建設業のDXとは?事例・BIM/CIMとICT施工の違い・進め方と失敗例
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- 建設DXの意味とBIM/CIM・ICT施工の違いがわかる
- 事例の探し方と工事管理の進め方がわかる
- 小さく試す進め方と失敗例・効果の確認がわかる
建設業のDX(建設DX)とは、デジタル技術とデータを使って、調査・測量、設計、施工、検査、維持管理までの建設生産の工程と、それを支える人材や事務の仕組みを変革する取り組みです。BIM/CIMやICT施工、遠隔臨場などの技術がよく使われますが、機器やソフトを導入すること自体がゴールではなく、少ない人数でも安全に品質を保てる働き方へ変えることが目的です。本記事では、BIM/CIMとICT施工の違い、国土交通省のi-Construction 2.0、人手不足と2024年問題という背景、公的な事例データベースを使った事例の探し方、工事管理のデジタル化、進め方と失敗パターン、効果の確認方法までを整理します。
あなたの会社の、建設DXを現場に広げるときの壁は? かんたん診断
Q1. 新しい技術や手順を現場に広げるとき、いま一番の壁に近いものは?
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建設DXの技術を現場に定着させる、学びの仕組みの選択肢
建設DXの技術は、導入しただけでは成果が出にくく、操作や手順を現場の全員が学べる仕組みとセットで進めると定着しやすくなります。
BIM/CIMのソフトやICT建機を入れても、操作やデータの扱いを理解しているのが一部の担当者だけでは、現場全体の働き方は変わりません。基礎を共通して理解していれば、新しい技術を試すときの説明や引き継ぎも楽になります。現場が分散し、勤務時間もばらばらになりやすい建設業では、集合研修よりも、空き時間に学べて受講状況を管理者が確認できる仕組みのほうが運用しやすいと考えられます。建設DXの全体像は次の章から解説しますが、ここでは先に、技術を現場に広げるための学びの仕組みを3つ紹介します。
建設DXの現場定着を支えるeラーニング3サービスの役割の違い
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:Smart Boardingは、OJTで教えてきた現場の手順を学習プログラムにして、誰でも同じ内容を学べるようにしたい場合の一例です。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:SAKU-SAKU Testingは、新しい機器やソフトの理解度をテストの結果で確かめ、受講状況を把握したい場合の一例です。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:OneCompliance(ワンコンプライアンス)は、データの扱いやハラスメント防止などのルールを、研修で全社員に周知したい場合の一例です。
資料を無料ダウンロード| サービス | Smart Boarding |
SAKU-SAKU Testing |
|
|---|---|---|---|
| 向いている会社 | OJTで教えてきた現場の手順を教材にまとめ、誰でも同じ内容で学べるようにしたい会社 | 新しい機器やソフトの理解度をテストで確かめ、受講状況を把握したい会社 | データの共有や協力会社との連携が増えるなかで、情報管理やハラスメント防止などのルールを全社員に周知したい会社 |
| 特徴 | 社員研修・OJT・eラーニングを1つのシステムで進められ、LMS機能で進捗や理解度を確認できる。自社の資料や動画と用意されたコンテンツを組み合わせた研修コースを作れる | CBTの技術を生かしたテスト機能があり、ダッシュボードで受講状況やデータ分析を確認できる。既存の設問と自社オリジナルの設問を1つのテストにまとめられる | コンプライアンス研修に特化し、ハラスメント予防・個人情報保護法・情報セキュリティ・著作権などのコースがある。コース割り当てや自動リマインダーで受講管理の工数を減らせる |
| 注意したい点 | 自社の教育内容を学習プログラムにまとめる手間があり、導入時に担当者との打ち合わせが必要 | AIを使ったリモート監視機能などは有償オプションの契約が必要。日本国外での利用はサポート対象外 | 掲載されているコースは法務・労務・情報領域が中心で、施工技術の教材は掲載されていない。料金は受講者数などで変わる |
| 資料・詳細 |
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同サービスの導入事例では、ハウスメーカーのパナソニックホームズ北九州株式会社が、導入前の研修の課題を次のように説明しています。
