SaaSとクラウドサービスの違いとは?業務カテゴリ別マップと5つの選び方
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- SaaSとクラウドサービスの関係と、PaaS・IaaSとの違いがわかる
- 業務カテゴリ別に、自社で導入を検討すべきSaaSを整理できる
- 選定の5つの判断基準と、失敗しない導入の進め方がわかる
SaaSとクラウドサービスは、よく同じ意味で使われますが、正確には「クラウドサービス」という大きな枠の中に、SaaS・PaaS・IaaSという3つの種類がある関係です。SaaSは、インターネット経由でソフトウェアそのものを利用できるクラウドサービスを指します。
ただ、違いが分かっても「では自社はどの業務をSaaSにすればよいのか」で手が止まる方は少なくありません。この記事では、SaaSとクラウドサービスの関係、PaaS・IaaSとの違いといった基礎に加えて、業務カテゴリ別のSaaSマップ、選定の5つの判断基準、よくある失敗パターン、導入効果の試算方法までを、公的資料をもとに整理します。
自社でSaaS化を始めるべき業務を診断
Q1. SaaS化したい業務に一番近いのは?
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SaaS型CRM・名刺管理サービスの選び方
SaaS型のCRM(顧客管理)を選ぶときは、機能の多さよりも「顧客情報が毎日自然に集まる入口があるか」を最初に確認することが大切です。データが集まらなければ、どれほど高機能なCRMも使われなくなります。
業務のSaaS化を考えるとき、多くの企業が最初に候補に挙げるのが顧客管理です。取引先の会社名、担当者、過去のやり取りといった情報が担当者個人の手帳や表計算ファイルに閉じていると、異動や退職のたびに関係が途切れ、同じ会社に別の担当者が重ねて連絡してしまうといった問題が起きます。SaaS型のCRMなら、インターネットにつながる環境であれば社内でも外出先でも同じ顧客情報を見られるため、この属人化を解消しやすくなります。
一方で、CRMを導入しても定着しない企業に共通するのが、受け取った名刺を1件ずつ手入力する運用です。入力は売上に直結しない作業のため、忙しい時期ほど後回しになり、登録される顧客が一部に偏っていきます。そこで、名刺を撮影・スキャンするだけで顧客データにできる名刺管理サービスを、CRMの入口として組み合わせる考え方が有効です。
| 確認する点 | 見るべき内容 | 確認しないと起きること |
|---|---|---|
| 入力の入口 | 名刺の取り込みやスマートフォン入力に対応しているか | 手入力が続かず、顧客データが集まらない |
| 共有の範囲 | 部署やチームごとに閲覧権限を設定できるか | 見せるべきでない情報まで全員に公開される |
| 活動の記録 | 訪問・電話などの履歴を顧客に紐付けられるか | 引き継ぎ時に経緯が分からない |
| 既存ツールとの連携 | SFAやメール配信ツールへデータを渡せるか | 同じ情報を複数のツールに二重入力する |
名刺管理SKYPCEは、Sky株式会社が提供する、名刺管理を軸にしたSaaS型のサービスです。AIを活用した名刺の読み取りで取り込みの手間を減らし、登録した名刺情報を組織で共有して営業やマーケティング活動に役立てられます。接続制限などのセキュリティ対策も備えているため、顧客データの入口を整えたい企業のCRM導入の第一歩として検討しやすい製品です。一方で名刺管理を中心にしたサービスのため、営業活動をあまり重視しない業種には合わない場合がある点は、事前に確認しておきましょう。
ここがおすすめ!
