中小企業の福利厚生|制度の種類・導入しやすい例・始め方を解説
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- 義務は法定福利、法定外福利は任意
- 30人未満の31.1%は法定外が皆無
- 目的と要望から1分野を選び見直す
中小企業の福利厚生は、給与とは別に従業員の生活や働きやすさを支える制度の総称で、法律で義務づけられた法定福利と、会社が任意で設ける法定外福利に分けて考えます。法定外福利は法律上の義務ではなく、JILPT(労働政策研究・研修機構)の企業調査では、従業員30人未満の企業の31.1%が「法定外の福利厚生制度・施策はまったくない」と答えています。このページでは、両者の違い、企業規模別の実施状況、導入しやすい制度の例、公的な共同利用の仕組みと外部サービス、導入の進め方を整理します。料金の具体額は会社の条件で変わるため、金額は示さず確認の仕方を中心に解説します。
自社の福利厚生の課題を、2問で整理してみる
Q1. いま一番気になっているのはどちらですか?
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中小企業の福利厚生とは|法定福利と法定外福利の違い
中小企業の福利厚生は、法律で義務づけられた法定福利(社会保険・労働保険)と、会社が任意で設ける法定外福利に分かれ、会社に義務があるのは前者だけです。
法定福利のうち社会保険は、法人であれば従業員の数にかかわらず加入が必要です。日本年金機構は、株式会社などの法人の事業所は厚生年金保険の適用事業所となり、被保険者となるべき従業員を使用している場合は必ず加入手続きをしなければならないと説明しています(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html)。厚生年金保険と健康保険の保険料は、会社と被保険者が半分ずつ負担します(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/documents/hoken-miteki.pdf)。労働保険(労災保険と雇用保険)も、雇用形態にかかわらず労働者を1人でも雇っていれば加入が義務で、労災保険分の保険料は全額事業主負担、雇用保険分は事業主と労働者の双方の負担です(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/tokusetusaito/about.html)。
| 項目 | 法定福利 | 法定外福利 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 法律で加入と負担が決まっている制度 | 会社が任意で設ける制度。実施の有無も内容も会社が決める |
| 主な内容 | 健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険 | 慶弔見舞金、人間ドックの補助、食事の補助、住宅手当、特別な休暇、自己啓発の支援など |
| 会社の義務 | 加入手続きと保険料の納付 | 法律上の義務はない |
「福利厚生がない会社は違法ですか」という疑問も多く検索されています。法定外福利は義務ではないため、1つもなくても、それだけで違法にはなりません。問題になるのは、加入が義務づけられた社会保険や労働保険の手続きを行っていない場合です。これは一般的な整理であり、法的助言ではないため、迷う場合は年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
福利厚生の運営を軽くする手段の役割の違い|アプリ型の健康支援と置き菓子型の食事支援
中小企業が悩みやすいのは法定外福利です。制度を増やすほど申請の受付や利用状況の把握に手間がかかり、予算にも限りがあります。JILPTの調査で、福利厚生の運営に「福利厚生サービスを提供する民間の事業者」が携わっている企業は10.0%で、規模が大きいほど割合が高くなっています(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/203_01.pdf)。小さな会社でも取り入れやすい2つのサービスの役割の違いを、表にまとめます。
中小企業が使いやすい福利厚生サービス、2つの役割の違い
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|---|---|---|
| 向いている会社 | 雇用形態や勤務場所にかかわらず、従業員の健康と日常を支える福利厚生を、少ない運用負担で取り入れたい会社 | 休憩スペースや給湯室に置き場所を確保でき、食事や間食の面から福利厚生を整えたい会社 |
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中小企業の福利厚生の実施状況|企業規模別にみた制度の実施率
JILPTの調査では、従業員30人未満の企業で実施率が高い制度は、慶弔休暇制度(87.6%)、慶弔見舞金制度(83.1%)、病気休職制度(54.4%)の順です。
