SaaSの継続率とは?NRR・GRR・チャーンレート・NPSの計算式と目安、改善の優先順位を解説

Check!

  • NRR・GRR・チャーンレートの計算式と読み方がわかる
  • 月次と年次の換算、LTVへの影響がわかる
  • NPSが先行指標になる理由と改善の優先順位がわかる

SaaSの継続率とは、契約した顧客や売上がどれだけ翌期以降も残っているかを示す指標の総称です。実務では、売上ベースのNRR(売上維持率)とGRR(総売上維持率)、解約の割合を示すチャーンレート、顧客の推奨意向を測るNPSの4つを組み合わせて見るのが一般的です。この記事では、SaaS事業者やカスタマーサクセス担当者に向けて、4指標の計算式と読み方、月次から年次への換算、指標どうしの関係、改善の優先順位、よくある読み間違いを整理します。特に、NPSが継続率の「先行指標」としてどう役立つかに焦点を当てて解説します。

継続率の見方と、解約の兆しのつかみ方を診断

Q1. いま一番知りたいのはどれですか?

目次

開く

閉じる

  1. 継続率を測る第一歩、NPSで顧客の推奨意向を知る
  2. SaaSの継続率とは|NRR・GRRの計算式
  3. チャーンレートとNPSの関係
  4. NRR・GRR・チャーンレートの目安の見方|100%のラインと月次・年次の換算
  5. 指標改善の優先順位|GRR・NPS/CSAT・NRRの順に進める
  6. よくある失敗パターン4つ(指標の読み間違い)
  7. 継続率改善の効果をどう確認するか
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ
  10. 参考文献

継続率を測る第一歩、NPSで顧客の推奨意向を知る

NPSは、顧客が「このサービスを人に勧めたいか」を0から10で答える指標で、解約の数か月前の兆しをつかむ先行指標として使えます。継続率の改善に取り組むとき、最初につまずきやすいのが「数字が出たときには手遅れ」という問題です。NRRやGRR、チャーンレートは、解約やダウングレードが起きた後に結果として表れる遅行指標だからです。4つの指標の役割を並べると、次のようになります。

指標 何を測るか 指標の性質 主な使いどころ
NPS 顧客が他者にサービスを勧めたい度合い 先行指標(気持ちの変化) 解約リスクの早期発見、改善テーマの洗い出し
チャーンレート 一定期間に失った顧客数や売上の割合 遅行指標(結果) 解約の規模と傾向の把握
GRR 解約・ダウングレードだけを差し引いた売上の残り方 遅行指標(守りの強さ) プロダクトと顧客の適合度の確認
NRR 追加契約を含めた既存顧客売上の増減 遅行指標(攻めを含む総合力) 既存顧客からの成長力の評価

NPSは、アンケートを配信し、回答を集計し、推移を追い続けて初めて意味を持つ指標です。スプレッドシートやGoogleフォームでも始められます。ただし、解約の兆しはNPSの数字だけに表れるわけではなく、顧客との電話や問い合わせの中の不満の言葉にも出ます。声の集め方は、自社の顧客に聞く、会話の記録から拾う、市場側に聞く、の3つに分けられ、手段によって向く会社も変わります。次の表は、そのうち会話の記録から拾う手段と、アンケートで聞く手段を役割の違いで並べたものです。優劣をつけるものではありません。

解約の兆しを拾う2つの手段|会話の記録とアンケート

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

自社の状況:

この状況に合う一例:MiiTel Phone。全ての通話を自動で録音・文字起こしでき、不満の言葉を後から振り返れます。

資料を無料ダウンロード

この状況に合う一例:GMO Ask。豊富な設問テンプレートで、アンケートを手軽に作成できます。

資料を無料ダウンロード
サービス MiiTel Phone GMO Ask
向いている会社 顧客との電話やサポート窓口での会話が多く、不満の言葉を記録から振り返りたい会社 市場や見込み顧客の声、期待水準をアンケートで手早く調べたい会社
特徴 全ての通話を自動で録音・文字起こしでき、任意の日付や人で絞り込める(商品ページ記載) 豊富な設問テンプレートで手軽に作成でき、アンケートモニターへの配信に対応(商品ページ記載)
注意したい点 サポート対応は平日9時から18時まで。営業の電話解析が中心のカテゴリの製品で、カスタマーサポートでの活用は導入事例や資料で確認する 連携できるアンケートフォームはGoogleフォームのみ(2022年9月時点の記載)。自社の顧客リストへの配信可否は資料で確認する
資料・詳細