- 名刺管理を軸にしており営業・マーケティング活動に有効利用できる
- 最新機能や高性能AIの搭載で、効率のいい名刺の管理と共有が可能
- 情報セキュリティ対策連携や接続制限など、強固なセキュリティ対策
ここが少し気になる…
- 名刺管理を軸にしたサービスのため、営業等が重視されない業種には不向き
CRMそのものを複数の製品で比べたい場合は、CRMツールのおすすめ比較記事もあわせてご覧ください。
SaaSとクラウドサービスの違い|PaaS・IaaSとの関係
クラウドサービスは、インターネット経由でIT資源を利用するサービス全体の総称で、SaaSはその中の「ソフトウェアを提供する」種類です。両者は対立する概念ではなく、クラウドサービスがSaaSを含む包含関係にあります。
クラウドサービスは、何を提供するかによって大きく3つに分けられます。ソフトウェアまで提供するのがSaaS(Software as a Service)、アプリケーションを開発・実行する土台を提供するのがPaaS(Platform as a Service)、サーバーやストレージ、ネットワークといった基盤だけを提供するのがIaaS(Infrastructure as a Service)です。読み方は、SaaSが「サース」または「サーズ」、PaaSが「パース」、IaaSが「イァース」や「アイアース」と呼ばれるのが一般的です。
3つの違いを理解するいちばんの近道は、「利用者が自分で管理する範囲」を比べることです。SaaSは提供事業者がソフトウェアまで管理するため、利用者はアカウントを作ってすぐに使い始められます。PaaSとIaaSは提供される範囲が狭くなるぶん、利用者側で構築・管理する範囲が広がり、自由度が高い代わりに専門知識が必要になります。
| 種類 | 提供されるもの | 利用者が管理する範囲 | 主な利用者 |
|---|---|---|---|
| SaaS | 完成したソフトウェア | アカウント、データ、利用設定 | 業務部門の担当者 |
| PaaS | 開発・実行の土台(OS、ミドルウェアなど) | アプリケーションとデータ | アプリケーション開発者 |
| IaaS | サーバー、ストレージ、ネットワーク | OSから上のすべて | インフラ担当者 |
身近な例に置き換えると、SaaSは「家具付きの賃貸住宅にそのまま住む」、PaaSは「間取りの決まった部屋に自分で家具をそろえる」、IaaSは「土地と建物の骨組みだけを借りて内装から自分で手がける」イメージです。業務部門が自分たちの課題を早く解決したい場合は、ほとんどのケースでSaaSが選択肢になります。
なお、よく似た言葉に「ASP」があります。ASPはインターネット経由でアプリケーションを提供する事業者やサービス形態を指す言葉として以前から使われており、提供の仕組みはSaaSとほぼ同じです。現在はSaaSという呼び方が主流になっていると考えて差し支えありません。
クラウドサービスと対になる言葉が「オンプレミス」です。オンプレミスは、自社でサーバーや機器を購入して社内に設置し、ソフトウェアもインストールして運用する形態を指します。自社の要件に合わせて細かく作り込める一方で、初期投資が大きく、保守や更新も自社で担う必要があります。SaaSはこの負担を提供事業者に任せられる点が、最も大きな違いです。総務省の情報通信白書でも、クラウドサービスを利用する企業の割合が年々高まっていることが示されており、オンプレミスからSaaSへ移行する流れは多くの業種で進んでいます。
SaaSのメリットとデメリット|オンプレミスと比べた向き・不向き
SaaSの主なメリットは、初期投資を抑えて早く使い始められること、常に最新の状態で使えること、場所を選ばないことです。一方で、カスタマイズの自由度が低いことや、障害・仕様変更の影響を自社で制御できないことがデメリットになります。
| 区分 | 内容 | 具体的には |
|---|---|---|
| メリット | 初期投資を抑えて短期間で使い始められる | サーバーの購入や構築が不要で、契約後すぐに利用できる |
| メリット | 常に最新の状態で使える | 機能追加やセキュリティ更新を提供事業者が行う |
| メリット | 場所や端末を選ばない | インターネットにつながればどこからでも同じデータにアクセスできる |
| デメリット | カスタマイズの範囲が限られる | 多くの利用者に共通の仕組みのため、独自の業務フローに合わない部分が残ることがある |
| デメリット | 障害やメンテナンス中は使えない | 復旧は提供事業者の対応を待つことになる |
