就業規則変更届とは?必要書類と書き方・提出方法・本社一括届出を解説

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  • 常時10人以上の事業場は変更届が必要
  • 意見書は過半数代表者の意見を添える
  • 届出のあとに従業員への周知も必要

就業規則変更届とは、常時10人以上の労働者を使用する会社が就業規則を変更したときに、事業場を管轄する労働基準監督署長へ提出する届出書のことです。根拠は労働基準法第89条で、届出には労働者の過半数代表者などの意見を記した書面(意見書)を添える必要があります(同法第90条)。届出の書式に決まった様式はなく、厚生労働省が様式例を公開しています。ただし、届出をして終わりではありません。変更後の就業規則を従業員に周知していなければ、変更の効力にも影響します。本記事では、届出が必要な会社と変更の範囲、変更から届出・周知までの流れ、必要書類の書き方、提出先と提出方法、本社一括届出、罰則、10人未満の会社の扱いを、条文と厚生労働省の資料をもとに整理し、変更後の勤怠・給与の運用を人事労務システムでどう支えるかまで解説します。

就業規則を変えたあとの運用、どこから整えますか?自社に合う人事労務システムの簡易診断

Q1. 今回の就業規則の変更で、いちばん関わりが大きいのはどれですか?

目次

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  1. 就業規則変更届とは?届出が必要な会社と対象の範囲
  2. 就業規則を変更するのはどんなとき?届出が必要な変更と不要なもの
  3. 就業規則を変更して届け出るまでの流れ|5つのステップ
  4. 意見書と過半数代表者|選び方と反対意見が出たとき
  5. 必要書類と書き方|就業規則(変更)届・意見書・変更後の就業規則
  6. 提出先・提出方法・期限|窓口・郵送・電子申請と本社一括届出
  7. 届出で終わりではない|周知の方法と変更の効力
  8. 届出・意見聴取・周知を怠ると?罰則と届出していない就業規則の効力
  9. 常時10人未満の会社は変更届が必要?作成・届出の義務と周知
  10. 届出で起きやすい失敗と確認ポイント|公的資料から整理
  11. 就業規則の変更を勤怠・給与の運用に反映する|人事労務システムの使いどころ
  12. よくある質問(FAQ)
  13. まとめ|就業規則変更届で押さえたい6つのこと
  14. 参考文献

就業規則変更届とは?届出が必要な会社と対象の範囲

就業規則変更届とは、就業規則を変更した使用者が、変更の内容を所轄の労働基準監督署長に届け出る書類のことで、常時10人以上の労働者を使用する事業場に提出の義務があります。

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成して行政官庁(実際の窓口は所轄の労働基準監督署)へ届け出ることを求めています。同条は、始業・終業の時刻、賃金、退職など条文に挙げられた事項を「変更した場合においても、同様とする」と定めており、これが変更届の根拠です。厚生労働省のページでは、この届出の手続名は「就業規則(変更)届」とされています。

「常時10人以上」の数え方

石川労働局の就業規則作成・届出に関するFAQ(平成22年10月)では、「常時10人以上」を、雇用形態に関係なく雇用(所属)している労働者が常態として10名以上いることと説明しています。出勤している人数ではなく、パートやアルバイトも含みます。判断の単位は会社全体ではなく事業場で、場所的に独立した営業所は原則として別の事業場です。会社全体では10人を超えていても、ある営業所の労働者が常時10人未満なら、その営業所には作成・届出の義務はありません。

届出の対象になる「就業規則」の範囲

同じFAQは、退職金規程や育児・介護休業規程のように別冊・分冊にしている規程も、就業規則の一部であれば届出が必要としています。賃金規程を変えたときも同じです。一方、賃金控除協定や年次有給休暇の計画付与に関する協定のように、届出が義務とされていない労使協定は、就業規則の一部として届け出る必要はありません。

