SaaS会社とは?領域別の主な会社と、ARR・チャーン率・NRRの読み方

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  • 領域別・業界特化型でSaaS会社を見分けられる
  • 会社を比べる5つの観点と主な会社の例がわかる
  • ARR・チャーン率・NRRの読み方と段階別の目安がわかる

SaaS会社とは、ソフトウェアをインターネット経由のサービスとして提供し、月額や年額の利用料で継続的に収益を得る会社のことです。会計や人事、営業支援といった業務分野で展開する会社と、建設・介護・不動産のように特定の業界に絞る会社に大きく分かれ、会社ごとに強みも顧客層も異なります。そのため、SaaS会社を調べるときは、まずどの領域の会社かを見分け、そのうえでARR(年間経常収益)、チャーン率(解約率)、NRR(売上維持率)といった独自の指標で成長の質を読むのが近道です。この記事では、領域別の主な会社の例、比べるときの観点、各指標の意味と計算方法、成長段階ごとの目安、読み違えやすいポイントを順に整理します。掲載する企業名は情報提供を目的としたもので、特定企業への投資や転職を勧めるものではありません。

SaaS会社を調べる、最初の一歩を診断

Q1. SaaS会社について、いま一番知りたいのはどれですか?

目次

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  1. SaaS会社とは|売り切り型のソフトウェア会社との違い
  2. SaaS会社の種類|領域別・業界特化型・顧客層で見分ける
  3. SaaS会社を比べる5つの観点|成長性は指標で読む
  4. ARR(年間経常収益)|積み上がる売上の大きさと、伸びの内訳
  5. チャーン率(解約率)|収益モデル全体への波及
  6. NRR(Net Revenue Retention)|成長の「質」を測る指標
  7. ARR・チャーン・NRR・LTV/CACの関係性
  8. 成長の段階別に見る目安|ARRの規模ごとに追う指標が変わる
  9. よくある誤解|指標の定義は会社によって異なる
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ
  12. 参考文献

SaaS会社とは|売り切り型のソフトウェア会社との違い

SaaS会社とは、ソフトウェアをサービスとして提供し、利用料を継続的に受け取る会社です。売上が契約の上に積み上がる一方、顧客獲得の費用が先に発生する点が、売り切り型との大きな違いです。

パッケージソフトの販売では、売った時点で売上が立ち、翌年はまた新しく売る必要があります。SaaSでは顧客が使い続ける限り毎月の利用料が入るため、契約が続けば売上の見通しが立てやすくなります。その反面、顧客を獲得するための広告や営業の費用は先に発生し、回収には時間がかかります。成長期のSaaS会社が売上を伸ばしながら赤字を出していることが多いのは、この「先に投資し、後から回収する」構造のためです。SaaS会社の実力が売上高や利益だけでは読み切れず、独自の指標を併せて見る必要があるのも、この構造が理由です。

サブスクリプション型の事業を自社で運営している、または始める場合、ARRやチャーン率といった指標のもとになるのは月次の会計数字です。月次の数字を早く正確に出せる体制を整える一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、インターネットバンキングやクレジットカードなど2,400社以上の金融機関と連携して取引明細を取得でき、AIが学習して適切な勘定科目を提案します。決算書も自動で作成でき、経営状況をリアルタイムで把握できるとされています。注意点として、ある程度の簿記知識が必要になる場合があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。なお、他社のSaaS会社を調べることが目的であれば、この製品を使う必要はありません。

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SaaS会社の種類|領域別・業界特化型・顧客層で見分ける

SaaS会社は、会計・人事・営業など業務分野ごとに展開する会社と、建設・介護・不動産など特定の業界に絞る会社に大きく分けられます。どの領域の会社かを先に見分けると、比べる相手と見るべき指標が定まります。

型 特徴 見分けるときのポイント
水平型(ホリゾンタル)SaaS 業種を問わず多くの会社に共通する業務(会計、人事労務、営業管理、コミュニケーションなど)を対象にする 顧客の数が多くなりやすく、同じ領域に競合が多い。領域内での導入実績や機能の幅が比べどころ
業界特化型(バーティカル)SaaS 建設・介護・不動産など特定の業界の業務に特化する 対象の顧客数は限られるが、業界の課題に深く入り込める。特定の業界でどこまで広がっているかが比べどころ