| デメリット | 仕様変更やサービス終了の影響を受ける | 画面や機能の変更、提供終了時のデータ移行に備える必要がある |
デメリットの多くは、契約前の確認で影響を小さくできます。カスタマイズについては、自社に欠かせない要件を先に書き出し、標準機能や設定変更、ほかのツールとの連携で満たせるかを無料トライアルやデモで確かめます。障害やメンテナンスについては、稼働率の目標や障害時の連絡方法、サポートの受付時間といったサービスレベルの取り決め(SLA)を確認しておくと、業務への影響を見積もりやすくなります。
見落とされやすいのが、特定のSaaSに依存しすぎて別のサービスへ移れなくなる「ベンダーロックイン」です。提供事業者による機能変更や料金改定、サービス終了が起きても業務を止めないよう、データを一括で書き出せる形式と手順、解約後のデータの扱いを事前に確認しておきましょう。また、画面や機能の変更は事前にお知らせされることが多いため、更新情報を確認して社内に共有する担当者を決めておくと現場の混乱を防げます。
こうした特徴から、SaaSは標準的な業務の効率化や、少人数で早く成果を出したい場面に向いています。反対に、業界特有の複雑な業務処理を細かく作り込む必要がある場合や、社内規程によりデータを社外に置けない場合は、オンプレミスやIaaS・PaaSを使った自社構築のほうが適していることがあります。業務ごとに「標準の仕組みに業務を合わせられるか」を判断軸にすると、どちらを選ぶべきかが整理しやすくなります。
SaaSが業務システムの主流になった背景|国内の動向
SaaSが広がった背景には、働く場所の多様化、人手不足による業務効率化の必要性、そして国によるデジタル化の後押しという3つの流れがあります。いずれも一時的な流行ではなく、今後も続く構造的な変化です。
働く場所の多様化
テレワークや複数拠点での勤務が広がったことで、社内のサーバーにしかデータがない状態では仕事が進まなくなりました。SaaSはインターネットにつながる環境であればどこからでも同じデータにアクセスでき、複数の人が同時に作業することもできます。この「場所を選ばない」という特徴が、SaaSの普及を大きく後押ししました。
人手不足と業務効率化
中小企業庁の中小企業白書では、人手不足への対応としてデジタル化による業務効率化が重要なテーマとして繰り返し取り上げられています。SaaSはサーバーの購入や自社開発が不要なため、専任のIT担当者がいない中小企業でも導入しやすく、少ない人数で回す業務の負担を減らす手段として選ばれています。
国によるデジタル化の後押し
経済産業省はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を掲げ、古いシステムを使い続けることのリスクを指摘してきました。また政府機関がクラウドサービスを調達する際の安全性評価の仕組みとして、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)も整備されています。公的な評価制度ができたことで、民間企業にとってもクラウドサービスを選ぶ際の安心材料が増えました。
こうした流れの中で、SaaSは一部の先進企業だけのものではなく、規模や業種を問わず業務システムの標準的な選択肢になりつつあります。ただし、選択肢が増えたぶん「何を選べばよいか分からない」という悩みも大きくなっています。次の章では、業務カテゴリごとにSaaSを整理します。
業務カテゴリ別SaaSマップ|自社に必要なSaaSを整理する
SaaSは、顧客管理・経理・人事・採用・情報共有など業務カテゴリごとに整理すると、自社で優先して導入すべきものが見えてきます。ツール名から探すのではなく、困っている業務から探すのがポイントです。
| 業務カテゴリ | 代表的なSaaSの種類 | 解決しやすい課題 |
|---|---|---|
| 顧客管理・名刺管理 | CRM、SFA、名刺管理 | 顧客情報の属人化、引き継ぎ漏れ |
| 経理 | 会計、請求書発行、経費精算 | 手作業の転記、法令改正への対応 |
| 人事・労務 | 勤怠管理、給与計算、人事評価 | 紙の書類、集計の手間 |
| 採用 | 採用管理、Web面接 | 応募者情報の分散、日程調整の負担 |
| 情報共有 | グループウェア、ビジネスチャット、Web会議 | メールの埋もれ、拠点間の連絡 |
顧客管理(CRM)・名刺管理
