介護DXとは?意味・事例・進め方とLIFE対応の注意点を解説
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- 介護DXの意味とICT化の違いがわかる
- 進まない理由と6つの進め方がわかる
- LIFEの運営移管と補助金の注意点がわかる
介護DXとは、デジタル技術とデータを使って、介護の記録や情報共有、職員の働き方そのものを変え、利用者のケアに使える時間を増やす取り組みです。介護ソフトや見守りセンサーを入れることはその手段であり、入れたあとに業務の流れまで組み直してはじめてDXと呼べます。2026年4月には、利用者・市町村・事業所・医療機関で情報を共有する介護情報基盤が稼働を始め、科学的介護情報システム(LIFE)の運営も同年5月に国民健康保険中央会へ移りました。この記事では、介護DXの意味とICT化との違い、ツールの種類、効果と事例、進まない理由、6つの進め方、LIFEの仕組みと提出の流れ、補助金の注意点までを順に整理します。最初に、多くの事業所が取り組みやすい職員の勤務管理から取り上げます。
介護DXの最初の一歩を診断
Q1. いちばん手を付けたい業務はどれですか?
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介護DXとは|意味と、最初の一歩を職員の勤務管理から始める理由
介護DXとは、デジタル技術とデータで介護の記録・情報共有・働き方を変え、利用者と向き合う時間を増やす取り組みです。ICT化(道具の導入)は、その入口にあたります。
厚生労働省は、2040年頃に向けて高齢者人口がピークを迎える一方で、生産年齢人口が急減し、介護を含む各分野で人材不足がさらに大きな課題になると整理しています。そのうえで、介護事業所や自治体がICT等を使って業務を効率化することを喫緊の課題としています。DXという言葉は、経済産業省のデジタルガバナンス・コードで、データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデル、業務や組織、企業文化を変革することと位置づけられています。介護に当てはめると、紙をパソコンに置き換えることがゴールではなく、空いた時間をケアや職員の育成に振り向けるところまでが介護DXです。
では、どの業務から手を付けるか。取り組みやすい入口が職員の勤務管理です。早番・日勤・遅番・夜勤が入り混じるシフトや、訪問介護の直行直帰は、紙のタイムカードでは月末の集計に時間がかかります。勤務時間がデータとして残れば、あとで記録ソフトやLIFE対応に取り組んだときに、時間がどれだけ変わったかを数字で確かめられます。介護の現場で比較対象になる2つの勤怠管理サービスを、優劣ではなく役割の違いで整理します。
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jinjer勤怠を利用することによって、取り急ぎ問題となっていた「社内システムでは不可能な日付を跨いだ打刻」に関する問題が解決しました。 また、個人個人で日勤・夜勤がバラバラになっているシフト管理も、あらかじめスケジュールを登録できることにより解決しました。現場の責任者からも「シフト表を作る手間が省けた!」と大変好評でした。 労務部の立場としても、無理なシフトになっていないかの連携がリアルタイムにできることは大きなメリットでした。
導入事例も公開されています。ジンジャーの公式サイトによると、三重県で複数の介護施設を運営する社会福祉法人三重ベタニヤでは、200名を超える職員の勤怠をタイムカードとExcelで管理しており、集計だけで毎月2-3営業日かかっていたとのことです。勤怠・人事・給与を1つの仕組みにまとめる形に切り替えた経緯は、社会福祉法人三重ベタニヤの導入事例で紹介されています。
介護DXとICT化の違い|3つの段階で考える
ICT化は介護にデジタル機器やソフトを取り入れることで、介護DXはそれらを使って記録や情報共有の流れそのものを組み直し、ケアの時間を生み出すことです。
ICT化は、タブレットで記録を入力する、インカムで職員同士が連絡を取り合うといった道具の導入を指すことが多く、介護DXを進める手段の一つです。DXは一度に実現するものではなく、一般に次の3つの段階を順に踏むと整理しやすくなります。
| 段階 | 内容 | 介護現場での例 |
|---|---|---|
| 1. デジタイゼーション | 紙やアナログの情報をデジタルデータに置き換える | タイムカードを勤怠管理システムに、紙の記録をタブレット入力に切り替える |
| 2. デジタライゼーション | 業務の流れそのものをデジタル前提で組み直す | 記録から請求、LIFEへの提出までを介護ソフトで一続きにし、転記をなくす |
