対話型AIとは?チャットボットとの違い・機能・業界別活用事例を解説
Check!
- 対話型AIの仕組みと、チャットボット型・ボイスボット型の違いがわかる
- ルールベース型チャットボットや生成AIとの違い、主な機能と業界別の活用事例がわかる
- ハルシネーション対策や問い合わせの仕分け方など、導入で失敗しない進め方がわかる
対話型AIとは、人が話しかけた言葉や入力した文章の意味を理解し、自然な会話の形で答えを返すAI技術のことです。Webサイトのチャット窓口、コールセンターの自動音声応答、社内の問い合わせ対応など、すでに多くの企業で使われ始めています。一方で「チャットボットと何が違うのか」「生成AIと同じものなのか」「自社のどの業務に使えるのか」がはっきりしないまま、導入を検討している担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、対話型AIの定義と仕組み、チャットボット・ボイスボットとの関係、従来のルールベース型との違い、主な機能、業界別の活用事例、導入時によくある失敗とハルシネーション対策、選び方と導入ステップまでを順に解説します。あわせて、自社の問い合わせのうちどこまでを対話型AIに任せるかを切り分ける「仕分け表」も紹介します。
あなたに合う対話型AIの使い方は? かんたん診断
Q1. 対話型AIをどこで活用したいですか?
おすすめ記事
目次
開く
閉じる
開く
閉じる
対話型AIを業務で使うなら、まずWeb接客とコールセンターのツールを比べる
対話型AIは単独の製品として買うものというより、Web接客ツールやコールセンターシステムなど、既存の業務ツールに組み込まれた機能として使われることが多い技術です。そのため「対話型AIを導入したい」と考えたら、最初に「どの顧客接点でAIに会話を任せたいのか」を決め、その接点向けのツールを比較するのが現実的な進め方です。
代表的な接点は、Webサイト上でのチャットやポップアップによる案内(Web接客)と、電話での問い合わせ対応(コールセンター)の2つです。前者はテキストで会話するチャットボット型、後者は音声を扱うボイスボット型や通話解析型のAIが中心になります。お名前.comビジネスコンシェルジュの比較記事で紹介されている、AIを活用したツールの強みと留意点を並べると次のとおりです。
| サービス名(提供会社) | 主な用途 | 強み | 留意点 |
|---|---|---|---|
| ecコンシェル(NTTドコモ) | Web接客 | ABテストから改善までAIが自動で行う。サイト規模に合わせた3つのプランがあり、フリープランも備える | 導入は簡単な反面、導入後の分析をうまく活用しないと購買につながらない場合がある |
| MiiTel Phone(株式会社RevComm) | コールセンター | AI音声解析で話し方の教育やノウハウ蓄積に活かせる。文字起こしで情報共有や管理の工数を減らせる | サポート対応は平日の日中のみ |
| Salesforce Service Cloud(株式会社セールスフォース・ジャパン) | コールセンター・顧客対応全般 | メール・電話・チャットなどマルチチャネルの情報を集約できる。AI機能を搭載し、データ分析や連携も可能 | 架電機能よりも顧客管理や進捗把握に優れている |
表のとおり、同じ「AIを使った顧客対応」でも、Web接客ツールは「サイト上で何を表示し、どう案内するか」をAIが最適化するのに対し、コールセンターシステムは「通話の内容をどう記録・分析し、応対品質を上げるか」にAIを使います。どちらが優れているかではなく、問い合わせが多く集まっている接点がどこかで選ぶべきツールが変わります。ここで紹介した内容は各比較記事の掲載時点の情報のため、機能やプランの詳細は必ず各社の公式情報で確認してください。
Webサイトからの問い合わせや購入前の相談が多い企業であれば、まずはAIを搭載したWeb接客ツールの選び方を押さえておくと、対話型AIを活用するイメージが具体的になります。
対話型AIとは|自然言語処理で人間と会話するAI技術
対話型AI(Conversational AI)は、人が入力したテキストや話した音声を理解し、文脈に合った応答を自然な言葉で返すAI技術の総称です。英語の「Conversational AI」の訳語で、会話AI・対話AIと呼ばれることもあります。音声で応答するスマートスピーカーの音声アシスタントや、文章で質問に答えるChatGPTのような生成AIチャットは、いずれも対話型AIの代表例です。
