Web完結の翻訳サイト、機密情報を入力しても大丈夫?セキュリティの選び方

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  • 機密情報を入力する前に確認すべき5つのチェックポイントがわかる
  • 無料版と有料(法人)版のセキュリティ機能の違いがわかる
  • NDA・個人情報保護法・著作権法上の論点と、よくある失敗パターンを事前に把握できる

翻訳会社に依頼する時間がない、あるいは軽い確認程度で十分という場面では、Webブラウザ上で入力するだけで完結する「翻訳サイト」型のオンラインツールが選ばれます。ニューラル機械翻訳(NMT)の普及により2020年代以降はビジネス実務に耐える精度に達した製品が増えていますが、人手を介する翻訳会社への外注とは異なり、入力したテキストが手元を離れて外部サーバーに送信される仕組み上、セキュリティ要件や機密情報の扱いには特有の注意点があります。本記事では、料金や機能の網羅比較ではなく、Webで完結するオンライン翻訳ツールに「何を入力してよいか」を判断するための実務チェックポイントを中心に解説します。

目次

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  1. 翻訳サイトとは?Web完結型ツールの位置づけ
  2. 機密情報を入力する前に確認すべき5つのチェックポイント
  3. 無料版と有料(法人)版のセキュリティ機能比較
  4. 主要翻訳サイトのセキュリティ実装比較
  5. 業界別の機密情報漏洩リスクと対策
  6. 翻訳サイト利用時の法務論点|NDA・個人情報保護法・著作権
  7. 情報漏洩を招く3つの失敗パターンと回避策
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ|機密情報を守る翻訳サイト運用の3ステップ
  10. 参考文献

翻訳サイトとは?Web完結型ツールの位置づけ

翻訳サイトとは、テキスト・ファイル・Webページなどをブラウザ上で指定言語に機械翻訳するWebサービスの総称で、ソフトのインストールやアカウント登録なしにすぐ使えるものが多いのが特徴です。DeepLやGoogle翻訳に代表される無料の汎用型から、データの取り扱いを契約で明示する法人向けセキュア型、専門用語DBを搭載した医療・法務特化型まで、同じ「翻訳サイト」という括りの中でもデータの扱われ方は大きく異なります。タイプ別の機能や費用相場を一通り比較したい場合は和訳サイトの種類・費用相場・選び方を解説した記事もあわせて参考にしてください。

タイプ 代表例 入力データの扱われ方の傾向
汎用型(無料) DeepL無料版/Google翻訳 サービス改善・学習目的での利用可能性が利用規約に含まれる場合がある
法人セキュア型 DeepL Pro/みらい翻訳等 データ非学習・暗号化・保持期間を契約で明示するプランが中心
専門分野特化型 医療・特許・法律系 機密性の高い文書を前提に設計され、NDA対応が標準の製品が多い

この「入力データがどう扱われるか」の差こそが、翻訳サイトを業務利用する際に最初に確認すべき論点です。次の章では、契約前に確認すべき5つのチェックポイントを具体的に整理します。

機密情報を入力する前に確認すべき5つのチェックポイント

翻訳サイトに社内文書や顧客情報を入力する前は、「学習利用」「保存先」「暗号化」「保持期間」「契約対応」の5点を利用規約・契約条件で確認することが不可欠です。いずれか1つでも未確認のまま機密文書を入力すると、意図しない情報漏洩や契約違反につながるリスクがあります。

  1. 学習利用オプトアウトの可否:入力したテキストがサービス改善・AIモデルの学習に使われないことが利用規約または契約書に明示されているか。無料プランでは明示されていないケースが多く、法人プランでは契約条件として明記されることが一般的です。
  2. データの保存先(国内/海外サーバー):入力データがどの国のサーバーで処理・保存されるか。海外サーバーを経由する場合、個人情報保護法上の外国への移転規律への対応状況もあわせて確認する必要があります。
  3. 暗号化通信の有無:入力から出力までの通信が暗号化されているか(HTTPS通信は前提として、保存データ自体の暗号化まで行っているかも確認)。
  4. データ保持期間と削除ポリシー:入力・翻訳データが翻訳完了後どの程度の期間保持され、削除申請に対応できるか。「翻訳後自動削除」を明示する製品もあれば、一定期間保持を前提とする製品もあります。
  5. NDA・データ処理契約への対応可否:取引先とのNDA(秘密保持契約)対象の情報を扱う場合、翻訳サービス提供事業者との間で別途NDAやデータ処理契約(DPA)を締結できるか。無料プランでは個別契約に対応していないことが一般的です。

