自治体DXとは?推進計画の重点取組事項・事例・進め方を総務省の資料から解説

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  • 自治体DXの意味と8つの重点取組事項がわかる
  • 北見市など事例と進まない理由・対策がわかる
  • 人材育成と個人情報管理、進捗の確認方法がわかる

自治体DXとは、デジタル技術やデータを活用して住民の利便性を高めると同時に業務を効率化し、生まれた人的資源を行政サービスの向上につなげる取り組みです。総務省の「自治体DX推進計画」(2026年1月30日公表の第5.1版)では、住民との接点(フロントヤード)と内部事務(バックヤード)のデジタル化を一体的に進め、人口減少の中でも行政サービスを続けられる体制をつくることが求められています。この記事では、重点取組事項、目的とメリット、総務省の参考事例集から見る事例、情報システム標準化の進捗、DXが進まない理由と対策、職員のデジタル人材の育成と配置、マイナンバーなど個人情報の管理、進め方と進捗の確認方法までを、総務省の公表資料をもとに整理します。

自治体DXで気がかりな点から、読むポイントを診断

Q1. 自治体DXを進めるうえで、いま一番ひっかかっているのは?

目次

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  1. 自治体DXとは|民間のDXとの違いと、最初に整えたい職員の体制
  2. 自治体DXの目的とメリット|住民・職員・行政運営の3つの面
  3. 自治体DX推進計画の重点取組事項|第5.1版の8項目と全体手順書の4ステップ
  4. 自治体DXの事例|窓口改革と庁内の推進体制(総務省の参考事例集より)
  5. 自治体DX推進計画の変遷と、情報システム標準化の進捗
  6. 自治体DXが進まない理由と対策
  7. デジタル人材の育成と配置|総務省のガイドブックと自治体の取り組み
  8. マイナンバーカードのオンライン化と、個人番号を扱う業務の管理
  9. 自治体DXの進め方と、進捗の確認方法
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ
  12. 参考文献

自治体DXとは|民間のDXとの違いと、最初に整えたい職員の体制

自治体DXとは、住民の利便性を高め、職員の負担を減らして行政サービスを続けるために、デジタル技術とデータで業務とサービスの流れを見直すことです。

自治体DXは、収益の拡大ではなく、人口減少が見込まれる中で行政サービスを持続可能な形で提供し続けることが出発点です。総務省の計画では、デジタル技術やデータで住民の利便性を高めること、AI等で業務を効率化して職員の負担を減らし、生まれた人的資源を行政サービスの更なる向上につなげること、そして住民等とDXの意義を共有しながら進めることが挙げられています。単に紙の手続を電子化するのではなく、業務の流れそのものを見直す(BPR)ことが前提になっている点が、IT化との違いです。

取り組む事項が多いぶん、実際に動かすのは職員です。総務省の計画は、推進体制の構築とデジタル人材の確保・育成を柱の一つに置き、人材育成・人事担当部門が、現在の職員のデジタルスキル等を把握したうえで、将来的な業務量や配置必要数を見込み、確保・育成の方針を策定するという役割分担を示しています。ところが、職員の経歴、スキル、研修の受講歴、異動の希望が課ごとの紙や表計算ソフトに分かれていると、この把握そのものに手間がかかります。同じ計画は、人材確保の障壁として、採用や管理(専門人材に特化した人事管理等)について自治体に十分な知見がないことも挙げています。

そこで、解説に入る前に、職員の人材情報、異動・配置、個人番号などの管理を整える手段として、人事管理システム3つの役割の違いを表で整理します。これらは主に民間企業向けに提供されているシステムで、自治体の人事給与システムや標準準拠システムの代わりになるとは限りません。自治体での利用条件や、既存システムとの関係は、資料で各社に確認してください。

職員のスキル・配置・個人番号の管理を整える、人事管理システム3つの役割の違い

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サービス カオナビ タレントパレット ジンジャー人事労務
向いている組織 職員の経歴・スキル・意向を一つのデータベースにそろえ、DX推進リーダーの候補や配置を検討したい組織 研修の記録と異動・配置の検討を結びつけ、職員の育成計画を立てたい組織 紙や表計算ソフトの人事情報を移し、マイナンバーの管理と権限の設定まで整えたい組織
特徴 人材情報の一元化、組織ツリー図や配置バランス図、スキルマップ、人員計画のダッシュボード、「使える・見える・編集できる」の権限設定 人材データに基づく管理、異動・配置のシミュレーション、eラーニング、組織診断や適性検査 従業員情報の一元管理、組織図の作成と異動のシミュレーション、マイナンバー管理、編集・閲覧・非表示の権限設定
注意したい点 タブレットの一部のタッチ操作は非対応で、スマートフォンアプリの動作保証はサポート対象外 高機能なぶん無料トライアルが無く、データの取り込みと権限設定を含む初期構築に数日から2か月程度かかる 申し込みから運用開始まで数か月を要する(商品ページでは最低2-3か月と案内)
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このうち、まずカオナビを紹介します。職員の経歴・スキル・意向が課ごとの紙や表計算ソフトに分かれていて、DX推進リーダーの候補も、庁内の体制の全体像も把握しにくい場合の一例が、タレントマネジメントシステムのカオナビです。商品ページによると、人材情報を柔軟設計のデータベースに一元化でき、組織ツリー図や配置バランス図で可視化できるほか、スキルマップの作成、人員計画のダッシュボード、集約したデータを「使える・見える・編集できる」の条件で分けるアクセス管理が紹介されています。政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)に登録されていることも案内されています。注意点として、タブレット端末では一部のタッチ操作に対応しておらず、スマートフォンアプリの動作保証はサポート対象外とされています。商品ページの導入実績には群馬県庁なども挙がっていますが、自治体での利用条件は個別に確認が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社カオナビ

