AI業務効率化の事例|公的資料で見る業務別の活用例と中小企業の置き換え方
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- AI事例は事務・顧客対応・営業・製造の領域別に探せる
- 大企業の事例は前提が違うため自社と並べて確認する
- 使い方と確認のルールを社内の全員にそろえて定着させる
AI業務効率化の事例とは、AIを使って経理・顧客対応・営業・製造などの業務にかかる時間や手間を減らした企業の取り組みのことです。総務省「令和8年版 情報通信白書」の2025年度企業向け調査では、何らかの業務で生成AIを利用している日本企業は86.4%(活用方針の設問で「わからない」と答えた企業を除く)にのぼり、事例を探す段階から、自社の業務に当てはめる段階へ移りつつあります。ただし、紹介される事例の多くは人員やデータに余裕のある大企業のもので、そのまま真似しても同じ成果になるとは限りません。この記事では、公的資料に載った企業の取り組みを業務領域別に整理し、中小企業が事例を読むときの前提、成功と失敗の分かれ目、自社に置き換える手順、効果の測り方を解説します。さらに、多くの事例記事が触れていない「事例の使い方を社内の全員にそろえる方法」まで取り上げます。
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AI業務効率化の事例を探す前に|公的データで見る業務別の活用状況
AI業務効率化の事例が多いのは、議事録・メール作成の補助、営業・販売、社内ヘルプデスクの3つの業務です。総務省「令和8年版 情報通信白書」は、日本企業の業務類型別に生成AIの活用状況を調べています。事例の探し方を決める前に、まずどの業務で活用が進んでいるのかを見ておきます。
| 業務類型(日本企業) | 生成AIを活用している割合 | 事例を読むときの見方 |
|---|---|---|
| 議事録・メール作成補助 | 約7割(導入効果を実感すると答えた割合も約7割) | 文書を読む・書く作業が中心。効果を実感した企業が最も多く、最初に試す領域として参考にしやすい |
| 営業・販売 | 約6割 | 提案書のたたき台や商談の記録など、営業担当者の事務負担を減らす事例が中心 |
| 社内ヘルプデスク | 約5割 | 社内からの問い合わせ対応やマニュアルの検索。回答の元になる資料の整備が前提になる |
事例が多い領域は、文書作成や問い合わせ対応のように、AIが得意な「読む・書く・探す」作業です。一方、同じ調査で、生成AIを「積極的に活用する」または「領域を限定して利用する」方針だと答えた割合は、大企業で74.0%、中小企業で58.1%と差があります。中小企業は、事例を知るだけでなく、自社のルールを整えながら進める必要があります。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの業務利用状況」、同「生成AIの活用方針等」。
事例を読んだあとに残る課題は、AIの使い方と確認の手順を、全員に同じ水準で伝えることです。使い方が一部の詳しい人に集中すると、その人が異動や退職をした時点で効果が止まってしまいます。社内で共通のルールや教材にまとめる手段として、eラーニングがあります。本記事の内容と相性のよい3サービスを、役割の違いで並べます(内容は各サービスの商品ページで確認した情報にもとづきます。AIやAI活用に関する教材の有無と範囲は、資料で確認してください)。
AI事例の使い方を社内にそろえる、eラーニング3サービスの役割の違い
優劣ではなく役割の違いで並べています
一例:Smart Boarding(自社オリジナルコースを作成)
資料を無料ダウンロード一例:SAKU-SAKU Testing(確認テストを作成して配信)
資料を無料ダウンロード一例:OneCompliance(ワンコンプライアンス)(個人情報や情報セキュリティの研修)
資料を無料ダウンロード| サービス | Smart Boarding |
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|
|---|---|---|---|
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| 特徴 | 自社オリジナルコースの作成や学習進捗の管理ができる。いつでも何回でも学習できる環境をつくれる | 不慣れな方でも作成・登録しやすいコンテンツ機能を搭載。ユーザー管理機能でカテゴリーやグループを紐づけられる | コンプライアンスに特化。ダッシュボードや自動リマインダーで管理の工数を抑えられる |
| 注意したい点 | 電話やメールでの相談、教育プログラムの設計といった手厚いサポートは「充実サポートプラン」のみ | 事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱い | 費用は受講人数に応じた課金体系のため、問い合わせで確認。AIに関する教材の有無は資料で確認 |
| 資料・詳細 |
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【2026年最新】LearnO vs Smart Boardingを徹底比較|どちらがあなたに合う?評判・機能・料金で検証!
