経理SaaSとは?従来型ソフトとの違いと選び方|連結会計・経理BPOとの使い分けも解説

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  • 経理SaaSの意味と、インストール型・オンプレミス型ソフトとの違いがわかる
  • インボイス制度・電子帳簿保存法を背景にした導入の必要性と、単体法人・グループ会社それぞれの選び方がわかる
  • 経理BPOとの使い分けと、導入でよくある失敗パターンの回避策がわかる

経理SaaS(けいりサース)とは、会計・請求・経費精算などの経理業務を、インターネット経由のクラウドサービスとして利用する仕組みのことです。パソコンにソフトをインストールする従来型の会計ソフトと違い、ブラウザからどこでも同じデータにアクセスでき、法改正への対応も提供会社が自動でアップデートする点が大きな特徴です。

一方で、「従来型ソフトから乗り換えるべきか判断できない」「単体の会社で使うのか、子会社を含めたグループで使うのかで何が変わるのか分からない」「SaaSを導入するのと、経理業務そのものを外部に委託するのとでどちらがよいのか」と迷う担当者は少なくありません。この記事では、経理SaaSの比較の考え方、従来型ソフトとの違い、インボイス制度と電子帳簿保存法を背景にした導入の必要性、単体法人とグループ会社それぞれの選び方、経理BPOとの使い分け、よくある失敗パターンまでを、国税庁などの公的資料をもとに整理します。

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Q1. 会社の規模・グループ構成に近いのは?

目次

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  1. 経理SaaSの比較|単体導入か連結会計まで見据えるか
  2. 経理SaaSとは|従来型ソフト・オンプレミスとの違い
  3. 経理SaaS導入が広がる背景|インボイス制度・電子帳簿保存法
  4. 経理SaaSの選び方
  5. 経理BPO委託との違い|SaaS導入とアウトソーシングの使い分け
  6. 経理SaaS選定でよくある失敗パターン
  7. 経理SaaS導入の効果を数値で確認する
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ
  10. 参考文献

経理SaaSの比較|単体導入か連結会計まで見据えるか

経理SaaSを比べるときは、まず「自社1社の経理を効率化したいのか」「子会社を含むグループ全体の数字をまとめたいのか」で候補を分けると選びやすくなります。前者は日々の仕訳や決算書の作成を担う単体向けのクラウド会計、後者は各社の決算データを集めて連結財務諸表を作る連結会計システムが中心になります。ここでは、同じシリーズの中で役割が異なる2サービスを、比較の一例として紹介します。

比較項目 マネーフォワード クラウド会計 マネーフォワード クラウド連結会計
提供会社 株式会社マネーフォワード 株式会社マネーフォワード
位置づけ 単体法人・個人事業主向けのクラウド会計ソフト グループ会社向けのクラウド型連結会計システム
向いているケース 日々の仕訳入力・記帳・決算書作成を自動化し、経営状況をリアルタイムで把握したい 子会社(海外を含む)の財務データを集め、連結決算の手作業と属人化を減らしたい
主な強み 2,400社以上の金融機関等との連携で明細を自動取得。AIが仕訳を学習して勘定科目を提案。改正電子帳簿保存法・インボイス制度に対応し、法令改正時も無料でアップデート 子会社が入力したデータをクラウドで一元管理。自社サーバー不要で、最短1ヶ月で導入した事例あり。他社会計システムのデータもExcelのまま取り込み可能。日本語と英語の切り替えや外貨換算に対応
サポート チャット・メールのサポート、動画や学習ページ、データ移行や初期設定の支援 初期設定の段階から専任担当者が支援し、連結決算の進め方も相談できる
留意点 AIが誤った仕訳を学習するおそれがあるため、入力内容の確認が必要。効果を高めるには請求書・経費・給与など他のシリーズ製品との連携も検討が必要 個社ごとのシステムカスタマイズには対応しない。機能アップデートは全ユーザー一律で、時期を選べない。料金は利用プランや子会社数により変わるため問い合わせが必要

選び分けの目安は明快です。1社の経理を効率化したいなら、まずは単体向けのクラウド会計で日々の記帳と決算書作成を自動化します。子会社があり、決算期ごとに各社からExcelで数字を集めて連結精算表を作っているなら、連結会計システムの導入を検討する段階です。両者は競合するものではなく、グループ各社がクラウド会計で記帳し、親会社が連結会計システムでまとめるという組み合わせで使うこともできます。

なお、どちらのサービスにも留意点があります。クラウドサービスは提供会社が一律に機能を更新する仕組みのため、自社独自の画面や帳票に作り変えたい企業には向かない場合があります。「自社の業務をサービスに合わせられるか」を導入前に確認しておきましょう。グループ会社向けの選び方は、後半のグループ会社・複数拠点の選定軸で詳しく解説します。個人事業主向けのソフトを幅広く比べたい方は個人事業主向け会計ソフトおすすめ7選(全12選)を比較も参考になります。

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワード クラウド会計
出典:biz.moneyforward.com

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

他システムの移行や機能性重視の方におすすめ!

