SaaS値上げへの対応は?契約更新前に確認すべき条項と費用項目
Check!
- SaaS値上げの理由と公式発表の例がわかる
- 通知後に確認する契約条項と費用項目がわかる
- 通知を見落とさない台帳の作り方がわかる
SaaSの値上げ通知を受けたら、まず適用開始日、更新日、解約や変更の申し出期限を契約条項で確認し、そのうえで継続・交渉・乗り換えを同じ費用項目で比べるのが基本です。円安、クラウドの運用費や人件費の上昇、AI機能の追加や課金単位の見直しなどが重なり、SaaSの料金改定は特別なことではなくなりました。一方で、部署ごとに契約したSaaSや、法人カード・立替で払っているSaaSまで把握できていないと、通知が届いてから慌てることになります。この記事では、値上げの背景と公式発表の例、通知と契約条項の確認、費用項目の比べ方、対応策、よくある失敗、効果の確認方法までを、SaaSを使う企業の立場から順に整理します。
SaaS値上げへの備え、いまの状況をかんたん診断
Q1. SaaSの値上げで、いま一番困っているのはどれですか?
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SaaS値上げに備える|見えないSaaS費用を支払いの記録から洗い出す
SaaSの値上げ対応は、契約中のSaaSと支払額を一覧にすることから始まります。材料になるのは、請求書だけでなく、法人カードの明細や立替精算といった、会社に残る支払いの記録です。
SaaSの費用が会社に届く経路は、大きく3つあります。情報システム部門が契約する請求書払い、部署が法人カードで払う月額サービス、社員が立て替えて精算するサービスです。請求書払いは契約書と請求書から把握できますが、後ろの2つは部署の判断で契約されやすく、更新日や通知の宛先が担当者個人に紐づいたまま、会社として見えなくなりがちです。値上げ通知が届いてはじめて存在に気づく、という事態はここから起きます。
カード払いや立替のSaaSを拾う手段のひとつが、経費精算システムです。申請の時点で支払先、金額、勘定科目が記録されるため、あとから「どの部署がどのSaaSにいくら払っているか」を引き当てる材料になります。ただし、経費精算システムは契約の更新日や解約期限を管理する道具ではありません。更新日と申し出期限は、後述する台帳で別に管理します。ここでは、支払いの記録を1か所に集める入口として、本サイトに掲載している5つのサービスを役割の違いで並べます。優劣や順位を示すものではなく、各商品ページの記載をもとに整理しています。
SaaS費用の支払い記録を集める5つの経費精算システム:役割の違いを比べる
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:楽楽精算。申請項目や承認フローを自由に設定でき、領収書やICカードをスマートフォンで読み取って申請できます
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:Bill One経費。ビジネスカードで経費を支払うことで、社員の立替経費をなくす仕組みです
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:ジンジャー経費。勤怠・給与・人事・経費などを1つに集約でき、所属部門ごとに承認ルートなどを設定できます
資料を無料ダウンロード| サービス | マネーフォワード クラウド経費 |
ジンジャー経費 |
Bill One経費 |
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|---|---|---|---|---|---|
| 向いている会社 | 立替精算の申請項目や承認フローを、自社のルールに合わせて設定したい会社 | カードの利用明細から経費を登録し、同じシリーズの会計や給与ともつなげたい会社 | 経費を人事・勤怠・給与のデータと一緒に管理し、ペーパーレス化したい会社 | 申請の不備や差し戻しの確認の手間を減らしたい会社 | 立替経費をなくし、支払いを会社のカードに集めたい会社 |
| 特徴 | 領収書やICカードをスマートフォンで読み取れ、社外からも申請や精算ができる。経費精算から会計ソフトの連携まで機能が幅広い | オンライン上でまとめて経費を申請でき、従業員や費目ごとの経費利用額が自動でグラフ化される。不備入力防止のアラートで差し戻しの手間を軽減できる | 社内に散らばる勤怠・給与・人事・経費などを1つに集約できる。さまざまな企業規模に対応する | 差し戻しや確認に時間をかけずに済むミス防止機能を複数搭載。アプリやチャットツールから承認でき、複数枚の領収書も自動で読み取れる | ビジネスカードで経費を支払うため、社員の立替経費をなくせる。領収書の受け取りから仕訳・保管までオンラインで一元管理できる |
| 注意したい点 | 外国語対応は英語のみ | OCR機能の精度があまりよくないとの記載がある | 導入までに最長3ヶ月ほどかかる | 導入前のサポートを受けたい場合は有償での対応となる | 初期費用が発生し、月払いではなく年額での支払いになる |
| 資料・詳細 |
5サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。内容は2026年10月19日時点の商品ページの記載にもとづきます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
まず、立替で払った月額SaaSの領収書を、申請の段階で記録に残したい場合の一例が、楽楽精算(株式会社ラクス)です。商品ページによると、領収書やICカードをスマートフォンで読み取り、社外からでも申請や精算ができます。経費精算から会計ソフトの連携まで機能が幅広く、申請項目や承認フローを自由に設定できるため、SaaSの利用料を分けて記録する申請区分を設ける運用にも合わせやすくなります。一方で、外国語対応は英語のみとされているため、海外拠点がある場合は対応言語を資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社ラクス
楽楽精算
株式会社ラクス
楽楽精算
ペーパーレス化により、経費精算の手入力業務や確認業務を効率化したい方におすすめ
基本情報

おすすめ!
