業務委託契約とは?請負・準委任の種類と雇用・派遣との違い
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- 業務委託は請負か準委任かで決まる
- 指揮命令があれば労働者とされる
- 契約書と60日払いを法令で見直す
業務委託契約とは、企業が自社の業務の一部を、雇用契約を結ばずに外部の企業や個人に任せ、その対価として報酬を支払う契約のことです。民法に「業務委託契約」という名前の契約類型はなく、実際には請負契約・委任契約・準委任契約のいずれか、またはそれらの性質を併せ持つ契約として扱われます。この記事では、業務委託契約の意味と3つの種類、雇用契約・派遣契約との違いと偽装請負の線引き、自社の業務がどの類型にあたるかを決める順序、発注する側と受託する側のメリット・デメリット、締結の流れと契約書の項目、押印・収入印紙・電子契約、フリーランス法で見直す点までを、民法・厚生労働省・公正取引委員会・国税庁の一次情報をもとに解説します。
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業務委託契約とは?法律上の意味と請負・委任・準委任の3種類
業務委託契約とは、委託者が受託者に自社の業務の一部を任せ、受託者が業務を行うことの対価として、委託者が報酬を支払う契約です。受託者は委託者の従業員にはならず、独立した事業者として業務を進めます。
民法には、売買や賃貸借のように「業務委託契約」という名前で定められた契約の類型はありません。実際の業務委託契約は、民法が定める請負(第632条)、委任(第643条)、準委任(第656条)のいずれかにあたる、またはそれらの性質を併せ持つ契約として扱われます(e-Gov法令検索 民法)。契約書の題名が「業務委託契約書」でも、中身が何を約束する契約なのかによって、報酬の払い方、途中の解除、責任の範囲が変わります。
請負・委任・準委任の違いを民法の条文で比べる
次の表は、3つの契約について、民法の条文に書かれている内容を並べたものです。業務委託契約書を作るときは、自社の取引がどの列にあたるかを先に決めます。
| 項目 | 請負 | 委任 | 準委任 |
|---|---|---|---|
| 民法の条文 | 第632条 | 第643条 | 第656条(委任の規定を準用) |
| 約束すること | ある仕事を完成すること | 法律行為をすることを委託し、承諾すること | 法律行為でない事務の委託。委任の規定を準用 |
| 報酬の考え方 | 仕事の結果に対して支払う。目的物の引渡しと同時に支払う(第633条) | 特約がなければ報酬を請求できない(第648条第1項)。履行した後に請求する(同条第2項) | 委任と同じ。成果に対して報酬を払う約束もできる(第648条の2) |
| 受託者の義務 | 仕事を完成させる義務。不適合を知った時から1年以内の通知が必要(第637条) | 善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(第644条) | 委任と同じ(第656条による準用) |
| 途中の解除 | 完成前なら、注文者は損害を賠償して解除できる(第641条) | 各当事者がいつでも解除できる。相手方に不利な時期の解除などは損害賠償(第651条) | 委任と同じ(第656条による準用) |
請負は「できあがった仕事の結果」に報酬が払われるのに対し、委任と準委任は「事務を処理すること」そのものに報酬が払われます。契約の締結や訴訟の追行などの法律行為を任せるのが委任、それ以外の事務(調査、データ入力、システムの運用など)を任せるのが準委任です。
国税庁は、請負には建設工事のような形のあるものだけでなく、警備・機械保守・清掃のように役務の提供で無形の結果を目的とするものも含まれると説明しています(国税庁 No.7102 請負に関する契約書)。作業をしてもらう契約だからといって、すべてが準委任になるわけではありません。
準委任には、履行の割合で払う型と、成果に払う型がある
民法第648条第3項は、委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや、委任が履行の中途で終了したときに、受任者が既にした履行の割合に応じて報酬を請求できると定めています。これに対し、第648条の2は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合に、成果の引渡しが必要なときは、報酬を成果の引渡しと同時に支払うと定めています。同じ準委任でも、作業の履行に払うのか、成果に払うのかで、報酬の発生の考え方が変わります。どちらで払うのかを契約書に書いておくと、途中で終了したときの精算を整理しやすくなります。