今、eラーニングシステムを導入する企業が増えています。特に「LearnO」と「Smart Boarding」は2大人気サービスで、評価を見てもどちらが本当に自社に合うサービスなのか悩んでいる方も少なくありません。本記事では、徹底比較したビジコン編集部が目的別・使い方別に違いを明確に解説します。
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最初から備わっているコンテンツを活用して階層別の研修プログラムを作成しています
Smart Boarding 導入事例(株式会社ミツハシ。ポイントの記載) 出典:導入事例ページ
経理・事務・文書業務:AI-OCR・RPA・生成AIの事例
経理・事務・文書の領域は、手順が決まっていて量が多いため、AI業務効率化の事例が最も多く集まる領域です。請求書や領収書の読み取り、会計ソフトへの入力、社内システムへの転記、議事録やメールの下書きなど、効果を作業時間で測りやすい業務が並びます。経理の効率化事例では、AI-OCRで入力を減らす方法、RPAで転記や集計を自動化する方法、生成AIで文書作成を補助する方法の3つが中心です。
AI-OCRで紙の書類をデータにする
AI-OCRは、紙やPDFの書類に書かれた文字をAIで読み取り、データに変換する技術です。従来のOCRは決まった様式の帳票しか読み取れないことが多かったのに対し、AI-OCRは取引先ごとにレイアウトが違う請求書や、手書きの申込書でも読み取り精度を高めやすいのが特徴です。典型的な事例では、取引先から届く請求書をスキャンしてAI-OCRで日付・金額・取引先名を読み取り、担当者は読み取り結果を確認して修正するだけ、という流れに変えています。入力作業そのものが「確認作業」に変わるため、月末月初に経理担当者の残業が集中する状況をやわらげやすくなります。
RPAで転記や集計を自動化する
RPA(Robotic Process Automation)は、人がパソコンで行っている定型操作を、あらかじめ決めた手順どおりにソフトウェアロボットが実行する仕組みです。AI-OCRで読み取ったデータを会計ソフトに登録する、複数のExcelファイルから数字を集めて月次の報告書を作る、といった作業と組み合わせることで、読み取りから登録までを一続きで自動化できます。RPAツールの種類や選び方は、おすすめのRPAツールを比較した記事で整理されています。
中小企業がこの事例を再現するときの注意点は、「読み取り精度は100%ではない」前提で確認の工程を残すことです。金額や振込先の誤りはそのまま損失につながるため、AIが読み取った結果を人がチェックする手順を省いた事例は、そもそも参考にしないほうが安全です。また、電子帳簿保存法への対応が関わる書類を扱う場合は、保存要件を満たせる運用になっているかをあわせて確認する必要があります。
経費精算のAI化|白書に載る事例
経理・財務の領域では、総務省「令和8年版 情報通信白書」が、スタートアップのラクスの取り組みを紹介しています。ユーザーがスマートフォンのアプリ上で領収書を選択するだけで、AIエージェントが精算データを自動で作成し、関連する事前申請やクレジットカード明細の紐づけ、勘定科目などの入力も自動化できる経費精算サービスで、作成された申請が社内ルールに沿っているかをチェックする機能もあるとされています。ここで注目したいのは、AIが作るのは申請の下書きまでで、社内ルールとの照合という「確認」の工程がサービスの中に組み込まれている点です。自社で再現する場合も、AIの出力を確認する担当者と基準を先に決めておくことが前提になります。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 経営・コーポレート業務」。
議事録・メール・社内文書|生成AIで下書きと要約
議事録とメールの作成補助は、前掲の調査で活用率も効果の実感も最も高かった業務です。会議の内容から議事録の案を作る、長い資料を要約する、取引先への返信メールの下書きを作る、といった使い方が代表的です。事例に共通するのは、AIの出力を「完成品」ではなく「下書き」として扱い、日付・金額・固有名詞は人が原本と照らして確認していることです。顧客情報や社外秘の数字を入力してよいかどうかは、利用するサービスの規約と社内ルールで事前に決めておく必要があります。
社内ヘルプデスク・ナレッジ共有|マニュアルを学習させたAI