- 領収書やICカードはスマホで読み取れ、社外からでも申請や精算が可能
- 経費精算から会計ソフト連携まで便利な機能が充実している
気になる…
- 外国語対応は英語のみ
-
各拠点の従業員の社内経費などを本社でまとめて管理できる点はメリットです。 また確認事項を赤字でアラートのように出しておくことができる点はいいと思います。
-
いつでもどこからでも清算できるので、出張中の方でも期末に間に合わせて精算ができます。また、精算するときの紙が紛失がなくなり、再申請の手間がなくなりました。
-
スマートフォン対応により時間と場所にとらわれない承認が可能となり、交通系ICカードとの連携により入力工数の削減ができるのがメリットとなります
これまでは1回の精算に15-16分くらいかかっていたのが、今はもう2-3分で終わるようになりました。
楽楽精算 導入事例(株式会社毎日新聞社。導入時期2016年10月の事例。コーポレートカードと交通系ICカードの連携を利用) 出典:導入事例ページ
SaaS値上げの背景と現状
SaaSの値上げは、為替、運用費や人件費、AI機能への投資、課金単位の見直しが重なって起きています。一時的な動きと考えず、契約更新のたびに料金改定がありうる前提で費用を管理します。
SaaSそのものの基本はSaaSとは|PaaS・IaaS・ASPとの違いと選び方の基準で、提供会社が継続課金で収益を積み上げる構造はSaaS企業とは|ビジネス構造と業界マップを公的データで整理で解説しています。
値上げの主な理由
| 理由 | 内容 | 影響を受けやすいSaaS |
|---|---|---|
| 円安 | 海外製SaaSはドル建ての価格を円に換算するため、為替の変動がそのまま料金に反映されやすい | 海外企業が提供するSaaS、ドル建て契約 |
| インフラ・人件費の上昇 | クラウドサーバーの利用料やエンジニアの人件費が上がり、提供コストが増えている | 国内・海外を問わず多くのSaaS |
| AI機能の追加 | 生成AIの処理費用がかかるため、AI機能を上位プランや別料金のアドオンにする動きがある | 業務アプリ、コミュニケーションツール |
| 料金体系の再設計 | 安価なプランの廃止や機能の組み替えにより、実質的な値上げになる | プラン数の多いSaaS |
| 課金単位の見直し | 席数(ID)ごとの課金から、利用量に応じた課金への変更や、含まれる機能の再パッケージで、同じ使い方でも請求額が変わる | AI機能を持つ業務アプリ、利用人数が変動するSaaS |
ガートナーの日本向けセッション概要(2026年6月18日開催)でも、値上げの原因は定価の上昇だけでなく、ソリューションの再パッケージ化や再バンドル、価格メトリクス(課金単位)の変更など多岐にわたるとされています。値上げ通知を読むときは、料金の数字だけでなく、含まれる機能と課金の単位が変わっていないかも確認してください。
公式発表にみる値上げの例
実際の改定は、提供会社の公式発表で確認できます。次の2つは、2025年から2026年にかけて公表された例です。値上げ率や対象は製品・エディション・地域によって異なるため、自社の契約には当てはまらない場合があります。
| 提供会社 | 対象と内容 | 適用時期 |
|---|---|---|
| Salesforce | Sales Cloud、Service Cloud、Field Service、一部の業種別ソリューションのEnterprise EditionとUnlimited Editionの標準価格を平均6%引き上げると発表。Foundations、Starter、Pro Editionは価格変更の予定なしとされている(2025年6月に発表) | 2025年8月1日 |
| Microsoft | 商用向けのMicrosoft 365スイートについて、セキュリティや管理などの新機能の追加とあわせて、定価を改定すると発表。価格は地域ごとに調整される(2025年12月4日に発表) | 2026年7月1日 |
どちらも、新しい機能やAI関連の追加とあわせて価格が見直されている点が共通しています。値上げの背景に機能追加がある場合は、使わない機能に費用を払うことにならないか、現在のプランのまま継続できるかを、更新前に確認します。また、公式発表は提供会社全体の方針を示すもので、自社の請求額は契約と更新通知で決まります。発表を見て不安になる前に、自社の更新通知と契約画面で、いつ、何が変わるのかを確認してください。