業務委託契約は、基本契約に加えて、発注書や請書、個別契約と、取り交わす書類が増えやすい契約です。契約書の作成・押印・郵送・保管を見直したい会社向けに、電子契約・契約書管理の3サービスを、役割の違いで比べます。
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業務委託契約と雇用契約・派遣契約の違い|指揮命令と労働者性
業務委託契約と雇用契約の最大の違いは、委託者が受託者に業務の進め方を指揮命令するかどうかです。業務委託では、受託者が自分の裁量で業務を進め、成果または業務の履行に対して報酬を受け取ります。
| 項目 | 業務委託契約 | 雇用契約 | 労働者派遣契約 |
|---|---|---|---|
| 当事者 | 委託者と受託者(企業・個人事業主など) | 使用者と労働者 | 派遣元と派遣先。派遣労働者は派遣元に雇用される |
| 根拠となる主な法令 | 民法(請負・委任・準委任)。条件を満たせばフリーランス法・取適法 | 民法第623条、労働基準法など | 労働者派遣法 |
| 指揮命令 | 委託者は受託者に具体的な指揮命令をしない | 使用者が労働者に指揮命令をする | 派遣先が派遣労働者に指揮命令をする(派遣法第2条第1号) |
| 労働基準法の適用 | 受託者が「労働者」にあたらなければ適用されない | 適用される | 派遣元・派遣先の双方に、定められた範囲で適用される |
民法第623条は、雇用を、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって効力を生ずる契約と定めています。労働者派遣法第2条第1号は、労働者派遣を、自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させることと定めています(e-Gov法令検索 民法、e-Gov法令検索 労働者派遣法)。
契約書の題名が業務委託でも、実態が労働者なら労働基準法が適用される
労働基準法第9条は、労働者を、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定めています(e-Gov法令検索 労働基準法)。厚生労働省の資料集は、この労働者にあたるかどうかは、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて判断されると説明しています(厚生労働省 労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集)。
同資料集は、判断の基準を「指揮監督下の労働であること」と「報酬の労務対償性があること」の2つに整理し、これらを総称して使用従属性と呼んでいます。次の表は、同資料集が挙げる判断要素を、発注する側が自社の契約を点検するときの問いに言い換えたものです。1つの要素だけで決まるものではなく、総合的に判断されます。
| 判断要素 | 点検するときの問い |
|---|---|
| 仕事の依頼や業務従事の指示に対する諾否の自由 | 個別の依頼や指示を、受託者が断れるか |
| 業務遂行上の指揮監督 | 業務の進め方や手順を、委託者が細かく指示していないか |
| 拘束性 | 勤務場所や時間を指定し、管理していないか |
| 代替性(指揮監督関係を補強する要素) | 受託者本人に代わって、別の人が業務を行うことが認められているか |
| 報酬の労務対償性 | 報酬が、成果や業務そのものではなく、働いた時間の対価になっていないか |
| 事業者性・専属性(労働者性を補強する要素) | 機械や器具を自分で負担しているか。他社の仕事を受けられるか |
業務委託の受託者に勤怠の管理や時間の拘束を課すと、労働者性が問題になることがあります。業務委託の勤怠管理の考え方は、業務委託・業務請負の勤怠管理とはで整理しています。
派遣との境目と偽装請負|請負なのに作業者へ直接指示してはいけない
