TAM SAM SOMとは?意味・計算式・算出方法を具体例つきで解説

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  • TAM SAM SOMの意味と違いがわかる
  • 3つの算出方法と検算のしかたがわかる
  • 資料での見せ方と企業リスト化がわかる

TAM SAM SOMとは、市場規模を「市場全体(TAM)」「自社が対応できる範囲(SAM)」「現実に獲得を見込める範囲(SOM)」の3段階に分けて捉える考え方です。読み方は「タム」「サム」「ソム」で、TAMの内側にSAM、SAMの内側にSOMが入る入れ子の関係になっています。市場の大きさと計画の現実性を同時に説明できるため、新規事業の企画書や投資家向けの資料でよく使われます。この記事では、3つの指標の意味と英語の正式名称、計算式、トップダウン・ボトムアップ・フェルミ推定による算出方法、計算例と業種別の考え方、よくある失敗、投資家や経営層の見方と資料での見せ方をまとめます。あわせて、算出したSOMを狙う企業の一覧に落とし込み、営業に生かすまでの流れも紹介します。

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Q1. TAM SAM SOMを使うのは、どちらの場面に近いですか?

目次

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  1. TAM SAM SOMとは|3つの指標の意味と英語の正式名称
  2. TAM SAM SOMの算出方法(トップダウン・ボトムアップ・フェルミ推定)
  3. 業種別の算出例
  4. TAM SAM SOM算出でよくある失敗パターン
  5. TAM SAM SOMの活用場面と、資料での見せ方
  6. 算出後の次の一手|SOMをターゲット企業リストに落とし込む
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ
  9. 参考文献

TAM SAM SOMとは|3つの指標の意味と英語の正式名称

TAMは市場全体、SAMはそのうち自社が提供できる範囲、SOMは現実に獲得を見込める範囲を指し、この順に小さくなる入れ子の関係です。理論上の最大値から現実的に狙える範囲へ、条件を加えながら絞り込む点が特徴です。

指標 正式名称 意味 主に使う時間軸
TAM Total Addressable Market その製品・サービスの需要が存在する市場全体の規模。理論上の上限 長期(事業の将来性の検討)
SAM Serviceable Available Market TAMのうち、自社の製品仕様・販路・対応地域で実際に提供できる範囲 中期(中期計画・事業の拡張)
SOM Serviceable Obtainable Market SAMのうち、競合状況や自社の営業・資金の制約を踏まえて現実に獲得を見込める範囲 短期(1年から3年程度の売上目標)

TAM(獲得可能な最大の市場規模)

TAMは、自社が実際に届けられるかどうかを考えず、その製品やサービスに需要がありうる市場全体を金額で表したものです。事業がどこまで大きくなりうるかという上限を示すため、参入する価値のある市場かどうかを判断する材料になります。

SAM(自社が対応できる市場規模)

SAMは、TAMを自社の現在の事業条件で絞り込んだものです。絞り込みに使う条件は、対応できる地域、対象とする企業規模や業種、製品の対応言語や機能、販売チャネルなどです。日本語のみ対応の製品であれば海外の需要はSAMに含まれず、中小企業向けの製品であれば大企業の需要は外れます。

SOM(現実に獲得を見込める市場規模)

SOMは、SAMのうち自社が一定期間内に実際に獲得できると見込む範囲です。競合の存在、自社の認知度、営業担当者の人数、広告予算といった制約を反映させるため、SAMよりかなり小さな数字になるのが普通です。そのまま売上目標の根拠になるため、3つの中でもっとも説明責任が重い指標です。

SAMとSOMの違い

SAMとSOMの違いは、「自社が提供できる範囲」か「その中で実際に獲得できる範囲」かにあります。SAMは自社の製品・地域・販路といった提供できる条件だけで決まり、SOMはそこに競合や営業体制の制約を足して決まります。SAMを100%押さえたときの売上がSAMの金額、現実の計画に落ちる売上がSOMの金額、と考えると区別しやすくなります。

SAMの条件に合う企業が何社あるかを確かめる

法人向けの事業では、SAMの条件は「業種」「従業員規模」「地域」といった、企業を絞り込む言葉で書かれます。この条件は、統計から企業数を調べて金額に直すだけでなく、条件に合う企業を実際に一覧にして数えると、算出した数字の検算にもなります。統計でわかるのは業種別・規模別の企業数までで、個々の企業の一覧や、どの企業から先に当たるかという優先順位は別に用意する必要があります。