対話型AIを支える技術
対話型AIは、1つの技術ではなく、複数の技術を組み合わせて成り立っています。中心にあるのは、人間の言葉をコンピューターで扱うための自然言語処理(NLP)です。自然言語処理は、さらに「言葉の意味や意図を読み取る」自然言語理解(NLU)と、「伝わる文章を組み立てる」自然言語生成(NLG)に分けて説明されることがあります。
| 技術 | 役割 | 会話の中での働き |
|---|---|---|
| 音声認識 | 話し言葉を文字に変換する | 電話やスマートスピーカーでの発話をテキストにする |
| 自然言語理解(NLU) | 文章の意図や重要な語句を読み取る | 「予約を変えたい」が日時変更の依頼だと判断する |
| 対話管理 | 会話の流れや文脈を保持する | 前の発言を踏まえて「それ」が何を指すかを判断する |
| 自然言語生成(NLG) | 応答の文章を組み立てる | 状況に合わせた言い回しで回答を返す |
| 音声合成 | 文字を音声に変換する | ボイスボットが回答を読み上げる |
| 機械学習・大規模言語モデル(LLM) | 大量のデータから言葉の使われ方を学習する | 言い回しが違っても同じ意図の質問だと理解できる |
以前の対話型AIは、あらかじめ想定した質問と回答の組み合わせを大量に登録し、その中から近いものを探す仕組みが中心でした。近年は、大量の文章を学習した大規模言語モデル(LLM)を使うことで、登録されていない聞き方の質問にも、文脈を踏まえて柔軟に応答できるようになっています。
実装形態はチャットボット型とボイスボット型
対話型AIは、ユーザーとどのようにやり取りするかによって、大きくチャットボット型とボイスボット型に分けられます。チャットボットは文字で、ボイスボットは音声で会話する形態です。どちらも中身の技術は共通する部分が多いものの、得意な場面や導入時に確認すべき点が異なります。
| 比較項目 | チャットボット型 | ボイスボット型 |
|---|---|---|
| やり取りの方法 | テキスト入力と画面表示 | 音声の発話と読み上げ |
| 主な設置場所 | Webサイト、LINEなどのメッセージアプリ、社内チャット | 電話窓口、スマートスピーカー、店舗や施設の案内端末 |
| 得意な場面 | URLや画像を示しながら案内したいとき、記録を残したいとき | 手がふさがっているとき、文字入力が苦手な利用者が多いとき |
| 導入時の確認点 | 回答の根拠データの整備、有人チャットへの切り替え方法 | 音声認識の精度、聞き返しや雑音への対応、通話録音の取り扱い |
| 利用者側の負担 | 自分のペースで読めるが、入力の手間がかかる | 話すだけで済むが、長い説明は聞き取りにくい |
このほか、Webサイト上のチャットを入り口にしながら、閲覧ページや行動履歴に応じて案内を出し分けるWeb接客ツールのように、対話型AIを販促や購買支援の機能の一部として組み込む使い方もあります。対話型AIを「チャット窓口」だけに限定して考えず、どの顧客接点に会話の仕組みを置くかという視点で捉えると、活用の幅が広がります。
生成AIとの違い
対話型AIと生成AIは、混同されやすい言葉です。生成AIは、文章・画像・音声などの新しいコンテンツを作り出すことに重点を置いたAIの総称です。一方、対話型AIは「人と会話すること」を目的としたAIの使い方を指します。つまり、ChatGPTのような生成AIチャットは「生成AIの技術を使った対話型AI」であり、両者は対立する概念ではなく、重なり合う関係にあります。
ビジネスの現場では、生成AIを使わない対話型AI(登録済みのFAQから回答を選ぶ仕組み)も、引き続き多く使われています。回答内容を厳密に管理したい手続き案内などでは、むしろ生成AIを使わない方式のほうが向いている場合もあります。生成AIそのものの基本は「チャットボットおすすめ10選(全15選)を徹底比較」などで紹介されているAI搭載型のサービスと見比べると、違いをつかみやすくなります。
対話型AIとルールベース型チャットボットの違い
「チャットボット」という言葉は、AIを使わないものも含めて広く使われています。対話型AIも広い意味ではチャットボットの一種ですが、従来型のルールベース型(シナリオ型)とは、会話の進め方に大きな違いがあります。導入後に「思っていたものと違った」とならないよう、方式ごとの特徴を整理しておきましょう。
チャットボットの主な3方式
