パスワード作成の基本ルールと企業での運用手順
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- 安全なパスワードの作成条件と、避けるべき文字列パターンがわかる
- 企業としてパスワード作成ルールを策定・周知するステップがわかる
- 業界別の実務ポイントと、パスワード管理に関わる法務リスク・失敗例がわかる
「パスワード作成」というキーワードで検索する方の多くは、自分自身または従業員が使うパスワードをどう作ればよいか、企業としてどのようなルールを整備すべきかを知りたいと考えています。単純なパスワードや使い回しは不正アクセス・情報漏洩のリスクを高め、個人の問題にとどまらず企業全体の経営リスクにもつながります。本記事では、安全なパスワードの作り方を5つのステップで解説するとともに、企業としてパスワード作成ルールを策定・周知する進め方、業界別の実務ポイント、関連する法務論点、よくある失敗パターンまでを、情報システム担当者・総務担当者向けに整理して紹介します。
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パスワード作成とは?企業がルールを整備すべき理由
パスワード作成とは、単に自分が覚えやすい文字列を決める作業ではなく、不正アクセスや情報漏洩から自社の情報資産を守るための最初の防衛線を築く行為である。IDとパスワードの組み合わせが第三者に推測・窃取されると、社内システムへの不正ログインや顧客情報の流出につながりかねず、経営リスクの一つとして捉える必要がある。
このパスワードの作り方や運用ルールを従業員一人ひとりの裁量に任せてしまうと、覚えやすさを優先した推測されやすい文字列や、複数サービスでの使い回しが起こりやすくなる。企業として最低限のルールをあらかじめ明文化し、周知・徹底することで、個人の意識差によるセキュリティレベルのばらつきを防ぐことができる。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威」でも、不正アクセスやID・パスワードの窃取・悪用に関連する脅威は組織編・個人編を通じて継続的に取り上げられている。脆弱なパスワード運用は個人だけの問題ではなく、組織全体の経営リスクとして位置づけて対策を検討することが求められる(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」、2026年1月公表、https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html、2026年7月取得)。
安全なパスワードの作り方【5ステップ】と企業ルール策定の進め方
安全なパスワードは、以下の5つのステップを踏むことで個人でも作成できる。企業においては、この作成手順を土台にしながら「パスワード作成ポリシー」として文書化し、全従業員に周知・徹底する運用フローへと発展させることが求められる。
- 十分な長さを確保する:目安として英数字・記号を含め10文字以上とし、桁数を増やすほど推測や総当たり攻撃への耐性が高まる。
- 複数の文字種を組み合わせる:大文字・小文字のアルファベット、数字、記号をランダムに組み合わせ、単純な文字列の繰り返しを避ける。
- 推測されやすい文字列を避ける:氏名・生年月日・会社名や、辞書に載っている単語・その安易な組み合わせなど、第三者に類推されやすい文字列は使用しない。
- サービスごとにパスワードを使い分ける:同一のパスワードを複数のサービスで使い回さない。1つのサービスから漏洩した場合でも、被害範囲を最小限に抑えられる。
- 定期的に見直す:時間経過だけを理由に一律で変更するのではなく、漏洩の疑いがある場合や退職者が出た場合など、見直しが必要なタイミングで運用を更新する。
企業でパスワード作成ポリシーを整備する際は、上記5ステップを社内規程として文書化したうえで、入社時研修や社内ポータルでの周知、定期的な注意喚起を組み合わせて従業員に浸透させることが重要になる。総務省が運営する「国民のためのサイバーセキュリティサイト」(旧称:国民のための情報セキュリティサイト)でも、安全なパスワードの設定・管理方法が解説されており、社内ルール策定の参考にできる(出典:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」、最新版、https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/index.html、2026年7月取得)。
また、経済産業省とIPAが策定する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」では、経営者が認識すべき3原則や、担当幹部に指示すべき重要10項目の中でアクセス制御・認証管理の徹底が挙げられている。パスワード運用ルールの整備は、情報システム部門だけの課題ではなく、経営課題の一環として取り組む必要がある(出典:経済産業省・IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」、2023年3月公表、https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/downloadfiles/guide_v3.0.pdf、2026年7月取得)。
業界別に見るパスワード管理の実務ポイント
