SaaSショックとは?2026年の「SaaSの死」と2022年の株価下落の違い・背景を解説【投資助言ではありません】

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  • SaaSショックが指す2026年と2022年の違いがわかる
  • 2026年の「SaaSの死」の経緯と生き残る条件がわかる
  • 2022年の利上げによる下落と企業の教訓がわかる

SaaSショックとは、SaaS(クラウド型の業務ソフト)を提供する企業の株価が大きく下落した出来事を指す通称です。現在は主に、2026年初めにAIエージェントへの警戒から業務ソフト企業の株価が世界的に急落した出来事(「SaaSの死」「アンソロピック・ショック」とも呼ばれます)と、2022年にインフレと急速な利上げを背景にSaaS企業の評価が大きく下がった出来事の2つを指して使われます。両者は同じ株価下落でも、原因も問われたこともまったく異なります。この記事では、2つの違いを整理したうえで、2026年と2022年それぞれに何が起きたのかを時系列で解説し、市場の変動から企業が学べることまでをまとめます。なお、本記事は市場動向の理解を目的とした一般的な解説であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません(投資助言ではありません)。

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Q1. SaaSショックについて、まず知りたいのはどちらの出来事ですか?

目次

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  1. 市場の変動に左右されない経営基盤とは|会計ソフトで自社の数字を把握する
  2. SaaSショックとは|2022年と2026年の2つの意味
  3. 2026年のSaaSショック|アンソロピック・ショックと「SaaSの死」
  4. 2022年のSaaSショック|何が起きたか
  5. 2022年の背景|ウクライナ侵攻・利上げ・インフレ
  6. 2022年の評価の急落|PSRという指標の変化
  7. 2022年の資金調達環境への影響
  8. 2022年のもうひとつの要因|コロナ特需からの反動
  9. 市場変動から企業が学べること(投資助言ではありません)
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ
  12. 参考文献

市場の変動に左右されない経営基盤とは|会計ソフトで自社の数字を把握する

市場の変動に左右されない経営基盤とは、自社の売上・費用・手元資金をいつでも早く正確に確認でき、「どこまでなら耐えられるか」を数字で判断できる状態のことです。SaaSショックを振り返ると、金利が上がり資金を集めにくくなった局面で落ち着いて手を打てたのは、まさにこうした状態の企業でした。これは上場しているSaaS企業に限らず、あらゆる規模の会社に共通する教訓です。

株価や金利といった外部環境は、自社では動かせません。一方で、自社の経営状況をいつでも確認できる状態を整えることは、今日から取り組めます。その土台になるのが会計ソフトです。日々の取引を記帳し、月次の損益や資金の動きを早く見られるようにしておくと、景気や取引先の状況が変わったときにも判断を先送りせずに済みます。

こうした記帳と集計を自動化する会計ソフトの一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、銀行やクレジットカードなど2,400社以上のサービスと連携して取引明細を自動で取得でき、AIが過去の仕訳を学習して勘定科目を提案します。入力した仕訳データからは決算書やキャッシュフローレポートなどが自動で作られ、経営状況をリアルタイムで確認できます。一方で、AIは登録済みの仕訳を学習するため、誤った仕訳が覚えられる可能性があり、正確な入力を心がける必要があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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  • 銀行やクレジットカードから仕訳入力や取引データの取得が自動化され、会計業務にかかる時間を大幅に短縮できました。AIによる自動仕訳やレポート自動生成機能により、経営状況の可視化やミスの防止も実現。帳票を出力して提出書類として扱いやすいのがメリットです。

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  • 最も大きく解決された課題は、他システムとのデータ連携における手間の大幅な削減です。給与計算や経費精算、販売管理といった各システムから自動で仕訳データが取り込まれるようになったため、手動での入力作業が不要になり、ヒューマンエラーの削減と業務効率の向上を実感しております。 これにより、月次決算の早期化にも貢献し、経営状況をより迅速に把握できるようになった点も大きなメリットです。

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出典: 株式会社HITOMIOテクノロジーズ 導入事例(マネーフォワード クラウド会計)
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SaaSショックとは|2022年と2026年の2つの意味

SaaSショックは公的な定義がある用語ではなく、SaaS(クラウド型の業務ソフト)を提供する企業の株価が大きく下落した出来事を指す通称です。現在この言葉は、主に2つの出来事を指して使われています。ひとつは2026年初めに、AIエージェントへの警戒から業務ソフト企業の株価が世界的に急落した出来事で、「SaaSの死」や「アンソロピック・ショック」とも呼ばれます。もうひとつは2022年に、インフレと急速な利上げを背景にSaaS企業の株価が大きく下がり、市場での評価の物差しが変わった出来事です。SaaSそのものの仕組みや種類を知りたい方は、SaaSとは|PaaS・IaaS・ASPとの違いと選び方の基準もあわせてご覧ください。

