DXの次とは?AX・GX・SX・Beyond DXを中立整理
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- 「Beyond DX」がSXの別称であることがわかる
- AX・GX・SXの違いと定義の確度がわかる
- DXとSXの関係性がわかる
「DXの次はAX」「Beyond DX」「SX」「GX」など、DXに続く新しい概念を示す言葉を目にする機会が増えています。しかし、これらの言葉を並列に並べて紹介する記事の中には、実は同じものを指す言葉を別の概念として扱ってしまっている例もあります。本記事では、AX・GX・SX・Beyond DXという4つの言葉を、中立的な立場で整理します。
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「Beyond DX」とはSXの別称
「Beyond DX」は、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を指す通称であり、AX・GXと並ぶ独立した4番目の概念ではありません。SXは、経済産業省が2020年に「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」で提唱した概念で、「社会のサステナビリティ」と「企業のサステナビリティ」を同期させるための経営・事業の変革を指します(経済産業省「デジタルガバナンス・コード」、https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html 2026年8月13日取得)。この記事では、実質的に3つの概念(AX・GX・SX)として整理します。
AX・GX・SXの中立整理
AXはAIを経営の中核に据えた変革、GXは脱炭素・環境対応を軸にした変革、SXは社会と企業のサステナビリティを同期させる変革という違いがあります。
| 用語 | 変革の軸 | 公的な定義の有無 |
|---|---|---|
| AX | AIを経営の中核に据えた変革 | 経産省による公式定義は確認できず(業界用語) |
| GX | 脱炭素・環境対応を軸にした変革 | 政府方針として定義あり |
| SX(Beyond DX) | 社会と企業のサステナビリティの同期 | 経産省(伊藤レポート3.0)による定義あり |
SXの考え方では、DXは目的ではなく、SXという大きな経営変革を実現するための技術的な手段の一つと位置づけられています。つまり、DXの次に来る概念というよりは、DXを基盤として、その先にSXという長期的な経営変革があるという関係性です。AXとDXの違いを業務例や規模別の取り組み方まで掘り下げて知りたい場合は、DXとAXの違い|アナログ変革からの流れもあわせて参考にしてください。
紙の文書管理をデジタル化する取り組みは、DXの基盤づくりであると同時に、用紙資源の削減というGX・SXの観点にもつながる、着手しやすい取り組みです。
なぜ変革を表す用語がこれほど乱立しているのか
AX・GX・SX・Beyond DXのように似た語感の言葉が次々に登場する背景には、変革の「軸」が複数存在するという事情があります。DXは業務やビジネスモデルをデジタル技術で変える軸、GXは脱炭素・環境対応という軸、SXは社会と企業のサステナビリティを同期させるという軸、AXはAIを経営の中核に据えるという軸というように、それぞれ着目している対象が異なります。同じ「変革」という言葉を使っていても、指している範囲や目的が違うため、混同すると社内の議論がかみ合わなくなりやすい点に注意が必要です。
加えて、これらの用語はコンサルティング会社やメディアが独自に発信するケースも多く、経済産業省などの公的機関が定義していない用語(AXなど)と、公的な検討会や報告書で定義されている用語(GX・SX)が同列に並べて紹介されてしまう例が見られます。用語を使う際は、その言葉がどの機関のどの文書に基づいているのかを意識すると、社内外での説明に説得力を持たせやすくなります。
企業での取り組み例に見るAX・GX・SXの違い
AXの取り組み例としては、需要予測や在庫管理、問い合わせ対応など、これまで人が担ってきた業務判断の一部をAIに委ねる形での業務プロセスの見直しが挙げられます。単にAIツールを導入するだけでなく、AIの出力を前提に業務フローや意思決定の仕組みそのものを再設計する点が、DXの延長線上にある取り組みとの違いとして語られることが多いです。
GXの取り組み例としては、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の算定・開示や、再生可能エネルギーの導入、製造工程の省エネ化などが挙げられます。政府が示す方針や規制対応を出発点とすることが多く、環境負荷の低減という定量的な指標で進捗を測りやすい点が特徴です。
SXの取り組み例としては、自社の事業戦略と社会課題への対応を結びつけた中長期経営計画の策定や、非財務情報(人的資本・環境対応など)の開示強化が挙げられます。GXが環境という特定分野に焦点を当てるのに対し、SXは社会全体のサステナビリティと企業のサステナビリティの同期という、より経営全体を包含する広い概念として位置づけられている点が違いです。
これらの用語の理解でよくある失敗パターン3つ
「Beyond DX」を独立した4番目の概念だと誤解する、AXを公的に定義された用語だと思い込む、DXを不要な過去の概念だと捉えるという3つが、これらの用語の理解でよく見られる失敗の典型です。
失敗パターン1:「Beyond DX」を独立した4番目の概念だと誤解する。AX・GX・SX・Beyond DXを並列の4概念として扱うケースです。Beyond DXがSXの別称である点を理解することが回避策になります。
失敗パターン2:AXを公的に定義された用語だと思い込む。GX・SXと同じ確度で経産省が定義していると誤解するケースです。用語ごとの定義の確度の違いを理解することが回避策になります。
失敗パターン3:DXを不要な過去の概念だと捉える。SXが重視されるほどDXが不要になると誤解するケースです。DXがSX実現の技術的基盤である点を理解することが回避策になります。
業種・企業規模によるAX・GX・SXへの取り組み方の違い
