甲乙とは?契約書での意味・読み方・どちらが自社かの見分け方

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  • 甲乙の意味と読み方、法律上の決まりや優劣がないことがわかる
  • 届いた契約書で自社が甲か乙かを確かめる手順と、契約の種類ごとの使い分けがわかる
  • 甲乙の取り違えを防ぐ確認方法と、契約書で確認すべき項目がわかる

甲乙とは、契約書で当事者を区別するために使う呼び名で、「甲」が1人目、「乙」が2人目の当事者を指します。法律で決められた表記ではなく、甲と乙のどちらが上かという優劣もありません。契約書の冒頭で「株式会社〇〇(以下「甲」という)」と定義した当事者が、以降の条文では「甲」と書かれます。自社が甲か乙かを取り違えると、支払う側と受け取る側が逆になるなど契約の中身が変わってしまうため、意味だけでなく、どちらが自社かの見分け方と確認方法まで押さえておくことが大切です。本記事では、読み方と由来、契約の種類ごとの使い分け、条文での書き方、甲乙以外の書き方、取り違えを防ぐ方法を順に解説します。

甲乙の「どちらが自社か」「確認はどうするか」かんたん診断

Q1. 甲乙について、いま一番知りたいことは?

目次

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  1. 甲乙の取り違えを防ぐ契約書の確認方法と、外部サービスの使いどころ
  2. 甲乙とは|契約書での意味・読み方・由来
  3. 甲乙の使い分けルール|自社は甲と乙のどちらか
  4. 甲乙の書き方と条文での注意点
  5. 甲乙を使うメリット・デメリットと、甲乙以外の書き方
  6. 甲乙の記載でよくある失敗パターン
  7. 甲乙以外に契約書で確認すべきポイント
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ
  10. 参考文献

甲乙の取り違えを防ぐ契約書の確認方法と、外部サービスの使いどころ

甲乙の取り違えは、甲乙を実名に戻して読み直す確認と、条項の内容まで見る契約書レビューを組み合わせると防ぎやすくなります。

甲乙は1文字の記号なので、条文の中で入れ替わっていても見た目ではほとんど気づけません。「甲は乙に対し、委託料を支払う」の甲と乙が逆になれば、お金を払う側と受け取る側が入れ替わります。秘密保持や損害賠償の条項で同じことが起きれば、本来守られるはずの自社が義務を負う側に回ってしまいます。甲乙の誤りは表記の問題にとどまらず、契約の中身そのものを変えてしまう点に注意が必要です。なお、本記事は一般的な情報を紹介するもので、個別の契約に対する法的助言ではありません。重要な契約や判断に迷う条項は、弁護士などの専門家に相談してください。

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甲乙とは|契約書での意味・読み方・由来

甲乙(こうおつ)とは、契約書で当事者を区別するために使う略称で、契約の最初に定義した当事者が甲、次の当事者が乙になります。

契約書の冒頭で「〇〇株式会社(以下「甲」という)」と一度定めておけば、以降の条文では正式な会社名を毎回書かずに「甲」の1文字で済みます。契約当事者の名前を記号に置き換えることで、条文を短く、読みやすくするための工夫です。

十干の読み方|甲乙丙丁戊己庚辛壬癸

甲乙は、古代中国で日付や順序を表すのに使われた「十干(じっかん)」に由来します。十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10文字で、順に「こう・おつ・へい・てい・ぼ・き・こう・しん・じん・き」と読みます。契約書で使うのは多くの場合、先頭の甲と乙で、当事者が3者以上のときに丙、丁と続きます。

順番表記読み方契約書での使われ方
1甲こう1人目の当事者
2乙おつ2人目の当事者
3丙へい3人目の当事者(三者契約など)
4丁てい4人目の当事者
5戊ぼ5人目の当事者(実務ではまれ)
6-10己・庚・辛・壬・癸き・こう・しん・じん・き契約書の当事者としてはほとんど使わず、順序や区分を表す言葉として知られる