| 3. デジタルトランスフォーメーション | データをもとにケアや経営のあり方を変える | LIFEのフィードバックでケア計画を見直し、人員配置や採用の判断にもデータを使う |
勤怠管理のデジタル化や記録のタブレット化は1段目にあたります。1段目を飛ばしていきなり3段目を目指しても、もとになるデータがそろっていないため分析も改善も進みません。逆に、1段目だけで終わり「システムは入れたが仕事は楽にならない」状態にとどまる事業所も多くあります。2段目で業務の流れを組み直すことを意識するのが、介護DXを道具の導入で終わらせないための要点です。
介護DXが求められる背景と期待できる効果
介護DXが求められる最大の理由は、介護の担い手不足と、介護サービスの需要の増加です。働き手が増えにくい以上、職員が利用者と向き合う時間を確保するには、事務作業や移動、情報共有にかかる時間を減らすしかありません。
制度の側も、データの活用を前提に変わってきました。2024年度の介護報酬改定では、介護ロボットやICTなどのテクノロジーを使って生産性向上に取り組む事業所を評価する生産性向上推進体制加算が新設されています。2026年4月には、利用者本人・市町村・介護事業所・医療機関が利用者の情報を電子で共有できる介護情報基盤の稼働が始まりました。厚生労働省は、これにより職員の負担軽減や情報共有の迅速化が実現でき、蓄積された情報を使って事業所間や多職種間の連携、本人の状態に合ったケアの提供につなげることが期待されると説明しています。人手不足は介護に限った話ではなく、物流DXの進め方でも同じ流れを確認できます。
介護DXで期待できる主な効果を、確かめ方とあわせて整理します。効果は「楽になった気がする」ではなく、導入前から取っておいた数字と比べて確かめるのが基本です。
| 期待できる効果 | 現場で変わること | 数字での確かめ方の例 |
|---|---|---|
| 職員の負担軽減 | 手書きの記録や転記、手作業の集計が減る | 記録や勤怠集計にかかる時間、月ごとの残業時間 |
| 情報共有の迅速化 | 申し送りや利用者の情報が、紙や口頭に頼らず共有できる | 申し送りの伝達漏れの件数、確認のための電話や呼び戻しの回数 |
| 多職種連携の強化 | 介護職・看護職・リハビリ職が同じ情報を見てケアの方向性をそろえられる | カンファレンスの準備にかかる時間 |
| ケアの質の向上 | 空いた時間を利用者への声かけや観察、計画の見直しに使える | LIFEのフィードバックを読む時間、計画の見直しの回数 |
介護DXで使われるツールの種類|6つに分けて整理する
介護DXで使うツールは、記録・請求のソフト、コミュニケーション、見守り、介護ロボット、バックオフィス、データ連携の6つに分けると、自分の課題に合うものを選びやすくなります。
| 種類 | できること | 向いている悩み |
|---|---|---|
| 1. 介護記録・請求ソフト | 日々の記録、請求、LIFEへの提出データの作成を電子化する | 紙の記録が多い、請求や提出で同じ内容を何度も入力している |
| 2. コミュニケーションツール | インカムやチャット、スマートフォンで申し送りや連絡を共有する | 申し送りの漏れ、呼び出しの伝達に時間がかかる |
| 3. 見守りシステム・センサー | 居室の状況をセンサーで把握し、異常を職員に知らせる | 夜間の巡回の負担が大きい、転倒や離床への対応が遅れる |
| 4. 介護ロボット・リハビリ支援 | 移乗や入浴、排泄の支援、機能訓練の支援などで身体的な負担を減らす | 職員の腰や体への負担、人手が必要な介助が多い |
| 5. バックオフィスシステム | 勤怠・シフト・給与・労務の管理を電子化し、職員の勤務時間をデータで残す | 月末の集計に時間がかかる、訪問介護の直行直帰や夜勤の把握が手作業 |
| 6. データ連携の仕組み | ケアプランデータ連携システムや介護情報基盤で、事業所や行政、医療機関と情報をやり取りする | ケアマネジャーや他の事業所とのやり取りを紙やFAXで行っている |
選ぶ順番の目安は、現場の困りごとが大きい業務から、小さく始められるものを選ぶことです。見守りシステムのように機器の設置を伴うものは、課題の整理、機器の選定、一部の居室での試験導入、本導入、効果の確認という流れで進めると、導入後のやり直しを減らせます。一方、勤怠管理のようにソフトで完結するものは、少人数で試して全体に広げやすい点が入口に向いています。
介護DXの事例|公式サイトで確認できる取り組み
