執行役員とは?取締役・執行役との違いや法務・税務の確認事項を解説
Check!
- 執行役員は会社法上の役員ではないと分かる
- 取締役・執行役・部長との上下関係を比べられる
- 契約形態別の報酬・退職金の確認事項が分かる
執行役員とは、取締役会などが決めた経営方針にもとづいて、担当部門の業務を責任者として執行する役職です。会社法上の役員(取締役・会計参与・監査役)ではなく、会社が任意に置く社内の役職で、多くの会社では会社と雇用契約を結ぶ従業員の最上位ポストに当たります。「役員」という名前がついていても、執行役や取締役とは法律上の立場も責任の重さも異なります。この記事では、定義と読み方、執行役・取締役・部長との違い、年収の目安、制度が広がった背景、導入のメリット・デメリットと手順、契約形態・報酬・税務の確認事項までを整理します。
執行役員まわりの悩みから、読む場所を診断
Q1. いま、執行役員について何を進めていますか?
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執行役員を置いたあと、契約・任期・報酬の管理をどう整えるか
執行役員を置いたら、雇用型か委任型かの契約区分、任期、報酬、評価の履歴を、ほかの従業員と同じ人事データの中で管理するのが基本です。契約や報酬が執行役員ごとに異なるため、別々のファイルで持つと、更新漏れや引き継ぎ時の情報の抜けが起きやすくなります。
執行役員は会社法に定めのない役職なので、契約も報酬も社内規程で決まります(定義は次の見出しで解説します)。その分、人事担当者が把握する情報が増えます。管理のしかたは人事システムの得意分野で変わるため、3つのサービスを役割の違いで並べました。
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出典:kaonavi
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執行役員とは|基本的な定義
執行役員とは、取締役会などが決めた方針にしたがい、営業・開発・管理などの担当部門の業務を責任者として執行する、会社が任意に置く役職です。会社法上の役員ではありません。英語では「Executive Officer」や「Operating Officer」と表記されることがあります。
会社法上の「役員」ではない
会社法は、株主総会で選任する役員を「取締役、会計参与及び監査役」と定めています(会社法第329条第1項)。執行役員はこのどれにも当たらず、会社法には執行役員に関する規定そのものがありません。そのため、置くかどうか、何人置くか、どんな権限を持たせるかは、会社が社内規程で自由に決められます。登記の対象にもなりません。
多くは雇用契約を結ぶ従業員
執行役員の多くは、会社と雇用契約を結ぶ従業員です(雇用型)。この場合は労働基準法や雇用保険などの労働関係法令が適用され、部長職の上位にあたる「従業員のトップ」という位置づけになります。一方で、取締役と同じように委任契約を結ぶ会社もあります(委任型)。どちらの形をとるかで、報酬の決め方や社会保険・税務の扱いが変わる点は、後半の「法務・税務上の確認事項」で詳しく説明します。
執行役員の読み方・呼び方と肩書きの種類
執行役員の読み方は「しっこうやくいん」です。呼ぶときは、名刺や社内規程に書かれた肩書きのとおりに、氏名のあとに「執行役員」とつけて呼ぶのが基本です。
「上席」「常務」などの階層を設ける会社もある
執行役員の肩書きは法律で決まっていないため、会社ごとに自由に設計できます。「上席執行役員」「常務執行役員」「専務執行役員」のように階層を設ける会社もあれば、担当部門の名前を前につける会社もあります。同じ名称でも会社によって権限や位置づけが違うので、他社の肩書きと単純に比べず、自社の社内規程で権限の範囲を確認します。似た名称の肩書きを使う会社でも考え方は同じで、名称ではなく規程の内容で役割と契約形態を判断します。
「役員」と略して呼ぶときの注意
口頭では「役員」と略して呼ぶことがありますが、契約書や議事録、社内規程などの書類では「執行役員」と正式に書きます。「役員」とだけ書くと、会社法上の役員(取締役・会計参与・監査役)と混同されるおそれがあり、「執行役」とも別物だからです。名刺や社外向けの案内でも、肩書きの表記は社内規程どおりにそろえておくと誤解を防げます。
執行役員の仕事内容と、登用・評価で見るポイント
執行役員の仕事は、取締役会が決めた経営方針を、担当する部門や事業で実行に移すことです。経営の意思決定は取締役会、現場での執行は執行役員と、役割を分けるために置かれます。
担当部門の実行責任者と、経営と現場の橋渡し
