SaaSとASP・クラウドの違いとは?IaaS/PaaS・SIerとの関係も整理

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  • SaaSとASPは実務では同じ意味で使われる
  • 違いは誰がどこまで運用するかで整理できる
  • 呼び方でなく中身で比べて選べるようになる

SaaSとASPは、実務ではほぼ同じ意味で使われ、業界団体のASPIC(一般社団法人日本クラウド産業協会)も同義語とみなしています。クラウドはその両方を含む大きな枠組みで、SIerはシステムを作る事業者を指すため、並べて比べる相手の種類が違います。システムの導入を検討し始めると似た言葉が次々に出てきて、見積もりの比較や社内の稟議で話がかみ合わなくなることがあります。この記事では、4つの用語を「どこで動いているか(提供形態)」「誰と環境を共有しているか(テナント)」「誰が作って誰が運用するか(提供者の役割)」の3つの軸で整理し、1枚の早見表にまとめます。クラウドの種類ごとの運用の分担、よくある混同パターン、選定時の確認ポイントもあわせて解説します。

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Q1. いま社内で使っている(使う予定の)クラウドはどちらに近いですか?

目次

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  1. SaaS・ASP・クラウドの違いは「誰がどこまで運用するか」で整理できる
  2. SaaSとASPの違い|同じ意味で使われる場合と、区別される場合
  3. クラウドとの関係|SaaSやASPを動かす土台を含む大きな枠組み
  4. SIerとの違い|既製サービスと個別システム構築
  5. 用語の使い分け早見表
  6. SaaS・ASP型サービスを使うメリットとデメリット
  7. よくある混同パターン4つ
  8. 用語理解を実務に活かす|選定時の確認ポイント
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ
  11. 参考文献

SaaS・ASP・クラウドの違いは「誰がどこまで運用するか」で整理できる

SaaS・ASP・クラウドの違いは、運用を事業者と利用者のどちらがどこまで担うかで整理できます。SaaSは事業者の担う範囲が最も広く、IaaSは利用者の範囲が広い形態です。

クラウドの分類として広く参照されるNIST(米国立標準技術研究所)の定義は、情報処理推進機構(IPA)が日本語訳を公開しており、サービスモデルをSaaS、PaaS、IaaSの3つに分けています。違いは、事業者がどこまでを用意し、利用者がどこから先を管理するかにあります。管理する対象ごとの一般的な整理を、オンプレミスと並べて示します。

管理する対象 オンプレミス IaaS PaaS SaaS
サーバー・ネットワークなどの設備 自社 事業者 事業者 事業者
OS・ミドルウェア 自社 自社 事業者 事業者
アプリケーション 自社 自社 自社 事業者
入力するデータ・利用者の設定 自社 自社 自社 自社

表は一般的な整理で、実際の契約では範囲が異なることがあります。右の列に行くほど利用者の作業は減り、左の列に行くほど自由度は高い一方で、更新や障害対応を自社で担う必要があります。

SaaSを契約して使う場合、運用の大半は事業者が担います。一方、自社のシステムをAWSなどのIaaS上で動かす場合は、OSやミドルウェアの更新、監視、障害対応が利用者の範囲に入ります。夜間や休日の監視まで社内の少人数で担うのは負担が大きいため、運用を外部に任せる選択肢があります。IaaSの運用や支払いを見直したい場合に使えるサービスを、役割の違いで並べます。IaaSを使っていない会社は、次のH2から読み進めても問題ありません。

IaaSの運用と支払いを見直す2つのサービス

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SaaSとASPの違い|同じ意味で使われる場合と、区別される場合

SaaSとASPは、どちらもインターネット経由でソフトウェアを使えるサービスで、実務ではほぼ同じ意味で使われます。区別される場合は、環境を共有するかどうかというテナントの違いで説明されることが多くなっています。

ASPは事業者とサービスの両方を指す

ASPは「Application Service Provider(アプリケーション・サービス・プロバイダ)」の略です。言葉の成り立ちからわかるように、本来はアプリケーションをネットワーク経由で提供する「事業者」を指し、そこから転じて、提供されるサービスそのものもASPと呼ぶようになりました。ASPICは、ASPを「特定及び不特定ユーザーが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス、あるいはそうしたサービスを提供するビジネスモデル」と広く定義しています。ソフトウェアを自社のパソコンやサーバーにインストールせず、事業者のサーバー上で動かして利用料を払う、という考え方です。