2つの出来事は、同じ「SaaS企業の株価下落」でも原因と問われたことがまったく異なります。まず違いを一覧で確認しておきましょう。

観点 2022年のSaaSショック 2026年の「SaaSの死」
主な原因 インフレと急速な利上げ、コロナ特需の反動 AIエージェントが既存の業務ソフトを代替するのではないかという懸念
影響の範囲 SaaSを含む高成長株全般 AIに置き換えられやすいと見られた業務ソフト分野
問われたこと 将来の成長をどこまで高く評価するか(評価の物差し) SaaSという事業モデルそのものが今後も続くか
性質 金利という外部環境による、業界をまたいだ変化 技術の変化による、業界固有の構造的な懸念

2022年は「SaaSは有望だが、金利が上がったので評価を下げる」という話でした。これに対して2026年は「AIの進化で、SaaSの価値そのものが揺らぐのではないか」という問いが投げかけられた点で性質が異なります。どちらについても、実際にどの企業がどれだけ影響を受けるかは事業内容や顧客基盤、AIへの対応によって大きく異なるとの見方が多く、本記事では将来の株価や個別企業の見通しには触れず、両者を混同せずに理解するための整理にとどめます。以下では、より最近の2026年の出来事から順に解説します。

2026年のSaaSショック|アンソロピック・ショックと「SaaSの死」

2026年のSaaSショックは、AIエージェントが業務ソフトの役割を代わりに担うようになるのではないか、という懸念から起きた株価下落です。きっかけとなった出来事の流れは次のとおりです。

時期 主な出来事 市場の受け止め
2024年12月 米マイクロソフトのCEOが、AIエージェントの時代には従来の業務アプリケーションのあり方が大きく変わるという趣旨の発言をする 「SaaSの死」という言葉が広まり、業務ソフト企業の先行きが議論され始める
2026年1月30日以降 米Anthropicが、AIエージェント「Cowork」に法務や財務分析などの業務を自動化する機能を追加したと発表 AIが業務ソフトの役割を代替するのではないかという懸念が一気に強まる
2026年2月上旬 Anthropicが金融分析の性能を高めた新しいAIモデルを発表 米国の業務ソフト関連銘柄が大きく下落し、国内のSaaS関連銘柄にも下落が広がる
2026年2月下旬以降 Anthropicがセキュリティ関連の機能を追加発表するなど、AIの新機能の発表が続く 下落は行き過ぎとの見方と、事業モデルの転換は避けられないとの見方が並び、評価が分かれる

この下落で注目すべきなのは、金利や景気といった外部環境ではなく、技術の変化が原因だった点です。AIエージェントは、人が画面を操作して業務ソフトを使う代わりに、指示を受けて自ら複数のツールやファイルを扱い、作業を完了させます。法務の文書確認や財務分析のように、これまで専用の業務ソフトが担ってきた領域をAIが直接こなせるのであれば、業務ソフトの必要性そのものが下がるのではないか、という見方が市場に広がりました。

なぜAIがSaaSの脅威とされたのか|利用者数課金の矛盾

2026年の議論でよく取り上げられたのが、SaaSの料金体系の問題です。多くのSaaSは「利用するアカウント数(ID数)に応じて月額が決まる」仕組みで、利用者が増えるほど提供会社の売上も伸びる前提に立っています。ところが、AIエージェントが人に代わって業務をこなすようになれば、顧客企業は必要なアカウント数を減らせます。顧客が効率化に成功するほど提供会社の売上が減りかねない、という矛盾が意識されたことが、事業モデルそのものへの懸念につながりました。これを受けて、成果や処理量に応じて料金が決まる仕組みへの移行を模索する動きも議論されています。

AIで「作る」企業は増えるのか|内製化という論点

もうひとつ挙げられたのが、内製化の動きです。AIでプログラムを書くツールが進化すると、企業が自社で業務システムを作るハードルが下がり、SaaSを契約せずに内製を検討する企業が増えるのではないか、という見方が示されました(楽天証券 トウシル)。一方で、AIのコンサルティングを手がけるAVILENは、設計の考え方が整っていないままでは意図どおりに動かないシステムになりやすく、IT人材の多くがベンダー側にいる日本では、品質の壁にぶつかる企業も多いとの見方を示しています(AVILEN)。会計や人事のように法改正への対応が欠かせない業務では、自社で作る場合も、制度の改正に追随し続ける保守を誰が担うのかが判断の分かれ目になると考えられます。