顧客管理のSaaSは、名刺管理、CRM、SFA(営業支援)の3つに分けて考えると整理しやすくなります。名刺管理は顧客データの入口を整える役割、CRMは取引先との関係全体を管理する役割、SFAは商談から受注までの営業活動を管理する役割です。製品によっては複数の役割を兼ねるものもありますが、最初から全部入りの製品を入れるより、顧客情報の入力が定着してから範囲を広げるほうが失敗しにくい傾向があります。
このカテゴリの効果は、担当者の異動や退職があっても取引先との関係が途切れないこと、そして「あの会社の担当者はだれだったか」を探す時間がなくなることに表れます。営業担当者が多い企業ほど、SaaS化の効果が見えやすい業務といえます。
経理・人事・採用
経理のSaaSは、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込んで仕訳の候補を作る機能や、請求書の発行・送付を一元化する機能が中心です。電子帳簿保存法やインボイス制度のような法令改正があっても、提供事業者がソフトウェアを更新してくれる点は、パッケージソフトにはない大きな利点です。
人事・労務では、勤怠管理と給与計算をつなげることで、毎月の集計や転記の手間を大きく減らせます。採用では、複数の求人媒体から集まる応募者の情報を1か所にまとめる採用管理のSaaSが広く使われています。いずれも従業員や応募者の個人情報を扱うため、アクセス権限の設定やデータの保管先の確認は、顧客管理以上に慎重に行う必要があります。
業務カテゴリ別に見るときに注意したいのは、部門ごとにバラバラにSaaSを選ぶと、同じ従業員情報や取引先情報を複数のツールに登録する二重管理が起きやすいことです。全社で使うマスタデータ(顧客・取引先・従業員)をどのツールで管理するかを先に決めておくと、ツールが増えても混乱しにくくなります。
SaaS選定の5つの判断基準
SaaSを選ぶときは、目的・使いこなし・セキュリティ・連携・コストの5つの基準で候補を比べると、導入後の後悔を減らせます。機能表の比較だけで決めず、自社の状況に照らして確認することが大切です。
基準1:導入の目的が明確か
「顧客情報の引き継ぎ漏れをなくす」「毎月の請求書作成の時間を半分にする」など、SaaSで解決したい課題を1つの文で言えるかを確認します。目的があいまいなまま機能の多さで選ぶと、使わない機能に費用を払い続けることになります。
基準2:社内のITリテラシーに合っているか
実際に毎日使う現場の担当者が、説明書を読まなくても操作できるかが定着の分かれ目です。無料トライアルがある場合は、IT担当者だけでなく現場の担当者にも試してもらい、スマートフォンから使う場面があるなら、その操作性も確認しておきましょう。
基準3:セキュリティと管理体制は十分か
SaaSでは、自社のデータを提供事業者のサーバーに預けることになります。通信の暗号化、ログイン時の多要素認証、閲覧権限の設定、操作記録の保存、データの保管場所などを確認しましょう。政府のISMAPに登録されているかどうかも、判断材料の1つになります。顧客や従業員の個人情報を扱う場合は、個人情報保護委員会のガイドラインもあわせて確認し、必要に応じて専門家に相談してください(本記事は法的助言を目的としたものではありません)。
基準4:既存システムと連携できるか
すでに使っている会計ソフトやグループウェア、表計算ファイルとデータをやり取りできるかを確認します。API連携やCSVでの取り込み・書き出しに対応していれば、二重入力を避けられます。将来ほかのSaaSに乗り換える可能性も考え、データを丸ごと書き出せるかも見ておくと安心です。
基準5:総コストに見合う効果があるか
SaaSは初期費用が小さい反面、利用人数に応じた月額費用が継続して発生します。月額だけでなく、初期設定の支援費用、オプション機能、契約期間の縛りや自動更新の条件を含めた総コストで比較しましょう。効果は、削減できる作業時間に人件費をかけた金額で見積もると、社内で説明しやすくなります。具体的な料金は変動するため、必ず各社の公式情報で最新の内容を確認してください。
| 判断基準 | 確認のための質問 |
|---|---|
| 目的 | 解決したい課題を1つの文で言えるか |
| ITリテラシー | 現場の担当者がトライアルで迷わず操作できたか |
| セキュリティ | 多要素認証、権限設定、操作記録、保管場所を確認したか |
| 連携 | 既存ツールとのデータ連携と、全データの書き出しができるか |
| コスト | 契約条件を含む総コストと、削減時間の見込みを比べたか |
SaaS導入の進め方|小さく始めて広げる4ステップ
SaaSは、対象業務の棚卸し、小規模な試行、ルールづくり、全社展開の4ステップで進めると、導入後の定着率を高められます。契約のしやすさに任せて一気に全社へ広げないことが大切です。
