誓約書とは?種類・書き方・法的効力を法令ベースで解説
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- 誓約書の定義・法的効力・契約書との違いがわかる
- 入社・退職・秘密保持・反社排除など種類別の書き方と必須6項目がわかる
- 競業避止条項の有効要件・電帳法対応・失敗パターン3つがわかる
「誓約書が必要になったけれど、何を書けばいいかわからない」「紙で取り交わしているが、紛失リスクが心配」——こうした声は、採用・取引・退職など、ビジネスのあらゆる場面で繰り返されます。誓約書は、約束する当事者が一方的に署名・押印して提出する書面であり、民法上の私文書として証拠価値を持ちます。適切に作成しておけば、情報漏洩トラブルや競業避止義務違反、反社会的勢力との関係排除など、企業が直面しやすいリスクを事前に抑止できます。本記事では、誓約書の基本的な意味・法的効力・種類ごとの書き方テンプレートを、個人事業主から中堅・大企業まで規模を問わず使える形で解説します。経済産業省が公開する参考例や、電子帳簿保存法・個人情報保護法など法務上の確認事項もあわせて整理しますので、すぐに実務へ活かせる内容になっています。
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誓約書とは何か:定義・法的効力・契約書との違い
誓約書とは、約束する当事者の一方が署名・押印して相手方に提出する書面であり、民法上の私文書として一定の証拠価値を持ちます。法的な定義はなく書式の定めもありませんが、内容が公序良俗に反しない限り法的拘束力が認められます。契約書が双方の署名・押印を必要とする双務的合意であるのに対し、誓約書は約束する側のみが作成する点が大きな違いです。念書とほぼ同義ですが、企業への提出など公式な場面では「誓約書」の呼称が使われる傾向があります。
民法228条4項では「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定されており(出典:e-Gov法令検索「民法」2023年改正版、https://laws.e-gov.go.jp/ 2026年6月25日取得)、署名または押印がある誓約書は証拠能力が担保されます。なお、手書きの署名と押印を両方行うことで信頼性がさらに高まります。
競業避止義務に関する誓約書については、憲法22条の「職業選択の自由」との兼ね合いから、制限期間・業務範囲・地理的範囲・補償の有無などが不合理な場合は無効と判断されるリスクがあります。経済産業省は「競業避止義務契約の有効性について」の参考例を公開しており、誓約書の文言設計の基準として活用できます(出典:経済産業省「各種契約書等の参考例(令和6年2月改訂版)」2024年2月、https://www.meti.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
誓約書の主な種類と用途:入社・退職・秘密保持・反社排除
誓約書の主な種類には、入社誓約書・秘密保持誓約書(NDA兼用型)・退職誓約書・反社排除誓約書・支払誓約書などがあり、それぞれ発生するリスクの性質に応じて使い分けます。いずれも法律上の書式規定はなく、誓約内容・宛名・日付・誓約者の署名押印を含めることで成立します。
入社誓約書では、就業規則遵守・機密保持・競業避止・反社排除・経歴詐称時の処分などを定めるのが一般的です。秘密保持誓約書は、対象となる秘密情報の範囲(製品情報・顧客データ・取引先情報など)を具体的に列挙することで、情報漏洩が発生した際の証明力が高まります。退職誓約書では、退職後の競業禁止期間は「2年程度」が判例上の目安とされていますが、補償の有無・対象業務の広さによっては無効とされることもあるため、弁護士への確認を推奨します。反社排除誓約書は、取引先・採用候補者双方に提出を求め、違反した場合の即時契約解除・損害賠償を明記することで、企業の法務リスクを抑止します。
誓約書の書き方:必須6項目と記載例
誓約書には法定の書式はありませんが、①表題、②宛名(会社名・代表者名・役職)、③誓約文言、④誓約内容(箇条書き)、⑤作成日付、⑥誓約者の署名・押印の6項目を含めることが証拠能力確保の基本です。手書き・PC作成のどちらでも効力に差はありませんが、署名欄だけは本人の自署(手書き)が望ましく、押印は認印でも有効です。
誓約内容は「守るべき義務・禁止事項」を具体的かつ明確に記載することが重要です。「機密情報を外部に漏らさない」だけでは範囲が曖昧なため、「製品の原価情報・取引先情報・顧客個人情報など業務上知り得た一切の情報」のように対象を例示するとトラブル抑止効果が高まります。違反した場合の損害賠償責任も明記しておくと、違反抑止力が強まります。
| 項目 | 記載例(入社誓約書) | 注意点 |
|---|---|---|
| 表題 | 入社誓約書 | 内容に合った名称をつける |
| 宛名 | 株式会社〇〇〇〇 代表取締役社長 〇〇〇〇 殿 | 役職・氏名は正確に |
| 誓約文言 | 私は、貴社に入社するにあたり、以下の事項を誓約いたします。 | 「誓約します」が明確な言葉 |
| 誓約内容 | 1.就業規則を遵守します。 2.業務上知り得た機密情報を漏洩しません。 3.反社会的勢力と一切関係がありません。 | 具体的に箇条書きで |
| 日付 | 〇〇〇〇年〇月〇日 | 西暦・和暦どちらか統一 |
| 署名・押印 | 住所・氏名(手書き)・印鑑 | 認印でも有効。両方あると信頼性向上 |
業界別の誓約書設計ポイント:製造業・IT・医療・サービス業
誓約書の内容は業種によって重視すべき論点が異なります。業種特性に応じた条項を盛り込むことで、実効性の高い誓約書を設計できます。以下に主要4業種の設計ポイントを整理します。
製造業:製品の製造方法・原価情報・取引先の仕様要件などの営業秘密が中心的な保護対象です。不正競争防止法上の「営業秘密」(秘密管理性・有用性・非公知性の3要件)を満たす情報について具体的に例示することで、万一の情報漏洩時に不正競争防止法による差止・損害賠償請求が可能になります(出典:経済産業省「営業秘密管理指針(全訂版)」2019年1月、https://www.meti.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