この5点は、後述する著作権法・個人情報保護法・NDAの論点とも直結します。まずは自社が扱う文書を「公開情報」「社内限定情報」「機密情報(NDA対象・個人情報を含む)」の3段階に分類し、機密度に応じて使えるサービスを線引きすることが実務上の出発点になります。

無料版と有料(法人)版のセキュリティ機能比較

同じ翻訳サイトでも、無料プランと法人向け有料プランではセキュリティ関連機能に明確な差があります。機密情報を扱う可能性がある部署では、料金の安さだけで無料プランを選ぶと、前章のチェックポイントを満たせないケースが多くなります。

セキュリティ関連機能 無料プラン 有料プラン(法人向け)
データ非学習保証 対象外(サービスによる) 契約で明示されることが一般的
データ保存期間の明示 明示されないことが多い 保持期間・削除方法が契約書に記載される
個別NDA・DPA締結 原則不可 プラン・契約規模により対応可能な場合がある
利用ログ・監査ログ管理 対象外 管理者による利用状況の把握が可能な製品もある
サポート窓口 原則なし(FAQ・コミュニティのみ) 専用窓口・SLAを設定する製品もある

このように、無料プランと法人プランの違いは翻訳精度そのものよりも「データがどう扱われるか」に表れます。次章では主要な翻訳サイトを、このセキュリティ機能の観点から比較します。

主要翻訳サイトのセキュリティ実装比較

主要な翻訳サイトを「データ非学習保証」「保存先」「暗号化通信」「NDA・DPA対応」の4軸で整理しました。以下は各社公式サイト等の公開情報をもとにした編集部の整理であり、個別の仕様はプラン・契約時期により変動する場合があるため、導入前に必ず公式サイトまたは営業窓口で最新の契約条件を確認してください。

サービス名 データ非学習保証 保存先 暗号化通信 NDA・DPA対応
DeepL(無料) 要確認(規約による) 海外 ○(通信のみ) 不可
DeepL Pro 契約で明示 海外(規約で明示) プランにより対応
Google翻訳(無料) 要確認(規約による) 海外 ○(通信のみ) 不可
みらい翻訳 契約で明示 国内サーバー運用 対応(要見積)
COTOHA Translator 契約で明示 国内サーバー運用 対応(要見積)
WOVN.io 契約で明示 要確認(要見積) 対応(要見積)

表からわかるとおり、無料プランはデータ非学習保証・NDA対応のいずれも明確でない製品が多く、機密文書の入力には適しません。一方、国内サーバー運用を明示する法人向け製品は、個人情報保護法上の外国への移転規律を意識せずに済む点でも扱いやすいという利点があります。より広い視点で翻訳会社・クラウド翻訳を含めた選択肢まで比較したい場合は、料金・機能を横断的に整理した比較記事もあわせて参考にしてください。

業界別の機密情報漏洩リスクと対策

翻訳サイトに入力する文書が持つ機密性は業界によって性質が異なります。とりわけ製造業・医療・法務の3分野は、入力データがそのまま漏洩対象となり得る情報を含みやすく、業界特有のリスクを踏まえた運用ルールが必要です。

製造業:製品マニュアルだけでなく、図面・仕様書・特許出願前の技術文書を翻訳サイトに入力すると、無料サービス経由で技術情報が外部に流出するリスクがあります。JETROの調査でも海外展開を行う日本企業の多言語対応ニーズの高さが指摘されており(出典:JETRO「日本企業の海外展開に関するアンケート調査」)、翻訳量が増えるほど「どの文書を無料ツールに入力してよいか」の社内基準が重要になります。特許出願前の技術文書は、公開前に外部へ送信すること自体が新規性喪失のリスクを伴うため、法人セキュア型または専門翻訳会社への依頼が原則です。

医療・製薬:患者の氏名・症状・治療歴を含む文書は個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当する可能性があり、無料翻訳サイトへの入力は避けるべきです。厚生労働省の統計でも医薬品の輸出額は増加傾向にあり(出典:厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」)、海外拠点とのやり取りで翻訳サイトを使う機会も増えていますが、患者に関する情報は匿名化した上で入力するか、国内サーバー運用でNDA対応可能な製品に限定する運用が推奨されます。