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出典: パナソニックホームズ北九州株式会社(Smart Boarding導入事例) https://smartboarding.net/example/1834/
建設業DXとは|BIM/CIMとICT施工の関係
建設業のDXとは、建設生産の全工程と人材・事務の仕組みをデータとデジタル技術で変える取り組みで、その中心にBIM/CIMとICT施工があります。
建設業のDXとは、デジタル技術とデータを使って、建設生産の全工程(調査・測量、設計、施工、検査、維持管理)と、それを支える人材や事務の仕組みを変革する取り組みです。単に紙をデジタルに置き換えるIT化とは異なり、データを工程間で受け渡し、判断や作業のやり方そのものを変える点に特徴があります。
建設DXの中心としてよく並べて語られるのが、BIM/CIMとICT施工です。両者は混同されやすいものの、役割は異なります。BIM/CIMは建設物の「情報のつくり方と共有のしかた」、ICT施工は「現場での作業のしかた」を変えるものと捉えると整理しやすくなります。
| 項目 | BIM/CIM | ICT施工 |
|---|---|---|
| 中身 | 構造物を3次元モデルと属性情報(材料、寸法、工程など)で表し、関係者で共有する考え方 | ドローン測量、3次元設計データ、ICT建機(マシンガイダンス・マシンコントロール)などを使って施工する方法 |
| 主に使う工程 | 計画・設計から施工、維持管理まで全体 | 測量・施工・出来形管理(検査)が中心 |
| 主な効果 | 干渉チェックや合意形成がしやすくなり、手戻りや図面の食い違いが減る | 丁張り設置や検測の手間が減り、経験の浅いオペレーターでも一定の精度で作業しやすくなる |
| 必要になる人材 | 3次元モデルを作成・確認・更新できる技術者 | 3次元データを扱える測量・施工管理の担当者と、ICT建機を操作できるオペレーター |
両者はつながっています。設計段階で作られた3次元モデルや3次元設計データがあると、ICT建機はそのデータを読み込んで施工でき、施工で得た出来形データは維持管理用のモデルに引き継げます。つまり、BIM/CIMでデータの流れを作り、ICT施工でそのデータを現場の作業に生かす関係です。どちらか一方だけを導入すると、データの手入力や作り直しが発生し、効果が限定的になりやすい点に注意が必要です。
BIM/CIM・ICT施工とあわせて使われる主なデジタル技術
建設DXでは、BIM/CIMとICT施工のほかにも、次のような技術が組み合わせて使われます。いずれも単独で導入するより、どの工程のどの作業を減らすのかを決めてから選ぶと効果を確認しやすくなります。
| 技術 | 建設業での主な使い方 | 期待できること |
|---|---|---|
| ドローン・3次元測量 | 上空からの撮影やレーザー計測で、地形や出来形を点群データとして取得する | 測量にかかる人数と日数を減らし、施工や検査のデータとして使える |
| クラウド(施工管理・写真管理) | 図面、工程表、工事写真、日報を現場と本社で共有する | 電話や紙のやり取りが減り、離れた場所からでも現場の状況を確認できる |
| IoT・センサー | 建機の稼働状況や作業員の位置、気温や騒音などを自動で記録する | 安全管理や稼働管理を、人の見回りだけに頼らず行える |
| AI(画像解析など) | 工事写真やカメラ映像から、危険な状態や劣化の兆候を検出する | 点検や確認の見落としを減らし、判断を補助する |
| 遠隔臨場(ウェアラブルカメラ・Web会議) | 発注者の段階確認や立会を、映像を通じてオンラインで行う | 移動時間と待ち時間を減らし、限られた労働時間を現場作業に回せる |
建設業DXが求められる背景|人手不足・2024年問題・安全と技能継承
建設業でDXが急がれる背景は、担い手の不足と高齢化、2024年4月からの時間外労働の上限規制、そして現場の安全と技能継承の課題の3つです。
最大の理由は、担い手の不足です。技能者の高齢化が進む一方で若い入職者は十分に増えておらず、熟練者の経験に支えられてきた作業を、このままの体制で続けることが難しくなっています。i-Construction 2.0でも、人口減少が進むなかでインフラの整備・維持管理を持続的に行うことが課題として示されています。
もう1つの背景が、いわゆる2024年問題です。建設業(工作物の建設の事業)は、時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予されていましたが、2024年4月から適用されています。原則として月45時間・年360時間が限度となり、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間以内などの規制があります。災害時の復旧・復興の事業は、月100時間未満や2-6か月平均80時間以内の規制が適用されないなど、一部が除外されています。長時間労働で工期を守るやり方は通用しにくくなりました。