国内の主な会社を領域別に並べると、次のようになります。順不同で、網羅したものでも特定の会社をすすめるものでもありません。会社名は正式名称で、サービス名は代表的な例です。

領域 会社の例 代表的なサービス例
営業・名刺管理 Sansan株式会社 Sansan
業務アプリの作成・情報共有 サイボウズ株式会社 kintone
ビジネスチャット 株式会社kubell Chatwork
経費精算・請求書 株式会社ラクス 楽楽精算、楽楽明細、楽楽販売
会計・人事労務 フリー株式会社
株式会社マネーフォワード
株式会社オービックビジネスコンサルタント
freee会計
マネーフォワード クラウドシリーズ
勘定奉行クラウド
介護・医療(業界特化) 株式会社エス・エム・エス 介護・医療分野で人材や事業者向けのサービスを展開
不動産賃貸(業界特化) 株式会社GA technologies ITANDI BB+(不動産賃貸業務のDXサービス群)
海外の例(業務共通) Microsoft、Google、Salesforce、Zoom Microsoft 365、Google Workspace、Salesforce、Zoom

この表は、キャリア・エックスの解説記事や各社の決算資料・公式サイトの記載をもとに整理しています(2026年10月確認)。海外の会社は提供元のブランド名で表記しており、正式な法人名は各社の公式サイトで確認してください。売上高の大きさで国内の主な上場会社を並べた比較はSaaSランキングの見方、業種別に日本のSaaS会社を整理した記事は日本企業のSaaS会社とは、基本の仕組みはSaaS企業とは、職種や市場動向はSaaS業界とは、働きやすさの見分け方はSaaSホワイト企業の見分け方で解説しています。

顧客層でも会社の性格は変わる

同じ領域でも、中小企業向け(SMB向け)に絞る会社と、大企業向け(エンタープライズ向け)に力を入れる会社とでは、売り方も解約の出方も異なります。一般に、SMB向けのSaaSは顧客側の事業の入れ替わりも多いためチャーン率が高くなりやすく、エンタープライズ向けは導入に時間がかかる一方で、一度定着すると解約されにくい傾向があります。公式サイトの導入事例や料金の見せ方から、どの顧客層を中心に据えている会社かを確かめておくと、後で見る指標の水準を適切に評価できます。

SaaS会社が増えている背景

企業の側でクラウドサービスの利用が広がっていることも、SaaS会社が増えている背景の一つです。総務省の令和7年通信利用動向調査(2026年5月公表、調査対象は常用雇用者100人以上の企業)では、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は83.5%、全社的に利用している企業の割合は60.0%で、前年から6.9ポイント増えています。

SaaS会社を比べる5つの観点|成長性は指標で読む

SaaS会社を比べるときは、領域と顧客層、成長の段階、導入実績、収益の質、会計上の数字の5つを順に確かめると、見落としが減ります。

観点 確かめること 主な確認先
1. 領域と顧客層 どの業務・業界の会社か。中小向けか大企業向けか 公式サイト、導入事例
2. 成長の段階 プロダクトが受け入れられる前か、規模を伸ばしている最中か、成熟しているか 決算説明資料、資金調達の発表
3. 導入実績と提供範囲 導入社数やシェア、単一のプロダクトか複数のプロダクトか 公式サイト、決算説明資料
4. 収益の質(指標) ARR、チャーン率、NRRなど、契約が積み上がる勢いと続く強さ 決算説明資料(定義の注記も確認)
5. 会計上の数字 売上高、営業利益率、キャッシュの状況 決算短信、有価証券報告書

1と3は公式サイトでほぼ確かめられますが、4と5は決算資料を読む必要があります。上場している会社であれば、金融庁のEDINETで有価証券報告書を閲覧でき、決算説明資料は各社のIRサイトに掲載されています。会計上の売上高と、決算説明資料に載るARRを並べて見ると、指標の定義や計上方法への理解が深まります。次の章からは、4で使う指標を1つずつ整理します。

