【行政書士監修】AIリーガルチェック(契約書レビュー)は非弁行為?|論点とガイドラインを解説

Check!
- AIリーガルチェックは、AI技術を用いて契約書修正案などを提示してくれるサービスである
- AIリーガルチェックは、弁護士法72条に違反する可能性があるとして論議されていた
- ガイドラインの公表により、法的に争いがない取引に関する契約は適法とされている
AIリーガルチェックは、契約書の文書データをAIが自動でチェックする便利なサービスですが、非弁行為に当たるのではないかという議論もあり、法務省よりガイドラインが公表されました。本記事では、法律の専門家、行政書士の岡高志さんにコメントをいただきながら、非弁行為となるのかの論点と、ガイドラインに基づいた見解などを解説します。
※監修者は「AI契約書レビューは非弁行為?」「注意点」についてのみ監修をおこなっており、その他の部分については監修者が監修したものではありません。

監修者
行政書士
岡 高志
行政書士 2011 年登録、社会福祉士 2015 年登録、経営革新等支援機関、雪谷法人会会員、NPO 法人Code for OTA 代表理事、DX 行政書士推進会議 会長、東京都・大田区議会議員(2011 年~2019 年)、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了、東京大学法学部卒業、洛南高校卒業
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行政書士が答える!AI契約書レビューは非弁行為?
AI技術の進化は目覚ましく、ビジネスの現場でも様々な形で活用が進んでいます。契約書レビューもその一つで、AIが契約書の不備やリスクを指摘するサービスが登場しています。しかし、法律に関わる業務である以上、「AIによる契約書レビューは、法律で定められた専門職(弁護士など)以外の者が法律事務を行うことを禁じる『非弁行為』に当たるのではないか?」という疑問が湧いてくるのも当然です。
この疑問に対し、行政書士の岡さんはどのように考え、そしてどのような見解を示すのでしょうか。
以上のことから、AI契約書レビューの適法性は、そのサービス提供主体、報酬の形態、そして専門家(弁護士や行政書士など)の関与の度合いによって判断が分かれると言えるでしょう。AIは強力なツールであり、法律業務を効率化する可能性を秘めていますが、その利用は常に既存の法律規制の枠内で慎重に行われる必要があります。
法務省からのガイドライン公表

リーガルチェックツール(AI契約書レビューツール)と「非弁行為」との関連性は長年問題視されていました。
そのため、法務省は2023年8月1日、契約書をAIが審査するサービスについてガイドラインを公表、問題に対する明確な基準と判断を確立しました。
参考:AI等を用いた契約書関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について|法務省
参考:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表|経済産業省
そもそも非弁行為とは

岡さんのコメントにもあるように、非弁行為とは、法律事務に関連する業務を、弁護士資格を持たない者が行うことを指します。
弁護士は法律事務を専門的に行うための資格を持っており、法的なアドバイスや法律に則った代理・弁護を行うことができますが、弁護士資格を持たない者が同様の業務を行うことは、法的な規制に違反する非弁行為とされます。
弁護士法では、非弁行為に関する規定が「法律事務の取扱いに関する取締り」として、72条・73条・74条が定められています。これらの弁護士法について、以下で詳しく解説します。
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弁護士法72条
弁護士法72条では、非弁行為(法律事務を弁護士以外の者が行うこと)を禁止しています。法律事務とは何か、弁護士または弁護士ではない者が行えることを明確に定めています。
つまり、法律に関する専門的な仕事をするには、弁護士の資格が必要とされると規定しています。弁護士資格を保有しない他の人物・専門家が、法的なアドバイスや法的な業務を行う場合、その行為自体が非弁行為となり、法的な問題が生じることを意味しています。
弁護士法73条
弁護士法73条は、非弁行為に対する法的な規定・違反行為に対する罰則に関する法律です。法律事務を行う権利や専門性を持たない者が、弁護士の業務に干渉することを禁止し、それに対する制裁を規定しています。
73条には、非弁行為を行う者は厳格な罰則を受ける可能性があり、罰金・懲役刑または弁護士資格の免許取り消しといった処分も含まれるとされています。
つまり、法的な制裁を設けて非弁行為の防止を促進し、法務業務の質と信頼性を保つことを目的としています。
弁護士法74条
弁護士法74条は、非弁行為によって得られた報酬や利益に関する規定です。仮に非弁行為によって金銭的な報酬や利益を得た場合、その報酬や利益に対する取り決めを定めています。
具体的には、非弁行為で得られた報酬や利益は法的に問題があるため、弁護士法に違反します。したがって、74条は非弁行為によって得られた資金を適切な弁護士に還元し、不正な報酬や利益の発生・取得を防ぐことを目的としています。
AIリーガルチェックが非弁行為となり得るのかの論点

AI技術を活用した、AIリーガルチェックが非弁行為に該当するかどうかの判断は、弁護士法72条に該当するかどうかが重要な焦点です。従来までは、「その他一般の法律事件」に当たる可能性と「鑑定」の部分に該当するかが争点となっていました。
しかし、2023年8月1日に法務省が公表したガイドラインにより、AIリーガルチェックについての明確な基準と認識が示され、これまでのグレーゾーンが一部解消されました。
つまり、AIリーガルチェックはガイドラインに基づいた判断が行われるため、非弁行為に該当するかどうかが明確化されつつあります。
法的に争いがない取引に関する契約は「適法」

