業務委託契約で行ってはいけない行為とは?発注側のNG行為と守るべき法律
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- 進め方の指示や時間の拘束は避ける
- 発注内容は書面で示し60日以内に支払う
- 解除は30日前までに予告し理由も開示
業務委託契約で行ってはいけない行為とは、契約書の名目が業務委託でも、発注側が相手を従業員のように指揮命令すること、そして立場の弱い受託者に取引条件を一方的に不利にして押し付けることの2つが中心です。前者は偽装請負や労働者性の問題、後者はフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)や取適法の問題として整理されます。本記事では、発注側の担当者に向けて、作業手順の指示や勤務時間の拘束、書面の不交付や60日を超える支払、解除の予告やハラスメント対応までを、厚生労働省・公正取引委員会などの公的資料とe-Gov法令検索の条文をもとに整理し、受託側の契約違反と相談先もまとめます。
なお、本記事は制度の一般的な内容を紹介するものであり、法的助言ではありません。個別の契約や運用が違反にあたるかどうかは実態によって判断されるため、弁護士・社会保険労務士・公的な相談窓口に確認してください。
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業務委託契約で行ってはいけない行為は何?3つの軸で整理
業務委託契約で行ってはいけない行為は、雇用のように指揮命令すること、取引条件を不利に押し付けること、予告なく打ち切ることやハラスメントの3つの軸で整理できます。
業務委託は、事業者同士が対等な立場で仕事を任せ、請負(民法第632条)や準委任(民法第656条)といった契約で結ぶ取引です。そのため、発注側が相手を従業員のように扱うと実態で労働者と判断されるおそれがあり、相手が個人やひとり社長の場合は、取引の適正化を求める法律も重ねて関わります。
| 軸 | 主な根拠 | 代表的な行為 |
|---|---|---|
| 1. 働き方への介入 | 労働基準法第9条の労働者性の判断、労働者派遣法(偽装請負) | 作業手順の細かな指示、勤務時間・場所の指定、毎日の勤怠管理、他社の仕事の制限 |
| 2. 取引条件 | フリーランス法第3条から第5条、取適法、独占禁止法(優越的地位の濫用) | 発注内容を書面等で示さない、受領から60日を超えて支払う、報酬の減額、買いたたき、無償のやり直し |
| 3. 解除・ハラスメント | フリーランス法第13条から第16条 | 30日前までの予告なしの打ち切り、解除理由の開示に応じない、ハラスメントへの対応体制がない |
どの軸も、契約書の文言だけでなく、日々の発注の運用で起きます。契約書の条項を確認する方法として、役割の違う3つのサービスを次の表で整理します。優劣ではなく、向いている状況の違いで並べています。
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指揮命令・勤務の拘束はNG|偽装請負と労働者性の判断基準
業務委託契約では、作業の進め方や勤務時間・場所を発注側が指示・管理すると、契約書が業務委託でも実態は雇用や労働者派遣と判断されるおそれがあります。判断は契約の名称ではなく、働き方の実態で行われます。
内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が連名で策定した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」は、請負契約や準委任契約で仕事をしている場合でも、労働関係法令の適用では契約の形式や名称にかかわらず、働き方の実態に基づいて「労働者」かどうかが判断されると説明しています。労働基準法第9条は、労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。
ガイドラインによれば、労働者性は、労働が他人の指揮監督下で行われているか、報酬が指揮監督下の労働の対価として支払われているかの2つで判断され、これを「使用従属性」と呼びます。使用従属性だけで判断が難しい場合には、事業者性や専属性の程度も補強する要素として考慮されます。なお、この整理は一般的な情報であり、法的助言ではありません。
労働者性の判断で見られる項目と、発注側が意識したい伝え方
| 見られる項目 | 労働者性を強める方向の例(ガイドラインの例示) | 発注側が意識したい伝え方 |
|---|---|---|
| 諾否の自由 | 指示された業務を、病気など特別な理由がない限り断れない | 依頼はお願いの形にし、受けるかどうかを受託者が選べるようにする |