表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

顧客との電話やサポート窓口での会話が多く、解約の前触れとなる不満を記録から振り返りたい場合の一例が、MiiTel Phoneです。商品ページには、全ての通話を自動で録音・文字起こしでき、任意の日付や人で絞り込めると記載されています。営業の電話解析を中心としたカテゴリの製品で、カスタマーサポートでの活用は下の導入事例のとおりです。サポート対応は平日9時から18時までと記載されているため、運用時間は資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社RevComm

MiiTel Phone

MiiTel Phone

株式会社RevComm

MiiTel Phone

電話解析AIが採点!トーク改善でアポ率・成約率をUPさせたい企業におすすめ

30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
GOOD

おすすめ!

  • 任意の日付や人でフィルタリングが可能
  • 全ての通話を自動録音・文字起こしできる
  • 過去のデータから通電しやすい曜日・時間帯が分かるため、通電率も向上する
MORE

気になる…

  • サポート対応は平日9時~18時まで

応対記録1件あたりの入力工数がほぼゼロになり、月あたり252時間の工数削減に成功。空いた時間で顧客対応ができるようになり、応答率も改善したといいます。

出典:MiiTel導入事例 株式会社SUPER STUDIO(カスタマーサポートでの活用)

なお、この事例は応対記録の入力工数と応答率に関するもので、解約率の改善を示すものではありません。通話の記録が残ることで、不満の言葉を後から探し直せる、という使い方の参考として読んでください。

もう一つ、市場や見込み顧客の側に、選ばれる理由や期待水準を聞きたい場合の一例が、GMO Askです。商品ページには、豊富な設問テンプレートでアンケートを手軽に作成でき、アンケートモニターへ配信できると記載されています。連携できるアンケートフォームはGoogleフォームのみ(2022年9月時点の記載)で、自社の顧客リストに配信してNPSを測る用途に使えるかは商品ページに記載がありません。自社顧客のNPSそのものの代替ではなく、市場側の声を調べる補助として検討するのが現実的です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

GMOリサーチ株式会社

GMO Ask

GMO Ask

GMOリサーチ株式会社

GMO Ask

豊富な設問テンプレート◎手軽に作成したい企業におすすめ

30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
GOOD

おすすめ!

  • 国内トップクラス約3,000万人のアンケートモニター
  • 「1問×1回答×10円」での分かりやすい料金体系で、クレジットカード決済も可能
MORE

気になる…

  • 連携できるアンケートフォームは2022年9月現在、Googleフォームのみ

基幹調査とは別にもっと手軽なアンケートを施策検証などに取り入れたいと思い、フットワーク軽く実施できるスピード感や、細かく調査可能なリーズナブルさからセルフ型アンケートを導入しました。

出典:GMO Ask導入事例 ブラザー工業株式会社

SaaSの継続率とは|NRR・GRRの計算式

SaaSの継続率は、期初にいた顧客や売上が期末までにどれだけ残ったかを示す割合で、顧客数ベースと売上ベース(NRR・GRR)の2通りで計算します。

SaaSは月額や年額で利用料を受け取るサブスクリプション型のビジネスです。新規顧客の獲得には広告費や営業の人件費がかかるため、獲得した顧客に長く使い続けてもらえるかどうかが収益性を大きく左右します。企業のクラウドサービス利用の広がりは、総務省の通信利用動向調査や情報通信白書でも継続的に報告されており、選択肢が増えるほど顧客は乗り換えやすくなります。その「残り方」を顧客数で測るのが継続率、売上で測るのがNRRとGRRです。

顧客数ベースの継続率と解約率の関係

顧客数ベースの継続率は、期初にいた顧客のうち、期末まで解約せずに残っている顧客の割合です。計算式は「(期末顧客数-期中の新規顧客数)÷期初顧客数×100」で、解約率は「100%-継続率」で求められます。たとえば期初100社、期中の新規15社、期末105社なら、継続率は(105-15)÷100=90%、解約率は10%です。顧客数ベースは直感的に分かりやすい反面、月額30万円の顧客と3万円の顧客を同じ1社として数えるため、売上への影響は見えません。その差を埋めるのが、次の売上ベースの指標です。