法務省が2023年8月1日に公表したガイドラインにより、AIを活用した契約書のリーガルチェックが法的な争議のない取引に関連する契約に対しては「適法」であることが明確に規定されました。
このガイドラインでは、AIリーガルチェックにおいて、システムに登録されたひな形と契約書の文言を比較し、相違がある場合、AIリーガルチェックは鑑定に該当しないとの判断が下されました。
その結果、法的な争議の発生が少ない取引に関する契約において、AIを導入したリーガルチェックは適法であることが認められました。
参考:AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について|法務省
参考:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表|経済産業省

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行政書士が教える!AI契約書レビューサービスを利用する際に気をつけるべきこと3選

AI契約書レビューサービスは、契約業務の効率化とリスク管理において非常に有効なツールですが、その導入と運用には、法的観点からの注意点がいくつか存在します。単にシステムを導入すれば良いというわけではなく、適切な利用方法を理解していなければ、予期せぬ法的リスクや業務上の問題を引き起こす可能性もあります。
ここでは岡さんに、行政書士の専門的知見に基づき、AI契約書レビューサービスを安全かつ効果的に活用するために、特に注意すべき3つのポイントを解説していただきます。これらの点を押さえることで、サービスのメリットを最大限に享受しつつ、潜在的なリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
非弁行為に巻き込まれないようにする

行政書士
岡 高志
AI サービスがユーザーの契約内容に対して法的助言を提供している場合、弁護士法に違反する非弁行為となる恐れがあります。ユーザーがそのサービスを利用し、その結果を鵜呑みにして実行すると、自らが違法行為に関与したと見なされるリスクもゼロではありません。サービス提供元が適法な主体かどうかを慎重に確認する必要があります。
非弁行為への関与は、利用企業にとって看過できないリスクを伴います。AIサービスの利便性だけでなく、その提供形態が法的に適正であるかを厳しく見極めることが、予期せぬトラブルから身を守るための第一歩となるでしょう。
レビュー結果の法的保証がないことを理解する

行政書士
岡 高志
AI が出力した契約書のレビュー内容には、法的な責任や保証が伴わないことが一般的です。AI はあくまで統計的・言語的に可能性の高い問題点を指摘しているに過ぎず、実際にその指摘が法的に正しいとは限りません。利用者はAI の指摘を参考情報として受け止め、必要に応じて弁護士や行政書士といった専門家の判断を仰ぐことが大切です。
AIが生成するレビュー内容は、あくまで統計的・言語的に可能性のある問題点を指摘しているに過ぎず、実際にその指摘が法的に完全に正しいとは限りません。法律は、文脈、判例、解釈によって多岐にわたるため、画一的なAIの判断には限界があります。利用者はAIの指摘をあくまで「参考情報」として受け止める姿勢が極めて重要です。AIが出力した結果に基づいて安易に契約書を修正したり、そのまま締結したりすることは避け、必ず具体的な状況に合わせて、弁護士や行政書士といった法律の専門家の判断を仰ぎ、適切なアドバイスを受けることが大切です。
個人情報や機密情報の取扱いに注意する

行政書士
岡 高志
契約書には企業秘密や個人情報が多く含まれるため、それを外部AI サービスにアップロードする際は、情報漏洩のリスクを考慮する必要があります。利用前には、サービス提供者のプライバシーポリシーやセキュリティ体制を確認し、必要に応じて機密保持契約(NDA)を締結することも検討すべきです。
契約書に含まれる情報は企業の根幹に関わる重要な資産であり、その取り扱いには最大限の注意が必要です。AIサービスの利便性を享受する一方で、情報漏洩のリスクを徹底的に管理し、信頼できるサービスを選定することが、企業の安全なデジタル化を推進する上での必須条件になります。
AIリーガルチェックの全面無償化の動き

従来まで有償による提供がされてきたAIリーガルチェックは、法務省が2022年10月にグレーゾーン解消制度において、「違法の可能性が否定できない」と回答しました。それを受け、AIリーガルチェックに関するサービスの全面無償化の動きが加速化しています。
この動きは、弁護士法74条に伴う正当な弁護士への還元にもつながり、利用者の費用負担軽減にも貢献します。クラウド上で契約書の全条文を自動でチェックすることにより、法的なリスクを迅速に回避することができます。
まとめ

近年、AIを活用したリーガルチェックが急速に普及しており、その合法性に関する懸念点がありました。しかし、法務省からのガイドライン公表により、AIリーガルチェックが適法であるかの判断に明確なラインが設けられました。
AIリーガルチェックは、契約書の文言とシステムに登録されたひな形との相違がある場合、法的な争いがない取引においては「適法」と認められています。
つまり、AIは契約書の文言の一貫性を確認するだけでなく、法的なアドバイスを提供せず、鑑定にも該当しない範囲での利用が許可されています。
法的な争いのない契約書や文書のリーガルチェックにAIを導入することは適法であり、法務における業務効率化と精度向上に大きく貢献するでしょう。
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まず、非弁行為の定義を明らかにします。非弁行為とは、弁護士法第 72 条に定められる通り、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うことです。「契約書レビュー」は、鑑定という点で法律事務に該当します。そのため、「AI契約書レビューサービス」を提供する機関が、弁護士法人であるなど、非弁行為の指摘をされない組織であることが望ましいと言えます。一般的な生成AI でも契約書レビューを行うことができます。この場合は、生成AI に課金していたとしても、契約書レビューの部分に対して積極的に報酬が支払われたとは言えず、非弁行為には該当しないでしょう。 ちなみに、行政書士は、行政書士法第1条の2に定められる通り、他人の依頼を受け報酬を得て、権利義務に関する書類を作成することができます。契約書作成を行うことが認められており、その一環として、契約書のレビューを行うことも認められます。つまり、行政書士が「AI契約書レビューサービス」を提供することも容認される可能性があります。