DXとAIの違いとは?関係性とDX推進でAIを活用する手順

Check!

  • DXは目的、AIは手段という違いがわかる
  • デジタル化やIT化との違いと経産省の定義がわかる
  • AIを活用してDXを進める手順と失敗例がわかる

DXとAIの違いは、DXが「データとデジタル技術を使って、ビジネスや組織のあり方を変えること」という目的であるのに対し、AIはその目的を実現するための技術の一つ、という点です。AIを導入しただけでDXになるわけではなく、AIを使わないDXもあります。この記事では、DXとAIの違いと関係性を整理したうえで、デジタル化・IT化・AXとの違い、経済産業省によるDXの定義、DXの中でAIが果たす役割、AIを使ってDXを進める手順、失敗パターン、AIを使わないDXの例までを、公的な資料を引きながら解説します。

DXとAIについて、いま知りたいことから読むべき箇所を診断

Q1. DXとAIの関係で、いま知りたいのはどちらですか?

目次

開く

閉じる

  1. DXとAIの違いとは|DXは「目的」、AIは「手段」
  2. 経済産業省によるDXの定義とデジタル化の3段階
  3. DXにおけるAIの役割
  4. AI活用によるDX推進の手順
  5. DXにAIを活用するときによくある失敗パターン
  6. AI以外のDX推進技術(IoT・クラウドなど)
  7. AIを使わずにDXを進める企業の例
  8. DXでAIを活用する際に押さえておきたいリスク
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|DXとAIを整理して進める5つのこと
  11. 参考文献

DXとAIの違いとは|DXは「目的」、AIは「手段」

DXとAIの違いは、DXが「企業が目指す変革そのもの」、AIが「その変革を実現する技術の一つ」という点で、DXは経営戦略、AIは道具にあたります。

DXはビジネスモデルや業務プロセス、組織文化まで含めて会社のあり方を変える取り組みで、経営戦略に位置づけられます。一方、AIはデータから規則性を学習し、予測・分類・生成などを行う技術です。違いを観点別に整理すると次のとおりです。

比較の観点 DX(デジタルトランスフォーメーション) AI(人工知能)
位置づけ 経営戦略・変革の取り組み(目的) デジタル技術の一つ(手段)
対象範囲 製品・サービス、ビジネスモデル、業務、組織、企業文化まで全社的 特定の業務やタスク(予測、分類、文章生成、画像認識など)
主な担い手 経営層が方向性を示し、全部門が関わる 業務部門とIT部門、外部の開発・ツール提供会社
成果の測り方 売上構成の変化、新サービスの創出、顧客体験の向上など経営指標 予測の精度、作業時間の削減量、処理件数など業務指標
なくても成立するか AIを使わずに進められるDXもある AIを導入しても、業務や組織が変わらなければDXにはならない

この表の最後の行が、実務で特に重要です。AIはDXに必須ではなく、AIを入れただけでDXが実現するわけでもありません。問い合わせ対応にAIチャットボットを導入しても、回答できなかった問い合わせを分析して商品・サービスの改善につなげる仕組みがなければ、窓口の自動化にとどまります。逆に、紙の申込書をやめてWebで受け付け、そのデータをもとに新しい料金プランを作る取り組みは、AIを使わなくてもDXと呼べます。

AIを使う前に整えたいもの|取引先データを例に

AIは、使えるデータがあって初めて働きます。総務省の令和8年版情報通信白書は、AI活用で先進的な企業へのヒアリングをもとに、有識者の指摘として「AIに対応するデータがあるか(AI-Ready化)」をAI導入の最初の確認点に挙げています(総務省 情報通信白書 令和8年版)。経済産業省のDXレポート2が示す第1段階も、アナログ・物理データのデジタルデータ化(デジタイゼーション)です。