全体評価
4.2 (14件)

GOOD

ここがおすすめ!

  • 面倒な帳簿・レポート・決算書を自動作成
  • 金融機関の入出金データを自動取得してリアルタイムで数字を共有
  • 他サービスとの連携で勤怠管理やマイナンバー管理が可能
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ここが少し気になる…

  • ある程度の簿記知識が必要な場合も
評価・口コミ(一部抜粋)
4.2
  • 最も大きく解決された課題は、他システムとのデータ連携における手間の大幅な削減です。給与計算や経費精算、販売管理といった各システムから自動で仕訳データが取り込まれるようになったため、手動での入力作業が不要になり、ヒューマンエラーの削減と業務効率の向上を実感しております。 これにより、月次決算の早期化にも貢献し、経営状況をより迅速に把握できるようになった点も大きなメリットです。

  • 業務の効率かと、人的なミスが減ったことです。銀行やカードの自動連携により、インプットがスムーズかつミスがありません。一行一行入力していた頃が信じられないほど、今ではあの頃の時間がもったいなかったと感じます。また、その入力に間違いがないかをチェックするための人や時間、修正の手間まで削減できるので、アルバイト1人分の人件費削減につながりました。

  • "税理士事務所が導入してる関係上でマネーフォワード クラウド会計を利用してますが、会計業務が楽になりました。経費が全て一覧で確認でき、そして自動で経費計算もしてくれる優れたサービスだと思います。 会計業務が追いつかない会社様はこちらのシステムを導入する事で簡単に活会計業務の時間削減ができオススメです。"

実際に使ってみたレビュー記事はこちら

【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】

数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。

経理SaaSとは|従来型ソフト・オンプレミスとの違い

経理SaaSと従来型ソフトの違いは、「ソフトとデータがどこにあるか」と「誰が保守・更新するか」の2点にあります。SaaS(Software as a Service)は、提供会社のサーバー上で動くソフトをインターネット経由で利用する形態で、利用者は月額や年額の利用料を支払って使います。

従来、経理の現場では、パソコン1台ごとに会計ソフトをインストールする「インストール型(パッケージ型)」や、自社のサーバーにシステムを構築する「オンプレミス型」が主流でした。これらはデータが社内にあるため、社外からアクセスしにくく、法改正のたびにバージョンアップ版の購入やサーバーの改修が必要になるという負担がありました。経理SaaSは、この保守と更新の役割を提供会社が担う点が根本的に異なります。

比較項目 経理SaaS(クラウド型) インストール型ソフト オンプレミス型システム
データの保管場所 提供会社のサーバー 各パソコン 自社サーバー
利用できる場所 インターネット環境があればどこでも インストールしたパソコンのみ 原則として社内ネットワーク内
法改正への対応 提供会社が自動でアップデート 新バージョンの購入・更新が必要な場合がある 自社またはベンダーで改修が必要
費用の考え方 初期費用を抑え、利用料を継続して支払う 購入時にまとまった費用、更新時に追加費用 構築費と保守費が大きくなりやすい
カスタマイズ性 低め(業務をサービスに合わせる) 低め 高い

経理SaaSの主なメリットは3つあります。1つ目は、銀行口座やクレジットカード、POSレジなどと連携して取引明細を自動で取り込めるため、手入力と転記ミスが減ることです。2つ目は、本社・拠点・在宅勤務の担当者や顧問税理士が、同じデータを同時に確認できることです。紙の資料やUSBメモリーでのデータ受け渡しが不要になり、月次決算の早期化につながります。3つ目は、インボイス制度や電子帳簿保存法のような制度変更に、利用者側で改修をしなくても追従できることです。

