かどうか」を自分で確認することです。職業安定法第30条は、有料職業紹介事業を行うには厚生労働大臣の許可(5年ごとの更新制)が必要と定めており、許可を受けた事業者には「13-ユ-XXXXXX」形式の許可番号が付与されます。許可なく職業紹介を行うと同法第64条により処罰対象となります。

許可事業者の情報は、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」で無料公開されています。事業所名・所在地での検索のほか、「過去1年間の苦情件数」「返戻金実績」「常用雇用への移行人数」「求職者の延べ人数」なども確認できます。SaaS業界に特化していると謳うエージェントを利用する場合でも、まず以下の3点を必ず公的サイトで確認することを推奨します。

  • 許可番号の存在:「人材サービス総合サイト」(https://www.jinzai-sougou.go.jp/)で事業所名を検索し、「13-ユ-XXXXXX」形式の許可番号が表示されることを確認
  • 取扱職種の範囲:同サイト上で取扱職種(営業職/技術職/事務職など)と専門性が表示される。SaaS関連の実績があるかを判断する材料になる
  • 苦情件数と行政指導歴:同サイトに掲載される過去1年間の苦情件数を確認し、極端に多い事業者は避ける判断材料とする

また、エージェント登録時には個人情報(氏名・連絡先・職歴・年収など)の取扱いについて、個人情報保護法に基づく利用目的の明示と同意取得が義務付けられています(個情委「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。「どの企業に職務経歴書を渡すか」の事前同意の有無を確認し、本人の同意なく第三者(求人企業)に個人情報を提供する事業者は職業安定法・個人情報保護法の両方の観点から問題があると判断できます。

未経験からSaaS業界に入る方法|教育訓練給付制度の活用

未経験からSaaS業界に入る場合、最初に検討すべき公的支援は「教育訓練給付制度」です。これは雇用保険の一般被保険者または離職者(離職後1年以内)を対象に、厚生労働大臣が指定する講座を受講・修了した場合に受講費用の一部を支給する制度で、3つの区分があります。

区分給付率上限額対象講座の例
一般教育訓練給付受講費用の20%10万円ITパスポート対策/簿記/Webデザイン基礎など
特定一般教育訓練給付受講費用の40%(資格取得+就職で50%)20万円(拡充時25万円)IT短期講座/業務独占資格関連など
専門実践教育訓練給付受講中50%+修了・就職で20%追加(最大70%)年40万円+追加年16万円(最長4年)第四次産業革命スキル習得講座/専門職大学院/一部の長期プログラミング講座
表2:教育訓練給付制度の3区分(出典:厚労省「教育訓練給付制度」)

SaaS業界への転職を目指す場合、エンジニア志望者は「専門実践教育訓練給付」の対象である「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)」を、営業・CS志望者は「一般教育訓練給付」の対象であるIT基礎・SaaSビジネス理解関連の講座を検討するのが現実的です。対象講座は厚労省「教育訓練講座検索システム(マナパス/JOBTAG)」で検索できます。受講前にハローワークで「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、ジョブ・カードを作成するなどの手続きが必要なため、講座開始の1〜2か月前から準備を始めることを推奨します。

図3:未経験からSaaS業界に入る3ステップ 未経験からSaaS業界に入る3ステップ 学ぶ 教育訓練給付制度 で受講費用20〜70% 補助を受けて学習 (厚労省指定講座) 入口職種で実務 インサイドセールス /カスタマーサクセス /カスタマーサポート で1〜2年の経験 専門職へ フィールドセールス /PdM/エンジニア など専門領域へ キャリアアップ ※ 一般的なキャリアパス例。順序や期間は個人の経験・志向により異なる
図3:未経験からSaaS業界に入る3ステップ(編集部作成)

もう一つの公的支援が「ハロートレーニング(公的職業訓練)」です。離職者向け(雇用保険受給者向け)の「公共職業訓練」と、在職者・求職者向けの「求職者支援訓練」があり、IT分野ではプログラミング基礎・Webデザイン・ネットワーク技術などのコースが各都道府県で開講されています。受講料は原則無料(教材費等の自己負担あり)で、雇用保険受給中であれば失業給付を受けながら通えるのが特徴です。詳細は最寄りのハローワークで確認できます。

SaaS転職の注意点|職業安定法・個人情報保護法の観点

SaaS業界に限らず転職活動全般に共通する注意点ですが、特にSaaS業界では「ストックオプション」「成果連動報酬」「リファラル採用」などの特有の報酬・採用形態があるため、関連法令を踏まえた書面確認が重要になります。