ステップ1:対象業務と現状の手間を棚卸しする
最初に、SaaS化の候補となる業務について、だれが、どのくらいの頻度で、どれだけの時間をかけているかを書き出します。名刺の入力、請求書の作成、勤怠の集計といった作業ごとに週あたりの時間を把握しておくと、後で導入効果を測る基準になります。経済産業省のDX関連資料でも、デジタル化の前に業務とデータの現状を把握することの重要性が示されています。この段階で「紙の書類がどこにあるか」「同じ情報を何か所に入力しているか」も確認しておくと、SaaSで解消すべき無駄がはっきりします。
ステップ2:一部の部署で小さく試す
候補を2、3製品に絞ったら、無料トライアルや少人数の契約で、1つの部署やチームに限定して試します。このとき、IT担当者だけでなく、実際に毎日使う現場の担当者を必ず参加させることがポイントです。操作に迷った場面、入力が面倒に感じた項目、既存の業務の流れと合わなかった点を記録しておくと、本導入の判断材料になります。試行期間は1か月から3か月程度を目安にし、ステップ1で把握した作業時間がどれだけ減ったかを比べましょう。
ステップ3:運用ルールと権限を決める
本導入の前に、入力する項目と入力のタイミング、閲覧・編集できる人の範囲、退職者のアカウントを停止する手順などを決めておきます。特に顧客情報や従業員情報を扱うSaaSでは、権限設定を初期状態のまま全員に公開してしまう事故が起きやすいため注意が必要です。ルールは細かく作りすぎると守られなくなるので、「名刺は受け取った当日中に取り込む」のように、現場が迷わない短い文にまとめるのがコツです。
ステップ4:効果を確認しながら全社へ広げる
試行した部署で効果が確認できたら、対象を段階的に広げます。展開の際は、試行部署の担当者に操作のコツや困ったときの対処を共有してもらうと、ほかの部署も抵抗なく使い始められます。全社に広げた後も、半年や1年といった区切りで利用状況と作業時間を見直し、使われていない機能やアカウントがあれば契約内容を調整しましょう。SaaSは契約を見直しやすいことも利点の1つであり、定期的な見直しを前提に運用することで、費用に見合う効果を保ち続けられます。
SaaS選定でよくある失敗パターン
SaaS導入でよくある失敗は、機能の多さで選ぶこと、部門ごとにバラバラに導入すること、契約条件を見落とすことの3つです。スイッチを切り替えると、失敗例と回避策を見比べられます。
失敗パターン1:機能の多さで選んだ。多機能な製品を選んだが設定が複雑で、現場が基本機能しか使わないまま高い月額を払い続けた。
失敗パターン2:部門ごとにバラバラに導入した。営業と経理が別々に顧客情報を管理し、取引先の住所変更が片方にしか反映されなかった。
失敗パターン3:契約条件を見落とした。年単位の自動更新に気づかず、使わなくなった後も解約できない期間が残った。
3つの失敗に共通するのは、「どのツールを入れるか」を先に考え、「どの業務をどう変えるか」を後回しにしている点です。SaaSは導入のハードルが低いぶん、目的や全社のルールを決めないまま契約できてしまいます。導入前に業務の流れとデータの持ち主を整理しておくことが、失敗を防ぐいちばんの近道です。
SaaS導入コストを数値で確認する
SaaSの費用対効果は、手作業にかかっている時間をどれだけ減らせるかを金額に置き換えると判断しやすくなります。次のシミュレーターで、顧客情報の入力・検索にかかる時間から年間の削減額の目安を確認できます。
顧客情報を扱う従業員数:10人
1人あたり週の入力・検索時間:2時間
1時間あたりの人件費:3000円
現在の年間作業時間:時間
半分を削減できた場合の金額:円/年
年間48週稼働、削減率50%を仮定した簡易計算です。実際の効果は業務内容やツール、運用によって異なります。
例えば顧客情報を扱う従業員が10人で、1人が週2時間を名刺の入力や顧客情報の検索に使っている場合、年間では960時間になります。その半分を減らせれば480時間、人件費を1時間3,000円とすると年間144万円相当の時間を、商談や顧客対応に回せる計算です。この金額と、利用人数分の月額費用や初期設定の費用を比べることで、導入の妥当性を社内で説明しやすくなります。なお、この試算には情報の探し直しによる機会損失や、引き継ぎ漏れによる失注は含まれていないため、実際の効果はさらに大きくなる場合もあれば、運用が定着せず小さくなる場合もあります。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaSとクラウドサービスは同じ意味ですか?