一方でデメリットもあります。カスタマイズの自由度が低いため、独自の帳票や承認ルールを細かく作り込んでいる企業では、業務の進め方を見直す必要があります。また、利用を続ける限り利用料が発生し続けるため、数年単位での総コストで比べることが大切です。インターネット接続が前提になる点、データを社外のサーバーに預ける点についても、提供会社のセキュリティ対策や障害時の対応を事前に確認しておきましょう。

なお、「経理SaaS」は会計ソフトだけを指す言葉ではありません。請求書の発行、経費精算、給与計算、債権管理、証憑(しょうひょう)の保管など、経理に関わる業務ごとにクラウドサービスがあり、それらを組み合わせて使うのが一般的です。中心になる会計ソフトを決めたうえで、周辺業務のサービスとどうつなぐかを設計することが、経理SaaS活用の出発点になります。

経理SaaS導入が広がる背景|インボイス制度・電子帳簿保存法

経理SaaSの導入が広がった大きなきっかけは、2023年10月に始まったインボイス制度と、電子取引データの電子保存を求める電子帳簿保存法への対応です。どちらも紙とExcel中心の経理では確認作業が大きく増えるため、制度対応を機にクラウド化を進める企業が増えています。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として登録番号などが記載された適格請求書の保存を求める制度です。国税庁の特集ページでも、制度の概要や登録の手続き、よくある質問が公開されています。経理の現場では、受け取った請求書に登録番号が記載されているか、その番号が有効かを確認する作業が発生し、取引先が多い企業ほど負担が大きくなりました。経理SaaSの中には、証憑を読み取って登録番号を確認したり、インボイスの要件に沿って仕訳を作成したりする機能を持つものがあります。

電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。区分は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つで、このうち電子メールやWebサイトで受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、2024年1月以降、原則として電子データのまま保存することが求められています。保存の際には、改ざんを防ぐ措置や、日付・金額・取引先で検索できる状態にすることなどの要件があります。国税庁は一問一答や取扱通達の解説を公開しているため、自社の運用が要件を満たしているかは、これらの一次情報で確認しましょう。

制度 経理の現場で増えた作業 経理SaaSで期待できる対応
インボイス制度 登録番号の確認、税率ごとの消費税額の確認、適格請求書の保存 証憑の読み取り、要件に沿った仕訳、消費税申告書の作成支援
電子帳簿保存法(電子取引) 電子で受け取った書類を印刷せずに保存、検索できる状態の維持 データのまま保存、日付・金額・取引先での検索、変更履歴の管理
電子帳簿保存法(スキャナ保存) 紙で受け取った書類のスキャンと保存要件の確認 スキャンデータの取り込みと保存、原本との対応付け

ただし、経理SaaSを導入しただけで自動的に制度の要件を満たせるわけではありません。例えば、担当者がメールで受け取った請求書をローカルのフォルダに保存したままでは、システムに取り込まれず、要件を満たせないことがあります。どの書類を、誰が、いつ、どこに取り込むかという社内ルールを決め、事務処理規程を整えることもセットで考える必要があります。本記事の制度に関する記述は一般的な情報提供であり、個別の税務判断については顧問税理士や所轄の税務署に確認してください。

制度対応に加えて、人手不足も導入を後押ししています。経理は専門性が高く、担当者が1人しかいない中小企業も珍しくありません。退職や休職で業務が止まるリスクを減らすため、手順をシステムに乗せて属人化を解消したいというニーズも、経理SaaSが選ばれる理由の1つです。

経理SaaSの選び方

経理SaaSは、「単体法人か、グループ会社か」「既存システムとどうつなぐか」の2つの観点で選ぶと失敗しにくくなります。機能の多さや知名度だけで決めると、自社の規模や組織構成に合わず、結局Excelでの集計が残るケースがあるためです。

単体法人の選定軸(記帳と決算の効率・コスト)

単体の法人や個人事業主が経理SaaSを選ぶときは、日々の記帳と年1回の決算・申告がどれだけ楽になるかが最も重要です。具体的には、利用している銀行やクレジットカードと連携できるか、仕訳の自動提案がどの程度使えるか、決算書や消費税申告書の作成までシステム内で完結するかを確認します。個人事業主の場合は、確定申告書の作成に対応しているかも欠かせません。