NRR(売上維持率)の計算式

NRR(Net Revenue Retention)は、期初に契約していた既存顧客の売上が、期末時点でどれだけ残っているかを、追加契約による増加も含めて示す指標です。計算式は「(期初MRR+アップセル・クロスセル-ダウングレード-解約)÷期初MRR×100」です。MRRは月次経常収益を指します。期中に獲得した新規顧客の売上は含めない点に注意してください。

GRR(総売上維持率)の計算式

GRR(Gross Revenue Retention)は、追加契約による増加を含めず、ダウングレードと解約による減少だけを反映した指標です。計算式は「(期初MRR-ダウングレード-解約)÷期初MRR×100」で、構造上100%を超えることはありません。

数値例で見るNRRとGRRの違い

項目 金額(月額)
期初MRR(既存顧客) 1,000万円
アップセル・クロスセルによる増加 +150万円
ダウングレードによる減少 -30万円
解約による減少 -70万円
NRR (1,000+150-30-70)÷1,000=105%
GRR (1,000-30-70)÷1,000=90%

この例では、NRRとGRRの差の15ポイントが、追加契約によって生み出された成長分です。NRRが100%を超えている状態は、新規顧客をまったく獲得しなくても既存顧客からの売上が増えていることを意味し、「ネガティブチャーン」と呼ばれます。ただし、NRRだけを見ていると、大口顧客へのアップセルで解約の多さが隠れてしまうことがあります。守りの強さはGRR、攻めを含めた総合力はNRRと、2つをセットで確認するのが基本です。

MRR・ARRと、計算するときに決めておくこと

MRRは月額利用料の合計、ARRは年間の経常収益で「MRR×12」で求めます。月額契約が中心ならMRR、年額契約が中心ならARRで見ると、期間のずれが小さくなります。計算を始める前に、次の3点を決めて記録しておくと、数字の推移を正しく比べられます。

  1. 無料プランやトライアルの利用者は、有料契約への転換前の層として、継続率の計算から分けて扱う。
  2. 月額契約と年額契約が混在する場合は、契約形態ごとに継続率を出してから全体を見る。
  3. 解約の日付は、解約の申し出を受けた日とサービス提供が終わった日のどちらで数えるかを決め、途中で変えない。

チャーンレートとNPSの関係

チャーンレート(解約率)は、一定期間に失った顧客や売上の割合です。顧客数で見る「カスタマーチャーンレート」と、売上で見る「レベニューチャーンレート」があり、どちらを使うかで数字の意味が変わります。

種類 計算式 分かること
カスタマーチャーンレート 期間中の解約顧客数÷期初顧客数×100 どれだけの顧客が離れたか
レベニューチャーンレート 期間中の解約・ダウングレードによる減少MRR÷期初MRR×100 売上への影響がどれだけあったか

月次のチャーンレートは小さく見えても、年間に換算すると影響は大きくなります。たとえば月次チャーンレートが2%の場合、1年後に残る顧客の割合は0.98の12乗でおよそ78.5%となり、年間ではおよそ21.5%の顧客を失う計算です。

継続率が低いとLTVはどう変わるか

継続率の差は、1社あたりの売上の合計(LTV)に直結します。解約が毎月同じ割合で起きると単純化すると、平均的な継続期間は「1÷月次チャーンレート」で近似できます。月額10万円のサービスで、粗利や割引を考えずに売上だけで見ると、次のように変わります。

月次チャーンレート 平均的な継続期間(目安) 1社あたりの売上の合計(月額10万円の場合)
2% 50か月 500万円
3% およそ33か月 およそ333万円
5% 20か月 200万円

月次チャーンレートが2%から5%に上がるだけで、1社あたりの売上の合計は6割下がる計算です。新規顧客の獲得費用は、この合計を上回らなければ回収できません。継続率が事業の収益性を左右すると言われる理由は、この単純な関係にあります。実際には解約の起きやすさが契約直後や更新時期に偏るため、この式は大まかな目安として使ってください。

NPSの計算方法

NPS(Net Promoter Score)は、「このサービスを友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか」という質問に0から10の11段階で答えてもらい、9と10を推奨者、7と8を中立者、0から6を批判者に分けて、「推奨者の割合-批判者の割合」で算出します。たとえば200件の回答のうち推奨者が80件(40%)、中立者が70件、批判者が50件(25%)であれば、NPSは40-25で15となります。