営業では、取引先との接点の起点になる名刺が、その代表例です。名刺が個人の名刺ホルダーやスマートフォン、各自の無料アプリに分かれていると、検索も共有もできず、AIに読ませる以前の状態にとどまります。名刺を組織でデータ化して共有する場合の一例が、Sky株式会社が提供する名刺管理SKYPCEです。商品ページでは、名刺をAI-OCRとオペレーターの確認・修正でデータ化し、作業をすべて国内で行うこと、PCとスマートフォンから検索・閲覧できること、名刺情報から取引先の組織図ツリーを自動作成できることが紹介されています。連携用APIを標準搭載し、外部の顧客管理ツールなどと連携しやすい点も特長です。

注意点として、ライセンスは利用ユーザー数分の契約が必要で、契約は1年単位で自動更新されます。AI機能は操作方法を生成AIに質問できる「AIアドバイザー」が中心で、受注予測のような営業分析の機能は商品ページで確認できないため、AIによる分析そのものを求める場合は別のツールも含めて検討してください。料金は規模によって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

S k y株式会社

名刺管理SKYPCE

名刺管理SKYPCE

S k y株式会社

名刺管理SKYPCE

AIが素早く解決!一元管理と共有の効率化を図りたい組織におすすめ

30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
出典:SKYPCE
GOOD

おすすめ!

  • AIによる高精度検索やサポートで、名刺管理の困りごとを素早く解決
  • 一斉メール送信や活動記録など、名刺管理を活かした営業支援機能を提供
  • 情報セキュリティ対策連携や接続制限など、強固なセキュリティ対策
MORE

気になる…

  • 新聞人事異動情報やクラウド電話帳(SKYCEB)はオプション対応

情報システム部門の専任者がいない当社のような環境でも生成AIを活用することで、約2日で構築が完了しました。

リーンマーケティング株式会社様 導入事例(名刺管理のSKYPCE)

この事例は、各自が個人向けの名刺管理サービスで管理していた名刺を法人向けのサービスにまとめ、顧客管理ツールとの連携を生成AIの助けを借りて自社で構築したものです(取材時点の情報)。データを整えてから、AIを使う場面を足していく順序の一例といえます。

名刺管理SKYPCEのロゴ

名刺や取引先の情報を、組織で共有できる形にしたい会社に

名刺管理SKYPCEの資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

経済産業省によるDXの定義とデジタル化の3段階

経済産業省はDXを、企業がデータとデジタル技術を活用して、製品・サービス・ビジネスモデルと、業務・組織・プロセス・企業文化を変革し、競争上の優位性を確立することと定義しています。

この定義は、経済産業省が2018年12月に公表した「DX推進ガイドライン」で示されたもので、現在はデジタルガバナンス・コードに引き継がれています(経済産業省 デジタルガバナンス・コード、文言はIPAのDX SQUAREでも紹介されています)。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること、という文章です。

この定義から読み取れるポイントは三つあります。一つ目は、変革の対象が「製品・サービス・ビジネスモデル」という外向きの変化と、「業務・組織・プロセス・企業文化」という内向きの変化の両方にわたることです。二つ目は、出発点が技術ではなく「顧客や社会のニーズ」に置かれていることです。三つ目は、最終的な目的が「競争上の優位性の確立」であり、デジタル化そのものはゴールではないことです。AIという言葉はこの定義に登場せず、「データとデジタル技術」という広い表現になっている点からも、AIが数ある手段の一つであることがわかります。

デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXの3段階

経済産業省の「DXレポート2(中間取りまとめ)」では、DXに至る過程を3つの段階に分けて説明しています。AIがどの段階で使われるのかを考えるうえでも役立つ整理です。

段階 内容 営業領域での例
デジタイゼーション アナログ・物理データのデジタルデータ化 紙の日報や名刺をデータとして入力する
デジタライゼーション 個別の業務・製造プロセスのデジタル化 案件管理や報告をシステム上で完結させる
デジタルトランスフォーメーション 組織横断・全体の業務・製造プロセスのデジタル化、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革 蓄積した商談データとAIの予測をもとに、売り方や商品構成そのものを見直す