| 背景 | 現場で起きていること | DXでの対応の方向 |
|---|---|---|
| 担い手の不足・高齢化 | 熟練者の引退で、技術やノウハウが引き継がれない | ICT施工で経験の浅い人でも一定の品質を出せるようにし、ノウハウを教材やデータとして残す |
| 2024年問題(時間外労働の上限規制) | 残業で工程の遅れを吸収できなくなる | 測量・検査・書類作成の時間を減らし、工程と労働時間をデータで管理する |
| 属人化 | 現場の状況が担当者の頭の中や紙にしかない | 写真・日報・図面をクラウドで共有し、本社や他の現場からも状況を確認できるようにする |
| 現場の安全確保 | 高所や重機の周辺など、危険を伴う作業に人が立ち入る | ロボットや遠隔操作、遠隔臨場で、危険な場所に人が立ち入る回数や移動を減らす |
現場の安全と技能継承もDXの対象
建設現場には、高所や重機の周辺など危険を伴う作業があり、作業者の安全を確保することは使用者の責務です。労働契約法第5条は、使用者が、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をするものとしています(安全配慮義務)。建設DXでは、ロボットによる巡回や、クレーンの遠隔操作、ウェアラブルカメラを使った遠隔臨場など、危険な場所に人が立ち入る回数や移動を減らす取り組みが各社で進められています。具体的な取り組みは、次の「建設DXの事例」の章で紹介します。
もう1つの課題が技能継承です。熟練者が持つ判断の基準や段取りは、言葉や手順として残さなければ引き継がれません。ICT施工のように機器が作業を補助する技術に加えて、操作や手順を教材にして学べる状態にしておくと、熟練者が少ない会社でもベテランの隣につくOJTだけに頼らずに育成を進めやすくなります。基礎的な知識や安全手順は、現場の空き時間に繰り返し学べる形にしておくと、限られた労働時間の中でも育成を進めやすくなります。
i-ConstructionとDXの位置づけ
i-Constructionは国土交通省が2016年度から進める建設現場の生産性向上の取り組みで、2024年4月に策定されたi-Construction 2.0は、2040年度までに省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍にすることを目指しています。
i-Construction(アイ・コンストラクション)は、国土交通省が2016年度から進めている、建設現場の生産性向上の取り組みです。ICT土工に代表されるICTの全面的な活用などを建設現場に導入し、建設生産システム全体の生産性を高めることを目指してきました。建設業のDXを考えるうえで、公共工事の発注者である国がどの方向を示しているかを押さえておくことは、民間工事中心の会社にとっても重要です。
i-Construction 2.0で示された3本の柱
国土交通省は2024年4月16日に「i-Construction 2.0」を策定しました。2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍に高めることを目標に掲げ、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」の3つを柱としています。各柱の詳しい内容は国土交通省の資料で確認できます。下の表は、中小建設会社が関わる場面を、柱の名称から読み取れる範囲で整理した一般的なイメージです。
| 柱 | 取り組みのイメージ | 中小建設会社との関わり |
|---|---|---|
| 施工のオートメーション化 | 建設機械の自動化・遠隔化などで、現場作業の省人化を進める | ICT建機のレンタルや、ICT施工に対応した協力会社との連携から関わることが多い |
| データ連携のオートメーション化 | BIM/CIMなどを通じて、設計から施工、維持管理までデータを受け渡す | 発注者や元請から3次元データで情報を受け取る場面が増える |
| 施工管理のオートメーション化 | 遠隔臨場やデジタル技術による検査・管理業務の効率化 | 写真管理や書類作成、段階確認のオンライン化など、身近な業務から取り組める |
BIM/CIMの原則適用
