BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の歴史とは?起源からAI活用までの変遷を年表で解説
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- BPOの起源は1960年代の情報システム運用の委託
- 目的はコスト削減から専門性、BPaaSへと変化
- 各時代の教訓は委託先選びの確認項目になる
ビジネス用語のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の歴史は、1960年代に米国で始まった情報システム運用の外部委託を源流とし、コスト削減のためのオフショア拡大、品質と専門性を買う委託への転換を経て、現在はクラウドやAIと一体になったBPaaSへと進んできた流れです。日本では労働者派遣法、個人情報保護法、働き方改革関連法、インボイス制度などの制度変化が、任せる業務の種類と委託先に求められる水準を変えてきました。なお「BPO 歴史」で検索すると放送倫理・番組向上機構(BPO)の沿革も表示されますが、この記事で扱うのは、企業が業務を外部に任せるほうのBPOです。年代ごとの変化と、そこから読み取れる委託先選びの確認ポイントを、発注企業の担当者の視点で整理します。
BPOの歴史で気になる点から、読むポイントを診断
Q1. BPOの歴史で、いちばん知りたいのはどれですか?
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BPOの歴史が繰り返し示してきた課題|任せても残る「人」と「情報」の把握
BPOの歴史を通して変わらなかったのは、業務を外部に任せても、誰がどの業務を担い、どの情報を扱えるのかを発注側が把握し続ける必要があるという点です。
派遣と請負の区別、委託先への個人情報の監督、委託によって社内から失われる業務知識、委託先の担当者の入れ替わりは、時代が変わっても繰り返し表面化してきた課題で、このあとの年表でも順に出てきます。いずれも、自社の担当者のスキルや異動、委託先スタッフを含む担当と権限の記録が手元にあるかどうかで、気づける早さが変わります。こうした人の情報を一か所にまとめる手段のひとつが人事管理システムです。次の表は、当サイトに掲載されている3つのサービスの役割の違いです。
委託後も自社に残る「人」と「情報」を管理する、人事管理システム3つの役割の違い
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株式会社カオナビ
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出典:kaonavi
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口コミ
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当日初めて一緒に働くメンバーが多い職種なので、顔がわかることですぐに挨拶ができ、業務を開始できる。社歴を知ることもできるので、自分の先輩なのか後輩なのかが業務前にわかる。部署異動があってもすぐに反映される。
ベンダーの導入事例には、次のように紹介されているものがあります。民間企業の事例で、BPOの効果を示すものではありません。
評価者や人事担当者が入力の進捗確認もできるようになることで、一部入力が遅れている人がいたとしても全体の進行が止まることがなくなりました。
出典:サツドラホールディングス株式会社 導入事例(カオナビ)(評価シートの運用についての記述)
ジンジャー人事労務は個人情報の監督を扱う箇所で、タレントパレットは専門性とスキルを扱う箇所で、改めて紹介します。まずは、BPOの歴史を年表で確認しましょう。
BPOの歴史を年表で整理|4つの時代区分
BPOの歴史は、委託の目的が「情報システムの運用を任せる」から「コストを下げる」、「品質と専門性を買う」、「仕組みごと使う」へと移ってきた流れとして、4つの時代で整理できます。
年代の区切りは目安で、実際には前の時代の委託の形が消えずに積み重なっている点に注意が必要です。
| 時代 | 委託の主な目的 | 代表的な委託業務 | 日本で影響した主な出来事 |
|---|---|---|---|
| 1960年代から1990年代 | 自社の強みではない業務を外に出し、本業に集中する | 情報システムの運用、データ入力、給与計算 | 米国でEDS社が設立(1960年代)、KodakがIBMにデータセンター運営を委託(1989年)、労働者派遣法の施行(1986年)、バブル崩壊後の事業の選択と集中 |
| 2000年代 | コストを下げる | 経理・人事の事務処理、コールセンター | インターネットの普及による海外・地方への委託の拡大、個人情報保護法の全面施行(2005年) |
| 2010年代 | 品質と専門性を確保する | 人事労務、経理決算、法務関連の定型業務 | 人手不足の深刻化、クラウドサービスの普及、働き方改革関連法の施行(2019年) |