請負や業務委託の形をとっていても、実態が労働者派遣にあたれば、労働者派遣法の規制を受けます。厚生労働省の告示(昭和61年労働省告示第37号)の第2条は、請負の形式で自己の労働者を業務に従事させる事業主について、(1)自己の労働者の労働力を自ら直接利用していること(業務の遂行方法や評価、労働時間、服務規律や配置を自ら管理すること)と、(2)請け負った業務を相手方から独立して処理していること(資金の調達と支弁、事業主としての責任、機械設備や材料の用意、または自ら行う企画や専門的な技術・経験による処理)のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主にあたるとしています。第3条は、法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものは、そのことを免れられないと定めています(厚生労働省 37号告示)。
厚生労働省の疑義応答集は、発注者が請負事業主に作業工程の見直しや製作し直しを要求することは、契約の当事者間のやり取りであり偽装請負にあたらない一方、発注者が請負労働者に直接、作業工程の変更や再製作を指示すれば、直接の指揮命令にあたり偽装請負と判断されるとしています(問2)。また、発注者が作業工程の順序や方法を指示することや、作業指示書で内容・順序・方法を詳細に示してそのとおりに作業させることも、偽装請負と判断されるとしています(問7。厚生労働省 37号告示関係疑義応答集)。
つまり、発注する側が受託者に伝えるのは、成果物の仕様や納期、業務の範囲といった「注文」までで、受託者の作業者に直接、進め方や配置を指示しない運用が必要です。請負・準委任と偽装請負の判断は、BPOと業務委託の違いとはでも詳しく整理しています。
アルバイト・個人事業主・フリーランス・アウトソーシングとの違い
| 言葉 | 何を指すか | 業務委託契約との関係 |
|---|---|---|
| アルバイト | 雇用契約で働く人。使用者の指揮命令のもとで労務を提供する | 雇用契約であり、業務委託契約ではない。労働基準法などが適用される |
| 個人事業主 | 事業を営む個人という、働き方や税務上の区分 | 業務委託契約の受託者になることが多いが、契約の種類ではなく受託者の立場を表す言葉 |
| フリーランス | 従業員を使用しない業務委託の相手方の事業者。フリーランス法は、従業員を使用しない個人と、代表者以外に役員がなく従業員も使用しない法人を対象とする | 業務委託契約の受託者になることが多い。条件を満たす発注には、フリーランス法の義務が発注側に生じる |
| アウトソーシング | 自社の業務を外部の事業者に任せること全般 | 業務委託契約は、アウトソーシングを行うための契約の一つ。BPOは業務プロセスをまとまりで任せる形 |
BPOでの契約の進め方や、委託先の監督の考え方は、BPO契約とはで解説しています。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
自社の業務はどの類型にあたる?請負・準委任を決める判断の順序
請負か準委任かは、契約書の題名ではなく、何を約束したかで決まります。完成させる仕事を約束したなら請負、事務を処理することそのものを約束したなら準委任の考え方になります。
契約書を書く前に、次の順序で自社の取引を整理します。
- 受託者が約束するのは、仕事の完成か、事務の処理かを決める。
- 報酬は、完成した結果に対して払うのか、業務の遂行に対して払うのかを決める。
- 任せる事務が、契約の締結や訴訟の追行などの法律行為か、それ以外かを確かめる(法律行為なら委任、それ以外なら準委任)。
- 準委任の場合は、報酬を履行の割合や期間に応じて払うのか、成果に応じて払うのか(民法第648条・第648条の2)を決める。
- 完成前や途中で終了したときの精算、契約内容に適合しない場合の扱いを、契約書に書く。
| 約束する内容 | 考え方の類型 | 契約書で決めておく点 |
|---|---|---|
| 成果物の納品(制作物、開発物など) | 請負 | 仕様、納期、検収の基準、修正対応の範囲、不適合があったときの通知期間 |
| 作業の遂行(運用、事務、調査など) | 準委任 | 業務の範囲、報告の方法、稼働の条件、契約期間と更新 |
| 作業の遂行だが、成果に応じて報酬を払う | 準委任(成果に対する報酬。第648条の2) | 成果の定義、引渡しの方法、報酬を払う時期 |
| 契約の締結や手続の代理など、法律行為 | 委任 | 任せる権限の範囲、報告の方法、費用の負担 |
1つの契約の中に、納品物を伴う部分と、運用を任せる部分が混在することもあります。その場合は、部分ごとにどの約束なのかを分けて書き、報酬や検収の定めも部分ごとに分けると、後から食い違いが生じにくくなります。営業代行のように、成果と作業の両方が関わる業務の考え方は、営業代行に業務委託しようも参考になります。