IT・ソフトウェア業:ソースコード・設計仕様・システム構成などの技術情報が主な保護対象です。クラウド環境での開発が増えるなか、情報の保存場所(個人端末・外部クラウドへの無断保存禁止)まで踏み込んだ条項が実務上有効です。また、退職後の競業避止条項は補償の有無・期間・地理的範囲を合理的に設定しないと無効リスクがあるため注意が必要です。
医療・ヘルスケア:患者の個人情報・診療記録は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、取り扱いにより厳格な守秘義務が課されます。誓約書では、個人情報保護法ガイドライン(医療・介護関係事業者向け)の遵守を明示することが推奨されます(出典:個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」2023年3月、https://www.ppc.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
サービス業・小売業:顧客の購買履歴・個人情報の取り扱いが中心です。DX推進に伴うデータ分析・CRM活用が進むなか、顧客データの外部持ち出し・第三者提供禁止を明確化した誓約書が重要性を増しています。アルバイト・パートを含む全従業員への適用と、退職後の義務継続も明示することが推奨されます。
誓約書の法務・法令確認事項:個人情報保護法・競業避止・電子帳簿保存法
誓約書の作成・保管では、個人情報保護法・競業避止条項の有効性・電子帳簿保存法・不正競争防止法の4つが主な法務確認事項です。特に電子誓約書については2024年1月の電帳法完全義務化に伴う対応が求められます。
電子帳簿保存法(電帳法)では、電子的に授受した書類(電子メール添付の誓約書PDFを含む)を「電子取引データ」として保存する場合、①訂正・削除履歴の確保、②検索機能の確保(日付・金額・取引先)、③タイムスタンプまたは規程による真実性確保の要件を満たさなければなりません(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」2024年1月、https://www.nta.go.jp/ 2026年6月25日取得)。誓約書を電子化・クラウド保管する際は、利用するシステムの電帳法対応状況を事前に確認することが必須です。
また、個人情報保護法では、誓約書に記載された氏名・住所などの個人情報について、安全管理措置(アクセス制限・暗号化・不正アクセス防止)を講じる義務があります。労務管理システムや電子契約システムでの一元管理を検討する際は、委託先のセキュリティ体制も確認しましょう(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」2022年9月改訂、https://www.ppc.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
誓約書を電子化するメリットと注意点:電子署名・クラウド保管
誓約書の電子化は、印刷・郵送・保管コストの削減だけでなく、提出状況の可視化・検索性の向上・改ざん防止といった多面的なメリットをもたらします。電子署名法の要件を満たすシステムを利用すれば、法的効力は書面と同等です。
電子署名の種類には、当事者型(本人が電子証明書を取得して署名)と立会人型(事業者が署名を立会・記録)の2種類があります。立会人型は導入ハードルが低く、クラウドサインやGMOサインなどの電子契約サービスが採用するモデルです。「電子証明書の有効期間は5年を超えないこと」と電子署名法施行規則に規定されており(出典:e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律施行規則」、https://laws.e-gov.go.jp/ 2026年6月25日取得)、有効期間内の書類については電子証明書の有効性が保証されます。
電子誓約書の注意点としては、①電帳法の保存要件への対応(前H2参照)、②電子署名の有効期間管理、③本人確認手段の選定(特に採用時の入社誓約書)の3点が挙げられます。なお、現状では電子誓約書を紙の誓約書に代替するケースが増えていますが、相手方が電子契約に不慣れな場合は書面での対応を求められることもあるため、自社の取引先・採用実態に合わせた方針設計が必要です。
誓約書に関する失敗パターン3つと回避策
誓約書をめぐるトラブルの多くは、作成時の不備・管理の甘さ・法的要件の見落としという3つのパターンに集約されます。それぞれの回避策を事前に知っておくことがリスク管理の第一歩です。
失敗パターン①:競業避止条項が無効になった
退職誓約書で競業避止条項を設けたものの、裁判で無効と判断されるケースがあります。主な原因は「制限期間が長すぎる(3年・5年など)」「業種・地域の制限が広範すぎる」「従業員への代償措置(補償)がない」の3点です。経済産業省の参考例を踏まえ、期間は2年以内・対象業務は具体的に・補償の有無を明記することがポイントです。
失敗パターン②:秘密保持誓約書の情報範囲が曖昧で証拠能力が弱まった
「業務上知り得た一切の情報」だけでは対象範囲が広すぎて、逆に「どの情報が秘密情報に当たるか」が争われるケースがあります。製品の原価情報・取引先リスト・技術仕様書・採用候補者情報などを具体的に列挙することで、不正競争防止法の「秘密管理性」要件を満たしやすくなります。
失敗パターン③:電子誓約書を保管したが電帳法要件を満たしていなかった
2024年1月の電帳法完全義務化以降、電子メール添付で受領した誓約書PDFを「電子取引データ」として保存する場合、検索要件・改ざん防止措置が必要です。単に「クラウドに保存した」だけでは不十分で、税務調査で指摘されるリスクがあります。電子契約システムの電帳法対応状況を事前に確認し、保存規程の整備も合わせて行うことが重要です(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」、https://www.nta.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 誓約書に印鑑は必ず必要ですか?