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株式会社カオナビ

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あらゆる人材データをグラフや図で簡単に可視化◎見える化を重視する企業におすすめ

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出典:kaonavi

導入企業:TOTO株式会社、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)など

口コミ

「カオナビ」での運用に切り替えてからは、さまざまな面で効果が出たと感じています。今までメールで行なっていたExcelシートの授受や記入漏れはほとんどなくなりましたし、評価者や人事担当者が入力の進捗確認もできるようになることで、一部入力が遅れている人がいたとしても全体の進行が止まることがなくなりました。また、以前はExcelに設定していた計算式が壊れるといったトラブルもあったので、その対応に対する手間を考えると効果は絶大です。

評価を大幅効率化、異動検討もスムーズに。サツドラHDの「カオナビ」活用法 https://www.kaonavi.jp/showcase/sat/
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評価・口コミ(一部抜粋)
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  • 顔写真付きで人材データを把握、管理でき、労務業務のペーパーレス化ができます。 また、スキルや評価情報と社内研修や学習履歴などを組み合わせて活用することができます。効果的な人材育成ができると思います。

  • カオナビの導入により、従業員の顔写真やスキル、評価履歴などの情報を一元管理できるようになりました。これにより、評価や人材配置の際の情報収集が効率化され、適切な人材活用が可能となりました。また、評価ワークフロー機能「スマートレビュー」を活用することで、評価プロセスの透明性が向上し、従業員の納得感も高まりました。

ベンダーの導入事例には、人事評価や異動希望を紙と表計算ソフトで運用していた組織について、次のように紹介されているものがあります。県が設立した地方独立行政法人の病院機構の事例で、自治体の部署で同じ効果が得られることを示すものではありません。

人材に関する情報が分散していたため、「データはあるのに活用しきれていない」という点にも大きな課題がありました。

出典:地方独立行政法人神奈川県立病院機構 導入事例(カオナビ)(導入前の課題についての記述)

タレントパレットは職員の育成と配置を扱う箇所で、ジンジャー人事労務はマイナンバーなど個人情報の管理を扱う箇所で、改めて紹介します。まずは、自治体DXの目的とメリットから確認しましょう。

自治体DXの目的とメリット|住民・職員・行政運営の3つの面

自治体DXの目的は、住民の利便性の向上、職員の業務負担の軽減、データ活用による行政運営の高度化の3つに整理できます。

総務省の計画は、自治体DXの意義を、人口減少の中で自治体が持続可能な形で行政サービスを提供していくための取り組みとして説明しています。その効果は、住民、職員、行政運営の3つの面に分けて見ると整理しやすくなります。

面計画に書かれている内容資料に見える現状
住民の利便性デジタル技術やデータで住民の利便性を高める。マイナンバーカードを活用した手続のオンライン化や、対面手続で紙に書くことを求めない「書かないワンストップ窓口」への見直しが期待されている子育て・介護関係手続(26手続)について、マイナンバーカードを用いたオンライン手続が可能な自治体は、2023年度末時点で1,138自治体(全1,741自治体の65.4%)
職員の負担軽減と働き方デジタル技術やAI等で業務を効率化し、職員の負担を減らしながら、人的資源を行政サービスの更なる向上につなげる。感染症や災害時に行政機能を維持するBCPの面でも有用とされているテレワークの導入は、2025年10月1日現在、都道府県・政令市で100%、市区町村で61.8%(前年は61.4%)。未導入の理由には、窓口業務や現場業務が多いことが挙げられている
行政運営の高度化データを根拠にEBPM等で行政の効率化・高度化を図る。BPRの最初の段階で業務量等を調べ、取組の前後で比べられる数値を把握しておくことが望ましいとされている個人情報保護制度の全国共通ルール化(2023年4月施行)などで、自治体のデータ活用の可能性が広がると整理されている