JILPTの調査シリーズNo.203「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」は、厚生労働省の要請で行われ、2017年10月から12月に、全国の10人以上の民間企業12,000社へ郵送で実施されました。有効回収は2,809社で、2020年7月に公表されています(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html)。調査は2017年のもので最新の数字ではありませんが、企業規模別に48項目の実施率を比べられる貴重な公的調査です。従業員30人未満の企業の回答は1,512社です。実施率を規模別に並べると、次のとおりです。
| 制度・施策 | 30人未満 | 30-99人 | 100-299人 | 300人以上 |
|---|---|---|---|---|
| 慶弔休暇制度 | 87.6% | 94.1% | 96.1% | 97.0% |
| 慶弔見舞金制度 | 83.1% | 89.7% | 92.6% | 95.5% |
| 病気休職制度 | 54.4% | 68.5% | 75.8% | 86.5% |
| 人間ドック受診の補助 | 44.3% | 41.1% | 47.4% | 64.7% |
| 社員旅行の実施、補助 | 42.2% | 46.0% | 46.7% | 38.3% |
| 永年勤続表彰 | 40.8% | 54.7% | 69.5% | 77.4% |
| 家賃補助や住宅手当の支給 | 35.8% | 48.2% | 62.5% | 71.4% |
| 社外の自己啓発サービスの提供、経費補助 | 26.7% | 36.8% | 51.6% | 55.6% |
| 財形貯蓄制度 | 23.3% | 34.5% | 65.1% | 68.4% |
| 食事手当 | 19.0% | 22.2% | 25.3% | 23.3% |
| 食堂 | 16.5% | 29.2% | 37.5% | 48.1% |
| メンタルヘルス相談 | 17.3% | 36.1% | 69.8% | 78.2% |
出典: JILPT調査シリーズNo.203 図表2-4-3(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/203_01.pdf)。施策が「ある」と答えた企業の割合です。
全体の傾向は、規模が大きいほど実施率が高いというものですが、制度によって差の大きさは異なります。財形貯蓄制度、メンタルヘルス相談、食堂、家賃補助や住宅手当は、規模による差が大きい制度です。一方、慶弔に関する制度、食事手当、人間ドック受診の補助、社員旅行は差が小さく、小さな会社でも一定の割合で実施されています。調査報告も、財産形成や住宅は規模間の差が目立ち、慶弔災害は差が少ないものが多いと述べています。
小さな会社ほど「法定外の制度がまったくない」が多い
同じ調査で、福利厚生の実施・運営に携わっている主体を尋ねたところ、「法定外の福利厚生制度・施策はまったくない」が全体で25.3%、従業員30人未満では31.1%、30-99人で21.0%、100-299人で13.7%、300人以上で11.3%でした。実施している制度の数も規模で差があり、30人未満では施策が5つ未満の企業が19.5%、5-10未満が38.7%で、300人以上では40.6%が20以上の施策を実施しています。つまり、福利厚生が少ないのは中小企業では珍しくなく、まず1つ始めるところに価値があります。
実施率の高さは、導入する順番ではない
「中小企業の福利厚生ランキング」を調べると、実施率の高い順の一覧に行き着きます。ただし、実施率が高いことは、自社に合うことを意味しません。同じ調査では、福利厚生の目的として企業が重視しているのは、従業員の仕事に対する意欲の向上(60.1%)、従業員の定着(58.8%)、人材の確保(52.6%)の順でした(複数回答、3つまで)。目的が採用なのか定着なのかで、選ぶ制度は変わります。また、福利厚生に満足している従業員ほど「勤め続けたい」と答える割合が高いという結果もあります(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html)。
働く人の側から見た最新の調査
働く人の側から見た調査もあります。JILPT調査シリーズNo.263(2026年3月18日公表)は、2025年9月に雇用労働者(15-79歳)3,000人へ行ったインターネット調査で、勤務先に制度が「ある」と答えた割合を、慶弔見舞金制度42.1%、人間ドック受診の補助35.2%、家賃補助や住宅手当25.4%、食堂24.4%、食事手当14.6%と報告しています(https://www.jil.go.jp/institute/research/2026/263.html)。企業規模を区分しない集計で、働く人の認識にもとづく数字のため、上の企業調査とは対象が異なります。
中小企業が導入しやすい福利厚生の種類と例
中小企業が導入しやすい福利厚生は、慶弔、健康、食事、休暇、自己啓発の5分野で、目的と予算に合わせて1分野から始められます。