執行役員は、担当する事業や部門の実行計画を立て、人員・予算・進み具合を管理して、結果に責任を持ちます。あわせて、取締役会で決まった方針を現場が動ける具体策に置き換え、現場の状況を経営に伝える橋渡しの役割も担います。仕事の範囲は会社ごとに異なるため、権限と責任の範囲は執行役員規程で具体的に決めておくことが大切です。
登用・評価では「権限」「基準」「データ」をそろえる
執行役員を登用するときは、どこまでの権限と責任を任せるのかを先に決め、その範囲に合う経歴やスキルの人材を探します。登用後は、任せた範囲に対する目標と評価の基準を決めておかないと、評価が肩書きの印象に左右されます。そのためには、候補者のスキルや過去の評価、担当してきた業務の記録が、人事データとしてそろっていることが前提になります。
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株式会社プラスアルファ・コンサルティング
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出典:タレントパレット
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執行役員と執行役の違い(会社法上の機関か否か)
執行役員と執行役の違いは、会社法上の機関かどうかです。執行役は指名委員会等設置会社だけに置かれ、取締役会の決議で選任されて業務を執行します(会社法第402条、第418条)。法律上の責任も明確に定められているため、社内の役職である執行役員とは立場が大きく異なります。
| 項目 | 執行役員 | 執行役 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 会社法に規定なし(社内規程で定める任意の役職) | 会社法に規定された機関 |
| 置ける会社 | どの会社でも置ける | 指名委員会等設置会社のみ(必ず1人以上置く) |
| 選任 | 社内規程にもとづき取締役会などが任命 | 取締役会の決議で選任 |
| 会社との契約 | 雇用契約が多い(委任契約の場合もある) | 委任関係 |
| 任期 | 社内規程で自由に決める | 原則1年 |
| 登記 | 不要 | 必要 |
| 会社や第三者への責任 | 雇用型なら従業員としての責任が中心 | 役員等として任務懈怠責任を負い、株主代表訴訟の対象にもなる |
つまり、「執行役」は法律で権限と責任が決まった役員で、「執行役員」は会社が独自に設けた肩書きです。名刺上は似ていても、選任手続きや登記の要否が違うため、社内規程や組織図を作るときは混同しないようにしましょう。
執行役と執行役員は、どちらが偉いのか
法律上の権限と責任の重さで比べるなら、会社法上の機関である執行役のほうが重い立場です。一方で、執行役が置かれるのは指名委員会等設置会社に限られるため、多くの会社では執行役自体が存在せず、社内の序列として「執行役員が上か執行役が上か」を比べる場面はほとんどありません。両者は上下ではなく、法律上の根拠が違う別の役職と考えるのが正確です。
執行役員と取締役の違い(決定権の有無)
取締役と執行役員のいちばん大きな違いは、会社の経営方針を決める権限があるかどうかです。取締役会設置会社では、重要な業務執行の決定は取締役会が行い、取締役はその一員として意思決定と、ほかの取締役の職務執行の監督を担います。執行役員は、その決定にしたがって現場の業務を進める立場で、取締役会での議決権はありません。
| 項目 | 執行役員 | 取締役 |
|---|---|---|
| 役割 | 決まった方針にもとづく業務の執行 | 経営の意思決定と業務執行の監督 |
| 選任 | 取締役会などが任命 | 株主総会の決議で選任(会社法第329条) |
| 会社との契約 | 雇用契約が多い | 委任関係(会社法第330条) |
| 任期 | 社内規程で決める(1年とする会社が多い) | 原則2年(非公開会社は定款で最長10年まで伸長可) |
| 報酬の決め方 | 雇用型なら給与規程などで決める | 定款または株主総会の決議で定める(会社法第361条) |
| 労働法の適用 | 雇用型なら適用される | 原則として適用されない |
| 登記 | 不要 | 必要 |
取締役が執行役員を兼ねるケース
実務では「取締役 兼 執行役員」のように、取締役が執行役員を兼ねる会社も少なくありません。この場合、取締役としての意思決定の役割と、執行役員としての担当部門の責任者の役割を1人が担います。取締役としての報酬と執行役員としての報酬をどう区分するか、兼務を解いたときにどちらの立場が残るかを、あらかじめ社内規程で決めておくと混乱を防げます。
執行役員から取締役への昇格は「退任」と「新任」