値上げの規模感
情報システム部門向けの解説記事(CloudNative BLOGs)では、国内外で広く使われているコミュニケーションツールやデザインツールで、10%から50%程度の値上げが行われた事例が紹介されています。また、1ドル110円から150円への円安で、ドル建てのSaaSは円換算で約36%のコスト増になると試算されています。1つひとつは小さな改定でも、利用しているSaaSの数が多いほど、全体の負担は大きくなります。
値上げ通知の仕組み|契約条項の確認ポイント
値上げ通知を受けたら、値上げ額より先に、適用開始日、更新日、解約や変更の申し出期限、課金の単位を契約条項で確認します。SaaSの値上げは、多くの場合、利用規約の料金条項を変更する形で行われます。
利用規約の変更と民法のルール
SaaSの利用規約の多くは、民法でいう「定型約款」にあたると考えられます。定型約款にあたるのは、不特定多数を相手にした画一的な取引の約款で、個別に条件を交渉して結んだ契約書は、その対象にならないことがあります。法務省の民法改正の説明資料によると、定型約款は、変更が利用者の一般の利益に適合する場合や、契約の目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性などの事情に照らして合理的な場合に限って、個別の合意なしに変更できるとされています。利用者にとって不利益になりうる変更の場合は、効力が生じる前にインターネットなどで周知する必要があります。値上げに納得できない場合でも、規約の変更手続きが適切に行われていれば、更新後は新料金が適用されるのが一般的です。
以上は一般的な整理であり、法的助言ではありません。個別の契約内容や変更の有効性は、契約書や規約の条項を確認し、判断に迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。
通知を受けたら確認する契約条項
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 適用開始日 | 即時適用か、次回の契約更新から適用か。年契約の途中で料金が変わるか |
| 自動更新の条件 | 自動更新の有無と、解約・プラン変更の申し出期限(更新日の30日前など) |
| 解約の条件 | 中途解約の可否、違約金、解約後のデータの扱い |
| 改定の対象範囲 | 基本料金だけか、オプションやアカウント追加の単価も変わるか |
| 課金の単位 | 席数(ID)ごとか利用量ごとか。最低契約数や、上限を超えたときの扱いが変わるか |
| 通貨と換算 | 円建てかドル建てか。為替の反映が、いつ、どの頻度で行われるか |
| 個別契約・見積もりの有無 | 個別の契約書や見積もりで価格を固定している場合は、そちらの条件が優先されることがある |
特に重要なのは、解約やプラン変更の申し出期限です。値上げ通知が契約更新の直前に届くこともあるため、期限を過ぎると検討の余地がないまま1年分の新料金が確定してしまいます。主要なSaaSの更新日と申し出期限は、日頃から一覧にしておきましょう。
料金改定の通知を見落とさない仕組み
値上げ通知は、契約時に登録した管理者のメールアドレスや、サービスの管理画面のお知らせに届くことが多くあります。登録したのが担当者個人のアドレスだと、異動や退職、迷惑メールの振り分けで見落としかねません。そこで、通知の宛先を部署の共有アドレスにする、請求書やカード明細の金額が前月と変わっていないかを毎月確認する、という2つを決めておきます。金額の変化は、通知を見落としたときの最後の気づきの手がかりになります。
そのうえで、契約中のSaaSを台帳にまとめます。次の項目を残しておくと、値上げ通知が来たときに、影響額と期限を同じ表で確認できます。
| 台帳に残す項目 | 書く内容 | 残す理由 |
|---|---|---|
| サービス名と用途 | 製品名、プラン、使っている業務 | 同じ用途のSaaSが重複していないかを見つける |
| 契約部署と担当者 | 契約した部署、管理者、通知の宛先 | 通知の見落としを防ぐ |
| 支払い方法 | 請求書払い、法人カード、立替精算 | 把握漏れが起きやすい支払いの経路を知る |
| 課金の単位と数量 | 席数、利用量、最低契約数 | 値上げの影響額を計算する |