AIは主に、データがそろった後の段階で力を発揮します。紙の情報がデータになっていない段階でAIを導入しようとしても、学習や分析に使えるデータがないため効果が出ません。逆に言えば、AIの活用を見据えることで、「まずデータを集める仕組みを整える」という前段の取り組みの意義もはっきりします。

段階が進むほど成果を出すのが難しくなることは、調査にも表れています。IPAの「DX動向2025」では、日本企業のうちデジタイゼーションで成果が出ている企業は6割前後ある一方、7割前後が取り組む「新製品・サービスの創出」で成果が出ている割合は18.8%、「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では15.6%にとどまります。業務を効率化するためにAIなどのデジタル技術を入れることと、変革で成果を出すことの間には、まだ距離があることがわかります。

デジタル化・IT化・AI・AXの違い

「デジタルとAIの違い」「ITとDXとAIの違い」は、とくに混同されやすい組み合わせです。デジタル化は情報をデジタルデータにして扱えるようにすること、AIはそのデータから判断や予測を行う技術、と整理すると区別しやすくなります。

言葉 意味 AIとの関係
デジタル化 アナログの情報や個別の業務をデジタルに置き換える(デジタイゼーション・デジタライゼーション) AIが使うデータを作る土台になる
IT化 既存の業務をITツールに置き換えて効率を上げる。業務の進め方そのものは大きく変わらない AIはITの技術の一つで、IT化の延長でAI機能付きツールを使うこともある
DX データとデジタル技術で、ビジネスや組織のあり方を変える AIはそのための手段の一つ
AI データから学習し、予測・分類・生成などを行う技術 技術そのもの。目的ではない
AX(AIトランスフォーメーション) AIを中心に据えて業務やビジネスを変革する考え方 DXのうち、AIを軸にした取り組みと位置づけると理解しやすい

AXは生成AIの普及に伴って使われることが増えた言葉で、定義は発信元によって幅があります。AXの定義、DXとの使い分け、アナログ業務からの始め方は「DXとAXとは|違い・使い分け・アナログ変革との関係」で詳しく解説しています。

DXにおけるAIの役割

DXの中でAIが担う役割は、業務の自動化、データの分析、予測と最適化、顧客対応の高度化、文章・資料の生成の5つに大別できます。いずれも「人が時間をかけていた判断や作業を、データにもとづいて速く・大量にこなす」点が共通しています。

役割 内容 業務での例
業務の自動化 繰り返し発生する定型的な判断や処理を任せる 請求書や申込書の文字読み取り、問い合わせの一次対応
データの分析・可視化 大量のデータから傾向や関係を見つける 受注につながりやすい商談の特徴の抽出、顧客の声の分類
予測と最適化 過去のデータから将来を予測し、最適な選択を示す 受注予測、需要予測による在庫調整、人員配置の最適化
顧客対応の高度化 顧客ごとに合わせた対応を、時間を問わず提供する 24時間対応のチャットボット、購入履歴にもとづくおすすめ表示
文章・資料の生成と検索 生成AIで文章や要約、たたき台を作る。社内の文書をAIで検索する 議事録の要約、提案書やメールの下書き、社内規程の検索と回答

ここで押さえておきたいのは、AIの役割は「人の仕事をなくすこと」ではなく、「人がより価値の高い仕事に時間を使えるようにすること」だという点です。営業であれば、日報の作成や見込み案件の洗い出しといった作業をAIに任せることで、担当者は顧客との対話や提案内容の工夫に時間を割けるようになります。この時間の使い方の変化が積み重なり、売り方や組織のあり方が変わっていくことが、AIを通じたDXの姿です。

検索の精度を上げる使い方も、AIがDXで使われる場面の一つです。社内の文書やFAQをAIで検索できるようにすると、探す時間の削減につながりますが、検索の対象になる文書が電子化され、整理されていることが前提になります。社内文書を管理する仕組みの選び方は「文書管理システムの比較」も参考になります。