JILPTの調査は、法定外福利を財産形成、食事、健康管理、両立支援、休暇制度、自己啓発、慶弔災害、住宅、余暇活動、働き方、高齢者の11分野・48項目に整理しています。このうち、設備や大きな初期投資を要さず、小さな会社でも実施率が一定程度ある分野を、導入しやすい順ではなく目的別に並べると、次のとおりです。
| 分野 | 制度の例 | 向く目的 | 運用で気をつけること |
|---|---|---|---|
| 慶弔 | 慶弔見舞金、慶弔休暇、永年勤続表彰 | 従業員への気遣いを形にし、会社への信頼を高める | 支給の基準を社内の規程で決め、全員に同じ基準で運用する |
| 健康 | 人間ドック受診の補助、健康管理アプリ、メンタルヘルス相談 | 従業員の健康を保ち、安心して働ける環境をつくる | 健康に関する情報を扱う場合は、取り扱いのルールを先に決める |
| 食事 | 食事手当、置き菓子や飲料の設置、食堂 | 日々の満足度を上げ、従業員同士の会話を増やす | 置き場所、補充、費用負担の分け方を決める |
| 休暇 | 病気休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇 | 休みやすい職場にして、定着を後押しする | 取得の条件を明確にし、業務の引き継ぎ体制とあわせて運用する |
| 自己啓発 | 資格取得の費用補助、社外の研修や講座の経費補助 | 従業員の成長を支え、人材の確保と育成につなげる | 対象となる資格や講座、補助の条件を先に決める |
食事と休憩の支援|食堂が難しい会社は置き型から
食事に関する制度は、規模による差が分かれます。JILPTの調査では、食堂は30人未満で16.5%、300人以上で48.1%と差が大きい一方、食事手当は30人未満で19.0%、300人以上で23.3%と差が小さい制度です(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/203_01.pdf)。社員食堂は設備と運営の負担が大きいため、小さな会社では食事手当のほか、休憩スペースに置き菓子や飲料を設置する形が取りやすい選択肢になります。置き菓子や飲料を24時間置く仕組みはオフィスコンビニと呼ばれ、基本的な仕組みは別の記事で解説しています(オフィスコンビニとは?メリット・デメリット、選び方を解説)。
食事と休憩の面から福利厚生を整える手段の一例が、株式会社スナックミーの「snaq.me office (スナックミーオフィス)」です。商品ページでは、無添加を掲げるおやつを中心に、ドリンクなども含む複数のコースを常時100種類以上から選べる置き菓子サービスとして紹介されており、1袋あたり200kcal以下の個包装のおやつも用意されています。申し込みから最短5日で商品と箱型什器などの備品が届くことや、導入前に1ヶ月間の無料トライアルを利用できることも案内されています。社員食堂のような設備を持てない小さな会社でも、置き場所があれば試しやすい仕組みです。一方で、オフィスコンビニの形で設置する場合は、場所や管理方法、商品の補充方法や決済方法をあらかじめ決めておく必要があるとされています。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください(https://www.onamae.com/business/product/127732/)。
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健康の支援|人間ドックの補助から日常の健康づくりまで
健康に関する制度では、人間ドック受診の補助が規模による差が小さく、30人未満でも44.3%の企業が実施しています。JILPTの従業員調査でも、必要性が高いと思う制度として人間ドック受診の補助(21.8%)が首位でした(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html)。受診の補助に加えて、日々の食事記録や歩数、睡眠を記録する健康管理アプリで、日常の健康づくりを支える方法もあります。先に紹介したカロリパークスのように、健診結果の管理や社内の連絡まで1つのアプリで行える形であれば、担当者が個別に申請を受け付ける手間を抑えられます。
また、JILPTの企業調査では、福利厚生の実施・運営に携わる主体として「加入する健康保険」を挙げた企業が22.4%ありました。自社が加入している健康保険が、保養施設の利用や健診などの付加的なサービスを提供している場合があるため、新しい制度を設ける前に、加入先の案内を確認するとよいでしょう。
休暇・自己啓発・慶弔|費用を抑えて始めやすい制度
休暇制度や慶弔の制度は、設備や外部サービスを要さず、社内の規程で始められる分野です。慶弔休暇制度は30人未満でも87.6%の企業が実施しており、リフレッシュ休暇は30人未満で8.3%と実施している会社は少ないため、休みやすさで他社と差をつけやすい分野ともいえます。自己啓発では、資格取得の費用補助が人材の確保と育成につながります。次の章で紹介する株式会社山内本店(熊本県)は、資格の試験費用を全額会社が負担し、試験日を出勤扱いとする支援を2017年に導入し、半数以上の従業員が資格を保有するようになったと、厚生労働省の事例集で紹介されています(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669673.pdf)。