ARR(年間経常収益)|積み上がる売上の大きさと、伸びの内訳

ARRは、ある時点で継続している契約から得られる売上を1年分に換算した金額です。月次の経常収益であるMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して求めるのが一般的です。

SaaS会社の売上は「毎期ゼロから作るもの」ではなく「前期までの契約の上に積み上がるもの」で、この積み上がる売上を測る代表的な指標がARR(Annual Recurring Revenue)です。月額契約が中心の場合は、月次の経常収益であるMRRを12倍して求めます。たとえば月額5万円の契約が200社あればMRRは1,000万円、ARRは1億2,000万円になります。初期費用やコンサルティングなどの一度きりの売上は含めないのが原則で、この点が損益計算書上の売上高との大きな違いです。

項目 ARR(年間経常収益) 売上高(損益計算書)
性質 ある時点の契約状況を年換算した「瞬間の値」 一定期間に実際に計上した「期間の合計」
含まれるもの 継続課金の利用料のみ 初期費用や導入支援など一時的な売上も含む
開示の根拠 会社が独自に定義する管理指標(決算説明資料などで開示) 会計基準に基づく財務数値(有価証券報告書などで開示)
読むときの注意 定義が会社ごとに異なるため算出方法の注記を確認する 期中に増えた契約の効果は翌期に本格的に表れる

ARRを読むときは、金額の大きさよりも「伸び方の内訳」に注目します。ARRの増減は、新規顧客の獲得による増加(新規ARR)、既存顧客のプラン変更や利用拡大による増加(拡大ARR)、プランの縮小による減少、解約による減少の4つに分解できます。同じ30%成長でも、新規獲得に広告費を大量に投じて達成したのか、既存顧客の利用拡大で達成したのかで、将来の持続性は大きく異なります。決算説明資料でARRの増減要因を分けて開示している会社は、この読み方がしやすいといえます。

チャーン率(解約率)|収益モデル全体への波及

チャーン率は、一定期間にどれだけの顧客や売上が失われたかを示す指標です。積み上げ型のSaaSでは、いわば「穴の開いたバケツの穴の大きさ」にあたり、どれだけ新規顧客を獲得しても、穴が大きければ売上は思うように増えません。測り方は大きく2つあり、どちらを使っているかで数字の意味が変わります。

種類 計算方法 読み取れること
カスタマーチャーン率(顧客数ベース) 期間中に解約した顧客数 ÷ 期首の顧客数 サービスに満足して使い続けている顧客の割合
レベニューチャーン率(金額ベース) 期間中に解約・縮小で失ったMRR ÷ 期首のMRR 売上の土台がどれだけ削られたか

たとえば、小口の顧客が多く解約し、大口の顧客はほとんど解約していない会社では、顧客数ベースのチャーン率は高く見えても、金額ベースのチャーン率は低くなります。逆の場合もあるため、決算説明資料では「どちらのチャーン率を開示しているか」を最初に確認することが欠かせません。

もう1つ注意したいのが、月次と年次の違いです。月次チャーン率2%は小さく見えますが、1年続くと残る売上はおよそ(1-0.02)の12乗で約78%となり、年間では約2割の売上を失う計算になります。月次チャーン率を単純に12倍した24%とも一致しないため、他社と比べるときは期間を揃えることが大切です。また、顧客1社あたりの平均契約期間はおおむね「1 ÷ チャーン率」で近似できるため、チャーン率が上がると顧客生涯価値であるLTVが縮み、広告や営業にかけられる費用の上限も下がります。チャーン率は、収益モデル全体に波及する起点の指標といえます。

NRR(Net Revenue Retention)|成長の「質」を測る指標

NRR(売上維持率)は、ある時点の既存顧客からの売上が、1年後にどれだけ残り、増えたかを示す割合です。新規顧客の売上は含めず、既存顧客の拡大から縮小と解約による減少を差し引いて計算します。