SaaSは「サービスとして使う」形態を指す

SaaSは「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」の略で、ソフトウェアを「買って所有するもの」ではなく「サービスとして利用するもの」と捉える考え方です。ASPICはASPとSaaSを同義語とみなしており、どちらも1990年代後半に米国から広まった概念と説明しています。SaaSの基本的な意味や例は、【NIST準拠】SaaSとは|PaaS・IaaS・ASPとの違いと選び方の基準で詳しく整理しています。

ベンダーによってはテナントの違いで区別する

一部のベンダーは、ASPを「利用者ごとに専用の環境を用意するシングルテナント」、SaaSを「1つの環境を複数の利用者で共有するマルチテナント」と区別して説明します。基盤を共有するSaaSでは、事業者が一度のアップデートで全利用企業に新機能を届けやすく、利用企業は短期間・低コストで使い始めやすくなります。一方で、「ASPは必ずシングルテナント、SaaSは必ずマルチテナント」と言い切れるわけではありません。マルチテナント型のASPもあり、SaaSでもセキュリティ要件の厳しい企業向けに専用環境を用意するプランがあります。区別して使うベンダーと話すときは、その相手がどう定義しているかを先に確認しておくと、話がかみ合います。

項目 ASP(区別する場合) SaaS(区別する場合)
言葉の中心 提供する事業者(Provider) 提供の形態(as a Service)
環境の持ち方の傾向 利用企業ごとに専用環境(シングルテナント) 複数企業で基盤を共有(マルチテナント)
アップデート 環境ごとに個別に実施されやすい 全利用企業に一斉に反映されやすい
個別対応 比較的しやすい 設定の範囲内が基本

マルチテナントのデータ分離の仕組みや、シングルテナントとの選び方をさらに詳しく知りたい場合は、SaaSのマルチテナントとは?シングルテナントとの違い、データ分離の仕組み、選定時の確認ポイントを解説も参考にしてください。

略語のASPには別の意味もある

ASPという略語は、IT関連だけでも複数の意味で使われます。Webマーケティングでは、成果報酬型広告を仲介する事業者を「ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)」と呼びます。マイクロソフトが開発したWebページ生成の技術「Active Server Pages」や、公共工事の情報共有システムを指す「建設ASP」という使い方もあります。略語は同じでもまったく別の意味なので、会話の文脈で「どのASPか」を確かめる習慣をつけておくと混乱を避けられます。

2サービスの役割を比較表で見る

クラウドとの関係|SaaSやASPを動かす土台を含む大きな枠組み

クラウドは、SaaSやASPよりも一段大きな概念で、「SaaSはクラウドの一種」ですが「クラウドはすべてSaaS」ではありません。サーバーやストレージ、ネットワーク、アプリケーションといったITの資源を、手元に持たずにネットワーク経由で必要な分だけ使う仕組み全体を指します。

クラウドの3つのサービスモデル

冒頭の表で示したとおり、NISTの定義ではサービスモデルがIaaS、PaaS、SaaSの3つに分かれています。それぞれの意味は次のとおりです。

  • IaaS(Infrastructure as a Service):サーバー、ストレージ、ネットワークなどの基盤を借りる形態です。OSやアプリケーションは利用者が用意するため、インフラ担当者や開発者が主な利用者になります。
  • PaaS(Platform as a Service):基盤に加えて、OSや開発・実行環境まで事業者が用意する形態です。利用者は自社で開発したアプリケーションとデータを管理します。
  • SaaS(Software as a Service):アプリケーションまで含めて事業者が提供する形態です。利用者は設定、アカウント、入力するデータを管理し、主な利用者は業務部門の担当者です。

3つの違いを図で整理したい場合は、SaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説も参考にしてください。

クラウドという言葉が広まった順番

ASPICは、ASPとSaaSを1990年代後半に米国から広まった概念とし、「クラウド」という用語は2009年12月時点で官民を問わず広く使われつつあると説明しています。つまり、言葉としてはASPやSaaSが先で、クラウドは後から広まりました。現在のSaaSの多くは、実際にはIaaSやPaaSの上で動いており、クラウドの技術があるからこそ、低コストで柔軟なSaaSが成り立っています。

また、クラウドは「社外の共有環境」だけを意味するわけではありません。NISTの定義では、不特定多数に提供するパブリッククラウドのほか、特定の組織専用に構築するプライベートクラウド、両者を組み合わせるハイブリッドクラウドといった配置モデルも示されています。「クラウドだから必ず他社と共有している」と決めつけず、どの配置モデルなのかを確認する視点を持っておきましょう。

