前給とは?意味・振込までの日数・前借りとの違いと導入の注意点を解説
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- 前給の意味と前借りとの違いがわかる
- 入金までの日数と精算の流れがわかる
- 導入前の法務と給与計算の準備がわかる
前給(まえきゅう)とは、従業員がすでに働いた分の給与の一部を、本来の給料日より前に受け取れる仕組みです。受け取った分は給料日の給与から差し引かれるため、受け取れる総額が増えるわけではなく、受け取る時期が前倒しになります。一般には「給与前払い制度」と同じ意味で使われますが、きらぼしテック株式会社が提供する給与前払いサービスの名称でもあるため、文脈によって指すものが変わります。
本記事では、人事・労務・経営の担当者の方に向けて、前給の意味、前借り・日払い・給与ファクタリングとの違い、申請から入金までの日数と精算の流れ、費用の考え方、メリットとデメリット、労働基準法などの法務上の注意点、導入前に整えたい給与計算の準備を整理します。
前給で気になることから、合うサービスの目安を2問で確認
Q1. 前給について、いま一番知りたいのはどれですか?
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目次
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前給とは|給料日前に受け取れる仕組みと、導入前に整えたい給与計算の準備
前給とは、すでに働いた分の給与の一部を給料日より前に受け取れる仕組みです。受け取った分は給料日の給与から差し引かれ、総額は変わりません。
「前給」という言葉の2つの意味
「前給」には、制度の通称としての意味と、特定のサービス名としての意味があります。求人票の「前給OK」は多くが制度としての給与前払いを指し、サービス名としての前給は、東京きらぼしフィナンシャルグループのきらぼしテック株式会社が運営する給与前払いサービスです。どちらの意味で使われているかを見分けると、記事や資料を読むときの混乱を避けられます。
| 意味 | 内容 | 使われる場面の例 |
|---|---|---|
| 制度の通称 | 給与前払い制度全般を指す。提供会社は問わない | 求人票の「前給制度あり」、社内規程の説明 |
| サービス名 | きらぼしテック株式会社が運営する給与前払いサービスの名称 | サービスの比較や導入検討の資料、従業員のログイン画面 |
前給を会社の制度として始める場合、前払いの振込そのものは給与前払いサービスが担います。一方、企業には、勤務実績の確定、前払い分の控除、給与明細への反映といった作業が残ります。株式会社池田泉州銀行の前給サービスのページでも、企業が従業員情報と勤務実績を登録し、給与計算の際に利用額のデータをダウンロードして控除する流れが示されています。前払いを使う人が増えるほど、この締めと控除を手作業で回す負担は重くなるため、前払いの導入と並べて、勤怠データを給与計算につなげる準備も見直しておくと進めやすくなります。
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|
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| 向いている会社 | 手当や勤務形態が多く、勤怠データを給与計算に連動させたい会社 | 労務の担当者が少なく、給与計算と入社・退社の手続き、年末調整をまとめたい会社 |
| 特徴 | 給与体系ごとに項目や計算式を登録でき、年次や勤務形態、各種手当に応じて自動で計算する。ジンジャー勤怠と連携すると、CSVを介さずに勤怠データを取り込める | 勤怠管理、給与計算、給与明細の作成、入社・退社手続き、年末調整を一つのサービスで扱える。打刻忘れや残業申請の状況を知らせるアラート機能がある |
| 注意したい点 | 所得税や住民税率は手動で変更する必要がある。給与前払いそのものの機能は商品ページに載っていない | freee会計と連携した際の画面切替が手間という声がある。給与前払いそのものの機能は商品ページに載っていない |