A. 法律上、誓約書に押印は必須ではありません。手書きの署名(自署)だけでも証拠能力は認められます。ただし、署名と押印の両方があると真正成立の推定(民法228条4項)が働きやすくなり、証拠能力が高まります。認印でも有効です。なお、電子誓約書の場合は電子署名が押印に代わる手段となります。
Q2. 誓約書と契約書の法的効力に違いはありますか?
A. 誓約書も契約書も、内容が公序良俗に反しない限り法的拘束力を持ちます。主な違いは、誓約書が約束する一方のみ署名・押印するのに対し、契約書は双方が署名・押印する点です。誓約書は相手方の署名がなくても、差し入れと受領によって双方間の合意・契約が認められることが多いです。
Q3. 退職後の競業避止誓約は有効になりますか?
A. 退職後の競業避止義務に関する誓約は、職業選択の自由(憲法22条)との兼ね合いから、無条件に有効とはなりません。裁判例では、制限期間(2年以内が目安)・対象業務の範囲・地理的範囲・代償措置(補償)の有無を総合的に判断し、不合理な場合は無効とされます。経済産業省が公開する「競業避止義務契約の有効性について」の参考例を活用することを推奨します(出典:経済産業省、https://www.meti.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
Q4. 誓約書は電子化できますか?法的効力は変わりますか?
A. 電子署名法の要件を満たす電子署名を付与した誓約書は、紙の誓約書と同等の法的効力を持ちます。電子契約サービス(立会人型・当事者型)を利用することで、押印・郵送なしに締結が可能です。ただし、電子メール添付等で授受した誓約書は電子帳簿保存法上の「電子取引データ」として保存要件への対応が必要です(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」、https://www.nta.go.jp/ 2026年6月25日取得)。
Q5. 誓約書を断られた場合はどうすればよいですか?
A. 従業員が合理的な内容の誓約書(就業規則遵守・秘密保持等)への署名を拒否することは、雇用契約上の義務違反につながる可能性があります。ただし、誓約内容が従業員の権利を過度に制限する場合(不合理に広い競業避止等)は、誓約書自体が無効となることもあるため、まず誓約内容の合理性を見直すことが先決です。取引先の場合は、反社確認・秘密保持の必要性を丁寧に説明したうえで、相互に秘密保持契約(NDA)を締結する形への切り替えも有効です。
まとめ
- 誓約書は一方当事者が署名・押印して提出する書面で、内容が合理的であれば民法上の私文書として法的拘束力を持つ
- 入社誓約書・秘密保持誓約書・退職誓約書・反社排除誓約書など目的に応じて種類を使い分け、6項目(表題・宛名・誓約文言・誓約内容・日付・署名押印)を必ず含める
- 競業避止条項は期間・範囲・補償を合理的に設定しないと無効リスクがあり、電子誓約書は電帳法の保存要件への対応が必須(2024年1月完全義務化)
誓約書は「作成して終わり」ではなく、保管・更新・電子化対応まで含めたライフサイクル全体の管理が求められます。特に従業員数の増加・DX推進・テレワーク拡大により、書類管理の体制整備は経営上の優先課題となっています。反社チェック・採用管理・労務代行などの専門サービスを活用して、誓約書を含む法務・労務フロー全体を標準化することが、企業の持続的な成長を支える基盤となります。
誓約書・労務書類の管理をまとめて見直したい方へ
参考文献
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」2023年改正版、https://laws.e-gov.go.jp/ 2026年6月25日取得
- 経済産業省「各種契約書等の参考例(令和6年2月改訂版)」2024年2月、https://www.meti.go.jp/ 2026年6月25日取得
- 経済産業省「営業秘密管理指針(全訂版)」2019年1月、https://www.meti.go.jp/ 2026年6月25日取得
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」2024年1月更新、https://www.nta.go.jp/ 2026年6月25日取得
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」2023年3月改訂、https://www.ppc.go.jp/ 2026年6月25日取得
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」2022年9月改訂、https://www.ppc.go.jp/ 2026年6月25日取得
- e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律施行規則」、https://laws.e-gov.go.jp/ 2026年6月25日取得
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