| 更新日と申し出期限 | 自動更新の有無、解約・変更の期限 | 検討に使える時間を確保する |
| 年間の支払額 | 税や割引の扱いも含めた金額 | 見直しの優先順位を付ける |
請求書払い以外のSaaSを台帳に載せるには、カード明細や立替精算の記録を見直す必要があります。法人カードの明細から経費を登録して洗い出したい場合の一例が、マネーフォワード クラウド経費(株式会社マネーフォワード)です。商品ページによると、クレジットカードや電子マネーの明細から経費を登録でき、従業員や費目ごとの経費利用額が自動でグラフ化されます。同じクラウドシリーズのサービスと連携して、バックオフィス業務全体の効率化も図れます。一方で、OCR機能の精度があまりよくないとの記載があるため、領収書の読み取りを重視する場合は、資料や無料トライアルで確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社マネーフォワード
マネーフォワード クラウド経費
株式会社マネーフォワード
マネーフォワード クラウド経費
オンラインでミスなく経費精算業務を完結したい方におすすめ
基本情報

おすすめ!
- オンライン上でまとめて経費申請できる
- 従業員や費目ごとに経費利用額が自動でグラフ化
- 不備入力防止アラート機能で入力ミスが減るため、差し戻しの手間が軽減
気になる…
- OCR機能の精度があまりよくない
-
マネーフォワード経費の導入で、領収書の紛失防止や経費申請の手間が大幅に減りました。スマホから簡単に申請でき、経理処理も効率化。少人数でも正確かつスピーディに経費管理ができるようになり、本業に集中できる環境が整いました。
-
スマホで領収書を撮影してすぐに登録できるため、経費申請の手間が大幅に削減されました。紙の領収書を管理する必要がなくなり、紛失の心配も減りました。また、経費の承認フローがスムーズになり、申請から承認・振込までの時間が短縮されたのもメリットです。
-
レシートや領収書などもオンライン上にてアップロードでき、コピーや紙に添付など煩わしい処理が不用。また承認フローもオンラインで完結できる。

実際に使ってみたレビュー記事はこちら

【レビュー】マネーフォワードクラウド経費を実際に登録して使ってみた【使い方解説】
数ある経費精算システムの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド経費」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。
他システムとの比較記事はこちら
\気になるサービスをClickして比較!/
複数パターンあった当社の経費精算フローを1つのシステムに集約できるかどうかを重視しました。
マネーフォワード クラウド経費 導入事例(シャープファイナンス株式会社。システム選定で重視した点として掲載) 出典:導入事例ページ
ここまでの内容を踏まえて、自社の管理の状態を確認してみましょう。当てはまる項目の数で、次にやることが変わります。
SaaS値上げへの備え、今の管理で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
値上げ時に確認すべき費用項目
値上げの影響は、月額料金の差額だけでは判断できません。継続する場合の費用と、乗り換える場合の費用を、同じ項目で並べて比べると、どちらが本当に得かが見えてきます。
| 費用項目 | 継続する場合に見ること | 乗り換える場合に見ること |
|---|---|---|
| 月額・年額料金 | 値上げ後の年間総額、年払い割引の有無 | 代替サービスの年間総額、将来の値上げ履歴 |
| オプション費用 | AI機能や追加容量が別料金になっていないか | 同等の機能が標準プランに含まれるか |
| 利用量に応じた費用 | 従量部分の上限や超過時の扱いが変わっていないか | 同じ利用量で見積もった場合の金額 |
| 移行費用 | 発生しない | データ移行、初期設定、他システムとの連携の作り直し |
| 教育費用 | 新機能への対応程度 | 社員への研修、マニュアルの作り直し、慣れるまでの生産性低下 |
| リスク対応費用 | 今後も値上げが続く可能性 | 並行運用期間の二重払い、セキュリティ審査の手間 |