AX・GX・SXの3つの変革は、業種や企業規模によって優先順位や着手のしやすさが大きく異なります。すべての企業が同じ順番・同じ深さでこれらに取り組む必要はなく、自社の事業特性に照らして「今、どの軸から手をつけるべきか」を判断することが実務上重要です。
製造業では、工場の生産設備や物流工程からのCO2排出量が事業活動の中で大きな比重を占めるため、GX(脱炭素・環境対応)が経営課題として先に意識されやすい傾向があります。一方で、需要予測や品質検査、設備の予知保全といった領域でAIを活用する余地も大きく、AXの取り組みがGXの取り組みと並行して進むケースも増えています。省エネ設備への投資判断にAIによるシミュレーションを組み合わせるなど、GXとAXが交差する取り組みも見られます。
小売・サービス業では、顧客接点でのデータ活用が事業の中核に近いため、AX(需要予測・在庫最適化・接客業務でのAI活用など)が先行しやすい業種です。あわせて、人的資本の情報開示や地域社会との関係性といった非財務面の取り組みが、SX(社会と企業のサステナビリティの同期)の文脈で語られることも多くなっています。店舗運営における人手不足対応と、AIによる業務効率化を組み合わせて検討する企業も増加傾向にあります。
企業規模による違いも見逃せません。大企業では、GX・SXについて専門部署を設置し、非財務情報の開示やサステナビリティレポートの作成を体系的に進めている例が一般的です。一方、中小企業では、専任担当者を置く余裕がない場合が多く、まずはDXの基盤づくり(業務のデジタル化・データの一元管理)を進めながら、その延長線上でAXやGXの取り組みに着手する段階的なアプローチが現実的とされています。無理に全ての概念を一度に導入しようとせず、自社の経営資源に見合った範囲から始めることが、継続的な取り組みにつながりやすいといえます。
用語の乱立が経営に与える実務上の影響
AX・GX・SX・Beyond DXという似た響きの用語が同時に流通する状況は、単なる知識の混乱にとどまらず、経営の意思決定プロセスにも実務上の影響を及ぼします。ここでは、用語の混同が引き起こしやすい3つの実務課題を整理します。
1つ目は、投資判断の優先順位が曖昧になることです。「GXに投資すべきか、AXに投資すべきか」という議論が、両者の定義や目的の違いを整理しないまま行われると、限られた予算配分の判断根拠があいまいになりがちです。GXは主に規制対応やCO2排出量の削減という定量的な指標で進捗を測定できるのに対し、AXは業務効率化や新規事業創出といった多様な効果測定軸を持つため、同じ物差しで単純比較することが難しい点を踏まえた議論が求められます。
2つ目は、社外への情報発信における一貫性の欠如です。統合報告書やサステナビリティレポートで「SXに取り組んでいる」と発信する一方、別の部署が制作するプレスリリースでは「AXを推進」と表現するなど、部署間で用語の使い方がそろっていないと、投資家や取引先から見た企業のメッセージが分かりにくくなります。特に上場企業では、非財務情報の開示における用語の一貫性が、外部評価機関からの評価にも影響しうるため、社内で用語の定義と使用範囲をあらかじめすり合わせておくことが望ましいとされています。
3つ目は、人材育成・組織設計における役割の混同です。「AX推進担当」「DX推進室」「サステナビリティ推進部」といった組織名や役職名が乱立すると、どの部署がどの変革の軸を担っているのかが分かりにくくなり、部署間での責任範囲の重複や抜け漏れが生じやすくなります。変革を推進する組織を新設する際は、その組織がAX・GX・SXのどの軸を主に担当するのかを明確にし、既存のDX推進組織との役割分担を整理しておくことが、社内の混乱を避けるうえで有効です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「Beyond DX」とは何ですか?
A. SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を指す通称で、AX・GXと並ぶ独立した4番目の概念ではありません。
Q2. SXとは何ですか?
A. 経済産業省が2020年に提唱した、「社会のサステナビリティ」と「企業のサステナビリティ」を同期させるための経営・事業の変革を指す概念です。
Q3. AXは経済産業省が公式に定義していますか?
A. 本記事執筆時点では公式定義は確認できておらず、業界内で使われている用語です。
Q4. DXとSXはどう関係しますか?
A. SXの考え方では、DXは目的ではなく、SXという経営変革を実現するための技術的な手段として位置づけられています。
Q5. DXは今後不要になりますか?
A. 不要にはなりません。SXやAXを実現するための基盤としてDXが必要とされています。
Q6. これらの用語を整理するとどのようなメリットがありますか?
A. 社内での議論の際に、どの変革の軸について話しているのかを明確にでき、混同を避けられます。
社内で用語を使い分けるときのポイント
社内でこれらの用語を使う際は、「今どの軸の変革について話しているのか」を最初に明確にすることが、議論のすれ違いを防ぐうえで役立ちます。たとえば経営会議でDX投資の話をしている最中に、環境対応の話(GX)が混ざり込むと、投資判断の論点がぼやけてしまいます。資料やアジェンダの見出しに「DX」「GX」「SX」「AX」のどれに関する議題かを明記するだけでも、参加者の理解のずれを減らせます。
また、外部のコンサルティング会社や取引先から新しい用語を提案された場合は、その用語が公的機関による定義に基づくものか、それとも提案元の独自の整理なのかを確認する姿勢も重要です。特にSXのように経済産業省の検討会で提唱された概念と、AXのように業界内で広まった通称とでは、社外への説明で使う際の重みが異なります。用語の出所を押さえたうえで使い分けることで、社内外への説明に一貫性を持たせやすくなります。
まとめ|今日からできる3つのこと
- Beyond DXがSXの別称であることを理解する:4概念と誤解しません。
- 用語ごとの定義の確度を区別する:AXとGX・SXを同じ確度で扱いません。
- DXを基盤として位置づける:不要な過去の概念だと捉えません。
参考文献
- 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html(2026年8月13日取得)
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