フレックスタイム制度とは?仕組み・清算期間・残業の計算と導入手順を解説
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- 清算期間は最長3か月で、1か月超は届出が必要
- 残業は法定労働時間の総枠を超えた分
- 導入は就業規則への規定と労使協定が必要
フレックスタイム制度とは、あらかじめ定めた期間(清算期間)の総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻と労働時間を自分で決められる制度です。労働基準法第32条の3にもとづき、導入には就業規則への規定と労使協定の締結が必要で、残業は1日8時間を超えたかどうかではなく、清算期間の実労働時間が法定労働時間の総枠を超えたかどうかで判断します。清算期間の上限は2019年4月から3か月に延びており、1か月を超える場合は労使協定を労働基準監督署長に届け出ます。この記事では、仕組み、残業の数え方と計算例、導入の手順、ほかの制度との違い、メリット・デメリットと落とし穴を、厚生労働省の資料などの一次情報に沿って整理します(2026年10月20日確認)。
フレックスタイム制の運用、手間はどこにある?2問で診断
Q1. いま一番手間がかかっている(かかりそうな)のは?
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フレックスタイム制度とは|総労働時間の範囲で、始業・終業時刻を自分で決める制度
フレックスタイム制度(フレックスタイム制)とは、清算期間であらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻と、その日の労働時間を自分で決められる制度です。
厚生労働省は、労働者が仕事と生活の調和を図りながら効率的に働ける制度と説明しています(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。根拠は労働基準法第32条の3で、会社が就業規則などで始業・終業の時刻を労働者の決定に委ね、労使協定で清算期間や総労働時間などを定めたときに、1週間または1日の法定労働時間を超えて働かせることができると定められています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第32条の3、2026年10月20日確認)。通常の労働時間制度とは時間外労働の数え方が異なり、1日8時間・週40時間を超えて働いても直ちに時間外労働にはならず、逆に標準の1日の労働時間に届かない日があっても欠勤にはなりません。
ただし、始業・終業時刻を労働者に委ねても、会社が労働時間の管理をしなくてよいわけではありません。実労働時間を把握し、清算期間ごとに総労働時間との過不足に応じて賃金を精算する必要があります(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。出退勤の時刻が人ごとにばらつくぶん、記録と集計の仕組みが運用の土台になります。
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フレックスタイム制の仕組み|労使協定で定める6つの項目
フレックスタイム制の基本ルールは、労使協定で定める6項目(うちコアタイムとフレキシブルタイムの2つは任意)で決まります。
就業規則等に始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めたうえで、労使協定で次の項目を定めます(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
| 項目 | 内容 | 決め方のポイント |
|---|---|---|
| 1. 対象となる労働者の範囲 | フレックスタイム制を適用する人 | 「全従業員」「企画部職員」のように範囲で定めても、個人名で定めてもよい。労使で話し合い、範囲を明確にする |
| 2. 清算期間 | 労働者が労働すべき時間を定める期間(上限は3か月) | 長さに加えて、起算日も定める。1か月を超えるときは労働基準監督署長への届出が必要 |
| 3. 清算期間における総労働時間 | 清算期間に労働すべき時間(いわゆる所定労働時間) | 法定労働時間の総枠の範囲内にする。「1か月160時間」のほか、「7時間×所定労働日数」の定め方もできる |
| 4. 標準となる1日の労働時間 | 年次有給休暇を1日取ったときに、働いたものとして扱う時間 | 総労働時間を所定労働日数で割った時間を基準にする。必ず定める |
| 5. コアタイム(任意) | 必ず働かなければならない時間帯 | 設ける場合は開始・終了時刻を協定で定める。日によって設けない、時間帯を変えることもできる |
| 6. フレキシブルタイム(任意) | 労働者が出社・退社の時刻を選べる時間帯 | 設ける場合は開始・終了時刻を協定で定める。途中の中抜けもできる |
表の内容は、厚生労働省の解説にもとづきます(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
清算期間は最長3か月|1か月を超えるなら届出が必要
清算期間とは、労働者が働くべき総労働時間を定める期間のことです。以前は上限が1か月でしたが、働き方改革関連法による改正で2019年4月から最長3か月になりました(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