データ連携の面では、国土交通省の直轄土木業務・工事において、2023年度からBIM/CIMが原則適用されています(小規模なものなどを除く)。国土交通省は「直轄土木業務・工事におけるBIM/CIM適用に関する実施方針」や、原則適用に関する参考資料などを公開しており、公共土木工事に関わる会社は、どの項目が求められるのかを事前に確認しておく必要があります。自治体発注の工事や民間工事では扱いが異なるため、発注者ごとの要件を確認することが大切です。
i-Constructionは土木分野の公共工事を中心に進んできた取り組みですが、考え方そのものは建築分野や民間工事にも通じます。「データを工程間でつなぐ」「少ない人数で品質を保つ」という方向性は、会社の規模や工種を問わず建設DXの共通の目標だといえます。
建設DXの事例|工程・技術・効果から自社に近い事例を探す
建設DXの事例は、工程(測量・設計・施工・維持管理)、技術、期待する効果の3つの軸で探すと、自社に近いものを見つけやすくなります。
建設DXの事例は、「どの会社がやったか」よりも「どの工程のどの作業が、どう変わったか」で読むと自社に生かしやすくなります。大手ゼネコンの事例をそのまま真似する必要はなく、「現場に行かずに確認する」「危険な場所に人が行く回数を減らす」といった考え方を、自社の規模に置き換えて取り入れるのが現実的です。
公的な事例データベースの使い方
日本建設業連合会(日建連)の「建設DX事例集」は、日建連会員企業が受注した各種工事での建設DXの適用事例を検索できるシステムです(2026年10月15日確認)。キーワード検索のほか、施工プロセス(測量・設計・施工・維持管理)、機能(3D測量、UAV、BIM/CIM、VR・MR・AR、自動・自律、ICT建機、ロボット、GNSS、遠隔臨場、情報共有システム、書類・掲示の電子化、AIなど)、採用効果(品質、コスト縮減、工期短縮、安全性向上、労働時間短縮など)、会社名で絞り込めます。特定の企業を順位づけした一覧ではなく、自社の課題に近い事例から取り組んだ企業を探せる点が使いやすいところです。
| 自社の悩み | 絞り込みの軸の例 | 事例で確認したい点 |
|---|---|---|
| 測量や出来形の確認に、人手と日数がかかっている | 機能: 3D測量・UAV・ICT建機 | 従来の方法と比べた人数・日数の差、必要になった機器とデータ |
| 立会や確認のために、現場や発注者のもとへ移動している | 機能: 遠隔臨場・情報共有システム | 移動や待ち時間の変化、発注者との取り決め |
| 書類や写真の整理に時間を取られている | 機能: 書類・掲示の電子化 | 書類作成にかかる時間、現場での入力のしかた |
| 危険な作業や巡視の負担を減らしたい | 機能: ロボット・自動・自律、採用効果: 安全性向上 | 人が立ち入る回数や作業の変化、導入した現場の条件 |
企業の取り組み例(公表資料より)
各社が公表している資料から、現場の巡視と重機の操作を変えた2つの例を紹介します。
| 企業 | 取り組みの内容 | 変わった作業 |
|---|---|---|
| 大成建設(2024年10月28日発表) | 四足歩行ロボットの遠隔操作と自律制御による巡回監視システム「T-InspectionX」を開発し、首都圏の建設現場に導入して実用性を確認した。あらかじめ指定したポイントを自動で巡回し、現場の動画情報を自動で収集できる | 施工品質や安全性の確認(巡視)を、人が歩いて行う方法から、遠隔操作や自動巡回に広げる。発表では、管理業務の効率化による生産性の向上を目的としている |
| 竹中工務店・鹿島建設・アクティオ・カナモト(2021年12月14日発表) | タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo」の専用コックピットタイプを、大阪市内の建設現場の解体作業に本格導入。日中のすべての作業を遠隔操作で行うのは国内初としている | 運転席への昇降に要していた約30分が削減され、オペレーターの作業環境が大幅に改善したとしている |
出典: 大成建設のプレスリリースhttps://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/241028_10189.html、竹中工務店のプレスリリースhttps://www.takenaka.co.jp/news/2021/12/06/。いずれも大手企業の取り組みですが、「危険や移動を伴う作業を、遠隔や自動に置き換える」という考え方は、写真管理や遠隔臨場など身近な業務から取り入れられます。
建設以外の業種の進め方も参考になります。たとえば農業分野の取り組みは、農業DXとは?スマート農業の進め方と導入段階を解説で整理しています。現場の人手不足にデータと機器で対応するという点では、建設業と共通する考え方があります。
工事管理・施工管理のデジタル化|写真・日報・工程・原価をどうつなぐか
工事管理のデジタル化は、写真・日報・工程・原価などの情報を、現場と本社で同じデータとして共有できる状態にすることから始まります。
