36協定の残業時間の上限は?月45時間・年360時間と特別条項を解説

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  • 残業の上限は月45時間・年360時間
  • 特別条項でも守る4つの上限がわかる
  • 2026年9月からの指導の変化がわかる

36協定で定められる残業時間(時間外労働)の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって特別条項付きの36協定を結んだ場合でも、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2か月から6か月のどの平均でも月80時間以内、月45時間を超えるのは年6回までという上限を守る必要があります。この記事では、上限の数字を表で整理したうえで、特別条項の4つの条件、月45時間を1日に直した目安、上限を超えたときの罰則、2026年9月1日から変わった労働基準監督署の指導の運用、上限内に収めるための勤怠の管理方法までを、公的な資料にもとづいて解説します。個別の判断は、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご確認ください。

36協定の残業時間について、まず読むべきポイントを診断

Q1. 36協定の残業時間について、いま一番知りたいことはどれですか?

目次

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  1. 36協定の残業時間の上限|原則は月45時間・年360時間
  2. 特別条項付き36協定の上限|年720時間・月100時間未満・平均80時間以内・年6回
  3. 月45時間は1日何時間?残業時間の換算と数え方
  4. 36協定の上限を超えるとどうなる?罰則と企業のリスク
  5. 2026年に変わったこと・変わっていないこと|監督指導の運用見直し
  6. 36協定の締結から届出まで|誰と結び、どこへ出すか
  7. 36協定の残業時間を上限内に収める管理方法|月途中の見える化と記録
  8. 上限管理のあとに残る課題|残業代の計算から給与・労務手続きまで
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|36協定の残業時間で押さえたい5つのこと
  11. 参考文献

36協定の残業時間の上限|原則は月45時間・年360時間

36協定で定められる残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情がなければ、この限度時間を超えて働かせることはできません。

労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間・1週40時間以内と定められています(第32条)。これを法定労働時間といい、超えて働かせるには、労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者と書面で協定を結び、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。これが労働基準法第36条にもとづく労使協定で、条文の番号から36(サブロク)協定と呼ばれます。法定休日(毎週少なくとも1回)に働かせる場合も同じです。

36協定を結んでも、残業を無制限にさせられるわけではありません。2019年4月(中小企業は2020年4月)に施行された働き方改革関連法で、時間外労働の上限が罰則つきで法律に定められました(第36条第3項から第5項)。次の表は、その上限を整理したものです。

項目 原則(限度時間) 臨時的な特別の事情があり、特別条項を結ぶ場合
1か月の時間外労働45時間以内45時間を超えられるのは年6回(6か月)まで
1年の時間外労働360時間以内720時間以内
1か月の時間外労働と休日労働の合計100時間未満100時間未満
2か月から6か月のそれぞれの平均(時間外労働と休日労働の合計)1か月あたり80時間以内1か月あたり80時間以内

1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合の限度時間は、月42時間・年320時間です(第36条第4項)。月100時間未満と平均80時間以内は、特別条項の有無にかかわらず、1年を通して守らなければならない上限です。

上限の対象は、所定外ではなく法定労働時間を超えた時間

ここでいう時間外労働は、会社が決めた所定労働時間を超えた時間ではなく、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えた時間です。たとえば所定労働時間が7時間30分の会社で30分残業しても、その日の労働が8時間以内なら、法律上の時間外労働にはなりません(賃金の扱いは就業規則や契約によります)。厚生労働省の解説資料も、法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく「法定外労働時間」の超過時間で判断されると説明しています。

また、月45時間・年360時間の限度時間に数えるのは時間外労働だけで、法定休日に働いた時間は含まれません。一方、月100時間未満と平均80時間以内は、時間外労働と休日労働を合計して判断します。たとえば時間外労働が44時間でも、休日労働が56時間あれば合計は100時間になり、上限を超えます。