3か月にすると、たとえば6月に長く働いた分を8月に早く帰ることで調整するなど、月をまたいだ調整ができます。一方で、清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があり、届出をしないと30万円以下の罰金が科されることがあります。清算期間が1か月以内であれば届出は不要です(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。同じ事業場の中で、対象者や部署ごとに清算期間を変えることも、労使協定に明記すれば可能とされています。
コアタイム・フレキシブルタイム・スーパーフレックス
コアタイムは、1日のうちで必ず働く時間帯です。必ず設けなければならないものではなく、設ける場合は開始・終了の時刻を労使協定で定めます。コアタイムを設けず、実質的に出勤する日も労働者が自由に決められる運用にする場合も、所定休日はあらかじめ定めておく必要があります(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。コアタイムを設けない運用は、一般に「スーパーフレックス」と呼ばれることがありますが、労働基準法に別の制度として定められているわけではなく、フレックスタイム制の運用の1つです。
注意したいのは、コアタイムが1日の労働時間とほぼ同じ長さになるときや、フレキシブルタイムが極端に短いときです。労働者が始業・終業の時刻を自由に決めるという趣旨に反するため、フレックスタイム制とはいえなくなると厚生労働省は注意を促しています(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
総労働時間と標準となる1日の労働時間
総労働時間は、清算期間に働くべき所定労働時間のことで、法定労働時間の総枠(後述)を超えないように定めます。標準となる1日の労働時間は、有給休暇を取った日の賃金の計算に使います。フレックスタイム制の対象者が年次有給休暇を1日取った場合は、標準となる1日の労働時間を働いたものとして扱うため、賃金の精算では、実労働時間に「有給休暇の日数×標準となる1日の労働時間」を加えて計算します(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
就業規則には始業と終業の両方を委ねると書く
条文は「始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者」と定めています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第32条の3第1項、2026年10月20日確認)。始業時刻だけを労働者に委ね、終業時刻は会社が決めるといった運用は、この要件に合いません。就業規則等には、始業と終業の両方を労働者の決定に委ねる旨を定めます。
フレックスタイム制の残業の数え方と計算例|法定労働時間の総枠と週平均50時間
フレックスタイム制の時間外労働は、1日8時間を超えた時間ではなく、清算期間の実労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間です。清算期間が1か月を超えるときは、月ごとの週平均50時間を超えた時間も加わります。
清算期間が1か月のときの法定労働時間の総枠
法定労働時間の総枠は、「清算期間の暦日数÷7×40時間」で求めます(特例措置対象事業場は後述)(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。1か月・2か月・3か月ごとの値は、次の表のとおりです。
| 清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 | 清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 | 清算期間の暦日数 | 法定労働時間の総枠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1か月 28日 | 160.0時間 | 2か月 59日 | 337.1時間 | 3か月 89日 | 508.5時間 |
| 1か月 29日 | 165.7時間 | 2か月 60日 | 342.8時間 | 3か月 90日 | 514.2時間 |
| 1か月 30日 | 171.4時間 | 2か月 61日 | 348.5時間 | 3か月 91日 | 520.0時間 |
| 1か月 31日 | 177.1時間 | 2か月 62日 | 354.2時間 | 3か月 92日 | 525.7時間 |
総労働時間を、この総枠の範囲内で定めておく必要があります。清算期間の実労働時間が総労働時間を超えたときは、超えた時間分の賃金を追加して支払います。さらに、総枠を超えた時間は時間外労働となり、36協定の締結・届出と割増賃金の支払いが必要です(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
