dx 物流とは?2024年問題から考える物流DXの進め方

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  • 2024年問題を起点に、規模別の物流DX進め方がわかる
  • WMS・TMS・物流二法・物流特殊指定など実務と法務を整理
  • 調達・生産まで統合したい場合のSCMシステムの選び方も紹介

物流業界では、2024年問題をきっかけに、荷待ち時間の短縮、配車の見える化、倉庫作業の標準化、荷主とのデータ連携がより重要になっています。物流DXは、単にシステムを導入することではなく、受発注・配車・倉庫・輸配送・委託契約を段階的に見直し、限られた人員と車両で持続しやすい運用をつくる取り組みです。本記事では、個人事業主・中小企業・中堅大企業の3層に分け、物流DXの進め方と法務上の注意点、物流BPOとの組み合わせを整理します。特に、荷待ち・荷役時間や委託先との確認工数は、現場だけでなく荷主側の協力も必要です。

目次

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  1. 物流DXとは|2024年問題を起点に現場を変える取り組み
  2. 物流DXで見直す業務範囲|受発注からネットワークまで
  3. 規模別に見る物流DXの進め方
  4. 物流DXで注意したい法務・契約の論点
  5. 物流BPOと組み合わせる考え方
  6. 物流DXを始める前のチェックリスト
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ|今日からできる4つのこと
  9. 参考文献

物流DXとは|2024年問題を起点に現場を変える取り組み

物流DXとは、物流の受発注・配車・倉庫・輸配送・請求・荷主とのやり取りをデータでつなぎ、現場の判断と管理を見直す取り組みです。国土交通省は、物流DXを単なるデジタル化や機械化にとどめず、オペレーション改善や働き方改革、物流産業のビジネスモデルの革新につなげるものとして位置づけています(国土交通省「物流DXの推進」2025年、https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000018.html、2026年8月6日取得)。

物流DXが注目される背景には、トラックドライバーの時間外労働上限規制を含む2024年問題があります。厚生労働省の働き方改革情報では、トラックドライバーの長時間労働や輸送力不足の可能性が示され、荷待ち・荷役時間の短縮、予約システムやパレット活用などが求められています(厚生労働省「はたらきかたススメ|トラック」2025年、https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/truck.html、2026年8月6日取得)。つまり物流DXは、人手不足を一気に解決する施策ではなく、現場の無駄な待ち時間や紙・電話・FAX中心のやり取りを減らし、持続しやすい運用へ近づけるための基盤です。

2024年問題 時間外労働上限・荷待ち荷役 現場DX 受発注・配車・庫内作業 構造変革 共同配送・標準化・PI構想

図1:物流DXは2024年問題への対応を入口に、現場改善から構造変革へ進む

業界別のDXを俯瞰したい場合は、業界別DX全般の記事と併せて読むと、製造業、医療、建設、教育など他業界との違いも比較できます。本記事では物流に絞り、荷主、運送事業者、倉庫事業者、利用運送事業者が関わる実務に沿って解説します。

物流DXで見直す業務範囲|受発注からネットワークまで

物流DXは、いきなり大規模なシステム刷新から始めるものではありません。最初の段階は、紙の伝票、電話での配車依頼、メール添付の出荷指示、手入力の請求処理を見える化することです。受発注や配送依頼をデータ化すると、どの荷主・拠点・時間帯で荷待ちや再入力が発生しているかを把握しやすくなります。

次の段階では、配車管理、WMS、TMSを組み合わせて、倉庫と輸配送の情報をつなぎます。WMSは倉庫内の入出庫、在庫、ピッキングを管理する仕組み、TMSは配送計画、運行、実績、運賃計算などを扱う仕組みです。これらは特定ツールの優劣で選ぶのではなく、自社の課題が「庫内の在庫差異」なのか「積載率・配車」なのか「荷主別の収支」なのかを切り分けて考える必要があります。業務効率化の考え方は、DX業務効率化の考え方も参考になります。