上限を守るには、月の途中で労働時間が見えていることが前提

月45時間という上限は、月が終わってから集計して気づいても手遅れです。月の途中で残業時間が見えなければ、特別条項を使うかどうか、誰の業務を調整するかを判断できません。しかも確認する数字は、月ごとの時間外労働、年間の累計、月45時間を超えた回数、休日労働を含めた合計、複数月の平均と、1つではありません。タイムカードやExcelで月末に集計していると、これらを毎月手作業で突き合わせることになります。勤怠管理システムは、打刻データから労働時間を自動で集計し、基準に近づくとアラートで知らせる役割を担います。次の表は、残業時間の管理という観点で、役割の違う3つのサービスを並べたものです。

残業時間の上限管理を支える、役割の違う3つのサービス

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特別条項付き36協定の上限|年720時間・月100時間未満・平均80時間以内・年6回

特別条項付きの36協定を結べば、月45時間・年360時間を超えて残業させることができます。ただし、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2か月から6か月のどの平均でも月80時間以内、月45時間を超えるのは年6回までの4つを、すべて守る必要があります。

特別条項を結べるのは、臨時的な特別の事情があるとき

特別条項は、通常予見することのできない業務量の大幅な増加などに伴い、臨時的に限度時間を超えて働かせる必要がある場合に結べるものです(第36条第5項)。法律は、通常予見される時間外労働は限度時間の範囲内に収めることを前提にしています(第36条第3項)。特別条項を結ぶときは、次の事項を協定で定めます(第36条第5項、労働基準法施行規則第17条)。

  • 1か月の時間外労働と休日労働の合計時間(100時間未満)
  • 1年の時間外労働の時間(720時間以内)
  • 限度時間を超えられる回数(年6回以内)
  • 限度時間を超えて労働させることができる場合
  • 限度時間を超えて労働させる労働者の健康及び福祉を確保するための措置
  • 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率
  • 限度時間を超えて労働させる場合の手続

4つの上限と、数える対象の違い

4つの上限は、数える対象が同じではありません。時間外労働だけで数えるものと、休日労働を合算して数えるものが混在しているため、同じ集計表で見ていると取り違えやすくなります。

上限 数え方 数える対象
年720時間以内協定の対象期間(1年間)の合計時間外労働のみ(休日労働は含まない)
月100時間未満1か月ごと時間外労働と休日労働の合計
2か月から6か月の平均が月80時間以内対象の月と、その直前の1か月から5か月を加えたそれぞれの平均時間外労働と休日労働の合計
月45時間を超えるのは年6回まで月45時間を超えた月の数時間外労働のみ(休日労働は含まない)

複数月の平均80時間は、どの組み合わせでも確認する

平均80時間以内の上限は、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均でも守る必要があります。厚生労働省の解説資料によると、この平均は36協定の対象期間にかかわらず計算します。次の表は、時間外労働と休日労働の合計が12月に85時間、1月に70時間、2月に90時間だった場合の計算例です。数字は計算のしかたを示す仮の値で、それ以前の月は少ないものとします。

判定する期間 平均の計算 結果
2か月平均(12月と1月)(85 + 70) ÷ 2 = 77.5時間80時間以内
2か月平均(1月と2月)(70 + 90) ÷ 2 = 80.0時間80時間以内
3か月平均(12月から2月)(85 + 70 + 90) ÷ 3 = 約81.7時間80時間を超えるため、上限を超える

2か月平均はどちらも80時間以内でも、3か月平均で超えるため、この例は上限を超えます。毎月、直前の1か月から5か月までの平均を手計算で出し続けるのは負担が大きく、見落としやすい箇所です。月ごとの時間外労働と休日労働を合算し、複数月の平均を自動で出せる仕組みがあるかどうかが、運用の負担を左右します。

月45時間を超えた回数(年6回)の数え方

月45時間を超えられるのは、1年のうち6か月までです。数えるのは時間外労働だけで、休日労働は含まれません。たとえば毎月ではなく1か月おきに46時間の時間外労働があり、1年で7か月に45時間を超えた場合、7回目の月で上限を超えます(厚生労働省の解説資料の事例)。月45時間以内に収まった月は、回数に数えません。