執行役員が取締役に就任するのは、社内の昇進のように見えても、法的には雇用関係から委任関係への切り替えです。株主総会での選任や登記が必要になり、雇用型の執行役員であれば従業員としての退職の扱いも整理する必要があります。
執行役員と部長・役員はどちらが上か|序列の目安
多くの会社での序列は、会社法上の役員(取締役など)、執行役員、部長の順です。ただし法律に序列の定めはなく、どこに置くかは会社が社内規程で決めます。
| 役職 | 一般的な位置づけ | 法律上の扱い |
|---|---|---|
| 取締役(会社法上の役員) | 経営の意思決定と監督を担い、会社の方針を決める立場 | 会社法に規定された役員。株主総会で選任し、登記が必要 |
| 執行役員 | 決まった方針を担当部門で実行する責任者。従業員の最上位に置く会社が多い | 会社法に規定なし。社内規程で置く役職 |
| 部長 | 1つの部署を管理する責任者 | 会社法に規定なし。社内の職位 |
執行役員と部長の違いは、責任を負う範囲です。部長は1つの部署を管理するのに対し、執行役員は複数の部署や事業を含む担当領域の実行責任者として置かれることが多く、そのため部長より上位に位置づける会社が一般的です。ただし本部長や事業部長との関係は会社ごとに異なるので、肩書きの並びだけで判断せず、社内規程の権限の定めを確認してください。
また、「執行役員と役員はどちらが上か」と聞かれたときの答えは、役員(取締役など)です。執行役員は名前に「役員」とつきますが、会社の方針を決める立場ではなく、決まった方針を実行する立場だからです。「どれくらい偉いのか」を一言でいえば、従業員としては最上位クラスですが、経営の意思決定には加わらない立場です。「社長」と「代表取締役」の関係については、社長とは?代表取締役との違い、権限、「代表取締役社長」の使い方と法務の注意点で整理しています。
執行役員制度導入の背景(1997年ソニーの事例)
日本で執行役員制度が広がるきっかけになったのは、1997年にソニーが導入した事例だといわれています。当時の日本の大企業は、社内の昇進の延長として取締役が増え、数十人規模の取締役会も珍しくありませんでした。人数が多いと取締役会での議論が形式的になり、意思決定のスピードも落ちます。
ソニーは取締役の人数を大きく減らし、取締役会は経営の意思決定と監督に集中させる一方で、業務の執行は新たに設けた執行役員に任せる形をとりました。「決める人」と「実行する人」を分けるこの考え方は、アメリカ型のコーポレート・ガバナンスを参考にしたものです。その後、多くの上場企業が同様の制度を取り入れ、執行役員は日本企業に定着していきました。
法律の面でも、2002年の商法改正で委員会等設置会社と「執行役」の制度が設けられ、現在の会社法では指名委員会等設置会社の執行役として引き継がれています。ただし、指名委員会等設置会社を選ぶ会社は一部にとどまり、多くの会社は会社法上の機関ではない執行役員制度で、経営と執行の分離を進めています。
導入のメリット・デメリット
執行役員制度のメリットは、取締役会が意思決定に集中でき、担当部門の責任者が明確になることです。デメリットは、権限や責任の範囲があいまいになりやすいことです。会社法の手続きなしに社内規程だけで導入できる手軽さがある反面、設計を誤ると形だけの制度になりがちです。主なメリットとデメリットを整理します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 取締役会が意思決定と監督に集中でき、経営判断が速くなる |
| メリット | 担当部門の執行責任者が明確になり、現場の判断もしやすくなる |
| メリット | 株主総会や登記の手続きなしに、社内規程だけで柔軟に登用できる |
| メリット | 従業員にとって取締役の手前の目標ポストになり、次世代の経営人材を育てやすい |
| デメリット | 権限の範囲があいまいだと、取締役と執行役員の責任の所在が分かりにくくなる |
| デメリット | 実質的な権限を与えないまま肩書きだけを増やすと、名ばかりの役職になる |
| デメリット | 雇用型と委任型が混在すると、報酬・社会保険・税務の管理が複雑になる |
中小企業では、取締役の人数がもともと少なく、経営と執行を分ける必要性が大企業ほど高くないこともあります。導入する場合は「誰に、どの範囲の権限と責任を任せるのか」を執行役員規程で具体的に定めることが、制度を形だけにしないためのポイントです。
3サービスの役割を比較表で見る執行役員制度の導入手順と解任