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勤怠集計から給与計算までの業務に関してはこれまで10日ほどかかっていましたが、ジンジャー導入後は集計から計算まで自動でおこなわれ、勤怠・給与間のデータ連携もワンクリックで対応できるようになり、5日で完了するようになりました。
出典: 西田工業株式会社の導入事例(ジンジャー)
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出典: 伊予興業株式会社の導入事例(freee)
前給と前借り・日払い・給与ファクタリングの違い
前給は、すでに働いた分の給与を給料日前に受け取るものです。前借り・日払い・給与ファクタリングとは、働いた分か、誰との契約かで見分けます。
前給と混同されやすい言葉に、前借り、日払い、給与ファクタリングがあります。見分ける軸は、「すでに働いた分か」と「誰との契約か」の2つです。ただし、日常会話では、すでに働いた分を早く受け取ることを「前借り」と呼ぶ場合もあります。言葉だけで判断せず、中身を確認することが大切です。
| 用語 | 対象となるお金 | 契約の相手 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 前給(給与前払い) | すでに働いた分の給与の一部 | 勤務先(勤務先が提携するサービスを通じて受け取る) | 利用ごとに手数料がかかる場合がある |
| 前借り(貸付に近いもの) | まだ働いていない分を含めて先に受け取るお金 | 勤務先 | 労働することを条件とする前貸の債権と賃金の相殺は、労働基準法17条で禁止されている |
| 日払い | その日に働いた分の給与 | 勤務先 | 支払日を日ごとに定める方式で、給料日前に一部を受け取る前給とは仕組みが異なる |
| 給与ファクタリング | 将来受け取る給与(賃金債権) | 勤務先とは無関係の業者 | 金融庁が、個人に貸付けを行うヤミ金融の存在を確認しているとして注意喚起している |
給与ファクタリングは、名称に「給与」と付くため前給と同じものだと誤解されがちです。金融庁は、「給与ファクタリング」という手法で個人に貸付けを行うヤミ金融の存在が確認されているとして、注意を呼びかけています。また、ファクタリングとして行われる取引でも、経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあるとされています。従業員から相談を受けた場合は、勤務先の制度として用意された前給と、勤務先を通さない業者とのやり取りは別物であることを伝えられるようにしておくと安心です。
前給の仕組み|申請から入金、給料日の精算までの流れ
前給は、勤務実績の登録、従業員の申請、振込、給料日の精算の順で進みます。申請から入金までの日数は、サービスと申込時間で変わります。
給与前払いサービスを使った前給は、企業が勤務実績をシステムに登録し、従業員がスマートフォンやパソコンから申請し、前払い可能額の範囲内で振り込まれる流れが一般的です。給料日には、前払い分を差し引いた残りが支給されます。
| ステップ | 内容 | 主な担当 |
|---|---|---|
| 1. 勤務実績の登録 | 出勤や労働時間の実績を、勤怠システムなどからサービスへ登録する。登録の頻度は、毎日、週1回、月2回など企業の運用に合わせて選べる例がある | 企業 |
| 2. 前払い可能額の計算 | 働いた分の給与相当額に、企業が定めた上限の割合をかけて算出する | システム |
| 3. 前払いの申請 | 従業員がスマートフォンやパソコンから希望額を申請する | 従業員 |
| 4. 振込・チャージ | 指定口座への振込や、対応するスマホ決済アプリへのチャージで受け取る | サービス提供会社 |
| 5. 給料日の精算 | 利用額のデータをもとに、前払い分と手数料を差し引いて給与を支給する | 企業 |
前払いできる金額には上限がある