また、生成AIの登場によって、AIの使い手が専門家からすべての社員に広がった点も見逃せません。従来のAIはデータサイエンティストが専用のモデルを作って使うものでしたが、生成AIは自然な文章で指示するだけで利用できます。対話型の生成AIサービスの違いは「ChatGPT・Gemini・Claude・Copilotの比較」で整理しています。

日本企業のAI活用の現状|総務省の調査から

総務省の令和8年版情報通信白書(2025年度企業向け調査)では、生成AIの活用方針について「積極的に活用する」または「活用する領域を限定して利用する」と答えた日本企業は合計68.9%(前年度は49.7%)でした(総務省 情報通信白書 令和8年版 生成AIの活用方針等)。何らかの業務で生成AIを利用している企業は86.4%(活用方針で「わからない」と答えた対象を除く)です(同 生成AIの業務利用状況)。

一方で、先進的な企業は個人作業の効率化にとどまらず、AIの活用を前提に業務プロセスそのものを作り直していると、同じ白書は紹介しています。また白書は、日本企業のAI活用事例を、研究・商品開発、調達、製造・生産、マーケティング、顧客との接点、経営・コーポレート業務の6つの業務領域に分けて掲載しています(総務省 情報通信白書 令和8年版 AI活用事例(業務領域別))。自社に近い領域の事例から、対象業務の候補を探すと進めやすくなります。AIの利用が広がるほど、「AIを使っていること」と「業務や組織が変わったこと」を分けて考えることが大切になります。

AI活用によるDX推進の手順

AIを使ったDXは、目指す姿と課題を決め、対象業務を一つに絞り、データを整え、小さく試して、業務の流れを見直す5つのステップで進めます。「AIで何ができるか」から考え始めると導入そのものが目的になりがちなので、課題と目的を先に決める順序が大切です。

ステップ1|DXで目指す姿と、解決したい課題を決める

最初に、「3年後にどのような会社になっていたいか」と「そのために今どの業務の何が障害になっているか」を言葉にします。たとえば「営業担当の経験に頼らず、新人でも一定の成果を出せる組織にしたい」という目指す姿があれば、「商談の状況が担当者の頭の中にしかない」「受注見込みの判断が人によってばらつく」といった課題が見えてきます。ここで経営層が方向性を示しておくと、後の部門間の調整がしやすくなります。

ステップ2|最初の対象業務を一つに絞り、効果の指標を決める

課題のうち、効果が数字で見えやすく、関係者が少ない業務を最初の対象に選びます。指標は「受注予測の的中率」「日報作成にかかる時間」「見込み案件のフォロー漏れ件数」のように、導入前と後で比べられるものにします。導入前の数値を記録しておかないと、効果を説明できず次の展開につながらないため、この段階で現状を測っておくことが大切です。

ステップ3|データを集める仕組みを整える

AIの精度は、使うデータの量と質に左右されます。Excelや紙、個人のメールや名刺ホルダーに散らばった情報を一か所に集め、入力ルール(顧客名の表記、案件の段階の定義など)をそろえます。この段階で、データの蓄積とAIの活用を同じ仕組みの中で進められるツールを選ぶと、後から対象を広げやすくなります。

ステップ4|小さく試し、効果と課題を検証する

一つのチームや拠点に限定して試験的に導入し、ステップ2で決めた指標を比べます。数字だけでなく、「入力が負担になっていないか」「AIの提案を現場が信頼して使っているか」といった現場の声も集めます。AIの出力をそのまま使わず、人が確認する手順を決めておくことも、この段階で欠かせません。

ステップ5|業務の流れを見直し、対象を広げる

効果が確認できたら、AIに合わせて業務の流れや役割分担を見直し、他のチームや業務に広げます。たとえば、受注予測が使えるようになったら、営業会議を「数字の報告の場」から「予測をもとに打ち手を決める場」に変える、といった変化です。ツールを入れた後の業務の変え方まで踏み込むことで、AI導入がDXにつながります。