執行役員制度の導入は、制度設計、執行役員規程の作成、取締役会での決議、契約の締結と辞令の交付、社内外への周知の5段階で進めます。株主総会の決議や登記は不要ですが、社内の手続きを踏まずに肩書きだけを与えると、権限や契約の扱いがあいまいになります。なお、この節と次の節の内容は一般的な情報の整理であり、法的な助言ではありません。個別の判断は弁護士などの専門家に確認してください。
取締役会設置会社では「重要な使用人」として扱われることが多い
会社法第362条第4項第3号は、「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」を取締役会が決めるべき事項とし、個々の取締役に任せることはできないと定めています。執行役員は担当部門の責任者として大きな権限を持つことが多いため、一般的にこの「重要な使用人」に当たると考えられています。そのため取締役会設置会社では、執行役員の選任・解任を取締役会の決議で行うのが通常です。決議した内容は議事録に残します(議事録の書き方は議事録フォーマットの基本と書き方|必須項目・テンプレート・取締役会と1on1の例も解説で解説しています)。
導入の基本的な流れ
| 手順 | 主な内容 |
|---|---|
| 1. 制度の設計 | 執行役員を置く目的、人数、担当範囲、取締役との役割分担を決める |
| 2. 執行役員規程の作成 | 権限、任期、契約形態(雇用型・委任型)、報酬、退任時の扱いなどを定める |
| 3. 取締役会での決議 | 制度の導入と執行役員の選任を決議し、議事録に残す |
| 4. 契約の締結・辞令の交付 | 雇用契約の変更または委任契約を締結し、選任の辞令を交付する |
| 5. 社内外への周知 | 組織図や社内通知を更新する(執行役員は登記の対象外) |
任期は規程で決める
執行役員の任期は会社法に定めがなく、執行役員規程で自由に決められます。取締役の任期に合わせて1年とする会社が多く見られ、期間満了のたびに再任するかどうかを取締役会で決めます。雇用型の場合、任期が終わっても従業員としての雇用が続くかどうかは、規程や契約で決めておかないと、退任後の処遇をめぐるトラブルの原因になります。任期の満了日と再任の判断時期は、見落とさないよう管理しておきます。
退任・解任するときの注意点
執行役員を任期途中で解く場合も、重要な使用人に当たるなら取締役会の決議が必要です。そのうえで、契約形態によって扱いが変わります。雇用型の場合、執行役員の職を解くことと従業員として解雇することは別の問題で、職を解いた後も従業員として雇用が続くのが一般的です。解雇まで行う場合は労働契約法などの解雇規制を踏まえる必要があります。委任型の場合は、執行役員規程や委任契約で定めた任期満了・解除の条件にしたがって終了します。いずれの場合も、トラブルを避けるために退任時の処遇を規程で明確にしておくことが大切です。なお、個別の判断は弁護士などの専門家に確認してください。
執行役員の年収の目安と報酬の決まり方
執行役員の年収に決まった相場はなく、会社の規模や契約形態、報酬規程によって異なります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査の役職別の賃金には、部長級・課長級・係長級・非役職者の区分はあっても執行役員の区分はないため、近い職位の部長級の水準を目安にします。
公的統計で見る部長級の賃金(年換算の計算例)
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」では、令和7年(2025年)6月分の所定内給与額(時間外手当などを除く月額)が、役職別に次のとおり示されています。右の列は、月額を12倍した年換算の計算例で、賞与は含みません。
| 役職 | 月額(所定内給与額・男女計) | 12か月分の年換算(賞与を含まない計算例) |
|---|---|---|
| 部長級 | 635.8千円 | 約763万円 |
| 課長級 | 529.2千円 | 約635万円 |
| 係長級 | 399.2千円 | 約479万円 |
| 非役職者 | 310.5千円 | 約373万円 |
この数値は、常用労働者10人以上の民営事業所の一般労働者のうち、雇用期間の定めのない人の平均で、執行役員の年収そのものではありません。執行役員が部長級より上の水準になるかどうかも、会社の規程や役割によって決まるため、統計から断定はできません。自社で報酬を決めるときは、この水準を土台にしつつ、担当する事業の規模と責任の重さ、会社の業績との連動のさせ方を規程で明確にします。
報酬の決まり方は契約形態で変わる
雇用型の執行役員は、一般の従業員と同じく給与規程にもとづいて給与や賞与が支払われるのが基本です。委任型の場合は、契約で定めた報酬として支払われます。取締役が執行役員を兼ねる場合は、取締役としての報酬が定款または株主総会の決議で決まる点に注意が必要です(会社法第361条)。法人税や退職金の扱いは、次の「法務・税務上の確認事項」で説明します。