メリットを得るうえで大切なのは、システムを入れただけでは効果が出ないという点です。計画は、標準化やオンライン化の成果を得るには、単なるシステム更改にとどまらず、標準準拠システムやオンライン手続を前提にした業務プロセスの見直しに取り組む必要があるとしています。また、オンライン申請の後のバックヤード処理まで効率化して職員の負荷を軽くすることが、住民の利便性と職員の働きやすさの両方につながるとも述べています。DXのメリットは、窓口に出てくる部分だけでなく、受け付けた後の事務まで含めて初めて現れます。

自治体DX推進計画の重点取組事項|第5.1版の8項目と全体手順書の4ステップ

自治体DX推進計画は、自治体が重点的に取り組む事項と国の支援策を総務省がまとめた計画で、最新は2026年1月30日公表の第5.1版です。

この計画に記載された自治体の取組は、地方自治法に基づく技術的助言という位置づけです。第5.0版から計画期間を設けず、別紙で5年間を目途とした「自治体の主な取組スケジュール」を示して毎年度更新する形になりました。第5.1版では、令和7年度補正予算の成立や令和8年度予算案などを踏まえ、記載と掲載データの時点が最新化されています。自治体が重点的に取り組む事項は、次の8つです。

重点取組事項主な内容
自治体フロントヤード改革の推進行政手続のオンライン化に加え、「書かないワンストップ窓口」など住民との接点を見直す
地方公共団体情報システムの標準化基幹系20業務のシステムを、国が定める標準に準拠したシステムへ移行する
国・地方デジタル共通基盤に基づく共通化等の推進共通SaaSの利用や、システム・ツールの共同調達を進める
公金収納におけるeL-QRの活用地方税以外の公金についても、統一QRコードでの納付に対応する
マイナンバーカードの取得支援・利用の推進希望する住民の円滑な取得を支援し、行政手続や日常生活での利用場面を広げる
セキュリティ対策の徹底サイバーセキュリティの確保の方針を定め、必要な措置を講じる
自治体のAIの利用推進生成AIを含むAIを業務に活用し、利活用とリスク管理の責任者(AI統括責任者・CAIO)の設置も考える
テレワークの推進職員が場所にとらわれずに働ける環境を整える

このほか、重点取組事項とあわせて取り組む事項として、地域社会のデジタル化、デジタルデバイド対策、デジタル原則を踏まえた規制の点検・見直しが挙げられています。また、推進体制として、首長のコミットメントのもとで最高情報統括責任者(CIO)を中心とする全庁的な体制を整えること、デジタル人材を計画的に確保・育成すること、都道府県と市区町村が連携することが求められています。

進め方の基本は「自治体DX全体手順書」の4ステップ

推進計画が「何に取り組むか」を示すのに対し、「どの順番で進めるか」を示しているのが、総務省の「自治体DX全体手順書」(2026年1月改定)です。DXの推進に必要と想定される一連の流れが、次の4つのステップで整理されています。

ステップ主な内容
ステップ0 認識共有・機運醸成首長や幹部、職員がDXの必要性を共有する。取組期間中も研修などを通じて継続する前提の段階
ステップ1 全体方針の決定DX推進のビジョンと工程表からなる全体方針を決める
ステップ2 推進体制の整備DX推進担当部門を置き、各業務の担当部門と連携できる体制をつくる
ステップ3 DXの取組の実行推進計画の重点取組事項などを、工程表に沿って実行し、見直していく

まだDXに着手していない団体はステップ0から順に進めることが想定されていますが、すでに取り組んでいる団体は、進捗に応じて必要なステップから実施してよいとされています。個別の分野については、情報システムの標準化・共通化に係る手順書(2024年9月改定)やフロントヤード改革の推進手順書(2025年5月策定)も別に示されているため、全体手順書で大きな流れをつかんだうえで、分野ごとの手順書を参照すると進めやすくなります。国の財政支援や、自治体が受け取れる交付金・補助金の整理は、DX補助金と自治体の解説記事で詳しく解説しています。

自治体DXの事例|窓口改革と庁内の推進体制(総務省の参考事例集より)

自治体DXの事例は、総務省の「自治体DX推進参考事例集」(第4.0版、2026年7月27日)に、体制整備、人材確保・育成、住民サービスなどの分類でまとめられています。

事例集には、団体名、人口規模、事業の概要、効果、検討開始から導入までの期間、担当部署が事例ごとに載っています。ここでは、窓口改革と庁内の推進体制から4つを選び、事例集に書かれている内容を整理します。数字はいずれも各自治体が事例集に示したものです。