SAMの条件を企業単位の一覧に変え、アプローチの優先順位づけまで続けたい法人向けの事業の場合の一例が、株式会社インフォボックスが提供する営業データプラットフォームの「infobox」です。商品ページでは、「スコアリング機能」「受注分析機能」を備え、自社のCRMの活用やSFA・MAツールとの連携も可能と紹介されています。公式サイトによると、法人登記のある580万社の企業データを、業種・企業規模・売上高などの条件で絞り込んでリスト化できます(2026年10月16日確認)。注意点として、月額費用は問い合わせて確認する必要があり、学習機能や育成管理は搭載されていません。また、対象が個人や店舗のお客様である事業には向かず、対象企業が数十社で担当者が全社を把握できている場合は、既存の顧客管理で足りることもあります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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TAM SAM SOMの算出方法(トップダウン・ボトムアップ・フェルミ推定)

TAM SAM SOMの算出方法は、公表データから絞り込むトップダウンと、顧客数と単価を積み上げるボトムアップの2つが基本で、データが無いときはフェルミ推定で補います。どれか1つで済ませず、複数の方法で算出して結果を突き合わせると、数字の信頼性を確かめられます。

基本の計算式

どの指標も、基本は「対象となる顧客の数」と「1顧客あたりの年間の支払額」の掛け算です。違いは、顧客の数をどの範囲で数えるかにあります。

指標 計算式の考え方
TAM 市場全体の潜在顧客数 × 1顧客あたりの単価 × 年間の購入回数
SAM 自社が対応できる条件に合う顧客数 × 1顧客あたりの単価 × 年間の購入回数
SOM 一定期間に獲得を見込む顧客数 × 1顧客あたりの単価 × 年間の購入回数(またはSAM × 見込む獲得率)

トップダウンで算出する手順

トップダウンは、政府統計や業界団体・調査会社のレポートといった公表済みのデータを起点に、自社の対象へと絞り込んでいく方法です。主にTAMとSAMの算出に使います。手順は次のとおりです。

  1. 市場全体の規模、または対象となる企業数・人口を示す公表データを探す
  2. 自社が対応できない地域・規模・業種を除き、SAMの範囲を決める
  3. 競合状況や自社の体制から見込める獲得率を掛けて、SOMの概算を出す

法人向けの事業であれば、総務省・経済産業省の経済センサスで業種別・従業者規模別の企業数や事業所数を確認できます。個人向けの事業であれば、国勢調査の人口・世帯のデータが起点になります。これらは政府統計の総合窓口であるe-Statからまとめて検索できます。注意点は2つあります。1つは、データの調査時点が古くなっていないかを確認すること。もう1つは、統計や民間レポートの業種区分・用語の定義が、自社の考える市場の範囲と一致しているかを確かめることです。定義がずれたまま数字を引用すると、TAMが実態より大きくも小さくもなります。

ボトムアップで算出する手順

ボトムアップは、顧客単価、見込み顧客の数、商談から受注に至る割合など、現場に近い数字を積み上げる方法です。主にSOMと、精度を高めたいSAMの算出に使います。

  1. 対象とする顧客像(業種、規模、地域、抱えている課題)を具体的に定義する
  2. その条件に合う企業や個人の数を数える
  3. 1顧客あたりの年間の支払額を、自社の価格や既存顧客の実績から設定する
  4. 営業担当者の人数、1人あたりの商談数、受注率から、期間内に獲得できる顧客数を見積もる

事業の立ち上げ前で実績がない場合は、見込み顧客へのヒアリングやアンケートで、利用意向や支払ってもよい金額を確かめます。このとき、質問は「利用したいですか」のようなあいまいな聞き方ではなく、「過去1年間に何回利用しましたか」「いくらまでなら導入を検討しますか」のように、回数や金額で答えられる形にすると、計算に使える数字が得られます。最初から大規模な調査を行うのではなく、少数への聞き取りで仮説を作ってから対象を広げるほうが、手戻りが少なくなります。

データが無いときのフェルミ推定

フェルミ推定は、直接の統計が見つからないときに、1つの大きな数字を当てにいくのではなく、根拠を置ける小さな数字に分解して掛け合わせ、桁が合っているかを確かめる方法です。市場規模の公表データが存在しない新規事業で、TAMやSAMの概算を出すときに使われます。