報酬の決め方は、類型とは別に3つの型から選ぶ
報酬の払い方は、契約の類型とは別に、毎月一定額を払う型、成果に応じて払う型、単発の業務に一定額を払う型のなかから選びます。継続する業務には月額の型、成果が見えやすい業務には成果に応じる型、1回で終わる業務には単発の型が合います。どの型でも、金額または計算方法、支払期日、経費の負担を契約書に書きます。フリーランス法の対象になる発注では、支払期日に上限があります(後述)。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
業務委託契約のメリット・デメリット|発注する会社と受託する側それぞれの注意点
業務委託契約のメリットは、必要な業務を必要な期間だけ、外部の専門性で補えることです。デメリットは、業務の進め方を細かく指示できず、ノウハウが社内に残りにくいことです。
発注する会社のメリットとデメリット
| 観点 | メリット | デメリットと注意点 |
|---|---|---|
| 人員とコスト | 業務量に応じて発注でき、雇用に伴う採用や教育の負担を避けられる | 業務の単価が、雇用して担当させる場合より高くなることがある |
| 専門性 | 社内にない専門知識や経験を、必要な範囲で使える | 委託先を探し、条件を交渉する手間がかかる |
| 指示と管理 | 成果や業務範囲を契約で定め、進め方は受託者に任せられる | 進め方を細かく指示できない。指示が過ぎると、労働者性や偽装請負が問題になる |
| 情報とノウハウ | 社内の人員を、コア業務に集中させられる | 業務の知見が社内に残りにくい。個人データを任せるなら、委託先の監督が必要になる |
| 法令の対応 | 契約で責任の範囲を整理できる | フリーランス法・取適法などの義務が生じる場合がある |
個人データの取扱いを委託する場合、個人情報保護法第25条は、個人情報取扱事業者に、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行うことを求めています(e-Gov法令検索 個人情報保護法)。業務委託契約に、秘密保持と個人データの取扱いの定めを入れるだけでなく、委託先の管理の状況を確かめる運用が必要になります。
受託する側から見た注意点|「やめたほうがいい」と言われる理由
業務委託で働くことを「やめたほうがいい」と感じさせる理由は、主に、労働法の保護、収入の安定、事務の負担の3つです。条件によっては合う働き方でもあるため、契約の中身を確かめてから判断します。
- 労働基準法の保護は、労働者にあたる場合に受けられます。受託者として契約すると、労働者にあたらない限り、労働基準法の保護を前提にできません。
- 報酬は、契約で決めた成果や業務の履行に対して支払われます。仕事の量が減ったときの収入の減少は、自分で引き受けます。
- 新たに事業を始めたときの届出や、確定申告などの税の手続を、自分で行う必要があります(国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など)。
- 従業員を使用しない個人などが受託者になる場合、フリーランス法により、発注側に取引条件の明示や60日以内の報酬支払などの義務が生じます。契約前に、条件が書面または電磁的方法で示されているかを確かめます。
受託する前には、業務の範囲、報酬と支払期日、修正対応の回数、成果物の権利、契約期間と解除の条件を、契約書で確認します。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
業務委託契約の締結の流れと、契約書に入れる主な項目
業務委託契約は、業務内容と条件を決め、委託先を選んで条件を交渉し、契約書を作成・確認して、署名押印または電子署名で締結する流れで進みます。契約書には、委託業務、報酬、検収、知的財産権、秘密保持、再委託、契約期間と解除を入れます。
- 委託する業務の目的と範囲を決める。社内で担う部分と、外部に任せる部分を分ける。
- 委託先を選ぶ。相手が個人や従業員のいない法人の場合は、フリーランス法の対象になるかを確認する。
- 業務の内容、報酬、納期、体制などの条件を交渉し、曖昧な点を解消する。
- 契約書の案を作成する。発注側が作成することが多いが、決まりはなく、受託側の書式を使う場合もある。
- 双方で内容を確認し、必要に応じて修正する。修正版は版を分けて保存する。
- 署名押印または電子署名で締結し、契約書を保管して、期間と更新を台帳に登録する。