| 方式 | 仕組み | 向いている用途 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| ルールベース型(シナリオ型) | あらかじめ作った分岐に沿って、選択肢を選んでもらいながら案内する | 手続きの案内、資料請求の受付など手順が決まった業務 | 想定外の質問や自由入力に答えられない |
| 辞書型・FAQ型 | 登録したキーワードや質問文と照合して回答を返す | よくある質問への定型回答 | 言い回しが違うと一致せず、登録の手間が大きい |
| AI型(対話型AI) | 質問の意図を読み取り、文脈に合った回答を選ぶか生成する | 質問の種類が多い問い合わせ窓口、社内ヘルプデスク | 誤った回答をするリスクがあり、精度の管理が必要 |
会話の進め方の違い
ルールベース型は、利用者が決められた選択肢を順番に選ぶことで答えにたどり着く仕組みです。たとえば「料金について」を選ぶと「個人向け」「法人向け」の選択肢が出る、といった流れです。案内する側が会話の流れを完全に管理できるため、誤った回答をする心配はほとんどありませんが、選択肢にない質問をしたい利用者は途中で行き詰まってしまいます。
対話型AIは、「先月から請求額が上がったのはなぜ」のような自由な文章を受け取り、その意図を読み取って回答します。同じ内容を「料金が急に高くなった」「請求が増えている」と別の言い方で聞かれても、同じ意図として扱える点が大きな違いです。また、直前のやり取りを踏まえて「では解約するとどうなる」と続けて聞かれた場合にも、何の解約かを文脈から判断できます。
現在の主流は組み合わせ型
実務では、どちらか一方だけを選ぶのではなく、両方を組み合わせるハイブリッド型が増えています。本人確認や申し込み手続きのように、手順を間違えてはいけない部分はシナリオで固定し、自由な質問への回答や会話の入り口の振り分けを対話型AIに任せる、という役割分担です。
自社にどの方式が合うかは、問い合わせの中身で判断できます。質問の種類が少なく答えが決まっているならルールベース型で十分なことも多く、質問の種類が多い、言い回しがばらばら、文脈を踏まえた回答が必要という場合ほど、対話型AIを使う意味が大きくなります。高機能な方式を選べば必ず成果が出るわけではない点に注意しましょう。
対話型AIの主な機能
対話型AIを搭載したサービスには、会話そのもの以外にも、運用を支える機能がそろっています。製品ごとに搭載範囲は異なりますが、比較検討の際に確認しておきたい代表的な機能は次のとおりです。
意図の理解と自動応答
中心となるのは、質問の意図を読み取って自動で回答する機能です。24時間いつでも応答できるため、営業時間外や休日に届く問い合わせにも対応できます。回答の根拠として、自社のFAQやマニュアル、商品情報などを読み込ませ、その範囲の中から回答を組み立てる仕組み(検索拡張生成、RAGと呼ばれます)を採用するサービスも増えています。根拠となる資料を限定することで、一般的な知識だけで答えるよりも、自社の実情に沿った回答をしやすくなります。
有人対応への切り替え
AIでは解決できない質問や、クレーム・解約相談など人が対応すべき案件を、オペレーターや担当者に引き継ぐ機能です。切り替えの際に、それまでの会話内容を担当者に引き渡せるかどうかで、利用者の満足度は大きく変わります。同じ説明を2回させない設計は、対話型AI導入で最も重視したいポイントの1つです。
多言語・マルチチャネル対応
日本語以外の言語で質問を受けて回答する多言語対応や、Webサイト、メッセージアプリ、電話など複数の窓口を1つの仕組みで管理するマルチチャネル対応も、代表的な機能です。訪日客や海外の取引先からの問い合わせがある企業、窓口ごとに回答内容がばらばらになりがちな企業では、特に効果が出やすい機能です。
会話ログの分析と改善
どんな質問が多いか、どの質問に答えられなかったか、どこで会話が途中で終わったかといった会話ログを集計・分析する機能です。答えられなかった質問は、FAQや回答の根拠資料に追加すべき情報の候補になります。対話型AIは導入して終わりではなく、このログをもとに回答内容を継続的に見直すことで精度が上がっていきます。
外部システムとの連携と業務の実行
顧客管理システムや予約システムと連携し、会話の中で予約の登録や変更、注文状況の確認などを実行する機能です。質問に答えるだけでなく手続きまで完結できるようになると、問い合わせ対応の工数削減効果が大きくなります。近年は、利用者の依頼を受けて複数の作業を自律的に進める「AIエージェント」と呼ばれる仕組みへの発展も注目されています。ただし、業務を実行させる範囲が広いほど、誤操作を防ぐための権限設定や確認手順も重要になります。