なお、就業規則の変更は、そのつど遅滞なく届け出る必要があり、数年分の変更をまとめて届け出ることはできないとされています。

届出のあとに残る社内の実務と、人事労務システムの役割

変更届そのものは、変更のたびに数枚の書類を作って提出する作業です。しかし、変更を決めたあとには、従業員への周知、休暇や勤務時間の設定変更、給与計算の手当や割増の設定の見直しといった社内の実務が続きます。ここが手作業のままだと、届出は済んでいるのに勤怠や給与の設定が古いまま、という食い違いが起こりえます。就業規則の届出そのものは窓口・郵送・電子申請で行い、変更後の運用を人事労務システムで支える、という役割分担で考えると整理しやすくなります。下の表は、商品ページで確認した範囲で、3つの人事労務システムの役割の違いをまとめたものです。順位や優劣をつけるものではありません。

就業規則の変更後の運用を支える人事労務システム3サービスの役割の違い

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就業規則を変更するのはどんなとき?届出が必要な変更と不要なもの

就業規則の変更届が必要になるのは、労働基準法第89条の各号に挙げられた事項、たとえば始業・終業の時刻、休日・休暇、賃金の計算方法、退職や解雇の事由などを変更したときです。

就業規則を変更するきっかけ

就業規則を見直すきっかけは、大きく3つに分けられます。1つ目は法改正への対応で、厚生労働省は「モデル就業規則」を令和7年12月版に改訂し、議員に立候補するための休暇の規程例(第32条)を追加するなど、法改正や運用の変化に合わせて内容を更新しています。2つ目は会社の制度の変更で、賃金体系や手当の見直し、休暇制度の新設、勤務時間や勤務形態の変更が当たります。3つ目は、運用と規程のずれの解消です。実際の運用が就業規則と合っていないときは、規程のほうを実態に合わせて見直す場面もあります。

労働時間や休日・休暇に関する変更を検討するときは、あわせて 所定労働時間とは?法定労働時間との違い・決め方・計算方法 や 労働基準法の労働時間とは?1日8時間・週40時間と上限 も確認しておくと、法定の上限と矛盾しない規程にしやすくなります。

届出が必要か、早見表で確認する

労働基準法第89条は、就業規則に書く事項を、必ず書かなければならないもの(第1号から第3号)と、制度を設ける場合に書くもの(第3号の2から第10号)に分けています。下の表は、条文の各号を変更の例に当てはめたものです。表の事項を変えた場合は、変更届の対象になります。

条文の区分変更の例届出の扱い
第1号(必ず書く)始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇(年次有給休暇や育児・介護休業に関する休暇を含む)、交替勤務の定め変更したら届出が必要
第2号(必ず書く)賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切りと支払の時期、昇給変更したら届出が必要
第3号(必ず書く)退職に関する事項(解雇の事由を含む)変更したら届出が必要
第3号の2から第5号(定めるなら書く)退職手当、賞与などの臨時の賃金、最低賃金額、食費や作業用品などの負担定めがある場合、変更したら届出が必要
第6号から第9号(定めるなら書く)安全・衛生、職業訓練、災害補償・業務外の傷病扶助、表彰と制裁の種類・程度定めがある場合、変更したら届出が必要
第10号(定めるなら書く)その事業場の労働者すべてに適用されるその他の定め定めがある場合、変更したら届出が必要
労使協定(賃金控除協定、年次有給休暇の計画付与に関する協定など)届出が義務とされていない協定就業規則の一部として届け出る必要はない(石川労働局FAQ)

条文の各号に当たらない事項(たとえば経営理念など)だけを変更する場合の扱いは、会社ごとの規程の作り方で判断が分かれます。迷うときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の事案の判断は、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士などの専門家にご確認ください。

就業規則を変更して届け出るまでの流れ|5つのステップ

就業規則を変更して届け出る流れは、変更案の作成、過半数代表者への意見聴取、意見書の作成、労働基準監督署への届出、従業員への周知の5段階です。

ステップやること主な根拠
1. 変更案を作る変更の目的と内容を整理し、法令や労働協約に反しないか確認する。変更前後を並べた新旧対照表を作っておくと、あとの手続きが進めやすい労働基準法第92条(法令・労働協約に反してはならない)、労働契約法第9条・第10条
2. 意見を聴く過半数労働組合、ない場合は過半数代表者の意見を聴く労働基準法第90条第1項
3. 意見書を作る聴いた意見を書面にまとめ、労働者代表の氏名を記載する労働基準法第90条第2項、同法施行規則第49条第2項
4. 届け出る就業規則(変更)届に意見書と変更後の就業規則を添え、事業場を管轄する労働基準監督署長へ提出する労働基準法第89条
5. 周知する掲示・備付け、書面の交付、電子データを常時確認できる機器の設置のいずれかで従業員に知らせる労働基準法第106条第1項、同法施行規則第52条の2