前給では、働いた分の全額ではなく、その一部を上限にするのが一般的です。給与からは社会保険料や所得税などが差し引かれるため、額面の全額を前払いすると、給料日に控除する分が足りなくなるおそれがあるからです。上限の割合は企業ごとに決めます。BOXIL Magazineでは、7営業日以上働いた従業員が、給料日に支給される額の最大50%まで受け取れる制度を導入している大手飲食企業の例が紹介されています。また、株式会社池田泉州銀行の前給サービスのページでは、毎月の利用回数や上限金額を企業ごとに設定できると案内されています。自社で決めるときは、控除額や欠勤があった場合の調整も見込んでおくことが大切です。
何日後に振り込まれる?入金のタイミングと受取方法
従業員が最も気にするのは、申請してから何日後に入金されるかです。株式会社池田泉州銀行の前給サービスのページには、原則として午後4時までに申し込むと翌営業日に振り込まれ、最短で申し込んだ翌日に受け取れると記載されています。サービスや受取口座の金融機関によって異なるため、即日で入金されるとは限りません。給料日前の急な出費に備える制度である以上、申込の締め時刻と営業日の扱いは、導入時に必ず確認しておきたい点です。
また、銀行口座への振込だけでなく、スマホ決済アプリで受け取れるサービスもあります。きらぼしテック株式会社の前給は、公式サイトで、スマホ決済アプリ「ララPayプラス」に口座を介さず直接チャージできると案内しています。
給料日の精算では前払い分を差し引く
給料日には、前払い分と手数料を差し引いた残額を支給します。株式会社池田泉州銀行のページでは、給与計算の際に利用額のデータをダウンロードして控除する流れが示されています。前払い分を引いたあとの源泉徴収や年末調整の扱いは、給与前払いの控除・源泉徴収の解説で詳しく整理しているので、あわせて確認してください。
2つの給与計算サービスの違いを比較表で見る前給の種類|資金の出どころと導入形態で分かれる
前給サービスは、前払いの資金を誰が用意するかで、立替型・預託型・社内完結型に分けて整理できます。自社の資金余力と運用体制で選びます。
一般的な整理として、前払いの資金を誰が用意するかで、サービスは次の3つの種類に分けられます。どの種類を選ぶかで、企業の資金繰りへの影響や手数料の構造が変わります。
| 種類 | 資金の出どころ | 強み | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 立替型 | サービス提供会社が一時的に立て替え、後日企業が精算する | 企業が前払い資金を手元に用意する必要がなく、資金繰りへの影響を抑えやすい | 立替に関わる手数料が発生しやすく、誰が負担するかを契約で確認する必要がある |
| 預託型 | 企業があらかじめ一定額をサービス提供会社に預け、その中から支払う | 自社の資金を使うため、立替型に比べて手数料を抑えられる場合がある | 預託金を確保する必要があり、利用が集中すると追加入金の管理が必要になる |
| 社内完結型 | 企業の口座から直接支払い、システムは申請と計算を支援する | 外部への立替依頼がなく、運用ルールを自社で柔軟に決めやすい | 振込作業や資金管理の一部が社内に残り、経理部門の負担を見込む必要がある |
- 立替型:前払いの資金をサービス提供会社が一時的に立て替えます。手元資金を前払いに回したくない企業や、利用者数の増減が読みにくい企業に向いています。立替に伴う手数料を企業と従業員のどちらが負担するかが、制度の使いやすさを左右します。
- 預託型:企業が一定額をあらかじめ預けておき、その範囲で支払います。資金に余裕があり、手数料を抑えたい企業に向いています。繁忙期など利用が集中する時期には、預託金の残高を見ながら追加入金する運用が必要です。
- 社内完結型:企業の口座から直接支払い、システムは申請受付と前払い可能額の計算を担います。経理部門で振込を管理できる体制があり、運用ルールを細かく決めたい企業に向いています。
導入形態としては、勤務先企業がサービス提供会社と契約して従業員に提供する形が中心です。株式会社池田泉州銀行のページでは、従業員は勤め先の会社で加入手続きをしたうえで、会社が定めた条件の範囲で利用すると説明されています。一方、勤務先を通さずに個人が業者と契約して給与を早く受け取る仕組みは、前述の給与ファクタリングにあたる可能性があるため注意が必要です。