中小企業が単独で難しい福利厚生は共同で利用する|中小企業勤労者福祉サービスセンター
中小企業勤労者福祉サービスセンターは、原則として市区町村を単位に設立された団体で、中小企業が単独では実施しにくい福利厚生を、地域の中小企業の勤労者と事業主が共同で実施する仕組みです。
厚生労働省は、センターについて、中小企業が事務負担を大きく増やさずに、自社単独より低い経費で福利厚生を充実させられるメリットがあると説明しています。勤労者には、共済給付のほか、人間ドックの受診あっせんや費用補助、旅行や施設利用のあっせんなどの利用機会があります(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/fukushi/index.html)。事業の内容は、在職中の生活の安定、健康の維持増進、老後生活の安定、自己啓発・余暇活動、財産形成の5つに整理されています(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669707.pdf)。
ただし、この仕組みは広く知られているとはいえません。JILPTの企業調査で、センターを「知っている」と答えた企業は13.3%、従業員30人未満では12.6%で、8割以上の企業が知らないと答えています(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/203_01.pdf)。厚生労働省は、2026年3月に、センターを活用している中小企業3社の事例を公表しています。
| 会社 | 加入先と制度 | 導入の理由 | 得られたこと |
|---|---|---|---|
| 株式会社おさひめコーポレーション(長野県飯田市、従業員38名) | 一般財団法人飯田勤労者共済会。共済給付金、人間ドック等の受診助成、チケットのあっせん、飲食店の割引など。会費は会社が全額負担 | 従業員に長く働いてほしいという思いから、安価でサービスが充実している共済会に加入 | 育休中の従業員の会費も会社が負担し、過去10年の対象者のべ7名の全員が育休後に復帰して働き続けている |
| ワイ・ケー・ピー工業株式会社(岐阜県中津川市、従業員118名) | 一般財団法人中津川・恵那地域勤労者福祉サービスセンター。チケットのあっせん・割引、健診補助など。会費は会社が全額負担。月1回のお弁当提供や社員旅行も独自に実施 | 近隣に大企業の工場が多く、自社のみで大企業並みの福利厚生を導入するのは困難だったため | 入社3年以内の離職者数が、令和2年から令和6年まで毎年1名で、令和7年は0名。採用時にも福利厚生をPRできている |
| 株式会社山内本店(熊本県菊池郡菊陽町、従業員72名) | 一般財団法人熊本市勤労者福祉センター。慶弔給付金、人間ドック受診補助、試験受験料補助、セミナーなど。会費は会社が全額負担。資格取得支援や従業員食堂は独自に実施 | 地域に根ざしたサービスが充実し有用だったため、40年以上加入を継続 | 半数以上の従業員が資格を保有。熊本県の「ブライト企業」に認定されている |
出典: 厚生労働省の中小企業における福利厚生事例(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669671.pdf、https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669672.pdf、https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669673.pdf)。いずれも2026年3月現在の記載です。
3社に共通するのは、特別な人だけでなく全員を支える制度を選んでいること、高額な制度でなくても従業員が一緒に過ごす時間や学びの機会をつくっていることです。会費の額や加入できる範囲はセンターごとに異なるため、自社の所在地で利用できるセンターの有無と加入条件は、各センターへ確認してください。厚生労働省の案内ページには、事例の収集先として一般社団法人全国中小企業勤労者福祉サービスセンターが記載されています。
中小企業が福利厚生を導入する進め方|目的・要望・予算・周知・見直しの5ステップ
福利厚生の導入は、目的の決定、従業員の要望の把握、予算と対象者の決定、制度の選定と周知、利用状況の見直しの5ステップで進めると、使われない制度を防げます。
- 目的を決める: 採用に力を入れたいのか、定着を高めたいのかを、1つか2つに絞ります。JILPTの調査で企業が重視する目的は、仕事への意欲の向上(60.1%)、定着(58.8%)、人材の確保(52.6%)の順でした
- 従業員の要望を聞く: アンケートや面談で、必要性を感じている制度を尋ねます。JILPTの従業員調査では、必要性が高いと思う制度は人間ドック受診の補助(21.8%)が首位で、就業形態によって差が出る項目もあります(財形貯蓄は正社員12.0%、パート・アルバイト7.6%)