変更案を作るときの注意:不利益変更は原則として合意が必要

労働契約法第9条は、使用者が労働者と合意することなく就業規則を変更し、労働者の不利益に労働条件を変更することはできないと定めています。例外として、同法第10条は、変更後の就業規則を周知し、かつ変更が合理的であれば、変更後の就業規則の定めによることを認めています。合理的かどうかは、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などの事情に照らして判断されます。賃金の引下げや休日の削減のように労働者に不利になる変更は、意見聴取と届出を済ませただけでは足りず、事前の説明と合意に向けた話し合いが重要になります。

届出のあとに出てくる質問に備え、変更の理由、変更前後の比較、従業員から出た意見とその扱いを、記録として残しておきましょう。

変更の効力と届出の関係

労働契約法第10条が変更の効力の要件として挙げているのは、周知と変更の合理性で、届出の有無は条文に挙がっていません。変更後の就業規則の施行日は会社が決めるもので、届出の日が自動的に施行日になるわけではありません。ただし、届出をしなくてよいという意味ではなく、第89条の届出義務は別に残ります。

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意見書と過半数代表者|選び方と反対意見が出たとき

意見書とは、就業規則の変更について労働者側の意見を聴いたことを示す書面で、労働基準法第90条により届出に添付しなければなりません。

意見を聴く相手:過半数労働組合か過半数代表者

労働基準法第90条第1項は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴くよう定めています。聴く相手は事業場ごとに決まるため、複数の事業場がある会社では、事業場ごとに意見を聴きます。

過半数代表者になれるのは、労働基準法施行規則第6条の2により、次のいずれにも当たる人です。

  • 労働基準法第41条第2号の「監督又は管理の地位にある者」(管理監督者)ではないこと
  • 就業規則について意見を聴く者を選出することを明らかにして行われる投票や挙手などの方法で選出され、使用者の意向に基づいて選ばれたものではないこと

使用者は、過半数代表者であることや、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならず、事務を円滑に行えるよう必要な配慮をすることも求められています(同条)。会社が代表者を指名したり、管理職を代表者にしたりする運用は、この要件に合いません。

意見書に書くこと、書かなくてよいこと

労働基準法施行規則第49条第2項は、意見書を労働者を代表する者の氏名を記載したものと定めています。押印の定めはありません。厚生労働省の様式例では、意見書に、意見を求められた日、意見の内容、労働組合の名称または労働者の過半数を代表する者の職名・氏名、過半数代表者の選出方法を書く形になっています。

反対意見が出たらどうなるか

条文が求めているのは、意見を聴いたうえで、その意見を記した書面を添付することです。賛成や同意を得ることまでは条文に書かれていません。そのため、反対の意見があっても、その内容を意見書に記して添付すれば、手続きとしては進められます。ただし、反対意見が強い不利益変更では、労働契約法第10条の合理性の判断で「労働組合等との交渉の状況」が考慮されるため、意見の内容を軽く扱わず、説明や修正を検討しましょう。

必要書類と書き方|就業規則(変更)届・意見書・変更後の就業規則

就業規則変更届の提出に必要なのは、就業規則(変更)届、意見書、変更後の就業規則の3点で、届出書に定型の様式はなく、任意の用紙で作成して提出できます。

厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー」では、就業規則(変更)届について「定型の申請書様式はございませんので、任意の用紙に事業所の名称、事業所の所在地、使用者氏名等を記載して提出して下さい」と案内されています。参考として様式例(Word形式)も同じページに掲載されています。