計算例を示します。31日の月で、清算期間を1か月、総労働時間を160時間と定めた場合です。実労働時間が190時間なら、総労働時間を30時間超えているため、その分の賃金を追加で支払います。このうち、総枠177.1時間を超えた12.9時間(190時間-177.1時間)が、割増賃金の対象となる時間外労働です。総労働時間160時間と総枠177.1時間の間の17.1時間は、法定労働時間の範囲内なので、割増の対象にはなりません(上記の厚生労働省の解説にもとづく計算例です)。
反対に、実労働時間が総労働時間に届かなかったときは、不足した時間分の賃金を控除して支払う方法と、不足した時間を次の清算期間の総労働時間に加えて働いてもらう方法があります。たとえば、実労働時間が150時間なら10時間不足し、翌月が30日の月なら、翌月の総労働時間を160時間+10時間=170時間にできます。加算後の時間は、翌月の法定労働時間の総枠(171.4時間)の範囲内にする必要があります(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
清算期間が1か月を超えるときは、月ごとの週平均50時間も見る
清算期間が1か月を超えるときは、清算期間全体が週平均40時間を超えないことに加えて、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないことが必要です。このどちらかを超えた時間が時間外労働になります。条文にも、清算期間を開始日以後1か月ごとに区分した各期間で週平均50時間を超えないとする読み替えが定められています(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第32条の3第2項、2026年10月20日確認)。繁忙月に偏った労働時間にはできません。
週平均50時間を1か月の時間数にすると、28日の月で200.0時間、29日の月で207.1時間、30日の月で214.3時間、31日の月で221.4時間です(50時間÷7×暦日数で計算した目安です)。
計算例です。4月から6月(30日+31日+30日=91日)を清算期間とし、法定労働時間の総枠が520.0時間の場合を考えます。4月の実労働が180時間、5月が235時間、6月が120時間なら、合計は535時間です。5月は31日の月の上限221.4時間を13.6時間超えており、この13.6時間は時間外労働として、5月の賃金支払日に割増賃金を支払います。残りの時間を清算期間全体で見ると、535時間から13.6時間を除いた521.4時間が総枠520.0時間を1.4時間超えるため、この1.4時間も時間外労働です。合計では15.0時間の時間外労働になります。厚生労働省の解説では、「1か月ごとの週平均50時間を超えた時間」と、「それを除いて清算期間全体で総枠を超えた時間」を、それぞれ時間外労働として数えるとされています(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)(数値は上記の考え方にもとづく計算例です)。
割増賃金・36協定・休日労働・完全週休2日制の特例
フレックスタイム制でも、時間外労働をさせるには36協定の締結・届出が必要です。清算期間を単位に時間外労働を判断するため、36協定で「1日」の延長時間を定める必要はなく、「1か月」「1年」の延長時間を定めます。限度は原則として1か月45時間・1年360時間以内です(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
割増賃金は、時間外労働に対して25%以上です。月60時間を超える時間外労働には50%以上の割増率が必要で、清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制でも、前述の2つの方法で数えた各月の時間外労働について、60時間までは25%以上、60時間を超える分は50%以上で計算します。法定休日(1週間に1日)に働いた時間は、清算期間の総労働時間や時間外労働とは別に数え、35%以上の割増賃金を支払います(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。休日出勤の割増の考え方は、休日出勤とは?割増率の計算方法・振替休日と代休の違いを解説でも整理しています。
完全週休2日制の事業場には、曜日の巡りで想定外の時間外労働が出る問題を避ける特例があります。労使協定で定めれば、労働時間の限度を「清算期間内の所定労働日数×8時間」にできます。厚生労働省の例では、土日が休日の31日の月で、標準の1日を7時間45分とし、所定労働日数が23日の場合、総労働時間は178.25時間で、通常の総枠177.1時間を超えてしまいます。特例を使うと、限度は8時間×23日=184時間になり、総労働時間に収まります(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
なお、特例措置対象事業場(常時10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)は、清算期間が1か月以内なら、週の法定労働時間が44時間のため、総枠を週44時間で計算できます。清算期間が1か月を超える場合は、特例措置対象事業場でも週平均40時間で計算します(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
清算期間ごとの集計を手作業にしない