なお、きらぼしテック株式会社の前給は、公式サイトで、給与支払制度と社内融資制度が選べると案内しています。どちらの制度で運用するかは、契約前に提供会社へ確認し、社会保険労務士などの専門家にも相談してください。
前給の費用の考え方|導入費・月額費・手数料
前給の費用は、初期導入費、月額費、利用手数料、振込手数料、社内の運用コストに分かれます。金額より先に、どの費目を誰が負担するかを整理します。
給与前払いサービスの費用は、企業規模や利用人数、資金の種類によって個別に見積もるケースが多く、業界全体で統一された相場はありません。費用を比べるときは、金額そのものよりも、どの費目が誰に発生するかという構造を先に整理しておくと判断しやすくなります。
| 費目 | 主な負担者 | 内容と確認ポイント |
|---|---|---|
| 初期導入費 | 企業 | システム設定や勤怠連携の構築費用。かからないとしているサービスもある |
| 月額利用料 | 企業 | 固定費として発生する場合と、利用がなければ発生しない場合がある |
| 利用手数料 | 従業員または企業 | 前払い1回ごと、または前払い額に対する割合でかかる。負担者は契約で決める |
| 振込手数料 | 従業員または企業 | 受取口座の金融機関や受取方法によって変わる。アプリへのチャージで変わる例もある |
| 社内の運用コスト | 企業 | 勤務実績の確認、給与計算での控除、問い合わせ対応にかかる担当者の工数 |
たとえばきらぼしテック株式会社の前給は、公式サイトのよくある質問で、企業と従業員ともに利用に応じた手数料のみで運用でき、専用機材が不要なため初期導入費用がかからない料金体系だと案内しています。導入までの期間は概ね1か月程度とされています。サービスによって費目や課金方式は異なるため、見積もりの段階で同じ条件に揃えて比べることが大切です。従業員が手数料を負担する場合、少額を何度も前払いすると、前払い額に対する手数料の割合が大きくなります。従業員側の実質的な負担も含めて比較してください。料金は変更されることがあるため、導入時には必ず各社の最新の条件を確認してください。
2つの給与計算サービスの違いを比較表で見る前給のメリットとデメリット
前給のメリットは、従業員の急な出費への備えと、企業の採用・定着の訴求です。デメリットは、手数料と運用の手間、従業員の使いすぎです。
前給は、従業員にとっては急な出費に対応しやすくなる制度であり、企業にとっては採用や定着の施策になり得る制度です。一方で、手数料や運用の手間、従業員の使いすぎといった課題もあります。企業と従業員の両方の立場から整理すると次のとおりです。
| 立場 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 企業 | 求人で前払い可と示せ、応募の動機づけになりやすい。福利厚生として満足度や定着の後押しが期待できる。個別の前払い相談を仕組みで処理できる | 導入費や月額費、手数料の負担が生じる場合がある。勤務実績を正確かつ早く確定する運用が求められる。立替型以外では資金繰りへの影響を見込む必要がある |
| 従業員 | 急な出費に、給料日を待たずに働いた分で対応できる。外部の高金利な借入れに頼らずに済む | 利用のたびに手数料がかかる場合がある。使いすぎると給料日の手取りが減り、家計の管理が難しくなる |
ITトレンドのきらぼしテック株式会社の製品ページによると、前給は小売、飲食、物流、人材派遣、コールセンター、介護・医療、製造などの業種で導入されています。きらぼしテックの公式サイトでは、求人に「前給あり」と記載したところ、応募が前年同時期の1.5倍に増えたとする企業の導入事例も紹介されています。ただし、これはベンダーが公表する個別の事例であり、他社で同じ結果になるとは限りません。
厚生労働省の「令和6年版 労働経済の分析」では人手不足への対応が主題として取り上げられており、採用や定着の施策を見直す企業にとって、働き方に合わせた給与の受け取り方を用意することも選択肢の一つになっています。ただし、離職の理由は労働時間や人間関係など複合的なので、前給だけで定着率が改善するとは限りません。他の労務改善の取り組みとあわせて考えることが大切です。
前給を導入する際の法務上の注意点