次の表は、架空の中小製造業向けクラウドサービスを例にした流れです。数字はすべて説明のために置いた仮の値で、実際の統計値ではありません。

分解した項目 置いた仮定(仮の値) 裏付けの取り方
対象となる企業数 従業員50-299名の製造業で2万社 経済センサスなどの業種別・規模別の企業数で確認する
導入を見込む割合 対象のうち30% 見込み顧客への聞き取りや、類似サービスの普及度合いで確認する
1社あたりの年間単価 36万円 自社の想定価格と、代替手段に現在支払われている金額で確認する
SAMの概算 2万社 × 30% × 36万円 = 21.6億円 各項目の裏付けが弱いものを、前提として資料に明記する

この方法の要点は、分解した項目ごとに「どこまで公表データで裏付けられるか」を分けて考えることです。裏付けのある項目は出典を付け、裏付けのない項目は仮定であることを明記します。仮定の置き方が妥当かどうかを他の人に確かめてもらうと、見落としに気づきやすくなります。

2つの結果を突き合わせて検算する

トップダウンとボトムアップは、どちらが正しいかを競うものではなく、互いの検算に使うものです。同じSAMやSOMを両方の方法で算出し、結果が数倍以上ずれている場合は、どちらかの前提に無理があります。ずれの原因は、次の表のように切り分けると見つけやすくなります。

ずれ方 考えられる原因 見直す場所
トップダウンのほうがはるかに大きい 対象外の需要が混ざっている。業種区分や用語の定義が自社の市場より広い SAMの絞り込み条件と、引用した統計の定義
ボトムアップのほうがはるかに大きい 受注率や単価の見積もりが楽観的。営業体制の上限を超えている 商談数・受注率の実績と、営業担当者の人数
どちらも想定より小さい 市場の定義が狭すぎる。隣接する用途や顧客層を外している 対象とする用途と顧客像の範囲
原因が見当たらない 前提がそろっていない(期間、月額と年額、税込と税別など) 算出に使った期間・単位・金額の基準

ずれの原因を1つずつ確かめる作業そのものが、市場の理解を深めます。なお、完全に一致させることが目的ではなく、ずれの理由を説明できる状態にしておくことが大切です。

市場がまだ存在しない場合の考え方

これまでにない製品で、参照できる市場データがない場合は、バリューセオリーと呼ばれる考え方が使われます。これは、自社の製品が顧客にもたらす価値(削減できるコストや時間、増える売上)を見積もり、そのうち顧客がどの程度を対価として支払うかを仮定して市場規模を推定する方法です。既存の代替手段に顧客がいま支払っている金額を起点にする方法もあります。いずれも仮定が多くなるため、どの前提を置いたかを明記し、少数の顧客での検証結果とあわせて示すことが欠かせません。

計算例|中小企業向けクラウドサービスの場合

架空の中小企業向けクラウドサービスを例に、計算の流れを確認します。以下の数字はすべて説明のために置いた仮の値で、実際の統計値ではありません。

指標 対象の範囲(仮定) 計算(仮の数値) 結果
TAM このサービスを利用しうる国内の企業すべて 30万社 × 年額24万円 720億円
SAM 自社の機能と営業拠点で対応できる、特定の規模・地域の企業 4万社 × 年額24万円 96億円
SOM 現在の営業体制で3年以内に契約を見込む企業 400社 × 年額24万円 9,600万円

この例ではSOMはSAMの1%にあたります。ここで確認したいのは、400社という数字が営業の実態と合っているかどうかです。例えば営業担当者が1人あたり年間に何件の商談を持て、そのうち何割が受注に至るかを掛け合わせ、3年間で400社に届くかを確かめます。届かないのであれば、SOMを下げるか、体制の増強を計画に織り込む必要があります。SOMは「取りたい数字」ではなく「取れる根拠のある数字」として置くことが大切です。

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業種別の算出例

TAM SAM SOMの考え方はどの業種でも共通ですが、顧客数の数え方と絞り込みの条件は事業の形によって変わります。法人向けでは企業数や事業所数、個人向けでは人口や世帯数が母数になる点が大きな違いです。代表的な4つの型で整理しました。