IaaSを選ぶと、OSやミドルウェアの更新、監視、障害対応は自社の仕事になります。IaaS上のシステムを少人数で運用していて、運用の一部を外部に任せたい場合は、冒頭で紹介したAWS監視・運用のようなサービスの資料を確認しておくと、任せる範囲を具体的に考えやすくなります。

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SIerとの違い|既製サービスと個別システム構築

SIer(エスアイヤー)は「System Integrator」に由来する和製英語で、企業の要望に合わせて情報システムの企画、設計、開発、導入、保守までを請け負う事業者を指します。SaaSやASPが「すでに完成したサービスを貸し出す形態」であるのに対し、SIerは「その企業のためのシステムを個別に作る担い手」です。比べているものの種類がそもそも違う点が、最も混同しやすいポイントです。

SIerとSaaSは対立ではなく組み合わせることもある

SIerはオンプレミスのシステムを作るだけでなく、クラウドのIaaSやPaaSの上に個別システムを構築したり、複数のSaaSを組み合わせて社内の既存システムとつなぐ役割を担ったりすることもあります。つまり、「SIerに頼むか、SaaSを使うか」は二者択一とは限らず、「基本はSaaSを使い、足りない連携部分だけSIerに依頼する」という組み合わせもよく見られます。

比較項目 SaaSを契約する SIerに個別構築を依頼する
手に入るもの 完成したサービスの利用権 自社専用に作られたシステム
使い始めるまでの期間 短い傾向 要件定義から開発まで時間がかかる傾向
業務への合わせ方 業務をサービスの機能に合わせる場面が多い システムを業務に合わせて作り込める
契約の中心 利用規約、サービスレベルの取り決め 開発の請負契約や準委任契約、保守契約
保守の担い手 SaaS事業者 SIerまたは自社(保守契約の内容による)

この「完成品を借りるか、専用に作るか」という判断は、業務をサービスの標準機能に合わせられるか、それとも自社の運用ルールに合わせた作り込みが必要か、という問いに置き換えられます。標準機能で足りるならSaaS、作り込みが必要ならSIerへの依頼を検討する、という順で考えると整理しやすくなります。SIerに構築を任せた場合も、完成後の保守を誰が担うかは保守契約の内容で決まるため、構築の見積もりと同時に確認しておくことが大切です。

用語の使い分け早見表

ここまでの内容を1枚にまとめます。ポイントは、4つの用語が同じ種類のものではないという点です。クラウドは「仕組み全体」、SaaSとASPは「ソフトウェアの提供形態」、SIerは「システムを作る事業者」であり、同じ土俵で比べるものではありません。

用語 何を指すか 環境の持ち方 作る人・運用する人 使う場面の例
クラウド ネットワーク経由でIT資源を使う仕組み全体 共有型も専用型もある クラウド事業者(範囲はモデルによる) 「社内システムをクラウドに移す」
SaaS クラウド上のソフトウェアをサービスとして使う形態 マルチテナントが主流 SaaS事業者 「勤怠管理はSaaSで契約する」
ASP アプリを提供する事業者、またはそのサービス シングルテナントの傾向(区別する場合) ASP事業者 「ASP型の販売管理システム」
IaaS/PaaS 基盤や開発環境を提供するクラウドの形態 共有基盤上で利用者ごとに区切る 基盤は事業者、上の層は利用者 「自社アプリをIaaS上で動かす」
オンプレミス 自社の設備でシステムを運用する形態 自社専用 自社(または委託先) 「基幹システムは社内サーバーで運用」
SIer 個別システムを構築・保守する事業者 構築先による(オンプレミスもクラウドもある) SIer(保守は契約による) 「受発注システムをSIerに発注する」

社内で用語が混ざったときは、この表の「何を指すか」の列に立ち返ると整理しやすくなります。たとえば「SaaSとSIerのどちらがよいか」という問いは、正確には「既製のSaaSを契約するか、SIerに個別構築を依頼するか」という提供形態と調達方法の比較だと言い換えられます。SaaSの身近な例を知りたい場合は、SaaSって何?身近な例でわかる意味と料金の仕組み、選び方が参考になります。