報酬の改定履歴や評価の記録は、人事の担当者や経営陣だけが見る情報と、全社で共有してよい情報が混在します。紙やExcelで管理していると、見られる人を分けるために置き場所を変えたり、ファイルにパスワードをかけたりする手間が増えがちです。見られる人を権限で分けながら、評価と報酬の履歴を従業員の人事データと一緒に管理したい場合には、前出のカオナビのように、アクセス管理で情報ごとの閲覧範囲を設定できるサービスもあります。
法務・税務上の確認事項(契約形態・報酬の扱い)
執行役員制度を導入・運用するときに確認しておきたいのは、契約形態(雇用型か委任型か)、報酬と法人税上の扱い、従業員から就任するときの退職金の3点です。この節は一般的な情報の整理であり、法的・税務上の助言ではありません。個別の判断は弁護士や税理士などの専門家に確認してください。
雇用型と委任型の違いを把握する
| 項目 | 雇用型執行役員 | 委任型執行役員 |
|---|---|---|
| 契約 | 雇用契約(就業規則が適用される) | 委任契約(個別の契約内容で定める) |
| 労働基準法 | 適用される | 原則として適用されない(実態によっては労働者と判断される場合もある) |
| 雇用保険 | 原則として加入対象 | 原則として対象外 |
| 報酬 | 給与として支払う | 契約で定めた報酬として支払う |
| 解任・退任 | 解雇規制の対象になる | 契約の定めにより任期満了や解除で終了 |
委任型にしても、実際には社長の指揮命令を受けて働き、勤務時間も管理されているといった実態があれば、労働者として扱われる可能性があります。契約書の名前だけでなく、働き方の実態と合っているかを確認しておきましょう。
報酬と法人税の扱い
雇用型執行役員に支払う給与は、原則として一般の従業員と同じく損金に算入できます。ただし法人税法では、会社法上の役員でなくても「法人の経営に従事している者」は役員とみなされる場合があります。執行役員が実質的に経営の重要事項を決めている場合は、役員給与として定期同額給与などのルールが適用される可能性があるため、職務内容の実態について税理士などの専門家に確認しておくと安心です。
従業員から就任するときの退職金
従業員が執行役員に就任する際、それまでの勤続期間分の退職金を支払うケースがあります。国税庁の所得税基本通達30-2の2では、執行役員との契約が委任契約またはこれに類するもので、執行役員を退任した後に従業員として再雇用されることが保障されていないなどの条件を満たす場合に、この一時金を退職所得として扱えるとしています。雇用型のまま就任する場合は、原則として従業員としての退職には当たらない点に注意が必要です。
このように、執行役員は契約形態によって適用されるルールが変わり、就任前後の経緯も含めて記録しておく情報が増えます。雇用型・委任型の区分、報酬の改定履歴、就任時の退職金の支給状況などは、ほかの従業員の人事データと同じ場所で管理しておくと、担当者が替わっても引き継ぎやすくなります。
契約区分や報酬の変更履歴を、従業員の情報と同じ場所に時系列で残したい場合の一例が、ジンジャー人事労務です。jinjer株式会社が提供するクラウド型の人事労務システムで、商品ページによると、1つのデータベースで人事情報を一元管理でき、従業員に関する情報は自動で時系列にまとめられて、いつでも確認できます。注意点として、申し込みから運用開始までに最低2-3か月程度かかるため、導入の時期に余裕を持って検討する必要があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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出典:ジンジャー人事労務
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導入事例では、株式会社インフォファームが、勤怠管理・給与計算・ワークフローなどのシステムが分かれ、人事異動のたびに各マスタを手作業で更新していた状態から、5つ以上に分かれていた人事マスタをジンジャーで1つに統合し、複数のシステムへ手入力する手間を減らしたと紹介されています(出典:ジンジャー公式サイトの導入事例)。
執行役員の契約・報酬の管理、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
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よくある質問(FAQ)
Q1. 執行役員は会社法上の役員ですか?