事業の型 TAMの母数と単価 SAMへの絞り込み条件 SOMを決める主な要因
法人向けクラウドサービス 対象となる企業数 × 1社あたりの年間利用料 従業員規模、業種、対応言語、連携できる既存システム 営業担当者の人数、商談数、受注率、解約率
店舗型サービス(飲食・教室など) 利用しうる人口 × 客単価 × 年間の利用回数 商圏(店舗から通える範囲)の人口、年齢層、利用シーン 席数や営業時間などの供給能力、近隣の競合店の数
EC・小売 商品カテゴリの購入者数 × 平均購入単価 × 年間の購入回数 ネットで購入する層、配送できる地域、価格帯 広告予算と集客数、購入に至る割合、リピート率
法人向けの受託・専門サービス 対象となる事業所数 × 1件あたりの受注単価 × 年間の発注回数 対応できる地域、得意とする業種、案件の規模 担当者が同時に受けられる件数、既存顧客からの紹介

店舗型のように供給能力に上限がある事業では、需要側から計算したSOMが、席数や稼働時間から計算した売上の上限を超えていないかも確認します。需要があっても提供しきれない分は、SOMには含められません。一方、法人向けの事業では、SAMに含まれる企業の数が数百社から数万社と比較的数えやすいため、金額だけでなく「対象企業の一覧」として市場を把握できるのが特徴です。この点は、後述するターゲット企業リストの作成につながります。

日本国内向けの事業で海外の市場規模レポートを参照するときは、対象地域、通貨、調査年が自社の想定する市場の範囲と一致しているかを確認します。世界全体の数字をそのままTAMに置くと、国内で提供できる範囲を大きく超えた数字になります。

TAM SAM SOM算出でよくある失敗パターン

TAM SAM SOMの失敗は、計算の誤りよりも、範囲の取り方や根拠の示し方で起きるものが大半です。よくあるパターンと、その直し方をBefore/Afterで整理しました。

失敗のパターン Before(問題のある状態) After(直し方)
TAMを広く取りすぎる 関連する産業全体の規模をそのままTAMとして載せる 自社の製品が解決する課題に対して支払われる金額に範囲を限定する
TAMの大きさだけで魅力を語る 市場の大きさを強みとして強調し、SAM・SOMを示さない SAM・SOMまで絞り込み、実際に狙える規模と根拠を並べて示す
SOMの根拠がない 「SAMの数%は取れるはず」と獲得率だけを置く 商談数と受注率から獲得できる顧客数を積み上げ、獲得率と照らし合わせる
SAM・SOMを小さく見積もりすぎる 保守的に置きすぎて、事業として成り立たない数字になる 隣接する顧客層や用途への拡張を、別枠の計画として示す
出典と時点があいまい 出所のわからない数字や、古い調査の数字を使う 出典、調査時点、対象範囲の定義を資料に明記する
片方の方法だけで算出する トップダウンの数字だけで計画を立てる ボトムアップでも算出し、ずれの理由を説明できるようにする
精緻さを求めて止まる 細かな数字の確認に時間をかけ、判断の時期を逃す 意思決定に必要な粒度を先に決め、仮の値は前提として明記して進める
算出して終わりにする 資料に載せたあと、一度も見直さず営業活動にも使わない 実績と定期的に比較し、SOMを狙う顧客の一覧に落とし込む

とくに多いのが、TAMの取りすぎです。例えば勤怠管理のサービスで「人事関連の支出全体」をTAMとすると、数字は大きくなりますが、自社の製品では取りようのない支出が大半を占めます。TAMは大きく見せるための数字ではなく、自社の製品に対価が支払われうる範囲の上限です。範囲を正しく絞ったTAMのほうが、その後のSAM、SOMへの絞り込みにも一貫性が出ます。

また、最後の「算出して終わり」も見落とされがちです。TAM SAM SOMは市場環境や自社の体制が変われば動く数字です。立ち上げ期は四半期ごと、安定した事業でも年に1回は、実績とSOMの見込みを比べ、差が大きければ前提を見直します。その際、3C分析やSWOT分析、PEST分析など、競合や外部環境を整理する他のフレームワークと組み合わせると、数字が変わった理由を説明しやすくなります。

TAM SAM SOMの活用場面と、資料での見せ方

TAM SAM SOMは、新規事業の提案、投資家へのピッチ、事業計画書、マーケティング戦略の見直しなど、市場の大きさと自社の取り分を説明する場面で使います。場面によって、重く見られる指標が変わります。

3つに分けて考える理由

市場規模を1つの数字だけで語ると、「市場は大きいが、自社が取れるとは限らない」「目標は堅実だが、伸びしろが見えない」のどちらかに偏りがちです。3層に分けることで、TAMで将来性を、SAMで戦う領域を、SOMで当面の目標を、それぞれ別の数字として示せます。