NRRはNDR(Net Dollar Retention)と表記されることもあります。Scalebaseの解説では、月初のMRRに拡大MRRを足し、縮小MRRと解約MRRを引いたものを月初のMRRで割る式が示されています。たとえば期首に1,000万円あった既存顧客のMRRが、1年間で拡大により200万円増え、縮小で30万円、解約で70万円減った場合、NRRは(1,000 + 200 – 30 – 70) ÷ 1,000で110%になります。NRRが100%を超える状態は「ネガティブチャーン」とも呼ばれ、解約による減少を既存顧客の拡大が上回っていることを意味し、新規顧客がいなくても売上が伸びます。同解説では、NRRの健全性を示す一般的な目安は100%以上とされています。

NRRと似た指標にGRR(Gross Revenue Retention、総売上維持率)があります。GRRは拡大分を含めず、縮小と解約による減少だけを反映した指標で、上限は100%です。NRRが高くてもGRRが低い会社は、一部の顧客が大きく利用を拡大する一方で、多くの顧客が離れている可能性があります。NRRとGRRを並べて見ることで、「拡大で解約を覆い隠していないか」を確認できます。

NRRが「成長の質」を表すといわれるのは、既存顧客の拡大による成長は、新規獲得に比べて追加の広告費や営業費がかかりにくいためです。同じARR成長率の2社があれば、NRRが高い会社の方が少ない投資で成長しており、将来の利益率も高くなりやすいと考えられます。一方で、NRRは顧客単価を段階的に引き上げやすい料金体系(利用量課金やユーザー数課金など)の会社ほど高くなりやすいため、料金体系の違いも踏まえて比較する必要があります。

ARR・チャーン・NRR・LTV/CACの関係性

ここまでの指標は、個別に見るよりも、互いにどう影響し合っているかを押さえると読みやすくなります。収益構造を1本の式にすると、「翌期のARR = 今期のARR にNRRを掛けたもの + 新規ARR」と表せます。ARRの成長は、既存顧客をどれだけ維持・拡大できたか(NRR)と、新規顧客をどれだけ獲得できたか(新規ARR)の2つで決まり、チャーン率はNRRを押し下げる要因として組み込まれています。

この式に、顧客獲得の効率を示すLTV/CACを加えると全体像がそろいます。LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)は顧客1社が契約期間全体でもたらす粗利の合計で、株式会社Hibitoの解説では「ARPU(顧客あたり平均売上)に粗利率を掛け、チャーンレートで割る」式が示されています。CAC(Customer Acquisition Cost、顧客獲得コスト)は、1社を獲得するためにかかった広告費と営業費の合計です。同解説では、LTV/CACが3倍以上であれば健全、1倍未満であれば獲得コストを回収できていない状態とされ、CACを回収するまでの月数(CAC回収期間)も併せて確認する指標として紹介されています。

指標 何を表すか 他の指標への影響
ARR 事業の規模(結果の指標) NRRと新規ARRの積み重ねで決まる
チャーン率 顧客・売上の流出の速さ 上がるとNRRとLTVが下がり、ARRの伸びが鈍る
NRR 既存顧客からの成長力 高いほど新規獲得への依存が下がり、ARRが安定して伸びる
LTV 顧客1社がもたらす粗利の総額 チャーン率が下がり単価が上がるほど大きくなる
CAC 顧客1社の獲得にかかる費用 LTVと比べて投資の妥当性を判断する基準になる

この関係を押さえると、指標の読み違いに気づきやすくなります。たとえば、ARRが大きく伸びていても、チャーン率が上昇しNRRが下がっている場合は、新規獲得に多額の費用をかけて穴を埋めている状態かもしれません。その場合、CACが膨らんでLTV/CACが悪化していないかを確認する必要があります。逆に、ARRの伸びが緩やかでもNRRが高くLTV/CACが良好な会社は、投資を増やせば効率よく成長できる余地があると読めます。