「甲乙つけがたい」という言い回しも、この順序の考え方から来ています。10文字をすべて覚える必要はありませんが、丙と丁の読み方(へい・てい)は、三者契約を読むときに必要になります。

契約書以外でも使われる甲・乙の区分

甲や乙は契約書以外の場面でも、順序や区分を表す記号として使われています。代表的なのは、給与から源泉所得税を差し引くときに使う源泉徴収税額表と、不動産の登記記録です。

場面甲乙補足
源泉徴収税額表(国税庁)甲欄:給与所得者の扶養控除等申告書を提出している人に支払う給与に使う乙欄:扶養控除等申告書を提出していない人に支払う給与に使う丙欄は日雇賃金に使う(日額表)
不動産の登記記録(法務省)甲区:所有権に関する事項が記録される乙区:抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記録される土地・建物ごとの登記記録の区分

これらは「欄」や「区」を区別する名前で、契約書の甲乙のように当事者の名前を置き換えるものではありません。同じ漢字でも、使われる場面ごとに意味が決まっている点を押さえておくと混乱しません。出典は、国税庁のNo.2511 税額表の種類と使い方と、法務省の不動産登記のABCです。

甲乙の使い方に法律上の決まりはない

甲乙の表記は、法律で定められたものではありません。民法では、契約は申込みに対して相手方が承諾したときに成立するとされ、原則として書面の作成も必須ではないとされています(民法第522条)。契約書をどんな書式で書くか、当事者をどう呼ぶかは当事者の自由で、甲乙を使うのは日本の商慣習として定着しているからにすぎません。甲乙を使わず、会社名の略称や「売主」「買主」で書いても契約の効力は変わりません。

甲と乙に優劣はない

「甲乙つけがたい」という言葉から、甲のほうが格上だと感じる人もいます。実際に、発注者や立場の強い側を甲にする慣習は根強く、取引先に配慮して相手方を甲にする会社もあります。ただし、契約上の権利や義務は条文の中身で決まるもので、甲か乙かという記号そのものに優劣はありません。乙だから不利になる、甲だから有利になるということはないため、どちらになるかよりも、条文で自社が何を約束しているかを確認することのほうがはるかに重要です。

甲乙の使い分けルール|自社は甲と乙のどちらか

どちらを甲にするかに法律上の決まりはなく、業務委託なら委託者、雇用契約なら会社を甲とするなど、契約の種類ごとの慣習に沿って決めるのが一般的です。

実務では契約の種類ごとにある程度の慣習があり、それに沿っておくと相手方にも読みやすい契約書になります。代表的な契約での一般的な割り当ては次のとおりです。

契約の種類甲(一般的な例)乙(一般的な例)
業務委託契約委託者(仕事を頼む側)受託者(仕事を受ける側)
雇用契約・労働条件通知書会社(使用者)従業員(労働者)
売買契約売主または買主(作成者側が多い)相手方
賃貸借契約貸主借主
秘密保持契約情報を開示する側情報を受け取る側
請負契約注文者(発注者)請負人(受注者)

この表はあくまで一般的な傾向で、業界や会社によって逆になることもあります。秘密保持契約のように双方が情報を開示し合う場合は、どちらを甲にしても構いません。

決め方の基準は大きく4つ

慣習が当てはまらない契約や、自社で新しくひな形を作る場合は、次のいずれかの基準で決めるのが一般的です。

  • 契約上の立場で決める:お金を払う側、仕事を頼む側、権利を与える側を甲にする。売主と買主、貸主と借主のように、民法上の役割名を手がかりにすると迷いにくくなります。
  • 契約書を作った側で決める:ドラフトを作成した会社を甲にする方法です。自社のひな形では自社を常に甲に固定しておくと、条文を読むたびに「自社はどちらか」を確認する手間が減ります。
  • 取引上の関係で決める:発注者や大口の取引先など、取引を主導する側を甲にする慣習です。相手への敬意を示す意味で使われることもあります。
  • 相手方のひな形に合わせる:相手から契約書の案が届いた場合は、その割り当てのまま進めるのが通常です。自社の都合で甲乙を入れ替えると、条文全体の主語を書き換える必要が出て、誤りの原因になります。