A. いいえ。会社法上の役員は取締役・会計参与・監査役で、執行役員は会社法に定めのない任意の役職です。多くの会社では、雇用契約を結ぶ従業員の最上位ポストとして位置づけられています。
Q2. 執行役員と執行役の違いは何ですか?
A. 執行役は、指名委員会等設置会社に置かれる会社法上の機関で、取締役会の決議で選任され、登記も必要です。執行役員は社内規程で設ける役職で、会社法上の機関ではなく、登記も不要です。どちらが上かではなく、法律上の根拠が違う別の役職です。
Q3. 執行役員と取締役・部長はどちらが上ですか?
A. 多くの会社では、取締役、執行役員、部長の順です。取締役は取締役会の一員として経営の意思決定と監督を担い、執行役員はその決定にしたがって担当部門の業務を執行します。ただし法律に序列の定めはなく、社内規程で決まります。
Q4. 執行役員の年収はいくらですか?
A. 決まった相場はなく、会社の規模や契約形態、報酬規程で異なります。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査の概況では、部長級の所定内給与額は月635.8千円で、12か月分に換算すると約763万円です(賞与を含まない計算例で、執行役員の年収そのものではありません)。
Q5. 執行役員の任期は決まっていますか?
A. 会社法に定めがないため、会社が社内規程で自由に決められます。取締役の任期に合わせて1年とする会社が多く見られます。
Q6. 執行役員の契約や報酬はどのように管理すればよいですか?
A. 雇用型・委任型の区分、任期、報酬の改定履歴、就任時の退職金の支給状況などを、ほかの従業員の人事データと同じ場所でまとめて管理するのがおすすめです。人事管理システムを使うと、契約情報や評価の履歴を一元化でき、更新漏れや引き継ぎ時の情報の抜けを防ぎやすくなります。
まとめ
執行役員は、経営陣が決めた方針にもとづいて業務を執行する役職で、会社法上の役員ではありません。押さえておきたいポイントは次の4つです。
- 執行役員は会社法に定めのない任意の役職で、指名委員会等設置会社に置かれる会社法上の機関「執行役」とは別物である。
- 取締役は経営の意思決定と監督を担い、執行役員はその決定にもとづいて業務を執行する。序列は取締役、執行役員、部長の順とする会社が多いが、社内規程で決まる。
- 雇用型か委任型かで、労働法の適用、報酬、退職金の税務の扱いが変わるため、導入時に社内規程と契約内容を整理しておく。
- 契約形態・任期・報酬の履歴は、ほかの従業員の人事データと同じ場所で管理する。管理方法を見直すなら、人事管理システムの資料を取り寄せ、自社に合う機能を比べて検討する。
執行役員制度は、導入して終わりではなく、権限の範囲や任期、報酬の記録を最新に保つことで、制度が形だけになるのを防げます。
参考文献
- e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 国税庁「所得税基本通達30-2の2《使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金》の取扱いについて(情報)」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/071205/00.htm
- 国税庁「No.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5203.htm
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html