| 2020年代 | 仕組みごと使い、変化に追随する | クラウドと一体の経理・労務代行、AIを組み込んだ業務処理 | テレワークの拡大、インボイス制度(2023年)、電子帳簿保存法の電子取引データ保存への対応、生成AIの普及 |
BPOという言葉そのものの意味や、一般的なアウトソーシングとの違い、対象になる業務の範囲はBPOの意味とは|アウトソーシングとの違い・対象業務をわかりやすく解説で詳しく解説しています。ここからは、それぞれの時代に何が起きたのかを順に見ていきます。
BPOの起源|1960年代の情報システム運用の外部委託から
BPOの源流は、1960年代の米国で始まった情報システム運用の外部委託で、1989年のKodakとIBMの契約が、大型のアウトソーシングが広がる転機として知られています。
英国のコンピューター専門誌Computer Weeklyの歴史解説(2016年)は、情報システム運用の委託を早くから事業にした企業として、Ross Perot氏が1960年代に設立したEDS社を挙げています。同記事によると、1989年にはIBMがKodakのデータセンターを設計・構築・運営し、Kodakの従業員数百人がIBMの部門に移りました。この契約は、サービスのアウトソーシング産業の転機となった契約と位置づけられています(Computer Weekly「CW@50: A history of IT outsourcing」)。自社の強みではない業務を外部に出して経営資源を本業に集中させる、という考え方はこうして広まり、情報システム以外の事務処理にも広がって、業務の工程(プロセス)単位で任せるBPOという呼び方につながっていきます。
日本での始まりと背景
日本では、1986年に労働者派遣法が施行され、外部の人材を社内の業務に活用する仕組みが制度として整いました。BPO事業者の公式ブログでは、1989年にセブン-イレブン・ジャパンが情報システム部門でBPOを導入したことが日本での早い事例とされています(BPOの正体とは…? | サフィックス公式ブログ)。ただし派遣は「人を受け入れて自社が指揮する」形であり、「業務の結果を外部に任せる」請負型のBPOとは区別されます。この区別は現在でも重要で、委託契約でありながら発注側が委託先の作業者に直接指示を出すと、実態が派遣と判断されるおそれがあります(いわゆる偽装請負の問題)。1990年代に入り、バブル崩壊後の経営環境の悪化の中で、企業は事業の選択と集中を迫られ、給与計算やデータ入力、情報システムの運用といった業務を外部に任せる動きが広がりました。
| 比較の観点 | 労働者派遣 | 請負型の委託(BPO) |
|---|---|---|
| 業務の指示を出すのは | 受け入れる企業(発注側) | 委託先の企業 |
| 発注側が得るもの | 働く人の労働力 | 業務の成果(処理済みのデータ、手続きの完了など) |
| 業務手順の管理 | 発注側が手順を決めて管理する | 委託先が手順を設計・管理し、発注側は結果の水準を確認する |
この時期の委託は「人手が足りない作業を外に出す」という発想が中心で、業務の設計そのものは発注側に残っていました。委託先は手順書どおりに処理する役割を担い、業務の改善提案まで期待されることは多くありませんでした。BPOとアウトソーシング・派遣・BPRの違いを整理したい方は、BPOとアウトソーシング・派遣・BPRの違いを概念マップで整理した記事も参考になります。
2000年代|オフショアBPOの拡大と個人情報保護法
2000年代のBPOは、通信環境の発達で業務を処理する場所の制約が小さくなり、人件費の低い海外や地方への委託でコストを下げることが最優先の目的でした。
欧米企業はインドやフィリピンなど人件費の低い国に経理処理やコールセンターを移し、日本企業も中国の大連などの日本語対応拠点や、国内の地方拠点に事務処理を集約する動きを進めました。業務を海外に委託する形はオフショアBPO、国内の地方都市に委託する形はニアショアと呼ばれます。
コスト削減が最優先だった時代の特徴
この時代のBPOは、人件費の差を利用して処理コストを下げることが最大の目的でした。紙の帳票を画像化して海外拠点で入力する、問い合わせ電話を人件費の低い拠点で受けるといった形で、大量の定型業務をまとめて移管することで効果を出していました。一方で、言語や商習慣の違いによる品質のばらつき、業務知識が委託先に偏って社内に残らないことなど、コストだけで判断した委託の課題も次第に明らかになっていきます。為替や現地の人件費も無視できず、アクセンチュアの2020年のブログ記事は、中国では過去9年で人件費が2倍以上に上がり、フィリピンなどでも同様の傾向があるため、国内で運営するほうが安くなる逆転現象が起きていると述べています(アクセンチュア「BPOのその先へ 第1回」)。
個人情報保護法の全面施行による変化
2005年に個人情報保護法が全面施行されたことも、日本のBPOにとって大きな転換点でした。事業者が個人データの取扱いを外部に委託する場合、委託先に対して必要かつ適切な監督を行うことが求められるようになり、発注側は委託先の安全管理措置を確認する責任を負うことになりました。給与計算や社会保険の手続きのように従業員の個人情報を大量に扱う人事労務の委託では、価格だけでなく情報管理の体制が委託先を選ぶ条件として重視されるようになります。現在でも、委託先の選定基準、契約での安全管理措置の取り決め、委託後の取扱状況の把握は、発注側が押さえておくべき基本です(詳細は個人情報保護委員会のガイドラインで確認できます)。