判断に迷った場合は、相手方を甲にしておくと角が立ちにくいとされています。大切なのは、社内でどの基準を使うかを決め、契約書ごとにばらばらにならないようにすることです。担当者によって自社が甲だったり乙だったりすると、過去の契約書を見返すときや、更新時に条文を比べるときに読み違えが起きやすくなります。

届いた契約書で、自社が甲か乙かを確かめる手順

取引先から契約書の案が届いたときは、読み始める前に、自社が甲と乙のどちらなのかを次の順で確かめます。所要時間は数分ほどで、押印前の最初の確認として習慣にしておくと取り違えを防げます。

  1. 前文(冒頭)で、自社の正式名称の直後にある括弧書きを見る。「株式会社〇〇(以下「甲」という)」とあれば、自社は甲です。
  2. 署名欄(記名押印欄)で、自社の会社名・住所・代表者名が「甲」と「乙」のどちらの欄に書かれているかを見て、前文と一致しているか照合する。
  3. 第1条や報酬・支払いの条文で、自社がすること(支払う、納品する、情報を開示するなど)が、自社の甲乙と合った書き方になっているかを読む。
  4. 食い違いがあれば、前文と署名欄のどちらかが誤っている可能性があるため、押印せず、相手方に確認して修正してもらう。

この手順は、契約の内容に踏み込む前の最小限の確認です。条項の有利不利まで見る場合は、後半で紹介する確認のポイントや、専門家への相談とあわせて進めます。

三者以上の契約では丙・丁を使う

元請け、下請け、発注者が関わる三者契約や、共同開発契約のように当事者が3人以上になる場合は、甲・乙に続けて丙、丁と順に割り当てます。前文は、たとえば次のように書きます。

株式会社〇〇(以下「甲」という)、株式会社□□(以下「乙」という)及び株式会社◇◇(以下「丙」という)は、次のとおり契約を締結する。

ただし、当事者が増えるほど「丙は甲に対し、乙の債務を保証する」のように主語と目的語が入り組み、読み違えが起きやすくなります。三者以上の契約では、甲乙丙を使わず「発注者」「元請事業者」「下請事業者」のように役割名で書くほうが安全な場合も多くあります。

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甲乙の書き方と条文での注意点

甲乙は、契約書の前文で「以下「甲」という」と正式名称とあわせて一度だけ定義し、署名欄の当事者と一致させるのが基本の書き方です。

業務委託契約書

株式会社〇〇(以下「甲」という)と株式会社□□(以下「乙」という)は、甲が乙に委託する業務について、次のとおり業務委託契約(以下「本契約」という)を締結する。

第1条(委託業務)甲は乙に対し、別紙に定める業務(以下「本業務」という)を委託し、乙はこれを受託する。

この前文で甲乙を一度定義すれば、以降の条文は甲と乙だけで書けます。書くときに押さえておきたい注意点は次の5つです。

定義は前文で一度だけ、正式名称で行う

甲乙の定義には、登記上の正式な商号を使います。「(株)」のような省略や、通称、ブランド名で書くと、どの法人が当事者なのかがあいまいになります。個人事業主や個人が当事者の場合は、氏名に加えて屋号や住所を添えると特定しやすくなります。

署名欄の当事者と甲乙を一致させる

契約書の末尾の署名欄(記名押印欄)には、「甲 住所・会社名・代表者名」「乙 住所・会社名・代表者名」と記載します。前文で甲と定義した会社が、署名欄では乙の欄に書かれているという食い違いは、ひな形を流用したときに起きやすい典型的なミスです。前文と署名欄を並べて見比べる習慣をつけておきましょう。

一つの条文の中で主語を切り替えない

「甲は、乙が本業務を完了したときは、乙に対し報酬を支払うものとし、乙は請求書を発行する」のように、一文の中で甲と乙の主語が何度も入れ替わると、誰が何をするのかが読み取りにくくなります。主語が変わるところで文を区切り、「甲は報酬を支払う。乙は請求書を発行する。」と分けて書くと誤読を防げます。