受発注DX 配車DX WMS 倉庫 TMS 輸配送 SCM 調達・生産統合 物流実務のデータ化から、企業を超えた連携・上流統合へ広がる

図2:物流DXの段階は、現場のデータ化から上流の調達・生産統合へ広がる

段階 主な対象 見直すポイント
受発注DX 荷主との依頼・出荷指示 紙、電話、FAX、メール添付の重複入力を減らす
配車DX 車両、ドライバー、配送先 空車、距離、拘束時間、荷待ちを見える化する
WMS 倉庫、在庫、入出庫 在庫差異、作業標準、庫内動線を整える
TMS 輸配送、運賃、実績 配送計画と実績、荷主別収支をつなぐ
フィジカルインターネット 企業を超えた物流網 標準化、共同配送、拠点連携を検討する

経済産業省のフィジカルインターネット実現会議では、企業や業界を超えた物流の共有・標準化を長期的なテーマとして扱っています(経済産業省「フィジカルインターネット実現会議」2025年、https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/physical_internet/index.html、2026年8月6日取得)。これは、個社単位の配車改善だけでなく、共同配送、パレット標準化、拠点連携、データ連携を含む発展形です。中小事業者がすぐに取り組む領域というより、将来像として押さえ、自社のデータ形式や作業標準を整える際の方向感として活用するとよいでしょう。

ここまでのWMS・TMSは、あくまで自社の物流実務(倉庫・輸配送)を対象にした仕組みです。一方で、物流DXが進み、受発注・配車・倉庫の範囲を超えて、調達や生産計画まで含めた全体最適を目指す段階に来ている企業では、SCM(サプライチェーンマネジメント)システムが視野に入ります。SCMシステムは、原材料の調達から生産、在庫管理、輸配送、販売までのプロセスを一元的に管理する仕組みで、WMS・TMSで整えた物流データを、調達・生産計画とも連携させることを目的としています。特に複数拠点や複数荷主を抱える企業では、需要予測に基づく生産・調達計画とTMS・WMSの実績データをつなぐことで、欠品や過剰在庫を防ぎながらリードタイムを短縮しやすくなります。自社の物流DXが物流実務の効率化にとどまらず、調達・生産計画まで統合したい段階にあるかどうかを、次の一歩を検討する目安にするとよいでしょう。

規模別に見る物流DXの進め方

物流DXの進め方は、事業規模によって変わります。個人事業主の運送業者では、まず日報、配送実績、荷待ち時間、請求情報をスマートフォンやクラウドで残すだけでも、取引先との交渉材料を整理しやすくなります。高額なシステムを入れるより、記録の粒度をそろえ、どの作業に時間がかかっているかを把握することが先です。

中小物流事業者では、配車管理、倉庫管理、請求処理など、属人化しやすい業務から優先順位をつけます。たとえば配車担当者の経験だけに頼っている場合、車両、距離、荷量、時間指定、休息期間をデータで確認できる状態にすると、引き継ぎや繁忙期対応がしやすくなります。国土交通省の中小物流事業者向け資料でも、業務課題を明確にして社内で意思統一を図ることが、デジタル化推進の要点として示されています(国土交通省「物流関連データ」2026年、https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000012.html、2026年8月6日取得)。

中堅・大企業では、倉庫、輸配送、販売、調達、基幹システムが分断されやすいため、TMSやWMSを単体で入れるより、物流ネットワーク全体のKPI設計が重要です。拠点別の在庫、幹線輸送、ラストマイル、返品、共同配送、委託先管理を同じ指標で見られるようにし、調達・生産計画とも接続できる体制を整えます。この規模では、物流実務の効率化と、SCMシステムによる調達・生産・在庫・販売の統合を並行して検討する企業も増えています。

個人事業主 スマホで日報を残す 配車と請求をひも付け 荷待ち時間を記録 中小事業者 WMS・配車管理を整備 倉庫と輸配送をつなぐ 荷主別KPIを確認 中堅・大企業 TMSと基幹を連携 拠点網を見直す SCMで調達・生産を統合