上限の適用が猶予・除外される業務

次の事業・業務には、上限規制に特例があります。2024年4月1日に猶予期間が終わったものがあるため、古い解説を参考にしていないか確認してください。

事業・業務 現在の扱い
建設事業2024年4月から、災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用。災害の復旧・復興の事業は、月100時間未満と平均80時間以内の規制は適用されない
自動車運転の業務2024年4月から、特別条項付き協定の年間の時間外労働の上限が年960時間。月100時間未満と平均80時間以内、月45時間超は年6回までの規制は適用されない
医師2024年4月から、医師の時間外・休日労働の上限は別に定められている(最新の内容は厚生労働省の医療機関の勤務環境改善に関する情報で確認)
鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業2024年4月から、上限規制がすべて適用
新技術・新商品等の研究開発業務上限規制の適用が除外。ただし、週40時間を超えた時間が月100時間を超えた労働者には、医師の面接指導が罰則つきで義務

労働基準法第41条第2号の「監督又は管理の地位にある者」は、労働時間に関する規定の適用が除外されます。ただし、管理監督者やみなし労働時間制の対象者についても、労働安全衛生法にもとづく労働時間の状況の把握は必要です。該当するかどうかは個別の事情で判断されるため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。この記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的助言ではありません。

特別条項の年6回の回数管理と複数月平均の確認は、月末の集計だけでは間に合いません。36協定の設定とアラートで、月の途中から超過の気配をつかむ方法があります。

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月45時間は1日何時間?残業時間の換算と数え方

月45時間の残業は、月の労働日を20日とすると、1日あたり約2時間15分です。年360時間は、1か月平均では30時間にあたります。

上限を実感するには、1日あたりに直してみるのが近道です。次の表は、上限の数字を労働日数で割った目安です。実際の残業は日によって偏るため、あくまで目安として使います。

上限 換算の式 目安
月45時間(月20労働日)45 ÷ 201日あたり約2時間15分
月45時間(月21労働日)45 ÷ 211日あたり約2時間9分
年360時間360 ÷ 121か月平均30時間
年720時間720 ÷ 121か月平均60時間
月80時間(月20労働日)80 ÷ 201日あたり4時間
月100時間(月20労働日)100 ÷ 201日あたり5時間(100時間未満が上限)

月80時間と月100時間は、時間外労働と休日労働の合計です。休日に働いた日がある月は、その分、平日に残業できる時間が小さくなります。

時間外労働と休日労働の分け方

時間外労働と休日労働は、労働基準法では別のものとして扱います。たとえば、月曜から金曜まで1日8時間働く会社で、法定休日を日曜とした場合を考えます。土曜に出勤すると、その週の労働は40時間を超えるため、土曜の労働は時間外労働です。日曜に出勤すれば、法定休日に働いたことになるため、休日労働です。この区別によって、月45時間・年360時間に数えるか、月100時間未満・平均80時間以内にだけ数えるかが変わります。

1か月未満の期間で働く労働者の時間外労働については、厚生労働大臣の指針(第6条)が、目安時間として1週間15時間、2週間27時間、4週間43時間を示し、超えないよう努めることとしています。

1日6時間の残業は違法か

法律には、坑内労働など健康上特に有害な業務(1日2時間まで)を除いて、1日の時間外労働の一律の上限は定められていません(第36条第6項第1号)。ただし、36協定には1日、1か月、1年のそれぞれについて延長できる時間を定める必要があり(第36条第2項第4号)、その範囲を超えると、36協定を超えた労働として労働基準法第32条違反となります。

1日6時間の残業は、月45時間に約8日で届く計算です(45 ÷ 6 = 7.5)。特別条項がなければ、月の前半で上限に達します。また、労働時間が8時間を超える日は、少なくとも1時間の休憩が必要です(第34条)。始業9時、終業18時(休憩1時間)の会社で6時間残業すると、24時近くまでの勤務になり、午後10時から午前5時までの深夜労働にもあたります。1日6時間という時間だけで違法かどうかは決まらず、36協定の1日の限度、月・年の上限、休憩、深夜の割増などを合わせて判断します。個別の判断は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