介護DXの事例には、ナースコール・見守り・記録をスマートフォンに集約する取り組みや、タイムカードとExcelの勤怠集計をシステム化する取り組みがあります。いずれも各社が公式サイトで公開している内容です。
ナースコールのケアコムの公式サイトでは、2つの事例が紹介されています。1つ目は、ナースコール、PHS、介護記録用のタブレットを連動させて使っていたため、呼び出し対応と記録作業が別々になっていた事業所が、呼び出し対応・介護記録・職員間の情報共有をスマートフォン1台に集約した事例です。呼び出し情報が文字で表示されて内容を把握しやすくなり、記録作業の負担や申し送りの手間が減ったとされています。2つ目は、見守り支援システムのアラートを確認するためにパソコンのある場所へ戻る必要があった事業所が、ナースコール・見守り支援システム・介護記録ソフトをスマートフォン1台に集約した事例で、呼び出し時間や見守りの情報が自動で記録ソフトに連携され、記録時間が短縮されたと紹介されています。詳しくはケアコムの介護DXの解説ページで確認できます。
勤怠の面では、先に触れた社会福祉法人三重ベタニヤの事例のように、複数の施設のタイムカードを集めてExcelに転記する作業を、システムに任せる取り組みがあります。2つの分野の事例に共通しているのは、別々のツールや転記を一本化していること、そして入力の二重の手間をなくしていることです。事例を読むときは、自社の課題に近いかどうかとあわせて、効果が数字で示されているか、導入前の状況が書かれているかを確かめると、自社の判断材料にしやすくなります。
介護DXが進まない理由と対策
介護DXが進まない主な理由は、目的が曖昧なまま機器を選ぶこと、現場の不安に向き合わないこと、費用や通信環境の準備、効果の測定が後回しになることです。よく見られるパターンと対策を整理しました。
| 進まない理由 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 目的が曖昧なまま機器を選ぶ | 機能は多いが、何を減らしたいのかが決まっておらず使いこなせない | 「記録時間を減らす」「残業を減らす」など変えたいことを1つ決め、それに合う業務から始める |
| 現場が自分ごとになっていない | 一部の職員だけが使い、ほかの職員は紙のやり方に戻る | 現場のリーダーを推進担当に加え、現場の困りごとから課題を洗い出す |
| 今の紙の業務をそのまま置き換える | 紙の様式を再現するために設定が複雑になり、かえって手間が増える | 導入前に不要な記録や転記を減らし、業務の流れを見直してから設定する |
| 通信環境を後回しにする | 居室や浴室付近で電波が届かず、タブレットでの入力が止まる | Wi-Fiの届く範囲を事前に確認し、必要なら機器の増設も計画に含める |
| ITに慣れた職員に任せきりにする | 特定の職員に負担が集中し、その職員が辞めると運用が止まる | 研修と簡単な手順書を用意し、複数の職員が操作できる状態にする |
| 費用の見通しと効果の測定が無い | 費用に見合う効果を説明できず、次の投資に進めない | 導入前の勤務時間や残業時間を記録しておき、補助金の条件も早めに確認する |
どの理由にも共通するのは、道具の導入が目的になり、職員の働き方がどう変わったかを確かめていないことです。介護DXの成果は、最終的には職員の時間の使い方の変化として現れます。だからこそ、最初に勤務時間を正確に記録できる仕組みを持っておくことが、ほかの取り組みの効果を見極める物差しになります。
2つの勤怠管理サービスの役割を比較表で見る介護DXの進め方|6つのステップ
介護DXは、大きな計画を一度に進めるより、小さく始めて効果を確かめながら広げる方がうまくいきます。一般的には、次の6つのステップで考えると進めやすくなります。
- 目的を決める:「記録の時間を減らしてケアの時間を増やす」「残業を減らす」など、DXで何を変えたいかを言葉にする。
- 推進体制をつくる:施設長だけでなく、現場のリーダー職員を巻き込み、相談役となる担当者を決める。厚生労働省は、介護事業所のデジタル人材向けに「デジタル中核人材養成研修」の参加者募集を、令和8年度も案内している。
- 現状を把握する:業務ごとに誰が何分かけているかを洗い出す。勤怠データがあれば、残業の多い時間帯や職種がわかる。
- 優先順位を決める:効果が大きく、現場の負担が少ない業務から手を付ける。毎日発生する勤怠や記録は候補になりやすい。
- 導入して定着させる:操作研修や説明会を開き、紙との併用期間を決めて、元のやり方に戻らないようにする。
- 効果を検証して広げる:導入前後で時間や残業がどう変わったかを確認し、次の業務のデジタル化に進む。