ここまでの計算は、人ごとに、日々の実労働時間、有給休暇、法定休日の労働を区別して集計して初めて行えます。清算期間が1か月を超えると、月ごとの上限の確認も加わり、表計算での手作業は負担が大きくなります。こうした集計を仕組みにしたい場合の一例が、jinjer株式会社が提供するジンジャー勤怠です。商品ページによると、フレックス制度・裁量労働時間制といった多様な勤務形態に対応できるとされています。労働時間は100種以上の集計項目から設定して自動で集計でき、法定内・法定外の残業時間や深夜時間を分けて集計できます。残業可能時間や有給休暇日数は、雇用形態や勤務形態にあわせて個別に設定でき、超過または不足していると自動で通知が届きます。ただし、清算期間が1か月を超える集計や、法定労働時間の総枠との比較にどこまで対応するかは商品ページに記載がなく、資料で確認が必要です。また、セキュリティ機能やサポートプランの一部にはオプション料金が発生します。商品ページの評価は4.4(14件、2026年10月20日確認)で、商品ページには、スマートフォンアプリでは申請や修正の画面がわかりにくいという声があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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フレックスタイム制の導入手順|就業規則・労使協定・届出の流れ
フレックスタイム制は、就業規則等への規定と、労使協定の締結の2つがそろえば導入できます。清算期間を1か月より長くする場合だけ、労使協定の届出が加わります。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 対象者と清算期間を決める | 適用する労働者の範囲、清算期間の長さと起算日、総労働時間、標準となる1日の労働時間を決める | 月ごとの繁閑差などの実態を踏まえ、対象者や清算期間を労使でよく話し合う。清算期間が1か月を超えても、1か月ごとの実労働時間を労働者に通知するよう努める |
| 2. 就業規則等に規定する | 始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める | 「就業規則その他これに準ずるもの」でもよい。コアタイム等を設けるなら時間帯も明記する |
| 3. 労使協定を締結する | 前項の6項目を、過半数労働組合または過半数代表者と書面で協定する | 過半数代表者は投票・挙手等で選び、使用者の指名や意向による選出は認められない。管理監督者は代表者になれない |
| 4. 労働基準監督署長に届け出る | 清算期間が1か月を超える場合に、労使協定届(様式第3号の3)に協定の写しを添えて提出する | 1か月以内なら届出は不要。届出を怠ると30万円以下の罰金 |
| 5. 36協定を整える | 総枠を超えて働かせる可能性があるなら、36協定を締結・届出する | 1か月・1年の延長時間を定める。「1日」の延長時間は不要 |
表の内容は、厚生労働省の解説にもとづきます(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。就業規則に始業・終業の両方を委ねる旨を書くこと、コアタイムやフレキシブルタイムの時刻を協定と就業規則でそろえることが、導入後の食い違いを防ぐ基本です。労使協定は事業場(工場、支店、営業所等)ごとに協定します。
導入の前後で見落としやすいのは、労働時間の把握です。会社には、実労働時間を把握して、適切な労働時間管理と賃金の精算を行う責任があります(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。労働時間管理の義務そのものは、労働時間管理とは?労働基準法による企業の義務や管理の必要性を解説で解説しています。法定労働時間と所定労働時間の違いは、所定労働時間とは?法定労働時間との違い・決め方・計算方法を解説や、法定労働時間とは?言葉の意味や残業代の計算方法をわかりやすく解説が参考になります。
導入後の運用が回るかを、自社の状況に当てはめて確認してみてください。
フレックスタイム制の労働時間管理、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
ほかの労働時間制度との違い|変形労働時間制・裁量労働制
フレックスタイム制は、労働者が日々の始業・終業時刻を決める制度です。変形労働時間制は会社が事前に特定する制度、裁量労働制は労働時間をみなす制度で、仕組みが異なります。
| 制度 | 労働時間の決まり方 | 時間外労働の考え方 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 通常の労働時間制度 | 会社が始業・終業時刻を決める。法定は1日8時間・週40時間 | 1日8時間・週40時間を超えた時間 | 労働基準法第32条 |
| フレックスタイム制 | 清算期間の総労働時間の範囲で、労働者が日々の始業・終業時刻を決める | 清算期間の実労働時間が法定労働時間の総枠を超えた時間(1か月超は月ごとの週平均50時間も) | 労働基準法第32条の3 |
| 1か月単位の変形労働時間制 | 1か月以内の期間を平均して週の労働時間が法定を超えない範囲で、あらかじめ特定した日・週に法定を超えて働かせる | 特定した日・週の労働時間を超えた時間など | 労働基準法第32条の2 |