| 項目 | 書く内容 | 確認する点 | 関連する法令 |
|---|---|---|---|
| 委託業務の内容 | 業務の範囲、成果物の仕様、納期 | 請負か準委任か。範囲が曖昧だと、追加の依頼をめぐって食い違う | 民法第632条・第656条 |
| 報酬と支払条件 | 金額または計算方法、支払期日、支払方法、経費の負担 | フリーランス法の対象なら、受領日から60日以内に支払期日を定める。振込手数料の扱いを決める | フリーランス法第4条 |
| 納品と検収 | 納品の方法、検収の期間、修正の回数と範囲 | 請負では、不適合の通知期間(民法の原則は不適合を知った時から1年以内)を確認する | 民法第637条 |
| 知的財産権 | 成果物の権利の帰属、譲渡の範囲 | 著作権を譲渡するなら、翻案権などの第27条・第28条の権利も譲渡の対象と明記する | 著作権法第61条第2項 |
| 秘密保持・個人情報 | 秘密情報の範囲、目的外使用の禁止、返還と消去 | 個人データを扱うなら、委託先の監督の方法も決める | 個人情報保護法第25条 |
| 再委託 | 認めるか、認める場合の条件と責任 | 再委託先での漏えいや品質の責任を、誰が負うか | 契約で定める |
| 契約期間・更新・解除 | 期間、自動更新の有無、解除の条件、損害賠償 | 民法の原則と契約の定めの違いを確認する。継続的な業務委託では、解除の予告が必要な場合がある | 民法第641条・第651条、フリーランス法第16条 |
著作権法第61条第2項は、著作権を譲渡する契約において、第27条または第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています(e-Gov法令検索 著作権法)。成果物を自社で自由に改変して使いたい場合は、契約書にその旨を明記します。
基本契約と個別契約を分けるときの考え方
継続して取引する相手とは、共通のルールを定める基本契約と、案件ごとの業務内容・報酬・納期を定める個別契約(発注書と請書など)に分けると、契約書の管理が整理しやすくなります。基本契約に、秘密保持、知的財産権、再委託、解除、損害賠償といった共通の条項を置き、個別契約には、案件ごとに変わる項目だけを書きます。両者の優先関係(食い違ったときにどちらを優先するか)も、基本契約に書いておきます。
基本契約と個別契約が増えるほど、どの契約書がどの案件に適用されるのか、期間はいつまでかを確認する手間が増えます。次のセルフチェックで、自社の契約書の作成と管理のやり方を点検してみてください。
業務委託契約の作成と管理、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
押印・収入印紙・電子契約|業務委託契約書は書面でなければならないか
業務委託契約は、書面がなくても、当事者の合意があれば成立します(民法第522条第2項)。ただし、フリーランス法の対象になる発注では、取引条件を書面または電磁的方法で明示する義務があります。収入印紙は、契約書の内容によって、要否が変わります。
書面を作らなくても契約は成立するか
民法第522条第2項は、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しないと定めています(e-Gov法令検索 民法)。一方、フリーランス法第3条は、業務委託事業者が特定受託事業者に業務委託をした場合は、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面または電磁的方法で明示しなければならないと定めています(e-Gov法令検索 フリーランス法)。公正取引委員会のページも、口頭での明示は認められないとしています。契約書がなくても契約は成立しますが、報酬や成果物の範囲をめぐって争いになったときに内容を示せるよう、書面か電磁的記録で残します。
業務委託契約書に収入印紙は必要か
国税庁は、課税文書にあたるかどうかは、契約書の名称や表題で形式的に決めず、記載された文言の実質的な意味を汲み取って総合的に判断するとしています(国税庁 No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断)。業務委託契約書の場合、中身が請負にあたるか、基本契約にあたるかで区分が変わります。
| 契約書の内容 | 印紙税の区分 | 国税庁の説明 |
|---|---|---|