パスワード管理の甘さが招くリスクの重さは、業種によって扱う情報の種類や関係法令が異なるため、一様ではない。ここでは特に管理体制の見直しが急務とされる3つの業種を取り上げ、実務上のポイントを整理する。
医療機関:電子カルテ・予約システムのアカウント管理
電子カルテや予約管理システムなど、患者の医療情報(個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当し得る情報)にアクセスするシステムのパスワードが単純だったり、複数職員で共有されていたりすると、安全管理措置の不備を問われかねない。厚生労働省が公表している医療情報システムの安全管理に関するガイドラインでも、アクセス制御やパスワード管理を含む体制整備が求められているとされる。職員ごとにアカウントを分離し、退職・異動時には速やかにパスワードを変更・失効させる運用が望ましい。
士業事務所:クラウド会計・電子契約サービスの管理
弁護士・税理士・社会保険労務士などの士業は、顧客の財務情報や契約内容といった機密性の高い情報を預かる立場にあり、各士業に関する法律上、職務上の守秘義務が定められている。パスワード管理の甘さから顧客データが漏洩すれば、単なる情報漏洩事故にとどまらず守秘義務違反として問題視されるおそれがある。近年はクラウド会計・電子契約サービスの利用が広がっており、これらのログインアカウントについても事務所単位での管理ルール整備が課題となっている。
EC事業者:パスワードの使い回しへの対策
会員の氏名や決済関連情報を保有するEC事業者は、他サービスと同じパスワードを使い回している会員を狙った「パスワードリスト型攻撃」の標的になりやすい。IPA(情報処理推進機構)が毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威」(ipa.go.jp/security/、2026年7月取得)でも、不正ログインにつながる脅威は組織・個人の双方で継続的に取り上げられている。会員側への多要素認証の提供や、不審なログイン試行を検知する体制の整備が対策の柱となる。
なお、パスワード管理ツールの導入コストや多要素認証の導入にかかる期間は、事業者の規模やシステム構成によって幅が大きく、明確な公的統計は限られる。無料プランから利用できるツールもあるため、自社が扱う情報資産の重要度に応じて費用対効果を個別に検討することが推奨される。
パスワード作成・管理に関わる法務論点
パスワードの管理不備は、個人情報保護法における「安全管理措置」の観点からも問題視される可能性がある。個人情報保護委員会が公表する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」では、事業者が保有する個人データへのアクセス制御・認証管理を適切に行うことが安全管理措置の一環として求められているとされる。脆弱なパスワード運用を放置すると、この安全管理措置が不十分と評価されるリスクがある。
また、従業員や第三者が他人のID・パスワードを無断で使用し、社内システムに不正にログインする行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)で規制されている行為に該当し得るとされる。パスワードの共有や使い回しが常態化している環境は、意図せずこうしたリスクを高める要因になり得る。
さらに、経済産業省とIPAが公表する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」では、法的拘束力はないものの、経営者が対応すべき重要10項目の一つとしてアクセス制御・認証の仕組みづくりが位置づけられている。パスワード管理の見直しは、経営課題としての一面もあると言える。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の法解釈・実務対応については、弁護士等の専門家または関連する監督官庁にご確認ください。
パスワード作成でよくある失敗パターン3つ
パスワードの作成・運用でよく見られる失敗を3パターン紹介する。自社の運用と重なる点がないか、チェックしてみてほしい。
- ①導入失敗:過剰な複雑化による「セキュリティ疲れ」
「英数字記号を含む16桁以上」「1ヶ月ごとの変更必須」など、パスワードポリシーを必要以上に厳格化してしまうケースである。従業員が覚えきれず、付箋や共有メモに書き留めてしまい、結果として物理的な漏洩リスクが高まる「セキュリティ疲れ」を招く。
改善策:複雑さより文字数(例:12桁以上のパスフレーズ)を優先し、定期変更の強制よりも漏洩が疑われる際に速やかに変更する運用へ見直すことが有効である。 - ②運用失敗:初期パスワードの放置とアカウントの棚卸し不足
システム導入時に設定された初期パスワードや、複数人で共有する共通パスワードを変更せずに使い回してしまうケースである。加えて、退職者のアカウントを無効化せずに放置してしまう例も少なくない。
改善策:初期パスワードは初回ログイン時に必ず変更する運用を徹底し、アカウントの利用状況・アクセス権限を定期的に棚卸しする仕組みを整えることが求められる。 - ③選定失敗:単純なルールのみに依存した対策
文字数や記号の使用ルールを定めるだけで、多要素認証(MFA)やパスワード管理ツールの導入を見送ってしまうケースである。この場合、漏洩済みのID・パスワードの組み合わせを使う「パスワードリスト型攻撃」や、総当たりで突破を試みる「ブルートフォース攻撃」への耐性が低いままになる。
改善策:パスワード単体の防御に頼らず、多要素認証やパスワード管理ツールを組み合わせた多層的な対策を検討する。
よくある質問(FAQ)