自社でAIを開発するか、既存のサービスを使うか

「AI開発」と聞くと自社でモデルを作ることを想像しがちですが、DXでAIを使う方法は大きく3つあり、多くの企業は上の2つから始めます。

方法 向く場面 前提になるもの 注意したい点
汎用の生成AIツールをそのまま使う 文章作成・要約・調べものなど、個人作業の効率化 利用ルールと、情報漏えい対策をした利用環境 一部の社員だけが使う状態で止まりやすい
AI機能を備えた業務ツール・サービスを導入する 営業・経理・問い合わせ対応など、業務ごとに課題が決まっている場面 対象業務のデータ。サービスがどこまでAIを使うかの確認 機能の範囲が業務ごとに異なるため、資料で確認する
自社の業務やデータに合わせてAIを開発する 自社独自のノウハウやデータがあり、競争力の源泉になる領域 データ、人材、開発と運用の体制 手間と費用がかかるため、効果を確かめた後に検討する

総務省の令和8年版情報通信白書も、まずは汎用的な生成AIを個人の作業で使うところから始め、その後に業務プロセス全体をAI前提で変革する段階的な進め方を紹介しています(総務省 情報通信白書 令和8年版 効果創出のステップ)。独自のLLMやマルチエージェントを自社で開発している例は、自社に独自のノウハウやデータがあり、競争力の源泉となる領域に取り組む大企業の事例として挙げられています。AIを自社で開発することは、DXの前提ではありません。

この白書はさらに、生成AIの利用環境を整えるだけでは一部の社員の利用にとどまることがあるため、活用事例の収集や社内展開、定期的なワークショップで具体的な使い方を広げている企業があることも指摘しています。社員が個人の判断で業務にAIを使う「シャドーAI」は、機密情報の流出などのリスクがあるため、利用ルールを整えたうえで、安全に使える環境を用意することが基本です。

推進体制と人材をどう考えるか

また白書では、AI活用で先進的な企業は、事業部門の現場の課題を起点にし、DX推進部門がアイデア出し・技術面の助言・効果測定・学習機会の提供といった伴走支援を担う形を取っていると紹介されています。経営層が方向性を示し、現場の課題から着手し、推進部門が支える、という役割分担です。人材の育成や確保の考え方は、「DX人材とは」と「DX人材育成とは」で詳しく解説しています。

ステップ3の「データを集める仕組み」が、自社では実際どの程度整っているでしょうか。営業部門の取引先データで確かめられるように、次のチェックリストを用意しました。

取引先データの整理状況、AIを使う前に大丈夫?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

DXにAIを活用するときによくある失敗パターン

AIを使ったDXの取り組みがうまくいかない原因は、技術よりも進め方にあることがほとんどです。代表的な失敗パターンと、その対策を整理しました。

失敗パターン 起きること 対策
AI導入が目的になる 「AIを使うこと」自体が目標になり、解決したい課題があいまいなまま進む 目指す姿と課題を先に決め、AIは手段の一つとして比較検討する
PoC(試験導入)で止まる 試験導入を繰り返すが、評価の基準がなく本格展開の判断ができない 試験の前に指標と合格ラインを決め、期限を区切って判断する
データが整っていない データが部門ごとに分散し、形式もばらばらでAIが活用できない AI導入の前に、データを集める仕組みと入力ルールを整える
現場が使わない AIの判断根拠がわからず、現場が結果を信頼しない。入力の負担だけが増える 現場を検討段階から巻き込み、入力の手間を減らす設計にする
ルールがないまま使う 生成AIに機密情報を入力する、誤った出力をそのまま使うといった問題が起きる 利用ルールと、出力を人が確認する手順を先に定める

失敗パターンの多くは、「何のために使うか」と「使った後に何を変えるか」が決まっていないことから生まれます。前述のIPA「DX動向2025」が示すように、デジタル化の段階では成果が出ていても、変革の段階で成果が出にくい傾向があります。手順のステップ1と5を省略しないことが、最大の予防策です。

AI以外のDX推進技術(IoT・クラウドなど)