| 仕事の完成を約束する請負の契約書 | 第2号文書(請負に関する契約書) | 契約金額に応じた税額。1万円未満は非課税、契約金額の記載がないものは200円(No.7102) |
| 営業者間で継続する複数の取引の基本的な取引条件を定める基本契約書 | 第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の場合がある | 税額は1通4,000円。契約期間が3か月以内で、更新の定めのないものは除く(No.7104) |
| 事務の処理を任せる準委任の内容だけの契約書 | 課税物件表の20種類のいずれにもあたらない場合は、課税されない | 印紙税が課税されるのは、課税物件表に掲げる20種類の文書に限られる。名称ではなく記載内容で判断する(No.7100) |
1通の契約書に請負の内容と準委任の内容が含まれる場合など、判断に迷うときは、税務署に確認します。
電子契約で結ぶと、印紙税はどうなるか
電子署名法第3条は、本人の電子署名が付され、本人だけが行えるよう管理されている電磁的記録について、真正に成立したものと推定すると定めています(e-Gov法令検索 電子署名法)。印紙税については、国税庁の質疑応答事例が、電子署名を付した電磁的記録を電子メールで送信する場合、電磁的記録は課税物件表に掲げられた文書に含まれず、印紙税は課税されないと回答しています(国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い)。業務委託契約書を電子契約で結べるかどうかは、業務委託契約書は電子契約できる?メリットや締結までのやり方で解説しています。
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フリーランス法・取適法で見直す点|個人や小規模法人に発注するとき
従業員を使用しない個人や、代表者以外に役員がなく従業員も使用しない法人に業務委託をする場合は、フリーランス法により、取引条件の明示や60日以内の報酬の支払などの義務が、発注する側に生じます。
フリーランス法第2条第1項は、特定受託事業者を、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用しない個人、または、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しない法人と定めています。公正取引委員会の特設ページは、発注事業者の義務を、次のように整理しています(公正取引委員会 フリーランス法特設サイト)。
| 発注側の義務 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 取引条件の明示 | 業務委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示する。口頭は認められない | 第3条 |
| 報酬の支払期日 | 給付を受領した日(役務の提供は提供を受けた日)から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に定める | 第4条 |
| 禁止行為 | 1か月以上の業務委託では、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更ややり直しなどが禁止される | 第5条 |
| 中途解除などの予告 | 6か月以上の業務委託の解除や不更新は、少なくとも30日前までに予告する。受託者の請求があれば、理由を開示する | 第16条 |
公正取引委員会は、令和8年1月1日以降に業務委託する取引では、あらかじめ合意があっても、振込手数料をフリーランスに負担させて報酬から差し引くことは、報酬の減額にあたるとしています。業務委託契約書の報酬の条項には、振込手数料を発注側が負担することを書いておきます。
業務委託の取引には、中小受託取引適正化法(取適法)が適用される場合もあります。公正取引委員会のQ&Aは、企業が自ら用いる役務の委託(弁護士、公認会計士、産業医との契約)は、役務提供委託にあたらず、本法の対象にならないとしています(Q32)。労働者派遣を受けることも、自ら用いる役務の委託として対象にならないとしています(Q4)。自社の取引が対象にあたるかどうかは、資本金や従業員数などの基準とあわせて、公正取引委員会 取適法Q&Aで確認します。
フリーランス法の対象になる発注では、契約書に、明示が必要な事項を漏れなく書いておくと、取引条件の明示を契約書で兼ねられます。契約書を作成する段階で、相手が対象にあたるかを確認する手順を決めておくと、発注のたびに迷わずに済みます。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