- 予算と対象者を決める: 総額か1人あたりの上限か、会社の全額負担か一部本人負担かを決めます。パートや契約社員にも適用するかも、先に決めておきます
- 制度を選び、使い方を周知する: 制度の内容、対象者、申請の手順を社内に知らせます。知られていない制度は使われません
- 利用状況を見直す: 利用率と満足度を定期的に確認し、使われない制度は理由を調べて見直します
対象者の決め方は、運用の公平さに関わります。JILPTの調査で、非正規従業員へ適用している割合は、制度ごとに異なります。たとえば、施策がある企業のうち、食事手当は56.4%、慶弔見舞金制度は53.9%が非正規従業員にも適用しています(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html)。対象を限定する場合は、その理由を社内で説明できる形にしておきます。
費用の考え方と、税務・社会保険・就業規則の確認
福利厚生の費用は、会社が全額負担する形、従業員が一部を負担する形、外部サービスの月額や会費で払う形などがあります。先に紹介した厚生労働省の3社の事例では、センターの会費を会社が全額負担していました。外部のサービスを使う場合は、費用が初期費用、月額、従業員数に応じた従量課金のどれで決まるのかを、見積もりの前に確認してください。
福利厚生は、制度の内容や支給の方法によって、税務や社会保険料の扱いが変わることがあります。たとえば、同じ食事の補助でも、現物で提供するか現金で支給するかで扱いが異なる場合があります。また、制度の内容によっては、就業規則への記載や労働条件の変更の手続きが必要になることもあります。ここでは一般的な注意点の整理にとどめ、個別の取り扱いについての法的助言ではないため、導入前に税理士や社会保険労務士、国税庁や年金事務所の案内で確認してください。
外部の福利厚生サービスを選ぶときの5つの確認項目
外部の福利厚生サービスを選ぶときは、メニューの幅、運営の手間、費用の決まり方、利用状況の見える化、契約条件の5項目を同じ基準で比べます。
福利厚生サービスは、旅行や飲食の優待を中心とする総合型、健康管理に特化したもの、置き菓子のような現物を届けるものなど、種類が分かれます。代行サービスやアウトソーシングの具体的な比較は、別の記事で整理しています(福利厚生・代行サービスのおすすめ8選|選ぶ際の比較ポイントも解説、福利厚生アウトソーシングサービスおすすめ16選|選び方も解説)。選択制で自社の予算を配分するカフェテリアプランの仕組みを知りたい場合は、こちらも参考になります(カフェテリアプランとは?仕組み・費用相場・選び方を解説)。JILPTの調査では、福利厚生のアウトソーシングを利用している企業は全体の15.0%、カフェテリアプランは1.3%で、規模が大きいほど導入の割合が高くなっています(https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html)。ここでは、どのサービスにも共通して確認したい項目をまとめます。
| 確認項目 | 確認すること | 理由 |
|---|---|---|
| メニューの幅と対象者 | 雇用形態や勤務場所にかかわらず、全員が使える内容か | 一部の人しか使えない制度は、公平感と利用率が下がる |
| 運営の手間 | 申請の受付や精算を、サービス側と自社のどちらが行うか | 担当者の負担が増えると、制度が続かない |
| 費用の決まり方 | 初期費用、月額、従業員数に応じた従量課金のどれか。最少人数の条件はあるか | 従業員数が少ないほど、最低料金や最少人数の条件が効く |
| 利用状況の見える化 | 利用率や利用内容を、レポートなどで確認できるか。確認の頻度は | 使われているかが分からないと、見直しの判断ができない |
| 契約条件 | 導入前に試せるか。契約期間と解約の条件はどうなっているか | 合わなかったときの負担を事前に把握できる |
利用状況の確認は、福利厚生を続けるか変えるかの判断材料になります。カロリパークスのように、利用状況をまとめたレポートを月次または四半期で受け取れるサービスであれば、担当者が個別に集計しなくても、利用の広がりを確認できます。一方、リアルタイムでは確認できない点があるため、確認の頻度が自社の見直しの周期に合うかを、資料で確かめてください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 中小企業の福利厚生の例は?
A. JILPTの企業調査では、慶弔休暇制度、慶弔見舞金制度、病気休職制度、人間ドック受診の補助、社員旅行の実施・補助、永年勤続表彰、家賃補助や住宅手当などが例として挙がっています。従業員30人未満の企業でも、慶弔休暇制度は87.6%、慶弔見舞金制度は83.1%、人間ドック受診の補助は44.3%の企業が実施していました(2017年調査)。慶弔、健康、食事、休暇、自己啓発の5分野から、目的に合う制度を選びます。
Q2. 中小企業で実施率が高い福利厚生の順は?