就業規則(変更)届の記載項目

厚生労働省の様式例に沿うと、記載する項目は次のとおりです。

項目書く内容
提出日・宛先提出する日付と、提出先の労働基準監督署長の名称
事業場の名称・所在地・電話番号届出の対象となる事業場の名称、ふりがな、所在地、電話番号
使用者職氏名代表者などの職名と氏名
主な変更事項変更した条文、改正前、改正後
労働保険番号都道府県、所轄、管轄、基幹番号、枝番号など。複数事業場を一括して届け出る場合は被一括事業番号
業種・労働者数業種と、企業全体および事業場のみの労働者数
名称・住所の変更前回の届出から事業場の名称や住所が変わっていれば、旧名称・旧住所

「主な変更事項」の欄に収まらないときの書き方は、労働基準監督署によって案内が異なる場合があります。事前に提出先へ確認しておくと、補正のやり取りを減らせます。

変更後の就業規則と新旧対照表

石川労働局のFAQでは、変更箇所が一部だけの場合は、就業規則全体に代えて、変更箇所と変更内容がわかる書類を添付する形でもよいとされています。具体例として、新旧条文対照表や、就業規則の新旧の該当ページの写しが挙げられています。大きく書き換えた場合は、変更後の就業規則の全文を添付したほうが、確認する側にも伝わりやすくなります。

届出書の記載イメージ(○は自社の内容に置き換える)

様式の欄記載イメージ
宛先○○労働基準監督署長 殿
届出の文言今回、別添のとおり当社の就業規則を制定・変更いたしましたので、意見書を添えて提出します。(様式例の文言)
主な変更事項条文:第○条/改正前:(変更前の定め)/改正後:(変更後の定め)
添付書類意見書、変更後の就業規則(または新旧対照表と該当ページ)

提出先・提出方法・期限|窓口・郵送・電子申請と本社一括届出

就業規則変更届の提出先は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長で、窓口への持参や郵送のほか、e-Govを使った電子申請でも届け出られます。

提出先は事業場ごと

就業規則の届出は事業場単位が原則です。石川労働局のFAQでは、すべての営業所が共通の就業規則を使っていても、原則として各営業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ届け出る必要があるとされています。ただし、次に説明する本社一括届出の要件を満たせば、本社でまとめて届け出ることもできます。

提出方法と電子申請の注意点

窓口に持参する方法と郵送する方法では、提出部数や、控えの返却を希望するときの返信用封筒などの案内が労働基準監督署ごとに異なる場合があります。提出前に、提出先の案内を確認しておくと安心です。

電子申請は、e-Govの「就業規則(変更)届(各事業場単位による届出)」の手続から行います。e-Govの案内によると、手数料はかからず、利用時間は24時間365日ですが、年末年始や保守作業のためにシステムが停止することがあります。また、例年3月中旬から月末は36協定届などの申請が集中して処理に時間がかかるため、可能な限りこの時期を避けて早めに申請するよう案内されています。受理印が必要な場合は、対象ファイル名の先頭に「【押印希望】」を付けます。2025年3月31日以降は、労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」からも電子申請できます。申請の受付状況は、申請の前にe-Govの手続ページで確認してください。

提出期限

労働基準法には、変更届の提出期限を具体的な日数で定めた規定はありません。e-Govの案内や石川労働局のFAQでは、変更したら遅滞なく、そのつど提出するよう案内されています。変更の施行日との前後関係など、実際の取扱いは提出先の労働基準監督署に確認しましょう。

本社一括届出の要件

複数の事業場を持つ会社は、本社の所轄署にまとめて届け出る本社一括届出を使えます。厚生労働省の通達「就業規則の本社一括届出について」(令和7年3月28日基発0328第9号、令和7年3月31日適用)は、本社が本社と他の事業場の就業規則をまとめて届け出た場合に、各事業場の所轄署長に届け出たものとして扱ってよいとしています。