NPSが継続率の先行指標になる理由

SaaSの解約は、ある日突然起こるように見えて、実際には「使いにくい」「期待した成果が出ない」「担当者が変わって活用が止まった」といった不満の積み重ねの結果であることが多いものです。こうした不満は、解約の申し出より先に、NPSアンケートの低いスコアやコメントとして表れます。批判者に分類された顧客を早い段階で特定し、カスタマーサクセス担当者が個別にフォローすることで、チャーンを未然に防ぐ動きがとれます。反対に推奨者は、上位プランや追加機能を受け入れやすい層であり、アップセルの候補としてNRRの向上につながります。

NPSの区分 継続率への影響 打ち手の例
批判者(0から6) 解約・ダウングレードの予備軍。GRRを押し下げる 個別ヒアリング、活用支援、不具合や要望の開発部門への共有
中立者(7と8) 競合サービスに乗り換えられやすい 未使用機能の案内、成功事例の共有
推奨者(9と10) 継続しやすく、追加契約でNRRを押し上げる アップセル提案、導入事例やレビューへの協力依頼

NRR・GRR・チャーンレートの目安の見方|100%のラインと月次・年次の換算

継続率の目安は、100%のラインと、月次から年次への換算で読むのが確実です。業界ごとの水準は、調査の対象企業や時期、計算方法で幅があり、公的な統計もないため、この記事では出典のない数値を目安として載せていません。

指標 読み方のライン 読み取れること
NRR 100%を境に見る 100%を下回ると、新規顧客を獲得しなければ既存顧客の売上が縮小する状態。100%を超えると、既存顧客だけで売上が増える状態
GRR 上限は100%。100%からの差が失った割合 追加契約を除いた守りの強さ。差が大きいほど、解約とダウングレードが売上を削っている
チャーンレート 月次と年次を分けて見る 月次の小さな差が、年次では大きな差になる(下の換算表)

月次の継続率が年次ではどれだけの数字になるかは、月次継続率を12乗して求められます。他社が公表する数字や目標値を読むときは、まず月次か年次かを確認してください。

月次継続率(100%-月次チャーン) 1年後に残る割合 年間で失う割合
99% およそ88.6% およそ11.4%
98% およそ78.5% およそ21.5%
97% およそ69.4% およそ30.6%
95% およそ54.0% およそ46.0%

ベンチマークとの比較で大切なのは、数字の高低よりも「なぜその水準なのか」を説明できることです。大企業向けのサービスは契約期間が長く解約が起きにくい構造があり、中小企業向けのサービスは廃業や担当者の退職などサービス外の理由による解約も含まれます。上場しているSaaS企業は、決算資料で売上高や解約率に関する指標を開示している場合があります。企業ごとの数字の見方は、SaaS銘柄の見方やSaaSランキングの見方で整理しています。自社の目標は、他社の数字よりも自社の過去の推移と顧客層をもとに決めるのが実務的です。

中小企業向けのSaaSでGRRが伸び悩む場合、プロダクトそのものより、導入初期に使い方が定着しないことが原因になっているケースも少なくありません。原因を切り分けるには、解約した顧客や批判者の声を数字とあわせて集める仕組みが欠かせません。NPSを定期的に計測しておけば、目標との差がどの顧客層で生じているのかを先回りして把握できます。

指標改善の優先順位|GRR・NPS/CSAT・NRRの順に進める

改善はGRR、NPS・CSAT、NRRの順に進めるのが一般的で、解約を減らす土台を固めてから追加契約を広げます。4つの指標を同時に改善しようとすると、施策が散らばって効果が見えにくくなるためです。

順番 重点指標 理由 主な施策
1 GRR 解約が多いままアップセルを増やしても、穴の開いたバケツに水を注ぐ状態になる オンボーディングの改善、解約理由の分析、利用状況の低い顧客へのフォロー
2 NPS・CSAT 顧客の満足度と推奨意向を上げることが、解約防止と追加契約の土台になる 定期的なNPS調査、問い合わせ後のCSAT(顧客満足度)調査、批判者への個別対応
3 NRR 守りが固まった後に、推奨者を中心に追加契約を広げると成長が加速する 上位プランの提案、関連機能のクロスセル、利用部署の拡大支援

この順番の中で、NPS・CSATは「守り」と「攻め」をつなぐ位置にあります。GRRを改善するための不満の把握にも、NRRを伸ばすための推奨者の特定にも使えるため、継続率向上の取り組みを始める際の起点になりやすい指標です。