コストについては、月額の利用料だけでなく、請求書発行や経費精算など周辺業務のサービスを追加したときの総額で比較しましょう。また、顧問税理士が同じサービスに対応しているかどうかも重要です。税理士がクラウド上で直接データを確認できれば、月次の資料送付や質問のやり取りが減り、決算期の負担も軽くなります。無料トライアルがあるサービスでは、実際に自社の口座を連携し、1か月分の仕訳を試しに作成してみると、自動化される範囲が具体的に分かります。

グループ会社・複数拠点の選定軸(内部統制・連結決算)

子会社やグループ会社がある企業では、単体の記帳効率に加えて、グループ全体の数字をいかに早く正確に集めるかが選定の中心になります。一般に、上場企業などは連結財務諸表の作成・開示が求められ、非上場でも金融機関への説明や経営判断のためにグループ全体の業績を把握したいという企業は少なくありません。

連結決算の作業は、各社の決算データの収集、勘定科目の組み替え、グループ内取引の相殺消去、外貨換算など工程が多く、Excelで管理していると、最新版がどれか分からなくなったり、特定の担当者しか処理できなくなったりしがちです。そのため、グループ会社向けには次の観点で選びます。

  • 子会社が使っている会計システムを変えずに、データを集められるか(API連携やExcelの直接取り込み)
  • 各社の勘定科目を連結科目へ変換する作業を効率化できるか
  • 海外子会社がある場合、外貨換算や英語での入力に対応しているか
  • 複数人で同時に作業でき、変更履歴を追えるか(内部統制と属人化の防止)
  • 連結決算に不慣れな場合、初期設定や業務の進め方までサポートを受けられるか

M&Aで子会社が増える予定がある企業や、子会社ごとに会計ソフトがバラバラな企業では、特に「既存システムのまま集められるか」が重要です。例えばマネーフォワード クラウド連結会計は、同社のクラウド会計とはAPIで連携し、その他の会計システムのデータはExcelのまま取り込めるため、グループ会社が異なるシステムを使っていても柔軟にデータを集められます。初期設定から専任担当者の支援を受けられるので、初めて連結決算に取り組む企業でも始めやすい設計です。一方で、個社ごとのカスタマイズには対応していないため、独自の連結帳票を作り込みたい場合は事前に確認が必要です。

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド連結会計

マネーフォワード クラウド連結会計
出典:biz.moneyforward.com

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド連結会計

短期間かつ低コストで導入したい中堅から上場企業におすすめ

全体評価
5 (1件)

評判・口コミを紹介

優れたUI/UXの効果として、メンバーの早期戦力化も挙げられます。教育コストが抑えられると同時にメンバーの成長も加速しており、2023年4月に経理未経験で入社をしたメンバーもすでに問題なく使いこなせています。それにより、既存メンバーの業務時間も大幅に削減されました。

連結会計の導入事例(株式会社日輪)|株式会社マネーフォワード
GOOD

ここがおすすめ!

  • クラウドなので経営状況を「リアルタイム」で確認でき、同時操作も行える
  • シンプルで誰でも扱いやすい設計により、コミュニケーションコストを削減
  • WindowsはもちろんMacにも対応し、最短1ヶ月での導入が可能
MORE

ここが少し気になる…

  • 「マネーフォワード クラウド会計」及び「マネーフォワード クラウド会計Plus」以外の会計システムは今後API連携の予定
評価・口コミ(一部抜粋)
5
  • 連結決算業務の工数を約3分の1に削減できました。Excelでの手作業に比べて、圧倒的な効率化を実感しています。 さらに、システム導入の過程で過去の連結決算における入力ミスも発覚し、正確な数値に修正できたことは予想外の成果でした。専門知識を持つ担当者がいなくても、正確かつ効率的に連結決算が行えるようになった点が、本サービスの最大の貢献だと感じています。

既存システムとの連携(データの点在化を防ぐ)

経理SaaSを複数導入すると、請求書は請求書サービス、経費は経費精算サービス、給与は給与計算サービスと、データが別々の場所に点在しやすくなります。サービス同士がつながっていないと、各サービスから出力したデータを会計ソフトへ手で入力し直すことになり、二重入力と不整合の原因になります。

これを防ぐには、選定の段階で「どのデータを、どのサービスから、どの形式で会計ソフトに渡すか」を一覧にしておくことが有効です。同じシリーズの製品でそろえる方法、API連携に対応したサービスを選ぶ方法、iPaaS(アイパース)と呼ばれるサービス間連携の仕組みを使う方法などがあります。販売管理や生産管理などの基幹システムがある場合は、仕訳データをCSVで受け渡せるかどうかも確認しておきましょう。連携方法が決まっていないまま導入すると、紙とExcelの時代と同じ手作業が、画面の中で続くだけになってしまいます。