施工管理や工事管理のデジタル化は、BIM/CIMやICT建機のような大きな投資をしなくても始められる、身近な建設DXです。工事写真の整理、日報の転記、工程表の更新、原価の集計など、紙やExcelで手作業が多い業務から、効果を確認しやすい順に取り組むと進めやすくなります。
| 業務 | 紙・手作業で起きやすいこと | デジタル化の例 | ツール選びで確認すること |
|---|---|---|---|
| 工事写真 | 撮影後に事務所で整理し、台帳に貼り付ける手間がかかる | スマートフォンやタブレットで撮影し、現場で整理・共有する | 発注者の写真管理の基準や、電子納品の要件に合うか |
| 日報・勤怠 | 事務所に戻ってから手書きやExcelに転記する | 現場から入力し、日報や勤怠のデータを集計する | 現場の端末で入力しやすいか、協力会社の作業員も使えるか |
| 工程管理 | 工程表の更新が担当者任せで、遅れの共有が遅れる | 工程と進捗をクラウドで共有する | 変更が関係者にすぐ伝わるか、閲覧と編集の権限を分けられるか |
| 原価・実行予算 | 工事ごとの原価が月末にまとめて集計される | 原価管理システムと会計や勤怠のデータを連携する | 既存の会計・勤怠システムとデータをつなげられるか |
| 図面・書類 | 最新版の図面が現場で共有されていない | 図面や書類をクラウドで共有する | 版管理ができるか、情報セキュリティの要件を満たすか |
| 立会・段階確認 | 発注者の立会のために移動や待機が発生する | 遠隔臨場(ウェアラブルカメラとWeb会議)で確認する | 発注者が遠隔臨場を認めているか、通信環境が確保できるか |
建設DXのツールを選ぶ前に確認する5点
建設DXのツールは数が多く、「どれがよいか」から探すと迷いやすくなります。特定のツールや企業を順位づけして選ぶのではなく、次の5点を先に整理してから比べると、自社に合うものを絞り込めます。
- 解決したい業務と、減らしたい時間を決める(例: 写真整理に月何時間かかっているか)
- 発注者の要件と、協力会社が対応できるデータ形式を確認する
- 現場の端末と通信環境で、実際に使えるかを確認する
- 会計・勤怠など既存のシステムとデータを連携できるかを確認する
- 現場の全員が使い方を学べる教材と、受講状況を確認する仕組みを用意する
導入費用には、国や自治体の補助制度を使える場合があります。制度は年度ごとに名称・対象・要件が変わるため、中小企業庁や自治体などの公式情報で最新の内容を確認してください。5つ目の「使い方を学ぶ仕組み」は、導入後に見落とされやすい点です。次の章の進め方で、小さく試す段階から教育を組み込む方法を説明します。
CCUSの活用と建設業DXの進め方
建設業DXは、現状把握、優先順位づけ、小さな試行、標準化と教育、横展開の5ステップで、小さく始めて広げる進め方が失敗しにくくなります。
建設DXは設計や施工の技術だけの話ではありません。建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の資格や現場での就業履歴などを登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みで、国土交通省と建設業団体が連携して普及に取り組んでいます。現場ごとに人の出入りが多い建設業で、誰がどの技能を持ち、どの現場で経験を積んできたかをデータで把握できる点が、人材面のDXの土台になります。
CCUSのデータは、入退場の記録や安全書類の確認、技能者の処遇改善や育成計画にも活用できます。人材の情報がデータとしてそろっていると、「どの技能者に、どの技術の研修が必要か」を判断しやすくなり、新しい技術を現場に展開するときの計画も立てやすくなります。
建設業DXを進める5つのステップ
建設DXは、いきなり大きなシステムを導入するより、課題を絞って小さく試し、効果を確かめてから広げる方が失敗しにくくなります。一般的な進め方は次のとおりです。全体のロードマップの考え方は、DX推進の進め方|6ステップで作るロードマップと失敗回避策も参考になります。
- 現状把握:紙・Excel・電話・写真フォルダなど、情報が分散している業務と、時間がかかっている作業を洗い出す
- 優先順位づけ:人手不足や手戻り、利益への影響が大きい業務から対象を選ぶ
- 小さく試す:1つの現場や1つの業務で、ICT施工やクラウドでの写真管理などを試行する
- 標準化と教育:試行でわかった操作手順や運用ルールを文書と教材にまとめ、関係者が学べる状態にする
- 横展開:効果を確認したうえで、ほかの現場や協力会社へ広げる