団体(人口規模)取り組み事例集に書かれている内容
北海道北見市(11.2万人)書かないワンストップ窓口受付窓口だけでなくバックヤードのフローまで一体的に見直し。ワンストップで受ける手続は年間約15,000件。転校、児童手当、子ども医療費助成の手続がある4人世帯の例では、転居手続1件あたりにカウンターを回る回数が4回から1回に減り、年間約1,000時間の業務時間が削減されたと推計。同じシステムは2025年度末現在、75自治体が導入
神奈川県横須賀市(37.9万人)手続きナビと申請サポートで住民異動手続を効率化スマートフォンなどで必要な手続や持ち物を案内し、来庁前にウェブフォームで申請書類を作成できる。繁忙期(3-4月)の最大待ち時間が100分から38分に短縮
埼玉県上里町(1万人以上5万人未満)人事担当と情報システム担当が、各課のDX推進リーダーと対話しながら進める体制総務課(組織・人事)と総合政策課(情報システム・行政改革・財政)が司令塔となり、各課から1名以上のDX推進リーダーを選出。各課でDX推進の意義が認識され、「自分ごと化」されたと報告されている
愛媛県と県内市町県と市町が共同で「DX推進会議」を運営全市町でDX推進担当部署が設置され、CIOが任命されるなど推進体制が整い、DX計画の策定件数も増加(15市町)。高度デジタル人材を県と市町でシェアする仕組みも運用

北見市の事例集のインタビューには、これから取り組む自治体へのアドバイスとして、次のような記述があります。

BPRを実施せずにシステムだけ導入し、その後、利用されなくなるケースをよく耳にします。

出典:総務省「自治体DX推進参考事例集【第4.0版】 3.住民サービス」(北海道北見市のインタビュー)

窓口改革の2事例に共通しているのは、受付の入口だけでなく、受付後の処理や待ち時間といった「職員と住民の両方の負担」を数字で捉えている点です。北見市は、新人職員による窓口利用体験調査で窓口業務の課題が浮き彫りになったことをきっかけに、業務フローの見直しを小さく始めて修正を重ねる形で進めたと説明しています。上里町の事例は、DXの担い手を決める際に、人事を担当する部門が司令塔の一角に入っている点が特徴で、後の章で扱う職員の人材育成の話につながります。

事例を自団体に当てはめるときの3つの見方

  • 人口規模と体制を見る:事例集は人口区分のラベルが付いています。職員数や専任部署の有無が近い団体の事例ほど、そのまま参考にしやすくなります
  • 検討開始からの期間を見る:北見市は、検討開始から導入まで5年4か月かかっています。短期間で同じ成果を求めず、自団体の工程表に置き直して考えます
  • 効果の測り方を見る:北見市は削減時間、横須賀市は最大待ち時間と、事例ごとに指標が違います。自団体で測れる指標に置き換えて、取組の前に現状の数値を取っておきます

自治体DX推進計画の変遷と、情報システム標準化の進捗

自治体DX推進計画は、2020年12月に初めて策定されて以降、国の動向にあわせて改定されてきました。改定のたびに重点取組事項の名称や範囲が変わっているため、古い版を前提にした資料や記事を読むときは注意が必要です。

版公表時期主な特徴
初版2020年12月自治体が重点的に取り組む事項を初めて示し、システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続のオンライン化などを位置づけた
第2.0版以降2022年以降国の重点計画の改定にあわせて見直され、オンライン化を集中的に進める手続などが示された
第3.0版2024年4月国の重点計画などの動きを反映して改定された
第4.0版2025年3月フロントヤード改革、標準化・共通化、公金収納でのeL-QR活用、AI・RPAの利用推進など7つの重点取組事項を示した
第5.0版2025年12月国・地方デジタル共通基盤に基づく共通化を独立した重点取組事項とし、AIの利用推進ではAI統括責任者(CAIO)の設置にも触れた。計画期間を設けない形になった
第5.1版2026年1月令和7年度補正予算や令和8年度予算案などを踏まえ、記載と掲載データを最新化。標準化の進捗などの数値が更新された

変遷を見ると、当初は「システムの標準化」と「手続のオンライン化」という個別の施策が中心でしたが、最近の版では「窓口のあり方そのものを変える」「複数の自治体で共同して調達・利用する」「AIで業務を変える」といった、組織や業務の見直しに重心が移っていることがわかります。共同調達の面では、共同調達ダッシュボードに掲載された事例が292件あり、電子申請・納付システム(44件)、ビジネスチャットツール(22件)、施設予約システム(20件)など、ほかの自治体の調達事例を参考にできます。

移行の進捗と「特定移行支援システム」

2021年5月に「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が成立し、住民記録や地方税、国民健康保険、介護保険、児童扶養手当などの基幹系20業務について、標準に準拠したシステムへ移行することになりました。国の基本方針では、2025年度までに標準準拠システムへ移行できる環境を整えることが目標とされてきました。第5.1版によると、2025年12月末時点で、標準化に必要な作業手順の77.1%が完了しています(全市区町村ベース)。一方で、事業者のリソースひっ迫などにより2026年度以降の移行とならざるを得ない団体は、2025年10月末時点で1,788団体のうち743団体(41.6%)に達しています。こうしたシステムは「特定移行支援システム」として扱われ、国が移行完了の期限を個別に設定し、おおむね5年以内に移行できるよう支援するとされています。

標準化を進める5つのステップ

標準化は、システムを入れ替えれば終わりではなく、独自に積み上げてきた業務のやり方を標準に合わせる取り組みです。実務では、次のような順に進めると整理しやすくなります。