経理BPO委託との違い|SaaS導入とアウトソーシングの使い分け

経理SaaSが「経理を自社で行うための道具」であるのに対し、経理BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は「経理業務そのものを外部の専門会社に任せる」選択肢です。どちらが優れているかではなく、社内に経理を担う人がいるか、どこまでを社内に残したいかで使い分けます。

比較項目 経理SaaSを導入して自社運用 経理BPOで外部委託
作業する人 自社の経理担当者 委託先の専門スタッフ
向いているケース 担当者がいて、手作業を減らして月次を早めたい 担当者が不足している、専門知識が必要な業務を任せたい
社内に残るノウハウ 残りやすい 委託範囲によっては残りにくい
数字の見えやすさ リアルタイムで確認しやすい 委託先からの報告のタイミングに左右される
注意点 導入後の運用ルールづくりと定着が必要 委託範囲の明確化、個人情報を含むデータの取扱いの確認が必要

実務では、両者を組み合わせるケースが増えています。例えば、日々の記帳と経営数字の確認は経理SaaSで自社に残し、専門知識が必要で毎月の作業量が多い給与計算や年末調整だけを外部に委託する方法です。経理SaaSでデータが整理されていれば、委託先との資料のやり取りもクラウド上で完結しやすくなります。逆に、紙とExcelのまま委託すると、資料の準備自体が社内の負担として残りがちです。

委託先を選ぶ際は、委託できる業務範囲、使用するクラウドサービスへの対応、情報セキュリティの体制、契約終了時のデータの引き継ぎ方法を確認しましょう。経理BPOで委託できる範囲や移行の手順は経理BPOとは|委託できる範囲・給与計算・移行手順を整理、給与計算だけを切り出す場合の考え方は給与計算代行(アウトソーシング)とは?依頼できる内容や費用相場で詳しく解説しています。

経理SaaS選定でよくある失敗パターン

経理SaaSの導入でつまずく原因は、「料金だけで選ぶ」「単体向けで連結まで賄おうとする」「運用ルールを決めずに導入する」の3つに集約されます。いずれも導入前の確認で防げるものです。スイッチを切り替えると、それぞれの回避策を確認できます。

よくある失敗 回避策

失敗パターン1:月額料金の安さだけで選んだ。使っている銀行や周辺サービスと連携できず、明細の手入力が残った。

失敗パターン2:単体向けソフトだけで連結まで賄おうとした。子会社の数字は結局Excelとメールで集め、決算期に作業が集中した。

失敗パターン3:運用ルールを決めずに導入した。電子で受け取った請求書が担当者のフォルダに散らばり、保存要件の確認に追われた。

3つの失敗に共通するのは、「ツールを入れれば経理が変わる」と考えてしまうことです。経理SaaSはあくまで道具であり、効果を出すには、どの業務をシステムに任せ、どこを人が確認するかという業務の設計が欠かせません。導入の検討段階から、実際に入力する担当者と顧問税理士を巻き込んでおくと、導入後に「使いにくい」「結局手作業が残る」という事態を防ぎやすくなります。

もう1つ見落とされやすいのが、切り替えの時期です。会計期間の途中で乗り換えると、旧システムと新システムにデータが分かれ、決算時の突き合わせが煩雑になります。期首に合わせて切り替えるか、期中に切り替える場合は期首からの残高と仕訳をインポートし、最初の1か月は旧システムの結果と並行して確認すると、設定ミスを早く見つけられます。

経理SaaS導入の効果を数値で確認する

経理SaaSの導入効果は、「会社・拠点の数×1拠点あたりの手入力・転記・集計の時間」でおおまかに見積もれます。以下のシミュレーターで、自社の会社・拠点の数と、1拠点あたり毎月どれくらいの時間を手作業に使っているかを入力し、削減できる時間の目安を試算してみてください。

簡易シミュレーター:経理SaaSで削減できる手作業の時間を試算

現在の手作業にかかる時間は毎月約60時間です。
経理SaaSを導入すると、毎月約24時間、年間で約288時間の削減が見込めます。
※入力値と削減割合をもとにした簡易計算です。実際の効果は、取引量、連携できる金融機関やサービスの範囲、運用ルールによって異なります。