見落とされやすいのが4つ目の「標準化と教育」です。試行した現場の担当者だけが使い方を知っている状態で横展開すると、別の現場で同じ効果が出ません。手順を教材にして、誰でも同じ内容を学べる状態にしてから広げることが、建設DXを会社全体の取り組みにするための分かれ目になります。
データを扱うときに社内で周知したいルール
DXで扱うデータが増えると、守るべきルールも増えます。CCUSには技能者の資格や就業履歴など個人に結びつく情報が含まれ、工事写真や3次元データ、図面は協力会社とクラウドで共有する場面が増えます。個人情報の取り扱いや情報セキュリティは、システム担当者だけでなく、現場の全員が理解しておく必要があります。IPAは中小企業向けの情報セキュリティ対策ガイドラインを公開しており、社内ルールをつくるときの参考になります(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html)。
また、現場の人員が入れ替わりやすい建設業では、ハラスメントの防止も欠かせません。事業主は労働施策総合推進法第30条の2に基づき、パワーハラスメントの防止措置を講じる義務があります(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)。方針の周知や相談窓口の設置などを、現場を含む全員に伝えておく必要があります。
こうしたルールを、現場を含む全社員に定期的に周知したい場合の一例が、OneCompliance(ワンコンプライアンス)です。コンプライアンス研修に特化したeラーニングで、商品ページには、ハラスメント予防(管理者向け・全従業員向け)、個人情報保護法、情報セキュリティ、著作権などのコースが掲載されています。コースの割り当てや自動リマインダーにより、連絡や集計にかかる工数を減らせるとされています。注意したい点は、掲載されているコースが法務・労務・情報領域が中心で、施工技術の教材は掲載されていないことです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社Oyster
OneCompliance(ワンコンプライアンス)
株式会社Oyster
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コンプライアンスに特化!上場準備中/IPO準備中、上場企業、大手グループ会社、監査法人、金融機関/フィンテック、中堅/中小企業の方に特におすすめ

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ここまでの手順を、自社の状況に当てはめて点検してみてください。標準化と教育の段階で、つまずきやすい点をまとめたセルフチェックです。
新しい技術の定着度セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
建設業DXでよくある失敗パターン
建設業のDXがうまくいかない原因は、技術そのものよりも、導入後に現場で使われ続ける仕組みがないことにあります。導入後に起きやすい失敗と、その対策を整理しました。
建設DXは、技術を導入した時点では成果が出ません。現場で使われ続け、データが次の工程や判断に生きて初めて効果が出ます。
建設業でDXが進みにくい3つの理由
失敗パターンを見る前に、建設業でDXがなかなか進まない理由を押さえておくと、自社のつまずきやすい点が分かります。多くの解説で共通して挙げられるのは、次の3つです。
| 進みにくい理由 | 背景 | 考え方の例 |
|---|---|---|
| 導入・運用コストの負担 | ICT建機やソフトの初期費用に加え、保守やライセンス料、データ作成の手間が続く | レンタルや小さな試行から始め、効果を数字で確かめてから投資を広げる。国や自治体の補助制度は年度ごとに内容が変わるため、公式情報で確認する |
| DXを進める人材の不足 | ITに詳しい社員が少なく、現場の業務とデジタル技術の両方が分かる担当者を置きにくい | 推進役を1人決め、外部の支援も使いながら、社員全体の基礎知識を教育でそろえる |
| 現場への定着の難しさ | 工事ごとに条件が違う一品生産で、経験と勘に支えられた現場のやり方と新しい手順がかみ合いにくい | 現場の意見を聞いて手順を決め、操作を学ぶ時間と教材を用意してから広げる |
3つ目の「現場への定着」は、コストや人材の問題が解決しても残りやすい課題です。次の表では、導入後に起きやすい失敗を具体的に整理します。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| ICT建機を導入したが、特定のオペレーターしか使えない | 操作方法が担当者の経験として個人に残り、ほかの人に伝わっていない | 操作手順と注意点を教材にまとめ、複数の社員が学べるようにする |