社内の問い合わせ対応やナレッジ共有の事例として、白書は、イオンリテールが従業員向けにマニュアル等を学習させたAI搭載の「AIアシスタント」を開発し、一部の店舗で導入していると紹介しています。免税対応、商品の配送、落とし物の管理など幅広い業務のマニュアルを学習しており、音声入力にも対応して現場の従業員の負担を軽くしているとされています。この種の事例では、AIが参照するマニュアルの正確さと最新性が回答の品質を左右します。マニュアルの整備は、AIを入れる前にできる最初の一歩です。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 顧客との接点」。
ここまでの事務系の事例は、どれも「ツールを入れて終わり」ではなく、確認の手順と使い方のルールを担当者が実行できて初めて成果につながっています。担当者が替わっても同じ品質で続けるには、手順と注意点を教材にして、誰でも同じように学べる形にしておくことが近道です。
顧客対応:AIチャットボット・音声対応・店舗の事例
顧客対応の事例で中心になるのは、AIチャットボットによる問い合わせの一次対応です。営業時間、料金の目安、手続きの方法、よくあるトラブルの対処法といった、同じ内容が繰り返し寄せられる質問をチャットボットが回答し、個別の判断が必要な問い合わせだけを担当者に引き継ぎます。夜間や休日にも自動で回答できるため、少人数で対応している中小企業ほど、電話やメールの対応に追われる時間を減らしやすい領域です。
チャットボットには大きく分けて、あらかじめ用意した選択肢や質問文に沿って回答するシナリオ型と、登録した情報や生成AIを使って自然な文章で回答するAI型があります。シナリオ型は回答内容をコントロールしやすく、AI型は想定外の聞き方にも対応しやすい一方、誤った回答をしないように参照させる情報を整えておく必要があります。社内外向けのチャットボットの種類は、チャットボットを比較した記事でも確認できます。
この事例を読むときに見落としやすいのが、導入前のFAQ整備です。成果が出ている事例の多くは、チャットボットを入れる前に過去の問い合わせを分類し、回答文を整えています。反対に、FAQが整っていないままチャットボットを公開すると、回答できない質問ばかりが残り、結局は電話が増えるという逆効果にもなりかねません。社内の問い合わせ(総務・人事への質問など)で先に試し、回答の精度を上げてから社外向けに広げる進め方も、中小企業では取り入れやすい方法です。
音声問い合わせの自動対応|白書に載る事例
白書は、ソフトバンクの子会社であるGen-AXの「X-Ghost」を、顧客対応の自動化の事例として紹介しています。24時間365日、音声での問い合わせに対応でき、AIオペレーターが自然な音声対話を行うだけでなく、システムの照会や登録処理といった作業にも対応しているとされています。さらに、顧客と対話するオペレーターAIと、発話やシステムの挙動をリアルタイムで監視・制御するモニタリングAIを連携させている点が特徴です。AIの応対を別のAIで監視する構成は、「AIの回答を人または仕組みで確認する」という考え方を、顧客対応の現場で具体化した例といえます。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 顧客との接点」。
顧客対応にAIを使う場面では、顧客の氏名や連絡先、問い合わせの内容といった個人情報を扱うことになります。AIに入力してよい情報の範囲、回答を人が確認する基準、誤った案内をしたときの対応を決めておかないと、便利さの裏でトラブルの種を抱えることになります。こうしたルールを担当者だけでなく、問い合わせに触れる全員が同じ基準で理解している状態をつくる方法の一つが、コンプライアンス研修の受講です。
個人情報や情報セキュリティの研修を、全員に同じ内容で受けてもらいたい場合の一例が、OneCompliance(ワンコンプライアンス)です。コンプライアンス研修に特化したeラーニングで、法務・労務・情報領域の研修コンテンツを提供しています。ダッシュボードや自動リマインダーで受講状況の管理にかかる工数を抑えられ、初期費用がなく、受講人数に合わせた料金体系になっています。一方で、費用は人数に応じた課金体系のため問い合わせで確認する必要があります。AIの使い方そのものを扱う教材かどうかは資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社Oyster
OneCompliance(ワンコンプライアンス)
株式会社Oyster
OneCompliance(ワンコンプライアンス)
コンプライアンスに特化!上場準備中/IPO準備中、上場企業、大手グループ会社、監査法人、金融機関/フィンテック、中堅/中小企業の方に特におすすめ

ここがおすすめ!