委託先を監督するには、自社の側にも「誰がどの人事情報を扱っているか」の記録が必要です。人事情報を自社の中で一か所にまとめたい場合の一例が、ジンジャー人事労務です。商品ページでは、1つのデータベースで人事情報を一元管理でき、ペーパーレス化・業務効率化につながる点、従業員に関する情報が自動で時系列にまとめられ、いつでも確認できる点がおすすめとして紹介されています。注意点は、申し込みから運用開始までに最低2-3か月程度かかることです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
jinjer株式会社
ジンジャー人事労務
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ジンジャー人事労務
ペーパーレスで人事をもっと楽に!ニーズに合わせてカスタマイズしたい企業におすすめ

出典:ジンジャー人事労務
導入企業:株式会社モスフードサービス、エイブル保証株式会社など
口コミ
ジンジャー導入前は、システム間のデータ連携処理に相当な時間がかかっていました。
月中に入社する社員もいるため週次でこの処理が発生するのですが、人事から勤怠、人事から給与…とそれぞれで連携処理をおこなう必要があり、各連携には1時間ほどかかっていましたね。週で換算すると10時間ほどかかっていたと思います。ジンジャーではこの連携処理にかかる時間がゼロになったので、業務が止まってしまったり、PCの動作が重くなったりすることもなく助かっています。
統合型データベースの活用で、データ連携処理にかかる時間を年480時間削減!スピーディーな運用開始に成功
株式会社ABC Cooking Studio https://hcm-jinjer.com/results/136203/
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ベンダーの導入事例には、次のように紹介されているものがあります。こちらも民間企業の事例で、BPOの効果を示すものではありません。
毎回発生していたデータ連携作業がゼロに。勤怠集計から給与計算にかかっていた時間が1/3に短縮。
出典:株式会社ベルーナ 導入事例(ジンジャー)
2010年代|専門性重視への転換と業界特化型の広がり
2010年代のBPOは、求められるものが「安さ」から「品質と専門性」へ移り、法令に沿った判断や業務の改善提案まで委託先に期待されるようになった時代です。
背景には、国内の人手不足の深刻化、法令や制度の改正の頻度の高まり、クラウドサービスの普及があります。社内に専門知識を持つ担当者を確保すること自体が難しくなり、委託先には手順どおりの処理だけでなく、法令に沿った判断や業務の改善提案まで期待されるようになりました。
人手不足と法改正が委託の中身を変えた
人事労務の分野では、社会保険の適用拡大、マイナンバー制度の導入、2019年からの働き方改革関連法による時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化など、担当者が追いかけるべき制度の変化が続きました。こうした変化に社内だけで対応し続けるのは負担が大きく、社会保険労務士(社労士)などの専門家が関わる労務代行や、制度改正に合わせて更新されるクラウドの給与計算システムと組み合わせた委託が広がりました。委託先に求められる役割は、作業者から「専門知識を持つ業務のパートナー」へと変わっていきます。
| 比較の観点 | 2000年代までのBPO | 2010年代以降のBPO |
|---|---|---|
| 委託の目的 | 人件費の差によるコスト削減 | 品質の安定、専門知識の確保、人手不足への対応 |
| 委託先に求めること | 手順書どおりの大量処理 | 法令に沿った判断、例外対応、改善提案 |
| 評価の仕方 | 処理単価と処理件数 | SLA(サービスレベル合意)で品質・スピードを測る |
| 発注側の関わり方 | 業務を渡したら結果を受け取るだけ | 定期的に実績を確認し、委託範囲を見直す |
業界横断型から業界特化型へ
アクセンチュアの2020年のブログ記事によると、従来のBPOは財務・経理・人事のように業種を問わず必要とされる分野で業務を集約してコストを下げる「業界横断型」が主流でした。近年は、金融・通信・医療など各業界に特有の事業領域に深く踏み込んだアウトソーシングが広がりつつあるとされています(アクセンチュア「BPOのその先へ 第1回」)。専門性の高い委託先を使うほど、発注側には「自社の担当者に何を任せ、誰を育てるか」という問いが残ります。