| 業務遂行上の指揮監督 | 運送の経路や出発時刻、作業の細部まで管理している。なお、仕様書や指示書による通常の注文者が行う程度の指示は、肯定する要素にならないとされる | 成果物の仕様・品質の基準・納期を伝え、進め方は受託者に任せる |
| 拘束性 | 勤務場所と勤務時間を指定し、管理している。ただし、業務の性質や安全確保で場所・時間が決まる場合は見極めが必要とされる | 納期と成果物で依頼する。日時を決める必要があるときは、業務の性質上の理由を明確にする |
| 代替性 | 発注者の了解なく代役を立てたり補助者を使ったりできる場合は、指揮監督関係にないことを示す要素になる | 再委託の可否は、秘密保持の観点から契約書で決める |
| 報酬の労務対償性 | 報酬が作業時間をベースに決まり、時間給・日給で計算され、残業で追加報酬が出る | 成果物や業務内容に応じた報酬にする |
| 専属性・事業者性(補強) | 他の発注者の業務を制度上制約している、時間的余裕がなく事実上困難、機械や器具を発注者が負担している | 他社の仕事を制限しない。必要な機材や費用の負担は受託者が決められるようにする |
どれか1つで決まるのではなく、複数の事情を総合して判断される点が大切です。たとえば作業時間を決める場合も、騒音への配慮や他の職種との工程調整が理由であれば肯定する要素とならないとガイドラインは例示しており、業務の性質による指定なのか、指揮命令のための指定なのかを見極める必要があります。
偽装請負とは|請負の形で指揮命令すると労働者派遣になる
偽装請負とは、請負などの契約の形をとりながら、実態は注文主が労働者に指揮命令を行う労働者派遣になっている状態をいいます。厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」は、注文主と労働者の間に指揮命令関係がある場合、請負形式の契約でも労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法の適用を受けると説明しています。区分の判断基準は、昭和61年労働省告示第37号(37号告示)に示されています。
同じガイドは、請負業者から個人事業主に再委託される場合の注意も示しています。請負業者と再委託された個人の間に雇用関係がない限り、労働者派遣法との関係では問題にならないとしつつ、フリーランス等であっても実態から労働者性が認められる場合は、労働基準法等が適用される労働者になるとしています。契約の名称ではなく、実態が見られるという点は共通です。
労働者派遣法第40条の6第1項第5号は、この法律の適用を免れる目的で請負その他労働者派遣以外の名目で契約を結び、派遣の役務の提供を受けた場合に、発注側がその時点の労働条件と同一の労働契約を申し込んだものとみなされる、と定めています。ただし、その行為が該当することを知らず、知らなかったことに過失がなかった場合は除かれます。請負・準委任・派遣の違いは、偽装請負と言われないBPO契約の作り方|業務委託・請負・委任の違いと、BPOと人材派遣の違いとは?指揮命令権・委託範囲・RPOまで整理でも整理しています。
業務委託なのにシフト提出や日報を求めるのは違法?
シフトの提出や日報を求めること自体が、それだけで違法と決まるわけではありません。ガイドラインが示すとおり、勤務場所・時間が指定され管理されていることは指揮監督関係を示す基本的な要素になりますが、業務の性質上の理由によるものか、業務の遂行を指揮命令する必要によるものかを見極めると説明されています。
実務では、受託者が日時を自分で決められるか、発注側が個別に出勤を割り当てたり欠勤を管理したりしていないか、進捗の共有が成果物の確認の範囲にとどまっているかを、運用の実態として点検します。勤怠管理の考え方は業務委託・業務請負の勤怠管理とは|契約の種類や注意点について解説で詳しく解説しています。
指示の言い換え例
次の表は、指揮命令と受け取られやすい言い方と、成果物と納期を軸にした言い方の例です。実際の運用が伴わなければ意味がないため、契約書と現場の連絡の両方で揃えます。
| 指揮命令と受け取られやすい言い方 | 成果物と納期を軸にした言い方の例 |
|---|---|
| 明日は10時から18時まで作業してください | 明日中に、この仕様を満たす成果物を納品していただけますか |
| 毎日、日報を提出してください | 週1回、進み具合を共有していただけますか |
| この順番で作業を進めてください | 納期までに、この条件を満たす形であれば、進め方はお任せします |
| 他の仕事より、うちを優先してください | 納期の都合がつかない場合は、早めにご相談ください |