前給は賃金の支払い方に関わるため、労働基準法の24条・25条・17条との関係を押さえます。個別の判断は専門家に確認してください。
前給は賃金の支払い方に関わるため、労働基準法の賃金に関する規定との関係を押さえておく必要があります。ここでは一般的な考え方を整理します。個別の契約や運用が適法かどうかは、社会保険労務士や弁護士などの専門家に確認してください。
賃金支払いの5原則(労働基準法24条)
労働基準法24条は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことを求めています。厚生労働省のよくある質問では、全額払いの原則について、法令に別段の定めがある場合や、労使の書面による協定がある場合には、賃金の一部を控除して支払うことが認められると説明されています。前給は給料日とは別のタイミングで給与の一部を支払うものですが、すでに働いた分を早めに支払い、給料日に精算する形で運用されるのが一般的です。手数料を給与から差し引く場合は、賃金控除に関する労使協定が必要になると考えられます。導入前に、給与からの控除の方法と協定の要否を確認しておきましょう。
非常時払い(労働基準法25条)との関係
労働基準法25条は、労働者が出産、疾病、災害その他の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、支払期日前であっても、すでに働いた分の賃金を支払わなければならないと定めています。これは使用者の義務であり、前給の制度があるかどうかに関係なく適用されます。前給は、こうした非常時に限らず、従業員が自分の判断で使える任意の制度として用意されるものと位置づけると整理しやすくなります。非常時払いに該当する請求に、前給の手数料をかけて対応するような運用にならないよう注意が必要です。
前借金相殺の禁止(労働基準法17条)と貸金業規制
労働基準法17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならないと定めています。まだ働いていない分を先に渡し、後の給与から差し引く運用は、この規定に抵触するおそれがあります。前給が「すでに働いた分」の範囲に限られるのは、この点と関係しています。また、金融庁は、ファクタリングとして行われる取引でも、経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあるとしています。導入するサービスが、勤務先との契約に基づく前払いの仕組みなのかを確認することが大切です。
※本セクションは一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の判断については、社会保険労務士・弁護士などの専門家や所轄の労働基準監督署にご確認ください。
前給の導入でよくある失敗パターン
前給の導入でつまずく原因は、契約前の確認不足と社内ルールの準備不足です。手数料の構造、勤怠連携、上限設定、受取口座の確認が要点です。
前給の導入でつまずく原因の多くは、制度そのものではなく、契約前の確認不足と社内ルールの準備不足です。よくある失敗と、事前にできる対策を整理しました。
| 失敗パターン | 起きること | 事前の対策 |
|---|---|---|
| 手数料の構造を誤解していた | 利用が増えるほど企業負担が膨らむ、または従業員の手数料負担が重く使われない | 利用人数と回数を想定した複数のパターンで、企業と従業員それぞれの費用を試算する |
| 勤怠システムと連携できなかった | 勤務実績を手作業で取り込む必要があり、担当者の負担が増える。反映が遅れ前払い額がずれる | 現在の勤怠・給与システムとの連携方法と反映頻度を、契約前に確認する |
| 上限の割合を高く設定しすぎた | 給料日に社会保険料などの控除額が不足する | 控除額と欠勤時の調整を見込んで上限を決め、試験運用で確認する |
| 受取口座の制限を確認しなかった | 一部の従業員が使えない、振込手数料が想定より高い | 従業員が使っている金融機関と、アプリ受取などの代替手段の有無を確認する |
| 利用ルールを決めずに始めた | 一部の従業員の利用が常態化し、手取りが減って生活が苦しくなる | 月の利用回数や上限を定め、利用状況を定期的に確認する |