「甲及び乙」「甲又は乙」を使い分ける

双方が同じ義務を負う場合は「甲及び乙は」、どちらか一方に当てはまる場合は「甲又は乙は」と書きます。たとえば秘密保持義務を「甲は」とだけ書くと、乙は義務を負わないと読めてしまいます。双方が守るべきルールなのか、片方だけなのかを、条文ごとに意識して書き分けることが大切です。

表記のゆれをなくす

途中から「甲社」「当社」「発注者」などの別の呼び方が混ざると、同じ当事者を指しているのか判断できなくなります。前文で甲と定義したら、契約書の最後まで甲で統一します。別紙や覚書を付ける場合も、本体と同じ甲乙の割り当てを使います。

ここまでの確認は、どれも地道な作業で、担当者の目視と記憶だけで回している会社も少なくありません。自社の運用がどの程度当てはまるか、次のセルフチェックで確かめてみてください。

契約書の甲乙の確認、いまのやり方で大丈夫?セルフチェック

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甲乙を使うメリット・デメリットと、甲乙以外の書き方

甲乙は条文を短くできる一方、専門家以外には分かりにくく取り違えも起きやすいため、役割名や略称で書く方法や、重要な条項だけ役割を併記する方法もあります。

主なメリットとデメリットを整理すると次のとおりです。

観点メリットデメリット
文章の長さ主語が1文字で済み、条文全体が短くなる記号なので、誰のことかを毎回頭の中で変換する必要がある
ひな形の再利用前文の会社名を差し替えるだけで別の取引先に使える流用時に割り当てを確認しないと、甲乙が逆のまま使われる
読み手契約書に慣れた人には見慣れた形式で読みやすい契約に不慣れな人や個人には分かりにくい
ミスの起きやすさ表記が統一されていれば検索や置換がしやすい1文字違いで意味が逆転し、見た目で気づきにくい

デメリットが気になる場合は、甲乙以外の呼び方を使う方法があります。よく使われるのは次の3つです。

  • 役割名で書く:「売主」「買主」「委託者」「受託者」「貸主」「借主」など。条文を読むだけで誰が何をするのかが分かり、取り違えも起きにくくなります。個人や消費者向けの契約、雇用関係の書類では特に読みやすさが増します。
  • 会社名の略称で書く:「株式会社〇〇(以下「〇〇」という)」のように、社名の一部を略称にする方法です。当事者がすぐに分かる一方、ひな形として再利用するときは略称をすべて差し替える必要があります。
  • 英文契約の書き方に倣う:英文契約では甲乙のような記号は使わず、「the Company」「the Contractor」のように役割名や社名で表記するのが一般的です。海外企業との取引では、和文契約でも役割名を使うと翻訳時の混乱を防げます。

どの表記を選んでも契約の効力は変わりません。相手方の慣れや契約の重要度、当事者の数に応じて、読み違いが起きにくい書き方を選ぶのが基本です。

甲乙を併用して、重要な条項だけ取り違えを減らす

社内のひな形がすべて甲乙で、すぐには書き方を変えられない場合は、一般的な条項は甲乙のままにして、損害賠償や秘密保持など重要な条項だけ主語に役割を併記する方法があります。たとえば「秘密情報を受領した当事者(乙)は」のように書けば、主語を取り違えたときに文として不自然になり、気づきやすくなります。契約書全体を一度に書き換えなくても、取り違えの影響が大きい箇所から対策できるのが利点です。

取引先から甲乙の契約書が届いたとき、社内のひな形を見直すとき

取引先から甲乙で書かれた契約書が届いたときは、まず前文で自社の割り当てを確かめ、条文の主語を読み違えないよう確認します。内容が複雑で分かりにくい場合は、「売主・買主」のような役割名に直してもらえないか、相手方に相談する方法もあります。