締結後の管理|契約期間・更新・解除と、契約書の置き場所
業務委託契約は、締結した後の管理が抜けやすい契約です。契約期間、自動更新の有無、更新しない場合の通知期限、解除の条件を、契約ごとに台帳へ残します。
| 台帳に残す項目 | 見落としたときの困りごと | 関連する定め |
|---|---|---|
| 契約期間と自動更新の有無 | 気づかないまま更新される。期間が切れたまま業務が続き、契約書のない状態になる | 契約書の期間・更新条項 |
| 解除の条件と予告期間 | 民法の原則と契約の定めの違いに気づかず、解除の手続を誤る | 民法第641条・第651条、フリーランス法第16条 |
| 検収と支払期日 | 支払が遅れ、フリーランス法に反する状態になる | フリーランス法第4条 |
| 再委託先と個人データの委託 | 委託先の監督の記録がなく、確認を求められたときに示せない | 個人情報保護法第25条 |
| 成果物の権利の帰属 | 成果物を使うときに、権利の扱いを確認し直すことになる | 著作権法第61条第2項 |
民法第641条は、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できると定め、第651条は、委任は各当事者がいつでも解除できるとしたうえで、相手方に不利な時期に解除したときなどは損害の賠償が必要になると定めています。ただし、これらは契約で別の定めを置かなければ働く原則です。解除の条件、予告の期間、解除の場合の精算は、契約書で具体的に決めます。
件数が少ないうちは、台帳と共有フォルダで管理できます。契約書が増え、担当者が異動すると、紙やPDFが部署ごとに分かれ、期限の確認が属人化します。契約書を一元管理し、期限が近づいたときに通知を受け取る仕組みがあれば、更新の抜け漏れを減らせます。
紙・PDF・電子契約で結んだ業務委託契約書を、まとめて検索し、契約期間の期限を把握したい場合の一例が、Sansan株式会社の「Contract One」です。商品ページでは、紙・PDF・電子契約といった契約書を、AI-OCRと専門スタッフの確認によってデータ化して一元管理でき、データ化した契約情報は全文検索が可能で、契約期限が近づいた際のアラート通知や契約の自動更新設定も備えると紹介されています。注意点として、導入時に業務フローの見直しが必要な場合があるとされています。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

おすすめ!
- あらゆる契約書を正確にデータ化し、AIで扱いやすいデータベースを構築
- Contract One内で生成AIを活用することで、法務部門に限らず全社での契約データの活用を促し、さまざまな部門の課題を解決
- 法改正への対応をサポート
気になる…
- 導入時、業務フローの見直しが必要な場合も
導入事例では、イオンマーケティングが、創業以来の紙の契約書をすべてデータ化して一元管理し、期限通知機能で契約更新時期が近づくと自動でアラートメールを発信することで、担当者の異動や退職があっても更新期限を検知でき、意図しない契約更新や更新漏れのリスクを回避できるようになったと紹介されています(Sansan株式会社のプレスリリース)。
契約の件数が増える前に、契約期間と更新の把握を仕組みにしておくと、後から過去の契約書を探し直す手間を避けられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 業務委託契約とは、簡単にいうとどういう契約ですか?
A. 企業が自社の業務の一部を、雇用契約を結ばずに外部の企業や個人に任せ、その対価として報酬を支払う契約です。民法に「業務委託契約」という名前の契約類型はなく、請負・委任・準委任のいずれか、またはそれらの性質を併せ持つ契約として扱われます。受託者は従業員ではなく、独立した事業者として業務を進めます。
Q2. 業務委託で気をつけることは何ですか?
A. 契約書で業務の範囲、報酬と支払期日、成果物の権利、契約期間と解除を決めることと、受託者に指揮命令をしないことです。契約の題名が業務委託でも、実態が労働者なら労働基準法が適用されます。請負で作業者に直接指示すると、偽装請負と判断されます。相手が従業員のいない個人などの場合は、フリーランス法の義務も確認します。
Q3. 業務委託はやめたほうがいい理由はありますか?