試算で出た時間は、経理担当者がそのまま別の業務に使える時間です。削減した時間を、月次決算の早期化や資金繰りの分析、予算と実績の比較といった経営判断を支える業務に振り向けることが、経理SaaS導入の本当の効果といえます。拠点や子会社の数が多いほど削減できる時間は大きくなるため、グループ会社がある企業は連結処理まで含めて試算してみるとよいでしょう。

導入費用の負担を抑える方法として、公的な支援制度もあります。中小企業基盤整備機構が事務局を務めるデジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的に、業務効率化やDXに向けたITツールの導入を支援する補助金です。対象となるのは事前に事務局の審査を受けて登録されたITツールに限られるため、検討中のサービスが登録されているか、公募要領と対象期間を公式サイトで確認しましょう。また、経済産業省のDX認定制度は、デジタル技術による変革に向けた準備が整っている事業者を国が認定する制度で、経理のデジタル化を全社のDX計画の一部として位置づける際の指針になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 経理SaaSと会計ソフトは何が違うのですか?

A. 経理SaaSは、インターネット経由で利用するクラウド型の経理サービス全般を指します。会計ソフトもその1つで、クラウド型の会計ソフトは経理SaaSに含まれます。ほかにも請求書発行、経費精算、給与計算、連結会計などのサービスがあり、会計ソフトを中心に組み合わせて使うのが一般的です。

Q2. インストール型の会計ソフトから経理SaaSに乗り換えるべきですか?

A. 複数人や社外から同じデータを見たい、法改正への対応を自動化したい、税理士とのデータ共有を楽にしたいといった課題があれば、乗り換えを検討する価値があります。一方、独自の帳票や承認ルールを細かく作り込んでいる場合は、業務をサービスに合わせられるかを事前に確認しましょう。乗り換えは期首に合わせると、データの突き合わせが楽になります。

Q3. 経理SaaSを導入すればインボイス制度や電子帳簿保存法に対応できますか?

A. 制度に対応した機能を持つサービスは多いものの、導入するだけで要件を満たせるわけではありません。電子で受け取った請求書をシステムに取り込む流れや、担当者、保存の期限などの社内ルールを決めることが必要です。自社の運用が要件を満たしているかは、国税庁の一問一答などで確認し、判断に迷う場合は顧問税理士に相談してください。

Q4. 子会社がある場合、単体向けの会計ソフトだけで足りますか?

A. 各社の記帳は単体向けの会計ソフトで行えますが、グループ全体の数字を集めて連結財務諸表を作る作業は別に必要です。子会社の数が増えるほど、Excelとメールでのデータ収集や科目の組み替えに時間がかかるため、子会社の会計システムを変えずにデータを集められる連結会計システムの導入を検討するとよいでしょう。

Q5. 経理SaaSの導入と経理BPOへの委託は、どちらを選ぶべきですか?

A. 社内に経理担当者がいて手作業を減らしたいなら経理SaaS、担当者が不足している、専門知識が必要な業務を任せたいなら経理BPOが向いています。日々の記帳は経理SaaSで自社に残し、給与計算や年末調整だけを外部に委託するといった組み合わせも有効です。

Q6. 経理SaaSの導入に使える補助金はありますか?

A. 中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際に活用できる制度として、デジタル化・AI導入補助金があります。対象は事務局に登録されたITツールに限られ、公募期間や要件は年度ごとに変わるため、申請前に公式サイトで最新の公募要領を確認してください。

まとめ

経理SaaSは、経理業務をクラウドで行う仕組みで、明細の自動取り込み、複数人でのリアルタイムな共有、法改正への自動対応が大きな利点です。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、人手不足と属人化の解消をきっかけに、導入を検討する企業が増えています。選ぶときは、次の4つを押さえておきましょう。

  • 1社の経理を効率化したいのか、グループ全体の数字をまとめたいのかで、単体向けと連結向けを選び分ける
  • 会計ソフトを中心に、請求書・経費・給与など周辺サービスとの連携方法を事前に決める
  • 制度対応はツールだけでなく、書類の取り込みと保存の社内ルールをセットで整える
  • 社内に残す業務と外部に委託する業務を分け、経理BPOとの組み合わせも検討する

まずは無料トライアルなどで自社の口座やデータを実際に連携し、どこまで手作業が減るかを確かめるところから始めてみてください。単体と連結の違いを踏まえた比較は、記事冒頭の経理SaaSの比較で確認できます。

参考文献

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