取引条件でNG|書面の不交付・支払遅延・一方的な減額(フリーランス法)
フリーランス法では、発注時に給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示すること、報酬を受領日から60日以内に支払うこと、報酬の減額や買いたたきなどをしないことが、発注側に求められます。
フリーランス法は2024年11月1日に施行されました。相手方の「特定受託事業者」は、従業員を使用しない個人、または代表者1人以外に役員がおらず従業員を使用しない法人で、第2条に定められています。発注側は、発注時の明示義務(第3条)を負う業務委託事業者と、支払期日(第4条)や禁止行為(第5条)などを負う特定業務委託事業者(従業員を使用する個人、または2人以上の役員がある、もしくは従業員を使用する法人)に分かれます。以下は一般的な整理であり、法的助言ではありません。
発注時に明示しなければならないこと(第3条)
第3条は、業務委託事業者に対し、業務委託をした場合は直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を書面または電磁的方法で明示するよう求めています。電磁的方法で明示した場合でも、特定受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく交付する必要があります(保護に支障がない場合として規則で定める場合を除く)。内容が定められないことに正当な理由がある事項は、定まった後に直ちに明示します。口頭だけの発注や、報酬額があいまいなままの発注は、この点で問題になりえます。
報酬は受領日から60日以内に支払う(第4条)
第4条は、報酬の支払期日を、給付を受領した日(役務の提供の場合は役務の提供を受けた日)から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に定めるよう求めています。検査をするかどうかは問われません。60日を超えて定めた場合は、受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。元委託者から受けた業務を再委託する場合は、一定の事項を明示したうえで、元委託者からの支払期日から30日以内に定める特例があります。
協力会社や外注先との発注書・請書・請求書を、発注内容や支払期日の確認ができる形で記録に残したい会社の場合の一例が、株式会社フォーカスシステムズが提供するBiz Connectionです。発注書、請書、見積書、請求書、契約書などの取引書類をワンストップで管理でき、業務の自動化によって手作業のミスを減らせると紹介されています。注意点として、詳しい料金やプランは問い合わせが必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。なお、フリーランス法の明示事項を満たすかどうかは、記載する内容と運用で決まります。
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導入事例の一例として、建設分野の株式会社TS東京は、協力会社との発注請書のやり取りについて、導入前の課題を次のように紹介しています。
発注請書の「体感的には半数近くに印紙の貼付漏れがあり、協力会社に差し戻して」いたため、Biz Connectionの導入で、発注書と請書のやり取りを集約し、関連業務を完全にペーパーレス化したとしています。
出典: フォーカスシステムズ「TS東京様 導入事例」
フリーランス法が禁止する7つの行為(第5条)
第5条は、特定業務委託事業者に対し、次の行為を禁止しています。第1項の5つは、政令で定める期間(施行令第1条で1か月)以上の業務委託が対象です。役務の提供を委託する場合は、受領拒否と返品は対象から除かれます。第2項の2つは、期間にかかわらず禁止されています。具体例は、公正取引委員会のフリーランス法特設サイトが示す確認項目に沿って整理しました。
| 禁止される行為 | 条文 | 具体例(公正取引委員会の特設サイトの確認項目より) |
|---|---|---|
| 給付の受領拒否 | 第5条第1項第1号 | 納品物の受取を拒否した |
| 報酬の減額 | 第5条第1項第2号 | 手数料などを差し引いて支払った |
| 返品 | 第5条第1項第3号 | 一度受け取った物を返品した |
| 買いたたき | 第5条第1項第4号 | 原材料費などのコストが上がったのに、協議もせず従来の金額で発注した |
| 物の購入・役務の利用の強制 | 第5条第1項第5号 | 業務と直接関係のない商品を購入してもらった |