- 上場準備中/IPO準備中の企業にも最適
- ダッシュボードや自動リマインダーなど管理工数を最小化
- 初期費用なし、受講人数に合わせた料金体系のためコストを最適化
ここが少し気になる…
- 費用は人数に応じた課金体系のため、問い合わせで確認
社内に法務専任担当や教育専任担当がおらず、社内のみでの実施が困難
OneCompliance 導入事例(株式会社プリメディカ。導入の背景・課題感として掲載) 出典:導入事例ページ
営業・マーケティング・データ分析:営業支援・需要予測・SNS運用の事例
営業・マーケティングの事例は、「人がやる作業を減らす」使い方と、「判断の材料を増やす」使い方の2つに分けると整理できます。前者は商談記録や提案書の下書き、投稿文の作成、後者は需要予測のようにデータから傾向を読む使い方です。
営業|商談記録と提案書の下書き
営業の事例として、白書は明治安田生命が、AIを活用した「デジタル秘書」をほぼ全従業員に提供し、AIによる面談記録の作成やデータの蓄積を支援していると紹介しています。今後は、AIエージェントが過去の面談情報や社内情報を参照して、次の提案内容の検討や提案書の作成まで支援する構想もあるとされています。中小企業が営業の事例を再現するなら、まずは商談の議事録から要点とネクストアクションをまとめる、過去の提案書を参考に新しい提案文の下書きを作る、といった身近な使い方から始めるのが現実的です。ゼロから資料を作る時間が減る分、営業担当者は顧客との対話や提案内容の検討に時間を使えるようになります。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 顧客との接点」。
データ分析|需要予測は長期間のデータが前提
過去の販売実績や季節、天候などのデータから、商品の売れ行きや必要な仕入れ量を予測する需要予測は、小売業や飲食業で紹介される代表的な事例です。発注量を勘に頼っていた状態から、AIの予測を参考に発注するように変えたことで、欠品や廃棄を減らしたという事例が典型です。ただし、需要予測の事例は「長期間の正確なデータ」が前提になっている点に注意が必要です。販売データが一部しか残っていない、商品の分類が途中で変わっている、といった状態では、同じ精度の予測は期待できません。まずは自社のデータがどこにどれだけあるかを棚卸しし、データが足りない場合は記録の仕方を整えるところから始めるのが現実的です。
マーケティング|広告・市場調査のAI活用
マーケティングの領域では、白書が電通とサイバーエージェントの取り組みを紹介しています。電通は、カスタマージャーニーの作成やコンテンツ生成のツールなど、マーケティングの幅広い業務にAIを開発・導入しています。サイバーエージェントは、広告のテキストや画像を予測・自動生成する広告プロダクトを開発し、広告主が指定したルールに基づいてAIが制作物を審査する仕組みも提供しているとされています。いずれも大企業の取り組みですが、「作るところはAI、ルールに合っているかの審査も仕組みで行う」という分担は、中小企業が広告文や投稿文を作る場面にも応用できる考え方です。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 マーケティング」。
SNS運用|生成AIによる投稿案の作成
SNS運用は、専任の担当者を置きにくい中小企業で生成AIの活用が広がっている領域です。新商品の特徴やキャンペーン情報を入力して、投稿文の案を複数作らせる、ハッシュタグの候補を出す、長い告知文をSNS向けの短い文章に書き換える、といった使い方が代表的です。投稿のたびにゼロから文章を考える負担が減るため、更新の頻度を保ちやすくなります。
成果につながっている事例に共通するのは、「AIが作るのは案まで、公開するかどうかは人が決める」というルールが明確なことです。生成AIの文章は、事実と異なる内容や、自社のトーンに合わない表現、他社の商標や著作物に触れる表現が混ざる可能性があります。投稿前に担当者が内容を確認し、必要に応じて上長が承認する流れを決めておかないと、炎上や誤情報の発信につながるおそれがあります。経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」でも、AIを業務で利用する事業者に対して、出力内容の確認やリスクへの配慮が求められています。
製造・現場・経営:熟練者の知見と意思決定を支えるAIの事例
製造や経営の事例は、大企業の取り組みが中心ですが、「熟練者の知見を手順にする」「議論の材料を整理する」という考え方は中小企業にも置き換えられます。白書に載る代表的な事例を、中小企業が読み替えるときの視点とあわせて整理します。
| 業務領域 | 白書に載る取り組み(概要) | 中小企業が読み替えるときの視点 |
|---|---|---|