提出方法一括届出の要件(通達の要旨)
書面・CD-ROMなど次の4つをすべて満たすこと。(1)本社と各事業場の就業規則の内容が同一である。(2)事業場数に応じた部数の就業規則と、事業場ごとに作成した意見書の正本を提出する。(3)各事業場の名称・所在地・所轄署長名を記載した一覧表を添付し、本社の所轄署長に届け出る。(4)法第89条各号の事項について、本社と各事業場の就業規則が同一である旨を付記する。変更届の場合は、変更前の就業規則も同一である旨を付記する
e-Gov電子申請次の3つをすべて満たすこと。(1)本社と就業規則の内容が同一である。(2)「一括届出事業場一覧」の電子ファイルを添付し、本社の所轄署長に届け出る。(3)就業規則の電子媒体は1部でよいが、意見書の電子媒体は事業場ごとに添付する
確かめよう労働条件(ポータル)本社と就業規則が同一の事業場は、一括届出事業場一覧が自動で作成・添付される。本社と就業規則が異なる事業場でも、内容が同一の複数事業場なら、代表の事業場の所轄署へまとめて届け出られる

どの方法でも、意見書は事業場ごとに作成して添付します。本社の過半数代表者の意見だけで、各事業場の意見聴取を省略することはできません。

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届出で終わりではない|周知の方法と変更の効力

就業規則の周知とは、変更後の就業規則を従業員がいつでも確認できる状態にすることで、労働基準法施行規則は、掲示・備付け、書面の交付、電子データの記録と常時確認できる機器の設置の3つの方法を定めています。

周知の方法内容(労働基準法施行規則第52条の2)
1. 掲示・備付け常時、各作業場の見やすい場所へ掲示するか、備え付ける
2. 書面の交付就業規則を書面にして労働者に渡す
3. 電子データによる方法電子計算機のファイルや電磁的記録媒体に記録し、各作業場に、労働者がその内容を常時確認できる機器を設置する

労働基準法第106条第1項は、就業規則を従業員に周知させることを使用者に義務づけています。厚生労働省が公開する「参考となる主な裁判例」には、フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決)が載っています。就業規則が法的な拘束力を持つには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとした判決で、労働基準監督署に届け出た就業規則でも、周知の事実が認められないまま効力を認めた原審の判断を破棄し、差し戻しています。

周知の実務で起きやすいつまずき

  • 変更後の就業規則を共有フォルダに置いただけで、従業員が見られる場所と方法を知らせていない
  • 変更点の説明をしないまま配布し、あとから不利益変更だと受け止められる
  • 配布した記録や受領の確認を残していないため、周知したことを示せない
  • 事業場や雇用形態が多く、変更した版を全員に届けきれていない

周知の「記録」と「配布の漏れ防止」は、人数や事業場が増えるほど手作業では追いにくくなります。従業員への書類の提出依頼や情報収集を電子化する手段として、jinjer株式会社が提供する「ジンジャー人事労務」があります。商品ページでは、従業員情報を1つのデータベースに集約し、必要書類の提出依頼、提出書類の記入・提出、依頼ごとの情報収集の進み具合の確認、リマインドまでを一元的に扱えると紹介されています。提出された書類の情報は自動でデータベースに反映されるとも書かれています。注意点として、労務管理を中心に行う場合は便利ですが、プラスアルファの機能を望む場合は他サービスの申し込みが必要と商品ページに記載されています。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。システムで書類を配ることが、上の3つの周知方法のどれに当たるかは配り方によって変わるため、周知の要件は社会保険労務士や労働基準監督署に確認したうえで運用してください。

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導入事例として、リソルホールディングス株式会社は、年間1,000部以上にもなる雇用契約書のペーパーレス化を導入の決め手のひとつに挙げ、導入後の効果を次のように述べています(出典:jinjer株式会社 導入事例動画の公開ニュース、2024年3月27日)。

特に雇用契約書を電子化したことにより、印刷・送付・確認の手間を大幅に削減することができました。

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届出・意見聴取・周知を怠ると?罰則と届出していない就業規則の効力