| 経済上の利益の提供要請 | 第5条第2項第1号 | 仕事として依頼していないことを無償でやってもらった |
| 不当な給付内容の変更・やり直し | 第5条第2項第2号 | 納品後に、追加費用なしでやり直してもらった |
いずれも、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がない場合が前提です。仕様変更や追加作業を依頼するときは、増える作業の範囲と費用を事前に書面等で合意しておくことが、禁止行為を避ける実務上の要点です。
取適法・独占禁止法もあわせて確認する
同じ取引に、取適法(中小受託取引適正化法。旧下請法)が関わる場合もあります。公正取引委員会の案内によれば、取適法では、手形払いの禁止、価格協議に応じないなど一方的に価格を決める行為の禁止、振込手数料を中小受託事業者に負担させる行為の禁止が示され、資本金の基準に加えて従業員数の基準(役務提供委託等は100人、製造委託等は300人)でも対象になります。対象になるかどうかは、取引の内容と発注側の規模によるため、公正取引委員会の取適法Q&Aで確認してください。
また、ガイドラインによれば、独占禁止法は、発注者が事業者であれば相手が個人の場合でも適用され、取引上の優越的な地位を利用して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為は、優越的地位の濫用として規制されます。
違反した場合の流れ
フリーランス法に違反する事実があるとき、特定受託事業者は公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に申し出ることができます(第6条、第17条)。違反があると認められたときは、行政が勧告を行い(第8条、第18条)、正当な理由なく勧告に従わなければ命令が出され(第9条、第19条)、命令に違反すると50万円以下の罰金の対象になります(第24条)。
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解除・ハラスメント・配慮でNG|打ち切りの予告と相談体制
6か月以上続く業務委託を解除する場合は、少なくとも30日前までの予告が必要で、受託者から請求があれば解除の理由を開示します。ハラスメントへの対応体制の整備も、発注側の義務です。
フリーランス法は、取引条件だけでなく、取引の続け方や接し方についても発注側に義務を定めています。条文の整理は次のとおりです(一般的な情報であり、法的助言ではありません)。
| 行ってはいけない行為・怠ってはいけないこと | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 予告なしの解除・不更新 | 第16条第1項 | 継続的業務委託(政令で6か月以上)を解除する場合(期間満了後に更新しない場合を含む)は、少なくとも30日前までに予告する。災害その他やむを得ない事由などの場合は除かれる |
| 解除理由の開示に応じない | 第16条第2項 | 予告の日から契約満了日までの間に、受託者から解除の理由の開示を請求されたら、遅滞なく開示する。第三者の利益を害するおそれがある場合などは除かれる |
| ハラスメントへの対応体制がない | 第14条第1項 | 性的な言動、妊娠・出産に関する言動、優越的な関係を背景とした業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、就業環境を害することのないよう、相談に応じ適切に対応する体制を整備する |
| 相談を理由とする不利益な取扱い | 第14条第2項 | 受託者が相談したことなどを理由に、契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない |
| 育児・介護との両立への配慮を怠る | 第13条 | 継続的業務委託では、受託者の申出に応じて、育児や介護と両立できるよう必要な配慮をする義務がある。それ以外の業務委託は努力義務 |
| 募集情報を不正確に表示する | 第12条 | 受託者を募集する際、業務の内容、場所・期間・時間、報酬、解除、募集者に関する事項などを、虚偽の表示や誤解を与える表示をせず、正確かつ最新の内容に保つ |
第12条の事項は、施行令第2条が定める「業務の内容」「業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項」「報酬に関する事項」「契約の解除に関する事項」「特定受託事業者の募集を行う者に関する事項」を指します。
予告や理由開示は、契約書の解除条項と運用が一致していることが前提です。更新しない決定をしたとき、いつ、誰が、どの手段で予告し、理由を求められたらどう答えるかを、あらかじめ社内で決めておきます。拙速に一方的な解除を行うと、解除の予告義務に反するおそれや、損害賠償を求められるおそれがあります。