| 製造・保守 | ダイキン工業が、ウェアラブル端末で撮影した作業映像から点検・修理の抜け漏れを自動でチェックして通知する「熟練工AIエージェント」を自社開発。設備の異常を入力すると故障かどうか、原因や対策を示す「故障診断AIエージェント」も日立製作所と共同で開発・導入している | 熟練者の点検手順をチェックリストに書き出すことが最初の一歩。AIを入れる前に、手順が文書になっているかを確認する |
| 経営 | キリンホールディングスが、過去10年分の取締役会などの議事録データと社内外のデータを読み込ませ、財務やマーケティングなど異なる役割を持たせたAI役員「CoreMate」を開発。経営会議に付議する起案者が事前の壁打ちに活用 | 会議の議事録を蓄積し、検索できる状態にしておくことが前提。まずは議事録の要約と論点整理から試す |
この表の事例に共通するのは、AIが答えを決めるのではなく、人の判断の「材料づくり」と「抜け漏れの確認」を担っている点です。白書は、先進的な企業が業務プロセスを再設計する際に、どのタスクをAIに人の補助として使い、どのタスクをAIに自律的に実行させるかという人間とAIの役割分担を重視していると述べています。中小企業が事例を再現するときも、AIに任せる範囲と、人が最終判断をする範囲を先に決めておくと、失敗を減らせます。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 製造・生産」、同「経営・コーポレート業務」、同「AI導入・活用を効果的に進めていくために重要となる要素」。
事例に共通する成功パターンと失敗パターン
業務の種類は違っても、AI業務効率化の事例を並べてみると、成果が出たケースと途中で止まったケースには共通点があります。まず、事例の前提と中小企業の状況の違いを整理します。
事例を読む前に確認したい3つの前提
| 前提 | 大企業の事例でよくある状況 | 中小企業で起こりやすい状況 |
|---|---|---|
| 1. 推進体制 | DX推進部門や情報システム部門が導入から運用まで担当する | 総務や経理の担当者が本業と兼務で推進し、運用が後回しになりやすい |
| 2. データ | 基幹システムに長期間のデータが蓄積されている | データが紙やExcel、担当者の頭の中に分散している |
| 3. 使い手の育成 | 研修部門が全社向けの教育プログラムを用意できる | 使い方が一部の詳しい人に集中し、その人が異動・退職すると止まる |
とくに3つ目の「使い手の育成」は、事例紹介の記事ではほとんど語られない一方で、中小企業のAI活用が止まる大きな原因になりがちです。事例に書かれたツールを導入できても、それを使いこなす人と、使い方を社内に広げる仕組みがなければ成果は続きません。
成功パターンと失敗パターンの対比
失敗しやすい進め方と、成功している事例の進め方を対比すると次のとおりです。
| 観点 | 失敗パターン(Before) | 成功パターン(After) |
|---|---|---|
| 始め方 | 話題のツールを先に契約し、使い道を後から探す | 時間がかかっている業務を先に特定し、それに合うツールを選ぶ |
| 対象業務 | 判断が複雑な業務や例外の多い業務からいきなり自動化する | 量が多くルールが決まった業務から小さく始める |
| 業務の整理 | 今のやり方のままAIを当てはめ、無駄な手順も自動化してしまう | 手順を書き出して不要な作業を削ってから、残った作業にAIを使う |
| 担当者 | 詳しい1人に任せきりで、その人がいないと誰も使えない | 運用担当を決めたうえで、使い方を教材やマニュアルにして共有する |
| 確認体制 | AIの出力をそのまま社外に出してしまう | 人が最終確認する工程と、入力してはいけない情報のルールを決める |
| 効果の確認 | 「便利になった気がする」で終わり、続けるか判断できない | 導入前の作業時間を記録しておき、導入後と比べる |
この表から分かるのは、成功と失敗を分けているのはツールの性能よりも、導入の順番と運用の決めごとだということです。とくに「担当者」と「確認体制」の2つは、事例紹介の記事では成果の数字の陰に隠れて見えにくい部分ですが、中小企業が事例を再現できるかどうかを大きく左右します。事例を読むときは、どんなツールを使ったかだけでなく、誰が運用し、どう確認しているかまで読み取るようにすると、自社に当てはめたときのギャップを減らせます。
また、事例の出どころによっても読み方を変える必要があります。AIツールを提供する企業が公開する導入事例は、具体的な使い方を知るのに役立つ一方、成功した部分が中心に書かれる傾向があります。中小企業白書や、中小企業庁・中小企業基盤整備機構が運営する「ミラサポplus」、総務省の情報通信白書のような公的な情報は、特定の製品に寄らずに業務のデジタル化の進め方を知るのに向いています。両方を読み比べ、公的資料で全体の流れを、提供企業の事例で具体的な使い方をつかむ、という使い分けが有効です。
事例を再現する前に確認したい3つのリスク
失敗事例として取り上げられることが多いのは、ツールの性能不足よりも、AIの使い方に関わるリスクへの備えが足りなかったケースです。業務別の事例で触れた注意点を、導入前に確認しておきたい3つのリスクとしてまとめると次のとおりです。