SaaS・ASP型サービスを使うメリットとデメリット

SaaSとASPは環境の持ち方に違いがあるものの、「事業者のサーバー上で動くソフトウェアをインターネット経由で利用する」という点は共通しています。そのため、自社にソフトウェアをインストールして運用する形と比べたときのメリット・デメリットも、おおむね共通しています。身近な例としては、Webメール、ファイル共有、勤怠管理、経費精算、会計、Web会議、ネットショップ作成サービスなど、ブラウザやアプリからログインして使う業務ツールの多くがこの形態にあたります。

観点 メリット デメリット・注意点
費用 サーバー購入などの初期費用を抑えやすい 利用料が継続して発生し、長期間・多人数で使うと総額が大きくなることがある
導入の手間 申し込み後、短期間で使い始めやすい 既存システムとの連携やデータ移行には別途準備が必要な場合がある
保守・運用 アップデートや障害対応を事業者に任せられる メンテナンスの時期や障害時の復旧は事業者側の対応に左右される
利用場所 インターネットに接続できれば社外や複数拠点からも使える 通信環境が不安定だと動作が遅くなったり使えなくなったりする
カスタマイズ 標準機能をそのまま使えば設定の負担が少ない 独自の業務に合わせた作り込みは提供範囲内に限られやすい
データの置き場所 自社でバックアップ設備を持たなくても済む場合がある データを外部のサーバーに預けるため、管理体制や契約終了時の扱いの確認が欠かせない
サービスの継続性 事業者が更新を続ける限り、新しい機能を使える 事業者の都合でサービスが終了することがあり、代わりのサービスへ移れるかを事前に確かめておく必要がある

デメリットの多くは「外部の環境を借りる」ことから生じるものなので、後述する選定時の確認ポイントで、事前に中身を確かめておくことが大切です。

費用の出方も、借りる範囲によって変わります。SaaSは月額などの利用料が中心ですが、IaaSは使った分だけ請求される従量課金が多く、毎月の請求額が変わります。商品ページによると、AWSを直接契約した場合の支払い方法はUSドル建てのクレジットカード払いか海外送金に限られており、円建ての請求書で支払いたい会社には事務の負担になります。この支払いを円建ての請求書と銀行振込に置き換える一例が、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する「CloudCREW AWS請求代行」です。

「CloudCREW AWS請求代行」は、AWSパートナーのCloudCREW byGMOを通じて利用料を円建ての請求書で支払える法人向けサービスで、初期費用や代行手数料は無料と商品ページに記載されています。AWSの障害やサイバー攻撃による損害を補償するサイバーリスク保険が標準で付帯することも案内されています。注意したいのは、基本サービスのみを利用する場合は与信審査があり、申し込みから利用開始まで1か月以上かかる場合があることと、監視や運用のサービスは有料オプションになることです。AWSを使っていない会社には関係のない話ですが、クラウドの費用を誰がどう管理するかを考える材料になります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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よくある混同パターン4つ

用語の違いが曖昧なままだと、社内の説明や見積もりの比較で思わぬ食い違いが起こります。現場で起こりやすい混同のパターンと、整理したあとの考え方を表にまとめました。

混同のパターン Before(よくある誤解) After(整理した考え方)
1. クラウドとSaaSを同一視する 「クラウド化」と言えば既製のSaaSを契約することだと思い込む IaaSに自社システムを移すのもクラウド化。どの層を事業者に任せるかを先に決める
2. ASPを古い技術と決めつける 「ASP型」と書かれた製品は時代遅れだと判断して候補から外す 呼び方は事業者の慣習による場合も多い。環境の持ち方と保守体制を個別に確認する
3. SaaSとSIerを同列に比べる SaaSの月額料金とSIerの開発見積もりを金額だけで比べる 利用期間の総額、保守の担い手、業務の作り込みの必要性をそろえて比べる
4. 共有環境は危ないと考える マルチテナントは他社とデータが混ざるので使えないと判断する データの分離方法や第三者認証の有無など、具体的な管理策で判断する

4つのパターンに共通するのは、用語のラベルだけで判断してしまい、中身を確認していないという点です。「クラウド」「SaaS」「ASP」という呼び方は、事業者のマーケティング上の表現として使われることもあります。ラベルに頼らず、環境の持ち方、運用の担い手、契約の形という中身で比べることが、混同を防ぐいちばんの近道です。

用語理解を実務に活かす|選定時の確認ポイント

用語の違いを理解する目的は、最終的に自社に合うシステムを選ぶことにあります。サービスの説明に「クラウド型」「SaaS」「ASP」とあったときに、次の観点で中身を確かめると、呼び方の違いに振り回されずに比較できます。