社内のひな形を見直すときは、全件を一度に変えようとせず、新しく作る契約書や、金額が大きい・リスクが高い契約から役割名に切り替えるのが現実的です。切り替えの目的(取り違えの防止と、読みやすさの向上)を担当部署に説明し、理解を得ながら進めると定着しやすくなります。

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甲乙の記載でよくある失敗パターン

甲乙にまつわる誤りは、契約書を一から作るときよりも、既存のひな形や過去の契約書を流用するときに起きやすい傾向があります。よくある失敗と、その防ぎ方を表にまとめました。

失敗パターン起きること防ぎ方
ひな形の甲乙を入れ替えずに流用した自社が受託者なのに委託者の義務を負う条文のまま締結してしまう流用前に、自社が甲か乙かを最初に書き出してから読み始める
一部の条文だけ甲乙が逆になっている支払義務や損害賠償の責任主体が逆転する甲乙を実名に置き換えて読み直す(下記の逆変換チェック)
前文と署名欄で当事者が食い違う誰が甲なのか確定できず、紛争時に解釈が争われるおそれがある前文と署名欄を並べて会社名・住所・代表者名を照合する
本体と覚書・別紙で割り当てが違う変更後の条件がどちらに適用されるのか分からなくなる覚書の前文で「原契約と同じく甲・乙とする」と明記する
「甲は」とだけ書き、双方の義務にしなかった相手方に秘密保持や報告の義務がないと読める義務の条文ごとに「甲」「乙」「甲及び乙」のどれかを確認する
三者契約で丙の位置づけがあいまい保証や連帯責任の範囲をめぐって解釈が分かれる三者以上の場合は役割名での表記を検討する

甲乙を実名に戻して読む「逆変換チェック」

甲乙の取り違えを見つけるのに効果的なのが、甲乙を実際の会社名に戻して読み直す方法です。文書作成ソフトの置換機能で、コピーした確認用ファイルの「甲」を「当社」、「乙」を相手の社名にすべて置き換えます。すると「当社は〇〇に対し、委託料を支払う」「〇〇は当社の承諾なく再委託してはならない」のように、記号のままでは気づきにくかった主語の誤りが、普通の日本語として違和感のある文になって浮かび上がります。

このとき、「甲乙」という単語や「甲種」のような甲を含む別の言葉まで置換されないよう、置換後の文章もざっと見直してください。確認が終わったら、置換したファイルは破棄し、正式な契約書は元の甲乙表記のまま締結します。特別なツールが不要で、契約書を受け取った直後に5分ほどでできるため、押印前の最終確認として社内の手順に組み込んでおくと効果的です。

ただし、逆変換チェックで分かるのは「主語が正しいか」までです。主語が正しくても、損害賠償の上限がない、自社だけが一方的に解除される、といった条項の不利さは別に確認しなければなりません。契約の件数が多い会社や、重要な取引の契約書を扱う会社は、表記の確認と内容の確認の両方を、目視だけに頼らず行える体制を整えておくと安心です。

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甲乙以外に契約書で確認すべきポイント

甲乙の割り当てと主語を確認したら、次は契約の中身です。契約書の種類によって重点は変わりますが、多くの契約で共通して確認しておきたい項目は次のとおりです。

確認項目見るべきポイント
契約の目的・業務の範囲何をどこまで行うのかが具体的か。別紙や仕様書で範囲が定まっているか
金額と支払条件金額、税の扱い、支払期日、振込手数料をどちらが負担するか
契約期間と更新開始日と終了日、自動更新の有無、更新しない場合の通知期限
解除の条件どんな場合に解除できるか。片方だけに解除権がある不公平な条文になっていないか
損害賠償賠償の範囲や上限が定められているか。自社だけが重い責任を負っていないか
秘密保持・知的財産成果物の権利がどちらに帰属するか。秘密保持義務が双方にかかっているか
再委託相手が第三者に業務を再委託できるか。その場合の責任の所在
管轄裁判所紛争時の裁判所が相手方の所在地に限られていないか
収入印紙請負契約書や不動産売買契約書など、紙で作成する課税文書に該当する場合は、記載金額に応じた収入印紙が必要か