就業規則の届出(第89条)、意見聴取(第90条第1項)、周知(第106条)の違反は、労働基準法第120条第1号により30万円以下の罰金の対象になります。

罰則の対象になる行為は、届出をしないこと、過半数代表者などの意見を聴かないこと、変更後の就業規則を周知しないことです。意見書の添付(第90条第2項)は同号に条番号が挙がっていませんが、届出に添付すべき書類として条文で求められています。

届出をしていない就業規則の効力については、労働契約法第7条や第10条が、効力の要件として挙げているのは「周知」と「合理性」です。この点だけを見て届出を後回しにしてよいとはいえません。届出は労働基準法上の義務で、違反すれば罰則の対象です。変更したら、届出と周知の両方を、できるだけ早く済ませましょう。本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の事案の判断は、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士などの専門家にご確認ください。

常時10人未満の会社は変更届が必要?作成・届出の義務と周知

常時10人未満の事業場には、労働基準法第89条の就業規則の作成・届出義務はなく、変更届の提出も義務ではありません。

石川労働局のFAQは、事業場の労働者が常時10人未満であれば、作成・届出の義務はないとしたうえで、義務がない場合でも、働く上でのルールである就業規則を作成することが望ましいとしています。会社全体の人数ではなく事業場ごとに数えるため、複数の営業所があり、どの営業所も10人未満なら、いずれも届出義務はありません。

労働者が増えて常時10人以上になったときは、労働基準法施行規則第49条第1項により、遅滞なく就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。10人未満の段階から、就業規則を整えて周知しておくと、10人に達したときの届出もスムーズです。

10人未満の会社が就業規則を変更するときも、労働契約法の考え方は同じです。合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していれば、労働契約の内容はその就業規則によるとされ(同法第7条)、変更後も周知と合理性が求められます(同法第10条)。変更する内容を従業員に説明し、いつでも見られる状態にしておきましょう。

届出で起きやすい失敗と確認ポイント|公的資料から整理

就業規則の届出で起きやすい失敗は、事業場ごとの届出漏れ、別冊規程の届出漏れ、過半数代表者の選び方の誤り、周知の不足の4つで、いずれも条文や厚生労働省関係の資料で防げます。

起きやすい失敗根拠防ぐための確認
本社だけに届け出て、営業所や支店の分を出していない事業場単位が原則(石川労働局FAQ)10人以上の事業場を洗い出し、各所轄署への届出か、本社一括届出の要件を満たすかを確認する
賃金規程や育児・介護休業規程など、別冊の変更を届け出ていない別冊でも就業規則の一部なら届出が必要(石川労働局FAQ)変更した規程を一覧にし、就業規則の一部に当たるかを確認する
複数回の変更を数年分まとめて届け出ようとするそのつど遅滞なく届出(石川労働局FAQ)変更のたびに届出の担当と期日を決める
会社が過半数代表者を指名している労働基準法施行規則第6条の2投票や挙手などで選出した記録を残す
意見書に代表者の氏名が書かれていない労働基準法施行規則第49条第2項意見書に代表者の氏名があるか確かめる
届出だけで周知していない労働基準法第106条、フジ興産事件周知の方法を3つのいずれかから選び、記録を残す
合意のないまま不利益な変更を進める労働契約法第9条・第10条変更の必要性と内容の相当性を整理し、説明の場を設ける

変更後の設定が古いまま残る

もう1つ、公的資料には出てこない実務上の失敗があります。就業規則を変えたのに、勤怠や給与の設定が古いまま残ることです。たとえば休暇の付与や所定の勤務時間を変えたのに勤怠の設定を直し忘れる、手当の定めを変えたのに給与計算の設定に反映していない、といった状態です。就業規則と実際の運用が食い違うと、従業員への説明も、後日の確認もしにくくなります。変更を決めた時点で、見直す設定を一覧にしておきましょう。

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就業規則の変更を勤怠・給与の運用に反映する|人事労務システムの使いどころ

就業規則の変更を勤怠・給与の運用に反映するとは、変更後の勤務時間・休暇・賃金の定めを、勤怠管理や給与計算の設定へ漏れなく入れ直すことで、変更を決めた時点で見直す設定を洗い出すと進めやすくなります。