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受託側が行ってはいけない契約違反|納期・品質・秘密保持・再委託
受託側の契約違反は、契約書で約束した内容を守らないことで、納期の遅れ、成果物の不備、秘密情報の漏えい、無断の再委託などが典型です。民法では、債務の本旨に従った履行をしないとき、債権者は損害賠償を請求できると定めています。
業務委託契約で行ってはいけない行為は、発注側だけの問題ではありません。民法第415条は、債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき、または履行が不能であるときは、債権者は生じた損害の賠償を請求できると定めています(債務者の責めに帰することができない事由による場合を除く)。また、第541条は、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、契約を解除できると定めています(その不履行が軽微であるときを除く)。どのような行為が違反にあたるかは、契約書の定めによって具体化されるため、次のような類型を契約で決めておくことが、トラブルの予防になります。
| 違反の類型 | 起きやすい場面 | 契約で決めておくこと |
|---|---|---|
| 納期の遅れ | 仕様変更や追加依頼で作業量が増える | 納期を変える手続き、検収の期限、遅れたときの連絡の時期 |
| 成果物の不備 | 仕様や品質の基準があいまい | 仕様書、検収の基準、修正に応じる範囲と回数 |
| 秘密情報の漏えい | 資料の持ち出し、SNSへの投稿、私用の端末での保管 | 秘密情報の定義、管理方法、契約終了後の返還・削除、期間 |
| 無断の再委託 | 作業を知人や補助者に任せる | 再委託の可否、事前の承諾の要否、再委託先への義務の引き継ぎ |
| 競業・利益相反 | 発注先の競合の案件を同時に受ける | 禁止する範囲と期間。広すぎる制限は、専属性を強め労働者性の判断にも影響しうる |
発注側が他社の仕事を一律に禁止するような条項を置くと、前述のとおり専属性が高いとして労働者性を補強する方向に働きます。受託者の事業としての自由を不当に狭めない範囲で、秘密保持と利益相反だけを具体的に定めるのが実務的です。請負と準委任の違いは、成果物の完成を約束するか、業務の遂行そのものを約束するかにあります。契約類型の違いは偽装請負と言われないBPO契約の作り方|業務委託・請負・委任の違いで整理しています。
契約書に入れておきたい禁止事項と確認の進め方
業務委託契約書では、業務内容、指示・報告の方法、報酬と支払期日、追加作業の費用、再委託・秘密保持、解除と予告を具体的に書くことが、行ってはいけない行為を防ぐ基本です。
| 確認する条項 | 書く内容 | 見直しの観点 |
|---|---|---|
| 業務内容・成果物・検収 | 何を、どの水準で、いつまでに納めるか。検収の期限と基準 | 「業務一式」のように範囲が広いと、追加作業の押し付けにつながる |
| 指示・報告の方法 | 連絡の窓口、進み具合の共有の頻度 | 日報や勤務時間の報告を一律に義務づけていないか |
| 報酬・支払期日・経費 | 金額の決め方、支払期日、経費の負担、減額が認められる場合 | 支払期日が受領日から60日以内か。理由のない減額の条項がないか |
| 仕様変更・やり直し | 変更の手続き、増える作業の費用と期限 | 追加費用なしのやり直しを前提にした書き方になっていないか |
| 再委託・秘密保持 | 再委託の可否と承諾の方法、秘密情報の範囲と期間 | 受託者に過大な義務を課していないか |
| 解除・更新 | 解除事由、予告の期間、理由の説明、損害賠償 | 継続的業務委託で30日前までの予告ができる定めか |
| 相談窓口・ハラスメント | 受託者が相談できる窓口と、不利益な取扱いをしない旨 | 相談体制を整備しているか |
ひな型をそのまま使うと、上の条項が抜けたり、発注側に有利な表現に偏ったりしやすくなります。確認の方法は大きく3つあります。1つ目は、本記事の表やチェックのように観点を固定して自社で確認する方法、2つ目は顧問弁護士などに依頼する方法、3つ目は、条項の差分比較や弁護士のレビューを受けられるサービスを使う方法です。発注書や契約書を電磁的方法で交わす場合は、業務委託契約書は電子契約できる?メリットや締結までのやり方を解説も参考になります。