値上げの年間の影響額は、値上げ後の単価から値上げ前の単価を引いた差に、契約している数量をかけ、1年分に直して求めます。ドル建ての契約は、想定する為替レートを2つ以上の水準で試算しておくと、予算に余裕を持たせやすくなります。年額契約や複数年契約の場合は、契約期間の途中で新料金が適用されるかも確認してください。
継続と乗り換えを比べるときは、期間を1年か複数年のどちらかにそろえます。まだ金額が分からない項目は、ゼロにせず「見積もり待ち」と残しておくと、あとから抜けに気づけます。
判断の優先順位は、改定率よりも金額の大きさで決めるのが効率的です。改定率が小さくても契約金額が大きいSaaSは影響額が大きく、改定率が大きくても金額が小さいSaaSは後回しにしても全体への影響は限定的です。
対応策|交渉・代替案・複数サービス運用
値上げへの対応策は、「使い方を見直す」「条件を交渉する」「乗り換える」の3つです。費用のかからない見直しから順に進めると、失敗が少なくなります。
使い方を見直す
- 退職者や異動者のアカウント、ほとんどログインしていないアカウントを整理し、契約数を減らす
- 一部の機能しか使っていない場合は、下位プランへの変更を検討する
- 月払いから年払いに切り替え、割引が適用されるか確認する
- 同じ用途のSaaSを部署ごとに契約していないか確認し、1つにまとめる
利用状況を見るときは、ログインの回数だけで不要と判断しないでください。月次や年次の締め処理でしか使わない人、承認だけを行う人、閲覧専用で使う人は、ログインが少なくても業務に必要な場合があります。整理の前に、利用部門へ「そのSaaSがなくなると困る作業は何か」を確認します。
条件を交渉する
規約上の値上げそのものを撤回させるのは難しいものの、利用規模が大きい場合や複数年契約を検討している場合は、価格の据え置きや段階的な適用を相談できることがあります。交渉の前に、実際の利用人数、利用頻度、代替サービスの見積もりをそろえておくと、具体的な話がしやすくなります。
乗り換える・複数サービスで運用する
乗り換えを選ぶ場合は、前の章で整理した移行費用と教育費用を含めて比較します。すべての業務を1つのSaaSにまとめると値上げの影響をまともに受けるため、重要な業務は代替手段を用意しておく、データを定期的に書き出しておくなど、特定のサービスに依存しすぎない運用も有効です。
乗り換えを決める前に、代表的な業務を1つ選び、入力から承認、出力までを移行先で再現できるか小さく試します。データの件数だけでなく、履歴、添付ファイル、権限、他システムとの連携も確認の対象です。更新日に間に合わない場合は、契約上可能な継続の方法を確認し、急いで移行した場合の業務負担と比べて判断します。
次の値上げに備える社内ルールをつくる
値上げのたびに慌てずに済むよう、一度見直したあとも続けられるルールを決めておきましょう。1回きりの整理で終わると、部署ごとの新しい契約や使われなくなったアカウントがまた増え、次の値上げで同じ作業を繰り返すことになります。
- 新しくSaaSを契約するときは、申請先と承認者を決め、同じ用途のツールがすでにないか確認してから導入する
- SaaSごとに管理担当者を決め、値上げ通知を受け取る窓口と、継続するかどうかを決める人を分けておく
- 四半期や半期など決まった時期に、利用人数とログイン状況、更新日を見直す
- 契約を更新する前には、料金と利用状況を照らし合わせて、続ける価値があるかを確認する
どの対応策を選ぶにしても、出発点は「契約中のSaaSと費用の一覧」です。部署ごとの立替やカード払いで契約されたSaaSまで把握するには、経費の申請と承認の流れを整えておくことが近道になります。法人カードや立替で払うSaaSも、利用料を経費の申請として出してもらい、金額の大きいものを承認の時点で確認できるようにしておけば、契約したまま放置される状況を減らせます。承認の手間を増やさずに運用したい場合の一例が、バクラク経費精算(株式会社LayerX)です。商品ページによると、アプリやチャットツールから承認でき、領収書の使い回しや重複申請を知らせるミス防止のアラートを複数設定できます。複数枚の領収書を自動で読み取る機能もあります。一方で、導入前のサポートを受けたい場合は有償での対応となるため、必要なサポートの範囲を資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社LayerX
バクラク経費精算
株式会社LayerX
バクラク経費精算
OCR読み取り機能◎作業の効率を上げたい方におすすめ
基本情報

おすすめ!