第一に、求人票と労働条件通知書の整合性を必ず確認します。職業安定法第5条の3は、求人企業・職業紹介事業者に対し、賃金・労働時間・契約期間などの労働条件を明示する義務を定めています。さらに、入社時には労働基準法第15条に基づき、労働条件通知書(または雇用契約書)が交付されます。求人票・面接時の口頭説明・労働条件通知書の3つの記載に食い違いがないかを必ず突き合わせ、固定給とインセンティブの比率、年収の算出根拠(みなし残業の時間数を含むかなど)を文書で確認することが重要です。

第二に、ストックオプションやRSU(譲渡制限付株式ユニット)の取り扱いを書面で確認します。SaaSスタートアップでは現金報酬を抑えてストックオプションで補う設計が一般的ですが、付与条件・行使条件・上場時の取扱いは契約書次第で大きく異なります。口頭説明だけで判断せず、ストックオプション付与契約書の写しを入社前に確認させてもらうことを推奨します。

第三に、リファラル採用(社員紹介経由の応募)やダイレクトリクルーティングの場合の個人情報取扱いを確認します。個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、個人情報の利用目的の明示と本人同意を求めています。SNS経由で職務経歴をスカウトされた場合、自分の情報が「どの企業に・どの範囲で・どのくらいの期間」共有されるのかを書面で確認することが、後のトラブル防止につながります。

よくある質問

Q. SaaS業界の平均年収はいくらですか?

A. 「SaaS業界の平均年収」という公的統計は存在しません。最も近い参照値は厚労省「令和6年賃金構造基本統計調査」の「情報通信業(産業大分類G)」の所定内給与額です。同業界は他産業と比較して高水準のグループに位置しますが、職種・企業規模・固定給とインセンティブの比率によって実収入は大きく変わります。求人票の年収表示の内訳を必ず確認してください。

Q. 未経験でもSaaS業界に転職できますか?

A. 職種によります。インサイドセールス・カスタマーサクセス・カスタマーサポートは未経験可の求人が比較的多く、入口職種として機能しています。エンジニア職は学習+ポートフォリオ(GitHubでの成果物公開など)が必要です。教育訓練給付制度(厚労省)の「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)」を活用すると、受講料の最大70%が補助されます。

Q. SaaS転職に強いエージェントは?

A. 本記事では特定エージェントの推奨は行いません。厚労省「人材サービス総合サイト(https://www.jinzai-sougou.go.jp/)」で、有料職業紹介事業の許可番号・取扱職種・苦情件数・返戻金実績などを無料で検索できます。複数のエージェントを比較する際は、まず公的サイトで許可番号と取扱職種を確認することを推奨します。

Q. SaaS業界は何歳まで転職できますか?

A. 年齢制限を理由とした求人募集は、雇用対策法第10条により原則禁止されています(一部の例外を除く)。実態として、未経験職種は20〜30代の求人が中心ですが、業界経験のある即戦力人材(プロダクトマネージャー・エンジニアリングマネージャーなど)は40代以降の転職事例も多くあります。年齢よりも、求人企業が求めるスキル要件と自身の実績をどう接続できるかが判断軸になります。

まとめ

SaaS業界への転職は、職種・企業フェーズ・報酬設計の組み合わせが多様で、民間メディアの平均値だけでは判断できません。判断軸を明確にするには、本記事で参照した公的情報源──総務省「情報通信白書」(市場動向)、厚労省「賃金構造基本統計調査」(年収レンジ)、厚労省「人材サービス総合サイト」(エージェントの許可情報)、厚労省「教育訓練給付制度」(未経験者の学習支援)──を活用することが有効です。特定のエージェント・特定の企業に依存せず、自分で公的情報を確認したうえで判断する姿勢が、長期的なキャリア形成において重要になります。

今日からできる3つのこと

  1. 厚労省「人材サービス総合サイト」で気になる転職エージェントの許可番号・取扱職種を検索する
  2. 厚労省「教育訓練講座検索システム(マナパス/JOBTAG)」で、自分の志望職種に合う給付対象講座を確認する
  3. 最寄りのハローワークに問い合わせて「訓練前キャリアコンサルティング」の予約方法を確認する

参考文献

  • 総務省「令和7年版 情報通信白書」
    https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jakunensha/index_00007.html
  • 厚生労働省「人材サービス総合サイト」
    https://www.jinzai-sougou.go.jp/
  • 厚生労働省「教育訓練給付制度」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
  • 厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/kyushokusha_shien/index.html
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
    https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
  • 職業安定法(e-Gov 法令検索)
    https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000141

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