就業規則の変更内容見直す運用・設定の例確認の観点
始業・終業時刻、休憩、所定労働時間の変更勤怠の勤務パターン、休憩の設定、所定労働時間の設定変更の施行日から新しい設定が適用されるか
休日・休暇の変更休暇の種類と付与のルール、有給休暇の管理付与日数や取得単位の定めと、設定が一致しているか
賃金・手当・割増賃金の変更給与計算の手当項目、割増賃金の率、控除の設定変更前後の差を、サンプルの従業員で試算して確かめたか
退職・解雇の事由や手続きの変更退職手続きの書類、社会保険・雇用保険の手続きの流れ退職時の書類と手順が、新しい定めに沿っているか
従業員への周知変更後の規程の配布、受領や閲覧の記録全従業員に届いたことを、あとから示せるか

勤怠管理の考え方は 就業規則に沿った勤怠管理システムの運用法|導入時にチェックすること で、所定労働時間の決め方と計算方法は 所定労働時間とは?法定労働時間との違い・決め方・計算方法 で詳しく解説しています。

勤怠の条件を就業規則に合わせて設定し、既存の給与システムとも連携させたい場合の一例が、株式会社カオナビが提供する「カオナビ」です。商品ページでは、人材情報を一元化するタレントマネジメントシステムとして紹介されており、勤怠管理では、残業・休日出勤・休暇などの申請と承認をシステム上で完結でき、アラート機能で勤怠の実績を把握できるとされています。自社の就業規則に合わせた条件へのカスタマイズが可能で、法改正にも対応しやすいとも書かれています。すでに利用中の給与管理システムとは、CSV出力やAPIで連携できます。労務管理では、入社手続きにかかる業務を1つの操作で完結できるとも紹介されています。注意点として、目的や規模によって価格に幅があるため、詳細は問い合わせが必要と商品ページに書かれています。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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導入企業:TOTO株式会社、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)など

口コミ

「カオナビ」での運用に切り替えてからは、さまざまな面で効果が出たと感じています。今までメールで行なっていたExcelシートの授受や記入漏れはほとんどなくなりましたし、評価者や人事担当者が入力の進捗確認もできるようになることで、一部入力が遅れている人がいたとしても全体の進行が止まることがなくなりました。また、以前はExcelに設定していた計算式が壊れるといったトラブルもあったので、その対応に対する手間を考えると効果は絶大です。

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評価・口コミ(一部抜粋)
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  • 当日初めて一緒に働くメンバーが多い職種なので、顔がわかることですぐに挨拶ができ、業務を開始できる。社歴を知ることもできるので、自分の先輩なのか後輩なのかが業務前にわかる。部署異動があってもすぐに反映される。

  • 顔写真付きで人材データを把握、管理でき、労務業務のペーパーレス化ができます。 また、スキルや評価情報と社内研修や学習履歴などを組み合わせて活用することができます。効果的な人材育成ができると思います。

  • UIがわかりやすく、そもそもシステムに慣れるまでに利用者が離脱することや敬遠されることが少なかった。またそれぞれで俗人化していた教育研修コンテンツなどを共有することでナレッジのシェアや、そのようなコンテンツを作ることなどに興味を持つ人間なども把握することができ、社内の人材配置などにも間接的にポジティブな影響を与えていたと感じる。

導入事例として、株式会社Kamogawaの執行役員(経営管理部 部長)は、社員の変更手続きの電子化について次のように述べています(出典:カオナビ 導入事例)。

社員の住所変更・扶養変更・入退社登録などが、電子申請できるようになりました。そしてその変更内容が自動で、毎日カオナビに反映されるのです。

株式会社Kamogawa 執行役員 経営管理部 部長 三上様

就業規則の変更は、一度きりの作業ではなく、法改正や制度の見直しのたびに発生します。届出の手順を押さえたうえで、変更後の勤怠・給与・書類のやり取りを手作業のままにするのか、システムで支えるのかを、自社の変更の頻度と従業員数に合わせて検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 就業規則を変更したら、労働基準監督署に届け出る必要がありますか?