収入印紙については、国税庁が文書の種類と記載金額ごとの税額を一覧表で公表しています。請負契約書は第2号文書、不動産の売買契約書は第1号文書などに区分され、記載された契約金額に応じて税額が変わります。どの文書に当たるか判断に迷う場合は、国税庁の案内や税務署で確認しましょう。金額ごとの早見表は、契約書の収入印紙 金額表で整理しています。押印の効力や割印の押し方は、押印の法的効力とはと契約書の割印とはもあわせてご覧ください。

これらの項目を自社だけで確認するのが難しい場合は、契約書のひな形を整備する、確認用のチェックリストを作って複数人で見る、外部のリーガルチェックを利用するといった方法を組み合わせます。特に、損害賠償や解除のように自社に不利かどうかの判断に法的な知識が必要な条項は、担当者だけでは見極めにくいことがあります。自社が不利な立場になりやすい受託側の契約や、金額の大きい取引の契約では、締結前に弁護士の確認を挟んでおくことが、後のトラブルを防ぐ近道です。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 甲乙とはどういう意味ですか?

A. 契約書で当事者を区別するための略称です。契約の最初に定義した当事者が甲、次の当事者が乙となり、条文では会社名の代わりに「甲」「乙」と書きます。十干という順序を表す漢字に由来し、法律で定められた表記ではありません。

Q2. 契約書の甲と乙は、どちらが自分(自社)ですか?

A. 前文で自社の正式名称の直後に「以下「甲」という」と書かれていれば自社が甲、「乙」と書かれていれば乙です。署名欄の自社の欄とも照合し、食い違うときは押印せずに相手方へ確認しましょう。

Q3. 甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の読み方は?

A. 順に、こう・おつ・へい・てい・ぼ・き・こう・しん・じん・きと読み、十干と呼ばれます。契約書では当事者が3者以上のときに丙、丁と続けますが、当事者が増えると読み違えが起きやすいため、役割名で書く方法も検討します。

Q4. 契約書で甲と乙はどう使い分けますか?どちらが偉いのですか?

A. 優劣はありません。業務委託なら委託者、雇用契約なら会社、賃貸借なら貸主を甲とする例が多いものの、契約上の権利や義務は条文の中身で決まり、甲か乙かで有利不利は決まりません。自社のひな形では社内で基準を統一しておくと読み違いを防げます。

Q5. 甲乙を使わずに契約書を作っても有効ですか?

A. 有効です。甲乙は法律で定められた表記ではなく、商慣習として使われているものです。「売主」「買主」などの役割名や、会社名の略称で当事者を表しても、契約の効力に違いはありません。

Q6. 甲乙の誤りや不利な条項を締結前に確実に見つけるにはどうすればよいですか?

A. 甲乙を実際の会社名に置き換えて読み直す方法で主語の誤りを見つけ、そのうえで支払条件や損害賠償、解除などの条項を確認します。契約書の件数が多い会社や、社内に法務担当者がいない会社では、契約書の内容確認を支援するサービスや弁護士の確認を併用すると、表記と内容の両方を確認しやすくなります。

まとめ

甲乙は、契約書で当事者を区別するための略称で、十干に由来する順序の言葉です。法律上の決まりも、甲と乙の優劣もありません。押さえておきたい行動は次の5つです。

  1. 届いた契約書では、前文と署名欄で、自社が甲か乙かを最初に確かめる
  2. 甲乙の割り当ては契約の種類ごとの慣習や社内基準で決め、自社のひな形では統一する
  3. 前文で正式名称を使って一度だけ定義し、署名欄の当事者と一致させる
  4. 押印前に甲乙を実名に戻して読み直し、主語の取り違えを見つける
  5. 支払条件や損害賠償、解除などの内容まで確認するため、必要に応じて契約書レビューのサービスや弁護士の活用を検討する

甲乙は1文字の記号だからこそ、取り違えたときの影響が大きくなります。表記のルールを社内で決め、内容まで確認する体制を整えておくことが、契約トラブルを防ぐ第一歩です。

参考文献

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