| 専門業務型・企画業務型の裁量労働制 | 労使協定や労使委員会の決議で定めた時間を働いたものとみなす。対象業務に限る | みなし時間が法定を超える場合など | 労働基準法第38条の3・第38条の4 |
表の根拠は、e-Gov法令検索の労働基準法の各条文です(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」、2026年10月20日確認)。フレックスタイム制と変形労働時間制は、どちらも法定労働時間を超えて働く日を認める点が似ていますが、フレックスタイム制は日々の時間を労働者が決め、変形労働時間制は会社が特定した日・週の時間が基準になります。裁量労働制は、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす点が違います。
制度ごとに時間外労働の数え方が異なるため、フレックスタイム制の考え方を他の制度にそのまま当てはめないことが大切です。労働基準法が定める労働時間の上限の全体像は、労働基準法の労働時間とは?1日8時間・週40時間と上限を解説で解説しています。
導入状況とメリット・デメリット|向く職場・向かない職場
フレックスタイム制を導入している企業は、令和7年(2025年)の調査で8.3%です。企業規模が大きいほど導入している割合が高くなっています。
| 企業規模 | 導入企業の割合(令和7年) | 適用を受ける労働者の割合(令和7年) |
|---|---|---|
| 企業全体 | 8.3%(令和6年は7.2%) | 11.1%(令和6年は11.5%) |
| 1,000人以上 | 34.5% | 17.6% |
| 300-999人 | 22.6% | 11.8% |
| 100-299人 | 11.5% | 6.6% |
| 30-99人 | 4.9% | 3.2% |
数値は、厚生労働省の令和7(2025)年就労条件総合調査の「労働時間制度」の結果にもとづきます(割合は、変形労働時間制の種類ごとの複数回答の値。厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況」、2026年10月20日確認)。導入企業は全体の1割に届かず、規模が小さい企業ほど少ないことがわかります。
メリット|労働者と会社の双方にある
厚生労働省は、労働者にとっては、日々の都合に合わせて時間をプライベートと仕事に配分でき、仕事と生活のバランスをとりやすくなると説明しています。例として、共働きで保育園の送り迎えを日替わりで分担する、通勤ラッシュを避けて出勤時刻をずらす、通院してから出勤する、資格取得のために早く帰る日をつくる、といった使い方が挙げられています。会社にとっても、労働時間を効率的に配分でき、労働生産性の向上が期待できるうえ、労働者が長く職場に定着しやすくなる利点があるとされています(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
デメリットと対策|運用の負担は会社側に出やすい
デメリットは、制度の仕組みそのものより、運用で出やすい負担にあります。次の表に、起こりやすい課題と、制度の仕組みから導ける対策を整理しました。
| 起こりやすい課題 | 背景 | 対策の考え方 |
|---|---|---|
| 出社時刻がずれ、会議や連絡が取りにくい | 始業・終業時刻を労働者が決めるため、全員が同じ時間にそろわない | 全員が働く時間帯としてコアタイムを設ける(任意)。ただし長くしすぎるとフレックスタイム制といえなくなる |
| 労働時間の把握と賃金精算が複雑になる | 日々の労働時間が人ごとに違い、清算期間ごとに過不足を精算する | 実労働時間を人ごとに記録し、総枠との差を集計できる仕組みにする |
| 月の途中で、超過・不足に気づけない | 清算期間の終わりに初めて、総労働時間との差が確定する | 清算期間が1か月を超える場合は、1か月ごとの実労働時間を労働者に通知するなどの対応に努める |
| 自己管理が難しく、長時間労働になりやすい | 「定時」がなく、仕事の終わりを自分で決める | 36協定の限度時間や、月ごとの週平均50時間の上限を、本人と管理者の双方が確認できるようにする |
表の「背景」と対策は、厚生労働省の解説に書かれた制度の仕組みと留意事項にもとづき、運用面の対策は本記事での整理です(出典:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」、2026年10月20日確認)。
向く職場・向かない職場
公的な資料には、業種ごとにフレックスタイム制の可否を定めた記載はなく、導入できるかは業務の性質と、会社と従業員の話し合いで決まります。一般には、個人で完結する業務が多い職種は始業・終業時刻を委ねやすく、来店対応や、時間を決めて行う作業が中心の職種は、全員の勤務時間をそろえる必要が高くなります。そうした場合は、対象を特定の部署や職種に絞る、コアタイムを設けて一定の時間帯は全員がそろうようにする、といった範囲の決め方が考えられます。
清算の結果を給与計算へつなぐ