| 3次元モデルを作ったが、施工や維持管理で使われない | モデルを作る目的や、誰がどの段階で更新するかが決まっていない | 活用する場面と更新の責任者を、導入前に決めておく |
| 全社で一斉にシステムを入れ、現場が紙に戻る | 現場の負担が一時的に増え、使い方の説明も不足している | 1現場で試し、運用ルールを固めてから広げる |
| 協力会社との間でデータがつながらない | データ形式や共有方法、協力会社の対応状況を確認していない | 発注者要件と協力会社の体制を確認し、共有方法を事前に決める |
| データを記録することが目的になる | 記録したデータを、工程や原価の改善にどう使うかを決めていない | 導入前に確認したい指標を決め、定期的に振り返る |
これらの失敗に共通するのは、技術の導入と「人が使えるようになること」を別々に考えてしまう点です。機器やソフトの予算を確保するときは、あわせて操作教育の時間と仕組みも計画に入れておくと、導入後に現場で使われなくなるリスクを下げられます。特に1つ目の「特定のオペレーターしか使えない」は、OJTで個人に残った操作の知識を教材にして共有することで改善しやすい課題です。
建設業DXの効果をどう確認するか
建設DXの効果は、生産性、労働時間、品質・安全、技術の浸透度の4つの観点で、導入前の数字と比べて確認します。
建設DXの効果は、「導入したかどうか」ではなく、数字で確認することが大切です。試行する前に指標と現状の値を記録しておくと、横展開するかどうかを判断しやすくなり、社内や取引先への説明にも使えます。確認したい指標の例は次のとおりです。
| 確認する観点 | 指標の例 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 生産性 | 測量・丁張り・検査にかかる人数と日数、工期 | 試行した現場と、従来の方法で進めた類似の現場を比べる |
| 労働時間 | 現場担当者の時間外労働、書類作成にかかる時間 | 勤怠データを導入前後の同じ期間で比べる |
| 品質・安全 | 手戻りの件数、出来形の不合格件数、ヒヤリハットの件数 | 現場ごとの記録を集計し、傾向を見る |
| 技術の浸透度 | 新しい機器やソフトを操作できる社員の人数、研修の受講率とテストの正答率 | 教育の受講記録と、実際の現場での利用状況を照らし合わせる |
特に「技術の浸透度」は、ほかの指標の前提になります。操作できる人が増えなければ、生産性や労働時間の改善は一部の現場にとどまるからです。受講状況やテスト結果を記録できる学習管理の仕組みを使うと、誰がどこまで理解しているかを把握でき、追加で教育が必要な人や現場を早めに見つけられます。
技術の浸透度を受講記録とテストで確認したい場合の一例が、株式会社イー・コミュニケーションズのSAKU-SAKU Testingです。CBT(コンピュータ上で試験を行う方式)の技術を生かしたテスト機能があり、ダッシュボードで受講状況やデータ分析を確認できると商品ページで紹介されています。既存の設問と自社オリジナルの設問を1つのテストにまとめることもできるため、自社の機器の操作手順に合わせた確認テストを作れます。注意したい点は、AIを使ったリモート監視機能などは有償オプションの契約が必要なこと、日本国外での利用はサポート対象外であることです。建設業向けの教材があるかや料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社イー・コミュニケーションズ
SAKU-SAKU Testing
株式会社イー・コミュニケーションズ
SAKU-SAKU Testing
初心者にも◎受講者の管理をスムーズに行いたい方におすすめ
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- 不慣れな方でも作成・登録しやすいコンテンツ機能を多数搭載
- あらゆる企業ですぐに役立つ実践的な内容のコンテンツを厳選して用意
- ユーザー管理機能を備えているため、より細かな対象でカテゴリーやグループを紐づけられる
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- 事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いとなる
同サービスの導入事例では、研修を拡充したい企業が、導入後の変化を次のように説明しています。
コンテンツの質の向上はもちろん、受講者への事前リマインドによる受講率向上や、受講状況・結果を容易に把握できるようになったことで、次の施策への展開が容易になった。
出典: メディカル・データ・ビジョン株式会社(SAKU-SAKU Testing導入事例) https://www.e-coms.co.jp/jirei/jirei29
よくある質問(FAQ)
Q1. 建設業のDXとは何ですか?