残業の割増賃金の率

法定労働時間を超えた時間外労働には、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払います。1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は、50%以上です。午後10時から午前5時までの深夜労働にも25%以上の割増賃金が必要です(第37条)。割増の率は、上限の管理と同じ時間データから計算するため、勤怠の記録に誤りがあると、上限だけでなく賃金の支払いにも影響します。残業代と休憩時間の考え方は、半休(半日休暇)とは?有給との違いや残業代・休憩時間の考え方も解説でも整理しています。打刻した時間を15分単位などに丸める運用の可否は、15分単位の勤怠管理は違法?正しい勤怠管理や残業時間について解説をご覧ください。

36協定の上限を超えるとどうなる?罰則と企業のリスク

36協定を結ばずに時間外労働をさせた場合や、協定で定めた時間を超えさせた場合は労働基準法第32条違反、時間外労働と休日労働の合計が月100時間以上、または2か月から6か月の平均が80時間を超えた場合は第36条第6項違反となり、いずれも6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となりえます(第119条)。

上限を超える主な場合 根拠
36協定を結ばず、または届け出ずに時間外労働・休日労働をさせた第32条、第36条第1項
36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた第32条
月45時間を超える月が年7回以上になった、または年360時間・年720時間を超えた第36条第3項から第5項(上限の定め)
時間外労働と休日労働の合計が、1か月で100時間以上になった第36条第6項第2号
時間外労働と休日労働の合計の平均が、2か月から6か月のいずれかで80時間を超えた第36条第6項第3号

罰則の対象になるかどうかは、事案ごとに判断されます。この表は条文と厚生労働省の解説資料から整理した一般的な説明で、法的助言ではありません。個別の事案は、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご相談ください。

罰則のほかに企業が負う義務とリスク

上限を超えた時間外労働には、割増賃金の支払いが必要です。支払いが漏れると、賃金の未払いという別の問題にもなります。また、労働安全衛生法にもとづき、事業者は、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えた時間が1か月に80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、医師による面接指導を行う必要があります(労働安全衛生規則第52条の2、労働安全衛生法第66条の8)。面接指導の対象となる時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行うこととされ、80時間を超えた労働者には、その時間の情報を速やかに通知しなければなりません。

時間外労働の上限(法定労働時間を超えた時間)と、面接指導の対象になる時間(週40時間を超えた時間)は、計算の方法が異なります。変形労働時間制やフレックスタイム制を使っている場合も、面接指導の要件は週40時間を基準に数える点に注意が必要です(厚生労働省の解説資料)。2つの時間を別々に集計していると、どちらかの確認が漏れやすくなります。

2026年に変わったこと・変わっていないこと|監督指導の運用見直し

36協定の法律上の上限は、労働基準法第36条の現行の条文(e-Gov法令検索、2026年10月19日確認)で、月45時間・年360時間、特別条項の年720時間・月100時間未満・平均80時間以内・年6回のとおりです。変わったのは運用で、2026年9月1日から、労働基準監督署の指導と相談支援の内容が見直されています。

厚生労働省は2026年(令和8年)8月19日に、「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」と発表しました。2026年7月21日に閣議決定された「日本成長戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針2026」を踏まえたもので、9月1日から全国の働き方改革推進支援センターと労働基準監督署で、次の取組を行うとしています。

見直しの項目 発表されている内容
36協定の締結等に関する相談・支援の充実働き方改革推進支援センターに、36協定や特別条項の締結、柔軟な労働時間制度の活用を支援する専門相談窓口を設ける。センターと労働基準監督署(労働時間相談・支援班)のチームで、アウトリーチ型の訪問支援を行う。よろず支援拠点や商工会議所等との連携も強化する
労働基準監督署における対応の見直し時間外・休日労働の時間数のみに着目して、1か月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直す。各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認し、状況に応じた必要な指導を行う。過重労働による健康障害が生じるおそれが高い場合には、引き続き必要な指導を行う