対話型AIの業界別の活用事例
対話型AIは、問い合わせが多い業務、同じ説明を繰り返す業務、時間帯を問わず対応が求められる業務で特に活用が進んでいます。代表的な活用シーンを業界・業務別に整理すると次のとおりです。
| 業界・業務 | 主な活用シーン | 向いている形態 |
|---|---|---|
| コールセンター | 一次受付の自動化、通話の文字起こし、応対内容の要約と記録 | ボイスボット型、通話解析型 |
| EC・小売 | 商品選びの相談、配送状況の確認、返品手続きの案内 | チャットボット型、Web接客型 |
| 施設案内・観光 | 館内やフロアの案内、多言語での観光案内、混雑状況の案内 | 案内端末のボイスボット型、多言語チャット |
| 金融・保険 | 各種手続きの案内、必要書類の確認、営業時間外の問い合わせ受付 | ハイブリッド型(手続き部分はシナリオで固定) |
| 自治体 | 住民からの手続きやごみ分別などの問い合わせ対応 | チャットボット型 |
| 社内ヘルプデスク | 人事・総務・情報システムへの問い合わせ対応、規程や手順書の検索 | 社内チャット連携のチャットボット型 |
コールセンターでの活用
コールセンターは、対話型AIの効果が見えやすい代表的な現場です。活用の方法は大きく2つあります。1つは、ボイスボットが電話の一次受付を担い、住所変更や営業時間の確認など定型的な用件をその場で完結させる方法です。もう1つは、オペレーターが応対している通話をAIがリアルタイムで文字起こしし、要約や記録の作成、回答候補の表示を支援する方法です。
後者は、AIが顧客と直接会話するわけではないため、誤った回答をそのまま顧客に伝えるリスクを抑えながら導入できる点が特徴です。通話の記録作業が減るだけでなく、話し方や応対の傾向を分析して、新人オペレーターの教育やノウハウの共有に活かすこともできます。まずは応対の見える化から始め、定型的な用件が整理できた段階で自動応答の範囲を広げると、無理のない導入になります。
電話での問い合わせが多く、オペレーターの負担や応対品質のばらつきに課題を感じている場合は、通話の文字起こしや音声解析などAI機能を備えたコールセンターシステムを比べてみると、対話型AIをどこから取り入れるかが具体的に見えてきます。
施設案内・観光での活用
商業施設や駅、空港、観光案内所などでは、案内端末やデジタルサイネージに対話型AIを組み込み、来訪者からの質問に音声や画面で答える使い方が広がっています。多言語に対応させれば、案内スタッフが外国語に対応できない時間帯でも、基本的な案内を続けられます。施設の地図や営業時間など、回答の根拠となる情報が比較的はっきりしているため、対話型AIを導入しやすい領域です。
EC・Web接客での活用
ECサイトやサービスサイトでは、購入をためらっている訪問者の疑問にその場で答えることが、成約率の向上につながります。対話型AIのチャットで商品の違いや配送条件に答えるほか、閲覧しているページや行動に合わせて案内やクーポンを出し分けるWeb接客ツールと組み合わせる企業もあります。問い合わせ対応のコスト削減だけでなく、売上につながる接客として位置づけられる点が、ほかの活用シーンとの違いです。
社内ヘルプデスクでの活用
「経費精算の締め日はいつか」「パスワードを忘れたときの手順は」といった社内の問い合わせは、同じ質問が繰り返し届きやすく、回答の根拠となる規程や手順書もそろっています。そのため、社外向けより先に社内ヘルプデスクで対話型AIを試し、回答精度や運用方法を確かめてから顧客対応に広げる企業も少なくありません。担当部署は問い合わせ対応の時間を減らせ、社員は担当者の在席を気にせず必要な情報にたどり着けるようになります。
対話型AIに任せる範囲を決める問い合わせの仕分け方
対話型AIの導入でつまずきやすいのが、「すべての問い合わせをAIに任せよう」と考えてしまうことです。実際には、AIに任せたほうがよい問い合わせと、人が対応すべき問い合わせがあります。導入前に過去の問い合わせ履歴を見直し、次のような観点で仕分けておくと、AIに任せる範囲を無理なく決められます。
| 問い合わせの特徴 | 例 | おすすめの対応 |
|---|---|---|
| 答えが1つに決まり、件数が多い | 営業時間、料金プランの違い、ログイン方法 | 対話型AIで自動回答する |