  1. 現行システムの把握:業務ごとのシステム、契約期間、カスタマイズの内容、ほかのシステムとの連携を洗い出す
  2. 標準仕様との比較(Fit&Gap):標準仕様書と現行の業務を比べ、業務の側を合わせるべき点を整理する
  3. BPR:独自のカスタマイズに頼っていた業務の流れや様式を見直す
  4. 移行計画と調達:事業者の対応状況を確認し、移行時期やガバメントクラウドの利用方法を決める
  5. 移行後の運用見直し:データ移行の確認、職員向けの操作研修、運用ルールの更新を行う

自治体DXが進まない理由と対策

自治体DXが進まない主な理由は、人材と推進体制の不足、標準化の移行の遅れ、業務の見直しを伴わないシステム導入の3つです。

「何度も改定される計画を追いきれない」「担当課だけが動いている」といった声の背景には、資料に表れる数字があります。総務省の計画と参考事例集から、主な理由と対策を整理しました。

進まない理由資料に見える状況対策の方向
DXを担う人材が足りないデジタル人材の確保・育成の方針を策定済みの市区町村は、2024年4月時点で416にとどまる。外部のデジタル人材をCIO補佐官等に任用している市区町村は267。小規模な市町村では、極めて少人数の職員でDXの取組全てを担う状況もある確保・育成の方針を策定し、人材像と目標人数を決める。都道府県の人材プールや外部人材も使う
推進体制が全庁に広がっていない2024年4月1日時点で、全庁的・横断的な推進体制を構築している自治体は1,243団体(69.5%)、DX推進専任部署を置く自治体は996団体(55.7%)CIOを中心とする全庁体制をつくり、各課にDX推進リーダーを置く
標準化の移行が事業者の事情で遅れる2026年度以降の移行となる団体が、2025年10月末時点で743団体(41.6%)特定移行支援システムの扱いを確認し、移行計画と運用の見直しを事業者と詰める
業務の見直しをせずにシステムだけ導入する北見市の事例集のインタビューに、BPRを行わずにシステムだけを導入し、その後利用されなくなるケースが多いという趣旨の記述がある現状の業務量を調べ、受付後の処理まで含めて業務フローを見直してから導入する
住民のデジタル活用に差がある計画は、デジタル活用支援やデジタルデバイド対策を、DXの取組とあわせて取り組む事項に位置づけているオンラインと窓口を併用し、相談できる場や支援の機会を用意する
予算・財源の制約国は、標準化に向けたデジタル基盤改革支援基金(補助率10/10)や、外部人材の任用経費への特別交付税措置(措置率0.7)などの財政措置を示している国の財政措置と、都道府県・市町村の共同調達を組み合わせる

対策の多くは、まず「どの職員がどんな経験とスキルを持ち、どの課に配置されているか」を一覧できることが前提になります。DX推進リーダーの候補を挙げるときも、育成の目標人数を決めるときも、人材の情報がそろっていなければ、方針づくりそのものが進みません。

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デジタル人材の育成と配置|総務省のガイドブックと自治体の取り組み

自治体のデジタル人材は、高度専門人材、DX推進リーダー、一般行政職員の3類型に分け、類型ごとに育成するか確保するかを決めるのが総務省の考え方です。

総務省は、2023年12月に「人材育成・確保基本方針策定指針」を示し、その内容を実務に落とし込むために、「デジタル人材の育成ガイドブック」と「外部デジタル人材の確保ガイドブック」を自治体DX全体手順書の別冊として公表しています。育成ガイドブックでは、基本方針の策定を、人材像の明確化、目標の設定、育成・確保、実施体制の構築、都道府県による支援の活用、キャリアパスの提示の6点で整理しています。

類型人材像育成か確保か
高度専門人材デジタルツールの目利きができる、作ることができる人材内部での育成は容易ではなく、短期的には外部人材の確保も視野に入れる
DX推進リーダーデジタルと行政の両方がわかり、デジタルツールを活用でき、要件を整理して発注できる、関係者の橋渡し役のコミュニケーション人材。重点育成の対象庁内で育成する。業務担当部門の経験を積みながら育てる点に留意する
一般行政職員導入されたデジタルツールを正しく使え、業務システムの操作に習熟した職員庁内で育成し、全職員の底上げを図る

育成目標の立て方|自治体の事例

育成ガイドブックは、類型ごとに「どのくらいの人数が必要か」を具体的な数値目標にすることを勧めています。ガイドブックに載っている各自治体の目標の立て方は、次のとおりです。

自治体目標の立て方
石川県金沢市中心となる職員を「デジタル行政推進リーダー」として毎年20名、5年で100名育成し、各課に1人の配置を目指す
静岡県掛川市研修の受講と、知識の習熟度を測るアセスメントを経て認定する「DXリーダー」を計100人育成し、全50課へ2人ずつの配置を目指す
滋賀県一般行政部門等の職員約3,600人の12.5%にあたる450人を庁内から募集し、3年間で育成する
福岡県北九州市人材育成の区分をゴールド・シルバー・ブロンズに分け、3年間で全職員の3分の1にあたる2,400名をDX推進リーダーとして育成するKPIを設定する