この中で見落とされやすいのが、3番目の現状把握と6番目の効果検証です。どちらも職員の時間がどう使われているかを知る必要があり、紙の出勤簿では正確なデータが取れません。勤怠管理を先にデジタル化しておくと、この2つのステップを根拠のある数字で進められます。取り組み方の全体像は、厚生労働省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」(令和6年度改訂版)にまとめられており、DX全般の進め方はDX推進の進め方を6ステップで解説した記事でも整理しています。
介護DXの最初の一歩、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
LIFEとは|2026年に運営が国民健康保険中央会へ移った科学的介護情報システム
LIFE(ライフ)とは、介護事業所が利用者の状態やケアの内容をデータで提出し、全国のデータをもとにした分析結果をフィードバックとして受け取る科学的介護情報システムです。
LIFEは2021年度から本格的に運用され、2024年度の介護報酬改定に対応した新しいシステムに切り替わりました。介護DXの中では、記録したデータを出口で活かす役割にあたります。記録をデジタル化し、提出しやすい形に整え、フィードバックをケアの見直しに使うところまでを一続きで考えると、前に述べた3段階のうち2段目、3段目に進めます。提出する主な情報には、日常生活動作(ADL)、栄養、口腔、認知症の状態、褥瘡(じょくそう)の有無、リハビリテーションの計画や実施内容などがあります。
2026年の大きな変化は、運営主体の移管です。LIFEはこれまで厚生労働省が運用していましたが、令和8年(2026年)5月11日から公益社団法人国民健康保険中央会が運用しています。厚生労働省の事務連絡によると、LIFE関連加算を続けて算定するには、5月11日から7月31日までの移行期間に、国保中央会運用LIFEへの移行作業が必要とされていました。7月23日時点でも移行作業が終わっていない事業所があるとして、あらためて周知されています。移行の状況に不安がある場合は、所在地の自治体や、国保中央会運用LIFEのヘルプデスクに確認してください。
LIFEの利用には、国民健康保険団体連合会が提供する電子請求受付システム(介護)のIDとパスワード、セキュリティ用のメールアドレス、電子証明書の設定が必要です。LIFEへのデータ提出は、すべての事業所に一律で課された義務ではありませんが、科学的介護推進体制加算をはじめとする複数の加算で、提出が算定要件になっています。対象や要件はサービスの種類によって異なるため、具体的な扱いは厚生労働省の資料や自治体の案内で確認してください。
LIFEデータ提出の流れ|記録・入力・フィードバックの3ステップ
LIFEへの対応は、提出して終わりではありません。日々の記録、データの入力と提出、フィードバックの活用の3つを繰り返すことで、加算の要件とケアの改善の両方につながります。
| ステップ | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 1. 記録 | ADLや栄養、口腔などの評価を、決められた様式に沿って日々のケアの中で記録する | 評価の基準が職員ごとにばらつき、データの質がそろわない |
| 2. 入力・提出 | 介護記録ソフトからCSVを出力して取り込むか、LIFEの画面で入力して提出する | 提出期限(対象月の翌月10日)の前に入力が集中し、特定の職員の残業が増える |
| 3. フィードバック活用 | 返ってきた分析結果を見て、ケア計画やカンファレンスの議題に反映する | 見る時間が取れず、フィードバックが開かれないまま終わる |
提出の時期は加算ごとに異なります。たとえば科学的介護推進体制加算では、利用者ごとに、利用を開始した月、そこから少なくとも3月ごと、利用を終了する月の情報を、対象月の翌月10日までに提出します。ADL維持等加算では、評価対象利用開始月と、そこから数えて6月目の月が対象です(2024年3月15日の厚生労働省の事務連絡)。提出のたびに評価と入力の作業が発生するため、入力を担当する職員の時間をあらかじめシフトに組み込んでおかないと、期限前に一部の職員へ負担が偏りがちです。
LIFE対応がうまく回らない事業所を見ると、原因はソフトの機能よりも、入力に充てる時間が勤務計画の中に存在しないことにある場合が少なくありません。誰が、いつ、どれくらいの時間を使って評価と入力を行うのかを決めるには、職員一人ひとりの勤務時間と残業時間を正確に把握している必要があります。訪問から戻ってからまとめて入力する事業所や、夜勤の合間に記録する施設では、とくに勤務の実態がデータで見えているかどうかが差になります。