法務担当がいない、または少人数で、契約書の確認を外部の弁護士に頼みたい会社の場合の一例が、Molton株式会社が提供するクラウドリーガルです。厳選された「クラウドリーガル弁護士」による契約書レビューを受けられ、取引状況に合った修正案の提案があり、契約書レビューだけでなく企業法務の業務にも対応すると紹介されています。注意点として、契約書レビューはサービスの一部で、1通あたり7ページ以下のものが対象です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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- 契約書レビューはサービス内の一部で、1通あたり7ページ以下のもの
導入事例の一例として、医療分野の株式会社Mediiは、導入前の課題を次のように紹介しています。
顧問弁護士に契約書審査を依頼していた際の課題は「顧問弁護士の返答に時間がかかることや、タイムチャージにばらつきがある」ことだったとし、クラウドリーガルのシルバープランの導入で、各契約書が7ページ以内であればタイムチャージを気にせずレビューを依頼できるようになったとしています。
出典: Molton株式会社「導入事例 株式会社Medii様」
トラブルが起きたときの相談先と、発注側が最初にやること
トラブルが起きたときの相談先には、フリーランス・トラブル110番、取引かけこみ寺、公正取引委員会などの申出窓口があります。発注側はまず事実を確認し、拙速に打ち切らず、専門家に相談します。
| 窓口 | 向いている場面 | 公式ページで確認できた内容 |
|---|---|---|
| フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営) | 受託者(フリーランス)が、発注事業者とのトラブルを弁護士に相談したいとき | 相談は無料で匿名可。電話は0120-532-110。フリーランス法違反の申出のアドバイスも受け付ける。フリーランス自身が発注側となったトラブルは対象外 |
| 取引かけこみ寺(中小企業庁委託事業) | 中小企業・個人事業主・フリーランスが、代金の未払い・減額、受領拒否、買いたたき、一方的な代金決定などを相談したいとき | 全国48か所、相談無料・秘密厳守・匿名可。フリーダイヤルは0120-418-618(平日) |
| 公正取引委員会のフリーランス法特設サイト | フリーランス法違反の疑いがあるとき(発注側の確認項目の自己点検にも使える) | フリーランスの方向け、フリーランスに依頼する事業者の方向けの違反申出窓口が案内されている |
| 弁護士・社会保険労務士 | 個別の契約の解釈、労働者性の判断、解除の進め方 | 契約書や発注書、メール、実際の指示の記録を持参すると相談が進めやすい |
発注側が、自社の運用に問題がありそうだと気づいたときの進め方は、次の4つに整理できます。
- 事実を確認する。契約書、発注書、メールやチャットの指示、報酬の支払の記録を集め、実際にどのような指示や条件で運用していたかを洗い出す
- 問題のある運用を止める。作業手順や勤務時間の指定、書面の不交付、60日を超える支払など、該当する運用を先に改める
- 一方的な解除を急がない。継続的業務委託の解除には30日前までの予告と、請求があった場合の理由の開示が必要になる
- 専門家に相談する。弁護士や社会保険労務士、公的な窓口に、集めた記録を示して相談する
契約書の条項や発注の記録に不安がある場合は、条項の確認を支援するサービスや、取引書類の管理を支援するサービスの資料を取り寄せて、自社の体制に合うかを比べておくと、次の契約からの見直しに役立ちます。
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3サービスの資料をまとめて見るよくある質問(FAQ)
Q1. 業務委託でやってはいけないことは何ですか?
A. 大きく3つあります。1つ目は、作業手順の細かな指示、勤務時間・場所の指定、勤怠管理など、雇用のように指揮命令すること。2つ目は、発注内容を書面等で示さない、60日を超えて報酬を支払う、減額や買いたたき、無償のやり直しなど、取引条件を不利に押し付けること。3つ目は、30日前までの予告のない解除や、ハラスメントへの対応を怠ることです。
Q2. 業務委託でよくある違反事例は何ですか?
A. 公正取引委員会のフリーランス法特設サイトの確認項目には、納品物の受取拒否、手数料などを差し引いた支払、返品、コスト上昇を考慮しない協議なしの据え置き、業務と関係のない商品の購入、無償での追加作業、追加費用なしのやり直しが挙げられています。働き方の面では、日報の強制や勤務時間の指定が、偽装請負や労働者性の問題として指摘されます。
Q3. 業務委託契約違反とはどのようなものですか?