法務:NDA・業務委託契約・M&A関連文書などは、その文書自体がNDA対象であることが多く、無料翻訳サイトへの入力がNDA違反に該当しうる典型的なケースです。契約書の翻訳は、法人セキュア型ツールでのNDA・DPA締結を確認するか、専門翻訳会社への外注に切り替えることが安全です。

翻訳サイト利用時の法務論点|NDA・個人情報保護法・著作権

翻訳サイトの利用にはNDA(秘密保持義務)・個人情報保護法・著作権法(翻訳権)の3つの法的論点が交差しており、業務での利用前にそれぞれの確認が不可欠です。以下は一般的な整理であり、個別の契約・案件における法的判断については弁護士等の専門家にご確認ください。

1. 秘密保持契約(NDA)との整合:取引先とNDAを締結している情報を無料の翻訳サービスに入力する場合、NDA上の守秘義務違反のリスクがあるとされています。契約書等の翻訳には、データ非学習保証のある法人向けサービスを使用するか、翻訳会社との間でNDAを締結した上で依頼することが推奨されます。自社がNDAを締結している相手先に対しては、翻訳サイトの利用可否自体を契約書に明記しておくとトラブルを避けやすくなります。

2. 個人情報保護法(個情法)の確認:顧客の氏名・住所・メールアドレスを含む文書を外部の翻訳サービスに入力する行為は、個人情報の「第三者提供」または「業務委託」に該当しうるとされ、個人情報保護委員会のガイドラインに沿った確認が必要です(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。「データを学習に使用しない」旨の契約明示があれば業務委託として処理できる場合がありますが、海外サーバーを経由する製品では外国への個人情報移転に関する規律への対応も別途確認が必要です。

3. 著作権法(翻訳権)の確認:著作権法第27条は、著作物を翻訳する権利を著作者の専有権として規定しているとされています(出典:文化庁「著作権法」)。他社が著作権を持つ文書(マニュアル・報告書・論文等)を翻訳してWebに公開する行為は、著作権者の許諾なしには翻訳権の侵害となる可能性があるとされています。社内利用(私的複製の延長)と外部公開を明確に区別して運用することが重要です。

確認事項 対応方法(一般的な整理) 参照法令・ガイドライン
NDA対象情報の翻訳 法人向けセキュアサービスを使用、またはNDA締結済み翻訳会社へ依頼 各社との秘密保持契約
個人情報を含む文書の入力 データ非学習の契約を確認。業務委託契約として処理 個人情報保護委員会ガイドライン
著作権のある文書の翻訳 著作権者の許諾を取得。私的利用の範囲を超える場合は要確認 著作権法第27条(翻訳権)

※本セクションは一般的な情報整理を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の契約内容や具体的な事案については、必ず弁護士等の専門家にご確認ください。

情報漏洩を招く3つの失敗パターンと回避策

翻訳サイトを業務利用する企業の多くが直面する失敗は、機能や料金の見落としではなく「セキュリティ運用の設計不足」に起因します。以下の3パターンは特に発生頻度が高いものです。

失敗パターン1:無料サービスに機密情報を入力してしまう
最もよく見られる失敗は、利便性から無料の翻訳サービスに社内の機密文書や顧客情報を入力してしまうケースです。多くの無料サービスは入力データをサービス改善や機械学習に利用する可能性があります。
回避策:社内で「翻訳ツール利用ガイドライン」を整備し、文書の機密レベルに応じて使用できるサービスを明示する。機密文書には必ずデータ非学習保証のある法人プランを使用する。

失敗パターン2:セキュリティ機能が上位プラン限定であることに気づかず契約する
「有料プランなら安全」と考えて契約したものの、データ非学習保証やNDA対応は実は最上位プランのみの機能で、実際に契約したプランではカバーされていなかったというケースが報告されています。
回避策:契約前に、必要なセキュリティ要件(非学習保証・保存先・NDA対応の有無)がどのプラン階層で提供されるかを個別に確認する。料金表の機能一覧だけでなく、営業窓口に直接確認することが確実です。

失敗パターン3:退職者・委託先の翻訳ツールアカウントを放置する
法人プランを部門単位・個人単位で契約している場合、退職者や契約終了した外部委託先のアカウントがそのまま有効になっており、アクセス権限を通じて過去の翻訳履歴や機密文書へのアクセスが継続してしまうケースがあります。
回避策:翻訳ツールのアカウントも他の社内システムと同様に、入退社・契約終了時の権限棚卸しフローに組み込む。管理者機能で利用状況・アクセスログを定期的に確認する運用を整備する。

よくある質問(FAQ)

Q1. 無料の翻訳サイトに機密情報を入力すると、具体的にどんなリスクがありますか?