- 差戻しや確認に時間をかけずに済む「ミス防止機能」を複数搭載
- アプリやチャットツールから承認が行え、社内にいなくても承認時間の確保が可能
- 複数枚の領収書でも自動で読み取れる
気になる…
- 導入前のサポートを受けたい場合は有償での対応となる
-
自社での利用時、経費申請だけでなく、バクラクではさまざまな申請機能を自由に作ることができ、その点が非常に魅力的だった。稟議関係の申請機能を各種作ったり、その他社内的な決済が必要な事前申請を作ることができ、意思決定プロセスをスムーズに行う上で役立った。
-
会社の請求書を全て電子証憑で管理できるため、原本の管理が不要になることはもちろん、バクラクビジネスカードの利用によりクレジットカード利用の申請が簡単になり、「Bakuraku債権・債務管理」を利用することで仕訳処理や会計ソフトとの連携も可能なため、一気通貫での管理が可能です。
-
バクラク経費精算の導入により、Excelベースの申請書で発生していた多くのミスが大幅に削減されました。システムが自動でチェックしてくれるため、申請者側の入力ミスが減り、経理担当者の修正工数も減少しました。 また、承認者にとってもメリットは大きいです。申請内容が直感的に分かりやすく表示されるため、以前のような「目くら承認」が減り、内容をきちんと確認した上での承認が可能になりました。さらに、承認フローの経路カスタマイズが非常に柔軟に行えるため、複雑な組織体制や特定の経費規程にも対応でき、経費精算全体の透明性と効率が格段に向上したと感じています。
5サービスの役割を比較表で見る従来6名で行っていた経費精算業務の工数を2名分へと大幅に圧縮できた
バクラクシリーズ「バクラクAI申請承認」導入事例(株式会社ストライクグループ。経費精算の承認の一次チェックを自動化した事例で、効果として掲載) 出典:導入事例ページ
SaaSコスト管理でよくある失敗パターン
値上げ対応の失敗は、急いで判断し、移行費用や契約期限、把握漏れを見落とすことから起きます。よくある失敗と対処の考え方を表にまとめました。
| よくある失敗(Before) | 対処の考え方(After) |
|---|---|
| 改定率の大きさだけを見て、すぐに別のサービスへ切り替えた | 年間の影響額で優先順位を付け、金額の大きいSaaSから検討する |
| 移行費用や教育費用を見込まず乗り換え、結果的に割高になった | 継続と乗り換えを同じ費用項目で並べて比較する |
| 契約条項を確認せずに交渉し、申し出期限を過ぎてしまった | 通知を受けたら最初に適用開始日と解約・変更の期限を確認する |
| 部署が個別に契約したSaaSの値上げに、請求が来るまで気づかなかった | SaaSの支払いを経費精算や稟議の流れにのせ、全社で一覧化する |
| 使われていないアカウントの費用を払い続けていた | 四半期ごとに利用状況を確認し、不要なアカウントを整理する |
| 課金の単位や上限を確認せず、請求額が想定を超えてから気づいた | 課金の単位と上限を台帳に残し、請求額を毎月前月と比べる |
なかでも、部署が個別に契約したSaaSの値上げに気づかない失敗は、支払いの経路が分かれていることが原因です。経路そのものを減らし、立替をなくしたい場合の一例が、Bill One経費(Sansan株式会社)です。商品ページによると、ビジネスカードで経費を支払うため社員の立替経費をなくせ、領収書の受け取りから仕訳・保管までをオンラインで一元管理できます。カードの利用は即時にBill One経費へ反映され、領収書の提出もスマートフォンで撮影するだけで完了するとされています。現金払いの経費にも対応できます。一方で、初期費用が発生し、月払いではなく年額での支払いになる点は注意が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
Sansan株式会社
Bill One経費
Sansan株式会社
Bill One経費
オンラインで完結!社員の立替経費をなくしたい企業におすすめ
基本情報

おすすめ!