A. デジタル技術とデータを使い、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までの建設生産の工程と、人材や事務の仕組みを変革する取り組みです。紙をデジタルに置き換えるだけでなく、データを工程間でつなぎ、少ない人数でも品質を保てる働き方に変えることを目指します。
Q2. 建設業のDXが進まない理由は何ですか?
A. 主な理由は、導入・運用コストの負担、DXを進める人材の不足、現場への定着の難しさの3つです。工事ごとに条件が違う一品生産で、経験と勘に支えられたやり方と新しい手順がかみ合いにくい面もあります。小さく試し、操作を学ぶ時間と教材を用意してから広げることが対策になります。
Q3. 建設業におけるDXの事例にはどのようなものがありますか?
A. 大成建設が四足歩行ロボットによる巡回監視システムを首都圏の建設現場に導入した例や、竹中工務店などがタワークレーンの遠隔操作システムを工事に本格導入した例があります。日建連の建設DX事例集では、工程・技術・効果で事例を検索できます。
Q4. BIM/CIMとICT施工の違いは何ですか?
A. BIM/CIMは構造物を3次元モデルと属性情報で表し、設計から維持管理まで関係者で共有する考え方です。ICT施工はドローン測量やICT建機などを使って現場の作業を行う方法です。BIM/CIMで作ったデータをICT施工で生かす関係にあります。
Q5. 建設DXに取り組む企業の一覧はどこで確認できますか?
A. 特定の企業を順位づけした一覧ではなく、日建連の建設DX事例集で、工程や技術、効果、会社名から事例を検索できます。自社の課題に近い事例の企業を探し、各社の公式サイトで取り組みの内容を確認する方法が確実です。
Q6. 中小建設会社は何から始めればよいですか?
A. 情報が紙や個人に分散している業務や、時間がかかっている作業を洗い出し、影響の大きいものから1つの現場で試すのが現実的です。写真管理や書類作成のデジタル化など身近な業務から始め、手順を教材にまとめて、操作や受講状況を確認できる仕組みを整えてから他の現場に広げると定着しやすくなります。
まとめ|建設業DXを進める5つのポイント
建設業のDXは、BIM/CIMやICT施工などの技術を入れることがゴールではなく、データと人の力で少ない人数でも品質を保てる現場をつくる取り組みです。押さえておきたいポイントは次の5つです。
- BIM/CIMは情報のつくり方と共有、ICT施工は現場の作業を変えるもので、両者をつなげて使うと効果が大きい
- 国土交通省はi-Construction 2.0で2040年度までに省人化3割を目指し、2023年度から直轄土木業務・工事でBIM/CIMを原則適用している。人手不足と2024年問題、安全と技能継承が背景にある
- 事例は工程・技術・効果の3つの軸で探し、工事管理は写真・日報・工程・原価など身近な業務から始める
- 小さく試して標準化・教育を行い、浸透度を含めた指標で効果を確認してから横展開する
- 技術を現場に定着させる学びの仕組みとして、Smart Boarding、SAKU-SAKU Testing、OneComplianceなどのeラーニングの資料を取り寄せ、自社の課題に合うかを比較して検討する
新しい技術を使いこなせる人が増えるほど、建設DXの効果は会社全体に広がります。技術の導入計画と同時に、社員が学び続けられる仕組みも検討しておきましょう。なお、本記事は建設DXに関する一般的な整理を目的としたものであり、法的助言ではありません。公共工事の要件や労働時間・安全配慮・ハラスメント防止の具体的な対応は、発注者の要件や最新の公式情報を確認したうえで判断してください。
参考文献
- 国土交通省「i-Construction」https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.html
- 国土交通省「i-Construction 2.0を策定しました」(2024年4月16日)https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html
- 国土交通省「BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月)」https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000115.html
- 国土交通省「建設キャリアアップシステムポータル」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000033.html
- 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
- 日本建設業連合会「建設DX事例集」https://www.nikkenren.com/doboku/seisansei/DXcase/
- 大成建設「四足歩行ロボットの遠隔操作・自律制御による巡回監視システム T-InspectionX を開発」(2024年10月28日)https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/241028_10189.html
- 竹中工務店「タワークレーン遠隔操作システム TawaRemo を工事に本格導入」(2021年12月14日)https://www.takenaka.co.jp/news/2021/12/06/
- e-Gov法令検索「労働契約法」https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
- 厚生労働省「ハラスメント対策情報(あかるい職場応援団)」https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html