発表の読み方|上限が緩んだわけではない

発表文は、指導の見方を「時間数だけ」から「36協定で定めた措置の実施状況」へ移すと述べています。月45時間・年360時間などの上限そのものを緩めるとは書かれていません。上限を超えれば、これまでどおり労働基準法違反となりえます。違いは、時間数の多寡だけでなく、協定で約束した健康・福祉確保措置が実際に実施されているかが、重点的に見られる点です。

36協定に定める健康・福祉確保措置と、実施状況の記録

限度時間を超えて労働させる労働者の健康及び福祉を確保するための措置は、特別条項で協定する事項です(労働基準法施行規則第17条)。厚生労働大臣の指針は、措置として次のものから協定することが望ましいとしています。

番号 措置の例
1.医師による面接指導
2.深夜業(22時から5時)の回数制限
3.終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
4.代償休日・特別な休暇の付与
5.健康診断
6.連続休暇の取得
7.心とからだの相談窓口の設置
8.配置転換
9.産業医等による助言・指導や保健指導

さらに、労働基準法施行規則第17条第2項は、この措置の実施状況に関する記録を、協定の有効期間中と、その満了後の一定期間、保存するよう定めています。協定に書いただけでは足りず、誰に、いつ、どの措置を実施したかを、後から示せる形で残す必要があります。月の途中で対象者を把握し、面接指導や休息時間の確保といった措置の実施と記録まで、勤怠データと結びつけて管理できているかが、運用の見直しで問われる点です。

36協定の締結から届出まで|誰と結び、どこへ出すか

36協定は、労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者と書面で結び、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。届出をして初めて、協定の範囲内で時間外労働や休日労働をさせることができます(第36条第1項)。

協定を結ぶ相手|過半数代表者の要件

労働者の過半数で組織する労働組合がない事業場では、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)と結びます。労働基準法施行規則第6条の2は、過半数代表者について、次のいずれにも該当する者とします。

  • 監督又は管理の地位にある者(管理監督者)でないこと
  • 協定をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続で選出された者であること
  • 使用者の意向に基づき選出された者でないこと

使用者は、労働者が過半数代表者であること、またはなろうとしたこと、正当な行為をしたことを理由に、不利益な取扱いをしてはいけません。

届出の様式と、電子申請

届出には、特別条項がない場合は様式第9号、特別条項を結ぶ場合は様式第9号の2を使います(厚生労働省の解説資料)。協定には、時間外労働や休日労働をさせる業務や労働者の範囲、対象期間(1年間に限る)、1日・1か月・1年それぞれの延長できる時間、有効期間などを定めます(第36条第2項、労働基準法施行規則第17条)。届出は、e-Govから電子申請もでき、法に適合した内容かどうかを確認できる作成支援ツールも、厚生労働省が用意しています。36協定届と36協定は別のものである点にも注意が必要です。

36協定で定める「労働させることができる労働者の範囲」は、正社員に限りません。パートタイムやアルバイトを含め、法定労働時間を超えて働かせる労働者が対象になるため、雇用形態にかかわらず、どの業務のどの労働者を対象にするかを協定に書き分けます(第36条第2項第1号)。

対象期間は1年に限られるため、毎年更新する

36協定の対象期間は、1年間に限られます(第36条第2項第2号)。更新の届出をしないまま期間が切れれば、その日以降は協定のない状態になり、時間外労働をさせられません。毎年、期間が切れる前に、内容を見直して届け出ます。見直しの際は、前年の実績(月ごとの時間外労働、45時間を超えた回数、休日労働の合計)をもとに、協定で定める時間が実態に合っているかを確認します。月ごとの実績を勤怠データから素早く出せるかどうかが、この作業の手間を左右します。