GRRを守る土台はオンボーディングとカスタマーサクセス体制

優先順位の1番目にあたるGRRの改善で、多くのSaaS事業者が最初に手を付けるのが、契約直後の「オンボーディング」です。オンボーディングとは、顧客が初期設定を終え、サービスを業務に組み込んで最初の成果を実感するまでを支援するプロセスを指します。導入初期に使い方が定着しないまま更新時期を迎えると、顧客は費用に見合う価値を感じられず解約を選びやすくなります。顧客数ベースの継続率(100%-カスタマーチャーンレート)が伸び悩む場合、まずこの段階を疑うのが近道です。

ただし、すべての顧客に同じ手厚さで対応するのは現実的ではありません。カスタマーサクセスの実務では、顧客の契約規模や重要度に応じて、支援の方法を次の3つに分けて組み合わせるのが一般的です。

支援の方法 主な対象 具体的な支援の例
ハイタッチ 契約規模の大きい顧客 専任担当者による個別の定例会、活用計画の共同作成
ロータッチ 中規模の顧客 複数社向けの説明会や勉強会、定期的なフォロー連絡
テックタッチ 小規模で顧客数の多い層 ヘルプページ、操作ガイド動画、利用状況に応じた自動メール

あわせて、解約の申し出があった顧客には理由をヒアリングし、「機能不足」「使いこなせない」「予算削減」「担当者の異動」などに分類して記録しておくと、プロダクト改善と支援策のどちらで対応すべきかを判断しやすくなります。こうした解約理由の記録と、NPSで集めた批判者のコメントを突き合わせることで、解約に至る前の段階で手を打つべき顧客層が見えてきます。

解約の兆しを拾う3つの窓口と、改善につなげる流れ

継続的に価値を届け、プロダクトを改善するには、まず顧客の不満が出る場所を押さえる必要があります。兆しが出る窓口は、大きく次の3つです。1つに偏らず、自社の顧客との接点に合わせて組み合わせます。

窓口 拾える兆し 向く場面 注意点
NPS・CSATのアンケート スコアの低下、批判者のコメント 顧客数が多く、定期的に全体の傾向を見たいとき 回答率が低いと偏る。回答しない顧客の兆しは拾えない
電話・問い合わせの記録 不満や要望を口にした言葉、問い合わせの増加 電話やサポート窓口での接点が多いとき 担当者のメモに頼ると抜けやすい。記録を残す仕組みが要る
利用データ ログイン頻度の低下、主要機能が使われていない状態 利用状況を数字で追えるプロダクトのとき 数字は兆しの理由を教えてくれない。声とあわせて読む

拾った声は、カスタマーサクセス担当者の個別フォローに使うだけでなく、プロダクトチームの改善の優先順位付けにも回します。解約理由の分類とあわせて月に一度集計し、同じ不満が複数の顧客から出ていないかを確認する流れにすると、継続率の改善が個別対応で終わりません。

解約の兆しを拾う仕組み、足りていますか?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

よくある失敗パターン4つ(指標の読み間違い)

継続率の指標は、計算自体は難しくありませんが、読み方を誤ると判断を大きく外します。現場で起こりやすい4つのパターンを整理しました。

失敗パターン Before(読み間違い) After(正しい見方)
NRRだけで判断する NRRが110%あるので継続率は問題ないと考える GRRも確認し、一部の大口顧客のアップセルで解約の多さが隠れていないかを見る
期間の違う数字を比べる 自社の月次チャーンレートと他社の年次チャーンレートを並べて比較する 月次と年次、顧客数と売上のどちらかに定義をそろえてから比較する
新規顧客を含めて計算する 期中に獲得した新規顧客の売上もNRRの分子に入れてしまう NRR・GRRは期初時点の既存顧客だけを対象に計算する
NPSを1回測って終わる 年1回だけ調査し、スコアの高低だけを報告して終える 定期的に計測して推移を追い、批判者のコメントを改善施策とフォローにつなげる

継続率改善の効果をどう確認するか

効果は、NPSなどの先行指標を施策後1から3か月で、GRRやNRRなどの遅行指標を契約の更新後に確認します。NPSは施策から比較的早く変化が表れますが、GRRやNRRに効果が反映されるのは、契約の更新時期を迎えた後になるためです。確認の流れは次のとおりです。