人事部門の役割と、人材情報の集約

第5.1版は、人材育成・人事担当部門に、現在の職員のデジタルスキル等を把握したうえで、将来的な業務量や配置必要数を見込むことを求めています。育成ガイドブックにも、自団体の現状がどのレベルにあるかを把握することが、目標設定の第一歩として示されています。人材の情報をどう持つかについては、東京都中野区の人材育成基本方針が、職務経験、職務意向、キャリアプラン、適性、評価、スキルなどの人材情報をデータベース化する「人財マネジメントシステム」を導入し、職員の適性や意向、能力を踏まえた人事配置に活用する取り組みとして紹介されています。

外部人材を活用する場合も、人事部門の関与は欠かせません。外部デジタル人材の確保ガイドブックは、DX部門だけでは外部人材を確保できないとして、DX・人事・財政の三位一体での確保を勧めています。手順は、重点課題の特定、人材要件の定義、人材の選定、人材の受入れの4ステップです。外部の人材をCIO補佐官等に任用する場合は、任期付職員や特別職非常勤職員として任用する方法が示されています。DX人材の育成を一般論として整理した解説は、DX人材育成の解説記事も参考になります。

育成の計画を立て、研修の記録と異動・配置の検討をつなげたい場合の一例が、タレントパレットです。商品ページでは、多様な人材データに基づく人材管理、人事評価や労務管理を含む人事DX、組織診断や適性検査、人事異動シミュレーション、eラーニングなどが紹介されています。注意点は、高機能・多機能な反面、無料トライアルが設けられておらず、必要な機能と不要な機能の判断が難しいことと、データの取り込みや権限設定を含む初期構築に、数日から2か月程度かかるとされていることです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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出典:タレントパレット

導入企業:パナソニック株式会社、ソフトバンク株式会社など

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初見で感じたのは、やはりUIのわかりやすさです。日本人的な感覚にとてもマッチしているなと感じました。機能面では分析機能が非常に充実しています。いずれも見せかけの機能ではなく、人事情報を扱う側に立ち「これ、必要だよね」と話しかけてくるような機能が多数あり衝撃を受けました。タレントパレットの作りが、我々が目指している形そのものになっていて。何より集積したデータの分析によって、組織をより良くしていきたいという思想を感じたんですよね。マーケティングが基盤にあり、数字を根拠に結果を出していくという考え方で開発されているので、説得力があるなと感じています。

経営戦略実現に向けタレントパレットを導入
多数精鋭組織を育成するニトリHDの構想とは https://www.pa-consul.co.jp/talentpalette/case/details/nitori.html

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  • 上司との面談の際は、こちらのツールをみながらフィードバックなどをもらっています。考課の際は進捗状況などこちらを確認すればOKです。オンライン研修もできるのは便利だと思いました。

  • Todoをシステム側に通知できるので、システムに入りさえすればやらなければいけないことが流れずにまとまって閲覧できた。また、同様に動画研修への動線もスムーズに配置でき、受講漏れなどが減った。

  • 自身のスキルや経験を可視化できるため、これまで意識していなかった強みやキャリアの方向性を客観的に見直すきっかけになりました。 また、性格テストから自分の仕事観等が分かり、新たな発見も期待できる点、メンバーの仕事の価値観も参照すれば、どのように接してほしいか等のヒントが見つかるかもしれない点がメリットかもしれないです。

ベンダーの導入事例には、人事異動の判断について、次のように紹介されているものがあります。民間企業の事例で、自治体での効果を示すものではありません。

これまでの人事異動は上司の主観的な評価を元に行われがちでした。

出典:リコージャパン株式会社 導入事例(タレントパレット)(人事異動についての記述)

マイナンバーカードのオンライン化と、個人番号を扱う業務の管理

オンライン化が進むほど、受け付けた後の本人確認と個人番号の管理を、手順どおりに運用できる仕組みが必要になります。

マイナンバーカードは、推進計画の中で、対面でも非対面でも確実・安全に本人確認ができる「デジタル社会のパスポート」と位置づけられています。カードの取得支援から、利用場面を広げる段階へと重心が移りつつあり、オンライン申請や窓口改革と組み合わせた取り組みが各地で進んでいます。

取り組みの型内容期待される効果
オンライン申請の拡大マイナポータルなどを使い、子育てや介護など住民のライフイベントに関わる手続をオンラインで受け付ける来庁しなくても手続ができ、窓口の混雑が減る
書かないワンストップ窓口マイナンバーカードなどから情報を読み取り、住民が申請書を手書きしなくて済むようにする記入の手間と待ち時間が減り、職員の転記作業も少なくなる
スマートフォンでの利用スマートフォンにマイナンバーカードの機能を搭載し、手続や本人確認に使えるようにするカードを持ち歩かなくても手続ができ、利用のハードルが下がる
市民カード化図書館や健康、子育てなど、自治体の市民サービスでマイナンバーカードを使えるようにするカードの利用場面が増え、住民にとってのメリットが伝わりやすくなる