A. 常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更したら届け出る必要があります。労働基準法第89条が、条文に挙げられた事項(始業・終業時刻、賃金、退職など)を変更した場合も、作成時と同様に届け出ることを求めています。届出には、過半数労働組合または過半数代表者の意見を記した意見書を添えます。提出先は、事業場を管轄する労働基準監督署です。

Q2. 常時10人未満の会社でも、就業規則変更届は必須ですか?

A. 必須ではありません。労働基準法第89条の作成・届出義務は、常時10人以上の労働者を使用する事業場が対象で、判断は会社全体ではなく事業場ごとに行います。10人未満でも、就業規則を整えて周知しておくと、労働条件の変更を従業員に説明しやすくなります。労働者が増えて常時10人以上になったときは、遅滞なく届け出る必要があります。

Q3. 就業規則の変更は、複数の事業場分を一括で届け出られますか?

A. 要件を満たせば、本社の所轄署にまとめて届け出る本社一括届出ができます。厚生労働省の通達では、本社と各事業場の就業規則の内容が同一であることが前提で、書面では各事業場の一覧表の添付や、事業場ごとの意見書の提出などが必要です。e-Govの電子申請では「一括届出事業場一覧」の電子ファイルを添付します。意見書は事業場ごとに作成して添付します。

Q4. 就業規則を変えたいのですが、どうすればいいですか?

A. 変更案の作成、過半数代表者への意見聴取、意見書の作成、労働基準監督署への届出、従業員への周知の順に進めます。賃金の引下げなど労働者に不利益になる変更は、合意なく進めることは原則としてできず、労働契約法第10条の周知と合理性の要件を満たす必要があります。変更の内容によっては、社会保険労務士などの専門家に相談してください。

Q5. 就業規則変更届は、いつまでに届け出ればいいですか?

A. 具体的な日数の定めはなく、変更したら遅滞なく、そのつど届け出るよう案内されています。数年分の変更をまとめて届け出ることはできないとされています。届出とは別に、変更後の就業規則を従業員に周知する必要もあります。変更の施行日との前後関係など、個別の取扱いは、提出先の労働基準監督署に確認してください。

Q6. 就業規則は、会社の判断でいきなり変更できますか?

A. 会社が一方的に変更できる範囲は限られます。労働契約法第9条は、使用者が労働者と合意することなく、就業規則の変更で労働者の不利益に労働条件を変更することはできないと定めています。例外は同法第10条で、変更後の就業規則を周知し、変更が合理的な場合です。意見書に反対意見があっても届出はできますが、合理性の判断では労働組合等との交渉の状況が考慮されます。

まとめ|就業規則変更届で押さえたい6つのこと

就業規則変更届は、常時10人以上の労働者を使用する事業場が、就業規則の変更を労働基準監督署に知らせる届出です。実務で迷わないために、次の6点を押さえておきましょう。

  1. 届出の対象は、常時10人以上の労働者(パート・アルバイトを含む)を使用する事業場で、条文の各号に当たる事項を変更したら、そのつど遅滞なく届け出る
  2. 過半数労働組合か、投票や挙手で選んだ過半数代表者の意見を聴き、氏名を記載した意見書を添付する。同意までは条文で求められていないが、不利益変更は合意に向けた説明が重要
  3. 就業規則(変更)届、意見書、変更後の就業規則(または新旧対照表)の3点を用意し、事業場ごとに、窓口・郵送・電子申請のいずれかで提出する。要件を満たせば本社一括届出も使える
  4. 届出とは別に、掲示・備付け、書面の交付、電子データを常時確認できる機器の設置のいずれかで、変更後の就業規則を従業員に周知する
  5. 届出・意見聴取・周知を怠ると、30万円以下の罰金の対象になる。10人未満の事業場に届出義務はないが、就業規則の整備は望ましい
  6. 変更後の勤怠・給与の設定や書類のやり取りを手作業で続けるのが負担なら、人事労務システムの資料を取り寄せて比べる

就業規則の変更は、届出の手続きだけでなく、周知と運用への反映までが一連の作業です。自社の変更の頻度や従業員数に合わせて、無理のない進め方を考える材料にしてください。

参考文献

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