- ビジネスカードで経費を支払うため、社員の立替経費をなくせる
- 領収書の受取から仕訳・保管までオンラインで一元管理
- 経費精算に関するさまざまな課題を解決でき、社員の負担を軽減
気になる…
- 初期費用が発生し、月払いではなく年額での支払い
-
テレワークに伴い、こちらのサービスを導入した経緯があります。今まで紙で届いた請求書に上長の押印、明細などを添えて経理に提出していましたが、一気にペーパレスできましたし、経理担当者の処理時間も大幅に減ったのではないでしょうか。請求書を受理する現場担当者も入力作業がありますが、データをアップロードすればAIが読み取ってある程度データ化してくれるのでとても便利だと思いました。
-
簡単に領収書を撮影しすぐに経費申請ができることが一番ありがたかった。導入前の経費申請は領収書をPDF化してシステムから申請、という古いタイプだったためかなり利便性が向上した(使用していたほぼすべての社員が満足していた印象)
-
経費立替からの精算という流れを変えたことで業務効率化がはかれました。領収書をメールやチャットで提出したりする必要がなく、クラウドにアップロードすれば共有できるのでとにかく楽です。本来の業務に時間を使えるのがメリットです。
コスト管理の効果をどう確認するか
SaaSのコスト管理がうまくいっているかは、「把握できている費用の割合」「削減できた金額」「予算と実績の差」の3つで確認できます。年1回の予算策定や、主要なSaaSの契約更新のタイミングで振り返ると効果的です。
| 指標 | 確認する内容 |
|---|---|
| 把握できている費用の割合 | SaaSの支払い総額のうち、契約者・更新日・利用人数まで一覧化できている割合 |
| 削減できた金額 | アカウント整理、プラン変更、重複契約の解消で減らせた年間の費用 |
| 予算と実績の差 | 年初に見込んだSaaS費用と実際の支払額の差。値上げを事前に織り込めていたか |
| アカウントの利用率 | 契約しているアカウントのうち、一定期間内にログインがあった割合 |
これらの指標を毎回手作業で集計するのは負担が大きいため、SaaSの支払いデータが自然に集まる仕組みをつくっておくことが大切です。経費精算や支払いの記録がシステム上にそろっていれば、部署別・サービス別の費用を集計しやすくなり、次の値上げの影響額も予測しやすくなります。
部署別に費用を集計するには、経費のデータが人事の部署情報とつながっていると見やすくなります。その一例が、ジンジャー経費(jinjer株式会社)です。商品ページによると、社内に散らばる勤怠・給与・人事・経費などを1つに集約でき、所属部門やグループごとに承認ルートなどを設定できます。人事異動の際も、それらの情報は自動で更新されるとされています。一方で、導入までに最長3ヶ月ほどかかるとされているため、次の更新日から逆算して導入の時期を決めてください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
jinjer株式会社
ジンジャー経費
jinjer株式会社
ジンジャー経費
経費精算のペーパーレス化を目指している企業におすすめ
基本情報

おすすめ!
- 社内に散らばる勤怠・給与・人事・経費などを1つに集約できる
- 担当者の面倒の原因を解決し、効率的な経費精算業務を実現可能
- さまざまな企業規模に対応し、特にペーパーレス化したい企業にぴったり
気になる…
- 導入までに最長3ヶ月ほどかかる
-
トップページが見やすく、検索がしやすいので、見たいページがすぐに見つかり、対象月の表をすぐ表示することができた。毎月の給与の欄と賞与の欄があり、見たいものが探しやすかった。
-
ジンジャー経理を導入したことで、経費精算や支払申請のフローが一元化され、紙やメールでの申請・承認の手間が解消されました。仕訳の自動化や承認ルートの設定により、確認ミスや処理の抜け漏れも減少。経理部門だけでなく、現場の申請者にとっても操作が簡単で、業務全体の効率化につながっています。
-
オンラインで申請ができるので、どこからでも精算できることが魅力です。また、シンプル操作ゆえに高齢の方でも1人で操作でき、高齢の方だけ、代理で精算をする手間もかかりませんでした。大きな業務効率につながりました。
紙ベースの経費精算や領収書管理が中心で、書類の量が多く管理や保管に手間がかかっていた。
ジンジャー経費 導入事例(富永物産株式会社。導入前の課題として掲載) 出典:導入事例ページ
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaSの値上げは拒否できますか?