オンライン化で見落とされやすいのが、申請を受け付けた後の処理です。推進計画でも、利用者目線で業務フローを改善することに加え、オンライン申請後のバックヤード処理を効率化し、職員の負担を減らすことが大切だとされています。受付がオンラインになっても、本人確認書類の突き合わせや番号の転記を紙と目視で続けていれば、職員の作業はむしろ増えてしまいます。

個人番号を扱う場面と、守るべき手順

自治体の基幹業務そのものは標準準拠システムで扱いますが、会計年度任用職員や外部の報酬支払先など、組織として個人番号を集める場面は、自治体にも自治体と取引する事業者にも存在します。マイナンバーを扱う業務では、番号の確認と身元の確認をあわせて行い、利用目的の範囲内で取り扱い、不要になった番号は廃棄するといったルールを守る必要があります。具体的な取り扱いは、個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」で確認してください。こうした一連の流れをシステムで管理しておくと、担当者が変わっても同じ手順で運用でき、確認漏れや保管期限切れの番号の放置を防ぎやすくなります。

個人番号の収集から廃棄までを、手順どおりに運用したい場合の一例が、ジンジャー人事労務です。商品ページでは、扶養家族分を含むマイナンバーの申告依頼からシステムへの登録までがクラウド上で完結し、二重パスワード、閲覧権限の制限、操作ログの確認といったセキュリティ機能を備え、退職した従業員の番号は保存期間が過ぎると廃棄の通知が届くと紹介されています。このほか、組織図の作成と人事異動のシミュレーション、異動の予約登録に合わせた権限の自動変更も紹介されています。注意点は、申し込みから運用開始までに数か月かかることです。商品ページでは最低2-3か月と案内されているため、運用を始めたい時期から逆算して検討してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

jinjer株式会社

ジンジャー人事労務

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ペーパーレスで人事をもっと楽に!ニーズに合わせてカスタマイズしたい企業におすすめ

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料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
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出典:ジンジャー人事労務

導入企業:株式会社モスフードサービス、エイブル保証株式会社など

口コミ

ジンジャー導入前は、システム間のデータ連携処理に相当な時間がかかっていました。
月中に入社する社員もいるため週次でこの処理が発生するのですが、人事から勤怠、人事から給与…とそれぞれで連携処理をおこなう必要があり、各連携には1時間ほどかかっていましたね。週で換算すると10時間ほどかかっていたと思います。

ジンジャーではこの連携処理にかかる時間がゼロになったので、業務が止まってしまったり、PCの動作が重くなったりすることもなく助かっています。

統合型データベースの活用で、データ連携処理にかかる時間を年480時間削減!スピーディーな運用開始に成功
株式会社ABC Cooking Studio https://hcm-jinjer.com/results/136203/
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おすすめ!

  • 1つのデータベースで人事情報を一元管理でき、ペーパーレス化・業務効率化につながる
  • 豊富な機能によって企業独自のカスタマイズが可能で、理想を実現できる
  • 従業員に関する情報は自動で時系列ごとにまとめられ、いつでも確認できる
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気になる…

  • 申し込みから運用開始までに最低2~3ヶ月程度かかる

ベンダーの導入事例には、人事データの一元管理について、次のように紹介されているものがあります。民間企業の事例で、自治体での効果を示すものではありません。

ジンジャーによる一元管理で人事データを統合。毎回発生していたデータ連携作業がゼロに。

出典:株式会社ベルーナ 導入事例(ジンジャー人事労務)(導入後の効果についての記述)

自治体DXの進め方と、進捗の確認方法

自治体DXは、認識共有、全体方針、推進体制、取組の実行の順に進め、手続ごとのオンライン申請率や1件あたりの処理時間などの数字で進捗を確認します。

計画は、BPRを検討する最初の段階で現状分析の一環として業務量等を調べ、取組の前後で比べられる数値を把握しておくことを勧めています。北見市の事例のように、小さく始めて修正を重ねる進め方も、事例集で紹介されています。総務省は、重点取組事項についての全国的な進捗状況を計画の別紙で取りまとめるとともに、自治体ごとの進捗状況をダッシュボード化(見える化)し、課題を早く把握できるようにするとしています。自団体でも、「導入したかどうか」ではなく、数字で確認することが大切です。確認したい指標の例は次のとおりです。