DXを支える技術は、AIのほかにクラウド、IoT、ビッグデータ、RPA、5Gなどがあります。AIは、ほかの技術が集めたデータや提供する基盤の上で動くことが多く、組み合わせて使うことで効果が高まります。

技術 できること AIとの関係
クラウド サーバーやソフトウェアをインターネット経由で利用し、場所を問わずデータを共有する AIの計算処理やデータ保管の基盤になる。多くのAIサービスはクラウドで提供される
IoT 機械や設備、製品にセンサーをつけ、稼働状況などのデータを自動で集める AIが分析するデータの供給源になる。故障の予兆検知などで組み合わせて使われる
ビッグデータ 大量かつ多様なデータを蓄積し、分析できる状態にする AIの学習と分析の材料そのもの
RPA パソコン上の定型的な操作を、決められた手順どおりに自動で実行する ルールが決まった作業はRPA、判断が必要な部分はAIと役割を分けて組み合わせる
5G・ネットワーク 大容量のデータを遅延なく送受信する 映像など大きなデータをAIでリアルタイムに処理する用途を支える

なかでもRPAはAIと比較されることの多い技術です。RPAは「決められた手順を正確に繰り返す」のが得意で、AIは「データから判断する」のが得意という違いがあります。請求書の処理であれば、AIが文字を読み取って内容を判断し、RPAが会計システムへの入力を行う、という分担が典型例です。RPAツールの違いや選び方は「おすすめのRPAツールの比較」で解説しています。

AIを使わずにDXを進める企業の例

DXの事例というとAIを使った先進的な取り組みが目立ちますが、AIを使わずに大きな変化を生んでいる取り組みも少なくありません。業種を問わず見られる典型的なパターンを紹介します。

  • 紙の申込書やFAXでの受注をやめてWebで受け付け、入力の手間と転記ミスをなくしたうえで、受注データをもとに商品構成を見直す
  • 顧客情報や案件の状況をクラウド上で共有し、担当者が不在でも誰でも対応できる体制に変える
  • 押印と郵送が前提だった契約手続きを電子契約に切り替え、契約締結までの期間を短くする
  • 店舗の予約や問い合わせをオンライン化し、電話対応にかかっていた時間を接客の質の向上にあてる
  • 製品の販売だけでなく、利用状況に応じた月額制のサービスを始め、収益の形を変える

これらの取り組みに共通するのは、技術の新しさではなく「業務の流れや顧客への価値の届け方が変わっている」点です。そしてもう一つの共通点は、取り組みの結果としてデータがたまっていくことです。Webの受注データやクラウドで共有された案件情報がたまると、次の段階でAIを使って予測や分析を行う土台ができます。AIを使わないDXは、将来AIを活用するための準備にもなっているのです。

そのため、まずはAIを使わない業務のデジタル化から始め、データがたまってきた業務からAIを取り入れる、という順序も現実的な選択です。営業であれば、名刺や案件の情報をクラウドで共有して入力を定着させ、データが十分にたまった段階でAIによる要約や分析を使い始める、といった進め方ができます。

DXでAIを活用する際に押さえておきたいリスク

AIを業務に取り入れる際は、効果と同時にリスクへの備えも必要です。経済産業省と総務省は、AIを開発・提供・利用する事業者向けの指針として「AI事業者ガイドライン」(第1.2版、2026年3月公表)を公表しており、関連資料は「AIガバナンス」のページにまとめられています。利用する立場の企業が特に意識しておきたい点は次のとおりです。

  • 情報漏えい:顧客情報や社外秘の情報を、学習に使われる可能性のあるAIサービスに入力しない。入力してよい情報の範囲を社内で決める
  • 出力の誤り:生成AIはもっともらしい誤った内容を出力することがあるため、重要な判断や社外に出す文書は人が確認する
  • 権利の侵害:生成した文章や画像が他者の著作物に似ていないか、利用規約で商用利用が認められているかを確認する
  • 判断の偏り:学習データの偏りが結果に反映されることがあるため、採用や与信など人に影響する判断ではAIの結果をそのまま採用しない
  • シャドーAI:社員が個人の判断で業務にAIを使うと、入力した機密情報が流出するおそれがある。利用ルールと、安全に使える環境を会社として用意する