場面別に見られる指標

場面 主に見る人 重く見られる指標と観点
新規事業の社内提案 経営層・事業責任者 TAMで事業の天井を確かめ、SAMで既存の強みや販路が生きる範囲を確認する
投資家向けのピッチ 投資家 TAMの成長性と、SOMを数年かけて広げていく道筋、その根拠
事業計画書 金融機関・社内の決裁者 SOMが売上計画・人員計画・費用計画と数字でつながっているか
マーケティング・営業の戦略 営業・マーケティング部門 SAMの条件(業種・規模・地域)を、狙う顧客像と施策の優先順位に変えられるか
既存事業の見直し 事業責任者 実績とSOMの差、SAMの条件を広げる余地があるか

投資家や経営層は3つの数字をどう見るか

投資や事業化の判断をする側は、3つの数字を別々の問いに使うことが多いといえます。TAMは「参入する価値のある大きさがあるか」を確かめる入口で、あまりに小さければその時点で見送りの根拠になります。SAMは「この事業が到達しうる上限はどこか」を示し、SOMは「計画に蓋然性があり、投資に見合う回収が見込めるか」を判断する材料になります。作る側は、3つの数字がそれぞれこの問いに答えられる根拠を持っているかを点検しておくと、説明が通りやすくなります。

事業計画書・ピッチ資料での見せ方

事業計画書やピッチ資料では、金額そのものよりも、絞り込みの筋道と根拠が伝わるかどうかが評価を左右します。見せ方のポイントは次の4つです。

  • 3つの数字を1枚にまとめ、TAMからSAM、SAMからSOMへ絞り込んだ条件を数字の横に書く
  • それぞれの数字に、計算式・出典・調査時点を添える
  • SOMには期間(何年で獲得する数字か)を明示し、年ごとの獲得計画と対応させる
  • SOMの達成に必要な施策(営業体制、販路、広告)を続くページで説明する

3層の関係は同心円の図で示されることが多いですが、大切なのは図の見た目ではなく、円と円の間にある「何を除いたのか」の説明です。SAMで対象から外した地域や規模、SOMで反映した競合や体制の制約を言葉で示すと、読み手は数字の妥当性を自分で判断できます。事業計画書全体の書き方は、事業計画書テンプレートの選び方と書き方もあわせて参照してください。

投資家向けのピッチでは、初年度のSOMが小さくても、販路の拡大や製品の拡張によってSAM自体を広げていく計画を説明できれば、成長の道筋として受け止められます。社内の新規事業提案では、既存事業の顧客基盤や販路をどこまで生かせるかという観点でSAMを説明すると、経営層が判断しやすくなります。なお、資料に載せる市場規模はあくまで前提を置いた推計です。将来の売上を保証するような断定的な書き方は避け、前提が変われば数字も変わることを明記しておくと、読み手との認識のずれを防げます。

算出後の次の一手|SOMをターゲット企業リストに落とし込む

法人向けの事業では、SOMを金額のままにせず、狙う企業の一覧に変えることで、計画が実行できる形になります。SOMを「400社」と置いたのであれば、その400社がどの企業なのかを特定する、という発想です。手順は次の5つです。

  1. SAMの算出に使った条件(業種、従業員規模、地域など)を、企業を抽出する条件として書き出す
  2. 条件に合う企業を一覧にし、SAMで想定した企業数と大きくずれていないかを確かめる
  3. 既存顧客と似ている、課題が顕在化しているなどの基準で優先順位を付け、SOMにあたる上位の企業群を決める
  4. 優先度の高い企業ごとに、接点の有無や担当部署を整理し、営業とマーケティングで共有する
  5. 商談化や受注の実績を記録し、SOMの前提にした受注率と比べて見直す

この作業には検算の効果もあります。条件に合う企業を実際に並べてみると、統計から計算したSAMの企業数と合わなかったり、想定より対象が少なかったりすることがあり、机上の数字の誤りに早い段階で気づけます。また、営業とマーケティングが同じ一覧を見ることで、「どの企業に、どの順番で働きかけるか」の認識がそろいます。狙う企業を特定して1社ごとに合わせた働きかけを行うこの考え方は、ABM(アカウントベースドマーケティング)と呼ばれます。