SaaSは本当に死ぬのか|「進化する」という見方

市場では、下落は行き過ぎだったとする見方も少なくありません。三井住友DSアセットマネジメントのレポートは、既存のソフトウェアがAIエージェントに直ちに完全代替されることは現実的でないとしつつ、長期的にはAIエージェントの機能向上に伴って既存ビジネスへの影響が大きくなる可能性があるとして、SaaSを手がける企業にはAIを活用したサービスの高度化が求められると述べています(アンソロピック・ショックやSaaS崩壊論に関する考察)。つまり「SaaSは死ぬのではなく形を変えて進化する」という見方です。

では、どのようなSaaSが影響を受けにくいとされているのでしょうか。トウシルとAVILENの解説で挙げられている条件を整理すると、次のようになります。

  • 顧客情報や契約情報など、企業の正式な記録を管理するシステム(システム・オブ・レコード)を担っている
  • データ移行のコストや業務への組み込みの深さから、安易に乗り換えにくい
  • セキュリティに関わる分野である
  • 自社のサービスにAI機能を組み込み、付加価値を出している
  • AIエージェントとのデータ連携や共有がスムーズにできる

また日本では、人手不足を補う手段としてAIによる業務の自動化が受け入れられやすいという事情もあります。SaaSを利用する企業の立場から見れば、AIと連携できるか、データを正確に蓄積できるかが、今後のサービス選びの観点になっていくと考えられます。「SaaSの死」が本当かどうかをさらに詳しく知りたい方は「SaaSの死」は本当かを検証した記事を、利用する側が契約時に確認したいリスクはSaaSの死とは|利用者の3つのリスクをご覧ください。

2022年のSaaSショック|何が起きたか

2022年のSaaSショックは、SaaS企業の株価急落と、それに続く市場評価の変化をまとめて指します。2020年から2021年にかけて、SaaS企業は在宅勤務の広がりやデジタル化の追い風を受けて高い成長を続け、株式市場でも非常に高い評価を受けていました。ところが2022年に入ると、この流れが急速に逆転します。

時期 主な出来事 SaaS企業への影響
2020年から2021年 コロナ禍で在宅勤務とデジタル化が急拡大し、世界的な低金利が続く 成長への期待が高まり、売上規模に比べて高い株価がつく
2021年後半 米国で物価上昇が強まり、金融引き締めへの観測が広がる 高成長株から資金が流出し始める
2022年2月から3月 ロシアによるウクライナ侵攻、米国で利上げが始まる 資源価格の上昇でインフレ懸念が強まり、下落が加速する
2022年6月以降 米国で0.75%ポイントの大幅な利上げが続く 評価倍率が大きく縮み、資金調達やIPOの環境も厳しくなる

注目したいのは、この時期に多くのSaaS企業の事業そのものが急に悪くなったわけではない点です。国内のSaaS市場を見ても、2022年に年間経常収益(ARR)を伸ばし続けた企業は少なくありませんでした。変わったのは、市場が「将来の成長」をどれだけ高く見積もるかという評価の物差しです。以下では、その変化をもたらした要因を順に見ていきます。

2022年の背景|ウクライナ侵攻・利上げ・インフレ

SaaSショックの最大の引き金は、世界的なインフレと、それを抑えるための急速な利上げでした。内閣府の「世界経済の潮流」によると、米国の消費者物価上昇率は2022年6月に9.1%まで高まり、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は同年3月に利上げを開始しました。6月以降は0.75%ポイントという異例の幅の利上げを4回連続で行い、政策金利の誘導目標は短期間で大きく引き上げられています。

ウクライナ侵攻が物価上昇に拍車をかけた

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギーや穀物の価格を押し上げ、コロナ禍からの経済活動の再開で強まっていた物価上昇にさらに拍車をかけました。インフレが長引くとの見方が広がったことで、各国の中央銀行は利上げを急がざるを得なくなり、株式市場全体に下押し圧力がかかりました。

なぜ利上げでSaaS企業が特に売られたのか

利上げの影響は、すべての企業に同じように及ぶわけではありません。SaaS企業の多くは、顧客を増やすために先行投資を続けており、利益が本格的に出るのは数年先という事業モデルです。株価は将来の利益を現在の価値に割り引いて評価されるため、金利が上がって割引率が高くなると、遠い将来の利益ほど現在の価値が小さく見積もられます。つまり、将来の成長への期待で高く評価されていた企業ほど、金利上昇の影響を大きく受けやすかったのです。