この転換によって、委託先を選ぶときの比較軸も変わりました。料金の安さだけで選ぶのではなく、社労士や税理士との連携体制、法改正への対応の早さ、例外が起きたときの判断の確かさを確認することが一般的になっています。同時に、委託によって業務知識が社内から失われないよう、自社の担当者のスキルや経験を記録し、異動や引き継ぎのときに生かすことも欠かせません。この視点で使える一例が、タレントパレットです。商品ページでは、多様な人材データに基づく人材管理ができる点、組織診断や適性検査機能、人事異動シミュレーションを備え、人材を一元管理できる点がおすすめとして紹介されています。注意点は、高機能・多機能な反面、無料トライアルを設けていないため、必要な機能の判断が難しいことです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社プラスアルファ・コンサルティング
タレントパレット
株式会社プラスアルファ・コンサルティング
タレントパレット
多言語対応◎eラーニングも活用していきたい企業におすすめ

出典:タレントパレット
導入企業:パナソニック株式会社、ソフトバンク株式会社など
口コミ
初見で感じたのは、やはりUIのわかりやすさです。日本人的な感覚にとてもマッチしているなと感じました。機能面では分析機能が非常に充実しています。いずれも見せかけの機能ではなく、人事情報を扱う側に立ち「これ、必要だよね」と話しかけてくるような機能が多数あり衝撃を受けました。タレントパレットの作りが、我々が目指している形そのものになっていて。何より集積したデータの分析によって、組織をより良くしていきたいという思想を感じたんですよね。マーケティングが基盤にあり、数字を根拠に結果を出していくという考え方で開発されているので、説得力があるなと感じています。
経営戦略実現に向けタレントパレットを導入
多数精鋭組織を育成するニトリHDの構想とは https://www.pa-consul.co.jp/talentpalette/case/details/nitori.html
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気になる…
- 高機能・多機能な反面、無料トライアルは設けていないため必要な機能や不要な機能の判断が難しい
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人事考査を一定の役職以上が評価において管理できるメリットがある。一般社員からするとブラックボックス化していることになるが、評価側は見えない点がよいため、管理設定しやすいメリットがある。
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自身のスキルや経験を可視化できるため、これまで意識していなかった強みやキャリアの方向性を客観的に見直すきっかけになりました。 また、性格テストから自分の仕事観等が分かり、新たな発見も期待できる点、メンバーの仕事の価値観も参照すれば、どのように接してほしいか等のヒントが見つかるかもしれない点がメリットかもしれないです。
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Todoをシステム側に通知できるので、システムに入りさえすればやらなければいけないことが流れずにまとまって閲覧できた。また、同様に動画研修への動線もスムーズに配置でき、受講漏れなどが減った。
ベンダーの導入事例には、人事異動の進め方について、次のように述べているものがあります。こちらも民間企業の事例で、BPOの効果を示すものではありません。
これまでの人事異動は上司の主観的な評価を元に行われがちでした。
出典:リコージャパン株式会社 導入事例(タレントパレット)
2020年代|BPaaSとAI活用の台頭
2020年代のBPOを特徴づけるのは、クラウドサービス(SaaS)と業務代行を一体で提供するBPaaS(ビーパース、Business Process as a Service)という形です。
従来のBPOでは、発注側と委託先がそれぞれ別のシステムを使い、データを受け渡しながら業務を進めることが多くありました。BPaaSでは、委託先が提供するクラウドシステムの上で発注側と委託先が同じデータを見ながら業務を進めるため、進捗や処理結果が見えやすく、業務のやり方もシステムに合わせて標準化されます。
テレワークと制度対応がBPaaSを後押しした
2020年以降のテレワークの拡大で、紙の書類と押印を前提にした業務は見直しを迫られました。さらに、2023年10月に始まったインボイス制度や、電子帳簿保存法による電子取引データの保存への対応など、経理の分野でも制度対応の負担が増えています。こうした変化は、紙を前提にした業務をそのまま外に出すのではなく、クラウドとデータを前提に業務を組み立て直したうえで任せる流れを後押ししました。経済産業省が2018年に公表したDXレポートで指摘された、老朽化した既存システムが変革の妨げになるという問題意識も、業務の仕組みそのものを外部のサービスに置き換えるという発想と重なっています。
市場の広がりと日本のBPOの特徴