| リスク | 起こりやすい場面 | 事前に決めておきたい対策 |
|---|---|---|
| 情報漏えい | 顧客情報や社外秘の数字を、そのまま生成AIに入力してしまう | 入力してよい情報と禁止する情報を社内ルールで決め、利用するサービスの規約でデータの扱いを確認する |
| 誤った出力(ハルシネーション) | 生成AIがもっともらしい誤りを含む回答や文章を作り、確認されないまま使われる | 社外に出す文章や金額・日付などの数値は、必ず人が確認してから使う工程を残す |
| 権利の侵害 | 生成した文章や画像が、他者の著作物や商標と似た内容になる | 公開前の確認項目に権利面のチェックを入れ、判断に迷う場合は専門家に相談する |
これらのリスクは、経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」(第1.2版)でも、AIを利用する事業者が配慮すべき点として整理されています。なお、本記事は法的な助言を目的としたものではないため、個別の判断が必要な場合は専門家や利用サービスの提供元に確認してください。対策をルールとして決めたら、運用担当者だけでなく実際にAIを使う社員全員が同じ内容を理解している状態をつくることが、事例を安全に再現するための前提になります。
OneCompliance(ワンコンプライアンス)
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こんな会社に向いています
個人情報や情報セキュリティのルールを、全員に同じ内容で学んでもらいたい会社
受講状況を、ダッシュボードや自動リマインダーで管理したい会社
公的資料で見る|AI活用を全社に広げる3つの段階
総務省「令和8年版 情報通信白書」は、AI活用の効果を出している先進企業の進め方を、汎用AIによる個人作業の効率化から、活用の社内展開、業務プロセス全体の変革へと段階的に整理しています。個人の効率化から会社全体の効果へどう広げるかは、個別の事例記事では見えにくい部分です。白書の記載を、中小企業が置き換える視点とあわせてまとめます。
| 段階 | 白書の記載(概要) | 中小企業で置き換えるなら |
|---|---|---|
| 1. 汎用AIで個人作業を効率化 | ChatGPTやGeminiなどの汎用的な生成AIを導入するだけでも一定の効果が見込める。まずは少ない投資で、社員が安全に使える環境をつくる。社員が個人の判断で使う「シャドーAI」は機密情報の流出などのリスクがあるため、利用ルールやガイドラインの整備と周知が必要 | 議事録・メール・資料の下書きなど、個人でできる業務から始める。入力してよい情報のルールを先に決める |
| 2. 活用を社内に広げる | 環境を整えても、一部の積極的な社員の利用にとどまり、全社的な効果につながらない可能性がある。先進企業は、活用事例の収集や社内展開、定期的なワークショップなど、具体的な活用場面と効果を実感できる促進策を実施している。日清食品グループは、部門ごとに対象業務を選び、プロンプトのひな形を作って効果を測定しながら展開し、社内の生成AI利用率が直近では7割超になったとされる | 詳しい人の使い方を、共通の手順書や教材にして共有する。うまくいった指示の例を集める |
| 3. 業務の進め方そのものを変える | 経営戦略にもとづいて優先する業務領域を決め、人とAIの役割分担を設計し、業務プロセス全体をAI前提で変革する | 1と2で効果が確認できた業務から、手順そのものを見直す |
個人で使う段階(1)の事例は多く、個人の効率化にとどまる事例も少なくありません。しかし白書が指摘するとおり、全社的な効果に広げるには、2段階目の「使い方を社内に広げる」工程が欠かせません。ここは外部のツールだけでは埋まらず、社内の手順・ルール・教材を整えて、全員に同じ水準で届ける作業になります。出典: 総務省「令和8年版 情報通信白書 AI導入・活用による効果創出のステップ」。
事例を自社に置き換える3ステップ
事例を読んで「うちでもやってみたい」と思ったら、次の3ステップで進めると、事例と自社の前提の違いによる失敗を減らせます。AI業務効率化の進め方そのもの(業務の棚卸し、ツールの適用、効果の検証)は、AI業務効率化の進め方を解説した記事で整理しています。ここでは、事例を自社に置き換えるときの手順に絞って説明します。AI活用の全体像は、AI活用の基本を解説した記事も参考になります。
ステップ1. 事例の前提を書き出し、自社の業務と並べる
最初に、気になった事例について「誰が運用しているか」「どのデータを使っているか」「AIの出力を誰が確認しているか」の3点を書き出します。次に、自社で時間がかかっている業務を書き出し、「どのくらいの頻度で発生するか」「1回あたり何分かかるか」「手順が決まっているか」の3点で整理します。頻度が高く、1回の時間が長く、手順が決まっている業務ほど、AIやRPAで効率化したときの効果が大きくなります。候補がいくつか出ても、最初に取り組むのは1つに絞るのがおすすめです。複数の業務を同時に変えようとすると、どの変更が効果を生んだのか分からなくなり、現場の負担も大きくなります。