なお、法令やガイドラインの解釈は個別の状況によって異なります。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。具体的な判断が必要な場合は、最新の公的資料を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

生成AIや業務ツールに取引先の情報を扱わせるときは、データをどこに置き、誰がどの範囲まで見られるかを決めておくことが出発点になります。名刺のような取引先データを集約する場合、名刺管理SKYPCEは、許可したネットワーク(IPアドレス)からのみアクセスを認める設定、ダッシュボードの公開範囲の限定、関連製品との連携による操作ログの記録などが商品ページで紹介されています。データの置き場所とアクセスの範囲を先に整えたい場合は、商品ページで詳細を確認してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. DXとAIの違いを一言で言うと何ですか?

A. DXは「データとデジタル技術を使ってビジネスや組織を変革する」という目的・取り組みで、AIはその変革を実現するための技術(手段)の一つです。DXは経営戦略、AIは道具と考えるとわかりやすいでしょう。

Q2. AIとDXの関係は?

A. AIはDXを実現するための技術の一つです。データがそろった段階で、業務の自動化、分析、予測、文章の生成などによってDXを支えます。ただし、AIを使わないDXもあり、AIを導入しても業務や組織が変わらなければDXにはなりません。

Q3. ITとDXとAIの違いは何ですか?

A. ITは情報技術の総称で、既存の業務をITツールに置き換えて効率を上げることがIT化です。DXはデータとデジタル技術で、ビジネスや組織のあり方まで変えることを指します。AIはITの技術の一つで、DXを進めるための手段として使われます。

Q4. AIを導入すればDXを実現したことになりますか?

A. なりません。AIを導入しても、業務の流れや組織、顧客への価値の届け方が変わらなければ、既存業務の一部を自動化しただけにとどまります。AIはDXに必須でもないため、導入後に業務をどう変えるかまで決めておくことが、DXにつなげるポイントです。

Q5. DXでAIを活用するには、何から始めればよいですか?

A. 目指す姿と課題を決めたうえで、AIに使えるデータがそろっているかを確かめ、効果が数字で見えやすい業務を一つ選んで小さく試すことから始めます。営業であれば、名刺や取引先の情報を組織で共有できる形にそろえることが、最初の一歩になります。

Q6. 「DX化」という言い方はおかしいですか?

A. 誤りと断定されるものではなく、実際に広く使われています。DXはデジタルトランスフォーメーション(変革)の略で、「変革」の意味を含むため、「DX化」を重複と感じる人もいます。経済産業省の文書では「DX推進ガイドライン」「DX認定制度」のように書かれています。なお、DXの「X」は、英語圏で「trans」を「X」と略す慣習によるとされますが、経済産業省などの公的資料には由来の説明がなく、民間の解説での説明です。詳しくは「DXは何の略?」で解説しています。

まとめ|DXとAIを整理して進める5つのこと

DXとAIの違いと、DXの中でAIを活用する考え方を整理しました。次の5つを順に進めることが、AIの導入をDXにつなげる近道です。

  1. DXは目的、AIは手段と整理し、AIを入れること自体を目的にしない
  2. 経済産業省の定義と3段階で、自社の取り組みがどの段階にあるかを確認する
  3. AIが使えるデータがそろっているかを最初に点検し、散らばった情報は集めて整える
  4. 対象業務を一つに絞って指標を決め、小さく試し、効果を見て業務の流れを見直す
  5. 取引先データを整える手段として、名刺管理SKYPCEのようなサービスの資料を確認し、自社の運用に合うかを検討する

最初から全社的な変革を描くより、営業など一つの業務でデータを整え、AIの効果を確かめ、成果を足がかりに広げていくことが、DXを前に進める現実的な方法です。

参考文献

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top