A. 契約書で約束した内容を守らないことです。受託側では納期の遅れ、成果物の不備、秘密情報の漏えい、無断の再委託などが典型で、発注側では報酬の不払いや約束にない追加作業の強制などが当たります。民法第415条により、債務の本旨に従った履行がないとき、相手方は損害賠償を請求でき、第541条により、相当の期間を定めた催告でも履行がなければ解除できる場合があります。具体的な範囲は契約書の定めと実態で決まります。
Q4. 業務委託なのにシフト提出をするのは違法ですか?
A. シフトの提出を求めること自体が、それだけで違法と決まるわけではありません。勤務場所・時間が指定され管理されていることは指揮監督関係を示す基本的な要素ですが、業務の性質上の理由か、業務の遂行を指揮命令する必要によるものかを見極めて、他の事情と合わせて総合的に判断されます。受託者が日時を決められるか、欠勤の管理や出勤の割り当てをしていないかを点検してください。詳しくは業務委託・業務請負の勤怠管理とはをご覧ください。
Q5. 業務委託で、発注側が指示してよい範囲はどこまでですか?
A. 成果物の仕様、品質の基準、納期など、注文者として通常行う程度の指示は、指揮監督関係を肯定する要素にならないとガイドラインは例示しています。一方、運送の経路や出発時刻の管理のように、業務の遂行方法や時間を発注側の管理下に置く指示は、労働者性を強める方向に働きます。「何を、いつまでに」は伝え、「どう進めるか」は任せるのが基本です。
Q6. 禁止行為に違反するとどうなりますか?
A. フリーランス法では、違反の事実があるとき受託者が公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に申し出ることができ、行政から勧告、命令が行われ、命令に違反すると50万円以下の罰金の対象になります。偽装請負と判断された場合は、労働者派遣法第40条の6による労働契約申込みみなし(善意無過失の場合を除く)などの問題が生じます。個別の事案は専門家に確認してください。
まとめ
業務委託契約で行ってはいけない行為は、働き方への介入、取引条件の押し付け、解除やハラスメントの扱いの3つの軸で整理できます。発注側が押さえておきたいポイントは次の5つです。
- 作業の進め方、勤務時間・場所、勤怠管理を発注側が指示・管理しない。成果物・仕様・納期を伝え、進め方は受託者に任せる
- 発注時に給付の内容・報酬の額・支払期日を書面等で示し、報酬は受領日から60日以内のできる限り短い期間で支払う
- 受領拒否、減額、返品、買いたたき、購入強制、無償の追加作業、追加費用なしのやり直しをしない。必要なときは費用と範囲を事前に合意する
- 継続的業務委託の解除や更新しない場合は30日前までに予告し、理由の開示請求とハラスメントの相談に対応できる体制を整える
- 契約書の確認や発注の記録が追いつかないときは、条項の確認を支援するサービスや取引書類の管理サービスの資料を取り寄せ、自社の体制に合う方法を比べる
契約書の条項、日々の指示、支払の運用を同じ基準で揃えることが、業務委託を長く安定して活用するための土台になります。
参考文献
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」https://laws.e-gov.go.jp/law/506CO0000000200
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- e-Gov法令検索「労働基準法」https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- e-Gov法令検索「民法」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(令和3年3月26日策定版)https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/freelance_files/freelance.pdf
- 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/
- 公正取引委員会「取適法・振興法」https://www.jftc.go.jp/toriteki_2025/
- 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」https://www.jftc.go.jp/toriteki/toriteki_qa.html
- 厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」https://www.mhlw.go.jp/content/001704228.pdf
- 厚生労働省「請負を適正に行うために」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/seizouukeoiyuryotekisei.html
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営)https://freelance110.mhlw.go.jp/
- 全国中小企業振興機関協会「取引かけこみ寺事業」https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/
- LAWGUE「導入事例 株式会社すららネット」https://lawgue.com/voice/4829/
- Molton株式会社「導入事例 株式会社Medii様」https://www.molton.inc/voice/2/
- 株式会社フォーカスシステムズ「TS東京様 導入事例」https://bberc.focus-s.com/construction-equipment/case01/
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