介護記録ソフトとLIFE連携の方法
LIFEへのデータ提出には、介護記録ソフトから出力したCSVファイルを取り込む方法と、LIFEの入力画面で直接手入力する方法の2つがあります。厚生労働省は、介護ソフトの事業者向けにLIFEとのCSV連携の標準仕様を公開し、更新を続けています。この仕様に対応したソフトであれば、日々の記録をそのまま提出用のデータとして使えます。
| 方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 介護記録ソフトからCSVを取込 | 利用者数が多い、日々の記録をすでにソフトで行っている事業所 | ソフトが国保中央会運用LIFEへの提出に対応しているか、提供会社に事前に確認する |
| LIFEの画面で手入力 | 利用者数が少ない、まず試しに提出してみたい事業所 | 記録と入力の二重作業になりやすく、提出頻度が上がると負担が大きい |
記録ソフトを選ぶ際は、LIFEへの対応に加えて、請求ソフトとの連携、ケアプランデータ連携システムへの対応、タブレットやスマートフォンでの入力のしやすさも確認しておきたいところです。記録、請求、LIFEの提出がそれぞれ別のソフトで行われていると、同じ情報を何度も入力することになり、介護DXの2段目である業務の流れの組み直しが進みません。補助金の資料では、補助の対象になる介護記録ソフトは、記録業務、事業所内外の情報共有業務、請求業務を一気通貫で行えるものとされています。
もう一つ大切なのが、評価の基準をそろえることです。ADLの評価などは、同じ利用者でも職員によって点数が変わることがあります。ソフトを導入しても、入力されるデータの質がそろっていなければ、フィードバックは参考になりません。評価の手順を簡単なマニュアルにまとめ、新しく入った職員にも同じ基準で記録してもらう仕組みが、連携の前提になります。利用者の健康情報を扱うため、端末の持ち出しやアカウントの共有を避けるなど、個人情報の取り扱いルールも合わせて決めておきましょう。
フィードバックをPDCAでケアの見直しに使う
LIFEは、データを提出するための仕組みではなく、ケアを見直すための仕組みとして使うと価値が出ます。計画、実行、評価、改善の流れに当てはめると、次のようになります。
- 計画(Plan):利用者の状態を評価し、ケア計画や個別機能訓練計画を立てる。
- 実行(Do):計画に沿ってケアを提供し、日々の様子を記録する。
- 評価(Check):LIFEに提出したデータのフィードバックを見て、全国の傾向と比べながら利用者の変化を確認する。
- 改善(Action):カンファレンスでフィードバックを共有し、ケア計画を見直す。
このサイクルを回すうえでの課題は、評価と改善の時間をどう確保するかです。フィードバックを読み込み、多職種で話し合う時間は、日々の業務の合間ではなかなか取れません。カンファレンスの時間をシフトに組み込み、参加する職員の勤務時間を確保しておくと、フィードバックを形だけで終わらせずに済みます。
介護DXで使える補助金と、LIFE対応との関係
介護DXに必要な機器やソフトの導入には、国の財源を使って都道府県が実施する補助制度を使える場合があります。厚生労働省の「介護テクノロジーの利用促進」のページでは、「介護テクノロジー導入・定着支援事業」が案内されています。補助の内容、要件、受付の時期は都道府県や年度によって異なるため、申請の前に所在地の都道府県の案内で最新の情報を確認してください。
注意したいのは、機器を買うだけでは対象にならないことが多い点です。厚生労働省の令和7年度の資料では、導入と一体的に、第三者による業務改善支援を受けることや、職場環境の改善の計画と導入効果の報告が求められています。また、補助率が高くなる要件として、入所・居住系などでは「LIFEにデータを提供している又は提供を予定していること」または「文書量の半減を実現させる導入計画となっていること」のいずれかが示されていました。つまり、補助を受けるにはLIFE対応を見据えた計画が必要になる場合があります。介護記録ソフトについては、厚生労働省が補助金の参考資料として「介護記録ソフト機能調査結果」を公開しており、令和8年4月1日からの新版は令和8年8月24日版が掲載されています。
効果の報告で問われるのは、導入によって業務の時間や職員の負担がどう変わったかです。ここでも、導入前の勤務時間や残業時間をデータで持っていることが強みになります。勤怠管理の記録を整えておくと、申請に必要な導入前後の比較を、数字で示しやすくなります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 介護DXとは何の略で、どういう意味ですか?