A. 多くの無料翻訳サイトは、入力データをサービス改善やAIモデルの学習に利用する可能性が利用規約に含まれています。学習に利用された場合、入力した文書の内容が別の利用者への出力結果に間接的な形で影響する可能性が指摘されており、機密文書・個人情報を含む文書の入力は避けるべきとされています。詳細は各サービスの利用規約・プライバシーポリシーで確認してください。

Q2. データが機械学習に使われないことをどうやって確認すればよいですか?

A. 無料プランの利用規約に「学習利用しない」旨が明記されていない場合は、その保証がないものと考えるのが実務上安全です。法人向け有料プランでは、契約書やサービス仕様書に「データ非学習」の条項が明示されることが一般的なため、契約前に営業窓口へ書面での明示を依頼するのが確実な確認方法です。

Q3. 個人情報を含む文書を翻訳サイトに入力してもよいですか?

A. 個人情報を含む文書の入力は慎重に判断する必要があります。個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人情報の処理を外部サービスに委託する場合、適切な安全管理措置を講じた業務委託として処理することが求められるとされています。「データを機械学習に使用しない」「暗号化通信」「データ保持期間の明示」などを利用規約で確認した上で、法人向けサービスを使用することを推奨します。

Q4. NDA(秘密保持契約)を結んでいる情報を翻訳サイトで扱えますか?

A. 取引先とNDAを締結している情報を、そのNDAの範囲外である無料翻訳サービスに入力すると、守秘義務違反に該当するリスクがあります。データ非学習保証やNDA対応を契約で明示できる法人向けサービスを使うか、翻訳会社との間で別途NDAを締結した上で依頼する必要があります。判断に迷う場合は、契約相手先または社内の法務担当に事前確認することを推奨します。

Q5. 著作権上、他者の文書を翻訳サイトで翻訳して公開してよいですか?

A. 著作権法第27条により、他者が著作権を持つ文書を翻訳して公開する行為には著作権者の許諾が必要とされています。自社が著作権を持つ文書の翻訳・社内利用は問題ありませんが、他社の資料・報告書・論文を翻訳してWebで公開する場合は著作権侵害のリスクがあります。個別の判断が必要な場合は専門家にご確認ください。

Q6. 具体的にどの翻訳サービスを選べばよいですか?

A. 本記事で解説したセキュリティ5つのチェックポイント(学習利用・保存先・暗号化・保持期間・NDA対応)で自社の要件を整理した上で、翻訳会社やクラウド翻訳まで含めて幅広く比較したい場合は、おすすめの翻訳サービス比較記事で各サービスの比較ポイントや注意点をあわせて確認すると選びやすくなります。

まとめ|機密情報を守る翻訳サイト運用の3ステップ

  1. 文書を機密度で3段階に分類する:社内メールなど公開情報は無料の汎用ツール、NDA対象・個人情報を含む機密情報は法人セキュア型、著作権のある他社文書は翻訳前に許諾確認、という基準を作りガイドライン化する
  2. 5つのチェックポイントで契約条件を確認する:学習利用オプトアウト・保存先・暗号化通信・データ保持期間・NDA/DPA対応の5点を、料金表だけでなく契約書・営業窓口で個別に確認する
  3. アカウント管理を含めた運用ルールを整備する:退職者・委託先アカウントの権限棚卸しを社内システムと同じフローに組み込み、無料トライアルで実際のデータ取り扱いを検証してから本契約に進む

翻訳サイトは、正しく使えばスピードとコストの両面で大きなメリットをもたらすツールです。一方で、入力するだけで文書が外部サーバーへ送信される仕組み上、料金や翻訳精度だけで選ぶと機密情報の取り扱いを見落としがちです。本記事の5つのチェックポイントと3つの失敗パターンを踏まえ、自社の文書の機密度に応じた翻訳サイトの使い分けを整備してください。

参考文献

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