なお、これらの指標はすべて、契約データと会計データが正しくつながっていることが前提です。売上の計上タイミングや顧客単位の粗利が曖昧なままだと、LTVもCACも実態からずれた数字になります。自社でサブスクリプション型の事業を運営している場合は、指標を追い始める前に、会計の仕組みから月次で数字を出せる状態を整えておくことが近道です。次のチェックで、いまの月次の数字の出し方を確かめてみてください。

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成長の段階別に見る目安|ARRの規模ごとに追う指標が変わる

SaaS会社の指標は、どの会社にも同じ重みで当てはまるわけではありません。事業がどの段階にあるかで、経営陣が最も重視する指標も、外部から評価する際に見るべき指標も変わります。公的に定められた基準はないため、ここでは株式会社Hibitoの解説記事が示す段階別の整理を一例として紹介します。ARRの区切りは同記事の目安で、業種や単価によって前後するとされています。

段階(ARRの目安) 主に追う指標 目安として示されている数値
PMF前(0-5,000万円) MRRの推移、月次チャーンレート 月次チャーンレートが5%以下で安定したら、次の段階への準備が整ったと判断する
成長期(5,000万-10億円) New MRR成長率、NRR、LTV/CAC、CAC回収期間 NRRは110%以上、LTV/CACは3倍以上、CAC回収期間は12ヶ月以内
成熟期(10億円以上) NRR、ARR成長率、Rule of 40 NRRが120%を超えると新規獲得が鈍っても収益が伸びる。Rule of 40は、収益成長率と営業利益率の合計が40%以上

PMFとは、プロダクトが市場に受け入れられた状態(プロダクト・マーケット・フィット)のことです。同記事では、PMF後にARR200万ドルに達したあと、2年は3倍、その後3年は2倍ずつ伸ばす成長軌道を「T2D3」と呼び、初期のスタートアップが目標にする水準として紹介しています。ここに挙げた数値は1社の整理であり、顧客層や市場の状況によって求められる水準は変わります。エンタープライズ向けのSaaSでは顧客数が少ない代わりに1社あたりの単価が大きく、チャーン率もより低い水準が期待される、といった違いもあります。

未上場の会社が資金調達を行う際や、M&A・業務提携の前に行うデューデリジェンス(DD)では、こうした指標が企業価値を判断する材料になります。DDの場面では、水準そのものより、数字の根拠が確かめられるかどうかが問われます。ARRの算出に含めている契約の範囲、チャーン率の分母の取り方、NRRの対象期間などが一貫しているか、会計帳簿の売上と突き合わせて説明できるかが確認されます。

指標を改善する打ち手も、決算説明資料を読むヒントになります。ARRを伸ばす方法は、新規顧客の獲得を増やす、既存顧客へのアップセルやクロスセルで単価を上げる、解約や縮小を減らすという3つに集約されます。後の2つを担うのが、導入後の顧客の定着と活用を支援するカスタマーサクセスの取り組みです。顧客を獲得した時期ごとに継続率を比べるコホート分析を開示している会社であれば、最近獲得した顧客ほど定着が良くなっているかを確認でき、チャーン率の平均値だけでは見えない変化を読み取れます。

よくある誤解|指標の定義は会社によって異なる

SaaS会社の指標は会計基準で定められたものではないため、同じ名前でも会社ごとに定義が異なります。複数の会社を比べるときに陥りやすい誤解と、確認のポイントを整理します。

よくある誤解 実際に起きていること 確認のポイント
ARRはどの会社も同じ計算方法である 年額契約のみを含める会社、利用量課金の見込み分を含める会社などがある 決算説明資料の注記で、ARRに含める売上の範囲を確認する
チャーン率が低ければ顧客に満足されている 複数年契約が多いと、不満があっても契約期間中は解約として表れない 契約期間の構成や、更新時期の解約状況を確認する
NRRが高ければ全顧客が拡大している 一部の大口顧客の拡大が、多数の顧客の解約を覆い隠している場合がある GRRや顧客数ベースのチャーン率と並べて見る
ARRの大きい会社ほど優れている 多額の広告費で規模を伸ばし、LTV/CACが悪化している場合がある 成長率、NRR、LTV/CAC、利益率を組み合わせて評価する
売上高の順位がそのまま会社の実力である 決算期や事業の範囲が違うと、同じ売上高でも比べにくい 決算期・連結か単体か・SaaS以外の事業を含むかを確認する