A. 同じではありません。クラウドサービスはインターネット経由でIT資源を利用するサービス全体の総称で、SaaSはその中でソフトウェアを提供する種類を指します。クラウドサービスには、SaaSのほかにPaaSとIaaSがあります。
Q. SaaS・PaaS・IaaSの違いを簡単に教えてください。
A. 提供される範囲と、利用者が管理する範囲の違いです。SaaSは完成したソフトウェアまで、PaaSはアプリケーションを動かす土台まで、IaaSはサーバーなどの基盤だけが提供されます。業務部門がすぐに使いたい場合は、多くの場合SaaSが選択肢になります。
Q. SaaSとオンプレミスはどちらを選ぶべきですか?
A. 初期投資を抑えて早く使い始めたい、保守の負担を減らしたい場合はSaaSが向いています。独自の要件に合わせた細かな作り込みが必要な場合や、データを社外に置けない事情がある場合はオンプレミスが候補になります。
Q. 最初にSaaS化するならどの業務がよいですか?
A. 手作業が多く、効果が数値で見えやすい業務がおすすめです。顧客管理や名刺管理は、情報の探し直しや引き継ぎ漏れの解消という効果が分かりやすく、最初の一歩として選ばれやすい業務です。
Q. SaaSのセキュリティは安全ですか?
A. 安全性は提供事業者の管理体制と、利用者側の設定の両方で決まります。通信の暗号化、多要素認証、閲覧権限、操作記録、データの保管場所を確認し、政府のISMAPへの登録状況も判断材料にするとよいでしょう。
Q. SaaSの費用はどのように比較すればよいですか?
A. 月額費用だけでなく、初期設定の費用、オプション、契約期間や自動更新の条件を含めた総コストで比べます。効果は削減できる作業時間に人件費をかけて見積もると判断しやすくなります。最新の料金は各社の公式情報で確認してください。
まとめ
SaaSは、クラウドサービスの中でソフトウェアを提供する種類であり、業務部門が自分たちの課題を早く解決するための有力な選択肢です。自社に合うSaaSを選ぶために、次の5点を押さえておきましょう。
- クラウドサービスはSaaS・PaaS・IaaSの3種類で、違いは利用者が管理する範囲にあると理解する
- ツール名ではなく、困っている業務カテゴリからSaaSを探す
- 目的・ITリテラシー・セキュリティ・連携・コストの5つの基準で候補を比べる
- 顧客や取引先などのマスタデータをどのツールで管理するかを全社で先に決める
- 顧客管理のSaaS化は、名刺の取り込みなど入力の入口を整えるところから始める
まずは、社内で手作業に時間を取られている業務を1つ選び、その業務を変えるSaaSを小さく試すところから始めてみてください。それが、SaaSとクラウドサービスを自社の力に変える確実な一歩になります。
参考文献
- 総務省「情報通信白書」、2026年9月24日確認
- 経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」、2026年9月24日確認
- 中小企業庁「中小企業白書」、2026年9月24日確認
- ISMAP運営委員会「ISMAPポータル」、2026年9月24日確認
- 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」、2026年9月24日確認