こうした変化を受けて、国内のBPO市場は民間の調査会社の推計でも拡大傾向が続いているとされ、情報システムの運用を中心とするIT系の委託と、人事・経理・コールセンターなどの非IT系の委託の両方で利用が広がっています。拡大を支える最大の要因は、生産年齢人口の減少に伴う人手不足です。一方で、欧米では早くから「自社の強み(コア業務)に経営資源を集中するための手段」としてBPOが位置づけられてきたのに対し、日本では長くコスト削減の手段として捉えられる傾向が強く、業務全体を任せる本格的なBPOの利用はまだ広がる途中の段階だと指摘されています。歴史の流れで見ると、日本のBPOは2000年代型のコスト重視の発想から、2010年代以降の品質・専門性重視の発想へ移り変わっている最中にあるといえます。
AIが担う領域と人が担う領域
BPOの現場では、紙やPDFの帳票を読み取るAI-OCR、定型的なパソコン操作を自動化するRPA、問い合わせの一次対応を行うチャットボットなどが以前から使われてきました。近年は生成AIの普及によって、文書の要約や分類、問い合わせへの回答案の作成など、これまで人が判断していた作業の一部にもAIが入りつつあります。ただし、法令の解釈を伴う判断や、例外への対応、最終的な確認は引き続き人が担う領域です。AIを使ったBPOでは、どの工程をAIが処理し、どの工程で人が確認するのかが明確になっているかを確かめることが大切です。
| 技術 | BPOでの主な使われ方 | 人が確認したい点 |
|---|---|---|
| AI-OCR | 請求書や申請書などの帳票の読み取りとデータ化 | 読み取り誤りの確認方法と、手書きや不鮮明な帳票の扱い |
| RPA | システム間の転記、定型的な照合作業の自動化 | 画面や手順が変わったときの停止と復旧の手順 |
| チャットボット | 社内外からの問い合わせの一次対応 | 回答できない質問を担当者に引き継ぐ流れ |
| 生成AI | 文書の要約・分類、回答案や報告書の下書き作成 | 誤った内容を含む可能性があるため、人による最終確認の工程 |
BPaaSでは発注側と委託先が同じデータを見ることで進捗が見えやすくなります。これと同じ考え方を自社の人事情報にも当てはめ、担当者の情報を1つのデータベースに集めておけば、委託範囲を見直すときに誰を残し誰に任せるかを確認しやすくなります。
歴史から読み解く|いま委託先を選ぶときの確認ポイント
各時代に表面化した課題は、現在の委託でもそのまま確認すべき項目として残っています。歴史は教養として知るだけでなく、委託先を選ぶときのチェックリストとして使えます。
| 歴史上の教訓 | 生まれた時代 | いま確認したいこと |
|---|---|---|
| 派遣と請負の区別 | 1980年代から1990年代 | 発注側から委託先の作業者に直接指示を出さない運用になっているか |
| コストだけで選ぶと品質がぶれる | 2000年代 | 料金とあわせて、品質の基準と例外時の対応が決まっているか |
| 委託先の監督責任は発注側にある | 2000年代 | 個人情報の安全管理措置を契約で取り決め、取扱状況を確認できるか |
| 制度変更への追随力が品質を左右する | 2010年代 | 社労士や税理士など専門家の関与の仕方と、法改正時の対応の流れ |
| 業務知識が社内から失われる | 2000年代から2010年代 | 手順書や処理結果を自社でも見られる状態にできるか |
| AIの出力には誤りがありうる | 2020年代 | AIが処理する工程と、人が最終確認する工程の分担 |
委託を始める前に業務を棚卸しし、委託範囲とSLAを設計する具体的な手順はBPOプロセスとは?業務棚卸からSLA設計・効果測定までの進め方で詳しく整理しています。なお、派遣と請負の区別や個人情報の取扱いに関する記述は一般的な考え方を示したもので、法的助言ではありません。個別の契約形態については、厚生労働省や個人情報保護委員会の資料を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
上の表の確認項目は、委託先だけでなく自社の記録の持ち方にも関わります。次のセルフチェックで、自社の今の状況を確かめてみましょう。
委託の「人」と「情報」の記録、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
今後の展望|AIエージェント時代のBPO
今後のBPOでは、AIが個別の作業を支援する段階から、複数の工程をつなげて処理するAIエージェントが業務の流れの一部を担う段階へと進むことが見込まれています。そうなると、委託先の価値は「人手で処理する量」ではなく、AIと人の分担を設計し、結果の品質に責任を持つ力に移っていくと考えられます。一方で、法令の解釈、従業員一人ひとりの事情に応じた判断、例外への対応は、引き続き人の専門家が担う領域として残るとみられます。
発注側にとっては、BPOを「作業を外に出す手段」ではなく「業務の仕組みを外部の専門性とシステムで補う手段」として捉え直すことが、これからの委託を考える出発点になります。歴史の流れに沿って考えると、まず制度対応の負担が大きく定型化しやすい業務から委託し、処理結果を確認できる状態を保ちながら範囲を広げていく進め方が現実的です。範囲を広げるほど、自社に残る担当者と委託先の役割を見える状態にしておくことが重要になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. BPOはいつ頃から始まったのですか?