2022年の評価の急落|PSRという指標の変化

SaaSショックを理解するうえで欠かせないのが、PSR(株価売上高倍率)という指標です。PSRは企業の時価総額を売上高で割ったもので、「売上の何倍の価値がついているか」を示します。先行投資で赤字が続く成長企業は、利益を基準にするPER(株価収益率)では評価しにくいため、SaaS企業の評価ではPSRがよく使われてきました。

観点 2021年ごろまで 2022年以降
重視された点 売上の成長率、顧客数の伸び 成長率に加えて、利益やキャッシュフローを生む力
PSRの水準感 高成長企業には売上の数十倍がつくこともあった 多くの企業で数分の1程度まで縮小したとされる
赤字への見方 成長のための投資として許容されやすい いつ黒字化できるかの説明が求められる

売上が伸びていても、PSRが大きく下がれば時価総額は減ります。2022年に多くのSaaS企業で起きたのはまさにこの現象で、「業績は伸びているのに株価は下がる」という状況が広く見られました。評価の物差しが「どれだけ速く成長するか」から「成長と利益をどう両立するか」へ移ったことが、SaaSショックの本質だといえます。成長率と利益率を足して40%以上を目安とする「Rule of 40」のような指標が改めて注目されたのも、この流れの中でした。SaaS企業の財務指標の見方を詳しく知りたい方は、SaaS銘柄の見方|ビジネスモデルと財務指標を解説もあわせてご覧ください(投資助言ではありません)。

2022年の資金調達環境への影響

上場企業の評価が下がると、その影響は未上場のスタートアップにも及びます。ベンチャーキャピタルなどの投資家は、上場している類似企業の評価を参考に未上場企業の価値を見積もるため、上場SaaS企業のPSRが下がれば、未上場企業の資金調達時の評価額も下がりやすくなります。

  • 資金調達の評価額が前回を下回る、いわゆる「ダウンラウンド」を避けるため、調達の時期を遅らせる企業が増えた
  • 上場時の評価が想定より低くなる懸念から、IPOを延期する動きが見られた
  • 投資家が黒字化までの道筋を重視するようになり、広告費や採用の拡大を抑える企業が増えた
  • 手元資金で事業を続けられる期間(ランウェイ)を延ばすため、費用の見直しが広く行われた

こうした変化は、SaaS業界だけでなく、外部からの資金に頼って成長を目指す企業全般に共通する課題を浮き彫りにしました。資金を集めやすい環境はいつまでも続くわけではなく、集めにくくなったときに自社の資金がどれだけ持つのかを把握しておくことの重要性が、改めて意識されるきっかけになりました。

2022年のもうひとつの要因|コロナ特需からの反動

SaaSショックには、金利以外の要因もありました。それが、コロナ禍で生まれた需要の反動です。2020年から2021年にかけては、在宅勤務に対応するためにWeb会議、チャット、電子契約、クラウド会計といったSaaSの導入が一気に進みました。この時期の急成長を前提に、市場はその勢いが今後も続くことを期待して株価を評価していました。

しかし、経済活動の再開が進むと、新規導入の勢いは落ち着いていきます。導入が一巡した分野では成長率が鈍化し、景気の先行きへの不安から、顧客企業がSaaSの契約数やライセンス数を見直す動きも出てきました。成長が止まったわけではなくても、「期待していたほどの成長ではない」と受け止められると、高い評価は維持できません。コロナ禍での急成長そのものが高いハードルになっていたという点も、SaaSショックを理解するうえで押さえておきたい側面です。

市場変動から企業が学べること(投資助言ではありません)

SaaSショックから企業が学べる最大の点は、外部環境や技術が変わっても慌てないために、自社の数字を早く正確に把握できる体制を整えておくことです。SaaSショックは株式市場の出来事ですが、SaaSを使う側、あるいはSaaSとは関係のない企業にとっても学べる点があります。ここでは、投資の判断ではなく、自社の経営を考えるうえでの教訓として整理します。

SaaSショックで見えたこと 自社の経営に置き換えると
外部環境は短期間で大きく変わる 金利や物価、取引条件の変化を前提に、複数の資金計画を用意しておく
成長だけでなく利益とキャッシュが問われる 売上の伸びだけでなく、利益率と手元資金の推移を定期的に確認する
資金を集めやすい時期は続かない 借入や調達に頼れない期間でも事業を続けられるかを数字で把握する
特需の反動は必ず来る 一時的な売上増を基準に固定費を増やしすぎない
技術の変化で既存のやり方が揺らぐ(2026年) 契約しているクラウドサービスのデータを書き出せるか、AIと連携できるかを確認しておく