36協定の残業時間を上限内に収める管理方法|月途中の見える化と記録

残業時間を上限内に収めるには、毎日の労働時間を客観的に記録し、月の途中で上限との距離を確認し、超過しそうな従業員へ早めに知らせる仕組みが必要です。

毎日の労働時間を客観的に記録する

労働基準法には、労働時間、休日、深夜業などの規定があるため、使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で、具体的な措置を示しています(厚生労働省の解説資料)。自己申告だけに頼ると、実際の勤務と記録のずれが残りやすくなるため、打刻やログなどの客観的な記録を基本にします。

確認する数字と、アラートの段階を決める

次の表は、上限管理で確認する数字を整理したものです。アラートの値は法律で決まっているものではなく、自社で決める運用上の目安です。たとえば月45時間の上限に対して、30時間、40時間、44時間のように段階を分け、本人と上長に通知すると、手遅れになる前に業務を調整できます。

確認する数字 確認のタイミング 見る基準
個人ごとの月の時間外労働毎日、少なくとも毎週月45時間(特別条項がある場合は年6回の枠内)
年間の時間外労働の累計毎月年360時間(特別条項がある場合は年720時間)
月45時間を超えた月の数月が変わるごと年6回まで
時間外労働と休日労働の合計毎週月100時間未満
複数月(2か月から6か月)の平均毎月月80時間以内
週40時間を超えた時間の月の合計毎月80時間超で医師の面接指導の対象となりうる

これらを1人ずつ手作業で集計すると、対象の従業員が増えるほど抜け漏れのリスクが高まります。月の途中で労働時間を集計し、残業可能時間を超えそうな従業員に通知する一例が、jinjer株式会社が提供するジンジャー勤怠です。商品ページでは、労働時間をリアルタイムで集計でき、残業可能時間や有給休暇日数を雇用形態や勤務形態にあわせて個別に設定して、超過または不足があれば自動で通知が届くと紹介されています。法定の労働時間や残業時間を超えた場合、打刻漏れ、連続勤務や休日出勤が続く場合にもアラートが作動し、通知先は従業員と管理者の片方または両方から選べます。注意したいのは、商品ページの「ここが少し気になる」に、スマホアプリでは申請や修正の画面がわかりにくいと記載されている点です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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  • ⚫︎自社ではエクセル管理からデジタルアプリへの移行だったため出退勤管理の手間や集計ミスの軽減につながり大幅な効率アップができた。 ⚫︎スマホ連携ができることで、営業の直行時や在宅勤務時もリアルタイムで打刻ができるようになった。(後修正の手間が省けた)

  • 打刻忘れや申請漏れに対するアラート機能があるため、従業員自身が気づきやすくなり、修正依頼が減少しました。管理側の確認作業も楽になり、ミスが少なくなったのを実感しています。

  • 打刻の漏れや修正についての対応漏れが減った(対応率が向上した)また管理職としてメンバーの勤怠管理が容易になった。管理部門側での対応負荷も減ったようで業務時間が減少、効率化が実現できたため導入満足度は高かった

他システムとの比較記事はこちら


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ジンジャーの導入事例では、玉村運輸株式会社が、残業申請をシステムに集約した運用の変化を次のように紹介しています。

有休や残業の申請をジンジャーで実施する運用にしましたが、従業員の残業削減に対する意識改革が進んだと思います。

ジンジャー導入事例(玉村運輸株式会社) 出典:導入事例ページ

36協定のアラート機能に注目して、勤怠管理システムを比べたい場合は、36協定のアラート機能搭載の勤怠管理システム10選!選び方も解説も参考になります。

上限に近づいたときの対処の流れ

アラートが出たあとに何をするかを決めておかないと、通知が増えるだけで残業は減りません。次の流れを、社内の手続きとして決めておきます。

  1. 本人と上長が、残りの業務量と、期限を動かせる業務を確認する
  2. 業務の割り振りを見直し、他の担当者へ移せるものを移す
  3. 残業が必要な場合は、事前申請と承認を経て、目的と時間を記録する
  4. 特別条項を使う場合は、協定で定めた手続(事前の通知など)を踏み、何回目の適用かを記録する
  5. 協定に定めた健康・福祉確保措置(面接指導、勤務間インターバルなど)を実施し、実施状況を記録する