上の失敗のうち、勤怠システムとの連携は、前払いのサービス側だけでなく、給与計算の側でも起こります。前払いの利用者が増えると、勤務実績の確定が遅れた月は前払い可能額がずれ、給料日の控除の確認にも時間がかかります。前払いの導入にあわせて、勤怠データを給与計算用の表に転記し直さずに済む流れを作っておくと、締め作業が重くなりにくくなります。たとえば勤怠と給与計算をつなげる選択肢として、ジンジャー給与は、ジンジャー勤怠と連携することで勤怠集計から給与計算までをCSVを介さずに行えます。
前給を導入する前の社内準備チェックリスト
導入前に決めておくのは、対象者、上限と回数、手数料の負担、勤怠の締め方、給与計算での精算、社内規程と周知の6項目です。
サービスを比較する前に、自社側で決めておくべきことを整理しておくと、見積もりや打ち合わせがスムーズに進みます。人事、経理、現場の責任者が関わるため、担当を分けて確認すると漏れを防げます。
| 確認項目 | 決めておくこと | 主な担当 |
|---|---|---|
| 対象者 | 正社員、パート・アルバイト、試用期間中の人のどこまでを対象にするか | 人事 |
| 上限と回数 | 働いた分の何割まで、月に何回まで前払いできるか | 人事・経理 |
| 手数料の負担 | 企業と従業員のどちらが負担するか。給与から控除する場合の労使協定 | 人事・経理 |
| 勤怠の締め方 | 勤務実績をいつ確定し、どの頻度でシステムに反映するか | 現場責任者 |
| 給与計算での精算 | 前払い分と手数料を給与明細でどう表示し、控除するか | 経理 |
| 社内規程と周知 | 就業規則や賃金規程への記載、従業員への説明方法と問い合わせ窓口 | 人事 |
このうち上限と回数、手数料の負担は、従業員の使いやすさと企業のコストの両方に直結します。最初は控えめな条件で始め、利用状況を見て見直す方法も検討するとよいでしょう。勤怠の締め方については、出勤の記録に関する法的な要件を出勤の意味と出勤簿の法的要件の解説で、出勤簿の記載項目や運用を出勤簿テンプレートの解説で確認できます。
勤怠の締めと給与計算の運用が、前払いを始めても回るかどうかは、次のセルフチェックで確認できます。当てはまる数に応じて、今の運用で足りるか、見直す余地があるかの目安が表示されます。
前払いに備えた給与計算の運用、今のやり方で足りる?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
前給を導入した効果の確かめ方
効果は、応募数、早期離職率、利用率、担当者の工数、従業員の満足度の5つを、導入前の数字と比べて確認します。
前給を採用や定着の施策として導入した場合は、効果を数字で確認できるように、導入前の状態を記録しておくことが大切です。導入前後で比べる指標の例は次のとおりです。
| 指標 | 見方 |
|---|---|
| 求人への応募数 | 求人票に前払い可と記載した前後で、同じ職種の応募数を比べる |
| 早期離職率 | 入社から3か月以内など、一定期間内に辞めた人の割合を比べる |
| 利用率と利用回数 | 対象者のうち何割が使っているか、一人あたりの月の利用回数が多すぎないかを確認する |
| 担当者の工数 | 前払いの個別相談や手作業の振込が減ったか、給与計算の締めにかかる日数が延びていないかを確認する |
| 従業員の満足度 | 社内アンケートで、制度の認知度と使いやすさを確認する |
応募数や離職率は、景気や賃金水準など前給以外の要因でも変わります。数字の変化だけで判断せず、利用者の声や担当者の負担の変化もあわせて見ることで、制度を続けるか、条件を見直すかを判断しやすくなります。
担当者の工数のうち、給与計算の締めにかかる日数は、導入前の数字を記録しておくと変化を比べられます。給与計算と入社・退社の手続き、年末調整を一つにまとめた場合に、締めの日数がどう変わるかは、たとえばfreee人事労務の導入事例のように、各社の公開事例で確認できます。自社の数字と比べる際の参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 前給とは何ですか?