5つに共通するのは、自社の数字を「早く」「正確に」把握できるかどうかです。月次の損益が翌月の半ばを過ぎないと分からない、手元資金の見通しを担当者の感覚で判断している、といった状態では、環境が変わってから手を打つまでに時間がかかってしまいます。反対に、日々の取引が記帳され、部門別やプロジェクト別の損益、資金繰りの見通しをすぐに確認できれば、費用の見直しや投資の先送りといった判断を早めに下せます。

また、SaaSを利用する側の企業にとっては、契約しているクラウドサービスの提供会社の経営状況にも目を向けるきっかけになります。重要な業務データを預けるサービスでは、データを書き出せるか、他の製品へ移行しやすいかを確認しておくと安心です。会計データのように経営の土台となる情報は、特に扱いやすい製品を選んでおくことが大切です。SaaSを選ぶ際の評価軸は、SaaS比較の正しい方法で整理しています。

では、自社の数字の把握は今どの程度できているでしょうか。ここまでの教訓をもとに、5つの項目で確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、記帳や集計を手作業で続けていることで、判断が遅れやすい状態にあるといえます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. SaaSショックとは何ですか?

A. SaaS企業の株価が大きく下落した出来事を指す通称で、公的な定義はありません。現在は主に、AIエージェントへの警戒から業務ソフト企業の株価が急落した2026年の出来事と、インフレと急速な利上げを背景にSaaS企業の評価が下がった2022年の出来事の2つを指して使われます。

Q2. 2026年のSaaSショック(アンソロピック・ショック)とは何ですか?

A. 2026年初めに米Anthropicが業務を自動化するAIエージェントの新機能を相次いで発表したことをきっかけに、AIが業務ソフトを代替するのではないかという懸念が広がり、業務ソフト企業の株価が世界的に急落した出来事です。「SaaSの死」とも呼ばれ、国内のSaaS関連銘柄にも下落が広がりました。

Q3. 「SaaSは死んだ」とはどういう意味ですか?今後はどうなりますか?

A. AIエージェントが人に代わって業務をこなすようになると、利用するアカウント数に応じて料金が決まる多くのSaaSで、必要なアカウント数が減って売上が減りかねず、事業モデルが成り立たなくなるのではないかという懸念を指す言葉です。一方で、企業の重要なデータを預かるSaaSやAIと連携できるSaaSは影響を受けにくく、SaaSは形を変えて進化するという見方もあり、今後は事業内容やAIへの対応によって分かれると考えられます。

Q4. 2022年のSaaSショックと2026年の「SaaSの死」は同じものですか?

A. 別の出来事です。2022年は金利上昇という外部環境によって高成長株全般の評価が下がったのに対し、2026年はAIエージェントが既存の業務ソフトを代替するのではないかという懸念から、SaaSという事業モデルそのものが問われた点が異なります。

Q5. 2022年のSaaSショックでは、なぜ利上げでSaaS企業の株価が下がったのですか?

A. 株価は将来の利益を現在の価値に割り引いて評価されるため、金利が上がると遠い将来の利益ほど価値が小さく見積もられます。先行投資を続け、利益が本格的に出るのが数年先というSaaS企業は、その影響を特に受けやすく、株価売上高倍率(PSR)が大きく縮小しました。

Q6. SaaSショックから一般の企業が学べることは何ですか?

A. 外部環境は短期間で変わること、成長だけでなく利益と手元資金が問われること、資金を集めやすい時期は続かないことなどです。会計ソフトなどで自社の数字を早く正確に把握できる体制を整えておくと、環境が変わったときにも判断を先送りせずに済みます。なお、本記事は投資助言ではありません。

まとめ

SaaSショックは、SaaS企業の株価が大きく下落した出来事を指す通称で、現在は主に2026年と2022年の2つの出来事を指します。要点は次の3つです。

  1. 2026年のSaaSショックは、AIエージェントが業務ソフトを代替するという懸念から起き、利用者数に応じた課金という事業モデルそのものが問われた。
  2. 2022年のSaaSショックは、利上げで将来の成長への評価が割り引かれ、PSRが大きく縮小して「業績は伸びているのに株価は下がる」状況が広がった。
  3. 外部環境や技術の変化に備えるには、自社の損益と資金の動きを早く正確に把握できる体制が土台になる。会計ソフトで記帳と集計を自動化できないか、資料を取り寄せて検討する。

3つ目の行動として、記帳から月次の集計までを自動化できる会計ソフトの資料を確認しておくと、環境が変わったときの判断を早めやすくなります。

本記事は市場動向の理解を目的とした一般的な解説であり、特定の銘柄の売買や投資判断を勧めるものではありません。

参考文献

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