A. 一概にやめたほうがよいとはいえず、立場と契約の中身で変わります。受託する側は、労働者にあたらない限り労働基準法の保護を前提にできず、収入の変動や税の手続を自分で引き受けます。発注する側は、進め方を細かく指示できず、指示が過ぎると偽装請負が問題になります。契約書で条件を確認してから判断します。
Q4. 業務委託とアルバイトの違いは何ですか?
A. アルバイトは雇用契約で、使用者の指揮命令のもとで働きます。業務委託は雇用契約ではなく、受託者が自分の裁量で業務を進め、成果または業務の履行に対して報酬を受け取ります。ただし、契約の名称にかかわらず、働き方の実態が労働者であれば、労働基準法の労働者として扱われます。
Q5. 業務委託契約と請負契約は何が違いますか?
A. 請負契約は、業務委託契約の一種です。業務委託契約は、請負・委任・準委任を含む広い呼び方で、請負は仕事の完成を約束し、完成した結果に対して報酬を払う契約です。準委任は、法律行為でない事務の処理を任せ、業務の履行に対して報酬を払うのが基本で、報酬の払い方や解除の考え方が違います。
Q6. 業務委託契約のメリット・デメリットは何ですか?
A. 発注する側のメリットは、必要な業務を必要な期間だけ外部の専門性で補え、雇用に伴う負担を避けられることです。デメリットは、業務の進め方を細かく指示できず、ノウハウが社内に残りにくいことと、フリーランス法などの義務への対応が必要なことです。受託する側は、働き方の自由度が高い反面、収入や手続を自分で管理します。
業務委託契約で押さえたい6つのこと
- 業務委託契約は、業務の一部を外部に任せて報酬を払う契約で、民法上は請負・委任・準委任のいずれか、またはその性質を併せ持つ契約です。
- 請負は仕事の完成、準委任は事務の処理を約束する契約です。契約書の題名ではなく、何を約束したかで類型を決めます。
- 雇用や派遣との境目は指揮命令です。題名が業務委託でも、実態が労働者なら労働基準法が適用され、請負で作業者に直接指示すると偽装請負と判断されます。
- 発注する側は専門性を補える反面、進め方を細かく指示できません。受託する側は自由度が高い反面、労働者にあたらない限り労働基準法の保護を前提にできません。
- 契約書には、委託業務、報酬、検収、知的財産権、秘密保持、再委託、期間と解除を書き、フリーランス法の対象なら、取引条件の明示、60日以内の支払、禁止行為、解除予告を確認します。
- 押印・郵送の手間や、締結後の期限管理が重いときは、電子契約や契約書管理サービスの資料を取り寄せ、自社に合うかを比べます。
参考文献
- e-Gov法令検索 民法(第522条・第623条・第632条・第633条・第637条・第641条・第643条・第644条・第648条・第648条の2・第651条・第656条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 労働基準法(第9条) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- e-Gov法令検索 労働者派遣法(第2条) https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- e-Gov法令検索 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法) https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025
- e-Gov法令検索 個人情報保護法(第25条) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
- e-Gov法令検索 著作権法(第61条) https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
- e-Gov法令検索 電子署名法(第3条) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000102
- 厚生労働省 労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集(令和6年10月時点) https://www.mhlw.go.jp/content/001462701.pdf
- 厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号) https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf
- 厚生労働省 37号告示関係疑義応答集 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
- 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2026/
- 公正取引委員会 取適法Q&A https://www.jftc.go.jp/toriteki/toriteki_qa.html
- 国税庁 No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7100.htm
- 国税庁 No.7102 請負に関する契約書 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7102.htm
- 国税庁 No.7104 継続的取引の基本となる契約書 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7104.htm
- 国税庁 質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/02/10.htm
- 国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
- Biz Connectionの導入事例 https://bberc.focus-s.com/construction-equipment/case01/
- Sansan株式会社 イオンマーケティングのContract One活用事例 https://jp.corp-sansan.com/news/2026/0122_01.html
- SMBCクラウドサイン 導入事例 山一建設 https://www.smbc-cloudsign.co.jp/case/detail_0015.html
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