A. 情報システムの運用を外部に任せるアウトソーシングが1960年代の米国で始まり、1989年のKodakとIBMの契約などを経て大型の委託が広がったとされます。日本では1980年代後半から1990年代に導入が進み、業務の工程単位で任せるBPOという形が本格的に広がったのは2000年代以降です。
Q2. BPOは誰が作ったのですか?
A. 特定の一人が考案した制度として確定した説明は見当たりません。情報システム運用の外部委託を早くから事業にした企業として、1960年代設立の米国EDS社がよく挙げられ、その後、事務処理全般へ広がる中で、工程単位で任せるBPOという呼び方が定着しました。
Q3. BPOとは何の略ですか?
A. ビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略で、業務の工程(プロセス)単位で、外部の専門事業者に任せることを指します。
Q4. BPaaSとBPOの違いは何ですか?
A. BPaaSは、クラウドサービスと業務代行を一体で提供する形です。従来のBPOでは発注側と委託先が別々のシステムでデータを受け渡すことが多かったのに対し、BPaaSでは同じクラウドシステム上で業務を進めるため、進捗や処理結果が見えやすくなります。
Q5. 放送倫理・番組向上機構のBPOとは関係がありますか?
A. 関係はありません。放送倫理・番組向上機構は放送番組の倫理に関する第三者機関で、略称が同じBPOです。この記事で扱うのは、業務の工程を外部に委託するビジネス・プロセス・アウトソーシングのほうです。
Q6. BPOの歴史を踏まえると、最初に委託しやすい業務は何ですか?
A. 手順が定型化しやすく、制度対応の負担が大きい業務が向いています。給与計算や社会保険の手続きなどの人事労務は、どの時代にも委託の中心にあり、専門家やクラウドシステムと組み合わせたサービスの選択肢も多い分野です。委託後も、自社の担当者や委託先スタッフの情報を記録で把握しておくと、範囲の見直しがしやすくなります。
まとめ
BPOの歴史は、情報システム運用の外部委託から始まり、コスト削減、品質と専門性の重視を経て、クラウドやAIと一体のBPaaSへと進んできました。次の4点を押さえると、歴史の知識を自社の委託判断に生かしやすくなります。
- BPOの目的は、本業への集中からコスト削減、品質と専門性の確保、仕組みごとの活用へと移ってきた。
- 派遣と請負の区別、委託先の監督責任、制度変更への追随力、AIと人の分担など、各時代の教訓はいまも委託先選びの確認項目になる。
- 最初の委託は、定型化しやすく制度対応の負担が大きい人事労務のような業務から始め、処理結果を確認できる状態を保ちながら範囲を広げるのが現実的。
- 委託を始めるときは、自社の担当者と委託先スタッフの情報や権限を記録で把握できる状態にし、人事管理システムの資料で自社の運用に合うかを確認する。
参考文献
- 厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業・募集情報等提供事業等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/index.html
- 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/
- 厚生労働省「働き方改革の実現に向けて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
- 国税庁「インボイス制度について」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/invoice.htm
- 経済産業省「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」(2018年のDXレポートの公表を含む経済産業省のDXの取り組み) https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/index.html
- Computer Weekly「CW@50: A history of IT outsourcing」 https://www.computerweekly.com/feature/CW50-A-history-of-IT-outsourcing
- アクセンチュア「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のその先へ 第1回」 https://financialservicesblog.accenture.com/beyond-bpo-new-market-environment-and-outsourcing
- サフィックス公式ブログ「BPOの正体とは…?」 https://www.suffix.co.jp/jp/blog/sales/000208.html