こうした誤解を避けるには、数値だけを抜き出して比べるのではなく、会社がその指標をどう定義しているかを先に確認する習慣が大切です。上場会社の多くは決算説明資料の末尾などに用語の定義を掲載しているため、最初にそこを読んでから本文の数字を追うと、読み違いを減らせます。定義を開示していない場合や、期によって定義が変わっている場合は、その理由も含めて慎重に評価しましょう。

自社で同じ指標を出し続けるなら、定義を決めたうえで、元になる会計データを月次で整えておくことが前提になります。月次の取引明細の取り込みや決算書の作成を効率化する方法の一つとして、マネーフォワード クラウド会計の詳細を確認しておくのも一案です。

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaS会社とはどのような会社ですか?

A. ソフトウェアをインターネット経由のサービスとして提供し、月額や年額の利用料で継続的に収益を得る会社です。契約が続く限り売上が積み上がる一方、顧客獲得の費用が先に発生するため、成長期には赤字になりやすい特徴があります。

Q2. 5大SaaS企業とはどの会社ですか?

A. 「5大SaaS企業」に公的な定義や決まった顔ぶれはなく、国内か世界か、売上高か時価総額かといった基準や時期によって変わります。国内外の解説記事では、Microsoft、Google、Salesforce、Zoomなどが代表的な会社の例として紹介されています。

Q3. 日本の三大SaaS企業はどこですか?

A. 公的な定義はなく、基準によって顔ぶれが変わります。当サイトで売上高を比べた記事(2026年10月時点の決算で確認)では、国内の主な上場8社のうちビジョナル、エス・エム・エス、ラクスの順に大きくなっています。ただし決算期や事業の範囲が会社ごとに異なるため、順位は目安として見てください。

Q4. SaaS会社ではどのような仕事がありますか?

A. エンジニア、カスタマーサポート、デザイナー、マーケター、営業(プリセールス)、導入後の定着を支えるカスタマーサクセスなどの職種があります。会社の領域や成長の段階によって、職種の構成や求められる役割は異なります。

Q5. ARRとNRRの違いは何ですか?

A. ARRは継続している契約から得られる収益を1年分に換算した、事業の規模を表す金額です。NRRは既存顧客だけで、1年後に売上がどれだけ維持・拡大したかを表す割合です。NRRが100%を超えると、新規顧客を獲得しなくても売上が伸びる状態を意味します。

Q6. SaaS会社の指標はどこで確認できますか?

A. 上場会社であれば、各社のIRサイトで公開される決算説明資料にARRやNRRが掲載されていることが多く、会計上の売上高は金融庁のEDINETで有価証券報告書から確認できます。指標の定義は会社ごとに異なるため、資料の注記も併せて確認してください。

まとめ

SaaS会社は、継続課金によって売上を積み上げるビジネスモデルであり、領域や顧客層を見分けたうえで、ARR、チャーン率、NRR、LTV/CACといった指標を組み合わせて読むことで実力が見えてきます。これらの指標は「翌期のARR = 今期のARR にNRRを掛けたもの + 新規ARR」という関係でつながっており、どれか1つだけを見ても判断を誤りやすくなります。SaaS会社を調べるときは、次の4点を押さえておきましょう。

  1. まず領域(業務共通か業界特化か)と顧客層(中小向けか大企業向けか)を見分けて、比べる相手を決める。
  2. ARRは金額の大きさだけでなく、新規・拡大・縮小・解約の内訳で伸び方を確認する。
  3. チャーン率とNRRは、顧客数ベースか金額ベースか、月次か年次かといった定義を揃えてから比較する。
  4. 自社でサブスク型の事業を運営するなら、指標のもとになる月次の会計数字を整える方法を、資料で確認して検討する。

参考文献

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