ステップ2. 無料プランや試用期間で小さく試す
対象業務が決まったら、無料プランや試用期間のあるツールで、実際の業務データの一部を使って試します。このとき、社外秘の情報や個人情報を入力してよいかは、ツールの利用規約と社内ルールで事前に確認しておきます。試用の段階で「読み取り精度は実用的か」「現場の担当者が迷わず使えるか」「既存のシステムとつながるか」を確かめ、問題がなければ本格導入に進みます。自社の業務に合うツールが見つからず、開発を外部に依頼することを考える場合も、先に業務の手順と確認者を書き出しておくと、依頼内容が具体的になり、見積もりの比較もしやすくなります。IT導入にかかる費用については、中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金」のように、国の支援制度が用意されている場合もあるため、ミラサポplusの解説や公募要領を確認してみるとよいでしょう。
ステップ3. 運用担当を決め、使い方を社内に広げる
本格導入の段階で必ず決めたいのが、運用担当者です。設定の変更、利用ルールの更新、困ったときの相談窓口を1人(できれば2人)に決めておくと、ツールが放置されるのを防げます。そのうえで、使い方と注意点を短い動画やマニュアルにまとめ、他の社員が自分のペースで学べるようにしておきます。1つの業務で成果が出たら、その進め方を別の業務にも当てはめて、少しずつ対象を広げていくのが、中小企業にとって無理のないAI活用の進め方です。
ここまでの3ステップを、自社の状況に当てはめて確認してみましょう。次のセルフチェックで、当てはまる項目の数に応じて、今の状態と次の一手が分かります。
AI事例の再現、社内の準備は足りている?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
導入効果の測り方
AI業務効率化の効果を正しく判断するには、導入前の状態を記録しておくことが欠かせません。事例では「作業時間が大幅に減った」といった表現が多く見られますが、自社で同じことを言えるようにするには、比べる元の数字が必要です。中小企業でも無理なく測れる主な指標は次のとおりです。
| 指標 | 測り方の例 | 向いている業務 |
|---|---|---|
| 作業時間 | 1件あたり、または1か月あたりの作業時間を導入前後で比べる | 経理・事務処理、資料作成 |
| ミスの件数 | 入力ミスや差し戻しの件数を月ごとに数える | 経理・事務処理 |
| 対応件数 | 担当者が直接対応した問い合わせ件数と、自動で解決した件数を分けて数える | 顧客対応 |
| 業務の成果 | 欠品・廃棄の量、投稿頻度や反応数などを期間ごとに比べる | 営業・データ分析、SNS運用 |
| 利用状況 | ツールを使っている社員の数や、使われている業務の数を確認する | 全業務共通 |
見落とされがちなのが、最後の「利用状況」です。作業時間が減っていても、それが1人の担当者だけの成果であれば、その人が異動した時点で効果は失われます。反対に、使っている社員が増えていれば、効果は社内全体に広がっていきます。前述の白書も、日清食品グループの例で、効果を測定しながら展開した結果として社内の利用率が上がったと紹介しています。効果測定では、時間やミスの削減とあわせて、「何人がその使い方を身につけたか」も確認しておくと、次の業務に広げるかどうかを判断しやすくなります。
使い方を教えたあとに、全員が同じ理解になっているかを、テストの結果で確かめたい場合の一例が、SAKU-SAKU Testingです。不慣れな方でも作成・登録しやすいコンテンツ機能を備え、研修のあとに確認テストを作って配信できます。ユーザー管理機能でカテゴリーやグループを紐づけられるため、部署ごとの結果を見ることもできます。一方で、事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いになります。AIに関する設問や教材の有無は資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社イー・コミュニケーションズ
SAKU-SAKU Testing
株式会社イー・コミュニケーションズ
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初心者にも◎受講者の管理をスムーズに行いたい方におすすめ
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ここが少し気になる…
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よくある質問(FAQ)
Q1. AIを使って効率化できる業務は何ですか?