清算期間の終わりには、超過した時間の賃金の追加、不足した時間の控除や繰越を、給与計算に反映します。勤怠の集計から給与計算、入社・退職の手続きまでを1つのシステムでまとめたい中小企業の場合の一例が、freee株式会社が提供するfreee人事労務です。商品ページによると、勤怠管理、給与計算、給与明細の作成、年末調整に対応し、共通する情報の入力は1度で済むとされています。入社・退職の手続きでは、従業員がオンラインで必要な手続きを進められ、社会保険や雇用保険など加入が必要な書類を自動作成できます。ただし、商品ページにフレックスタイム制への対応の記載はなく、対応の可否と、清算期間の集計の設定方法は資料での確認が必要です。商品ページの評価は4.5(20件、2026年10月20日確認)で、複数人での管理やカスタマイズでは融通が利きづらい場合があるとされ、スマートフォンからの出退勤が使いにくいという声もあります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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freeeを導入する前まではExcelで各自が自己報告でした。そのため正確な勤務時間や残業時間などが曖昧でした。また、Excelを回収した人がそれぞれの勤務時間を集計するというアナログなやり方だったので、freeeを導入したことでそれが一括管理になったことが一番のメリットです。また、有給休暇申請などもfreee上で完結するので業務効率化に繋がっていると思います。
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・都度ファイルで送られてきていてDLが必要だった給与明細や賞与明細を、ツール内で過去分含め簡単に確認できるようになった ・年末調整がアンケートのような形式で一つ一つ完了する形で進められ、とても楽に対応できる
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特に年末調整の手続きが楽になりました。今まで手書きの専用紙に記述していましたが、年末の忙しい時期に対応するのも億劫になりますし、書き直すのも時間が勿体無いと感じていました。このソフトを使うことで、自分の余裕のあるタイミングで答えて完成させることができますし、マイナンバーなどが必要になった際も撮影するだけで済みますから、年末調整が苦に感じなくなりました。
導入事例として、株式会社クラウンベーカリーは、アルバイトの入退社が多く、紙で情報を収集・管理するやり取りに時間がかかっていたと、freeeの導入事例で紹介されています(公開日の記載はなし)。フレックスタイム制の事例ではなく、勤怠集計と給与計算の手作業を見直した例です。
「勤怠集計・給与計算を手作業で行っているがゆえに、業務量は増え続けミスも頻発するように」
株式会社クラウンベーカリー「freee人事労務」導入事例の課題の項目。出典:freee「株式会社クラウンベーカリー」導入事例、2026年10月20日確認
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フレックスタイム制の落とし穴|よくある失敗と確認先
フレックスタイム制の落とし穴は、時間外労働の数え方、コアタイムの長さ、届出、労働時間の把握の4つに集中します。いずれも厚生労働省の資料で確認できます。
| よくある失敗 | 正しい考え方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 1日8時間を超えたら、その日は必ず残業だと考える(または、清算期間中は残業代が出ないと考える) | 時間外労働は清算期間の実労働時間が法定労働時間の総枠を超えた時間。総労働時間を超えた分は、総枠の範囲内でも賃金の追加が必要 | 厚生労働省の解説 |
| コアタイムを1日の大半にして、実質的に固定の勤務時間にする | コアタイムが1日の労働時間とほぼ同じ、またはフレキシブルタイムが極端に短いと、フレックスタイム制といえなくなる | 厚生労働省の解説 |
| 始業時刻だけを労働者に任せる | 就業規則等で、始業と終業の両方を労働者の決定に委ねる必要がある | 労働基準法第32条の3 |
| 清算期間を3か月にして、労使協定の届出を忘れる | 清算期間が1か月を超える場合は、労使協定を労働基準監督署長に届け出る。違反は30万円以下の罰金 | 厚生労働省の解説 |
| 3か月の清算期間で、繁忙月に労働時間を集中させる | 1か月ごとに週平均50時間を超えた時間は時間外労働。月60時間を超える分は50%以上の割増賃金 | 厚生労働省の解説・労働基準法第32条の3第2項 |
| 不足した時間を、総枠を超えて次の月に繰り越す | 繰越後の総労働時間は、翌期間の法定労働時間の総枠の範囲内にする | 厚生労働省の解説 |
| 出退勤の時刻を自由にしたので、労働時間の管理も不要と考える | 会社は実労働時間を把握し、適切な労働時間管理と賃金の精算を行う | 厚生労働省の解説 |
失敗の多くは、日々の実労働時間を人ごとに記録し、総枠や月ごとの上限と比べる作業が、手作業のままになっていることから起きます。この記録と確認を仕組みにする方法として、役割の違う勤怠・労務のサービスの資料をまとめて取り寄せ、比べることもできます。
実労働時間の記録・勤務形態ごとの集計・給与計算までと、役割が違う3サービスの資料を、入力1回でまとめて請求できます
3サービスの資料をまとめてダウンロードなお、本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. フレックスタイム制度とはどういう制度ですか?