確認する観点指標の例確認のしかた
住民の利便性手続ごとのオンライン申請率、窓口の待ち時間、来庁回数申請件数に占めるオンラインの割合を、手続ごとに毎月集計する
職員の業務負担1件あたりの処理時間、転記や本人確認にかかる時間、時間外勤務オンライン化や窓口改革の前後で、同じ時期の数値を比べる
標準化・共通化標準化の作業手順の完了率、共同調達したシステムの数国のダッシュボードや別紙の全国値と自団体を比べる
人材と体制DX推進リーダーの人数と配置課数、研修の受講率、育成目標に対する達成度人材育成の目標レベルと照らし、年度ごとに更新する
安全管理個人番号の取扱いに関する確認漏れや誤りの件数、保管期限を過ぎた番号の件数取扱いの記録を定期的に点検し、傾向を見る

特に「職員の業務負担」「人材と体制」「安全管理」は、住民から見えにくいぶん後回しになりがちです。処理や管理の記録がシステムに残る仕組みにしておくと、処理時間や確認漏れを数字で追いやすくなります。DXの全体像と進め方の一般論は、DX推進の進め方の解説記事で、自治体の業務委託(BPO)の考え方は、自治体BPOの解説記事で整理しています。

自団体の職員の人材情報と個人番号の管理が、手作業のままになっていないかを、次の項目で確認してみてください。

DXの担い手と個人情報の管理、手作業のままになっていませんか?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

よくある質問(FAQ)

Q1. 自治体DXとは何ですか?

A. デジタル技術やデータを活用して住民の利便性を高めるとともに業務を効率化し、生まれた人的資源を行政サービスの向上につなげる取り組みです。住民との接点(フロントヤード)と内部事務(バックヤード)のデジタル化に一体的に取り組み、業務の流れそのものを見直す点が特徴です。

Q2. 自治体DXが進まない理由は何ですか?

A. 主な理由は、DXを担う人材と推進体制の不足、事業者の事情による標準化の移行の遅れ、業務の見直しを伴わないシステム導入の3つです。総務省の資料では、デジタル人材の確保・育成の方針を策定済みの市区町村は2024年4月時点で416にとどまり、2026年度以降の移行となる団体は2025年10月末時点で743団体(41.6%)とされています。

Q3. 自治体DXの事例にはどのようなものがありますか?

A. 総務省の「自治体DX推進参考事例集」(第4.0版)に多数まとめられています。例えば北見市の「書かないワンストップ窓口」は、転居手続でカウンターを回る回数が4回から1回に減った例が、横須賀市の手続きナビは繁忙期の最大待ち時間が100分から38分に短縮された例が紹介されています。

Q4. 自治体DX推進計画の最新版と、重点取組事項を教えてください。

A. 最新版は2026年1月30日に総務省が公表した第5.1版です。重点取組事項は、フロントヤード改革、情報システムの標準化、国・地方デジタル共通基盤に基づく共通化等の推進、公金収納におけるeL-QRの活用、マイナンバーカードの取得支援・利用の推進、セキュリティ対策の徹底、AIの利用推進、テレワークの推進の8つです。今後も改定される可能性があるため、総務省のページで最新版を確認してください。

Q5. 情報システムの標準化の期限はいつですか?

A. 国の基本方針では、2025年度までに標準準拠システムへ移行できる環境を整えることが目標とされてきました。事業者のリソースひっ迫などで2026年度以降の移行となるシステムは「特定移行支援システム」として扱われ、国が期限を個別に設定し、おおむね5年以内の移行を支援するとされています。

Q6. 自治体DXを担うデジタル人材は、どのように育成・確保しますか?

A. 総務省は、高度専門人材、DX推進リーダー、一般行政職員の3類型に分け、類型ごとに育成するか確保するかを決める考え方を示しています。まず人材像と目標人数を方針に定め、職員のデジタルスキルを把握したうえで、研修や資格取得の奨励、外部人材の任用を組み合わせます。人材情報の把握には、人事管理システムを使う方法もあります。

まとめ

自治体DXは、システムを新しくすることがゴールではなく、住民との接点と内部事務を一体的に見直し、人口減少の中でも行政サービスを続けられる体制をつくる取り組みです。押さえておきたい行動は次の5つです。

  1. 総務省の自治体DX推進計画の最新版(第5.1版)で、8つの重点取組事項と全体手順書の4ステップを確認する
  2. 参考事例集から、自団体と人口規模や課題が近い事例を選び、効果の測り方も参考にする
  3. 標準化は業務の見直しとセットで進め、特定移行支援システムの扱いや移行時期を事業者に確認する
  4. 最初に業務量を調べ、住民の利便性と職員の負担の両面を数字で確認する
  5. 職員の人材情報、異動・配置、個人番号の管理を見直すときは、人事管理システムの資料を取り寄せて比較する

人材の育成や個人情報の管理は、DXの方針と体制が決まった後に仕組み化を検討しても遅くありません。なお、本記事は自治体DXに関する一般的な整理を目的としたものであり、具体的な対応は総務省やデジタル庁の最新の公式情報を確認したうえで判断してください。個人番号の取り扱いなど法令に関わる事項は、個人情報保護委員会のガイドラインや専門家に確認してください。

参考文献

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