図3:物流DXは規模に合わせて、記録改善から調達・生産統合まで段階を変える

物流DXで注意したい法務・契約の論点

物流DXでは、システムやデータだけでなく、法務・契約の確認も欠かせません。物流二法として本記事で扱う中心は、貨物自動車運送事業法と倉庫業法です。貨物自動車運送事業法はトラック運送の許可、運送契約、実運送体制などに関わり、倉庫業法は営業倉庫の登録や保管業務に関わります。自社が運送、利用運送、倉庫、荷主のどの立場にあるかで、確認すべき項目が変わります。

2024年問題に関しては、厚生労働省がトラックドライバーに対する時間外労働の上限規制として、原則月45時間・年360時間、臨時的に超える場合でも年960時間以内という整理を示しています(厚生労働省「はたらきかたススメ|トラック」2025年、https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/truck.html、2026年8月6日取得)。DXで配車を効率化しても、労働時間規制や改善基準告示を超える運用はできません。配車システムを使う場合も、拘束時間、休息期間、荷待ち時間、荷役時間を確認できる設計が必要です。

また、物流効率化法の改正では、荷主・物流事業者に対する努力義務、一定規模以上の事業者への中長期計画や定期報告、物流統括管理者の選任などが整理されています(国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」2026年、https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000034.html、2026年8月6日取得)。物流委託契約では、取適法や物流特殊指定にも注意が必要です。公正取引委員会は、荷主と物流事業者の取引における優越的地位の濫用を規制するため、物流特殊指定を設けています(公正取引委員会「物流特殊指定の考え方についての相談」2026年、https://www.jftc.go.jp/dk/butsuryu.html、2026年8月6日取得)。支払遅延、減額、買いたたき、無償の荷降ろし・梱包作業の要請などは、契約上のリスクになり得ます。

労働時間 960時間規制 改善基準告示 運送・倉庫 貨物自動車運送事業法 倉庫業法 委託契約 物流特殊指定 取適法 荷主義務 効率化法 定期報告

図4:物流DXでは、システム導入だけでなく労働時間・契約・荷主義務を同時に確認する

論点 確認する内容 DXでの注意点
労働時間 時間外労働上限、拘束時間、休息期間 配車・勤怠・運行実績を分けずに確認する
運送契約 附帯業務料、燃料サーチャージ、書面交付 契約条件と請求データを対応させる
倉庫業務 保管、入出庫、荷役、責任範囲 WMSの記録を契約・請求と照合する
委託先管理 再委託、多重下請、実運送体制 委託階層と実運送情報を把握する
荷主との取引 荷待ち、無償作業、買いたたき 荷待ち時間や附帯作業を記録に残す

なお、本記事における物流二法・物流効率化法・物流特殊指定・取適法等の解説は、一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言には該当しません。個別の契約内容や法令解釈については、弁護士等の専門家にご確認ください。

物流BPOと組み合わせる考え方

物流DXは、すべてを自社内で処理することを意味しません。配車補助、倉庫事務、受注処理、問い合わせ対応、請求・実績集計などは、物流BPOと組み合わせることで運用しやすくなる場合があります。一方で、委託すれば課題が消えるわけではなく、委託範囲、責任分界、データ形式、セキュリティ、費用、品質指標を整理する必要があります。

物流BPOと物流DXを組み合わせる場合は、「人が行う作業を外に出す」のではなく、「標準化した業務を、データで管理できる形にして委託する」と考えると整理しやすくなります。たとえば、電話で受けた配送依頼をBPO先が処理するだけでは、属人化が外部に移るだけです。受注項目、対応履歴、配車反映、請求条件を同じデータとして扱えるようにしてから委託すると、改善点が見えやすくなります。

物流DXを始める前のチェックリスト

物流DXを始める際は、システム名から選ぶよりも、現場で何を減らしたいのかを明確にすることが大切です。荷待ち時間、再入力、配車ミス、在庫差異、請求漏れ、委託先との確認工数などを洗い出し、どの指標を毎月確認するかを決めます。DXの進め方全体は、DX推進方法の記事で整理しています。