一方で、企業の一覧を手作業で作り、情報を最新に保ち続けるのは負担が大きい作業です。企業情報は移転や組織変更で変わり、表計算ソフトの一覧はすぐに古くなります。条件に合う企業の抽出、優先順位付け、接点の記録を仕組みとして回すために、前の章で紹介したinfoboxのような営業データのツールを使う方法があります。商品ページによれば、スコアリング機能や受注分析機能を備え、CRMやSFA・MAツールとの連携もできるため、SOMの前提にした受注率を実績と見比べる作業にも使えます。ただし、対象企業が数十社程度で担当者が全社を把握できている場合は、既存の顧客管理の仕組みで足りることもあります。自社の対象企業数と営業体制に合うかどうかは、資料で機能と提供形態を確認してから判断してください。ウェブ上の行動から関心の高まりを捉える営業ツールの考え方は、インテントデータ型営業ツールの解説で紹介しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. TAM SAM SOMは何の略ですか?

A. TAMはTotal Addressable Market、SAMはServiceable Available Market、SOMはServiceable Obtainable Marketの略で、読み方は「タム」「サム」「ソム」です。日本語では順に、市場全体の規模、自社が提供できる市場規模、現実に獲得を見込める市場規模と説明され、TAM、SAM、SOMの順に小さくなります。

Q2. SAMとSOMの違いは何ですか?

A. SAMは自社の製品・地域・販路といった提供できる条件で決まる市場規模で、SOMはその中から競合や営業体制の制約を踏まえて実際に獲得できる範囲です。SAMは「提供できる上限」、SOMは「計画に落ちる売上の根拠」と考えると区別できます。

Q3. TAM SAM SOMはどのように算出しますか?

A. 基本は、対象となる顧客数に1顧客あたりの年間の支払額を掛けて求めます。公表データから絞り込むトップダウンと、顧客数や受注率を積み上げるボトムアップの2つが基本で、データが無いときはフェルミ推定で概算します。複数の方法で算出して結果を突き合わせると、数字の信頼性を確かめられます。

Q4. TAM SAM SOMの事例にはどのようなものがありますか?

A. 本記事では、法人向けクラウドサービス、店舗型サービス、EC・小売、法人向けの受託・専門サービスの4つの型で、仮の数値を使った計算例を示しています。実在する企業の数字は、各社が公開する事業計画や投資家向けの資料に載っている場合がありますが、出典、調査時点、市場の範囲の定義を確認したうえで参照してください。

Q5. SOMは売上目標と同じですか?

A. 近い性質ですが、同じではありません。SOMは「現実に獲得できる市場の規模」を根拠をもって示した数字で、売上目標はそれを踏まえて決める経営上の目標です。SAMの何%とあらかじめ決めるのではなく、商談数と受注率から獲得できる顧客数を積み上げ、その結果としての割合を確認する順序で考えます。

Q6. 算出したSOMは、その後どのように活用すればよいですか?

A. 売上目標の根拠として使うほか、法人向けの事業では、SOMにあたる企業を具体的な一覧に落とし込み、優先順位を付けて営業・マーケティングで共有します。企業の抽出や優先順位づけ、接点の管理を仕組みとして回したい場合は、infoboxのような営業データのツールを検討する方法もあります。

まとめ

TAM SAM SOMは、市場の大きさと計画の現実性を、3つの数字で段階的に説明するための枠組みです。押さえておきたい行動は次の6つです。

  1. TAMは市場全体、SAMは自社が対応できる範囲、SOMは現実に獲得を見込める範囲として、3つを分けて示す
  2. 計算の基本は顧客数と単価の掛け算で、トップダウン・ボトムアップ・フェルミ推定を使い分け、複数の方法で検算する
  3. TAMは広げすぎず、SOMは商談数や受注率などの根拠から積み上げる
  4. 資料では、絞り込みの条件・出典・期間を数字とあわせて示し、見る人の問いに答えられるようにする
  5. 算出後は、SOMを狙う企業の一覧に落とし込み、実績と比べて定期的に見直す
  6. 企業の抽出や優先順位づけを仕組みにしたい法人向けの事業は、infoboxのようなツールの資料で機能と提供形態を確認する

市場規模の数字は、資料を通すためのものではなく、どこに力を注ぐかを決めるためのものです。まずは手元のデータで概算を出し、前提を明記したうえで、実績に合わせて磨いていく進め方が現実的です。

参考文献

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