| 手順が決まっていて、間違いが許されない | 申し込み、住所変更、本人確認を伴う手続き | シナリオで手順を固定し、入り口の振り分けだけAIに任せる |
| 個別の事情によって答えが変わる | 契約内容に応じた見積もり、障害の原因調査 | AIが情報を聞き取り、担当者へ引き継ぐ |
| 感情への配慮や判断が必要 | クレーム、解約の相談、トラブルの報告 | 最初から人が対応する |
| 件数が少なく、内容がばらばら | 取材依頼、業務提携の打診 | 問い合わせフォームなどで人が受け付ける |
この仕分けを行うと、多くの企業では「件数は多いが答えは決まっている」問い合わせが全体のかなりの部分を占めていることに気づきます。最初はこの層だけを対話型AIに任せ、残りは人が対応するところから始めれば、回答の誤りによるリスクを抑えながら効果を確かめられます。仕分けの結果は、そのまま回答の根拠資料を整備する際の優先順位にもなります。
対話型AIの導入時によくある失敗パターンと対策
対話型AIは便利な技術ですが、準備や運用の進め方を誤ると、かえって問い合わせ対応の負担が増えることもあります。導入時によく見られる失敗と、その対策を整理しました。
| 失敗パターン | 起こりやすい結果 | 対策 |
|---|---|---|
| もっともらしい誤回答をそのまま公開した | 誤った料金や手続きを案内し、クレームにつながる | 回答の根拠を自社資料に限定し、公開前に人が回答を検証する |
| 回答の根拠となる情報が古いまま | 改定前の規約や終了したキャンペーンを案内してしまう | 情報の更新担当と更新のタイミングを決めておく |
| 人に切り替える導線がない | 解決しない利用者が離脱し、満足度が下がる | 有人対応への切り替え条件と会話の引き継ぎ方法を設計する |
| 入力内容の取り扱いを決めていない | 個人情報や機密情報が想定外の形で扱われる | 入力データの保存先・学習利用の有無を確認し、利用者に注意を表示する |
| 導入後に誰も改善しない | 答えられない質問が放置され、使われなくなる | 会話ログを定期的に確認する担当者と頻度を決める |
ハルシネーション対策
生成AIを使った対話型AIでは、事実と異なる内容をもっともらしく答えてしまう「ハルシネーション」が起こることがあります。完全になくすことは難しいため、起こる前提で仕組みを整えることが大切です。具体的には、回答の根拠を自社のFAQや規程などの資料に限定する、根拠が見つからない質問には「担当者におつなぎします」と答えるよう設定する、料金や契約条件など誤りが許されない内容はシナリオ型の固定回答にする、といった方法があります。
また、対話型AIの回答であることを利用者に明示し、重要な判断の前には公式の案内や担当者への確認を促す表示を入れておくと、誤回答が起きた場合の影響を小さくできます。
個人情報・機密情報の取り扱い
対話型AIには、利用者が氏名や連絡先、契約内容などの個人情報を入力することがあります。個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、個人情報を含むプロンプト(指示文)を入力する場合には、利用目的の範囲内かどうかを十分に確認するよう求めています。導入するサービスについては、入力データがどこに保存されるか、AIの学習に使われるかどうか、保存期間はどれくらいかを確認しておきましょう。
AIを事業で活用する際の考え方については、総務省・経済産業省が「AI事業者ガイドライン」を取りまとめており、AIを利用する事業者が留意すべき事項も示されています。ここで述べた内容は一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、最新の公的資料を確認したうえで、必要に応じて専門家に相談してください。
対話型AIサービスの選び方と導入ステップ
対話型AIを搭載したサービスは数多くあり、機能の差も大きいため、導入目的に合わないものを選ぶと期待した成果が出ないことがあります。選定時に確認したい観点と、導入の進め方を整理します。
選ぶときに確認したい6つの観点
| 観点 | 確認したいこと |
|---|---|
| 導入目的との一致 | 問い合わせ削減、成約率の向上、応対品質の改善のどれを最優先にするか |
| 設置したい顧客接点 | Webサイト、メッセージアプリ、電話、社内チャットのどこで使えるか |
| 回答方式と精度の管理 | シナリオ型・AI型を組み合わせられるか、回答の根拠を自社資料に限定できるか |