Q. 安全なパスワードは何文字以上必要ですか?
A. 一般的には12文字以上が目安とされています。文字数が増えるほど総当たり攻撃に必要な時間は大きく伸びるため、サービスの上限に応じて14〜16文字程度まで長くすることを推奨する企業も増えています。まずは自社で使う主要サービスの上限文字数を確認するとよいでしょう。
Q. パスワードに使ってはいけない文字列にはどんなものがありますか?
A. 誕生日や氏名、電話番号など個人情報から推測できる文字列、「password」や「123456」のような単純な文字列、辞書に載っている単語そのままの使用は避けるべきとされています。IPAの情報セキュリティ10大脅威でも、推測されやすいパスワードは代表的な脆弱性要因として挙げられています。
Q. パスワードの使い回しはなぜ危険なのですか?
A. あるサービスから漏洩したID・パスワードの組み合わせが、他サービスへの不正ログイン(パスワードリスト攻撃)に悪用されるおそれがあるためです。使い回しをしていると、一箇所の情報漏洩が複数サービスへの被害拡大につながりやすくなる点に注意が必要です。
Q. 企業のパスワード作成ルールはどのように決めればよいですか?
A. 最低文字数・使用可能な文字種・使い回し禁止などの基本方針を策定し、社内規程として明文化した上で全従業員へ周知・教育することが実務上のポイントです。あわせて多要素認証の併用や管理ツールの導入も検討すると、運用の実効性が高まりやすくなります。
Q. パスワードの定期変更は今でも必要ですか?
A. 近年は総務省の情報セキュリティサイト等でも、漏洩の疑いがない限り定期的な変更は必須ではないという考え方が示されています。ただし、不正アクセスの兆候や漏洩の可能性がある場合は速やかに変更することが推奨されており、状況に応じた対応が求められます。
Q. パスワード管理ツールはどのような企業が導入すべきですか?
A. 複数サービスのID・パスワードを従業員が個別に管理している企業や、情報システム担当者が少なく統制が難しい中小企業では、管理ツールの導入によって使い回しの防止や運用負荷の軽減が期待できます。導入時はセキュリティ機能や権限管理の仕様を確認しておくことが望まれます。
まとめ|今日から実践できる3つのステップ
パスワード作成は、文字数や文字種のルールを整えるだけでなく、社内での運用体制まで含めて設計することが重要です。以下の3つのステップのうち、無理なく着手できるものから取り組んでみましょう。
- 12文字以上を目安に、英大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた推測されにくいパスワードの作成ルールを社内規程として明文化し、全従業員へ周知する。
- 医療機関・士業・EC事業者など業界特性に応じたリスクの高さを踏まえ、多要素認証の導入や定期的な見直しなど自社に合った運用ルールを設定する。
- 個人情報保護法・不正アクセス禁止法等の関連法令や経営ガイドラインを踏まえつつ、パスワード管理ツールの導入も含めて運用体制を継続的に見直す。
参考文献
- IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威」(ipa.go.jp)
- 総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」(soumu.go.jp)
- 経済産業省・IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」(meti.go.jp/ipa.go.jp)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(ppc.go.jp)
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