A. 議事録やメールの作成補助、請求書の読み取りや経費精算などの事務、問い合わせへの一次対応、営業の商談記録や提案書の下書き、点検手順の確認など、量が多く手順が決まっている業務で事例が多く見られます。総務省の調査では、議事録・メール作成補助、営業・販売、社内ヘルプデスクの順に活用が進んでいます。
Q2. AIで事務業務を効率化するにはどうすればよいですか?
A. 請求書や領収書の入力にはAI-OCRとRPA、議事録やメールの下書きには生成AIを組み合わせる方法があります。AIの出力は下書きとして扱い、金額・日付・固有名詞は人が原本と照らして確認する手順を残すことが大切です。
Q3. AIで業務の効率化を進めるにはどうすればよいですか?
A. 時間がかかっている業務を書き出して1つに絞り、無料プランや試用期間で小さく試すのが基本です。そのうえで運用担当を決め、使い方と確認のルールを全員に広げ、導入前後の作業時間やミスの件数を比べて効果を確認します。
Q4. 大企業のAI活用事例は中小企業でも参考になりますか?
A. 業務の選び方や確認の考え方は参考になりますが、そのまま再現できるとは限りません。大企業の事例は、専門部署や長期間のデータ、研修体制がそろっていることが多いため、自社の人員・データ・育成体制との違いを確認したうえで取り入れることが大切です。
Q5. 生成AIを業務で使うときに注意することは何ですか?
A. 出力内容に誤りや不適切な表現が含まれる可能性があるため、社外に出す前に人が確認する工程を設けることが大切です。また、顧客情報や社外秘の情報を入力してよいかを、利用するサービスの規約と社内ルールで事前に確認しておきましょう。
Q6. AIツールを導入しても社内で使われない場合はどうすればよいですか?
A. 運用担当者を決め、使い方と注意点を短い動画やマニュアルにまとめて、誰でも同じように学べる形にすることが有効です。eラーニングシステムを使えば、教材の配信と受講状況の管理をまとめて行えるため、使い方を社内に広げやすくなります。
まとめ
AI業務効率化の事例は、経理・事務・文書、顧客対応、営業・マーケティング、製造・経営の領域で、公的資料にも多く紹介されています。ただし、事例の多くは人員やデータ、育成体制に余裕のある企業を前提にしているため、中小企業が参考にするときは、その違いを確認したうえで取り入れることが欠かせません。事例を活かすために押さえておきたいのは次の5つです。
- 事例を読むときは、使ったツールだけでなく、誰が運用し、どのデータを使い、誰が確認しているかという前提を確認する
- 量が多く手順の決まった業務を1つ選び、無料プランや試用期間で小さく試す
- 運用担当を決め、AIの出力を人が確認するルールと、入力してよい情報の範囲を整える
- 導入前後の作業時間やミスの件数に加え、使っている社員の数も確認する
- 使い方を全員にそろえるため、eラーニングなどの資料を請求して比較する
事例を知ることはスタート地点にすぎません。自社の業務で小さく試し、使い方を社内に定着させる仕組みまで整えることで、AI業務効率化は一時的な取り組みではなく、会社の力として積み上がっていきます。
参考文献
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの活用方針等」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121110.html
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの業務利用状況」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121130.html
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 日本企業におけるAI活用事例(業務領域別)」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121200.html
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 AI導入・活用を効果的に進めていくために重要となる要素」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121410.html
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 AI導入・活用による効果創出のステップ」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121420.html
- 経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20260331_report.html
- 中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「ミラサポplus 業務改善につながるITツールの導入を支援「デジタル化・AI導入補助金」」 https://mirasapo-plus.go.jp/hint/32651/
- 中小企業庁「中小企業白書」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
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