A. 清算期間であらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻と労働時間を自分で決められる制度です(労働基準法第32条の3)。導入には就業規則等への規定と労使協定の締結が必要で、清算期間は最長3か月です。コアタイムとフレキシブルタイムは任意で設けます。
Q2. フレックスタイム制では、1日に何時間働くのですか?
A. 1日の労働時間は決まっておらず、清算期間の総労働時間を満たすように、労働者が日ごとに決めます。協定で定める「標準となる1日の労働時間」は、有給休暇を1日取ったときに働いたものとして扱う時間の基準で、毎日その時間働く義務を表すものではありません。コアタイムがある場合は、その時間帯は勤務する必要があります。
Q3. フレックスタイム制で8時間以上働いたらどうなりますか?
A. 1日8時間を超えても、直ちに時間外労働にはなりません。時間外労働になるのは、清算期間の実労働時間が法定労働時間の総枠を超えた時間です(1か月なら、31日の月で177.1時間)。総労働時間を超えた分は賃金の追加支払いが必要で、総枠を超えた分は36協定と割増賃金(25%以上)の対象になります。
Q4. フレックスタイム制の落とし穴は何ですか?
A. 主な落とし穴は4つです。(1)残業を1日8時間で数えてしまう、(2)コアタイムを長くしすぎて制度の趣旨に反する、(3)清算期間が1か月を超えるのに労使協定を届け出ない、(4)出退勤の時刻が自由なので労働時間の把握を怠る。清算期間が3か月のときは、月ごとの週平均50時間を超えた時間も時間外労働になります。
Q5. コアタイムと清算期間は、必ず決める必要がありますか?
A. コアタイムとフレキシブルタイムは任意で、設けなくても導入できます。一方、清算期間は労使協定で必ず定める項目で、上限は3か月です。起算日も定めます。コアタイムを設ける場合は開始・終了時刻を協定で定め、コアタイムを設けない場合も所定休日はあらかじめ定めます。
Q6. フレックスタイム制を導入するには、何が必要ですか?
A. 就業規則等に始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めることと、労使協定で対象者・清算期間・総労働時間・標準となる1日の労働時間などを定めることが必要です。清算期間が1か月を超える場合は、労使協定届(様式第3号の3)を労働基準監督署長に届け出ます。時間外労働をさせるなら36協定も必要です。
まとめ|フレックスタイム制度で押さえたい5つのこと
フレックスタイム制は、日々の働き方を労働者に委ねる代わりに、会社には労働時間の把握と精算の責任が残る制度です。最後に、押さえておきたい点を整理します。
- 仕組みは「清算期間の総労働時間の範囲で自分で決める」:労働基準法第32条の3にもとづき、就業規則等への規定と、6項目を定めた労使協定で導入します。コアタイムとフレキシブルタイムは任意です。
- 残業は法定労働時間の総枠で数える:1日8時間を超えても直ちに時間外労働にはならず、清算期間の実労働時間が総枠(1か月なら160.0-177.1時間)を超えた時間が時間外労働です。
- 清算期間は最長3か月で、1か月を超えれば届出が必要:3か月にするときは、月ごとの週平均50時間も超えないようにします。届出をしないと30万円以下の罰金です。
- 落とし穴は、コアタイムの長さ・届出・労働時間の把握:コアタイムが1日とほぼ同じ長さになると、フレックスタイム制といえなくなります。
- 労働時間の記録と集計の仕組みを検討する:打刻とアラートならカオナビ勤怠、勤務形態ごとの集計ならジンジャー勤怠、給与計算や手続きまでならfreee人事労務と、役割が違う選択肢があります。
本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。法令・制度と各社の商品ページは、2026年10月20日に確認した内容に基づきます。フレックスタイム制の管理に勤怠管理システムをどう選ぶかは、フレックスタイム制の管理には勤怠管理システムが有効|選び方も解説も参考にしてください。
参考文献
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」(働き方改革関連法解説、2023年2月)、2026年10月20日確認
- デジタル庁 e-Gov法令検索「労働基準法」(第32条・第32条の2・第32条の3・第32条の3の2・第38条の3・第38条の4)、2026年10月20日確認
- 厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況」(労働時間制度)、2026年10月20日確認
- jinjer「社会福祉法人三重ベタニヤ導入事例」、freee「株式会社クラウンベーカリー導入事例」、2026年10月20日確認
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