A. 従業員がすでに働いた分の給与の一部を、本来の給料日より前に受け取れる仕組みです。給与前払い制度とも呼ばれ、受け取った分は給料日の給与から差し引かれます。また、きらぼしテック株式会社が運営する給与前払いサービスの名称として使われることもあります。
Q2. 前給と前借りは何が違いますか?
A. 前給はすでに働いた分の給与を早めに受け取るものです。前借りは、まだ働いていない分を含めて先に受け取る貸付に近いものを指す場合が多く、労働基準法17条で、労働することを条件とする前貸の債権と賃金の相殺が禁止されています。ただし、働いた分の前払いを前借りと呼ぶ場合もあるため、言葉ではなく中身で確認します。
Q3. 前給と給与ファクタリングは同じものですか?
A. 異なります。前給は勤務先の制度として提供されるものです。給与ファクタリングは、勤務先を通さずに業者とやり取りするもので、金融庁は、この手法で個人に貸付けを行うヤミ金融の存在が確認されているとして注意を呼びかけています。
Q4. 前給は申請から何日後に、いくらまで受け取れますか?
A. 入金までの日数は、サービスと申込時間で変わります。株式会社池田泉州銀行の前給サービスのページでは、原則として午後4時までの申込で翌営業日の振込と案内されています。受け取れる額は全額ではなく、働いた分の一部が上限で、割合や回数は企業ごとに設定されます。給料日に社会保険料や税金を控除する必要があるためです。
Q5. 前給の手数料は誰が負担しますか?
A. サービスと契約内容によって、企業負担、従業員負担、両者で分担する形があります。従業員が負担する場合は利用のたびに手数料がかかることが多く、給与から差し引く場合は賃金控除に関する労使協定の確認が必要です。
Q6. 前給を導入するとき、給与計算側では何を準備しますか?
A. 前払いの振込はサービスが担いますが、企業には、勤務実績の確定、前払い分の控除、給与明細への反映が残ります。勤怠データを手作業で転記している場合は、勤怠と給与計算をつなぐ仕組みも並行して見直すと、利用者が増えても締め作業が重くなりにくくなります。サービスを選ぶときは、資金の出どころ、手数料の負担と課金方式、勤怠システムとの連携、入金スピード、対象の雇用形態を比べます。
まとめ|前給の導入前にやっておきたい5つのこと
前給は、すでに働いた分の給与の一部を給料日前に受け取れる仕組みです。前借りや給与ファクタリングとは性質が異なり、労働基準法の賃金に関する規定を踏まえて運用することが前提になります。導入を検討する際は、次の5つから始めるとスムーズです。
- 前給、前借り、給与ファクタリングの違いを整理し、社内で同じ言葉で説明できるようにする
- 対象者、上限の割合、利用回数、手数料の負担者、入金のタイミングといった社内のルールを決める
- 賃金控除の労使協定や就業規則への記載など、法務面を専門家と確認する
- 勤怠の締めと給与計算の流れを見直し、前払い分の控除を手作業にしない準備として、給与計算サービスの資料を比べてみる
- 導入前の応募数、離職率、利用率、工数を記録し、導入後に比べられるようにする
まずは自社の勤怠の締め方と、従業員からの前払い相談の頻度を確認するところから始めてみてください。
参考文献
- 厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei05.html
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第17条・第24条・第25条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html
- 厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析 人手不足への対応」https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/24/24-1.html
- きらぼしテック株式会社「前給」https://www.kiraboshi-tech.co.jp/maeq/index.html
- 株式会社池田泉州銀行「前給」サービスhttps://www.sihd-bk.jp/corporation/advancepayment/service/
- BOXIL Magazine「前給制度とは?給料前払いサービス・メリット・注意点」https://boxil.jp/mag/a6041/
- jinjer株式会社「西田工業株式会社の導入事例」https://hcm-jinjer.com/results/134102/
- フリー株式会社「伊予興業株式会社の導入事例」https://www.freee.co.jp/cases/iyokougyou