  1. 施策の前にNPS、チャーンレート、GRR、NRRの現状値を記録し、比較の基準にする。
  2. 施策の対象とした顧客層(例:導入3か月以内の顧客)のNPSを、施策後1から3か月で再計測する。
  3. 批判者の割合が減り、推奨者の割合が増えているかを確認し、コメントの内容の変化も読む。
  4. 契約更新の時期を迎えた後に、同じ顧客層のチャーンレートとGRR、NRRの変化を確認する。
  5. NPSの改善と継続率の改善がつながっているかを検証し、次の施策を決める。

更新時期より前の段階では、オンボーディング期間の指標も先行して確認できます。契約直後の顧客に絞って、次の表の指標を月ごとに見ておくと、定着の遅れに早く気づけます。

指標 何を見るか 継続率との関係
オンボーディング完了率 顧客が自力でサービスを使える状態に達した割合 低いと、初期のつまずきによる早期解約が増える
初期設定が終わるまでの日数 契約から初期設定の完了までにかかった期間 長いと、価値を実感する前に更新時期を迎えやすい
アクティブ率 一定期間内に実際に利用した顧客の割合 低下は、解約の前触れになりやすい
主要機能の利用回数 契約の目的に直結する機能が使われている頻度 使われていないと、費用に見合う価値を感じにくい
アップセル・クロスセルの率 上位プランや追加機能を選んだ顧客の割合 NRRのうち、増加分を左右する

この流れを回し続けるには、アンケートの配信と集計を毎回手作業で行うより、仕組み化しておくほうが負担を抑えられます。顧客セグメントごとの推移の比較や、回答コメントの分類ができる仕組みを選ぶと、施策の効果検証がしやすくなります。自社の顧客に加えて、市場側の期待水準を継続的に調べる補助としては、先に紹介したGMO Askのように、アンケートモニターへ配信できるサービスを併用する方法もあります。

GMO Ask

市場や見込み顧客の声を、手軽なアンケートで調べたい会社に

GMO Askの資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaSの継続率とは何ですか?

A. 契約した顧客や売上が、翌期以降もどれだけ残っているかを示す指標の総称です。実務では売上ベースのNRRとGRR、解約の割合を示すチャーンレート、顧客の推奨意向を示すNPSを組み合わせて見るのが一般的です。

Q2. NRRとGRRの違いは何ですか?

A. NRRはアップセルやクロスセルによる増加を含めた既存顧客売上の維持率で、100%を超えることがあります。GRRは解約とダウングレードによる減少だけを反映した維持率で、100%が上限です。両者の差が追加契約による成長分を表します。

Q3. SaaSの解約率は、どのくらいが目安ですか?

A. 公的な統計はなく、顧客の規模や課金体系で大きく変わるため、一律の目安はありません。解約率は「100%-継続率」で求められ、月次2%でも年間では約21.5%の顧客を失う計算になります。月次と年次をそろえたうえで、自社の過去の推移で判断します。

Q4. チャーンレートはどのように計算しますか?

A. 顧客数ベースでは「期間中の解約顧客数÷期初顧客数x100」、売上ベースでは「解約・ダウングレードによる減少MRR÷期初MRRx100」で計算します。月次と年次で数字が大きく変わるため、比較するときは期間と単位をそろえます。

Q5. NPSはなぜ継続率の改善に役立つのですか?

A. NPSは顧客の気持ちの変化を測るため、解約やダウングレードが数字に表れる前に不満の兆しをつかめる先行指標になります。批判者へのフォローで解約を防ぎ、推奨者へのアップセルでNRRを伸ばすという使い分けができます。

Q6. 継続率の指標はどの順番で改善すればよいですか?

A. 一般的には、まずGRRを改善して解約を減らし、次にNPSやCSATで満足度と推奨意向を高め、最後にNRRの向上として追加契約を広げる順番が定石とされています。解約が多いまま追加契約を増やしても、成長は長続きしにくいためです。

まとめ

SaaSの継続率は、NRR、GRR、チャーンレート、NPSの4つを役割ごとに使い分けることで、実務に活かせる指標になります。取り組むときは、次の4点を押さえておきましょう。

  1. NRRとGRRは必ずセットで見て、守りの強さと追加契約による成長を分けて評価する。
  2. チャーンレートは期間と単位をそろえ、月次は年次に換算して、自社の推移と合わせて判断する。
  3. NPSを先行指標として定期的に計測し、批判者のフォローと推奨者へのアップセルにつなげる。
  4. 電話の記録やアンケートで解約の兆しを拾う仕組みを整えるときは、製品の資料で対応範囲と注意点を確認して比較する。

参考文献

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top