A. 利用規約の変更手続きが適切に行われていれば、値上げそのものを拒否するのは難しいのが一般的です。ただし、解約やプラン変更は選べるため、契約条項で適用開始日と申し出期限を確認し、継続するかどうかを判断しましょう。
Q2. 値上げ通知はいつ頃届き、見落とさないためには何をすればよいですか?
A. 通知の時期はサービスによって異なりますが、次回の契約更新の1か月前から数か月前に届くことが多くあります。通知の宛先を担当者個人ではなく部署の共有アドレスにし、更新日と申し出期限を台帳にまとめておくと見落としにくくなります。法人カードや立替で契約したSaaSは、支払いの記録からも洗い出しましょう。
Q3. SaaSの値上げはなぜ起き、今後も続きますか?
A. 円安による海外製SaaSの円換算価格の上昇、クラウドサーバー費用や人件費の上昇、AI機能の追加、課金単位やプランの見直しなどが重なって起きています。今後の動きは断定できませんが、更新のたびに料金改定がありうる前提で、費用と期限を管理しておくことが大切です。
Q4. 値上げを機に乗り換えるべきですか?
A. 月額料金の差だけで判断せず、データ移行、初期設定、社員教育、並行運用の費用も含めて比較しましょう。まずはアカウント整理や下位プランへの変更など、コストのかからない見直しから検討すると失敗が少なくなります。
Q5. SaaSの値上げ交渉はできますか?
A. 値上げの撤回は難しいものの、利用規模が大きい場合や複数年契約を検討している場合は、価格の据え置きや段階的な適用を相談できることがあります。利用人数や利用頻度、代替サービスの見積もりを準備しておくと交渉しやすくなります。
Q6. SaaSの値段はいくらですか?
A. SaaSの料金に共通の相場はなく、製品、プラン、利用人数、課金の単位によって大きく異なります。値上げの影響を知るには、自社が契約中のSaaSごとに単価、数量、更新日を一覧にして、年間の支払額を求めます。料金は各社の公式サイトや見積もりで確認してください。
まとめ
SaaSの値上げは、円安やコスト上昇、AI機能の追加を背景に、今後も起こりうるものです。慌てずに対応するため、次の4点を意識しましょう。
- 値上げ通知を受けたら、適用開始日、自動更新の条件、解約・変更の申し出期限、課金の単位を最初に確認する。
- 継続と乗り換えを、料金だけでなく移行費用や教育費用も含めた同じ項目で比較する。
- 契約中のSaaSを台帳にまとめ、通知の宛先と更新日の管理を担当者個人に任せきりにしない。
- 法人カードや立替で払うSaaSの記録を1か所に集める手段として、経費精算システムの資料を取り寄せて比較する。
参考文献
- 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
- 法務省「約款(定型約款)に関する規定の新設」(説明資料) https://www.moj.go.jp/content/001255638.pdf
- Salesforce「Salesforce、新しいパッケージと価格体系を発表」 https://www.salesforce.com/jp/news/stories/pricing-update-2025/
- Microsoft「Advancing Microsoft 365: New capabilities and pricing update」 https://www.microsoft.com/en-us/copilot/blog/2025/12/04/advancing-microsoft-365-new-capabilities-and-pricing-update/
- ガートナー「コスト増を抑制する:SaaSベンダーの値上げに対処する3つの方法」(セッション概要) https://www.gartner.com/jp/conferences/apac/applications-japan/sessions/detail/4539539-Save-Your-Organization-Millions-3-Ways-to-Mitigate-SaaS-Vendor-Cost-Increases
- CloudNative BLOGs「SaaSの値上げによる経営圧迫と情シスの向き合い方」 https://blog.cloudnative.co.jp/articles/saas-price-increase-impact-and-response/
- ネクサフロー「SaaS値上げの実行ロードマップ|契約更新を軸にした価格改定の進め方」 https://nexaflow.io/blog/pricing/price-increase-roadmap
- ゼットリンカー「SaaS値上げで見直すべきこと|契約更新・乗り換え・自社開発の比較方法」 https://zetlinker.com/column/saas-price-hike-review-timing-2026