A. 従業員30人未満の企業で実施率が高い順に、慶弔休暇制度(87.6%)、慶弔見舞金制度(83.1%)、病気休職制度(54.4%)、人間ドック受診の補助(44.3%)、社員旅行の実施・補助(42.2%)、永年勤続表彰(40.8%)です(JILPT・2017年調査)。ただし、実施率の高さは導入すべき順番を表すものではありません。目的、従業員の要望、予算に合わせて選んでください。
Q3. 福利厚生がない会社は違法ですか?
A. 法定外福利は法律で義務づけられていないため、1つもなくても、それだけで違法にはなりません。法律上の義務があるのは、健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険などの加入手続きと保険料の納付です。個別の判断が必要な場合は、年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
Q4. 中小企業の福利厚生の現状は?
A. JILPTの2017年調査では、「法定外の福利厚生制度・施策はまったくない」と答えた企業が、全体で25.3%、従業員30人未満で31.1%ありました。規模が大きいほど施策の数も多く、300人以上では4割超が20以上の施策を実施しています。2025年9月の働く人向けの調査では、勤務先に慶弔見舞金制度があるとの回答は42.1%でした。
Q5. 予算が少ない会社は、福利厚生を何から始めればよいですか?
A. 目的を決め、従業員の要望が高い制度から1つ始めるのが現実的です。JILPTの従業員調査で必要性が高いとされたのは、人間ドック受診の補助でした。費用を抑えたい場合は、会費を会社が負担して共同利用できる中小企業勤労者福祉サービスセンターや、加入している健康保険のサービスも確認します。
Q6. 従業員が少なくても、外部の福利厚生サービスは使えますか?
A. サービスによって条件が異なります。商品ページでは、カロリパークスは1名から利用でき、snaq.me office (スナックミーオフィス)は少人数のオフィスから大企業まで利用可能と紹介されています。最少人数や契約条件は、資料や公式サイトで確認してください。
中小企業の福利厚生で押さえたい5つのこと
- 法定福利(社会保険・労働保険)は会社の義務、法定外福利は任意と区別して、まず手続きに漏れがないかを確認する
- 30人未満の企業では3割ほどが法定外の制度をまったく設けていないため、まず1つ始めることに価値がある
- 目的(意欲向上・定着・採用)と従業員の要望、予算を決めてから、慶弔・健康・食事・休暇・自己啓発の1分野を選ぶ
- 単独で難しい制度は、中小企業勤労者福祉サービスセンターや外部サービスの資料を取り寄せ、メニュー・運営の手間・費用の決まり方を同じ基準で比べて検討する
- 導入後は利用率と満足度を確認し、使われない制度を見直す
福利厚生は、金額の大きさではなく、全員に届き、続けられるかで効果が決まります。
参考文献
- 日本年金機構 適用事業所と被保険者 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html
- 厚生局 社会保険の加入のご案内(リーフレット) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/documents/hoken-miteki.pdf
- 厚生労働省 労働保険とは https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/tokusetusaito/about.html
- 厚生労働省 勤労者の福利厚生について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/fukushi/index.html
- 厚生労働省 中小企業における福利厚生事例(おさひめコーポレーション) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669671.pdf
- 厚生労働省 中小企業における福利厚生事例(ワイ・ケー・ピー工業) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669672.pdf
- 厚生労働省 中小企業における福利厚生事例(山内本店) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669673.pdf
- 厚生労働省 中小企業勤労者福祉サービスセンターの概念図 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001669707.pdf
- JILPT 調査シリーズNo.203 企業における福利厚生施策の実態に関する調査 https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/203.html
- JILPT 調査シリーズNo.203 本文(PDF) https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/203_01.pdf
- JILPT 調査シリーズNo.263 福利厚生に関する労働者調査 https://www.jil.go.jp/institute/research/2026/263.html
- カロリパークスの特徴や機能を紹介(ビジネスコンシェルジュ商品ページ) https://www.onamae.com/business/product/282276/
- snaq.me office (スナックミーオフィス)の特徴や機能を紹介(ビジネスコンシェルジュ商品ページ) https://www.onamae.com/business/product/127732/
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