玉村運輸の事例のように、残業を事前の申請と承認にすると、残業の目的を本人が意識するきっかけになります。ただし、申請の有無にかかわらず、実際の労働時間は打刻などの客観的な記録で把握する必要があります(前述のガイドライン)。

自社の残業管理をセルフチェック

ここまでの内容をもとに、現在の残業時間の管理に当てはまるものを選んでください。

36協定の残業管理、今のやり方で大丈夫?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

月の途中で上限との距離が見えるかどうかは、勤怠の記録をどこまで自動で集計できるかで決まります。手作業の集計や転記が多いと感じたら、勤怠管理システムの資料を比べ、自社の勤務形態や36協定の内容に合うかを確認する段階です。

上限管理のあとに残る課題|残業代の計算から給与・労務手続きまで

残業時間を上限内に収める管理ができても、その時間データを給与計算に手入力していると、転記ミスや集計の遅れが残ります。勤怠、給与計算、労務手続きを1つの流れで扱えると、確認の回数が減ります。

割増賃金は、時間外労働の時間数に応じて、通常の賃金の25%以上、月60時間を超えた部分は50%以上、深夜は25%以上の率で計算します(第37条)。勤怠システムの集計と給与計算ソフトが別々だと、両方の画面を見ながら数字を写す手間が生じます。勤怠の記録から給与計算、年末調整、入社手続きまでをまとめて管理する場合の一例が、freee株式会社が提供するfreee人事労務です。商品ページでは、従業員による事前の勤怠状況申請で遅刻・早退・有給・残業などの情報を自動でチェックでき、打刻忘れや残業の申請状況を通知するアラート機能もあると紹介されています。入社手続きから勤怠、給与計算、年末調整までを、システム上でまとめて管理できる点も特徴とされています。注意したいのは、商品ページの「ここが少し気になる」に、スマホからの出退勤が使いにくく、全体的に持て余してしまう機能もあると記載されている点です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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新プランでより使いやすく◎従業員が多い企業におすすめ

全体評価
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GOOD

おすすめ!

  • 従業員が増えても業務量を抑えて余裕を持たせた業務フローを作れる
  • 最新のセキュリティ技術を採用し、最新の法令と税制にも対応
  • 共通する必要な情報の入力は1度で済み、給与計算や年末調整も効率よく行える
MORE

気になる…

  • スマホからの出退勤が使いにくく、全体的に持て余してしまう機能もある
評価・口コミ(一部抜粋)
4.5
  • 自分で都度ダウンロードしていた給与明細を一括で見ることができるようになった。勤怠サービスとも連携できるので、自分の勤務実態がわかりやすい。

  • 工数が大幅に削減できました。 年末調整も今まで全国の社員に紙に記入してもらい、回収後全て手作業で対応しておりました。このサービスを導入してからスマホで完結するため、大幅に改善することができました。

  • 特に年末調整の手続きが楽になりました。今まで手書きの専用紙に記述していましたが、年末の忙しい時期に対応するのも億劫になりますし、書き直すのも時間が勿体無いと感じていました。このソフトを使うことで、自分の余裕のあるタイミングで答えて完成させることができますし、マイナンバーなどが必要になった際も撮影するだけで済みますから、年末調整が苦に感じなくなりました。

freee人事労務の導入事例では、株式会社パワーハウスが、Excelで行っていた勤怠管理から切り替えた後の変化を次のように紹介しています。

これらを元に給与情報をまとめるまで、3人で3日間ほどかかっていたそう。しかし、2018年のfreee人事労務導入後は、1人でも2日ほどで終わるまで工数が削減できたと言います。