| 有人対応・外部システムとの連携 | オペレーターへの引き継ぎ、顧客管理システムなどとの連携ができるか |
| 分析と運用のしやすさ | 会話ログの集計や回答の修正を、専門知識がなくても行えるか |
| セキュリティとサポート | 入力データの扱い、権限管理、導入後のサポート体制が自社の基準を満たすか |
料金体系は、月額固定、会話数や利用者数に応じた従量課金、初期設定費用の有無などサービスによってさまざまです。料金表の金額だけで比べず、回答の根拠資料の整備や運用担当者の工数まで含めて、導入にかかる総コストで判断することが大切です。料金は改定されることがあるため、最新の条件は各社の公式情報で確認してください。
小さく始めて広げる導入ステップ
- 目的と対象範囲を決める:問い合わせ履歴を仕分けし、最初にAIに任せる問い合わせを絞り込む
- 回答の根拠を整える:FAQ、マニュアル、規程などを最新の状態にし、重複や矛盾をなくす
- 試験導入する:社内ヘルプデスクや一部のページなど、影響が限られる範囲で試す
- 効果を測る:自己解決率、有人対応への切り替え率、答えられなかった質問の件数を確認する
- 範囲を広げる:改善を重ねて精度を確かめてから、対象の問い合わせや顧客接点を増やす
Webサイトを主な顧客接点にしている企業であれば、問い合わせ対応だけでなく、訪問者の行動に合わせた案内や改善の自動化まで含めて検討すると、対話型AIの導入効果を広げやすくなります。AIを搭載したWeb接客ツールがどのような機能を持ち、どんな基準で選べばよいかを確認しておくと、選定の判断材料がそろいます。
よくある質問
Q. 対話型AIとは簡単にいうと何ですか?
A. 人が入力した文章や話した言葉の意味を理解し、自然な会話の形で応答するAI技術です。自然言語処理や機械学習を土台にしており、チャットで答えるチャットボット型と、音声で答えるボイスボット型があります。
Q. 対話型AIとチャットボットは同じものですか?
A. 広い意味では対話型AIもチャットボットの一種ですが、従来のルールベース型チャットボットは決められた選択肢に沿って案内するのに対し、対話型AIは自由な文章から意図を読み取り、文脈を踏まえて応答できる点が異なります。
Q. 対話型AIと生成AIの違いは何ですか?
A. 生成AIは文章や画像などを新しく作り出すAIの総称で、対話型AIは人と会話することを目的としたAIの使い方を指します。ChatGPTのように生成AIの技術を使った対話型AIもあれば、生成AIを使わずFAQから回答を選ぶ対話型AIもあります。
Q. 対話型AIはどのような業務に向いていますか?
A. 件数が多く答えが決まっている問い合わせ対応に向いています。代表例は、Webサイトの接客や問い合わせ対応、コールセンターの一次受付や通話記録、施設案内、社内ヘルプデスクです。クレームや個別判断が必要な相談は、人が対応するほうが適しています。
Q. 対話型AIが間違った回答をしないようにするには?
A. 回答の根拠を自社のFAQや規程などに限定する、根拠がない質問は担当者に引き継ぐ、料金や契約条件などはシナリオ型の固定回答にする、といった方法が有効です。導入後も会話ログを定期的に確認し、回答内容を見直すことが大切です。
Q. 対話型AIの導入はどこから始めればよいですか?
A. まず過去の問い合わせ履歴を仕分けし、答えが決まっていて件数の多い問い合わせから対象にするのがおすすめです。社内ヘルプデスクや一部のページなど影響の限られる範囲で試験導入し、効果を確かめてから範囲を広げると失敗しにくくなります。
まとめ
対話型AIは、自然言語処理や大規模言語モデルを使って、人の言葉を理解し自然に応答するAI技術です。チャットボット型とボイスボット型があり、従来のルールベース型と比べて、自由な質問や文脈を踏まえた会話に対応できる点が特徴です。一方で、誤った回答のリスクや個人情報の扱いなど、導入前に押さえておくべき注意点もあります。
導入を成功させるポイントは、すべてをAIに任せようとせず、問い合わせを仕分けてAIに任せる範囲を決めること、そしてWeb接客やコールセンターなど、活用したい顧客接点に合ったツールを選ぶことです。まずは自社の問い合わせ履歴を見直し、どの接点から対話型AIを取り入れるかを整理するところから始めてみてください。
参考文献
- 総務省「AI事業者ガイドライン」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/
この記事に興味を持った方におすすめ