チェック項目 確認例
現状の業務フロー 受注から請求まで、紙・電話・メール・システムがどこで分かれているか
KPI 荷待ち時間、積載率、誤出荷、請求漏れ、荷主別収支など
データ項目 荷主、配送先、車両、運賃、附帯作業、実績時刻をそろえる
法務・契約 労働時間、委託範囲、書面交付、附帯業務料、再委託を確認する
外部委託 BPO先やシステム会社との責任分界、運用ルール、連絡体制を決める

最初から全社一括で変えるより、1つの拠点、1つの荷主、1つの配送ルートなど、範囲を絞って検証する方が現場に定着しやすくなります。効果を見るときは、削減額だけでなく、荷待ち時間、確認回数、入力回数、問い合わせ件数、契約条件の明確さなども確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 物流DXと物流のデジタル化は同じですか?

A. 似ていますが、範囲が異なります。デジタル化は紙や電話の業務をデータ化する取り組みです。物流DXは、そのデータを使って配車、倉庫、輸配送、契約、荷主連携まで見直す取り組みです。

Q2. 2024年問題への対応として、まず何から始めるべきですか?

A. 荷待ち時間、荷役時間、拘束時間、休息期間を記録できる状態にすることが出発点です。記録がなければ、配車改善や荷主との協議が感覚論になりやすくなります。

Q3. WMSとTMSはどちらを先に導入すべきですか?

A. 倉庫内の在庫差異やピッキングミスが主な課題ならWMS、配送計画や運行実績、運賃管理が主な課題ならTMSが候補になります。どちらが先かは、現場のボトルネックで判断します。

Q4. フィジカルインターネットは中小事業者にも関係しますか?

A. すぐに大規模な共同配送網へ参加するというより、データ形式、荷姿、作業標準、拠点連携を整える長期的な方向性として関係します。標準化を意識しておくと、将来の連携に対応しやすくなります。

Q5. 物流BPOを使えばDXは不要になりますか?

A. 不要にはなりません。BPOは業務を外部に委託する選択肢ですが、業務フローやデータ項目が整理されていないと、委託後も確認工数が残ります。DXとBPOは役割を分けて設計します。

Q6. 物流DXとSCMシステムはどう違いますか?

A. 物流DXは、受発注・配車・倉庫・輸配送など物流実務のデータ化と見直しを指します。一方、SCMシステムは調達・生産・在庫・物流・販売までサプライチェーン全体を一元管理する仕組みで、物流DXの発展形として位置づけられます。自社の課題が物流実務にとどまるか、調達・生産計画まで及ぶかによって、どちらに重点を置くかが変わります。

まとめ|今日からできる4つのこと

物流DXは、2024年問題への対応を起点に、現場の記録、配車、倉庫、輸配送、契約を段階的に見直す取り組みです。人手不足を一度に解決するものではありませんが、荷待ち時間や再入力を減らし、荷主・委託先との協議に使えるデータを整えることで、持続しやすい物流運用に近づけます。

  1. 荷待ち時間、荷役時間、配車変更、請求漏れなど、現場で見える化したい項目を3つ選ぶ
  2. 受発注、配車、WMS、TMSのうち、最初に改善する範囲を1つに絞る
  3. 調達・生産計画まで統合したい段階に来ている場合は、SCMシステムの選定検討に進む
  4. 労働時間、運送契約、倉庫業務、物流特殊指定など、法務・契約の確認事項を洗い出す

物流DXは、システムを導入した時点で完了するものではありません。現場のデータが整うほど、次に見直すべき範囲が見えてきます。受発注・配車・倉庫・輸配送のデータ化が一段落したら、法務・契約の確認事項を洗い出しつつ、調達や生産計画まで含めた全体最適が必要かどうかを定期的に見直すことが、持続しやすい物流運用への近道です。

参考文献

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