freee導入事例(株式会社パワーハウス) 出典:導入事例ページ

勤怠管理システムを選ぶときに確認する5つの点

36協定の上限管理を目的に勤怠管理システムを選ぶときは、機能の多さよりも、自社の勤務形態と36協定の内容に合うかを確認します。

  1. 上限の設定:月45時間・年360時間、特別条項の年720時間などを、従業員ごと・グループごとに設定できるか
  2. アラートの段階と通知先:基準に近づいた段階で、本人と上長に通知できるか
  3. 休日労働を含む集計:時間外労働と休日労働の合計、複数月の平均を自動で出せるか
  4. 勤務形態への対応:変形労働時間制、フレックスタイム制、シフト制、テレワークに対応しているか
  5. 給与計算との連携:勤怠データをCSVを介さず、または少ない手間で給与計算へ渡せるか

料金やサポートの範囲は、プランによって異なります。比較の際は、資料を取り寄せて、自社の従業員数と勤務形態で試算してもらうのが確実です。

勤怠の記録から給与計算・労務手続きまで、まとめて管理したい会社に

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よくある質問(FAQ)

Q1. 36協定で定められる残業時間の上限は何時間ですか?

A. 原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって特別条項付きの36協定を結ぶ場合でも、年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2か月から6か月のどの平均でも月80時間以内、月45時間を超えるのは年6回までを守る必要があります。

Q2. 36協定で月45時間を超えられるのは年に何回までですか?

A. 特別条項付きの36協定を結んでいる場合に限り、月45時間を超えられるのは年6回(6か月)までです。回数は時間外労働だけで数え、休日労働は含めません。7回目の月に45時間を超えると上限を超えます。特別条項を結んでいない場合は、月45時間を超える残業はできません。

Q3. 月45時間の残業は、1日に直すと何時間にあたりますか?

A. 月の労働日を20日とすると、45時間を20日で割って1日あたり約2時間15分です。21日で割れば約2時間9分になります。ただし、月45時間は法定労働時間を超えた時間外労働の合計で、実際の残業は日によって偏るため、日数で割った値は目安として使います。

Q4. 1日6時間の残業は違法ですか?

A. 法律には、坑内労働など健康上特に有害な業務を除いて、1日の時間外労働の一律の上限は定められていません。ただし、36協定で定めた1日の延長時間の範囲内であること、月45時間・年360時間などの上限を守ること、労働時間が8時間を超える日は1時間以上の休憩を与えることが必要です。1日6時間の残業は約8日で月45時間に達するため、特別条項がなければ短期間で上限に届きます。個別の判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

Q5. 2026年度から36協定のルールは変わりますか?

A. 労働基準法第36条の上限(月45時間・年360時間、特別条項の年720時間など)は、この記事の確認日(2026年10月19日)時点のe-Gov法令検索の条文で、本文のとおりです。変わったのは運用で、厚生労働省は2026年8月19日に、同年9月1日から、時間外労働の時間数だけに着目して月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直し、36協定で定めた健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認すると発表しました。

Q6. 36協定を結んでいないのに残業させてもよいですか?

A. 法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働かせるには、36協定の締結と所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。36協定を結ばずに時間外労働をさせた場合は、労働基準法第32条違反となり、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となりえます。

まとめ|36協定の残業時間で押さえたい5つのこと

  1. 36協定の残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間で、数えるのは法定労働時間を超えた時間外労働
  2. 特別条項を結んでも、年720時間以内、月100時間未満、2か月から6か月の平均80時間以内、月45時間超は年6回までを守る
  3. 月45時間は、月20労働日なら1日あたり約2時間15分。休日労働は月100時間未満と平均80時間以内にだけ合算する
  4. 2026年9月1日から、労働基準監督署は健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認する。上限が緩んだわけではない
  5. 月の途中で数字を見て記録を残すため、勤怠管理システムの資料を取り寄せて、自社の勤務形態に合うかを比べる

参考文献

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