  1. 環境の持ち方:自社専用の環境か、複数企業で共有する環境か。共有の場合、データはどのように分離されているか。
  2. 管理範囲:OSやミドルウェアのアップデート、バックアップ、障害対応を誰が担うか。自社が担う範囲はどこからか。
  3. カスタマイズの範囲:業務に合わせてどこまで設定や機能追加ができるか。個別開発が必要な場合、誰に依頼するか。
  4. 契約とサービスレベル:稼働率の目標、障害時の連絡手順、サポートの窓口と対応時間、契約終了時のデータの返却方法が定められているか。
  5. セキュリティの確認方法:第三者認証の取得状況や、政府情報システム向けの評価制度であるISMAPへの登録状況などを確認できるか。

とくに契約終了時のデータの扱いは、導入時に見落とされやすい項目です。共有型のサービスでは、データの形式や取り出し方法が事業者ごとに異なるため、将来ほかのサービスに乗り換えるときの手間に直結します。個人情報を扱う場合は、委託先の管理体制についても個人情報保護委員会のガイドライン等を確認しておくと安心です。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の契約内容に関する法的な助言ではありません。契約条件の判断に迷う場合は、専門家に相談してください。

2つ目の「管理範囲」は、とくにIaaSで差が出ます。自社の状況に当てはめて、運用の担い手と支払いの整理が必要かどうかを、次のセルフチェックで確かめてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. SaaSとASPの違いは何ですか?

A. どちらもインターネット経由でソフトウェアを使えるサービスで、実務ではほぼ同じ意味で使われます。業界団体のASPICも同義語とみなしています。区別して使うベンダーは、利用企業ごとに専用の環境を用意するものをASP、1つの環境を複数の企業で共有するマルチテナント方式をSaaSと説明します。

Q. SaaSとクラウドは同じ意味ですか?

A. 同じではありません。クラウドはネットワーク経由でIT資源を使う仕組み全体を指し、SaaSはその中でソフトウェアをサービスとして提供する形態の1つです。クラウドにはSaaSのほか、IaaSやPaaSも含まれます。

Q. IaaS、PaaS、SaaSの違いは何ですか?

A. 事業者が用意する範囲と、利用者が管理する範囲が違います。IaaSはサーバーなどの基盤を借りる形態で、OS以降は利用者が管理します。PaaSは開発・実行環境まで事業者が用意し、利用者はアプリケーションとデータを管理します。SaaSはアプリケーションまで事業者が提供し、利用者は設定と入力するデータを管理します。

Q. ASPとは何ですか?

A. Application Service Providerの略で、アプリケーションをネットワーク経由で提供する事業者、またはそのサービスを指します。現在はSaaSとほぼ同じ意味で使われます。なお、略語のASPには、アフィリエイト・サービス・プロバイダなど別の意味もあるため、文脈で判断してください。

Q. SIerとSaaSはどう違いますか?

A. SIerは企業ごとの要望に合わせてシステムを構築・保守する事業者で、SaaSは完成したソフトウェアをサービスとして貸し出す形態です。比べているものの種類が異なり、SaaSを使いつつ連携部分だけSIerに依頼するような組み合わせもあります。

Q. マルチテナントのSaaSはセキュリティ面で不安はありませんか?

A. 基盤を共有していても、データは企業ごとに論理的に分離して管理されるのが一般的です。不安がある場合は、データの分離方法や第三者認証の取得状況、ISMAPへの登録状況などを確認し、具体的な管理策で判断することをおすすめします。

まとめ

SaaS、ASP、クラウド、SIerは似た場面で使われますが、指しているものの種類が異なります。クラウドはIT資源をネットワーク経由で使う仕組み全体、SaaSとASPはその上でソフトウェアを提供する形態、SIerは個別のシステムを作る事業者です。用語の違いを実務に活かすために、次の4つを押さえておきましょう。

  1. SaaSとASPは実務ではほぼ同じ意味で使われると理解し、区別して使う相手には、テナントの違いを含めて定義を確認する。
  2. 違いは「誰がどこまで運用するか」で整理し、IaaSを使う場合はOS以降の運用が自社の範囲に入ることを前提に体制を考える。
  3. サービスを選ぶときは呼び方ではなく、環境の持ち方、管理範囲、カスタマイズの範囲、契約内容、セキュリティの確認方法で比べる。
  4. AWSなどのIaaSで自社システムを動かしている場合は、運用の担い手と支払いの持ち方を整理し、必要に応じて代行サービスの資料も確認する。

参考文献

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