A. DXはデジタルトランスフォーメーションの略です。介護DXは、デジタル技術とデータを使って、介護サービスの提供のしかたや事業所の働き方そのものを変える取り組みを指します。タブレットやインカムを入れるICT化はその手段の一つで、記録や情報共有の流れを組み直し、空いた時間をケアや職員の育成に振り向けるところまでを含みます。
Q2. 介護DXが進まない理由は何ですか?
A. 目的が曖昧なまま機器を選ぶ、現場の不安に向き合わない、紙の業務をそのまま置き換えて手間が増える、通信環境や費用の準備が後回しになる、効果を測らないといった点が主な理由です。変えたいことを1つ決め、小さく始めて、導入前後の時間を数字で確かめると進めやすくなります。
Q3. 介護DXの事例にはどのようなものがありますか?
A. ナースコール・見守り・記録をスマートフォンに集約して記録時間を短縮した事例や、タイムカードとExcelで行っていた勤怠の集計をシステムに切り替えた事例などがあります。いずれも各社が公式サイトで公開しているので、導入前に自社の課題に近いものを確認してください。
Q4. 介護DXは何から始めればよいですか?
A. 職員全員が毎日使い、効果を数字で確かめやすい業務から始めるのが現実的です。勤怠管理のデジタル化は、シフトや残業の集計が楽になるだけでなく、職員の勤務時間がデータとして残るため、その後の介護記録ソフトの導入効果を確かめる土台になります。
Q5. LIFEとは何で、どのくらいの頻度でデータを提出しますか?
A. 介護事業所が利用者の状態やケアの内容を提出し、分析結果のフィードバックを受け取る科学的介護情報システムで、2026年5月11日から国民健康保険中央会が運用しています。提出の時期は加算ごとに異なり、科学的介護推進体制加算では、利用開始月、そこから少なくとも3月ごと、利用終了月の情報を、対象月の翌月10日までに提出します。
Q6. 介護DXの補助金を受けるにはLIFEへの対応が必要ですか?
A. 補助の要件は都道府県や年度によって異なります。令和7年度の厚生労働省の資料では、補助率が高くなる要件として、LIFEにデータを提供している又は提供を予定していること、または文書量の半減を実現させる導入計画となっていることなどが示されていました。申請の前に、所在地の都道府県の案内で最新の要件を確認してください。
まとめ
介護DXは、介護ソフトや見守り機器を入れることそのものではなく、データとデジタル技術で記録や情報共有の流れを変え、職員がケアに向き合う時間を生み出す取り組みです。この記事のポイントを整理します。
- 介護DXは、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階で考えると、今どこにいるかがわかりやすい。
- 進まない理由の多くは、目的の曖昧さと効果を測らないことにある。変えたいことを1つ決め、導入前の時間を記録して小さく始める。
- LIFEは2026年5月から国民健康保険中央会が運用している。移行状況を確認し、記録、入力と提出、フィードバック活用の3ステップに入力の時間を組み込む。
- 介護記録ソフトは、LIFEのCSV連携や請求、ケアプランデータ連携への対応を確認し、評価の基準と個人情報の扱いもそろえる。
- 最初の一歩に勤怠管理を選ぶなら、訪問か施設かなど自社の勤務の形に合うサービスの資料を取り寄せ、比べて検討する。
参考文献
- 厚生労働省「介護DXの推進」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/DX_suishin.html
- 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00037.html
- 厚生労働省 事務連絡「LIFEの厚生労働省から公益社団法人国民健康保険中央会への移管に伴い事業所・施設で必要な対応について」(令和8年4月21日) https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001696867.pdf
- 厚生労働省 事務連絡「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年3月15日) https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001257192.pdf
- 厚生労働省「介護分野における生産性向上」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html
- 厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html
- 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」(令和7年度の事業資料) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001478274.pdf
- 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
- ケアコム「介護現場のDXとは?導入のメリット4つと事例、受給できる補助金を解説」 https://www.carecom.jp/contents/kaigo-dx/
- jinjer「社会福祉法人三重ベタニヤの導入事例」 https://hcm-jinjer.com/results/131464/
